特許第5661737号(P5661737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5661737加アルコール分解によるPLAのケミカルリサイクル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661737
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】加アルコール分解によるPLAのケミカルリサイクル
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/03 20060101AFI20150108BHJP
   C07C 69/68 20060101ALI20150108BHJP
   C07C 67/54 20060101ALI20150108BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20150108BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20150108BHJP
   C08J 11/28 20060101ALI20150108BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20150108BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150108BHJP
【FI】
   C07C67/03
   C07C69/68
   C07C67/54
   B29B17/00ZAB
   C08J11/24
   C08J11/28
   B29B17/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】22
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-505117(P2012-505117)
(86)(22)【出願日】2010年3月31日
(65)【公表番号】特表2012-523443(P2012-523443A)
(43)【公表日】2012年10月4日
(86)【国際出願番号】EP2010054280
(87)【国際公開番号】WO2010118955
(87)【国際公開日】20101021
【審査請求日】2013年4月1日
(31)【優先権主張番号】2009/0231
(32)【優先日】2009年4月14日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】511241192
【氏名又は名称】ガラクティック・エス.エー.
【氏名又は名称原語表記】GALACTIC S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】コザク、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ボゲール、ジャン−クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィロク、ジョナサン
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−011044(JP,A)
【文献】 特開2007−224113(JP,A)
【文献】 特開2004−250414(JP,A)
【文献】 特開2003−300926(JP,A)
【文献】 特開2009−029757(JP,A)
【文献】 特開平09−111036(JP,A)
【文献】 特開2007−031538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/08,11/10
C07C 51/09
C07C 59/08
C07C 67/03
C07C 69/68
C08F 8/50
B29B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PLA(ポリラクチド)を含むポリマーブレンドをリサイクルする方法であって:
a)粉砕したおよび/または圧縮した前記ポリマーブレンドをPLAの溶媒に溶解させ、PLAを他のポリマーから分離する工程であって、PLAの前記溶媒が乳酸エステルであり、作業圧力での水の沸点と前記エステルの沸点との間の温度で、0.5ないし3.0のPLA/乳酸エステル重量比を得るのに十分な期間にわたって行う工程と;
b)別の後段の処理のために、溶解していないポリマーを回収する工程と;
c)PLA/溶媒の重量比が0.5ないし3.0であるPLA溶液を回収し、それに80ないし180℃の温度および0.05ないし10barの圧力での触媒的加アルコール分解反応を施して、PLAを乳酸エステルに変える工程と;
d)このようにして回収した前記乳酸エステルを精製する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記PLA/乳酸エステル重量比は、0.75ないし2.0である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作業圧力は0.05ないし10barである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記乳酸エステルは乳酸アルキルであり、前記乳酸アルキルのアルキルは1ないし12個の炭素原子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記乳酸アルキルのアルキルは、メチル、エチル、イソプロピル、ブチルまたはヘキシルからなる群より選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒的加アルコール分解反応を塩基性触媒の存在下で行う請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基性触媒はグアニジンである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記グアニジンはトリアザビシクロデセンまたはその誘導体である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
溶解に先立ち、前記ポリマーブレンドを、0.05ないし1.4t/m3の重量/体積比が得られるまで粉砕するおよび/または圧縮する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
PLA(ポリラクチド)を、PLAをモノマーまたはその誘導体へ解重合することによってリサイクルする方法であって、PLAを溶媒中に溶解させることと、溶解したPLAを触媒的に加アルコール分解して乳酸エステルにすることと、このようにして回収した前記乳酸エステルを精製することとを含み、PLAの溶解を、乳酸エステル中で、作業圧力で、0.5ないし3.0のPLA/乳酸エステル重量比を得るのに十分な期間にわたって行うことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記作業圧力は0.05ないし10barである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記乳酸エステルは乳酸アルキルであり、前記乳酸アルキルのアルキルは1ないし12個の炭素原子を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記乳酸アルキルのアルキルは、メチル、エチル、イソプロピル、ブチルまたはヘキシルからなる群より選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒的加アルコール分解反応を塩基性触媒の存在下で行う請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基性触媒はグアニジンである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PLA/乳酸エステル重量比が0.75ないし2.0である請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記グアニジンはトリアザビシクロデセンまたはその誘導体である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記PLAの溶解に先立ち、PLAを粉砕するおよび/または圧縮する工程を含む請求項10に記載の方法。
【請求項19】
乳酸を回収する方法であって:
a)粉砕したおよび/または圧縮したポリマーブレンドを乳酸エステルに溶解させ、PLA(ポリラクチド)を他のポリマーから分離する工程と;
b)別の後段の処理のために、溶解していないポリマーを回収する工程と;
c)PLA/溶媒の重量比が0.5ないし3.0であるPLA溶液を回収し、それに80ないし180℃の温度および0.05ないし10barの圧力での触媒的加アルコール分解反応を施して、PLAを乳酸エステルに変える工程と;
d)このようにして回収した前記乳酸エステルを精製する工程と;
e)前記乳酸エステルを加水分解して乳酸にする工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記加水分解を触媒の存在下で行う請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記加水分解をアルコールの抽出によって行う請求項19に記載の方法。
【請求項22】
溶解に先立ち、前記ポリマーブレンドを、0.05ないし1.4t/m3の重量/体積比が得られるまで粉砕するおよび/または圧縮する工程を含む請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の分野
本発明は、モノマーまたはその誘導体を再形成するための、他種のポリマーのブレンドに含まれているまたはそれに含まれていないポリラクチド(PLA)の解重合とも呼ばれるケミカルリサイクル方法に関する。
【0002】
今日、環境安全性の観点で使用されているバイオポリマーの拡大を促進するために、使用済みのこれらの製品の取り扱いの実行可能性を説明できることが必要となっている。本発明の目的は、既存の解決策と異なるオリジナルな解決策を提供することによって、ポリラクチド(PLA)の場合のこれらの問題に対処することにある。
【0003】
技術の現状
使用済みのプラスチック材料の取り扱いは、市販のプラスチック材料の将来性に関する非常に重要な要因である(たとえば、PVCは、効率的なリサイクルシステムがないため、プラスチックボトルの市場から遠ざけられている)。再生可能でないプラスチック(石油化学からのもの)と同様に、それらの耐用命数の終わりの経路がより多くても、この耐用命数の終わりの取り扱いに関する限り、バイオポリマーは技術的な挑戦課題に直面する。特に、非常に大きな体積が問題となる場合、財市場で生じる。これが、この問題に対処することが重要である理由である。
【0004】
現在、使用済みの廃棄物を取り扱うことのできる様々な方法、たとえば投機、焼却、コンポスト化、機械的なリサイクル、またはケミカルリサイクルが既に知られている。
【0005】
投棄の場合、汚染物質、主にはメタンおよび二酸化炭素、さらには農薬、重金属および添加物が、投棄所での分解によって放出されることが分かっている。廃棄物の投棄が長らく現実的で安価な解決策であったが、上述の汚染物の放出の他に、廃棄物が生じた浸出液およびガスを分解し続けることが認められてきており、最長で数十年間の期間にわたって放出および処理し続けなければならない。しかしながら、バイオポリマーの場合、分解生成物にあまり毒性がないので、汚染物質は重要性が低い。それでも、時々十分に長い分解時間を検討すべきであり、これは処理すべき体積が重要な場合の問題でありうる。
【0006】
この発明の目的は、廃棄物の体積をそれをガス(CO2、H2O、SOx、HCl、NOx、...)に変換することによって削減することにあり、それにより、焼却炉付近のガスの組成が変化し、高濃度の毒性物質を含有することが避けられない。バイオプラスチックの場合、CO2排出物はさほど問題ではない。なぜなら、炭素は化石起源でなく、それゆえに、総合収支はニュートラル、またはプロセスによる排出物(バイオプラスチックへのバイオマス)を考慮に入れると僅かに正であるからである。対照的に、他の排出物は問題が大きく、その結果、空気の組成の変化を不可避的にもたらす。よい設計およびよい運転をすれば、焼却炉はその排出物を減らすことができるが、この技術は投資および経費の両面で極めて費用がかかる。しかしながら、焼却炉は、投棄に代わる策を提供しかつ発電を可能にし、実際、ボイラーは、熱を回収でき、場合により電気および熱エネルギーとしての価値をそれに付与できる(コジェネレーション)。過去、焼却炉は重大な汚染物質源であったため、それらは、「焼却プラント」の代わりに、「熱的価値付与センター」およびさらには「エネルギー価値付与プラント」と呼ばれていた。しかしながら、新たな設備を設置する申請を行うのはますます複雑になっている。なぜなら、周辺に住む人々は、彼らの住居の近くに焼却炉があることをこれ以上許容しないからである。
【0007】
バイオポリマーの重要な性質である生分解性は、必要な用心をすれば、環境に影響を与えないコンポスト化により有利に価値付与できるが、出発材料から最終段階への発展は、多数の外因(材料の寸法、絶対湿度、換気、pH、細菌叢、炭素−窒素比など)に依存し、これらは時々その使用を制限する。さらに、生分解性ポリマーを含有する製品(食品包装、食品袋...)を識別および仕分けするのが困難なことは、仕分け時に間違えを起こした場合に、コンポストの品質を低下させることがある。さらに、PLA品質(優れた耐熱性、優れた機械的性質...)を向上させることによって、分解が遅くなる。
【0008】
機械的なリサイクルも知られており、たとえばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)の場合に使用されている。これは、市場性の高い製品を製造するために、材料を単独でまたは未使用材料と混合した状態で再溶融させることにある。廃棄物は洗浄され、乾燥させられ、結晶化され、粉砕され、その後、市場に出されるであろう最終製品または粒状物に直接変えられる。この経路はPLAにも適用可能である。しかしながら、使用する温度が高いので、PLAの場合および任意の他のポリマーの場合のどちらでも、ポリマーの分解がしばしば認められ、その機械的性質の損失が伴う。そのため、この製品は、あまり高貴でない用途に向けられるか、または未使用材料に混合されうる。それゆえに、このタイプのリサイクルは無限ではない。さらに、プラスチックが異なる組成のものであった場合、リサイクルは問題を引き起こす。なぜなら、これらは一般に互いに適合性がないからである。実際、変態温度は様々であり、複数種のプラスチックを混合することは、最終製品の機械的特性の品質の低下をもたらす。
【0009】
これら様々な耐用命数の終わりでの技術は理想的なものではない。なぜならプラスチック材料は、ベースの構成要素(モノマー)へとリサイクルされず、そのため直接および永久的に用いられる。さらに、これらの方法は、PLAに対して実行可能ではあるが、それは材料流がもっぱらPLAだけからなる場合のみである。実際、異種ポリマーがPLAに混入している場合、上述の種々の技術は難しくなる。たとえば、PETが混入している場合、後者はコンポスト中で分解しない。PVCが混入している場合、焼却は可能だが、有毒物質の放出のせいで高価なフィルタを使用する必要がある。ケミカルリサイクルに関しては、得られた製品は、それがポリマーブレンドから構成されていれば、完全に変性される。
【0010】
もう1つのリサイクル経路は、ケミカルリサイクルとしても知られている。理想的なリサイクル経路としてよく引用されるが、それは、化学的プロセス、たとえば:炭化水素への熱または触媒分解、モノマーへと変換する熱分解...などによってポリマーを変えることにある。PET用のケミカルリサイクルシステムは知られており、これは、解糖としても知られているジオールによるその解重合である。分子鎖が破断し、得られる生成物はテレフタル酸およびエチレングリコールである。それでも、この解重合中のいくつかの分解機構は、材料の不可逆的構造変化をもたらし、これは、連続的な変態における障害の原因となりうる。モノマー、乳酸またはその誘導体を回収するためのPLAケミカルリサイクルシステムも企図されうる。いくつかの特許が、たとえば、ヒドロキシ酸またはそのエステルが同時に生じるポリ(ヒドロキシ酸)の高速加水分解(Brake, L.D.; Subramanian, N.S. 米国特許第5,229,528号, 1993年)または加溶媒分解(Brake, L.D. 米国特許第5,264,614号, 1993年;Brake, L.D. U.S. 米国特許第5,264,617号, 1993年)を特許請求の範囲に記載している。これらの既知の方法は95%に近い収率を達成することを可能にするが、これは数多くの工程(エステル化、それに続く蒸留。これらの工程は3回繰り返される)を行うことを必要とする。しかしながら、このような処理は特に蒸留工程中の深刻なケーキングのリスクを有することが分かっており、これは工業規模でのこの方法の移行を不確実なものにする場合がある。また、アルコールを溶解させることが容易な作業でないことも分かっている。実際、たとえばエタノールの場合、PLAを78℃(エタノールの沸点)を超える温度で連続的に(およびたとえば大気圧で)添加することは可能でない。いくつかの緻密化されていない均質物の低い密度のせいで、これはPLA濃度を制限する。さらに、ケミカルリサイクルフローに供給されるPLAは少量の水を一般に含有する。この水は、生成したエステルの加水分解を引き起こしうるし、それにより乳酸を放出しうる。この乳酸の生成は、目的とする品質が加溶媒分解に続く精留での蒸留による精製を必要とする場合に非常に厄介である。実際、蒸留は任意に行われなくてもよい。なぜなら、乳酸の存在が媒体のオリゴマー形成を促進するからである(ベルギー国特許第20080424号 “Procede continu d’obtention d’un ester lactique”)。付加脱離環化機構によってラクチドの生成をもたらすPLAの熱劣化(たとえば熱分解)も知られている(F.D. Kopinke, M. Remmler, K. Mackenzie, M. Moeder, O. Wachsen, Polymer Degradation and stability, 53, 329-342, 1996年)。しかしながら、これらの方法はモノマー収率が低い。さらに、これらの様々な技術はしばしば高温および/または高圧で行われ、得られる乳酸の化学的および光学的劣化をもたらす。
【0011】
それゆえに、PLAを解重合して、それをベースモノマーとしてまたはその1つの誘導体としてリサイクルできるようにする、単純で効率的でかつ変性をもたらさない方法についての必要性が存在する。
【0012】
発明の簡単な説明
本発明の1つの目的は、PLAを、他のポリマーのブレンドに含まれていてもまたは含まれていなくても、穏やかな条件下での加アルコール分解によって乳酸またはその誘導体、たとえば乳酸エステルへとケミカルリサイクルまたは解重合する方法であって、モノマーを高品質および高収率で生成し、生産性を高め、CO2排出量を減らし、エネルギーコストを削減することによる方法を提供することにある。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、PLAを、その解重合を妨げずおよびさらなる精製工程を強いないPLA溶媒中に溶解させることにある。
【0014】
本発明の1つのさらなる目的は、必然的にPLAを含有するポリマーブレンドのケミカルリサイクル方法であって、ブレンドをPLA用の溶媒に溶解させて、固体不純物、たとえばPLA以外の溶解していないポリマーをまず分離し、次にPLA溶液に加アルコール分解を施して、PLAをモノマーまたはその誘導体に変える方法を提供することにある。
【0015】
本発明の方法の1つの目的は、PLAを溶解させるための溶媒として乳酸エステルを使用してこの方法を非常に単純化させると共に、ポリ乳酸のケミカルリサイクル方法の全ての工程によい影響を与えることにある。
【0016】
発明の詳細な説明
出願人は、PLAまたはPLAを含有するポリマーブレンドを乳酸エステル中に溶解させることを予め行っておけば、このような解重合法を実施することが著しく改善されうることを発見した。
【0017】
本発明の方法は、連続的に以下の工程を含む;PLAまたはPLAを含有するポリマーブレンドの第1の粉砕を行い、乳酸エステルを使用して、PLAを溶解させ、同時に固体不純物たとえばPLA以外の溶解していないポリマーを分離させ、次に、このようにして得た溶液に加アルコール分解による解重合を施し、最後に、得られた乳酸またはその誘導体を精製して、通常の市場たとえば産業的利用のまたはさらにはPLA重合の特別な要求を満たす製品を得る。
【0018】
1.PLA廃棄物の粉砕
本発明の範囲内では、このケミカルリサイクル中に使用する原材料は、製造ユニットでの不良製品、変換ユニットにおける製造により生じた屑、さらには使用済みの最終製品から得ることができる。まず、PLAまたはPLAを含有するポリマーブレンドの粉砕を、当業者に知られているいずれかの技術、たとえば、剪断粉砕、衝撃粉砕、乾式粉砕または湿式粉砕にしたがって行う。この工程の目的は材料の比表面積を増やして、0.05ないし1.4t/m3の重量/体積比を得ることにあり、この比は、処理工程を容易にしかつ後段の溶解工程を促進することを可能にし、この方法をより容易に産業化可能にする。本発明の範囲内で、1回以上の粉砕工程を企図することができ、それらの回数は出発製品に依存するが、これらの運転のコストおよび目的とする最終造粒にも依存する。特に水またはたとえばソーダ、カリもしくは洗浄剤の溶液...などの他の溶液での洗浄を行うことによって、PLA流またはPLAを含有するポリマーブレンドを前処理または後処理することもできる。他の処理、たとえば手動選別または自動(たとえば磁気)分離が企図されうるが、これら全ては、最終製品の品質を変えうるまたはその精製を複雑にしうると考えられる廃棄物を除去することを目的とする。処理されるPLAまたはPLAを含有するポリマーブレンドからの廃棄物が、溶解を開始するのに好適な表面積を有するならば、本発明の方法から逸れることなしにこの粉砕工程を取り除くことができることも明らかである。
【0019】
この粉砕工程に続いて、行う場合には、材料を圧縮して、処理および物流の工程を改善するための緻密化工程を企図してもよい。
【0020】
2.PLAまたは粉状PLAを含有するポリマーブレンドの溶解
次に、粉砕されたまたは粉砕されていない、および圧縮されたまたは圧縮されていないPLAを含有するポリマーブレンドを、解重合工程に先立って溶解させる。PLAまたはPLAを含有するポリマーブレンドの形態(重量/体積比)が許すのであれば、先立つ粉砕なしにこの溶解を行うこともできる。実際、このタイプの流れを処理することに関する問題の1つは、粉砕工程のあとであっても、再処理した様々な材料の比質量における違いにある。この溶解の主たる利点は、処理される材料の低い密度(識別工程を行った場合でも)に関する問題を排除し、それにより単位体積当たりの生産性の向上をもたらすことが知られている。さらに、使用する溶媒は、後段の工程で扱い難いものであってはならない。
【0021】
まず、これは、特定の別の後段の工程のために、PLA以外のポリマーを容易に分離することと、それらを回収することとを可能にする。
【0022】
驚くべきことに、PLAのこの溶解を乳酸エステル中で行うことにより、リサイクルされるまたは解重合される材料の収率を下げることなく、さらなる後段での分離工程を回避できることが分かった。これらは、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸ヘキシル...などのエステル、およびより一般的には乳酸アルキルエステルであり、そのアルキル基は1ないし12個の炭素原子を有する。また、乳酸エステルでの溶解は、このエステルから生じるアルコール中での可溶化中に達するそれよりも高い温度で行うことができるという利点を有することも分かった。実際、エステルの沸点はアルコールのそれよりも一般に高く、より多くのPLAを溶解させることを可能にする。さらに、この溶解は、十分に早く、数分のうちに行われる。
【0023】
出願人は、この処理によって、PLAの体積容量およびそれにより処理される材料の量を倍にできることを発見した。この溶解は、後段の工程に先立ってまたはそれと同時に行うことができ、最高でPLAの融点までの様々な温度で行うことができる。また、出願人の企業は、PLA中に存在している水をこの溶解工程中に除去することが可能であることも強調した。実際、本発明の方法において推奨される乳酸エステルの沸点を鑑みると、溶解は100℃を超える温度および大気圧で行うことができ、水は凝縮によって容易に除去できる。PLA流に異種ポリマー(PET、PE、PVC、PPまたは任意の他の一般的なポリマー)が混入している場合、加熱または当業者に知られている任意の他の手段と共に、必要に応じてろ過によって、後者を除去することができる。
【0024】
実際、乳酸エステルは、必要とされる処理時間では、上述のポリマーの溶解を可能にしない。
【0025】
3.PLAのケミカルリサイクル
この溶解のあと、後段の工程は、PLAを解重合して、それをそのベースのモノマー(乳酸)またはその1つの誘導体に変換することにある。この作業を、乳酸またはその1つの誘導体の分解を回避するのに十分に穏やかな条件下で行うことが好ましい。溶解したPLAを提供することは、その融点を超えるという不可避的な負担を避けることを可能にし、それにより、より穏やかな条件のおかげで、分解反応を抑えることを可能にし、それにより100%に近い収率を得ることを可能にする。
【0026】
また、出願人の企業は、PLAの解重合を、80ないし180℃、好ましくは110ないし160℃、およびより好ましくは120ないし140℃の温度での、減圧下または大気圧ないし10barもしくはそれ以上の圧力下での加アルコール分解によって行うことができることが分かった。このPLA加アルコール分解工程は、ポリラクチドのエステル結合を破断させ、その後カルボニル基のプロトン付加および求核攻撃を行うことによって、乳酸エステルを生成することを可能にする。カルボニル基のプロトン付加は、エステル交換触媒の使用によって行われ、この触媒は、固体でもよいしまたは液体でもよく、ルイス酸タイプ、たとえば錫オクトアート、錫ラクタート、アンチモンオクトアート、亜鉛オクトアート、APTS(パラトルエンスルフォン酸)などでもよいし、または好ましくは塩基性の、グアニジン族の1種、たとえばTBD(トリアザビシクロデセン)およびその誘導体でもよい。求核攻撃に関しては、それはアルコールを使用して行われる。アルコールの量は反応速度論に影響を与えるが、後段の精製工程中に多すぎる量のアルコールを除去することを回避できるように妥協することが重要である。本発明の範囲内で、1ないし12個の炭素を含み、溶解のために使用するエステルに理想的に対応するアルコールを使用してもよく、たとえば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール、2−エチルブタノール、ヘキサノール...などである。還流を処理することによって、PLA中に存在している水をこの加アルコール分解工程中に除去することも可能である。ディーンスタークタイプシステムを使用することは、水とアルコールとの不均質共沸混合物を形成することによる除去のためにさらに推奨されうる。不均質共沸混合物の生成によって水が除去される場合には、アルコールを補充することも有用である。混入物を含んだアルコールは、当業者に知られている任意の技術、たとえばモレキュラーシーブス、浸透気化法...などによって処理できる。
【0027】
本発明の特定の実施形態の1つは、乳酸エステル中での溶解をしながら、PLA中に潜在的に存在している水分を蒸発によって除去して、生じるであろう乳酸エステルの加水分解を回避することにある。同一の分子によって触媒活性される乳酸の放出およびオリゴマー形成はこのようにして回避される。
【0028】
本発明の好ましい実施形態は、乳酸エステル中での溶解の間に、PLA中に潜在的存在している水分を蒸発によって除去することにある。その後、この方法の後段の工程の間の酸度に関連するあらゆる問題を抑えるために、加アルコール分解反応が、塩基性触媒の存在下で、水を含まない溶液で行われる。
【0029】
4.加アルコール分解により生成した乳酸エステルの精製
本発明のこの部分は、PLA加アルコール分解中に得られた乳酸エステルを精製することにある。なぜなら、製品の純度は、狙いとする用途に応じて可変的でありうるからである。市場基準を満たす高品質グレードを達成することができる。任意の精製技術、たとえば固/液分離、蒸留(精留...)、結晶化、抽出、樹脂に通すこと、または熱に敏感な分子を処理することを可能にする当業者に知られている任意の他の方法を企図できる。
【0030】
5.乳酸エステルの加水分解
本発明では、加アルコール分解中に得られる乳酸エステルを加水分解して乳酸にすることも企図できる。精製工程のあと、加水分解を行うために乳酸エステルを回収する。次に、これに、樹脂に結合しているまたはそれに結合していない触媒の存在下または触媒の非存在下で、水をブレンドする。好ましくは、これは結合しているであろう。推奨される水の量は、得られる乳酸の濃縮中のエネルギー消費を減らすために、最高の収率にとっての最小限とする。この加水分解は、大気圧でまたは減圧下で行うことができ、また、反応蒸留、ピストンフローリアクタの使用...などの当業者に知られている任意の方法によってバッチ式でまたは連続的に行うこともできる。反応は以下のとおりである。
【化1】
【0031】
反応の平衡を乳酸の生成の方向に移動させるために、アルコールの抽出を行うことが必要である。
【0032】
回収した乳酸は、産業的利用の規格または市場からのその他を満たす。いくつかの場合において、それはPLAを再形成するのに使用できる。
【0033】
以下に非限定的な例として挙げる本発明の他の詳細および特徴は、いくつかの考えられる実施形態としての説明からより明らかになる。
【0034】
例1:乳酸エステル中に溶解させ、その後加アルコール分解を行うことによる、PLAカップのリサイクル
1.500kgの使用済みPLAカップを、ナイフグラインダを使用して粉砕した。この工程により、処理される容積の密度を増加させた。実際に後者は1.14から0.25kg/lに変わった。次に、この均質物を、1.000kgのLEt中に130℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解の終了は、最後の添加の5分後に認められる。PLA流中に潜在的に存在する水を除去するために、130℃および大気圧での攪拌を30分間続けた。合計で、凝縮中に、11mlの水を回収した。
【0035】
次に、得られた溶液を、加圧下での作業を可能にするガラスリアクタ内に移した。次に、1.917kgのエタノールを、15gのTBDと共に添加する。次に、解重合反応を2.6ないし2.8barの間で行った。得られた最高温度は138℃であるため、PLAの融点よりも低いこの温度は、製品の分解を回避することを可能にする。反応が終わったら、製品を分析した。結果を表1に示す。
【表1】
【0036】
次に、反応生成物をバッチ式蒸留によって精製した。この蒸留中、2つのステップが認められた:
−フェーズ1:カラムヘッドでのエタノールの回収;
−フェーズ2:乳酸エチルの回収(表2で説明する)。
【0037】
ほぼ全ての溶液が蒸留された。蒸留の残留物は、関連する総重量のわずか2%に相当し、主に塗料残留物、汚れおよび他の不純物からなる。
【表2】
【0038】
このような実施は、1回の反応工程および単純な精製で、予想される乳酸エチル(溶解用の溶媒および反応生成物)の98%を回収することを可能にし、これは解重合反応によって得られるLEtの約97%の回収率に相当する。
【0039】
例2:乳酸エステル中での溶解
この例の範囲内で、粉状PLAを、130℃のオーブン内で、大気圧でおよび攪拌せずに、様々な乳酸エステル中、すなわち、乳酸メチル、乳酸エチルおよび乳酸n−ブチル中に溶解させた。これらの溶解の結果を表3に示す。
【表3】
【0040】
乳酸エステル中またはそれらのそれぞれのアルコール中でのPLAの大気圧での可溶化を以下の例で比較した。
【表4】
【0041】
乳酸エチルの場合において、攪拌なしの大気圧での4時間の期間後に、様々なエステル/PLA比および様々な温度を調べて比較した。結果を表5に示す。
【表5】
【0042】
試験8および9をさらに2時間続けた。試験8の全てのPLAは溶解する。逆に、試験9のPLAの10%は溶解しなかった。
【0043】
粉状繊維(密度=0.22)の溶解は、工業条件に近い条件(攪拌、より大量な材料、大気圧で、...)下で行った。1.5kgのPLAを1kgの乳酸エチル中に130℃で溶解させた。最後の添加から5分後に、溶解の終了が認められる。得られた溶液は約1.25の密度を有していた。
【0044】
また、PLA流に混入しうる様々のポリマーを乳酸エチル中に、130℃で、大気圧で、4時間かけておよび攪拌なしで溶解させることを試みた。結果を表6に示す。
【表6】
【0045】
前の例は、PLAに混入するポリマーを乳酸エステル中に溶解させることによって分離することが可能であることを証明しているようである。これを確認するために、これらのポリマーのうちの1種(10%)が混入しているPLAの乳酸エチル中での溶解を、130℃で、4時間かけておよび攪拌なしで行った(ポリマー/LEt質量比=0.5)。次に、不溶物をろ過によって回収し、次に水で徹底的に洗浄し、乾燥させて秤量する。結果を表7に示す。溶解の試みの前後での僅かな質量の差は、使用した方法の精度のおかげである。
【表7】
【0046】
例3:乳酸n−ブチル中での溶解、およびその後のn−ブタノールによる加アルコール分解反応
600gの粒状および乾燥したPLAを600gの乳酸n−ブチル中に溶解させた。溶解は、周囲圧力および130℃で、3リットルのフラスコ内で行った。少量の水を含有するPLAを模するために、30gの水をさらに添加した。得られた溶液に、1233gのn−ブタノールおよび6gのTBDを添加して、加アルコール分解反応を行った(ブタノール/PLAモル比:2)。この反応を、20時間かけて、周囲圧力および120℃(PLAをこのエステル中に可溶化させるのに十分であり、穏やかであって、生成物の分解を回避することを可能にする温度)で行った。反応中、水およびブタノールによって生じる不均質共沸混合物の凝縮によって水を除去する。ディーンスタークタイプシステムを使用して、ブタノール相をフラスコに再注入する。その後、加アルコール分解の結果を分析し、結果を表8に示す。
【表8】
【0047】
次に、反応生成物を蒸留して、生成した乳酸ブチルを回収した。反応生成物中の非常に低い水および酸の濃度のおかげで、蒸留は非常に首尾よく進行した。乳酸エチル相を分析し、結果を表9に示す。
【表9】
【0048】
このような実施は、1回の反応工程および単純な精製で、97%を超える乳酸ブチル(溶解用の溶媒および反応生成物)の回収を可能にし、これは解重合反応によって得られる乳酸エステルの約96%の回収率に相当する。
【0049】
例4:水の除去なしでの乳酸エチル中での粒状PLAの溶解、およびその後のエタノールの存在下での加アルコール分解
ガラスリアクタ内に、還流しながら1.4kgの乳酸エチル中に予め溶解させておいた1.204kgの粒状使用済みPLAカップを入れる。次に、1.538kgのエタノールと12gのTBDとを溶解したPLAにさらに添加する。次に、この内容物を24時間加熱して、2.6ないし2.8barの圧力を得る。得られた最高温度は138℃であり、PLAの融点よりも低いこの温度は生成物の分解を回避することを可能にする。反応が終わったら、生成物を分析した。結果を表10に示す。得られた水および乳酸の含有量が例1で認められたそれらよりも著しく高いことがはっきりとわかる。
【表10】
【0050】
次に、反応生成物を蒸留した。この蒸留中、3つの相が認められ、第1はカラムヘッドで回収されるエタノールである。次に、乳酸エチルが得られる。この相は、第3工程において、揮発性物質のオリゴマー形成放出によって乱され、そのため、純乳酸エチルの回収が妨げられた。乳酸エチル相を分析し、結果を表11に示す。
【表11】
【0051】
このような実施は、我々に、理論的に考えられる乳酸エチルの61%の回収しか可能にしない。この例は、PLA中に存在しうる水分を制御することの重要性を示す。
【0052】
例5:乳酸へのエステルの加水分解
例4で得られた乳酸ブチルを加水分解して、そこから乳酸を回収した。これを為すために、500gの得られた乳酸ブチル相を、123gの水と共に1リットルのフラスコ内に入れた(水/LButモル比:2)。この反応を、105℃および周囲圧力で行った。乳酸放出への反応を促進するため、放出されたアルコールを、水およびブタノールによって生じる不均質共沸混合物の凝縮によって除去する。水を、ディーンスタークによってブタノールから分離させ、反応フラスコに再注入する。20時間後にほとんど全ての乳酸ブチルが加水分解する。得られた生成物は、市場からの品質基準を満足する。結果を表12に示す。
【表12】
【0053】
例6:乳酸エチル中でのポリ(エチレンテレフタレート)(2%)が混入した粉状PLAの溶解、およびそれに続くエタノールの存在下での加アルコール分解反応−溶解後の混入物の除去
1.204kgの粉状の使用済みPLAカップに、2%、すなわち24gのポリ(エチレンテレフタレート)を混入させた。次に、このブレンドを、130℃で、大気圧で、および攪拌しながら、1.4kgの乳酸エチル中に溶解させた。最後の添加から5分後に、溶解の終了が認められた。PLA流中に潜在的に存在する水を除去するために、130℃および大気圧での攪拌を30分間続けた。合計で、9mlの水を凝縮により除去した。次に、熱い状態で溶液をろ過し、溶解していないPETを回収した。この作業は、我々に、混入したポリマー全て(すなわち24g)の回収を可能にする。
【0054】
ろ液を、加圧下での作業を可能にするガラスリアクタ内に移した。1.538kgのエタノールを、12gのTBDと共に添加した。
【0055】
解重合反応を2.6ないし2.8barの間で行った。得られる最高温度は136℃であるので、PLAの融点よりも低いこの温度は生成物の分解を回避するのを可能にする。反応が終わったら、生成物を分析した。結果を表13に示す。
【表13】
【0056】
例7:乳酸エチル中でのポリ(プロピレン)(1%)が混入した粉状のPLAの溶解、およびそれに続くエタノールの存在下での加水分解反応−溶解後のPPの除去
1.204kgの粉状の使用済みPLAカップに、1%、すなわち12gのポリ(プロピレン)を混入させた。次に、このブレンドを、130℃で、大気圧でおよび攪拌しながら、1.4kgの乳酸エチル中に溶解させた。最後の添加の5分後に、溶解の終了が認められた。PLA流中に潜在的に存在する水を除去するために、130℃および大気圧での攪拌を30分間にわたって続けた。合計で、10mlの水が凝縮により除去された。
【0057】
次に、得られた溶液を、加圧下での作業を可能にするガラスリアクタに移した。次に、1.538kgのエタノールを、12gのTBDと共に添加した。
【0058】
解重合反応を、2.6ないし2.8barの間で行った。得られる最高温度は137℃であるので、PLAおよびPPの融点よりも低いこの温度は生成物の分解を回避することを可能にする。反応が終わったら、混入していたポリマーを回収するために、加アルコール分解の結果物をろ過した。リアクタに最初に導入された12gのPPが回収された。ろ液を分析し、結果を表14に示す。
【表14】
以下に、本願発明の実施態様を付記する。
[1]必然的にPLAを含むポリマーブレンドをリサイクルする方法であって:a)前記ポリマーブレンドを、0.05ないし1.4t/m3の重量/体積比が得られるまで粉砕するおよび/または圧縮する工程と;b)粉砕したおよび/または圧縮した前記ポリマーブレンドをPLAの溶媒に溶解させ、PLAを他のポリマーから分離する工程と;c)別の後段の処理のために、溶解していないポリマーを回収する工程と;d)PLA/溶媒の重量比が0.5ないし3.0であるPLA溶液を回収し、それに80ないし180℃の温度および0.05ないし10barの圧力での触媒的加アルコール分解反応を施して、PLAを乳酸エステルに変える工程と;e)このようにして回収した前記乳酸エステルを精製する工程とを含むことを特徴とする方法。
[2]前記ポリマーブレンドを乳酸エステル中に溶解させることを、作業圧力での水の沸点と前記エステルの沸点との間の温度で、0.5ないし3.0、好ましくは0.75ないし2.0のPLA/乳酸エステル重量比を得るのに十分な期間にわたって行うことを特徴とする[1]に記載の方法。
[3]前記作業圧力は0.05ないし10barであることを特徴とする[2]に記載の方法。
[4]前記乳酸エステルは、乳酸アルキルから選択され、そのアルキル基は1ないし12個の炭素原子を含むことを特徴とする[2]に記載の方法。
[5]前記乳酸アルキルは、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチルまたは乳酸ヘキシルから選択されることを特徴とする[4]に記載の方法。
[6]前記触媒的加アルコール分解反応を塩基性触媒の存在下で行うことを特徴とする[1]ないし[5]に記載の方法。
[7]前記塩基性触媒は、トリアザビシクロデセンなどのグアニジンから選択される[6]に記載の方法。
[8]PLAを、それをモノマーまたはその誘導体へ解重合することによってリサイクルする方法であって、PLAを粉砕および/または圧縮することと、それを溶媒中に溶解させることと、溶解したPLAを触媒的に加アルコール分解して乳酸エステルにすることと、このようにして回収した前記乳酸エステルを精製することとを含み、PLAの溶解を、乳酸エステル中で、作業圧力での水の沸点と前記乳酸エステルの沸点との間の温度で、0.5ないし3.0、好ましくは0.75ないし2.0のPLA/乳酸エステル重量比を得るのに十分な期間にわたって行うことを特徴とする方法。
[9]前記作業圧力は0.05ないし10barであることを特徴とする[8]に記載の方法。
[10]前記乳酸エステルは、乳酸アルキルから選択され、そのアルキル基は1ないし12個の炭素原子を含むことを特徴とする[8]に記載の方法。
[11]前記乳酸アルキルは、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチルまたは乳酸ヘキシルから選択されることを特徴とする[10]に記載の方法。
[12]前記触媒的加アルコール分解反応を塩基性触媒の存在下で行うことを特徴とする[8]ないし[11]に記載の方法。
[13]前記塩基性触媒は、トリアザビシクロデセンなどのグアニジンから選択される[12]に記載の方法。