特許第5661778号(P5661778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5661778EUVリソグラフィに使用されるミラー基板用の高シリカ含有量を有するチタンドープガラスのブランク及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661778
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】EUVリソグラフィに使用されるミラー基板用の高シリカ含有量を有するチタンドープガラスのブランク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20150108BHJP
   C03C 3/06 20060101ALI20150108BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20150108BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   C03B20/00 K
   C03B20/00 F
   C03B20/00 G
   C03B20/00 E
   C03C3/06
   G02B1/00
   G02B5/08 C
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-531347(P2012-531347)
(86)(22)【出願日】2010年9月28日
(65)【公表番号】特表2013-506614(P2013-506614A)
(43)【公表日】2013年2月28日
(86)【国際出願番号】EP2010064317
(87)【国際公開番号】WO2011039159
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年1月21日
(31)【優先権主張番号】102009043680.4
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599089712
【氏名又は名称】ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】クエーン,ボド
【審査官】 大工原 大二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−323601(JP,A)
【文献】 特開2007−109971(JP,A)
【文献】 特表2008−514971(JP,A)
【文献】 特表2008−505827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00− 5/44
C03B 8/00− 8/04
C03B 19/12−20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVリソグラフィに使用されるミラー基板(21;31)用のチタンをドープした高珪質ガラスのブランク(1;20;30)を製造する方法であって、該ブランクが、金属で被覆されるように指定される外面形状を有する表面領域(DC)を有し、前記表面領域が、前記ミラー基板(21;31)の目的の使用中に高い応力を受ける帯域として規定され、前記方法が、
(a)容積「V1」を有し、かつ過大なサイズを伴って前記外面形状を包含する寸法を有する、均一性の高いチタンドープガラスの前部体(3;23’;33’)を作製する工程と、
(b)容積「V2」を有する、チタンをドープした石英ガラスの支持体(2;22’;32’)を作製する工程であって、該支持体が、前記前部体(3;23’;33’)よりも均一性の低い一体構造のガラスブロックとして構成される工程と、
(c)複合体を形成するように、前部体(3;23’;33’)と支持体(2;22’;32’)とを接合させる工程と、
(d)前記ミラー基板用ブランク(1;20;30)を得る、前記複合体を処理する工程と、
を含み、前記前部体(3;23’;33’)の前記作製が、前部体ブランクを形成するように、ケイ素含有化合物の火炎加水分解によって得られるロッド状の出発基体のねじり加工を含む均一化プロセスを含み、前記出発基体を、前記造形プロセス中、2つの把持具の間に把持し、或る帯域において溶融温度まで加熱することによって、前記加熱された帯域を、前記2つの把持具の互いに対する相対的な移動によって操作して、実質的に円筒形のねじれた基体を形成する、EUVリソグラフィに使用されるミラー基板用のチタンをドープした高珪質ガラスのブランクを製造する方法。
【請求項2】
前記円筒形のねじれた基体に、ねじり加工による更なる均一化プロセスを施し、3方向に均一化されるねじれた基体へと造形することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記前部体(3;23’;33’)の前記作製が、均一化された出発基体を形成するように、前記基体を軟化させると共に、前記円筒の縦軸に対して横方向の力の作用下で前記出発基体の前記石英ガラスが流出する加熱されたモールド内へと、前記基体を流出させることによる、円筒形の出発基体の造形を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ねじれた基体若しくは前記均一化されたねじれた基体、又は前記均一化された出発基体からそれぞれ切削することによって、少なくとも1つの前部体(3;23’;33’)を得ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記前部体(3;23’;33’)の前記作製が、合成石英ガラスのプリフォームの生産と、切片を前記プリフォームから選択する選択方法工程とを含み、前記前部体(3;23’;33’)をそれらから切り出すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記支持体(2;22’32’)の前記作製が、ケイ素含有化合物の火炎加水分解によって得られるロッド状の支持体/出発基体を均一化してねじれた基体とすることを含み、前記支持体/出発基体を、造形中、2つの把持具の間に把持し、或る帯域において溶融温度まで加熱することによって、前記加熱された帯域を、前記2つの把持具の互いに対する相対的な移動によって操作して、実質的に円筒形のねじれた基体を形成し、前記支持体(2;22’;32’)を、前記ねじれた基体の前記石英ガラスから得ることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法工程(c)による前記接合プロセスが、前記前部体(3)の平坦な接触面(6)と前記支持体(2)の平坦な接触面(6)とを光学的な接触によって接合させて、互いに溶接する、接合工程を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法工程(c)による前記接合プロセスが、前記支持体(22’)上に位置する前記前部体(23’)を炉(25)内で軟化させ、前記支持体と一緒に変形させて、該プロセス中で少なくとも一部を前記支持体(22’)内へと沈入させる、接合工程を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
方法工程(c)による前記接合プロセスが、前記前部体(33’)の接触面(34)と前記支持体(32’)の接触面(34)とを軟化させると共に互いに対して加圧し、前記接触面(34)の少なくとも一方が外側に湾曲した表面を有する、接合工程を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複合体をアニールすることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
「V2」が、「V1」の少なくとも2倍大きいことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
EUVリソグラフィに使用されるミラー基板(21;31)用の、チタンをドープした高珪質ガラスからなるブランクであって、一定の外面形状を有し、かつ金属で被覆されるように指定され、かつ前記ミラー基板(21;31)の目的の使用中に高い応力を受ける帯域として規定される表面領域(DC)を含み、前記ブランク(1;20;30)が、容積「V1」を有し、かつ過大なサイズを伴って前記外面形状を包含する寸法を有する、均一性の高いチタンドープガラスの前部体部分(3;23;33)と、容積「V2」を有する、チタンをドープした石英ガラスの支持体部分(2;22;32)であって、該支持体部分(2;22’;32’)が、前記前部体部分(3;23;33)よりも均一性の低い一体構造のガラスブロックとして構成される、支持体部分(2;22;32)とを有する溶融複合体として存在し、
前記前部体部分(3;23;33)が、平均値からの最大偏差が1%未満であるチタン濃度分布を示すガラスからなり、
前記支持体部分(2;23;32)が、平均値からの最大偏差が5%未満であるチタン濃度分布を示すガラスからなり、
前記前部体部分(3;23;33)が、前記支持体部分(2;22;32)内に部分的に埋設される
ことを特徴とする、EUVリソグラフィに使用されるミラー基板用の、チタンをドープした高珪質ガラスからなるブランク。
【請求項13】
前記前部体部分(3;23;33)が、3方向に脈理を含まないガラスからなることを特徴とする、請求項12に記載のブランク。
【請求項14】
前記支持体部分(2;22;32)が、1方向に脈理を含まないガラスからなることを特徴とする、請求項12又は13に記載のブランク。
【請求項15】
前記前部体部分(3;23;33)が、DIN 58927 2/70に準拠して、泡等級2又はそれよりも良い要求を満たすガラスからなることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載のブランク。
【請求項16】
前記支持体部分(2;22;32)が、DIN 58927 2/70に準拠して、泡等級2又はそれよりも悪い要求を満たすガラスからなることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか一項に記載のブランク。
【請求項17】
前部体部分(3;23;33)及び支持体部分(2;22;32)が、同一の組成を有するガラスからなることを特徴とする、請求項12〜1のいずれか一項に記載のブランク。
【請求項18】
「V2」が、「V1」の少なくとも2倍大きいことを特徴とする、請求項117のいずれか一項に記載のブランク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の外面形状を有し、かつ金属で被覆されるように指定され、かつミラー基板の目的の使用中に高い応力を受ける帯域として規定される表面領域(D)を含む、EUVリソグラフィに使用されるミラー基板用の、チタンをドープした高珪質ガラスのブランクに関する。
【0002】
さらに、本発明は、EUVリソグラフィに使用されるミラー基板用の、チタンをドープした高珪質ガラスのかかるブランクを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
EUVリソグラフィでは、マイクロリソグラフィ用投影機を用いて50nm未満の線幅を有する高度集積構造物が製造される。軟X線とも称される極紫外(EUV)光は、ここで15nm未満の波長で使用される。投影機は、高珪質の二酸化チタンドープガラス(以下、「チタンドープガラス」又は単に「ガラス」とも称する)又はケイ酸アルミニウムガラスセラミックのいずれかからなり、かつ反射コーティングが設けられるミラー部材を備える。これらの材料は極めて低い熱膨張係数によって区別されるため、それらは、結像品質を低下させると考えられる露光プロセス中の加熱に起因する変形を起こさない。
【0004】
ミラー部材の熱膨張は、チタンドープガラスの場合、ミラー部材中のドーパントの濃度及び局所分布によって、またミラー部材のブランクの熱履歴によって主に判断される。
【0005】
上述のタイプのミラー基板用のガラスブランク及びその製造方法は、特許文献1により既知である。300mmの直径及び40mmの厚みを有する円筒形のミラー基板プレートが記載されている。ミラー基板プレートは、極めて均一性の高い、チタンをドープした合成石英ガラスからなる。ミラー基板プレートの平面の1つは、全体的に又は部分的に金属で被覆され、ミラー基板の目的の使用中、軟X線の主伝播方向に垂直な方向に位置付けられる。
【0006】
X線の入射領域の周囲の表面領域は、目的の使用中に高い応力を受け、適性及び特性の観点からとりわけ高度に規定される。これは主に、表面品質、高い応力を受ける領域におけるドーパントの分布の均一性、熱膨張係数の空間分布、及びその温度依存性、並びに、熱膨張係数がちょうどゼロになる温度を示すいわゆる「ゼロクロス温度」に関係する。
【0007】
チタン分布の高い(ミクロ)均一性(すなわち、層の不存在)は、より正確な研磨能力を有する手段、例えば化学機械的研磨(CMP)によって、とりわけ高い表面品質を実現することを可能にする。比較すると、チタン分布の中位の変動及び長い変動における均一性は、温度勾配により生じる長さ変化が、高い応力を受ける領域において可能な限り回避される点において、使用中のミラー部材の低変形用途にむしろ好適である。ここで、EUVミラー部材の最大(理論)反射率が約70%であるため、放射エネルギーの少なくとも30%が熱に変換されることに留意されたい。より正確な研磨能及び一様な膨張から、ここでは、気泡が全く又はほとんど存在しないことにも注意を払う必要がある。
【0008】
投影機器は、外面形状が特定用途に適合する、平面だけでなく、凸状又は凹状に湾曲した金属で被覆された表面を含有する多数のこのようなミラー基板を備える。この外面形状は、切削工程、研削工程及び研磨工程を典型的に含む、ミラー基板用ブランクの機械的な処理によって作製される。この機械的な処理では、表面領域がミラー基板用ブランクの容積から露出して、これらが引き続き、金属で被覆される表面、またとりわけ高い応力を受ける帯域の表面領域を形成すると考えられる。予め容積中に含まれる不均一性、例えば層及び気泡が、ここで表面に移動して、表面品質を損なうおそれがある。
【0009】
したがって、ガラス中の高い均一性及び気泡の不存在を確保するために、特許文献1は、層又は脈理状態を含有するガラスブランクが、多段階形成法により均一化されるものとすることを示唆している。この均一化方法では、3方向に脈理状態及び脈理を含まず、均一なドーパントの分布を示すチタンドープガラスのミラー基板用ブランクを製造することが可能である。しかしながら、該方法は、複雑であり、このようなタイプのミラー基板にかかる製造コストを著しく増大させる。
【0010】
特許文献2は、EUVリソグラフィに使用される複数の非球面ミラー基板用ブランクを製造するための、チタンをドープした高珪質ガラスのプリフォームを記載している。プリフォームは複合体として構成され、金属で被覆される領域が、ハニカム形態の支持体と融着させた前板から完全に形成される。前部体及び支持体は好ましくは、類似の又は同一の熱膨張係数を両側に有するチタンドープガラスからなる。2つの基体は融着、フリットを用いた溶接又は接着によって接合され、ミラー層を適応させるように前部体の上側がその後研磨される。
【0011】
個々の非球面ミラー基板用ブランクは、複合体から切片を切り出すことによって作製される。応力緩和は、表面品質に有害な影響を有する切片の変形をもたらすおそれがある。この変形作用は、支持体のハニカム形態によって低減される。
【0012】
しかしながら、チタンドープガラスのハニカム形態の支持体の作製は、極めて複雑であるため、応力緩和によって生じる上記変形作用を防止するのに妥当なものではない。切り出した切片の事後研磨は、それらが非球面形状であり、それ故、端部が容易に円形研削にかけられることから、極めて困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2004 024 808号
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0043081号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、低コストで製造することができるにもかかわらず、均一性並びに気泡及び脈理の不存在に対してなされる高い要求を満たす、EUVリソグラフィに使用される合成高珪質ガラスのミラー基板用ブランクを提供することである。
【0015】
その上、本発明の目的は、チタンをドープした合成ガラスからかかるミラー基板用ブランクを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本方法に関して、この目的は、上述のタイプの方法から開始して、以下の方法工程:
(a)容積「V1」を有し、かつ過大なサイズを伴って外面形状を包含する寸法を有する、均一性の高いチタンドープガラスの前部体を作製する工程と、
(b)容積「V2」を有する、チタンドープガラスの支持体を作製する工程であって、該支持体が、前記前部体よりも均一性の低い一体構造のガラスブロックとして構成される、チタンドープガラスの支持体を作製する工程と、
(c)複合体を形成するように、前部体と支持体とを接合させる工程と、
(d)前記複合体を処理する工程であって、ミラー基板用ブランクを得る、前記複合体を処理する工程と、
により達成され、前記前部体の前記作製が、前部体ブランクを形成するように、ケイ素含有化合物の火炎加水分解によって得られるロッド状の出発基体のねじり加工を含む均一化プロセスを含み、前記出発基体を、前記造形プロセス中、2つの把持具の間に把持し、或る帯域において溶融温度まで加熱することによって、前記加熱された帯域を、前記2つの把持具の互いに対する相対的な移動によって操作して、実質的に円筒形のねじれた基体を形成する。
【0017】
本発明は、透過操作用の光学部品と共に投影システムを使用する、紫外線波長範囲におけるマイクロリソグラフィとは対照的に、EUVリソグラフィに使用されるミラー部材が、ミラー部材の厚み全体にわたる完全な均一性を必要とせず、一部の厚みにしか完全な均一性を必要としないという知見に基づくものである。この一部の厚みは、その高い応力を受ける帯域における完成したミラー部材の外面形状に依存する。その理由は、外面形状を作製するためのミラー基板用ブランクの機械的な処理中に、作製される外面形状の寸法によって定められる容積部分だけ新たな面が露出するからである。上記容積部分のガラスが高い均一性及び気泡の不存在を示すのに対して、これらの要求がミラー基板の残りの容積部分に関してはそれ程厳密でないことが重要である。均一性に対するとりわけ高い要求を満たす必要がある合成ガラスの容積割合は以下、「非常に特徴を持った容積割合」とも称する。
【0018】
本発明によれば、支持体及び前部体を含む複数の構成要素からなる複合体の形態で存在するミラー基板用ブランクが、製造される。しかしながら、該複合体の作製は、上記で説明した従来技術と同様に、製品を改良するように働くものではないものの、一体構造のミラー基板におけるものと同じ性能又は僅かに劣る性能でコストを低減させるのに役立つ。
【0019】
前部体は、少なくとも、「非常に特徴を持った容積割合」及び或る特定の過大なサイズに関するガラスを提供する。前部体のガラスは、金属で被覆される表面のより正確な研磨能、及びミラー部材の高い応力を受ける容積部分における一様に小さい膨張を確保するように、ドーパントの分布の均一性及び気泡の不存在に対してなされる高い要求を満たす。前部体のガラスに対してなされるこれらの品質要件は、ケイ素含有化合物の火炎加水分解によって得られるロッド状の出発基体を前部体ブランクへとねじり加工することを含む均一化プロセスによって満たされ、出発基体は、造形プロセス中、2つの把持具の間に把持され、或る帯域において溶融温度まで加熱することにより、加熱された帯域を、2つの把持具の互いに対する相対的な移動によって操作して、実質的に円筒形のねじれた基体を形成する。
【0020】
ロッド状の出発基体の加工(ねじり加工)は主に、不均一な塊及びドーパントの分布にも起因する、ガラス中の脈理及び層の排除を助ける。この均一化プロセスの産物は、少なくとも1つの前部体、好ましくは複数の前部体を製造し得る均一な高品質のガラスからなるブランクである。
【0021】
支持体は、より高い品質の前部体ガラスの場合よりも、ドーパントの分布の均一性及び気泡の不存在に対する特に低い要求を満たすより低い品質のガラスからなる単純な一体構造のガラスブロックとして存在する。同様に、EUVミラー基板としての使用に関連のある他のパラメータ、すなわち、熱膨張係数の空間分布及びその温度依存性、並びに「ゼロクロス温度」に対してなされる要求は、熱負荷がここでは放射線の吸収に起因して前部体よりも小さいという事由により、支持体において緩和され得る。
【0022】
これにより、高品質のガラス、又は高品質の前部体とハニカム構造の支持体との複合体から完全になるミラー基板用ブランクと比べて、支持体のガラスにかかる製造コストの低減、それ故、コストの節減がもたらされる。
【0023】
前部体と支持体との間の均一性の差異は、とりわけ層及び脈理の形態で表され、かつ屈折率の不均一性及び熱膨張係数の空間的に不均一な分布をもたらす、ドーパントの空間分布の点で明らかとなる。ガラスの均一性の特性決定は、単位容積当たりの脈理の数に基づいて行われる。脈理は、組成の局所的なばらつきによって生じる。それらは、組成の差異を測定するマイクロプローブを用いることによって定量的に検知することができ、ひいては、数ppb/℃の範囲までの熱膨張係数の差異と相関する。該情報は、MPa単位の二乗平均平方根(rms)値として与えられる。該方法は、例えば、欧州特許出願公開第2211232号に記載されている。この意味で、前部体のガラスは、支持体のガラスよりも高い均一性、それ故より小さいrms値を示す。原則として、均一化されていないか又は1方向にのみ均一化されている高珪質チタンドープガラスは、全ての空間方向において均一化されている高珪質チタンドープガラスよりも低度の均一化を示す。
【0024】
支持体及び前部体は、二酸化チタンでドープされるガラスからなる。加えて、フッ素等の他のドーパントが含有されていてもよい。理想的には、支持体のガラスが、前部体のガラスと名目上同一の組成を有する。
【0025】
前部体及び支持体は、該部位の如何なる顕著な変形も伴うことなく(例えば、チタンドープガラスの類似の接合塊を用いた溶接又は接合によって)接合されていてもよく、又はプロセスが該部位の変形を伴う。なお、既に製造された前部体と支持体との複合体に変形プロセスを更に施してもよい。
【0026】
ミラー基板用基体を得るための複合体の処理は、例えば、複合体の機械的な処理、熱間成形プロセス及び/又は熱処理を含み得る。原則として、それは、金属で被覆される表面の外面形状を未だ有していない。該形状を作製するために、ミラー基板用ブランクを機械的に加工して、ミラー基板を得る。原則として、凹状又は凸状に湾曲した表面領域をここで作製する。ミラー基板用ブランクの処理された容積の品質がここでは、露出面の品質にとって決定的なものである。例えば、処理された容積は、機械的な処理における除去に起因して気泡又は層が表面上に現れて、表面品質を損なうおそれがあることから、気泡又は層を含有していてはならない。前部体は、外面形状を作製するための機械的な処理における除去の深さが、いずれの場所でも、そこで認識される前部体の寸法よりも小さいような寸法とされる。故に、機械的な処理の完了後の高い応力を受ける帯域における表面は、均一な前部体のガラスから排他的に形成される。これはまた、高い応力を受ける帯域において高い表面品質を保証するものである。
【0027】
確かに、如何なる多大な労力も伴うことなく作製される一体構造の支持体の使用は、ミラー基板用ブランクにかかる製造コストを下げるが、性能の観点における欠点を受け入れなければならない。
【0028】
好ましくは、円筒形のねじれた基体に、ねじり加工による更なる均一化プロセスを施し、3方向に均一化されるねじれた基体へと造形する。
【0029】
前部体の作製が付加的に、均一化された出発基体を形成するように、軟化させると共に、円筒の縦軸に対して横方向の力の作用下でガラスが流出する加熱されたモールド内へと流出させることによる、円筒形の出発基体の造形を含む場合に、有用であることが分かった。1つの前部体、好ましくは複数の前部体が、このように均一化されるガラスから切り出される。
【0030】
独国特許出願公開第4204406号は、ガラスの円筒形の出発基体を加熱されたモールド内に流出させる方法を記載している。この造形プロセスはまた、3方向の脈理及び層が存在しなくなるまでのガラスの均一化をもたらす。場合によってはまた、残存する気泡のサイズが低減する。出発基体に作用する力は、例えば、出発基体自体の重量に起因する重力であり、出発基体に作用する付加的な重量によって及び/又は出発基体にかけられる圧力によって任意に補われる。出発基体は、例えば、未だ完全に均一化されていないねじれた基体である。
【0031】
好ましくは、前記ねじれた基体若しくは前記均一化されたねじれた基体、又は前記均一化された出発基体からそれぞれ切削することによって、少なくとも1つの前部体、好ましくは複数の前部体を得る。
【0032】
加えて、前部体の作製は、合成ガラスのプリフォームの生産と、気泡の不存在及びドーパントの分布の均一性に関して高品質の切片をプリフォームから選択する選択方法工程とを含み、前部体をそれらから切り出す。
【0033】
ここで、前部体は、通常円筒形の大容量のガラスプリフォームの好適な容積部分を選択し、該容積部分を切り出すことによって作製される。前部体の作製に適さない大容量のプリフォームの容積部分は、支持体を作製するのに使用することができる。
【0034】
支持体用のガラスは、均一化する労力が前部体用のガラスの場合よりも小さい別のプロセスで作製されるか、又は、支持体のガラスは、前部体のガラスと同様のプロセスを活用して作製される。最後に言及したような場合には、通常、低い品質及び均一性の容積部分を支持体用のガラスとして識別及び選出することができる、大容量のガラスプリフォームが得られる。
【0035】
特に、前記支持体の前記作製が、好ましくは、ケイ素含有化合物の火炎加水分解によって得られるロッド状の支持体/出発基体を均一化してねじれた基体とすることを含み、前記支持体/出発基体を、造形中、2つの把持具の間に把持し、或る帯域において溶融温度まで加熱することによって、前記加熱された帯域を、前記2つの把持具の互いに対する相対的な移動によって操作して、実質的に円筒形のねじれた基体を形成し、前記支持体を、前記ねじれた基体の前記ガラスから得る。
【0036】
方法工程(c)による前記接合プロセスが、前記前部体の平坦な接触面と前記支持体の平坦な接触面とを光学的な接触によって接合させて、互いに溶接する、接合工程を含む場合に、有用であることが分かった。
【0037】
光学的な接合プロセスは、支持体と前部体との気泡のない接合を可能とする。これらは、平面が研磨された接触面を伴って互いに接しているため、如何なる顕著な変形も伴わない前部体と支持体との気泡のない溶接を促す。溶接は例えば、レーザ、プラズマ火炎又は燃料ガス火炎を用いることによる、接触面の領域における局所的な加熱及び軟化によって行われる。しかしながら好ましくは、接触面は炉内で軟化される。ここでは、支持体と前部体とのアセンブリを炉内に完全に導入して加熱する。これにより、欠陥のない結合の再現性のある生成が促される。
【0038】
代替形態として、支持体上に位置する前部体を炉内で軟化させ、該支持体と一緒に変形させて、該プロセス中で少なくとも一部を前記支持体内へと沈入させる、接合工程を含む、方法工程(c)により支持体と前部体との間の結合を生成するための手法も、適することが分かった。
【0039】
この手法では、支持体と前部体との間の溶融複合体の生成が、複合体を得るように、互いに接する基体の塑性変形を伴う。初めて又は更に同時に均一化される下に位置する支持体のガラスはここで変形を主に受ける。変形は好ましくは、ガラスの出発基体の均一化について上記で既により詳細に説明したように、軟化させると共に、加熱されたモールド内へと流出させることによって行われる。
【0040】
加熱されたモールドは、変形後に得られる複合体の側方寸法を定める。前部体はここで、支持体の軟化させたガラス内に部分的に沈入する。その後得られる、支持体に対して融着する前部体の塊分布は、試験を用いて検出され、またシミュレーションによって判断され得る。
【0041】
軟らかい支持体塊内へ「前部体を沈入させる」というこの手法は、前部体の最終的な位置及び最終的な幾何学的形状を比較的正確に定めることができるという利点をもたらす。密接な気泡の少ない接触領域がもたらされると同時に、算術的に実際に必要とされるであろうものよりも多くの前部体塊を通常必要とする大きな形態変化を示す接合方法におけるものよりも、前部体にかかる原材料塊をあまり必要としない。完成した複合体では、元の前部体が、支持体領域における少なくとも一部で埋設される、すなわち、横方向に固定される前部体領域を形成する。これにより、固定された複合体が得られ、この場合、機械的な処理を行うとしても層間剥離のリスクが減る。
【0042】
方法工程(c)により前部体と支持体との複合体を作製するための、更なる同様に限定された手法では、前部体の接触面と支持体の接触面とを軟化させて、互いに対して加圧し、接触面の少なくとも一方が外側に湾曲した表面を有する、接合工程が、もたらされる。
【0043】
この例では、好ましくはブロック形態又はロッド形態の、前部体及び支持体が、それらの各々の面と一緒に加圧され、同時に軟化された結果、接触面が同時に共に融着する。融着は例えば、旋盤状の装置により行われ、この方法によって、前部体及び支持体は、接合回転軸を中心に回転可能であり、回転軸の方向において軸方向に置換可能である。気泡の含入を回避するために、接触面の少なくとも一方、好ましくは両接触面が、外側に湾曲した表面を含む。そのため、接触させると、連続して圧縮されると外側へと径方向に広がる実質的に点状の(面積が大きくない)接触面がもたらされる。最も単純な場合には、湾曲した接触領域が鋭角又は円錐形となる。続いて、こうして作製される溶融複合体に、更なる均一化のための熱間成形プロセスを施してもよく、これにより、複合体の最終的な幾何学的形状が得られる。
【0044】
また、複合体をアニールする場合に有用であることが分かった。
【0045】
温度処理は、支持体と前部体との接合部の生産中に作られた可能性のある応力を低減させるように働く。このような応力は、その後の材料の除去においてブランクの変形をもたらす場合があり、それらはまた、研磨面に対する悪影響を有するおそれがある。アニーリングが本当に必要とされるかという問題は、方法工程(c)による接合操作中及びとりわけ作製される複合体の冷却中の温度制御に依存する。アニーリング処理は任意に1つ又は幾つかの熱間プロセス加工工程を含む。方法工程(c)による融着結合の形成及びアニーリング処理は、1つの操作又は別個の操作において行われる。
【0046】
ミラー基板用ブランク中の前部体の容積割合が小さいほど、製造コストの節減は有効である。したがって、前部体の容積「V1」は好ましくは可能な限り小さく、またミラー基板の高い応力を受ける部分における外面形状の完全なモデリングを可能とするために必要とされるだけ大きく維持される。しかしながら、安全性の理由から、前部体は、最小サイズを超えて拡張する或る特定の過大なサイズを有する。有益には、容積「V2」が、「V1」の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍大きい。
【0047】
EUVリソグラフィに使用されるミラー基板用のチタンドープガラスからなるブランクに関して、上述のタイプのブランクから始まる上述の課題は、容積「V1」を有し、かつ過大なサイズを伴って外面形状を包含する寸法を有する、均一性の高いチタンドープガラスの前部体部分と、容積「V2」を有する、チタンドープガラスの支持体部分であって、この場合、前部体部分よりも均一性の低い一体構造のガラスブロックとして構成される、支持体部分とを包含する溶融複合体として、ブランクが存在することで達成される。
【0048】
本発明は、透過操作用の光学部品と共に投影システムを使用する、紫外線波長範囲におけるマイクロリソグラフィとは対照的に、EUVリソグラフィに使用されるミラー部材が、ミラー部材の厚み全体にかけて完全な均一性を必要とせず、それらの一部の厚みにしか完全な均一性を必要としないという知見に基づくものである。この一部の厚みは、その高い応力を受ける帯域における完成したミラー部材の外面形状に依存する。その理由は、外面形状を作製するためのミラー基板用ブランクの機械的な処理中に、作製される外面形状の寸法によって定められる容積部分だけ新たな面が露出するからである。この容積部分のガラスが高い均一性及び気泡の不存在を示すのに対して、これらの要求がミラー基板の残りの容積部分においてはそれ程厳密でないことが重要である。均一性に対するとりわけ高い要求を満たす必要がある合成ガラスの容積部分は以下、「非常に特徴を持った容積割合」とも称するものとする。
【0049】
本発明によれば、ミラー基板用ブランクは、支持体領域及び前部体領域を形成する幾つかの構成要素からなる複合体の形態で存在する。前部体領域は、少なくとも「非常に特徴を持った容積割合」及び或る特定の過大なサイズに関するガラスを提供する。前部体のガラスは、金属で被覆される表面のより正確な研磨状態、及びミラー部材の高い応力を受ける容積部分における一様に小さい膨張を確保するように、ドーパントの分布の均一性及び気泡の不存在に対してなされる高い要求を満たす。
【0050】
支持体部分は、前部体部分の優れたガラスに比べて、ドーパントの分布の均一性及び気泡の不存在に対してより低い要求がなされる、品質の劣るガラスからなる単純な一体構造のガラスブロックとして存在する。これにより、高品質のガラス、又は高品質の前部体とハニカム構造の支持体との複合体から完全になるミラー基板用ブランクと比べて、支持体部分のガラスにかかるより低い製造コスト、それ故、コストの節減がもたらされる。支持体部分のガラスは、均一性以外の特性の点でも前部体のガラスと異なるものであってもよい。
【0051】
金属で被覆されるミラーの外面形状を形成するためにミラー基板用ブランクを機械的に処理する場合、通常、凹状又は凸状に湾曲した表面領域が作製される。ミラー基板用ブランクのそれにより処理された容積の品質は、露出面の品質に関連がある。より正確に言うと、処理された容積は、機械的な処理における除去に起因して気泡が表面上に現れて、表面品質を損なうおそれがあることから、如何なる気泡も含有していてはならない。したがって、前部体部分は、外面形状の機械的なモデリングの場合の除去の深さが、いずれの場所でも、そこで認識される前部体部分の寸法よりも小さいような寸法とされる。故に、機械的な処理の完了後の高い応力を受ける帯域における表面は、均一な前部体のガラスから排他的に形成される。これはまた、高い応力を受ける帯域において高い表面品質を保証するものである。
【0052】
支持体領域及び前部体領域は、二酸化チタンでドープされるガラスからなる。加えて、フッ素等の他のドーパントが含有されていてもよい。
【0053】
本発明によるブランクは好ましくは、前部体及び支持体を相互に接続させる上記の方法に基づいて製造される。
【0054】
前記前部体部分が、3方向に脈理を含まないガラスからなる場合に、有用であることが分かった。
【0055】
このようなガラスは、ドーパントの分布のとりわけ高い均一性及び実質的な気泡の不存在によって区別される。本発明による複合体中の、多大な労力を受けて均一化されたこのガラス品質の容積割合V1は、可能な限り小さい。脈理及び層の完全な除去のための、それ故、3方向に脈理を含まないガラスの作製のための好適な均一化方法は、欧州特許出願公開第6738888号に記載されている。
【0056】
一方、支持体部分は好ましくは、1方向にのみ脈理を含まないガラスからなる。
【0057】
このようなガラスは、均一化にあまり労力を要しないため、3方向に脈理を含まないガラスよりも高価でない。
【0058】
高い応力を受ける帯域におけるガラスの品質に対してなされる高い要求を満たすと共に、ミラー基板用ブランクのための材料コストを可能な限り低く維持するために、前部体部分は好ましくは、泡等級(Bubble Class)2又はそれよりも良い要求を満たすガラスからなるのに対し、支持体部分は、DIN 58927 2/70に準拠して、泡等級2又はそれよりも悪い要求を満たすガラスからなる。
【0059】
気泡の不存在について支持体部分のガラスの品質に対してなされる要求は、前部体部分のガラスに対してなされるものよりも低い。好ましくは、支持体部分のガラスは、泡等級3〜5又はそれよりも更に悪い要求をまさに満たすものである。
【0060】
高い応力を受ける帯域におけるガラスに関する高い品質の要求を満たすと共に、ミラー基板用ブランクのための材料コストを可能な限り低く維持するために、前部体部分が、平均値からの最大偏差が1%未満であるチタン濃度分布を示すガラスからなる場合、及び支持体部分が、平均値からの最大偏差が5%未満であるチタン濃度分布を示すガラスからなる場合にも、有用であることが分かった。
【0061】
ドーパントの分布の均一性について支持体部分のガラスの品質に対してなされる要求は、前部体部分のガラスに対してなされるものよりも低い。約7wt.%の通例のドーパント濃度(=TiO)において、支持体部分のガラスは、この平均値からの最大偏差が0.35wt.%未満であれば、要求を満たす。
【0062】
ミラー基板の目的の使用中の安定な結合及び小さい変形に関して、理想的には、前部体部分及び支持体部分が、名目上同一の組成を有するガラスからなる。
【0063】
可能な限り欠陥のない境界面に関して、前部体部分及び支持体部分が平らな接触面で互いに接し、かつ互いに融着する場合に、有用であることが分かった。
【0064】
前部体部分及び支持体部分はここで、類似又は同一の側方寸法を有していてもよいため、前部体部分が支持体部分の側面(上側)を完全に覆う。ブランクのこの実施の形態は、多数の開口部を有するミラー基板の用途にとりわけ適し、この場合、高い応力を受ける帯域が比較的大きな表面領域に及ぶ。
【0065】
本発明によるブランクの代替的かつ等しく好ましい実施の形態では、前記前部体部分が、前記支持体部分内に部分的に埋設される。
【0066】
前部体部分はここで、支持体部分に面するその底部側とだけでなく、その側方境界領域の少なくとも一部とでも支持体塊と接触する。前部体部分の側方寸法はここでは、支持体部分のものよりも小さいことから、これに対応してより多くの材料コストが節減される。ブランクのこの実施の形態は、少数の開口部を有するミラー基板の用途にとりわけ適し、この場合、高い応力を受ける帯域が比較的小さな表面領域にのみ及ぶ。その上、該実施の形態に起因して、支持体部分における前部体部分の側方への固定を有する、固定された複合体が得られ、衝撃応力の場合の、例えば機械的な処理中の層間剥離のリスクが低減される。
【0067】
ミラー基板用ブランク中の前部体部分の容積割合が小さいほど、製造コストの節減は有効である。したがって、前部体部分の容積「V1」は好ましくは可能な限り小さく、またミラー基板の高い応力を受ける部分における外面形状の完全なモデリングを可能とするのに必要とされるだけ大きい。しかしながら、安全性を考慮すると、前部体部分は、最小寸法と比べて或る特定の過大なサイズを有する。有益には、容積「V2」が、「V1」の少なくとも2倍、特に好ましくは少なくとも3倍大きい。
【0068】
ここで、実施形態及び図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】支持体と前部体とから構成される溶接された複合体又はアセンブリからなる、本発明によるミラー基板用ブランクを示し、それらから作製されるミラー基板の外面形状の線図を描いた概略断面図である。
図2】溶融モールド内の支持体と支持体上に位置する前部体とから作られるアセンブリを軟化又は融着させることによって、ミラー基板用ブランクを製造するための第1の方法工程を示す概略図である。
図3】溶融後の図2によるアセンブリを示す概略図である。
図4】溶融モールドから取り出した後のミラー基板用ブランクを示す概略図である。
図5】機械的な処理によって図4によるミラー基板用ブランクから製造されるミラー基板を示す概略断面図である。
図6】ロッド状の支持体と前部体とを接合させることによってミラー基板用ブランクを製造するための第1の方法工程を示す概略図である。
図7】接合後の複合体を示す概略図である。
図8図7による複合体を造形することによって得られるミラー基板用ブランクを示す概略図である。
図9】機械的な処理によって図9によるミラー基板用ブランクから製造されるミラー基板を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
約7wt.%のTiOでドープされる商用の合成ガラスを、図1に概略的に示されるミラー基板用ブランク1のための出発材料として使用する。
【0071】
150mm×150mm×40mmの寸法を有するこの出発材料の第1のブロック状選択ピースは、支持体2として機能する。支持体2のガラスは、2つの視認方向では明確に視認可能な成層配置を示すのに対し、対称軸5と平行な第3の方向では実質的に如何なる層構造も伴わない。成層配置は、ガラスの生成中の層状堆積プロセスに起因するものである。
【0072】
ガラスは、大きくとも1.3mmの気泡を含有し、気泡の横断面の合計は、(容積100cmに基づき)2mm未満である。ガラスは、DIN 58927 2/70に従う泡等級5の要求を満たす。特許文献1から知られているように、熱膨張に基づき測定されるチタン濃度分布は、ドーパント濃度の公称平均値(7wt.%)からの5%未満の最大偏差を特徴とする。
【0073】
支持体2の前部側(上側)のうち1箇所は、平面を得るように研磨される。
【0074】
低気泡含有量を有する同様の出発材料の別の選択されたサンプルピースを付加的に均一化することによる前部体3の作製を以下に記載する。このピースは、90mm×90mm×500mmの寸法を有するロッド状の出発基体として存在する。前部側における出発基体の端部は円筒形に研削され、各々の端は、それぞれチタンドープガラスからなるガラス把持具に溶接されているため、把持具及び出発基体の膨張特徴は類似する。このように引き伸ばされる出発基体は、加熱バーナーが備え付けられた旋盤に留め、欧州特許出願公開第673888号に記載されているように、造形プロセスにおいて均一化して、層を完全に除去する。出発基体をここでは、加熱バーナーを用いることによって2000℃より高く局所的に加熱して、このプロセスにおいて軟化させる。2つの把持具の互いに対する相対的な移動によって、出発基体をその縦軸を中心にしてねじり、軟化させたガラス塊を強力に混ぜ合わせて、ねじれた基体を径方向に形成する。ねじれた基体は、約90mmの直径及び約635mmの長さを有する。
【0075】
よって、出発基体の不均一性又は層は径方向においては除去されるのに対し、出発基体の縦方向に及ぶ不均一性は脈理又は層として維持される。これらを同様に排除するために、更なる造形プロセスを行う。このプロセスでは、出発基体を、矩形の横断面を有する底部及び150mm×150mmの側方寸法を有する、グラファイトの溶融モールドに入れる。変形プロセスについては、初めに、出発基体を含有する溶融体全体を1350℃に加熱し、続いて、毎分9℃上昇させながら1700℃まで加熱し、その後毎分2℃上昇させながら1780℃の温度まで加熱する。この温度で、軟化させたガラスが、それ自体の重量の作用を受けて溶融モールドの底部に流出し、このプロセスにおいてモールドが満たされるまでガラス塊を保持する。これによって、150mm×150mm×180mmの寸法を有する矩形プレートが、出発基体から形成され、これは、3つの視認方向の全てにおいて層及び脈理を含まない。その上、均一化プロセスは、容積全体にわたって、ガラス中に含有される構成成分、例えば、水素、ヒドロキシル基及びドーパントのとりわけ一様な分布をもたらす。
【0076】
このように均一化されるガラスは、3方向に脈理を含まず、大きくとも0.1mmのサイズを有する気泡を有し、気泡の横断面の合計は、(容積100cmに基づき)0.03mm未満である。ガラスは、DIN 58927 2/70に従う泡等級0の要求を満たす。特許文献1から知られているように、熱膨張に基づき測定されるチタン濃度分布は、公称平均値(7wt.% TiO)からの1%未満の最大偏差を特徴とする。
【0077】
とりわけ高品質の、均一化された、TiOをドープした合成ガラスからなるプレートを、150mm×150mm×30mmの寸法を有する合計6つのプレートに切断する。気泡の不存在について最良の3つのプレートを、選択し、平坦な側面の各々一面を研磨することで円盤状の前部体3へと加工する。
【実施例】
【0078】
実施例1
支持体2及び前部体3を、それらの研磨した平坦な側面で光学的に接触させると、引力に起因して気泡のない接合部が得られる。この接合部を炉内で1650℃の温度に15分間加熱する。これにより、気泡の少ない接触面を有する溶融複合体がもたらされる。
【0079】
機械的応力を排除するため、本発明の意義の範囲内におけるミラー基板用ブランク1を形成するように、基体をその後アニールする。溶融複合体のアニーリング中の温度プロファイルは以下の通りである:1175℃の温度に加熱すると共に、10時間の保持時間の間、該温度で保持する;950℃の温度まで4℃/時間の冷却速度で冷却すると共に、12時間の間該温度で保持した後、室温まで自然放冷する。
【0080】
このように製造されるミラー基板用基体1が、図1に概略的に示される。それは、異なるガラス品質の構成要素、すなわち、前部体3及び支持体2から構成される。基体は、実質的に平らで平坦な接触面6を介して相互に接続する。前部体3の容積は、ミラー基板用ブランクの全容積の約33%を占める。
【0081】
ミラー基板用ブランク1は、EUVリソグラフィに使用されるチタンドープガラスのミラー基板を製造するように働く。ミラー基板を製造するために、前部体3によって形成され、かつ目的の使用においてEUV線を受ける、ミラー基板用ブランク1の上側4に、研削及び研磨を含む機械的な処理を施す。ここでは、ミラーの外形を凸状に湾曲した表面領域7として作製する。これは、図1に点線として認めることができ、またこの直径Dを有する円形のサブ領域は、表面の品質及びガラスの均一性に対してとりわけ高い要求がなされる、高い応力を受ける表面領域(「非常に特徴を持った容積割合」)として規定される。この領域の表面(D)は、前部体3によって排他的に形成され、加えて、或る特定の低の過大なサイズを有する。表面品質に対してなされるより低い要求がかせられた曲面の外形7の一部は、支持体によってもたらされるガラスの領域の上部又は該領域に及ぶ。
【0082】
実施例2
図2図5を参照して、本発明によるミラー基板用ブランクの更なる実施形態及び更なる製造方法を説明する。
【0083】
商用チタンドープガラスからなる支持体22’を、200mmの直径を有する円形横断面及び60mmの高さを有する固体円筒形態で準備する。支持体22’のガラスは、気泡の不存在、ドーパントの分布及び脈理の不存在については実施例1に関して記載した品質を有するものとする。支持体22’の上部の前部側を研磨する。
【0084】
別個の方法で、前部体23’を、極めて高い品質の、均一化された、TiOでドープしたガラスの丸い円盤形態で準備した。前部体23’のガラスは、気泡の不存在、ドーパントの分布及び脈理の不存在については実施例1に関して記載した品質を有するものとする。円盤状の前部体23’は150mmの直径及び30mmの厚みを有し、この1つの平坦な側面が研磨される。
【0085】
支持体22’及び前部体23’をそれらの平坦な側面で光学的に接触させ、僅かな局所的な加熱によって互いに対して固定させる。この場合、前部体23’は、研磨した支持体面の中央領域をちょうど覆う。
【0086】
図2は、複合体22’、23’を、210mmの直径を有する丸い横断面及び70mmの高さを有する底部領域26を有するグラファイトの溶融モールド25を備える炉内に導入することを示している。溶融モールド25を1350℃に加熱した後、毎分9℃上昇させながら1700℃まで加熱し、その後、毎分2℃上昇させながら1780℃の温度まで加熱する。この温度で、ガラス塊を真空下で軟化させる。軟化させたガラスがそれ自体の重量を受けて変形することにより、溶融モールド25の底部26が完全に満たされる。作用する重量に起因する支持体22’のガラス、またそこに載っている前部体23’のガラスは、横方向における流出に起因して変形を幾らか受ける。同時に、前部体23’のガラスが、図3に概略的に示されるように、支持体22’内にほとんど完全に(およそ25mmの深さで)沈入する。前部体23’のガラスが前部体塊23を形成し、これが支持体塊22内に包埋する。
【0087】
これにより、図4に示される、210mmの直径及び約70mmの厚みを有する丸い複合プレート20が得られ、該プレートは、共に融着する異なるガラス品質の塊22、23から構成される。支持体塊22は実質的に商用の品質を有し、記載の造形プロセスは或る特定の付加的な均一化をもたらす。支持体塊22の中央領域は、より高い品質のガラスからなる前部体塊23によって覆われる。このより高い品質のガラスは、3つの視認方向の全てにおいて層及び脈理を含まず、かつ容積全体にわたる、ガラス中に含有される構成成分、例えば、水素、ヒドロキシル基及びドーパントのとりわけ一様な分布によって、また気泡の実質的な不存在によって区別される。支持体塊22と前部体塊23との間の接触領域はトラフのように造形され、僅かにでこぼこしているものの、実質的に気泡を含まない。前部体塊23の容積はここでは、支持体塊22の容積の3.5分の1の小ささである。
【0088】
複合プレート20を、実施例1に関して上記で説明したように標準的な方法でアニールする。得られるミラー基板用ブランク20は、EUVリソグラフィに使用されるチタンドープガラスのミラー基板21を製造するように働く。なお、前部体塊23によって覆われる、ミラー基板21の上側29の表面領域が、EUV線を受ける。
【0089】
軟化させた支持体塊22「内へ前部体23’を沈入させる」という上記の方法は、前部体23’の或る特定の変形にもかかわらず、複合体/ミラー基板用ブランク20内における前部体塊23の最終的な位置及び最終的な幾何学的形状を比較的正確に定めることができ、また「沈入プロセス」中に更に影響を与えることができるという利点を有する。これにより、密接で欠陥の少ない接触領域がもたらされ、実施例3に関して以下で更に記載する方法に比べ、前部体23’の相対的により小さい変形に起因して、前部体23’に必要とされる原材料塊が小さくなる。
【0090】
ミラー基板21を製造するために、ミラー基板用ブランク20の上側29に、研削及び研磨を含む機械的な処理を施す。これにより、図5に示されるような凸状に湾曲した表面領域が作製される。150mmの直径Dを有する円形のサブ領域は、表面の品質及びガラスの均一性に対してとりわけ高い要求がなされる、高い応力を受ける表面領域として規定される。この表面及び容積領域は、前部体塊23によって排他的に形成される。表面品質に関してより低い要求がかせられる、ミラー基板21の表面の最大部位は、支持体塊22によって形成される。
【0091】
ミラー基板21の曲面にミラー層を設けて、得られるミラー部材を、EUVリソグラフィのための投影システムに使用する。
【0092】
図6図9を参照して、本発明によるミラー基板用ブランクの更なる実施形態及び該ミラー基板用ブランクを製造する更なる方法を説明する。
【0093】
実施例3
図6は、(実施例1に関して上記で説明したように)気泡の不存在、ドーパントの分布及び脈理の不存在について高品質のチタンドープガラスの第1の円筒33’、及び7wt.%のチタンでドープされ、かつ気泡の不存在、ドーパントの分布、脈理の不存在についてより低い品質を示す商用ガラスの第2の円筒32’を示している。
【0094】
円筒32’、33’の外径は80mmであり、その都度、2つの円筒32’、33’の各々の前面34を、丸みを帯びた円錐の頂点を有する円錐形に研削する。
【0095】
円筒32’、33’を旋盤のチャックに留め、接合部の中心の回転軸に調節する。続いて、円筒32’、33’の鋭角な前面34を突合せ接合させると同時に、接触領域において回転の下、加熱し、互いに融着させる。溶融プロセス中の温度制御に起因して、第2の円筒32’のガラスが、第1の円筒33’のガラスよりも僅かに軟らかくなる結果、第2の円筒32’のガラスが幾らかより大きく変形する。
【0096】
これにより、約80mmの外径及び約1000mmの長さを有する実質的に円筒形の溶融複合体35が作製され、上記基体は図7に概略的に示される。基体は、接触領域36’’において共に融着する、異なる品質の2つの融着させたガラス塊32’’、33’’から構成される。
【0097】
実施例2に関して記載したように、溶融モールドにおいて溶融複合体35に造形プロセスを施す。共に融着するガラス塊32’’、33’’は更に変形して、依然として存在する層又は気泡の低減、及びドーパントの分布の更なる均一化を伴う。
【0098】
図8に示されるミラー基板用ブランク30は、300mmの外径及び71mmの高さを伴って得られる。前部体塊33の容積は、支持体塊32の上方を完全に覆い、ブランク30の全容積の約40%を占める。ガラス塊32とガラス塊33との間の接触領域36は、でこぼこで波形であるが、実質的に気泡を含まない。
【0099】
ミラー基板用ブランク30を、実施例1に記載した方法に基づきアニールした後、これに、図9に示される、280mmの外径を有するミラー基板31を製造するための機械的な仕上げ処理を施す。ここでは、凸状に湾曲した表面領域を作製し、260mmの直径Dを有するその円形のサブ領域は、表面の品質及びガラスの均一性に対してとりわけ高い要求がなされる、高い応力を受ける表面領域として規定される。この表面及び容積部分は、前部体塊33によって排他的に形成される。しかしながら、ミラー基板用ブランク30又はそれらから得られるミラー基板31の容積の最大部位は、あまり高価でない支持体塊32によって形成される。
【0100】
ミラー基板31の曲面にミラー層を設けて、得られるミラー部材を、EUVリソグラフィのための投影システムに使用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9