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特許5661784モータートルク定数が較正される電子整流電気モーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661784
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】モータートルク定数が較正される電子整流電気モーター
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/10 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   H02P6/02 351G
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-534618(P2012-534618)
(86)(22)【出願日】2010年10月8日
(65)【公表番号】特表2013-509147(P2013-509147A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2010065053
(87)【国際公開番号】WO2011047971
(87)【国際公開日】20110428
【審査請求日】2012年6月20日
(31)【優先権主張番号】102009045822.0
(32)【優先日】2009年10月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド フリッカー
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102007020068(DE,A1)
【文献】 特開2004−201487(JP,A)
【文献】 特開2000−287481(JP,A)
【文献】 特開2001−286181(JP,A)
【文献】 特開2007−060897(JP,A)
【文献】 特開2007−028780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーター(10)と、ローター(12)と、制御ユニット(24)と、を備えている電子整流電気モーター(1)であって、
前記制御ユニット(24)は、前記ステーター(10)と接続されており、かつ、前記ステーター(10)に回転磁界を形成させ、
前記制御ユニット(24)は、前記ステーター(10)の少なくとも1つのステーターコイル(14、16、18)において誘導された電圧を検出し、前記ローター(12)のローター回転周波数を表す回転数信号に依存して、得ることができるトルクを表すモータートルク定数を求めるように構成されている電子整流電気モーター(1)において、
前記制御ユニット(24)は、前記モータートルク定数の周波数成分(45)を検出し、前記モータートルク定数の前記周波数成分(45)のうち奇数の次数のみを抜き出し、前記抜き出したモータートルク定数の周波数成分(60、62、64、66)に依存して、前記ステーター(10)にトルクを生成させ
前記制御ユニット(24)は、周波数領域におけるトルクをM(s)、周波数領域におけるモータートルク定数をk(s)、周波数領域におけるステータコイルに流れる電流をIstrang(s)、*を畳み込み演算子としたとき、
M(s)=k(s)*Istrang(s)が所望の値となるよう、電流Istrang(s)を操作する、
ことを特徴とする電子整流電気モーター(1)。
【請求項2】
フーリエ変換されたモータートルク定数(45)を生成し、前記フーリエ変換されたモータートルク定数に依存して前記ステーター(10)を駆動制御するように、前記制御ユニット(24)が構成されている、
請求項1記載の電気モーター(1)。
【請求項3】
前記フーリエ変換されたモータートルク定数の次数分析を実行し、前記モータートルク定数の周波数成分(45)の少なくとも1つの次数(60、62、64、66)の信号振幅に依存して前記ステーター(10)を駆動制御するように、前記制御ユニット(24)が構成されている、
請求項2記載の電気モーター(1)。
【請求項4】
前記モータートルク定数の奇数の次数(60、62、64、66)のみに依存して前記ステーター(10)を駆動制御するように、前記制御ユニット(24)が構成されている、
請求項2または3記載の電気モーター(1)。
【請求項5】
前記モータートルク定数の、時間に依存したおよび/またはローター位置に依存したプロファイルを、前記フーリエ変換されたモータートルク定数のフーリエ逆変換によって形成し、かつ、前記時間に依存したおよび/またはローター位置に依存したプロファイルに依存して前記ステーター(10)を駆動制御するように、前記制御ユニット(24)が構成されている、
請求項3または4記載の電気モーター(1)。
【請求項6】
前記モータートルク定数の、時間に依存したおよび/またはローター位置に依存したプロファイルを、前記フーリエ変換されたモータートルク定数のフーリエ逆変換の選択的な次数フィルタリングによって形成し、かつ、前記時間に依存したおよび/またはローター位置に依存したプロファイルに依存して前記ステーター(10)を駆動制御するように、前記制御ユニット(24)が構成されている、
請求項3または4記載の電気モーター(1)。
【請求項7】
前記モータートルク定数の所定のローター角度領域に依存して前記ステーター(10)を駆動制御するように、前記制御ユニット(24)が構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の電気モーター(1)。
【請求項8】
前記ローター角度領域は、電気角90°または電気角60°である、
請求項7記載の電気モーター(1)。
【請求項9】
前記モータートルク定数の周波数振幅(60、62、64、66)に依存して、前記ステーター(10)にトルクを生成させる、
請求項1から8までのいずれか1項記載の電気モーター(1)。
【請求項10】
ステーター(10)と、ローター(12)と、を備えている電子整流電気モーター(1)を駆動制御する方法(70、72、74、76)であって、
前記電気モーターの生成可能なトルクを表すモータートルク定数を、前記ローター(12)の回転時の誘導電圧に依存して検出し、
前記モータートルク定数の周波数成分(45)を検出し、前記モータートルク定数の周波数成分(45)のうち奇数の次数のみを抜き出し、前記抜き出したモータートルク定数の周波数成分(60、62、64、66)に依存して、前記ステーター(10)にトルクを生成させ
周波数領域におけるトルクをM(s)、周波数領域におけるモータートルク定数をk(s)、周波数領域におけるステータコイルに流れる電流をIstrang(s)、*を畳み込み演算子としたとき、
M(s)=k(s)*Istrang(s)が所望の値となるよう、電流Istrang(s)を操作する、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
フーリエ変換されたモータートルク定数(45)を生成し、前記フーリエ変換されたモータートルク定数に依存して前記ステーター(10)を駆動制御する、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記フーリエ変換されたモータートルク定数を次数分析し、前記モータートルク定数の少なくとも1つの次数(60、62、64、66)の少なくとも1つの信号振幅に依存して前記ステーター(10)を駆動制御する、
請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記モータートルク定数の奇数の次数(60、62、64、66)にのみ依存して前記ステーター(10)を駆動制御する、
請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記モータートルク定数の時間に依存したおよび/またはローター位置に依存したプロファイルを、前記フーリエ変換されたモータートルク定数のフーリエ逆変換によって形成し、前記ローター位置に依存したプロファイルに依存して前記ステーター(10)を駆動制御する、
請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記モータートルク定数の時間に依存したおよび/またはローター位置に依存したプロファイルを、前記フーリエ変換されたモータートルク定数のフーリエ逆変換の選択的な次数フィルタリングによって形成し、前記時間および/またはローター位置に依存したプロファイルに依存して前記ステーター(10)を駆動制御する、
請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記モータートルク定数の周波数振幅に依存して、前記ステーター(10)にトルクを生成させる、
請求項10から15までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行技術
本発明は、ステーターと、殊に永久磁石で形成されたローターとを備えた電子整流電気モーターに関する。電子整流電気モーターは、制御ユニットも有する。この制御ユニットはステーターと接続されており、ステーター、殊にステーターのステーターコイルに回転磁界を形成させる。この制御ユニットは、ステーターの少なくとも1つのステーターコイルにおいて誘導された電圧を検出する、または、誘導された電圧をステーターコイルを通って流れるステーターコイル電流に依存して求め、ローターのローター位置をあらわすローター位置信号に依存して、および/またはローターのローター回転周波数を表す回転数信号に依存して、得ることができるトルクを表すモータートルク定数を求めるように構成されている。この制御ユニットは有利には、ステーターをモータートルク定数に依存して駆動制御するように構成されている。
【0002】
DE102007020068A1号から、電気モーターのモータートルク定数を特定するための方法および装置が知られている。ここでは、電気モーターのモータートルク定数は、モーターの作動中に、電気モーターによって生成された誘導電圧に依存して特定される。
【0003】
発明の概要
本発明では、冒頭に記載した様式の電子整流電気モーターにおける制御ユニットは、有利には電気モーターの作動中に、モータートルク定数の周波数成分を検出し、この周波数成分、殊にモータートルク定数の周波数振幅に依存して、ステーターにトルクを生成させる。
【0004】
有利には電気モーターはローター位置センサおよび/または回転数センサを有している。ここでローター位置センサは、ローターのローター位置を検出し、このローター位置を表すローター位置信号を形成するように構成されている。回転数センサは有利には、ローターのローター回転周波数を検出し、このローター回転周波数を表す回転数信号を形成するように構成されている。
【0005】
モータートルク定数の周波数成分を検出することによって、有利には、ローター磁界強度、ひいてはモータートルク定数に影響を与えるファクタも正確に検出することができる。さらに有利には、このようにして形成された電子整流電気モーターは有利には、製造公差、例えばステーターコイルの偏心、部分的にずれている永久磁石、部品、殊にステーターコイルの電気的な公差、永久磁石の相互にずれている磁化、ステーターコイルの相互にずれている磁界強度並びに磁気部品、例えば永久磁石を用いて形成されたローターの、温度に依存した磁界強度が検出される。例えば、フェライト材料は摂氏−40度の領域の低い温度において、摂氏20度の場合よりも小さい磁界強度を有している。ネオダイン材料は高い温度、例えば摂氏120度のもとで、摂氏20度の場合よりも小さい磁界強度を有する。電気モーターは例えば作動中に容易に較正される。従って、1回のローター回転にわたって、例えば1°のステップにおいて得ることができるトルクが検出され、このために求められたモータートルク定数がステーターのさらなる駆動制御に使用される、または記憶される。
【0006】
有利にはこのようにして形成された電子整流電気モーターは、モータートルク定数を1回のローター回転にわたって、さらに有利には1回のローター回転の少なくとも一部にわたって、殊に1つのステーターコイルに対しては電気角120°、またはさらに有利には電気角90°のみにわたって、または3つのステーターコイルに対しては電気角60°にわたって検出し、モーター作動中に、電気モーターの機械的および/または電気的な効率を、モータートルク定数を求めることを介して検出する。
【0007】
モータートルク定数はここで、電気モーターの得られるべきトルクと以下のような関係にある。
【0008】
【数1】
【0009】
ここで、
ind=誘導電圧
P=パワー
M=トルク
ω=角周波数
B=磁束密度
l=ステーターコイルの電流が流れる導体の長さ
r=導体と、ローターのローター長手軸との間隔である。
【0010】
電気的なパワーと機械的なパワーとを等価すると、誘導電圧Uind
【数2】
となる。
【0011】
式(5)および(4)においてあらわれる共通のファクタ
【数3】
はモータートルク定数と称される。
【0012】
電気モーターの有利な実施形態では、殊に高速フーリエ変換によって、フーリエ変換されたモータートルク定数が生成され、フーリエ変換されたこのモータートルク定数に依存してステーターを駆動制御するように、制御ユニットが構成されている。これによって有利には、少なくとも1つ、または複数の周波数成分、有利にはモータートルク定数の周波数スペクトルからの次数が求められ、ステーターが、少なくとも1つの周波数成分、殊に周波数成分の振幅またはスペクトルパワー密度に依存して駆動制御される。
【0013】
電気モーターの有利な実施形態では、有利には次数フィルターを用いて、ローター回転周波数をあらわす回転数信号に依存して、フーリエ変換されたモータートルク定数の次数分析を実行し、信号パラメーター、殊にモータートルク定数の周波数成分の少なくとも1つの次数の信号振幅に依存して、ステーターを駆動制御するように、制御ユニットが構成されている。これによって有利には、周波数分析、殊にフーリエ周波数分析、有利にはFFT分析(FFT=高速フーリエ変換)によって、例示的な温度に依存するトルク損失が検出される。
【0014】
電気モーターの有利な実施形態では、モータートルク定数の奇数の高調波に依存して、有利にはモータートルク定数の奇数の高調波にのみ依存して、ステーターを駆動制御するように制御ユニットが構成されている。これによって有利には、効果的なモータートルク定数を求めるための計算時間が節約される。
【0015】
電気モーターの有利な実施形態では、時間に依存したおよび/またはローター位置に依存した、モータートルク定数のプロファイルを、フーリエ変換されたモータートルク定数のフーリエ逆変換によって形成し、このローター位置に依存したプロファイルに依存してステーターを駆動制御するように、制御ユニットが構成されている。これによって有利にはモーターの動作時に、時間に依存した、ローター回転に関して場所に依存した、モータートルク定数のプロファイルを形成するために、少なくとも1つのマトリクス演算、有利には複数のマトリクス演算が制御ユニットによって実行される。
【0016】
例えば、時間に依存したおよび/またはローター位置に依存した、モータートルク定数のプロファイルを選択的な次数フィルタリング、フーリエ変換されたモータートルク定数のフーリエ逆変換によって形成し、時間に依存したおよび/またはローター位置に依存したプロファイルに依存してステーターを駆動制御するように、制御ユニットが構成されている。
【0017】
電気モーターの有利な実施形態では、モータートルク定数の設定されたローター角度領域、有利には電気角120°、さらに有利には電気角90°、特に有利には電気角60°に依存してステーターを駆動制御するように、制御ユニットが構成されている。60°のローター角度領域の場合には有利には、ステーターコイルに対する誘導電圧の周期が、3つのステーターコイルの誘導電圧の信号経過から合成される。従って、60°のローター角度領域にわたって、3つのステーターコイルの誘導電圧だけが検出されればよく、3つのステーターコイルの信号経過を加算することによって、平均的なステーターコイル特性に対する誘導電圧が合成される。
【0018】
これによって有利には計算時間および/または測定時間が短くなり、有利には、誘導されたモーター電圧の信号の鏡対称性、ひいてはモータートルク定数が利用される。
【0019】
制御ユニットは例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラまたはFPGA(FPGA=Field−Programmable−Gate−Array)によって形成される。
【0020】
電気モーターの別の実施形態では、フーリエ変換を用いた上述の方法とは無関係に、またはこれに対して付加的に、制御ユニットはモーター定数を、殊に位相ずれなくローパスフィルターによって求めることができる。このために制御ユニットは例えば、同一のまたは同じフィルターを二回、時間的に連続して、モータートルク定数の時間信号または誘導電圧に使用し、有利にはまずは前方方向で、次に後方方向で用いる。これによって有利には、周波数スペクトルにおいてのみ、周波数成分の振幅が整合される。ローパスフィルターは例えば、FIRフィルター(FIR=Finite−Impulse−Response)である。
【0021】
本発明は、電子整流電気モーター、殊に上述の電気モーターを駆動制御する方法にも関する。ここでこの電気モーターは、ステーターと、殊に永久磁石で形成されたローターとを有している。この方法では、有利には電気モーターの動作中に、電気モーターの生成可能なトルクをあらわすモータートルク定数が、殊に、ローターの回転運動時に誘導された電圧に依存して検出される。ここでこのモータートルク定数の周波数成分が検出され、この周波数成分、殊にモータートルク定数の周波数振幅に依存して、トルクを形成するようにステーターが駆動制御される。
【0022】
有利にはこの方法では殊に、FFT分析によって、フーリエ変換されたモータートルク定数が生成され、ステーターは、フーリエ変換されたこのモータートルク定数に依存して駆動制御される。
【0023】
さらに有利には、この方法では殊に次数フィルターによって、フーリエ変換されたモータートルク定数の次数分析が実行され、ステーターは信号パラメーター、殊にモータートルク定数の少なくとも1つの次数の信号振幅に依存して駆動制御される。次数はここで、基本周波数の高調波周波数である。
【0024】
この方法の有利な実施形態では、ステーターは、モータートルク定数の奇数の高調波にのみ依存して駆動制御される。
【0025】
有利にはこの方法では、モータートルク定数の時間に依存したおよび/またはローター位置に依存したプロファイルが、フーリエ変換されたモータートルク定数のフーリエ逆変換によって形成され、ステーターはこのローター位置に依存したプロファイルに依存して駆動制御される。
【0026】
この方法の有利な実施形態では、モータートルク定数の時間に依存したおよび/またはローター位置に依存したプロファイルが、フーリエ変換されたモータートルク定数のフーリエ逆変換を選択的に次数フィルタリングすることによって形成され、ステーターは時間に依存した、および/またはローター位置に依存したプロファイルに依存して駆動制御される。
【0027】
本発明を以下で、図面および他の実施例に基づいて説明する。別の有利な実施形態は、従属請求項に挙げられた特徴、および/または図の説明において挙げられた特徴から実現される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】電気モーターの実施例
図2】ステーターコイルの領域におけるローター回転の一部にわたって場所に依存したモータートルク定数
図3図2に示されたモータートルク定数の周波数成分を有するスペクトル
図4】電気モーターを作動させるための方法の実施例
【実施例】
【0029】
図1は電気モーター1の実施例を示している。この電気モーター1は、ステーター10を有している。ステーター10は3つのステーターコイル、すなわちステーターコイル14、ステーターコイル16およびステーターコイル18を有している。これらのステーターコイルはまとめて配置されており、これによって、電気モーターのローター12が回転磁界によって回転運動を行う。電気モーター1のローター12はこの実施例では、永久磁石を用いて形成されている。電気モーター1はパワー出力段22も有している。これは、出力側で接続部30を介して、ステーター10用の端子20と接続されている。端子20は、接続線路33を介して、ステーターコイル14の第1の端子と接続されている。端子20は接続線路34を介してステーターコイル18の第1の端子と接続されており、接続線路31を介してステーターコイル16の第1の端子と接続されている。ステーターコイル14、16および18の第2の端子はそれぞれ、共通のスター端子15と接続されている。このスター端子15は、接続線路35を介して端子20と接続されている。この端子20は、接続部32を介して、電気モーター1の制御ユニット24とも接続されている。制御ユニット24は接続部32、端子20およびステーターコイル14、16、18の接続線路31、33、34および例えば付加的に接続線路35を介して、ステーターコイル14、16および18内で誘導された電圧をそれぞれ検出する。スター端子15を介して例えば、3次または3次の倍数、例えば6次または9次が検出される。ステーターコイル14、16、18はそれぞれ端子20および接続部30を介してパワー出力段22から、回転磁界を形成するために通電される。制御ユニット24は出力側で接続部34を介してパワー出力段22と接続されており、かつ、パワー出力段22にステーターコイル14、16および18を通電させて、ステーターコイル14、16および18によって、ローター12を回転させる回転磁界が形成されるように構成されている。
【0030】
制御ユニット24は、接続部32および端子20を介して、ステーターコイル14、16および18から、それぞれ誘導された電圧を検出し、これをアナログからデジタルに変換する。制御ユニット24は、さらなるステップにおいて、事前にアナログからデジタルに変換された誘導電圧をそれぞれローター12のローター回転周波数によって除算し、このようにしてモータートルク定数を各ストランドに対して、すなわちステーターコイル14、16および18の各ステーターコイルに対して求める。モータートルク定数のこの算出、殊に計算は以下のように行われる:
【数4】
【0031】
ここで、
、b=フーリエ係数
=ストランドUのステーターコイルに対するモータートルク定数
k=波数、
【数5】
、λ=波長
n=1つの周期にわたったサンプルの数である。
【0032】
ベクトルであらわすと、モーター定数の周波数ベクトルは有利にはマトリクス[F]として計算される:
【数6】
【0033】
ここで、
[K]=モーター定数ベクトル
[FFT]=時間離散したフーリエ変換の演算子である。
【0034】
スキャンされるローター角度領域を例えば90°または有利には60°に低減することによって、低減されたモータートルク定数Krがベクトルとして以下のように使用される:
【数7】
【0035】
ここで、
=ステーターコイルストランドUの領域におけるモータートルク定数
=ステーターコイルストランドVの領域におけるモータートルク定数
=ステーターコイルストランドWの領域におけるモータートルク定数である。
【0036】
ここでnはローター角度領域のサンプリングの数であり、ローター角度領域は例えば電気角60°または電気角90°にわたっている。
【0037】
周波数ベクトル[F]は次に、相応に等価の乗算[FETr]・[Kr]によって置換される。
【0038】
制御ユニット24は、さらなるステップにおいて、モータートルク定数をフーリエ変換で求め、次数フィルター26によって、ローター12の回転数に対する基本波および高調波を求めるように構成されている。この算出は有利にはFFT分析によって行われる。制御ユニット24は例えばさらなるステップにおいて、モータートルク定数の時間的ないしは場所的なプロファイルを、事前に求められた周波数成分、殊に少なくとも1つ、有利には2つ、さらに有利には多数の次数の周波数成分によって再構築するように構成されている。モータートルク定数のプロファイル29は例えば、メモリ28内に格納される。このメモリ28は制御ユニット24の構成部分であり得る、またはこれと接続される。
【0039】
次数を求めるために、制御ユニット24はローターの回転数、すなわちローター回転周波数を、図示されていない回転数センサによって形成された回転数信号に依存して求める、またはローター回転周波数を、少なくとも1つ、有利には2つまたは3つの、ステーターコイル14、16および18内で誘導された電圧に依存して求める。
【0040】
制御ユニット24は例えば、モータートルク定数、以降では場所領域、殊にローター角度領域におけるステーターコイルUのための定数Kumを求めるために、マトリクス計算を実行する。ここで例えば選択的に、時間領域および/または場所領域における予期されるべき次数のみが逆変換される。マトリクス計算は例えば、制御ユニット24によって以下のように実行される:
【数8】
【0041】
ここで、
[Kum]=場所領域、殊にローター角度領域におけるストランドU用のモータートルク定数のベクトルである。
【0042】
モータートルク定数の検出領域または計算されるべき領域は例えば電気角60°に制限される。制御ユニットは有利にはこのように構成されている。なぜなら、モータートルク定数を場所的に表す、モータートルク定数信号の信号経過が対称に形成されており、モータートルク定数のプロファイルが偶数の高調波を有していないことが想定されるからである。これによって有利には信号の鏡対称性、殊に、事前に検出されたモータートルク定数信号の鏡対称性を利用することができる。モータートルク定数のベクトルはこの場合には、ベクトル(9)のように形成される。
【0043】
制御ユニット24は例えば、モータートルク定数の再構築をローター回転にわたった時間領域ないしは場所領域において、式(10)に従って実行する。
【0044】
有利には制御ユニットは高速フーリエ変換をサブマトリックスにおいて実行する。これによって有利には、制御ユニットに均一に負荷を与えることができる。
【0045】
図2は、ステーターコイルの領域におけるローター回転の一部にわたって場所に依存したモータートルク定数を表している、信号経過に対する実施例を示している。この信号経過は例えば、ステーターコイル、例えば図1に示されているステーターコイル14のために、制御ユニット1によって求められたものである。
【0046】
図2はこのためにダイヤグラム35を示している。このダイヤグラムは、横軸37と縦軸39を有している。横軸37は、図1におけるローター12のローター回転角度を表しており、縦軸はモータートルク定数の振幅を表している。
【0047】
ダイヤグラム35は、第1の部分曲線40と第2の部分曲線42とを備えた曲線も示している。部分曲線40は誘導電圧の信号経過の第1の半波を表しており、部分曲線42は誘導電圧の信号経過の第2の半波を表しており、それぞれ、誘導電圧を形成するローター12のローター回転周波数によって除算されている。
【0048】
部分曲線40および42がそれぞれ正弦形状の基本曲線を表しており、付加的に奇数の高調波を表していることが読み取れる。
【0049】
図3はスペクトル45を示している。このスペクトルは、図2に示されたモータートルク定数の周波数成分を有している。スペクトル45はダイヤグラムにおいて、周波数軸47と振幅軸49によって示されている。
【0050】
周波数軸47上には、次数、すなわち図2に示されたモータートルク定数の基本周波数に対する高調波が示されている。スペクトル45は第1の次数60、すなわちローター回転周波数に相応する、振幅50を伴った基本周波数と、振幅56を伴った第3の次数62と、振幅54を伴った第5の次数64と、振幅52を伴った第7の次数66を示している。振幅52は振幅50よりも小さく、振幅54は振幅52よりも小さく、振幅56は振幅54よりも小さい。
【0051】
図1に示された制御ユニット24は次数フィルター26によって、例えば図2に示されたモータートルク定数信号の高調波の振幅50、52、54および56を検出する。
【0052】
図4は、電子整流電気モーター、例えば永久磁石を用いて形成されているローター12を備えた、図1に示された電気モーター1を作動させるための方法の実施例を示している。
【0053】
この方法では、ステップ70において、電気モーターの作動中に、電気モーターの形成可能なトルクを表すモータートルク定数が、殊に、ローター回転時の誘導電圧に依存して検出される。
【0054】
ステップ72では、FFT分析によって、フーリエ変換されたモータートルク定数が生成され、さらなるステップ74において次数フィルターによって、フーリエ変換されたモータートルク定数の次数分析が実行され、少なくとも1つの信号パラメーター、殊にモータートルク定数の少なくとも1つの次数の信号振幅が求められ、格納される。
【0055】
ステップ76において、モータートルク定数の次数に依存して、例えばモータートルク定数の奇数の次数にのみ依存してステーターが駆動制御される。
図1
図2
図3
図4