特許第5661794号(P5661794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661794
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】電気モータの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20150108BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20150108BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20150108BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20150108BHJP
   B60W 20/00 20060101ALI20150108BHJP
   B60K 6/22 20071001ALI20150108BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20150108BHJP
   H02P 29/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   B60L15/20 JZHV
   B60K6/48
   B60K6/54
   B60K6/20 320
   B60K6/22
   B60L11/14
   H02P5/00 D
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-543542(P2012-543542)
(86)(22)【出願日】2010年10月21日
(65)【公表番号】特表2013-514051(P2013-514051A)
(43)【公表日】2013年4月22日
(86)【国際出願番号】EP2010065849
(87)【国際公開番号】WO2011082851
(87)【国際公開日】20110714
【審査請求日】2012年6月14日
(31)【優先権主張番号】102009054603.0
(32)【優先日】2009年12月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ティノ メアケル
(72)【発明者】
【氏名】マルクス クレチュマー
(72)【発明者】
【氏名】グンター ゲッティング
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−037006(JP,A)
【文献】 特開平07−264712(JP,A)
【文献】 特開平08−051788(JP,A)
【文献】 特開2003−088152(JP,A)
【文献】 特開昭62−178105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60K 6/22
B60K 6/48
B60K 6/54
B60L 11/14
B60W 10/08
B60W 20/00
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブトレーン(12)によって自動車(11)を駆動する電気モータ(1)の制御方法において、
・センサ(27)を用いて、前記電気モータ(1)のロータ(2)の回転角を複数回測定するステップと
前記電気モータ(1)、前記ドライブトレーン(12)または前記自動車(11)のうちの少なくとも1つの物理特性を、物理的モデルで求めるステップと、
・前記ロータ(2)の前記測定された回転角の値から前記物理的モデルにより、前記ロータ(2)の推定回転角および/または推定角速度および/または推定角加速度を求めるステップと、
・前記物理的モデルによりそれぞれ求められた、前記推定回転角および/または前記推定角速度および/または前記推定角加速度に依存して前記電気モータ(1)の固定子(3)の電磁石(4)の通電を制御または調整するステップと、を有する制御方法。
【請求項2】
前記物理的モデルは、ダブルマス振動体(5)であり、電気モータ(1)としての第1の質量(6)と、自動車(11)としての第2の質量(7)と、第1の質量(6)と第2の質量(7)との間のドライブトレーン(12)としてのトーションバースプリング(8)とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
駆動輪(20)の角速度が検出され、該駆動輪(20)の検出された角速度が前記物理的モデルで考慮される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記物理的モデルについて、前記第1の質量(6)の回転慣性モーメントと、前記第2の質量(7)の等価回転慣性モーメントと、トーションバースプリング(8)の等価バネ剛性および等価比減衰のうちの少なくとも1つとが決定される、ことを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記物理的モデルで前記自動車(11)の運転時に発生する、付加的な走行抵抗が考慮される、ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記電気モータ(1)のトルクが考慮される、ことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項7】
前記付加的な走行抵抗または等価バネ剛性が、間接的または直接的に、前記ロータ(2)の回転角の測定された値または求められた値から反復的に求められる、ことを特徴とする請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記付加的な走行抵抗を求める際または計算する際に、前記電気モータ(1)のトルクが使用される、ことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記付加的な走行抵抗を求める際または計算する際に、前記第1の質量(1)の回転慣性モーメント、前記第2の質量(7)の等価回転慣性モーメント、前記トーションバースプリング(8)の等価バネ剛性、等価比減衰のうちの少なくともいずれかが使用される、ことを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記付加的な走行抵抗は、自動車(11)の荷重または自動車(11)の登坂走行または降坂走行から生じる、ことを特徴とする請求項5から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記固定子(3)の電磁石(4)の通電のために測定された回転角値から前記ロータ(2)の回転角、角速度または角加速度を求める際に、前記付加的な走行抵抗が考慮される、ことを特徴とする請求項5から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記固定子(3)の電磁石(4)の通電が、前記付加的な走行抵抗に依存して実施される、ことを特徴とする請求項5から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記付加的な走行抵抗は、非線形連立方程式において反復的に計算される、ことを特徴とする請求項5から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記非線形連立方程式に、前記第1の質量(6)の回転慣性モーメント、前記第2の質量(7)の等価回転慣性モーメント、前記トーションバースプリング(8)の等価バネ剛性または等価比減衰のうちの少なくともいずれかが含まれる、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
自動車(11)用の駆動装置(9)であって、
・電気モータ(1)のロータ(2)の回転角を検出するためのセンサ(27)を備える電気モータ(1)と、
・ドライブトレーン(12)と、
を有する駆動装置において、
請求項1から14までのいずれか1項記載の方法を実施する駆動装置。
【請求項16】
前記駆動装置()は、内燃機関(13)をさらに有するハイブリッド駆動装置(10)である、請求項15記載の駆動装置。
【請求項17】
前記センサ(27)はリゾルバ(27)またはデジタルセンサ(27)である、ことを特徴とする請求項15または16記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による自動車を駆動するための電気モータの制御方法および請求項14の上位概念による自動車用のドライブトレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータは種々の技術的適用分野で使用される。たとえば電気車両またはハイブリッド車両では自動車を駆動するために電気モータが使用される。電気モータに通電するには、電気モータのロータの回転数または回転角を検出することが必要である。そのために電気モータには、回転角を検出するための対応するセンサが装備されている。検出された回転角からロータの角速度および/または角加速度を計算することができる。回転角を検出するためのセンサとしてリゾルバまたはデジタルセンサが使用される。リゾルバは、ロータまたは電気モータの回転角に比例する電圧を誘導するアナログ測定機器である。これによりとりわけ低回転数での、たとえば1000回転/分以下の回転での回転角および角速度を非常に正確に検出することができる。しかしリゾルバは高回転数ではエラーに脆弱である。なぜなら回転運動により誘導されるアナログ電圧の評価が不正確になり得るからである。これとは反対にインクリメント発生器とも称されるデジタルセンサはデジタル信号を出力し、このデジタル信号は時間機能に関連して回転数信号に変換することができる。デジタルセンサは、非常に頑強であることを特徴とし、したがって電気車両またはハイブリッド車両で使用するのに良く適する。しかしデジタルセンサは、回転数が低いときには単位時間当たりに測定されるインクリメントの数が小さくなり、そのため回転数が低いと検出された回転角の精度が非常に悪くなるという欠点を有する。しかし電気モータに通電するためにトルクを調整することができるようにするには、デジタルセンサによって測定された回転角の精度が高いことが必要である。
【0003】
特許文献1から、回転数が制御可能なモータ、とりわけブラシレスサーボモータの駆動方法が公知である。モータパラメータとして電流、位置角および回転数を制御することにより、位置センサによって測定された位置角から回転数がフィルタによって決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許公開公報第4122391号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ドライブトレーンによって自動車を駆動するための本発明の制御方法は、電気モータのロータの回転角を複数回測定するステップと、前記ロータの角速度および/または角加速度を、前記求められた回転角に依存して求めるステップと、前記電気モータの固定子のコイルとしての電磁石の通電を制御および/または調整するステップと、前記電気モータおよび/または前記ドライブトレーンおよび/または前記自動車の物理特性、とりわけ機械的特性を、物理的モデル、とりわけ機械的モデルで求めるステップと、前記ロータの回転角の測定値から前記物理的モデルにより、回転角および/または角速度および/または角加速度を求めるステップと、前記物理的モデルにより求められた回転角および/または角速度および/または角加速度に依存して電気モータの電磁石または固定子のコイルに通電するステップと、を有する。
【0006】
物理的モデルでは、物理的特性、とりわけ機械的特性が、電気モータおよび/またドライブトレーンおよび/または自動車の回転運動および/または並進運動に関して求められる。ロータの回転角の測定値が、とりわけロータの回転数が低いときに物理的モデルによって検査される。このようにして物理的モデルによって回転角の測定値は、電気モータのロータの回転角および/または角速度および/または角加速度の求められた値または計算された値に対する基礎を形成する。ここで回転角および/または角速度および/または角加速度の求められた値または計算された値は実際の値により近似し、これにより回転角および/または角速度および/または角加速度に対する値の精度が高くなる。この正確な値によって、固定子の電磁石の通電が実施される。回転角を検出するためのセンサとして、たとえばリゾルバまたはデジタルセンサが使用される。とりわけデジタルセンサでは、回転数が低いときに大きなエラーが発生する。この物理的モデルによって、回転数が低いときのデジタルセンサの低精度を補償することができ、これによりデジタルセンサをその頑強性ゆえに、電気車両およびハイブリッド車両で使用することができる。
【0007】
とりわけ物理的モデルは、ダブルマス振動体、または電気モータとしての第1の質量と、自動車としての第2の質量と、第1の質量と第2の質量との間のドライブトレーンとしてのトーションバースプリングとを備える電気振動回路であり、および/または駆動輪の角速度が検出され、駆動輪の検出された角速度が物理的モデルで考慮される。
【0008】
別の実施形態ではこのモデルのために、第1の質量の回転慣性モーメントと、第2の質量の等価回転慣性モーメントと、トーションバースプリングの等価バネ剛性および/または等価比減衰が決定される。第1の質量の回転慣性モーメントは、電気モータのロータの回転慣性モーメントである。第2の質量の等価回転慣性モーメントは仮想値であり、この仮想値は、並進運動を基準にした自動車の質量、すなわち自動車の質量慣性モーメントが回転運動の仮想等価回転慣性モーメントに換算されるように求められる。回転運動を実施する自動車のこれらのコンポーネント、とりわけ駆動輪もこの等価回転慣性モーメントでともに考慮される。ここで等価バネ剛性は、トルクに依存するドライブトレーンの捩れを表し、等価比減衰はドライブトレーンの振動減衰比を表す。回転慣性モーメント、等価慣性回転慣性モーメント、等価バネ剛性および等価比減衰は、一般的には自動車の構造設計から既知であり、したがって自動車のために見積もることができる。
【0009】
補充的実施形態では、物理的モデルで自動車の付加的な走行抵抗が考慮される。付加的な走行抵抗は自動車の運転時に発生し得る。たとえば登坂降坂走行または自動車の付加的な荷重は付加的な走行抵抗になる。この付加的な走行抵抗も、これらをともに考慮することで物理的モデルで求めることができる。たとえば走行抵抗が登坂走行で増大すると、第2の質量の仮想等価回転慣性モーメントを物理的モデルにおいて、登坂走行が止むまで短時間、高めることができる。反対に降坂走行では、仮想等価回転慣性モーメントをこの時間の間、低減することができる。
【0010】
好ましくは電気モータのトルクが考慮される。電気モータの制御および/または調整から、電気モータにより投入されるトルクが既知である。ここでこのトルクも物理的モデルでともに考慮することができる。
【0011】
変形実施形態では、付加的な走行抵抗および/または等価バネ剛性が間接的または直接的に、ロータの回転角の測定または求められた値から反復的に求められる。付加的な走行抵抗は、自動車内で構造的には設定されていないパラメータである。ロータの回転角およびこれから導出されるパラメータ、すなわち角加速度および角速度を常時、かつ何回も測定することにより、物理的モデルを用いて付加的な走行抵抗を計算することができる。これとは異なり、付加的な走行抵抗をセンサ、たとえば登坂走行および/または降坂走行を検出するためのセンサを用いて求めることができる。その場合、付加的な走行抵抗は物理的モデルに入り込み、これにより回転角および/または角速度および/または角加速度に対して計算された値の精度がさらに高まる。なぜならこれにより複数の追加のパラメータが存在するからである。これにより物理的モデルが格段に正確になり、実際の機械的特性をより良好に正確に導出することができる。
【0012】
好ましくは付加的な走行抵抗を求める際または計算する際に、電気モータのトルクが使用される。
【0013】
別の実施形態では、付加的な走行抵抗を求める際または計算する際に、第1の質量の回転慣性モーメントおよび/または第2の質量の等価回転慣性モーメントおよび/またはトーションバースプリングの等価バネ剛性および/または等価比減衰が使用される。
【0014】
とりわけ付加的な走行抵抗は、自動車の荷重および/または自動車の登坂走行または降坂走行から生じる。
【0015】
別の構成では、固定子の電磁石の通電のために、ロータの回転角および/または角速度および/または角加速度を測定された回転角値から求める際に、付加的な走行抵抗が考慮される。
【0016】
補充的変形実施形態では、固定子の電磁石の通電が、付加的な走行抵抗に依存して実施される。
【0017】
別の変形形態では、付加的な走行抵抗が非線形連立方程式において反復的に計算される。
【0018】
別の実施形態では、この非線形連立方程式に、第1の質量の回転慣性モーメントおよび/または第2の質量の等価回転慣性モーメントおよび/またはトーションバースプリングの等価バネ剛性および/または等価比減衰が含まれる。
【0019】
自動車用の本発明の駆動装置、とりわけハイブリッド駆動装置は、電気モータのロータの回転角を検出するためのセンサを備える電気モータと、制御ユニットと、好ましくは内燃機関と、ドライブレーンとを含み、特許請求の範囲に記載された方法が実行可能である。
【0020】
とりわけセンサはリゾルバまたはデジタルセンサである。図面の簡単な説明
以下に本発明の実施例を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】駆動装置の概略図である。
図2】電気モータの縦断面図である。
図3】ダブルマス振動体の平面図である。
図4】電気モータのロータの回転角を時間に依存して示す線図である。
図5】自動車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1にはハイブリッド駆動装置10として構成された、自動車11用の駆動装置9が図示されている。自動車11用のハイブリッド駆動装置10は、内燃機関13ならびに電気モータ1を自動車11の駆動のために有する。内燃機関13と電気モータ1は駆動軸14によって互いに結合されている。内燃機関13と電気モータ1との間の機械的結合は、クラッチ15によって形成され、解除される。さらに内燃機関13と電気モータ1を互いに結合する駆動軸14には弾性体16が配置されている。電気モータ1はディファレンシャルギヤ21と機械的に結合されている。電気モータ1とディファレンシャルギヤ21とを互いに機械的に結合する駆動軸14には、コンバータ17とトランスミッション18が配置されている。ディファレンシャルギヤ21により、ハーフシャフト19を通して駆動輪20が駆動される。
【0023】
図2には電気モータ1の縦断面が示されている。電気モータ1は、ロータ2と、電磁石を備えるコイル4としての固定子3とを有する。ロータ2は駆動軸14とともに構成ユニットを形成し、ロータ2には永久磁石22が配置されている。固定子3の電磁石4は、電気モータ1のハウジング23に支承されており、ハウジング23はベアリング28によって駆動軸14に支承されている。さらに電気モータ1には、デジタルセンサとして構成されたセンサ27が装備されており、このセンサ27はロータ2または駆動軸14の回転角を検出する。固定子3の電磁石4に通電するためには、ロータ2の回転角または角速度の正確な知識が必要である。センサ27によってロータ2の回転角φEが測定される。ロータ2の回転数が低いとき、センサ27の測定結果は低い精度しか有しない。後で説明する物理的モデルによって、センサ27により測定された回転角φEの値が改善され、回転角φEの計算値により高精度が達成され、これにより電磁石4の通電を精確に行うことができる。
【0024】
図3にはダブルマス振動体5が示されている。ダブルマス振動体5は回転振動体であり、その第1の質量6と第2の質量7は回転軸24を中心に仮想の回転運動を実施する。第1の質量6は第2の質量7とトーションバースプリング8によって結合している。ここで第1の質量6の回転慣性モーメントJ1は電気モータ1または電気モータ1のロータ2の回転慣性モーメントJ1に相当する。図1に図示された駆動装置9のコンポーネントでは、たとえば駆動軸14、トランスミッション18の一部、ディファレンシャルギヤ21の一部、ハーフシャフト19および駆動輪20が回転運動を実施する。これらコンポーネントの回転慣性モーメントは、自動車11の構造設計から既知であり、計算することができる。ここで自動車11は並進運動を実施する。自動車の並進運動の際に質量慣性モーメントが発生する。並進運動を実施する自動車11の質量の質量慣性モーメントは、自動車11の等価回転慣性モーメントJ2に換算される。ダブルマス振動体5内の第2の質量7の等価回転慣性モーメントJ2は、並進運動する自動車11の質量慣性モーメントから換算された等価慣性モーメントならびに回転運動する駆動装置9のコンポーネント、たとえば駆動軸14とハーフシャフト19の回転慣性モーメントに相当する。
【0025】
電気モータ1から駆動軸14にトルクがもたらされるとき、このトルクは駆動装置9のコンポーネントの捩れを引き起こす。とりわけ駆動軸14とハーフシャフト19が捩れ、電気モータ1の回転運動と駆動輪20の回転運動との間には横方向の遅延が発生する。物理的モデルではこれがドライブトレーン12の等価バネ剛性cによって考慮される。ドライブトレーン12はとりわけ、電気モータ1および内燃機関13を除いた駆動装置9のコンポーネントである。さらにドライブトレーン12のコンポーネントは振動減衰特性を有し、この振動減衰特性が物理的モデルで、図3のダブルマス振動体5にしたがい等価減衰定数dによって考慮される。自動車11の運転時にはさらに付加的な走行抵抗Fが発生する。この走行抵抗は、たとえば登坂走行から生じ、または降坂走行の際には負の走行抵抗Fが発生する。自動車11の加重上昇も付加的な走行抵抗Fに繋がる。この走行抵抗Fは、ダブルマス振動体5を備える物理的モデルで、第2の質量7の等価回転慣性モーメントJ2を一時的に高めるまたは下げることによって考慮される。
【0026】
ロータ2の回転角φEはセンサ27によって検出される。さらに図示しないセンサによって、第2の質量または駆動輪20が回転角φFが検出される。これらの値は毎秒たとえば数百回の頻度で測定され、引き続き測定された値が物理的モデルにダブルマス振動体5にしたがって取り込まれる。ここでは次式が使用される。
【0027】
αE(t)=c/J1*[φE(t)−φF(t)]−d/J1*[ωE(t)−ωF(t)]+1/J1*u(t)
αF(t)=c/J2*[φE(t)−φF(t)]+d/J2*[ωE(t)−ωF(t)]―F/J2
ωE(t)=ωE’(t);ωF(t)=ωF’(t)
これらの式から第1の質量6またロータ2の角速度αEと第2の質量7の角加速度αFを計算することができる。ここでは電気モータ1のトルクu(t)もともに考慮される。電気モータ1のトルクu(t)は、通電のための電気モータ1の制御から得られるか、またはそこから計算することができる。ここで第1の質量の角速度ωEは第1の質量6の回転角φEの時間導関数(φE’(t))であり、第1の質量7の角速度ωFは第2の質量7の回転角φFの時間導関数(φF’(t))である。したがってこれは線形連立方程式である。
【0028】
後に続く非線形連立方程式では、ドライブトレーン12の等価バネ剛性c=x1と自動車11の走行抵抗F=x2は未知の量である。
【0029】
αE(t)=x1/J1*[φE(t)−φF(t)]−d/J1*[ωE(t)−ωF(t)]+1/J1*u(t)
αF(t)=x2/J2*[φE(t)−φF(t)]+d/J2*[ωE(t)−ωF(t)]−x2/J2
回転角φEおよび好ましくは回転角φFも多数測定し、反復的に計算することにより、走行抵抗F=x2と好ましくは等価バネ剛性c=x1を計算することができる。またこれとは異なり、走行抵抗F=x2のみを計算することができ、等価バネ剛性cは一定であり、構造的に既知の量であるので計算しないこともできる(上記の式には示されていない)。走行抵抗Fと等価バネ剛性cを常時計算することで、物理的モデルがさらに改善され、洗練され、これによりロータ23に相当する第1の質量6の回転角φEまたは角速度ωEに対して計算された値をさらに改善することができる。このようにして、ロータ2の回転角に対する値φEと角速度ωEが、とりわけ電気モータ1の回転数が低くても高精度で存在する。これにより、センサ7がロータ2の回転角φEに対して比較的精度の低い結果を出力しても、固定子3の電磁石4の通電を高精度で行うことができる。電磁石4の通電とは、電流および/または電磁石4により導かれる電流の電圧および/または電流が電磁石4を流れる時間であると理解される。
【0030】
図4には電気モータのロータ2の回転角φEが時間の関数としてプロットされている。曲線25には測定された値が、曲線26には物理的モデルにより計算されたロータ2の回転角φEがプロットされている。計算された値は、測定された値よりも格段に正確に実際の値に対応する。
【0031】
全体として本発明の電気モータ1の制御方法により格段の利点が得られる。電気モータ1は、ロータ2の回転角φEを検出するためのセンサ27としてデジタルセンサを有する。このセンサ27は、電気モータ1の回転数が低いときには精度の低い測定値しか送出しない。物理的モデルによって、この精度の低い測定結果を処理し、洗練することができ、計算された値から電気モータ1を通電するための高精度の回転角φEが得られる。これにより頑強な特性を有するのでデジタルセンサを、ハイブリッド駆動装置10を有する自動車11にも使用することができ、回転数が低くときに電磁石4の通電の精度が低くなることもない。
図1
図2
図3
図4
図5