(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態.
[実施の形態の構成]
図1は、本発明の実施の形態にかかるトレーニング装置の構成を示す図である。
図1には、トレーニングを実施しているユーザ2も併せて示している。本実施形態にかかるトレーニング装置10は、筋力トレーニング機12を備えている。筋力トレーニング機12は、いわゆるレッグプレスを行うことができ、レッグプレスの際にユーザ2が脚を載置する可動部16を備えている。レッグプレスは、膝を伸ばす運動であり、下肢全体の筋力を強化し、立ち上がる、歩く、座るなどの基本動作に必要な筋力を向上させることができる。
【0027】
トレーニング装置10は、CPU(中央演算処理装置)20を備えている。CPU20は、運動状況検出器22、刺激信号生成器24および運動負荷変更装置28と接続するとともに、データベース26とも接続している。
【0028】
運動状況検出器22は、筋力トレーニング機12においてユーザ2がトレーニングを行っている際における、ユーザ2のトレーニング動作の状況を検出する。具体的には、筋力トレーニング機12には、可動部16の位置を検出するためのセンサが取り付けられている。運動状況検出器22は、このセンサからの電気信号を受けて、可動部16の移動に係る情報(
図1の紙面左右方向を軸とした位置、変位、変位速度等)を検出することができる。なお、運動状況検出器22には、日本特開2011−67319号公報に記載されている筋力トレーニング機械の運動状況検出装置にかかる構成を利用してもよい。
【0029】
刺激信号生成器24は、刺激電極14(刺激電極14a、14b)と接続している。
図1に示すように、本実施形態においては、刺激電極14がユーザ2の脚(太もも及びふくらはぎ部分)に取り付けられている。刺激電極14を介して、刺激信号生成器24が生成した刺激信号がユーザ2の脚に与えられる。刺激信号生成器24は、データベース26に格納されたデータに従って、そのデータが指定する電圧及び周波数の電気信号を生成し、刺激電極14に出力することができる。
【0030】
データベース26には、刺激信号生成器24に複数の異なる刺激信号を生成させるための条件として用いられる、刺激信号パラメータが記憶されている。この刺激信号パラメータは、振幅、周波数、バースト周波数、デューティ比、キャリア周波数、パターンが含まれており、これらの情報がデータベース化されたものがデータベース26である。バースト周波数は、特定の運動(動作)に利用される脳の部位を賦活させる信号であるバースト波の周波数であり、キャリア周波数は、データの無い搬送波のみの信号であるキャリア波の周波数であり、キャリア信号はバースト信号の周波数よりも高い周波数の矩形波で形成されている。これらバースト波とキャリア波を重畳したものを刺激信号として用いることができ、デューティ比により刺激強度を調節することができる。運動負荷変更装置28はデータベース26からの刺激信号パラメータの情報を入力値として、その入力値に応じて、電圧や周波数等の異なる複数種類の刺激信号を刺激電極14に出力することができる。刺激信号生成器24による刺激信号の生成や、データベース26のデータの内容等の詳細については後ほど説明する。
【0031】
運動負荷変更装置28は、筋力トレーニング機12におけるレッグプレス動作の負荷(具体的には、トレーニング実施中における可動部16の変位を妨げる負荷)を調節することができる。運動負荷変更装置28には、複数の負荷錘(同じ負荷錘を多数備えても良いし、異なる重さの負荷錘を所定数ずつ備えてもよい)が搭載されている。運動負荷変更装置28は、CPU20からの制御信号により指定される負荷を実現するように、指示された負荷の大きさに合わせて予め定められた負荷錘の選択パターンに従って、それら複数の負荷錘を組み合わせる。このようにすることで、ユーザ2や他の補助者による負荷調節作業を要求することなく、CPU20の制御によって負荷の調節を自動的に行うことができる。なお、好ましくは、運動負荷変更装置28は、日本特開2009−45236号公報に記載されている筋力トレーニング用負荷付与装置にかかる構成を搭載してもよい。
【0032】
[実施の形態の動作]
以下、本発明の実施の形態にかかるトレーニング装置10における動作(制御動作)について説明する。
図1を用いて説明した構成を備えたトレーニング装置10において、下記の(1)〜(3)に係る動作が実現される。
【0033】
(1)本実施形態における、脳の賦活にかかる刺激信号
本実施形態では、ユーザ2の神経から脳そして筋肉を刺激して、運動動作を行わせる信号を、刺激信号として刺激信号生成器24により生成させ、利用する。すなわち、本実施形態では、刺激信号として、脳神経の麻痺や感覚運動系の疾患による麻痺など、中枢神経系の損傷による運動障害により日常生活で必要となる動作が困難である者に対し、関節を動作させるために賦活する脳の特定部位と対応する神経に、当該特定部位を賦活させるために与える電気信号を用いるものとする。刺激信号の条件として用いる刺激信号パラメータは、後述する「刺激信号生成にかかる技術」を用いて予め定められており、データベース26に記憶されている。CPU20は、
刺激信号生成器24を制御して、データベース26に格納された刺激信号パラメータに従って
刺激信号生成器24に刺激信号を生成させ、その刺激信号を刺激電極14へと出力させる。生成された刺激信号により、神経、脳、筋肉が刺激されて、運動が補助される。
【0034】
(2)運動状況に基づく刺激信号の制御
図2乃至
図4は、本発明の実施の形態にかかる、運動状況に基づく刺激信号の制御技術について説明するための図である。前述したように、本実施形態にかかるトレーニング装置10はレッグプレスを行うための装置である。
図2に示すように、トレーニング装置10のユーザ2は、脚を伸ばし(時間T
1)、縮める(時間T
2)という動作を繰り返す。
【0035】
図3は、運動状況検出器22が検出した、ユーザ2が足を伸ばした距離lと、時間との関係を示した図である。
図4は、理想的な動き(スムースな動き)が実現された場合を示す図である。
図3および
図4は、ユーザ2が刺激信号を受けつつかつ自己の意思で脚を動かそうとしている状態において、運動状況検出器22が検出する距離lと時間との関係を想定して記載したものである。運動状況検出器22が運動状況を検出することにより、
図3に示すように、脚を延ばしきった先端までの距離lを頂点(変曲点)として、開始から時間T
1にかけて距離が増加していくとともに、変曲点の時刻(脚を延ばす動作から縮める動作に切り換えるタイミング)から時間T
2にかけて距離が減少していく。ここで、障害を有さない健常者によるレッグプレスでは、
図3において破線で示すように、時間T
1をかけて距離lへと直線的に距離が増加し、変曲点から時間T
2をかけて直線的に距離が減少すると想定される。しかしながら、ユーザ2がレッグプレス動作を行うに当たって何らかの身体的な困難性を有している場合には、そのような理想的な直線の特性とはならないことがある。具体的には、例えば、ユーザ2が何らかの障害(具体的には、脳神経の麻痺や感覚運動系の疾患による麻痺、中枢神経系の損傷による運動障害など)を有している場合が想定される。そのような場合には、
図3に実線で示すように、階段状に距離が増加し、減少するという違いが現れる。破線と実線とを比較すると、変化がスムース(滑らか)であるかどうかという面で違いがある。
【0036】
実施の形態にかかるトレーニング装置10では、CPU20が、運動状況検出器22で
図3のように運動状況を検出した場合に、検出した運動状況が階段状からスムース(滑らか)に近づくようにこの運動状況の検出結果を刺激信号生成器24にフィードバックし、刺激信号の処理内容を補正する。すなわち、CPU20は、現時点で
刺激信号生成器24が使用している刺激信号パラメータを、データベース26におけるより好ましい他の刺激信号パラメータ(目標とする運動動作へと近づく刺激信号パラメータ)へと書き換える。このような制御がある程度繰り返されることで、最終的に、データベース26内の刺激信号パラメータのなかから、ユーザ2の個別具体的な状況に合わせた最適な刺激信号を生成するための刺激信号パラメータを選択することができる。これにより、ユーザ2の運動状況を、理想的な状態(
図4)に近づけていくことができる。その結果、刺激信号を用いたトレーニングを行う場合に、実際の個別具体的な状況(例えば、トレーニングの内容、進行具合、効果、各ユーザの個性、症状など)に当初から適合しない場合があったり、あるいは個別具体的な状況が事後的に変化したときに実情に沿った適切な対処をすることができ
なくなったりすることを、抑制することができる。
【0037】
目標とする運動動作は、例えば、下記の1つ又は複数を選択することができる。下記の目標運動動作から選択した1つ以上の条件が満たされるように、CPU20が、検出した運動状況に基づいて、刺激信号生成器24の刺激信号に関する処理の内容を補正する。具体的には、選択した1つ以上の目標運動動作が実現される刺激信号パラメータを選択する。例えば、スムースな動きとなる刺激信号パラメータを優先的に設定したり、「動作距離が最も長くなるような刺激信号パラメータを優先的に設定する。
1.スムースな動き
2.動作距離が長い
3.対称性(
図3で、変曲点を境とした増加と減少の傾きの対称性)
4.無負荷から徐々に負荷増量
5.動作時間T1、T2が短い(動作速度が速くなるか)
【0038】
リハビリテーションの場面においては当初から負荷を与えたトレーニングをするのではなく、先ずは無負荷の状態で、上記の目標運動動作のうち1、2、3、および5のうち1つまたは複数の動作がほぼ理想的な動作(基準とする特性にほぼ一致する動作)となるまでトレーニング装置10を用いたトレーニングを進めてもよい。その後に、負荷を増量した状態で再び目標運動動作が達成されたかどうかを判定してもよい。この、目標運動動作達成と負荷増量とを繰り返すことにより、徐々に負荷増量を進めても良い。なお、「動作距離が長いかどうか」についての判定は、例えば、動作距離とトレーニング時間との相関が認められる状況下であれば、1回のトレーニングの継続時間などで便宜的に評価してもよい。
【0039】
(3)運動メニューに従った負荷増量
本実施形態にかかるトレーニング装置10は、刺激信号を用いた筋力トレーニングを、所定のプログラムに従って行うことができる。上記の「運動状況に基づく刺激信号の制御」という動作によって、トレーニング装置10において、ユーザ2のトレーニング動作についてスムースな動き等の所定条件が満たされるように、CPU20が最適な刺激信号の選択(刺激信号パラメータの選択)を行う。このような刺激信号パラメータの最適化により、ユーザ2の動作がより良好なものとなったら、更に、ユーザ2の筋力トレーニングの観点から負荷増量を行う。上述した刺激信号が脳、神経、筋肉を刺激することにより障害を有する者が運動、歩行を行うことができる状態に達したとしても、実際上、日常生活を送るためにはある程度の筋力が必要不可欠である。特に、障害により長期間の運動欠如期間があった場合において、衰えた筋力を十分に回復、増強するためには、計画的なトレーニングが求められる。
この点、上述したようにトレーニング装置10は運動負荷変更装置28を有しており、CPU20は、運動状況検出器22で検出した運動状況に基づいて、この運動負荷変更装置28における負荷の大きさを増加する。このとき、負荷の増量を適切に行う観点から、予め作成された所定の運動メニューに従って、少しずつ負荷を増加させる。この運動メニューは、例えば、東京都老人綜合研究所で考案された介護予防包括的高齢者運動トレーニング(Comprehensive Geriatic Training,CGT)方法に基づく運動メニューを用いることができる。
【0040】
上記の(1)〜(3)に説明した動作を実現する本実施形態にかかるトレーニング装置10によれば、刺激信号に関する処理に、トレーニング中にユーザ2が実際に動作したときの結果をフィードバックすることができる。これにより、ユーザ2の動作の結果を刺激信号の内容へと反映させることができる。
【0041】
[刺激信号生成にかかる技術]
図5は、本発明の実施の形態における、刺激信号生成にかかる技術を説明するための図である。具体的には、
図5には、実施の形態刺激信号生成システム50が示されている。この刺激信号生成システム50を用いて以下に述べる技術により刺激信号パラメータの情報が取得され、取得された刺激信号パラメータはデータベース26に記憶される。
刺激信号生成器24はデータベース26からの刺激信号パラメータの情報を入力値として、その入力値に応じた刺激信号を刺激電極14に出力する。
【0042】
刺激信号生成システム50は、脳賦活データ画像取得部54、関節角度データ取得部56、筋活動データ取得部58、刺激信号発生部60を備えるとともに、これらと接続するCPU(中央演算処理装置)62を備えている。脚52(被験者の脚)には、角度センサ70、71、筋電位センサ68、69、刺激電極66、67が取り付けられている。
関節角度データ取得部56は、角度センサ70、71と接続している。この角度センサ70、71は加速度センサであり、脚52の動きに応じて検出した加速度に基づいて、関節角度データ取得部56が角度を算出する。同様に、筋活動データ取得部58は、筋電位センサ68、69の出力値に基づいて、筋活動データを取得する。
脳賦活データ画像取得部54は、脳の賦活を測定する装置であって、例えば、MRI(magnetic reasonance imaging)装置、脳波計、近赤外光脳計測装置などの装置を介して、脳賦活データの画像データである画像データ53を取得する。本実施形態では、脚52を有する被験者の脳の賦活を測定するようにMRIなどの各種の脳賦活測定装置(図示せず)が配置されており、脳賦活データ画像取得部54はこの装置に接続しているものとし、脳賦活データ画像取得部54を介して
図5に模式的に示す画像データ53が取得されるものとする。
刺激信号発生部60より刺激信号を発生し、所定の方法で、賦活する脳の特定部位を刺激させる神経部位の位置、その時の脳賦活画像、関節角度、および筋活動データを取得する。CPU62はデータベース64と接続しており、
図1のデータベース26に格納すべき情報が生成された結果このデータベース64に記録される。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態において、刺激信号パラメータのデータベースを作成するための作成方法の手順を表すフローチャートであり、CPU62上で実行させるルーチンを示すフローチャートである。このフローチャートを実行する前提として、予め、複数の異なる刺激信号パラメータのリストを作成しておくものとする。予め定めたこれら複数の刺激信号パラメータのそれぞれについて、下記述べる如く被験者への刺激信号の付与およびこれに応じた各種データの収集などが行われることにより、最終的に、刺激信号パラメータのデータベースの作成が完了する。本実施形態においては、複数の異なるユーザ、複数の異なる利用場面(リハビリテーション、トレーニングの進行状況、時期)その他の複数の個別具体的な事情に対処できるように、複数の個数(例えば、100通り程度)の刺激信号パラメータ(P
1〜P
100)を含む刺激信号パラメータ群のデータベースが形成される。
【0044】
図6のフローチャートでは、先ず、CPU62が、刺激信号発生部60を制御して所定の刺激信号パラメータで刺激信号を生成する(ステップS80)。このステップでは、予定した刺激信号パラメータの1つ(初回であればリストの1番目であり、n回目であればリストのn番目のパラメータ値)が選択され、選択された刺激信号パラメータに従って刺激信号の生成が行われる。
【0045】
次に、CPU62が、生成した刺激信号を刺激電極66、67に対して出力させる処理を実行する(ステップS82)。
【0046】
次に、CPU62が、画像データ、関節角度データ、筋力データ(筋活動データ)を取得する処理を実行する(ステップS84)。このステップでは、上記の刺激信号の出力に応じた脳賦活データ画像取得部54、関節角度データ取得部56、筋活動データ取得部58の各種取得データが、CPU62側において入力値として受け取られる。
【0047】
次に、CPU62が、必要画像データが得られたかどうかを判定する処理を実行する(ステップS86)。画像データ53は、脳賦活データ画像取得部54で得られるデータであり、脳の賦活を特定するための画像情報として用いることができる。ステップS86における必要画像データが得られたかどうかの判定は、現時点で取得済の画像データ枚数が、次のステップで行う有意差検定に必要な所定の枚数に達したかどうかの判定である。
【0048】
次に、CPU62が、有意差検定、関節角度推定、筋活動推定を行う処理を実行する(ステップS88)。例えば、脚の動作を補助するためユーザに刺激信号を与えた際に、その刺激信号に応じて取得された画像データ53において、脳におけるその脚に対応する位置のみが活性化(賦活が最も高く)したと認められることが好ましい。逆に、脚の動作を補助するためユーザに刺激信号を与えた際に、その刺激信号に応じて取得された画像データ53において、脳におけるその脚に対応する位置以外の位置までもが活性化していること(賦活が高いこと)は、好ましくない。ステップS88の処理は、そのような「脳における目的とする対応位置のみが活性化しているかどうか」について、有意差検定方法を利用して検定する処理である。有意差検定の具体的手法としては、例えば、t検定やz検定があり、公知の検定手法を用いればよい。
【0049】
次に、CPU62が、全ての条件が終了したかどうかを判定する処理を実行する(ステップS90)。このステップでは、予定された条件(複数の刺激信号パラメータ)の刺激信号を用いて、それぞれ、上記のS80乃至S88までの一連の処理が実行されたかどうかが判定される。全ての条件が終了していない場合には、処理はステップS80に戻り、残りの条件についてステップS80からS88の処理が実行される。
【0050】
ステップS90で全ての条件が終了したと判定された場合には、CPU62が、最適なパラメータを決定する処理を実行する(ステップS92)。このステップでは、上記のステップS88における有意差検定で高い値(t検定であれば、t値)を示した刺激信号パラメータ条件を、最適なパラメータとして決定する。
【0051】
次に、CPU62が、最適なパラメータを書き込む処理を実行する(ステップS94)。このステップでは、ステップ92において決定された最適なパラメータをデータベース64に書き込む。次に、CPU62が、賦活データを記憶(データベース化)する処理を実行する(ステップS96)。このようにして作成された、刺激信号パラメータを含むデータを、必要に応じて、トレーニング装置10におけるデータベース26(つまり記録装置)へとコピーすることができる。
【0052】
[実施の形態の具体的処理]
図7および
図8は、本発明の実施の形態にかかるトレーニング装置10においてCPU20が実行するルーチンのフローチャートである。
【0053】
図7および
図8に示すルーチンでは、先ず、CPU20が、データベース26から刺激信号パラメータのデータを取り出す処理を実行する(ステップS100)。
【0054】
次に、CPU20が、刺激信号生成器24に刺激信号を発生させるための処理を実行し(ステップS102)、CPU20が、運動状況検出器22で運動状況を検出する処理を実行する(ステップS104)。
【0055】
次に、CPU20が、検出した運動状況に基づいて、トレーニング動作の変曲点(
図3参照)に達したか否かを判定する処理を実行する(ステップS108)。
【0056】
ステップS108において変曲点有りと判定された場合には、次に、CPU20が、その位置を変曲点として設定する処理を実行する(ステップS106)。このステップでの変曲点設定により、
図3に示すように変曲点の位置が特定できるため、時間T
1および時間T
2を特定することができる。
【0057】
次に、CPU20が、刺激信号生成器24に刺激信号を発生させるための処理を実行する(ステップS110)し、CPU20が、運動状況検出器22で運動状況を検出する処理を実行する(ステップS112)。
【0058】
次に、CPU20が、スムース判定すなわち上記ステップS112で検出した運動状況がスムースな動きとなっているかどうかを判定するための処理を実行する(ステップS114)。このステップでは、CPU20は、
図3に実線で示すような、トレーニング動作がスムースに行われないことにより生ずる段差が、所定の度合まで小さいかどうかを判定する判定処理を実行する。段差が所定の度合より小さいかどうかの判定は各種の評価手法を適宜に採用すればよいが、例えば、スムースな基準直線(
図3の破線)と実際に検出した段差の凹凸の各頂点との間のずれの大きさが、所定値よりも小さいかどうか等の判定を行っても良い。現在の刺激信号ではユーザ2の動作補助が十分になされない等の事情からスムース判定ができないか、或いは、スムースの度合が所定の基準に照らして低い場合には、このステップの条件は不成立(NO)とされ、処理はステップS110に戻り、刺激信号パラメータが変更されたうえで処理が繰り返される。
【0059】
次に、CPU20が、スムースパラメータ設定の処理を実行する(ステップS116)。このステップでは、スムース判定の結果に基づいて、データベース26に記憶した刺激信号パラメータのうち、最もスムースな動きが達成される観点から最適な刺激信号パラメータの選択が行われる。つまり、このステップでは、ステップS114におけるスムース判定の結果に基づいて、最もスムースな動作を実現した刺激信号パラメータを、最適な刺激信号パラメータとして設定する処理が実行される。
【0060】
次に、CPU20が、刺激信号生成器24に刺激信号を発生させるための処理を実行し(ステップS118)、CPU20が、運動状況検出器22で運動状況を検出する処理を実行する(ステップS120)。
【0061】
次に、CPU20が、動作距離を判定する処理を実行する(ステップS122)。この動作距離の判定は、1セットのトレーニングあたりにおいて、ユーザ2がレッグプレスによる脚の伸縮動作により変位させた距離を合計した値を、所定の基準(例えば過去の同一ユーザのトレーニング実績、履歴)と比較することにより、行うことができる。現在の刺激信号ではユーザ2の動作補助が十分になされない等の事情から動作距離の判定ができないか、或いは、動作距離が所定の基準に照らして延びていない場合には、このステップの条件は不成立(NO)とされ、処理はステップS118に戻り、刺激信号パラメータが変更されたうえで処理が繰り返される。
【0062】
ステップS122の条件成立(YES)が認められた場合には、CPU20が、動作距離パラメータの設定をする処理を実行する(ステップS124)。このステップでは、ステップS122における動作距離の判定処理の結果に基づいて、最も長い動作距離を実現した刺激信号パラメータを、最適な刺激信号パラメータとして設定する処理が実行される。
【0063】
次に、CPU20が、刺激信号生成器24に刺激信号を発生させるための処理を実行し(ステップS126)、CPU20が、運動状況検出器22で運動状況を検出する処理を実行する(ステップS128)。
【0064】
次に、CPU20が、対称性の判定を行う処理を実行する(ステップS130)。ステップS130は、運動状況検出器22の検出結果に基づいて得られる時間と距離の関係(
図3参照)において、変曲点を基準として、トレーニング動作(変位)が対称性が満たされているかどうかを判定する処理である。この処理では、変曲点を境に時間T
1と時間T
2のそれぞれの区間の検出結果を比較して、その差分が所定の判定値より大きいかどうかに基づいて、対称性を判断すればよい。現在の刺激信号ではユーザ2の動作補助が十分になされない等の事情から対称性の判定ができないか、或いは、対称性が所定の基準に照らして低い場合には、このステップの条件は不成立(NO)とされ、処理はステップS126に戻り、刺激信号パラメータが変更されたうえで処理が繰り返される。
【0065】
次に、CPU20が、対称性パラメータの設定をする処理を実行する(ステップS132)。このステップでは、ステップS126における対称性の判定処理の結果に基づいて、最も高い対称性を実現した刺激信号パラメータを、最適な刺激信号パラメータとして設定する処理が実行される。
【0066】
次に、
図7から
図8のフローチャートへとさらに処理が進み、CPU20が、刺激信号生成器24に刺激信号を発生させるための処理を実行し(ステップS134)、CPU20が、運動状況検出器22で運動状況を検出する処理を実行する(ステップS136)。
【0067】
次に、CPU20が、負荷状況の判定を行う処理を実行し(ステップS138)、CPU20が、運動状況検出器22で運動状況を検出する処理を実行する(ステップS140)。
【0068】
次に、CPU20が、CGT理論に基づき負荷を変更し、指定のトレーニングを行うための処理を実行する(ステップS142)。このステップでは、トレーニング装置10を使用する複数のユーザに対して予め作成され、データベース26(又は他の記憶装置)に記憶された「CGT理論に基づく運動メニュー」に基づいて、負荷の変更が行われる。具体的には、CPU20が、記憶された「運動メニューに従って指定された負荷」が実現されるように、運動負荷変更装置28を制御する。
なお、負荷の変更に応じて、変更後の負荷でユーザ2が正常にトレーニング動作(レッグプレス)を行うことができたかどうかが検出され、その検出結果が、履歴データとして残される。一方、変更後の負荷に対してユーザ2がトレーニング動作をできない場合には、「その負荷では動かなかった」ということを履歴データとして記録し、次のステップへと進む。
【0069】
次に、CPU20が、刺激信号による筋力トレーニングのデータベースを作成する処理を実行する(ステップS144)。このステップでは、今回のルーチンの結果(例えば、各ユーザごとの、刺激信号パラメータの設定値、変更履歴、負荷の大きさ、トレーニング動作の履歴、運動状況検出結果の履歴など)が、データベース26内の情報の更新に用いられる。その後、今回のルーチンが終了し、処理がリターンする。
【0070】
以上の処理によれば、CPU20および刺激信号生成器24における刺激信号に関する処理(具体的には、刺激信号パラメータの値)に、トレーニング中にユーザ2が実際に動作したときの結果をフィードバックすることができる。これにより、ユーザ2の動作の結果を刺激信号の内容へと反映させることが可能な、刺激信号を用いたトレーニングを行うのに適したトレーニング装置10が提供される。
このようなフィードバック制御により、実際の運動状況の検出結果が刺激信号パラメータおよび負荷制御へと自動的に反映されるため、トレーニング(特にリハビリテーション)の場面における、医師、看護師、理学療法士などの専門職種に携わる者の負担を軽減することができる。
【0071】
なお、上述した実施の形態においては、筋力トレーニング機12が、前記第1
、2の発明における「
筋力トレーニング機」
および前記第3〜5の発明における「トレーニング機」に、運動状況検出器22が、前記第
1〜5の発明における「検出部」に、刺激信号生成器24が、前記第1
〜5の発明における「信号生成部」に、CPU20が、前記第1
〜5の発明における「制御部」に、それぞれ相当している。また、上述した実施の形態においては、データベース26
により、「異なる複数の刺激信号を記憶し、又は異なる複数の刺激信号を生成するための刺激信号の条件として定めた刺激パラメータを記憶した記憶部」
が実現される。また、上述した実施の形態においては、目標運動動作に関して定めたステップS114、S122、S130の判定処理の判定に用いた値が、前記
第1、3の発明における「所定の基準情報」に相当している。また、上述した実施の形態では、運動負荷変更装置28
により、「前記トレーニング機における前記変位部の負荷を調整する負荷調整部」
が実現される。また、上述した実施の形態においては、
図7および
図8のルーチンにおいて、ステップS104、S112、S120、S128およびS136の処理をCPU20が実行することにより
、「トレーニングの動作に応じたトレーニング機の変位又は前記トレーニングの動作に応じたトレーニング実施者のトレーニング対象部位の変位を検出する検出手段」が、ステップS102、S110、S118、S126およびS134の処理をCPU20が実行することにより
、「前記トレーニングの際にトレーニング実施者に刺激信号を与える刺激手段」が、ステップS116、S124、S132の処理をCPU20が実行することにより
、「前記検出手段による変位の検出結果に基づいて、前記刺激信号の内容を補正する補正手段」が、それぞれ実現さ
れる。
【0072】
なお、実施の形態では、刺激信号生成システム50を用いて作成したデータベースを用いて、「関節を動作させるために賦活する脳の特定部位と対応する神経に、当該特定部位を賦活させるために与える電気信号」を刺激信号として生成する。しかしながら、本発明はそのような刺激信号生成システム50を用いた刺激信号生成技術のみに限定されるものではなく、本実施形態にかかる刺激信号生成にかかる技術以外の技術を用いて、トレーニング中のユーザの動作を刺激又は補助するための信号(所定電圧、周波数、デューティ比その他の条件を定めた電気信号等)を作成、データベース化、生成してもよく、この信号を刺激信号として生成する機器を刺激信号生成器24の代わりに用いても良い。その際には、複数種類の刺激信号を出力できるように、刺激信号の条件を定めたテーブル等をデータベース26に記憶しておき、上記実施の形態と同様に、CPU20側で刺激信号の切替を指定できるようにすればよい。
【0073】
なお、実施の形態では、トレーニング装置10で実施するトレーニング動作として、レッグプレスを選択した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、ヒップアブダクション、ローイング、レッグエクステンションといった各種のトレーニング動作を行うためのトレーニング装置にも、本発明を適用することができる。上半身の筋力を鍛える各種トレーニングや、脳神経の麻痺や感覚運動系の疾患などの事情により四肢運動の運動機能障害のリハビリテーションにおいて腕、肩、肘、手首、指、その他上半身、下半身の各種部位を動かすトレーニングを実施するトレーニング装置においても、本発明を適用することができる。これらの各種トレーニングにおいても、上記の実施の形態で説明したのと同様に、刺激信号の生成および付与、運動状況に基づく刺激信号の制御、並びに運動メニューに従った負荷増量についての処理を、CPU20、トレーニング装置10、運動状況検出器22、刺激信号生成器24、データベース26、運動負荷変更装置28を含む
図1のハードウェア構成上で実現すればよい。すなわち、刺激信号の生成にかかる技術を用いてデータベースを作成するとともに、これらの各種トレーニングの運動状態の検出および目標動作との乖離を評価してその結果に基づいて、CPUにおける刺激信号や負荷調節に関する制御内容の補正(フィードバック)をすればよい。ユーザのトレーニング動作を検出するためのセンサの構成についても、位置、変位、速度、加速度、角速度、角加速度その他の物理量を電気的、機械的その他の各種物理情報として検出する各種センシング技術を用いればよい。例えば、スムース判定、対称性判定などのために、加速度センサを用いることができる。
【0074】
なお、運動状況の検出は、筋力トレーニング機12においてトレーニング中に変位する部位(変位部)の変位を検出するものであってもよいし、トレーニングの動作に応じたトレーニング実施者(ユーザ2)のトレーニング対象部位(実施の形態では、脚の角度や伸ばした長さ等)の変位を検出するものであってもよい。
【0075】
なお、運動状況の検出においては、トレーニング動作の加速度を加速度センサを用いて検出してもよい。具体的には、トレーニング動作に応じて変位する身体部位(腕、肩、肘、手首、指、その他上半身、下半身の各種部位)に加速度センサを取り付けて、加速度の測定を行っても良い。また、トレーニングの動作の変位についての軌跡(具体的には、二次元的な軌跡つまり平面上の軌跡、三次元的な軌跡つまり三次元空間の軌跡)を、例えばモーションセンサ等の各種センサを用いたセンシング技術によって検出してもよい。これらの検出データを所定の基準データ(基準値や基準パターン)と比較することにより、実際のトレーニングの動作と、所定の動作(現段階で予定する動作、あるいは標準的若しくは理想的な動作)との間の乖離(差異)の大きさを算出し、その算出結果を「運動状況に基づく刺激信号の制御」に用いても良い。
【0076】
なお、
図7および
図8に記載したフローチャートでは、変曲点設定に関する処理、スムース判定に関する処理、動作距離判定に関する処理、対称性判定に関する処理、負荷状況判定に関する処理、CGT理論に基づく負荷調整等に関する処理、データベース作成に関する処理が、順次直列的に進められるように作成されている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。上記列挙したそれぞれの処理は、必ずしも、上記実施の形態にかかる
図7および
図8に記載した順番に限られず、適宜に順番を変更してもよい。また、本発明は、
図7および
図8のように各処理が直列的に順次進められる形態に必ずしも限定されない。幾つかの処理を並列的に実行させるようにしてもよい。