(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は本発明が適用されるショベルの一例であるハイブリッド式ショベルの側面図である。本発明が適用されるショベルとしては、ハイブリッド式ショベルに限られず、蓄電装置からの電力で電動作業要素あるいは電動負荷を駆動するものであれば、他の構成のショベルにも適用することができる。
【0012】
図1に示すハイブリッド式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0013】
図2は、
図1に示すハイブリッド式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは
太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は
細い実線でそれぞれ示されている。
【0014】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
メインポンプ14は可変容量式油圧ポンプであり、斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量を制御することができる。
【0015】
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
【0016】
電動発電機12には、インバータ18Aを介して、蓄電器を含む蓄電系(蓄電装置)120が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
【0017】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータを駆動制御することによる蓄電器(キャパシタ)の充放電制御を行う。コントローラ30は、蓄電器(キャパシタ)の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)に基づいて、昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これにより蓄電器(キャパシタ)の充放電制御を行う。
【0018】
この昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバスに設けられたDCバス電圧検出部によって検出されるDCバス電圧値、蓄電器電圧検出部によって検出される蓄電器電圧値、及び蓄電器電流検出部によって検出される蓄電器電流値に基づいて行われる。
【0019】
さらに、蓄電器電圧検出部によって検出される蓄電器電圧値に基づいて、蓄電器(キャパシタ)のSOCが算出される。また、上述では蓄電器としてキャパシタを例として示したが、キャパシタの代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を蓄電器として用いてもよい。
【0020】
図2に示すハイブリッド式ショベルは旋回機構を電動にしたもので、旋回機構2を駆動するために旋回用電動機21が設けられている。電動作業要素としての旋回用電動機21は、インバータ20を介して蓄電系120に接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回変速機24とで負荷駆動系が構成される。
【0021】
図3は蓄電系120の構成を示すブロック図である。蓄電系120は、蓄電器としてのキャパシタ19と、昇降圧コンバータ
100とDCバス110とを含む。DCバス110は、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ 電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられている。キャパシタ電圧検出部112とキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ 電圧値とキャパシタ 電流値は、コントローラ30に供給される。
【0022】
昇降圧コンバータ100は、電動発電機1
2、及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。DCバス110は、インバータ18A及び20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機1
2、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
【0023】
図2に戻り、コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
【0024】
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
【0025】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるキャパシタ 19の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。
【0026】
昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ 電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
【0027】
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18Aを介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ 19に供給される。
【0028】
図4は、蓄電系(蓄電装置)120の回路図である。昇降圧コンバータ100は、リアクトル101、昇圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102A、降圧用IGBT102B、キャパシタ19を接続するための電源接続端子104、インバータ18
A,20を接続するための出力端子106、及び、一対の出力端子106に並列に挿入される平滑用のコンデンサ107を備える。昇降圧コンバータ100の出力端子106とインバータ18A,20との間は、DCバス110によって接続される。
【0029】
リアクトル101の一端は昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続され、他端は電源接続端子104
の一方に接続される。リアクトル101は、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴って生じる誘導起電力をDCバス110に供給するために設けられている。
【0030】
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタで構成され、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子(スイッチング素子)である。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、コントローラ30により、ゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bがそれぞれ並列接続される。
【0031】
キャパシタ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受が行えるように、充放電可能な蓄電器であればよい。なお、
図4には、蓄電器としてキャパシタ19を示すが、キャパシタ19の代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、リチウムイオンキャパシタ、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源
を用いてもよい。
【0032】
電源接続端子104及び出力端子106は、キャパシタ19及びインバータ18A,20が接続可能な端子であればよい。一対の電源接続端子104の間には、キャパシタ電圧を検出するキャパシタ電圧検出部112が接続される。一対の出力端子106の間には、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111が接続される。
【0033】
キャパシタ電圧検出部112は、キャパシタ19の電圧値
(キャパシタ電圧値)Vcapを検出する。DCバス電圧検出部111は、DCバス110の電圧値
(DCバス電圧)Vdcを検出する。平滑用のコンデンサ107は、出力端子106の正極端子と負極端子との間に挿入され、DCバス電圧を平滑化するための蓄電素子である。この平滑用のコンデンサ107によって、DCバス110の電圧は予め定められた電圧に維持されている。
【0034】
キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子(P端子)側においてキャパシタ19を流れる電流の値を検出する検出手段であり、電流検出用の抵抗器を含む。すなわち、キャパシタ電流検出部113は、キャパシタ19の正極端子に流れる電流値I1を検出する。一方、キャパシタ電流検出部116は、キャパシタの負極端子(N端子)側においてキャパシタ19を流れる電流の値を検出する検出手段であり、電流検出用の抵抗器を含む。すなわち、キャパシタ電流検出部116は、キャパシタ19の負極端子に流れる電流値I2を検出する。
【0035】
昇降圧コンバータ100において、DCバス110を昇圧する際には、昇圧用IGBT102Aのゲート端子にPWM電圧が印加され、降圧用IGBT102Bに並列に接続されたダイオード102bを介して、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力がDCバス110に供給される。これにより、DCバス110が昇圧される。
【0036】
DCバス110を降圧する際には、降圧用IGBT102Bのゲート端子にPWM電圧が印加され
、インバータ18A,20を介して供給される回生電力がDCバス110から
降圧用IGBT102Bを介してキャパシタ19に供給される。これにより、DCバス110に蓄積された電力がキャパシタ19に充電され、DCバス110が降圧される。
【0037】
本実施形態では、キャパシタ19の正極端子を昇降圧コンバータ100の電源接続端子104に接続する電源ライン114に、当該電源ライン114を遮断することのできる遮断器としてリレー130−1が設けられる。リレー130−1は、電源ライン114へのキャパシタ電圧検出部112の接続点115とキャパシタ19の正極端子の間に配置されている。リレー130−1はコントローラ30からの信号により作動し、キャパシタ19からの電源ライン114を遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。
【0038】
また、キャパシタ19の負極端子を昇降圧コンバータ100の電源接続端子104に接続する電源ライン117に、当該電源ライン117を遮断することのできる遮断器としてリレー130−2が設けられる。リレー130−2は、電源ライン117へのキャパシタ電圧検出部112の接続点118とキャパシタ19の負極端子の間に配置されている。リレー130−2はコントローラ30からの信号により作動し、キャパシタ19からの電源ライン117を遮断することで、キャパシタ19を昇降圧コンバータ100から切り離すことができる。なお、リレー130−1とリレー130−2を一つのリレーとして正極端子側の電源ライン114と負極端子側の電源ライン117の両方を同時に遮断してキャパシタ19を切り離すこととしてもよい。
【0039】
なお、実際には、コントローラ30と昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bとの間には、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bを駆動するPWM信号を生成する駆動部が存在するが、
図4では省略する。このような駆動部は、電子回路又は演算処理装置のいずれでも実現することができる。
【0040】
本実施形態では、上述のような構成のハイブリッド式ショベルにおいて、キャパシタ19の充電率SOCを常に高い状態に維持することで、蓄電器からの電力で電気負荷をエネルギ効率の良い状態で駆動することができる。
【0041】
本実施形態では、以上のような構成のハイブリッド式ショベルにおいて、コントローラ30には、蓄電装置の故障及び蓄電器の劣化などに起因する異常を判定する異常検出部が設けられる。異常検出部により検出した異常に対応して、適切な処理を行なうことで、安全で安定したショベルの運転を実現することができる。
【0042】
図5は本実施形態による異常検出部200の機能ブロック図である。異常検出部200は、SOC計測部210、電流積分部220、蓄電状態推定部230、及び異常判断部240を有する。異常検出部200はマイクロコンピュータ等より構成される制御回路により実現される。
図5に示す例では、異常検出部200
とショベルのコントローラ30とは別に示されているが、コントローラ30に含まれていてもよい。
【0043】
本実施形態では、コントローラ30にDCバス電圧の目標値Vdcrが供給される。コントローラ30は、DCバス電圧の目標値Vdcrと昇降圧コンバータ100から出力される電圧値(すなわち、
DCバス電圧検出部11
1が検出したDCバス電圧Vdc)とキャパシタ19に供給する充電電流の目標値Irを求め、昇降圧コンバータ100に供給する。昇降圧コンバータ100は、キャパシタ19に供給する充電電流の目標値Irに基づいて、キャパシタ19に充電電
流を供給する。以上のようにしてキャパシタ19は充電され、充電率SOCがシステム制御上限値とシステム制御下限値との間の一定の範囲内に維持される。
【0044】
本実施形態による異常検出部200は、ある時間間隔内でのキャパシタ19の充電率SOCの変化量ΔSOCに基づいて、キャパシタの蓄電状態を推定して推定値を求めて異常の有無を判断する。
【0045】
異常検出部200のSOC計測部210は、キャパシタ電圧検出部112が検出したキャパシタ電圧値Vcapとキャパシタ電流検出部116が検出した電流値I1とに基づいて、キャパシタ19の充電率SOCを計測する。SOC計測部210は、計測した充電率SOCを異常判断部240に出力する。電流積分部220は、キャパシタ電流検出部116が検出した電流値I1を積分して、積分値を蓄電状態推定部230に出力する。この積分値は異常判断部240にも供給される。
【0046】
蓄電状態推定部230は、キャパシタ電圧検出部112が検出したキャパシタ電圧値Vcapとキャパシタ電流検出部116が検出した電流値I1と電流積分部220から供給される積分値とに基づいて、充電率SOCの変化量ΔSOCを演算する。この充電率SOCの変化量ΔSOCは、キャパシタ19の実際の充電率SOCの変化量ではなく、
キャパシタ電圧
値Vcapと電流
値I1と電流積分値とから推定した推定値である。蓄電状態推定部230は、得られた充電率SOCの変化量ΔSOCを異常判断部240に出力する。
【0047】
異常判断部240は、SOC計測部210から供給される充電率SOCと蓄電状態推定部230から供給される充電率の変化量ΔSOCとから、キャパシタ19を含む蓄電系(蓄電装置)120の異常の有無を判断する。異常判断部240は、キャパシタ19を含む蓄電系(蓄電装置)120に異常があると判断すると、その異常に対処すべく処理を行なう。
【0048】
ここで、蓄電装置の異常判断処理について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6は蓄電装置の異常判断処理のフローチャートである。
図7は異常判断処理を行なっている際の、電流値I1及びキャパシタ19の充電率SOCの時間変化を示すグラフである。
【0049】
異常判断処理が開始されると、まずステップS1において、第1の一定時間間隔T1内における電流値I1がキャパシタ電流検出部113により計測される。ここでの第1の一定時間間隔T1とは、時刻t0から時刻t1までの短い時間であり、例えば0.5秒である。また、ステップS1において、時刻t0におけるキャパシタ19の充電率SOC0と、時刻t1におけるキャパシタ19の充電率SOC1とがSOC計測部210で計測される。
【0050】
次に、ステップS2において、電流積分部220は、電流値I1を時刻t0から時刻t1までの間(すなわち、第1の一定時間間隔T1)で積分した積分値を演算し、その積分値の絶対値が、所定値Aより大きいか否かを判定する。電流値I1を積分することにより、時刻t0から時刻t1までに流れた電流量を求めている。電流値I1の積分値を所定値Aと比較することにより、キャパシタ19に電流が流れたか否かが判定されている
。時刻t0から時刻t1までの間(第1の一定時間間隔T1)は短い時間に設定されているので、電流値I1の計測値にノイズが入るおそれがある。そこで、所定値Aを予め設定しておき、ノイズの影響を除去している。ここで、所定値Aは、ショートスパンの時間において、電流が確実に流れたかを判定できる程度の電流量が設定されている。すなわち、電流値I1の積分値が所定値A以下である場合は、ノイズにより電流値I1が計測された可能性があるとして、キャパシタ19に電流が流れたとは判定しない。一方、電流値I1の積分値が所定値Aより大きい場合は、電流値I1の計測値はノイズより大きく、実際に電流が流れたと判定する。なお、電流値I1の積分値の絶対値をとる理由は、キャパシタ19から放電している場合の電流値I1を正の値とすると、キャパシタ19へ充電している場合の電流値I1は負の値となるからである。したがって、ステップS2では、充電の場合でも放電の場合でも、キャパシタに電流が流れたか否かが判定されている。
【0051】
ステップS2において、電流値I1を時刻t0から時刻t1までの間で積分した値の絶対値が所定値Aより大きく無い(所定値A以下である)と判定された場合、すなわち、キャパシタ19に電流が流れなかったと判定された場合、処理はステップS1に戻り、再び電流値I1及び充電率SOC0,SOC1の計測が行なわれる。一方、ステップS2において電流値I1の積分値の絶対値が所定値Aより大きい、すなわちキャパシタ19に電流が流れたと判定されると、処理はステップS3に進む。
【0052】
ステップS3では、異常判断部240は、時刻t1における充電率SOC1から時刻t0における充電率SOC0を引いた値の絶対値が所定値Bより小さいか否かを判定する。すなわち、時刻t0から時刻t1までの間(第1の一定時間間隔T1)に変化した充電率の変化量が、所定値Bより小さいか否かが判定される。所定値Bは、キャパシタ19に上述の所定値Aに相当する電流が流れた場合に、キャパシタ19が充電されて充電率が上昇する量、又はキャパシタ19が放電して充電率が低下する量に相当する。所定値Bには、ノイズの影響を除去できる程度の値があらかじめ設定されている。したがって、時刻t1における充電率SOC1から時刻t0における充電率SOC0を引いた値の絶対値が所定値Bより小さい場合、すなわち、キャパシタに流れた電流量に対して、非常に小さい充電率の変化である場合は、異常判断部240は、蓄電装置又はキャパシタ19に異常が発生したと判断する。一方、時刻t1における充電率SOC1から時刻t0における充電率SOC0を引いた値の絶対値が所定値Bより大きい場合、すなわち、キャパシタに流れた電流量に対して、ノイズ相当量以上の充電率の変化である場合は、異常判断部240は、蓄電装置又はキャパシタ19に異常は発生していないと判断する。ここで、判定値として用いる所定値Bをゼロとすると、異常が発生した場合であっても、ノイズにより検出値がゼロとならない場合には、異常を検出できない。このため、所定値Bにはノイズの影響を除去できる程度の値があらかじめ設定されている。
【0053】
そこで、ステップS3において、時刻t1における充電率SOC1から時刻t0における充電率SOC0を引いた値の絶対値が所定値Bより小さいと判定された場合、すなわち、キャパシタに流れた電流量に対して、非常に小さい充電率の変化である場合は、異常が発生していると判断して、処理はステップS4に進む。そして、ステップS4において、異常の種類を判定するために、異常判断部240は、キャパシタ19の正極端子側に流れる電流値I1と、キャパシタ19の負極端子側に流れる電流値I2とが互いに等しいか否かを判定する。
【0054】
電流値I1と電流値I2とが等しい場合は、キャパシタ19で電流が外部に漏れていることはなく、キャパシタ19自体は正常であると判断することができる。そして、キャパシタ19が正常であるのなら、蓄電装置内の部品や配線の異常であると判断することができる。したがって、ステップS4において、電流値I1と電流値I2が互いに等しいと判定されると、処理はステップS5に進み、異常判断部240は、蓄電装置内の部品や配線の異常であるとの判断に基づいて、蓄電装置の動作を停止すると共に正常なキャパシタ19を蓄電装置の回路から切り離す。キャパシタ19の切り離しは、リレー130−1,130−2をOFFとして電源ライン114,117を遮断することにより行なわれる。一方、ステップS4において、電流値I1と電流値I2が互いに等しく無いと判定されると、処理はステップS6に進み、異常判断部240は、キャパシタ19に地絡等の重大な異常が発生しているという判断に基づいて、蓄電装置の動作を停止すると共に異常が発生したキャパシタ19を蓄電装置の回路から切り離す。キャパシタ19の切り離しは、リレー130−1,130−2をOFFとして電源ライン114,117を遮断することにより行なわれる。
【0055】
ステップS3において時刻t1における充電率SOC1から時刻t0における充電率SOC0を引いた値の絶対値が所定値Bより大きいと判定された場合、すなわち、キャパシタに流れた電流量に対して、ノイズ相当量以上の充電率の変化である場合は、処理はステップS7に進む。ステップS7では、第2の一定時間間隔T2内における電流値I1がキャパシタ電流検出部113により計測される。ここでの第2の一定時間間隔T2は、第1の一定時間間隔T1より長く、時刻t0から時刻t2までの時間間隔であり、例えば1分間である。また、ステップS7において、SOC計測部210は、時刻t2におけるキャパシタ19の充電率SOC2を計測する。
【0056】
ここで、ステップS10〜S14において蓄電装置の異常を特定判断するためには所定の充電量が必要である。このため、時刻t0から時刻t2までの間のロングスパンの時間で、十分な電流量が流れたかを判断する必要がある。そこで、ステップS8において、電流積分部220は、電流値I1を時刻t0から時刻t2までの間(すなわち、第2の一定時間間隔T2)で積分して積分値を求める。そして、電流積分部220は、積分値の絶対値が所定値Dより大きいか否かを判定する。電流積分部220は、電流値I1を第2の
一定時間間隔T2の間で積分することにより、時刻t0から時刻t2までの比較的長い時間に流れた電流量を求めており、この電流量が所定値Dより大きいか否かを判定している。ステップS8における処理は、キャパシタ19の充電率SOCが所定量より大きく変化するような電流が流れたか否かを判定するための処理である。したがって、所定値Dは、ステップS10〜S14において所定の充電量を得るために必要な電流量に相当する。
【0057】
ステップS8において、電流値I1の積分値の絶対値が所定値D以下である場合は、処理はステップS7に戻り、ステップS7及びステップS8の処理を繰り返し行なう。一方、電流値I1の積分値の絶対値が所定値Dより大きい場合は、処理はステップS9に進む。なお、電流値I1の積分値の絶対値をとる理由は、キャパシタ19から放電している場合の電流値I1を正の値とすると、キャパシタ19へ充電している場合の電流値I1は負の値となるからである。したがって、ステップS8では、充電電流(正の値)及び放電電流(負の値)が合算され、充電電流のほうが多い場合は積分値が負の値となるので、これの絶対値をとって、正の値である所定値Dと比較して大小を判定している。
【0058】
ステップS9では、蓄電状態推定部230は、時刻t0から時刻t2までのキャパシタ19の充電率の変化量ΔSOCを算出する。すなわち、時刻t2における充電率SOC2と時刻t
0における充電率SOC0との差がΔSOCとなる。充電率の変化量ΔSOCは以下の式により算出することができる。
【0059】
【数1】
続いて、ステップS10において、異常判
断部240は、SOC2−SOC0の絶対値をΔSOCの絶対値で除算した値(|SOC2−SOC0|/|ΔSOC|)が、第1の閾値Fより小さいか否かを判定する。ここで、第1の閾値Fは例えば0.9(ΔSOCに対して90%)に設定される。ここで、第1の閾値Fは、許容できるバラツキを経験的に考慮して設定した値である。充電率の変化量が
第1の閾値Fより小さい場合には、計測で求めた充電量の変化量|SOC2−SOC0|が、演算で求めた充電量の変化量|ΔSOC|より小さくなっていることであり、このような状況は通常の状態ではあり得ないことである。したがって、SOC2−SOC0の絶対値をΔSOCの絶対値で除算した値(|SOC2−SOC0|/|ΔSOC|)が第1の閾値Fより小さい場合は、異常判断部240は、蓄電装置の電気回路に何かしらの故障(重大な故障)が生じており、蓄電装置をそのまま作動させておくとキャパシタ19に異常が発生するおそれがあると判断する。そこで、処理はステップS11に進み、異常検出部200は、蓄電装置の作動を停止し且つキャパシタ19を蓄電装置の電気回路から切り離す。これと同時に、異常検出部200は、蓄電装置に重故障が発生したことを、警報音を鳴らしたり運転室の表示パネルに表示することで、ショベルの操作者に通知することとしてもよい。
【0060】
一方、ステップS10において、SOC2−SOC0の絶対値をΔSOCの絶対値で除算した値(|SOC2−SOC0|/|ΔSOC|)が、第1の閾値Fより小さく無いと判定されると、処理はステップS12に進む。ステップS12では、異常判断部240は、SOC2−SOC0の絶対値をΔSOCの絶対値で除算した値(|SOC2−SOC0|/|ΔSOC|)が、第2の閾値Eより大きいか否かを判定する。第2の閾値Eはキャパシタ19の劣化度合いの判断規準となる値であり、例えば1.25(ΔSOCに対して125%)に設定する。ここで、第2の閾値Eは経験的に求めることができる。SOC2−SOC0の絶対値をΔSOCの絶対値で除算した値(|SOC2−SOC0|/|ΔSOC|)が第2の閾値Eより大きいと、キャパシタ19の劣化が進んでいると判断できる。したがって、ステップS12においてSOC2−SOC0の絶対値をΔSOCの絶対値で除算した値(|SOC2−SOC0|/|ΔSOC|)が第2の閾値Eより大きいと判定された場合、処理はステップS13に進む。
【0061】
ステップS13では、異常判断部240は、キャパシタ19の内部抵抗の現在値Rを初期値R0で除した値(R/R0)が、第3の閾値Gより小さいか否かを判定する。キャパシタ19の内部抵抗は劣化が進むほど大きくなるので、第3の閾値Gもキャパシタ19の劣化度合いの判断規準となる値であり、例えば1.50(150%)に設定される。ステップS13においてキャパシタ19の内部抵抗の現在値Rを初期値R0で除した値(R/R0)が第3の閾値Gより小さいと判定されると、異常判断部240は、キャパシタ19の特性が悪化している(軽故障)と判断する。したがって、処理はステップS14に進み、キャパシタ19からの放電電流及びキャパシタ19への充電電流を制限してキャパシタ19にあまり負荷をかけないようにしながら、蓄電装置の作動が継続される。これと同時に、異常検出部200は、キャパシタ19に軽故障が発生したことを、警報音を鳴らしたり運転室の表示パネルに表示することで、ショベルの操作者に通知することとしてもよい。ここで、キャパシタ19の特性悪化には、例えばキャパシタ19のセルの一部の短絡や、均等化回路の故障が含まれる。一方、ステップS13においてキャパシタ19の内部抵抗の現在値Rを初期値R0で除した値(R/R0)が第3の閾値Gより小さく無いと判定されると、キャパシタ19の劣化によるものであると判断できる。そこで、処理はステップS15に進み、キャパシタ19からの放電電流及びキャパシタ19への充電電流を制限してキャパシタ19にあまり負荷をかけないようにしながら、蓄電装置の作動が継続される。ここで、内部抵抗の現在値Rの測定に関して、ショベルのキーオン時に計測した内部抵抗の値を現在値Rとして用いてもよく、エンジンのアイドリング運転時に計測した内部抵抗の値を現在値Rとしてもよい。あるいは、上述の異常判断処理中に測定した最新値を現在値
Rとして用いることもできる。また、内部抵抗の測定は、当業界において通常知られた測定方法によって行なうことができる。
【0062】
一方、ステップS12においてSOC2−SOC0の絶対値をΔSOCの絶対値で除算した値(|SOC2−SOC0|/|ΔSOC|)が第2の閾値Eより大きいと判定された場合、実際の計測値に基づいて求めた充電率とキャパシタに流れる電流量から求めた充電率とがほぼ一致しており、異常判断部240は、キャパシタ19を含む蓄電装置は正常に作動していると判断することができる。そこで、処理はステップS16に進み、蓄電装置をそのまま継続して作動させる。
【0063】
以上の処理における判断をまとめると
図8に示すようになる。
図8において、横軸は計測値に基づく充電率の変化量ΔSOCを示している。
【0064】
まず、ステップS1〜S6までの処理(第1の一定時間間隔T1(例えば、0.5秒間)での判定(ショートスパン検出)では、充電電流又は放電電流が流れて充電又は放電が行なわれたのにもかかわらず、計測で求めた充電率の変化量ΔSOCが所定値Bより小さい場合、センサの断線や故障、あるいは地絡等の重故障であると判断する。
【0065】
ショートスパン検出が終了すると、次にステップS7〜S16までの処理(第2の
一定時間間隔T2(例えば、1分間)での判定(ロングスパン検出)
)が行なわれる。ロングスパン検出では、キャパシタ19を流れる電流に基づいて演算により求めた充電率の変化量ΔSOC(理論値)と、実際の計測値に基づいて求めた充電率の変化量ΔSOCとを比較することで、蓄電回路の故障やキャパシタ19の劣化を判断する。すなわち、実際の計測値に基づいて求めた充電率の変化量ΔSOCが、電流に基づいて求めた充電率の変化量ΔSOC(理論値)の例えば90%未満である場合は(第1の閾値Fを0.9とした場合)重故障が発生していると判定し、90%〜125%である場合は(第2の閾値Eを1.25とした場合)正常であると判定し、125%を超えている場合は、キャパシタ19の劣化であると判断する。
【0066】
また、実際の計測値に基づいて求めた充電率の変化量ΔSOCが、電流に基づいて求めた充電率の変化量ΔSOC(理論値)の125%を超えており、キャパシタ19の劣化と判定された場合であって、さらにキャパシタ19の内部抵抗の
現在値Rが初期値R0の150%未満である場合は(第3の閾値Gを1.50とした場合)、キャパシタ19の軽故障(セルの短絡や均等化回路の故障)による劣化であると判断する。
【0067】
上述の実施形態では、故障や劣化を判断するための指標として充電率SOCを用いている。充電率SOCはキャパシタ電圧の二乗に比例する値であり、充電率SOC及び充電率の変化量ΔSOCの代わりに、キャパシタ19の電圧及び電圧の変化量を用いることとしてもよい。
【0068】
なお、上述の実施形態では旋回機構2が電動式であったが、旋回機構2が電動ではなく油圧駆動の場合がある。
図10は
図2に示すハイブリッド式ショベルの旋回機構を油圧駆動式とした場合の駆動系の構成を示すブロック図である。
図10に示すハイブリッド型油圧ショベルでは、旋回用電動機21の代わりに、旋回油圧モータ2Aがコントロールバルブ17に接続され、旋回機構2は旋回油圧モータ2Aにより駆動される。このような、ハイブリッド式ショベルであっても、上述のようにして、キャパシタ19を含む蓄電装置の異常を判断することができる。
【0069】
また、上述の実施形態では、エンジン11と電動発電機12とを油圧ポンプであるメインポンプ14に接続してメインポンプを駆動する、いわゆるパラレル型のハイブリッド式ショベルに本発明を適用した例について説明した。本発明は、
図10に示すようにエンジン11で電動発電機12を駆動し、電動発電機12が生成した電力を蓄電系120に蓄積してから蓄積した電力のみによりポンプ用電動機400を駆動してメインポンプ14を駆動する、いわゆるシリーズ型のハイブリッド式ショベルにも適用することもできる。この場合、電動発電機12は、本実施形態ではエンジン11によって駆動させることによる発電運転のみを行なう発電機としての機能を備えている。
【0070】
なお、
図10に示すハイブリッド式ショベルでは、ブームシリンダ7からの戻り油圧を利用して油圧回生が行なわれている。すなわち、ブームシリンダ7からの戻り油圧用の油圧配管7Aにブーム回生油圧モータ310が設けられ、ブーム回生油圧モータにより発電機300を駆動して回生電力を発生する。発電機300により発生した電力はインバータ18Cを介して蓄電系120に供給される。
【0071】
また、本発明はハイブリッド式ショベルに限定されることなく、
図11に示すような電動ショベルにも適用することができる。
図10に示す電動ショベルは、エンジン11が設けられておらず、ポンプ用電動機400のみでメインポンプ14が駆動される。ポンプ用電動機への電力は蓄電系120からの電力で全て賄われる。蓄電系120には、コンバータ120Aを介して外部電源500が接続可能となっており、外部電源500から電力が蓄電系120に供給されて蓄電器が充電され、蓄電器からポンプ用電動機400に電力が供給される。
【0072】
本発明は具体的に開示された上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変形例及び改良例がなされるであろう。
【0073】
本出願は、2011年1月28日出願の優先権主張日本国特許出願第2011−016546号に基づくものであり、その全内容は本出願に援用される。