特許第5661812号(P5661812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661812
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】テーブルタップ及び電力測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 21/00 20060101AFI20150108BHJP
   G01R 21/133 20060101ALI20150108BHJP
   G01R 21/08 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   G01R21/00 L
   G01R21/133 A
   G01R21/08
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-555671(P2012-555671)
(86)(22)【出願日】2011年2月4日
(86)【国際出願番号】JP2011052406
(87)【国際公開番号】WO2012105049
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2013年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091672
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 啓三
(72)【発明者】
【氏名】曾根田 弘光
(72)【発明者】
【氏名】壷井 修
(72)【発明者】
【氏名】中澤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】長尾 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】堀 正和
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−261826(JP,A)
【文献】 特開2001−228183(JP,A)
【文献】 特開平09−189723(JP,A)
【文献】 特開2000−221218(JP,A)
【文献】 特開平06−258362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 21/00
G01R 21/06
G01R 21/08
G01R 21/133
H01R 13/66
H01R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源線と、
前記第1の電源線との間で電源電圧が印加される第2の電源線と、
プラグ差込部と、
前記プラグ差込部から外部の電気機器に供給される電流を測定する電流測定部と、
前記第1の電源線と前記第2の電源線との間に電気的に接続された第1の発光ダイオードを有し、前記電源電圧が第1の閾値を超えたときにレベルが変わる第1の出力信号を出力する第1のフォトカプラと、
前記第1の電源線と前記第2の電源線との間に、前記第1の発光ダイオードとは逆の極性で電気的に接続された第2の発光ダイオードを有し、前記電源電圧が第2の閾値を超えたときにレベルが変わる第2の出力信号を出力する第2のフォトカプラと、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号のいずれもがローレベルである期間の長さから推定される前記電源電圧の瞬時値と、前記電流測定部で測定された前記電流の瞬時値とを利用して、電力値を算出する演算部と、
を有することを特徴とするテーブルタップ。
【請求項2】
前記演算部は、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号のいずれもがローレベルである期間の長さをXとしたときに、前記電源電圧の実効電圧値VrmsをVrms=aX+b(a、bは定数)により算出し、
時刻tにおける前記電源電圧の前記瞬時値を√2Vrmssin (ωt)(ωは既知の角振動数)であると推定することを特徴とする請求項1に記載のテーブルタップ。
【請求項3】
前記第1のフォトカプラと前記第2のフォトカプラの周囲の温度を測定する温度センサを更に有し、
前記演算部は、前記温度に基づいて、前記電源電圧の前記実効電圧値Vrmsを補正することを特徴とする請求項2に記載のテーブルタップ。
【請求項4】
前記演算部は、前記温度をYとしたときに、前記実効電圧値VrmsをVrms=cYX+dX+b(c、dは定数)により補正することを特徴とする請求項3に記載のテーブルタップ。
【請求項5】
前記電流測定部は、
前記電流が流れるバーと、
前記バーを囲うと共に、ギャップが形成された磁性体コアと、
前記ギャップ内に設けられ、前記電流を測定するホール素子とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のテーブルタップ。
【請求項6】
前記ホール素子の感磁面は、前記バーの延在方向に平行であることを特徴とする請求項5に記載のテーブルタップ。
【請求項7】
テーブルタップに供給された電源電圧を、第1のフォトカプラが備える第1の発光ダイオードの両端に印加するステップと、
前記電源電圧が第1の閾値を超えたときにレベルが変わる前記第1のフォトカプラの第1の出力信号を監視して、前記第1の出力信号のレベルが変わっている期間の長さを求めるステップと、
第2のフォトカプラが備える第2の発光ダイオードの両端に、前記第1の発光ダイオードにおけるのとは逆の極性で前記電源電圧を印加するステップと、
前記電源電圧が第2の閾値を超えたときにレベルが変わる前記第2のフォトカプラの第2の出力信号を監視して、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号がいずれもローレベルである期間の長さを求めるステップと、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号がいずれもローレベルである前記期間の長さに基づいて、前記電源電圧の瞬時値を推定するステップと、
前記テーブルタップが備える複数のプラグ差込部から外部の電気機器に供給される電流の瞬時値を前記プラグ差込部毎に測定するステップと、
前記電源電圧の前記瞬時値と前記電流の前記瞬時値とを利用して、前記複数のプラグ差込部毎に電力値を個別に算出するステップと、
を有することを特徴とする電力測定方法。
【請求項8】
前記第1の閾値と前記第2の閾値の絶対値は同じであり、
前記第1の出力信号がローレベルである期間の長さと前記第2の出力信号がローレベルである期間の長さとが同じ場合に前記電源電圧が安定であると判断し、そうでない場合には前記電源電圧が不安定であると判断するステップを更に有することを特徴とする請求項7に記載の電力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブルタップ及び電力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力需要の増加や地球環境の配慮から、家庭やオフィスにおける消費電力を節約しようという機運が高まりつつある。このような省エネルギ志向の高まりにより、電気機器の電源をこまめに切ったり、空調の設定温度を見直す等の努力がなされている。
【0003】
これらの努力によって実際にどの程度の省エネルギ化が図られたかを把握するために、世帯別に設けられる電力量計を利用する方法がある。
【0004】
しかし、世帯別の電力量計は、家庭内に電力を分配する前の配電盤に設けられるため、家庭やオフィスの個々の電気機器の消費電力を測定することができない。
【0005】
更に、家庭やオフィスにおいては、壁面コンセントにテーブルタップを接続して複数の電気機器に電力を分配することがあるが、市販のテーブルタップには各電気機器の個別の消費電力を測定する機能がない。
【0006】
その消費電力は、電源線に電圧測定装置を電気的に接続することで測定し得る。但し、この方法では、電源線にサージが発生したときに、電源線に接続された電圧測定装置に過大電流が流れ、電圧測定装置が破損してしまうという問題がある。また、消費電力の算出はなるべく高精度に行うのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−6477号公報
【特許文献2】特開昭57−26761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
テーブルタップ及び電力測定方法において、プラグ差込部で消費される電力を高精度に算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の開示の一観点によれば、第1の電源線と、前記第1の電源線との間で電源電圧が印加される第2の電源線と、プラグ差込部と、前記プラグ差込部から外部の電気機器に供給される電流を測定する電流測定部と、前記第1の電源線と前記第2の電源線との間に電気的に接続された第1の発光ダイオードを有し、前記電源電圧が第1の閾値を超えたときにレベルが変わる第1の出力信号を出力する第1のフォトカプラと、前記第1の電源線と前記第2の電源線との間に、前記第1の発光ダイオードとは逆の極性で電気的に接続された第2の発光ダイオードを有し、前記電源電圧が第2の閾値を超えたときにレベルが変わる第2の出力信号を出力する第2のフォトカプラと、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号のいずれもがローレベルである期間の長さから推定される前記電源電圧の瞬時値と、前記電流測定部で測定された前記電流の瞬時値とを利用して、電力値を算出する演算部とを有するテーブルタップが提供される。
【0010】
また、その開示の他の観点によれば、テーブルタップに供給された電源電圧を、第1のフォトカプラが備える第1の発光ダイオードの両端に印加するステップと、前記電源電圧が第1の閾値を超えたときにレベルが変わる前記第1のフォトカプラの第1の出力信号を監視して、前記第1の出力信号のレベルが変わっている期間の長さを求めるステップと、第2のフォトカプラが備える第2の発光ダイオードの両端に、前記第1の発光ダイオードにおけるのとは逆の極性で前記電源電圧を印加するステップと、前記電源電圧が第2の閾値を超えたときにレベルが変わる前記第2のフォトカプラの第2の出力信号を監視して、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号がいずれもローレベルである期間の長さを求めるステップと、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号がいずれもローレベルである前記期間の長さに基づいて、前記電源電圧の瞬時値を推定するステップと、前記テーブルタップが備える複数のプラグ差込部から外部の電気機器に供給される電流の瞬時値を前記プラグ差込部毎に測定するステップと、前記電源電圧の前記瞬時値と前記電流の前記瞬時値とを利用して、前記複数のプラグ差込部毎に電力値を個別に算出するステップとを有する電力測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係るテーブルタップの外観図である。
図2図2は、筐体を取り外したときの第1実施形態に係るテーブルタップの外観図である。
図3図3は、第1実施形態に係るテーブルタップが備える電流測定部とその近傍の拡大斜視図である。
図4図4は、第1実施形態に係るテーブルタップが備えるホール素子の回路図である。
図5図5は、第1実施形態に係るテーブルタップが備えるホール素子の平面図である。
図6図6は、第1実施形態に係るホール素子の感磁面と分岐バーとの位置関係について説明するための斜視図である。
図7図7は、上部筐体を外した状態での第1実施形態に係るテーブルタップの外観図である。
図8図8は、第1実施形態に係るテーブルタップが備える送信回路部の機能ブロック図である。
図9図9は、第1の出力信号、第2の出力信号、及び電源電圧の瞬時値のタイミングチャートである。
図10図10は、第1の出力信号と第2の出力信号との合成信号と、電源電圧の瞬時値のタイミングチャートである。
図11図11は、第1の閾値と第2の閾値が変動した場合における、第1の出力信号と第2の出力信号との合成信号と、電源電圧の瞬時値のタイミングチャートである。
図12図12は、電源電圧の瞬時値と電流の瞬時値のタイミングチャートである。
図13図13は、第1実施形態における温度測定について説明するためのフローチャートである。
図14図14は、第1実施形態における電流測定について説明するためのフローチャートである。
図15図15は、第1実施形態における電圧測定について説明するためのフローチャートである。
図16図16は、第1実施形態における電力測定について説明するためのフローチャートである。
図17図17は、電源電圧の瞬時値が安定した正弦波である場合の第1の出力信号と第2の出力信号のタイミングチャートである。
図18図18は、電源電圧の瞬時値が不安定な場合の第1の出力信号と第2の出力信号のタイミングチャートである。
図19図19は、電源電圧が安定しているかどうかを判断する手順について示すフローチャートである。
図20図20は、第1実施形態に係る電力測定システムについて説明するための模式図である。
図21図21は、第2実施形態に係るテーブルタップの外観図である。
図22図22は、下部筐体と上部筐体を外した状態での第2実施形態に係るテーブルタップの斜視図である。
図23図23は、図22の構造から第1の回路基板、スイッチ、及びカバーを除いた状態での斜視図である。
図24図24は、第2実施形態に係る第1のバスバーと補助バーの斜視図である。
図25図25は、第2実施形態に係る第2のバスバーの斜視図である。
図26図26は、第2実施形態に係る第3のバスバーの斜視図である。
図27図27は、第2実施形態に係る分岐バーの斜視図である。
図28図28は、第2実施形態に係るテーブルタップの分解斜視図である。
図29図29は、第2実施形態に係るテーブルタップの回路図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るテーブルタップ1の外観図である。
【0013】
このテーブルタップ1は、コンセントプラグ2、電源コード3、下部筐体5、及び上部筐体6を備える。
【0014】
このうち、上部筐体6には、コンセントプラグ7に対応して複数のプラグ差込部1aが設けられる。コンセントプラグ7は、外部の電気機器が備えるものであって、第1のプラグ刃8、第2のプラグ刃9、及びアース端子10を有する。
【0015】
そして、上記の各プラグ差込部1aには、第1のプラグ刃8が挿入される第1の挿入口6aと、第2のプラグ刃9が挿入される第2の挿入口6bと、アース端子10が挿入される第3の挿入口6cが設けられる。
【0016】
このようなテーブルタップ1においては、壁面等にある既設コンセントにコンセントプラグ2を差し込むことで、既設コンセントの電源電圧が各プラグ差込部1aに供給されることになる。
【0017】
図2は、各筐体5、6を取り外したときのテーブルタップ1の外観図である。
【0018】
図2に示されるように、テーブルタップ1には第1〜第3のバスバー11〜13が設けられる。これらのバスバー11〜13は、例えば、真鍮板等の金属板を型抜きしてそれを曲げ加工して作製され得る。
【0019】
各バスバー11〜13のうち、第1のバスバー11と第2のバスバー12は、それぞれ第1の電源線と第2の電源線として供されるものであり、電源コード3(図1参照)を介してそれぞれ交流電源ACの両極A+、A-に電気的に接続される。そして、第3のバスバー13は電源コード3を介して接地電位に維持される。
【0020】
また、第1のバスバー11は、コンセントプラグ7の第2のプラグ刃9を受容する複数の第1のコンタクト11aを有する。
【0021】
一方、第2のバスバー12は、その延在方向に沿って一定間隔で挟持片12aを有する。
【0022】
挟持片12aの各々は分岐バー17を挟持しており、その分岐バー17の端部には一対の第2のコンタクト17aが設けられる。
【0023】
第2のコンタクト17aは、既述の第1のコンタクト11aと対をなしており、コンセントプラグ7の第1のプラグ刃8を受容する。
【0024】
そして、第3のバスバー13は、コンセントプラグ7のアース端子10を受容する複数の第3のコンタクト13aを有する。
【0025】
各分岐バー17の下方には第1の回路基板20が設けられる。
【0026】
第1の回路基板20には、分岐バー17からコンセントプラグ7に供給される電流を測定する複数の電流測定部30が設けられる。
【0027】
図3は、電流測定部30とその近傍の拡大斜視図である。
【0028】
電流測定部30は、分岐バー17の各々に対応して第1の回路基板20に固着された磁性体コア21を有する。磁性体コア21は、分岐バー17を流れる電流の周囲に発生する磁界を収束すべく形成され、その磁界の経路に沿って概略リング状に形成される。磁性体コア21の材料は特に限定されないが、本実施形態では入手が容易なフェライトを使用する。
【0029】
また、電流測定部30は、磁性体コア21のギャップ21a内に設けられたホール素子22を有する。そのホール素子22は、ギャップ21a内の磁界の強さから分岐バー17を流れる電流の瞬時値I(t)を測定するのに使用され、はんだ付け等によって第1の回路基板20上に実装される。
【0030】
電流測定部30は、このように第1の回路基板20に磁性体コア21やホール素子22を取り付けるだけで作製することができるので、テーブルタップ1の部品点数や組み立てコストの増大を抑制できる。
【0031】
図4は、ホール素子22の回路図である。
【0032】
図4に示されるように、ホール素子22は、ガリウム砒素系の感磁部23と作動増幅器24とを有する。
【0033】
感磁部23は、電源端子22aと接地端子22bとの間に電圧Vccが与えられた状態で磁界に曝されると、その磁界の強さに応じた電位差ΔVを発生する。その電位差ΔVは、差動増幅器24において増幅された後、出力端子22cから電流センサ電圧Vsとして外部に出力される。
【0034】
図5は、ホール素子22の平面図である。
【0035】
図5に示すように、感磁部23は、感磁面PMの面内に位置するように、樹脂26によって封止される。そして、ホール素子22は、感磁部23を貫く磁界のうち、感磁面PMに垂直な成分を検出し、その成分の大きさに相当する電流センサ電圧Vsを上記の出力端子22cから出力する。
【0036】
なお、各端子22a〜22cは、はんだ付け等により、第1の回路基板20(図3参照)内の配線と電気的に接続される。
【0037】
上記のようなホール素子22は、カレント・トランスのような他の磁界測定素子と比較して素子の大きさが小さいので、テーブルタップの大型化を招くおそれがない。
【0038】
更に、カレント・トランスは、磁界の時間的変動に伴って発生する誘導電流を利用して磁界の大きさを測定するため測定対象が交流磁界に限定されてしまうが、ホール素子22は静磁界の強さも測定できるという利点がある。
【0039】
また、ホール素子22は、カレント・トランスと比較して安価であるため、テーブルタ
ップの高コスト化を防止できる。
【0040】
図6は、ホール素子22の感磁面PMと分岐バー17との位置関係について説明するための斜視図である。
【0041】
感磁面PMは、分岐バー17の延在方向D1に平行になるように設定される。このようにすると、分岐バー17を流れる電流から発生する磁界H1が感磁面PMを略垂直に貫くようになり、ホール素子22の電流検出感度が向上する。
【0042】
また、本実施形態では、分岐バー17の延在方向D1を第2のバスバー12の延在方向D2と非平行にしたので、第2のバスバー12で発生した磁界H2が感磁面PMを垂直に貫くことがない。よって、分岐バー17で発生した磁界H1を測定すべく設けられたホール素子22が、第2のバスバー12で発生した磁界H2を誤って検出する危険性を低減できる。これにより、ホール素子22の磁界検出結果にH1以外の磁界の影響が含まれるクロストークを防止でき、ホール素子22による磁界H1の測定精度が向上する。
【0043】
特に、分岐バー17の延在方向D1を第2のバスバー12の延在方向D2に垂直にすると、感磁面PMも延在方向D2に垂直になる。そのため、第2のバスバー12で発生した磁界H2が感磁面PMに垂直な成分を有さなくなり、ホール素子22がその磁界H2を誤って検出する危険性を更に低減できる。
【0044】
図7は、上部筐体6を外した状態でのテーブルタップ1の外観図である。
【0045】
図7に示すように、下部筐体5には、第2の回路基板25を収容する送信回路部27が区画される。
【0046】
第1の回路基板20と第2の回路基板25の各々にはコネクタ35、36が設けられ、これらのコネクタ35、36には通信ケーブル37が接続される。
【0047】
通信ケーブル37は、電源コード3から取り込まれた各ホール素子22(図3参照)の駆動に必要な電力を第1の回路基板20に供給したり、各ホール素子22の出力信号を第
2の回路基板25に送信したりする機能を有する。
【0048】
図8は、送信回路部27の機能ブロック図である。
【0049】
図8に示すように、送信回路部27は、ADコンバータ32、演算部33、出力ポート34、電圧測定部50、及び温度測定部60を有する。
【0050】
このうち、ADコンバータ32は、各ホール素子22から出力されたアナログ値の電流センサ電圧Vsをデジタル化してデジタル電流信号VIDを生成し、それを演算部33に出力する。
【0051】
演算部33は、例えばMPU(Micro Processing Unit)であり、後述のようにプラグ差込部1aの各々の消費電力値を算出する。その算出結果は、出力データSoutとして演算部33から出力された後、演算部33と電気的に接続された出力ポート34を介して外部に出力される。
【0052】
また、温度測定部60は、電圧測定部50の周囲の温度を測定するものであり、一端に電圧Vccが印加されたサーミスタ61を備える。電圧Vccの印加によりサーミスタ61には温度センサ電流ITが流れるが、その温度センサ電流ITの大きさは周囲の温度により変化し、サーミスタ61の他端に現れる温度センサ電圧VTも変わる。その温度センサ電圧VTを監視することで周囲の温度を把握することができる。
【0053】
その温度センサ電圧VTは、上記のADコンバータ32によりデジタル化され、デジタル温度信号VTDとして演算部33に出力される。
【0054】
一方、電圧測定部50は、第1のフォトカプラ41、第2のフォトカプラ42、第1のインバータINV1、及び第2のインバータINV2を備える。
【0055】
このうち、第1のフォトカプラ41は、第1の発光ダイオード41aとその光を受光する第1のフォトトランジスタ41bとを備え、第1の発光ダイオード41aのカソードが第2のバスバー12に電気的に接続される。また、第1の発光ダイオード41aのアノードは、第1の抵抗R1を介して第1のバスバー11と電気的に接続される。
【0056】
その第1の抵抗R1は、各バスバー11、12から第1の発光ダイオード41aに過大電流が流れるのを防止するように機能する。
【0057】
第1のフォトトランジスタ41bのエミッタには第3の抵抗R3を介して電圧Vccが印加され、第1のフォトトランジスタ41bのコレクタは接地電圧に維持される。
【0058】
これらエミッタ−コレクタ間にはエミッタ電流Ieが流れるが、そのエミッタ電流Ieの大小により第3の抵抗R3での電圧降下量が変わり、エミッタ電圧Veも変わる。
【0059】
例えば、第1のフォトカプラ41がオフ状態の場合には第1のフォトトランジスタ41bがオフ状態となるため、第3の抵抗R3にはエミッタ電流Ieが流れず、エミッタ電圧Veは電圧Vccと同じハイレベルとなる。
【0060】
一方、第1のフォトカプラ41がオン状態の場合には第1のフォトカプラ41bがオン状態になる。そのため、第3の抵抗R3にエミッタ電流Ieが流れるようになり、エミッタ電圧Veは第3の抵抗R3での電圧降下量分だけ電圧Vccよりも低くなり、ローレベルとなる。
【0061】
そのようなエミッタ電圧Veは、後段の第1のインバータINV1において電圧レベルが反転されて第1の出力信号S1となる。
【0062】
ここで、第1のフォトカプラ41は、第1の発光ダイオード41aに印加される順電圧が正の第1の閾値V1を超えた場合にオン状態となるように設定される。そのため、第1の出力信号S1の電圧レベルを監視することで、各バスバー11、12間の電源電圧の瞬時値V(t)が第1の閾値V1を超えたか否かを判断できる。
【0063】
なお、第1のインバータINV1は、電圧Vccと接地電位との間で駆動する。電圧Vccの入力ノードには第1のキャパシタC1の一方の電極が接続され、これにより第1のインバータINV1に入力される電圧Vccが安定化する。
【0064】
一方、第2のフォトカプラ42は、第2の発光ダイオード42aとその光を受光する第2のフォトトランジスタ42bとを備え、第2の発光ダイオード42aのカソードが第1のバスバー11に電気的に接続される。また、第2の発光ダイオード42aのアノードは、第2の抵抗R2を介して第2のバスバー12と電気的に接続される。
【0065】
第2のフォトカプラ42とその後段の第2のインバータINV2の各機能は、上記した第1のフォトカプラ41と第1のインバータINV1の各機能に類似している。
【0066】
例えば、第2のフォトカプラ42がオフ状態のときは、エミッタ電圧Veが電圧Vccと同様にハイレベルとなり、それを反転したローレベルの電圧が第2のインバータINV2から第2の出力信号S2として出力される。
【0067】
そして、第2のフォトカプラ42がオン状態のときは、第4の抵抗R4における電圧降下が原因でエミッタ電圧Veが電圧Vccよりも低くなり、第2の出力信号S2がハイレベルになる。
【0068】
なお、第2のインバータINV2においても、電圧Vccの入力ノードに設けられた第2のキャパシタにより、電圧Vccの安定化が図られる。また、第2のフォトカプラ42の前段に第2の抵抗R2を設けることで、各バスバー11、12から第2の発光ダイオード42aに過大電流が流れるのを防止することができる。
【0069】
上記の第2のフォトカプラ42は、第2の発光ダイオード42aに印加される順電圧が正の第2の閾値V2を超えた場合にオン状態となるように設定される。そのため、第2の出力信号S2の電圧レベルを監視することで、各バスバー11、12間の電源電圧の瞬時値V(t)が第2の閾値V2を超えたか否かを判断できる。
【0070】
更に、本実施形態では、各フォトダイオード41a、42aをそれぞれ逆の極性で各バスバー11、12に電気的に接続するので、瞬時値V(t)の正側を第1のフォトダイオード41aで監視し、瞬時値V(t)の負側を第2のフォトダイオード42aで監視できる。
【0071】
また、第1のフォトカプラ41は、その入力側と出力側とが電気的に隔離されているので、サージにより瞬時値V(t)が大きく変動しても出力側の第1のフォトダイオード41bが破損する危険性が少ない。これと同様の理由で第2のフォトカプラ42もサージで破損する危険性が少ない。
【0072】
これにより、本実施形態では、電圧測定部50のサージ耐性を高めることができる。
【0073】
次に、上記した送信回路部27の詳細な動作について説明する。
【0074】
図9は、上記した第1の出力信号S1、第2の出力信号S2、及び電源電圧の瞬時値V(t)のタイミングチャートである。なお、図9では、第1の出力信号S1と第2の出力信号S2とを合成した合成信号S3も併記してある。
【0075】
また、電源電圧V(t)は、第1のバスバー11と第2のバスバー12の電位が同じときを0とし、第1のバスバー11の電位が第2のバスバー12よりも高いときを正としている。
【0076】
図9に示されるように、第1の出力信号S1は、電源電圧の瞬時値V(t)が第1の閾値V1を超えたときにハイレベルとなる。
【0077】
一方、第2の出力信号S2は、瞬時値V(t)が第2の閾値V2よりも低くなったときにハイレベルとなる。
【0078】
これにより、演算部33は、第1の出力信号S1がハイレベルのときは瞬時値V(t)が正側にあると認識し、第2の出力信号S2がハイレベルのときには瞬時値V(t)が負側にあると認識することができる。
【0079】
更に、演算部33は、各出力信号S1、S2のいずれか一方が常にローレベルにあるときは、瞬時値V(t)が常に正側と負側のいずれか一方にあると認識でき、電源電圧が太陽電池や直流配電設備から供給された直流電圧であると判断することができる。
【0080】
一方、これらの各信号S1、S2を合成してなる合成信号S3は、各信号S1、S2のいずれもがローレベルであるときにローレベルとなる。
【0081】
演算部33は、このような各信号S1、S2の特性を利用して、以下のように瞬時値V(t)の値を推定する。
【0082】
図10は、テーブルタップ1の実使用下における瞬時値V(t)と合成信号S3のタイミングチャートである。
【0083】
図10に示すように、実使用下では各プラグ差込部1a(図1参照)に接続する外部機器の負荷が原因で瞬時値V(t)のピーク値VmはVm(A)、Vm(B)、Vm(C)のように変動する。
【0084】
そして、ピーク値が変動すると、瞬時値V(t)が各閾値V1、V2を越えるタイミングも変わるため、合成信号S3がローレベルとなる期間の長さXもX(A)、X(B)、X(C)のように変動する。
【0085】
そのため、当該期間の長さXは、ピーク値Vmや電源電圧の実効電圧値Vrmsを推定する目安に利用することができる。
【0086】
本実施形態では、その期間の長さXと電源電圧の実効電圧値Vrmsとが線形関係にあるとし、次の式(1)により実効電圧値Vrmsを推定する。
【0087】
【数1】
【0088】
なお、式(1)におけるa、bは、実験的に予め求めておく定数である。
【0089】
このように実効電圧値Vrmsが算出されると、次の式(2)のように電源電圧の瞬時値V(t)を算出することができる。
【0090】
【数2】
【0091】
なお、式(2)において、ωは電源電圧の角振動数であって、テーブルタップ1の使用地域において定められた値を使用し得る。
【0092】
上記では合成信号S3がローレベルとなる期間の長さXを利用して実効電圧値Vrms(式1)や瞬時値V(t)(式2)を計算したが、本実施形態はこれに限定されない。
【0093】
例えば、図10に示されるように、ピーク値Vmが変動すると、第1の出力信号S1がローレベルである期間の長さX0もX0(A)、X0(B)、X0(C)のように変わるので、当該長さX0を利用して実効電圧値Vrmsや瞬時値V(t)を推定してもよい。
【0094】
その場合、期間の長さX0と電源電圧の実効電圧値Vrmsとが線形関係にあると仮定し、次の式(3)により実効電圧値Vrmsを推定し得る。
【0095】
【数3】
【0096】
式(3)において、α、βは、実験的に予め求めておく定数である。
【0097】
式(3)を式(2)の中辺に代入することで、次の(4)式のように瞬時値V(t)を推定し得る。
【0098】
【数4】
【0099】
本実施形態では、式(2)や式(4)のように瞬時値V(t)を求め、それを後述のように電力値の計算に使用する。瞬時値V(t)や実効電圧値Vrmsは負荷の状態等により絶えず変動するので、このように実際に瞬時値V(t)を求めることで、電力値を正確に求めることができる。
【0100】
特に、インバータINV1、INV2図8参照)から出力される上記の各出力信号S1、S2やそれを合成してなる第3の出力信号S3は、各フォトカプラ41、42のエミッタ電圧Veと比較して、そのエッジの立ち上がりと立下りが明確である。そのため、上記の各期間の長さX、X0を精度良く求めることができ、式(2)や式(4)による瞬時値V(t)の算出精度が向上する。
【0101】
ところで、第1のフォトカプラ41と第2のフォトカプラ42はいずれも半導体素子であるため、周囲の温度が変化するとそれらに設定された第1の閾値V1や第2の閾値V2も変動する。
【0102】
図11は、このように第1の閾値V1や第2の閾値V2が変動した場合における、瞬時値V(t)と合成信号S3のタイミングチャートである。
【0103】
図11に示すように、周囲の温度の上昇と共に各閾値V1、V2の絶対値は大きくなる。そして、このような各閾値V1、V2の変動に伴い、合成信号S3がローレベルにある期間の長さXも変動する。
【0104】
こうなると、その長さXを利用して式(1)から得られる実効電圧値Vrmsや式(2)から得られる瞬時値V(t)の信頼性が低下してしまう。
【0105】
そこで、本実施形態では、温度測定部60で測定された温度Yを利用して、式(1)の定数aを次の式(5)のように補正する。
【0106】
【数5】
【0107】
なお、式(5)におけるc、dは、実験により予め求めておく定数である。
【0108】
式(5)を式(1)に代入すると次の式(6)が得られる。
【0109】
【数6】
【0110】
この式(6)より、周囲の温度Yを加味した実効電圧値Vrmsを算出することができる。更に、この式(6)を式(5)に代入すると、次の式(7)が得られる。
【0111】
【数7】
【0112】
式(7)より、周囲の温度Yを加味した瞬時値V(t)を算出することができる。
【0113】
なお、式(3)を用いて実効電圧値Vrmsを推定する場合は、式(5)と同じ理由で、式(3)中のαを次の式(8)で補正し得る。
【0114】
【数8】
【0115】
なお、式(8)におけるγ、δは、実験により予め求めておく定数である。
【0116】
そして、式(8)を式(3)に代入することで、次の式(9)のように周囲の温度Yを加味した実効電圧値Vrmsを算出することができる。
【0117】
【数9】
【0118】
更に、この式(9)を式(4)に代入すると、次の式(10)が得られる。
【0119】
【数10】
【0120】
式(10)より、周囲の温度Yを加味した瞬時値V(t)を算出することができる。
【0121】
次に、本実施形態に係る電力測定方法について説明する。
【0122】
図12は、その電力測定の対象となる電源電圧の瞬時値V(t)と電流の瞬時値I(t)のタイミングチャートである。
【0123】
なお、図12では、電圧と電流の瞬時値V(t)、I(t)の位相が一致している場合を例示しているが、負荷の種類によっては各瞬時値V(t)、I(t)の位相がずれることもある。
【0124】
また、このタイミングチャートには、各ホール素子22から出力されるデジタル電流信号VIDも併記してある。デジタル電流信号VIDは、電流の瞬時値I(t)の測定値に対応するものであり、当該瞬時値I(t)と同期している。
【0125】
更に、このタイミングチャートには既述の各信号S1〜S3も併記してある。
【0126】
図13図16は、本実施形態に係る電力測定方法について説明するためのフローチャートである。特に断らない限り、これらのフローチャートにおける各ステップは、演算部33が実行するものである。
【0127】
演算部33は、以下のように温度測定(図13)、電流測定(図14)、電圧測定(図15)、及び電力測定(図16)を行う。
【0128】
図13の最初のステップP1では、演算部33が、所定のサンプリング周波数Fでデジタル温度信号VTDを取り込む。
【0129】
サンプリング周波数Fは特に限定されない。本実施形態では、演算部33が第1の出力信号S1の周期T(図12参照)を認識し、当該周期Tを均等に64分割することにより、サンプリング周波数Fとして64/Tを採用する。
【0130】
次いで、ステップP2に移り、演算部33がデジタル温度信号VTDに基づいて温度Yを算出する。本ステップは、例えば、予めデジタル温度信号VTDと温度Yとのテーブルを作成しておき、演算部33がそのテーブルを参照してデジタル温度信号VTDに対応する温度Yを求めることで実行し得る。
【0131】
次に、ステップP3に移り、既述の式(5)を利用することにより、演算部33が定数aをa=cY+dと補正する。
【0132】
なお、既述のように、式(5)は式(1)で実効電圧値Vrmsを算出するときの補正式である。式(1)ではなく式(3)で実効電圧値Vrmsを算出するときは、式(8)のように演算部33がαをα=γY+δと補正すればよい。
【0133】
以上により、温度測定は終了する。
【0134】
次に、図14を参照し、電流測定について説明する。
【0135】
最初のステップP10では、上記のサンプリング周波数F(=64/T)で演算部が既述のデジタル電流信号VIDを取り込む。
【0136】
次に、ステップP11に移り、デジタル電流信号VIDに基づいて、演算部33が複数のプラグ差込部1a毎に電流Iの瞬時値I(t)を算出する。
【0137】
本ステップは、例えば、予め作成しておいたデジタル電流信号VIDと瞬時値I(t)とのテーブルを参照し、サンプリング時刻におけるデジタル電流信号VIDに対応する瞬時値I(t)を読み取ることで実行し得る。
【0138】
次いで、ステップP12に移り、複数のプラグ差込部1a毎に電流Iの実効値Irmsを算出する。実効値Irmsは、ステップP11で算出した瞬時値I(t)の最大値を電流のピーク値Imとして同定し、次の式(11)により計算し得る。
【0139】
【数11】
【0140】
以上により、電流測定を終了する。
【0141】
次に、図15を参照して、電圧測定について説明する。
【0142】
まず、ステップP20において、テーブルタップ1の使用を開始する。これにより、第1の発光ダイオード41a(図8参照)の両端に電源電圧が印加されることになる。
【0143】
また、これと同時に、ステップP21において、第2の発光ダイオード41bの両端にも電源電圧が印加される。
【0144】
次いで、ステップP22に移り、演算部33が、第1の出力信号S1がローレベルである期間の長さX0図12参照)を算出する。
【0145】
そして、ステップP23に移り、合成信号S3がローレベルである期間の長さX(図12参照)を算出する。
【0146】
長さXを算出するに際し、演算部33は合成信号S3を利用する必要はない。例えば、演算部33は、第1の出力信号S1の上昇エッジと第2の出力信号S2の下降エッジとの間隔を長さXとして算出し得る。
【0147】
次いで、ステップP24に移り、演算部33が実効電圧値Vrmsを推定する。
【0148】
実効電圧値Vrmsは、ステップP23で求めた期間の長さXを利用して、式(1)からVrms=aX+bと推定し得る。或いは、ステップP22で求めた期間の長さX0を利用して、式(3)から実効電圧値VrmsをVrms=αX0+βと推定してもよい。
【0149】
次に、ステップP25に移り、演算部33が電源電圧の瞬時値V(t)を推定する。
【0150】
瞬時値V(t)の推定には、ステップP24で算出した実効電圧値Vrmsを利用する。
【0151】
例えば、ステップP24で式(1)から実効電圧値VrmsをVrms=aX+bと算出した場合には、式(2)を利用して瞬時値V(t)をV(t)=√2(aX+b)sin(ωt)と推定し得る。
【0152】
一方、ステップP24で式(3)から実効電圧値VrmsをVrms=αX+βと算出した場合には、式(4)を利用して瞬時値V(t)をV(t)=√2(αX0+β)sin(ωt)と推定し得る。
【0153】
いずれの場合でも、瞬時値V(t)のサンプリング周波数は、ステップP11(図14参照)で電流Iの瞬時値I(t)を算出した際に使用したサンプリング周波数Fと同一の周波数とされる。また、サンプリング点についても、瞬時値V(t)と瞬時値I(t)とで同じ点が用いられる。
【0154】
以上により、電圧測定を終了する。
【0155】
次に、図16を参照しながら、電力測定について説明する。
【0156】
まず、最初のステップP30では、演算部33が次の式(12)に基づいてプラグ差込部1a毎の有効電力値Pを算出する。
【0157】
【数12】
【0158】
なお、式(12)において、I(t)はステップP11(図14参照)で求めた電流の瞬時値であり、V(t)はステップP26(図15参照)で求めた電圧の瞬時値である。そして、式(12)の被積分関数としては、同一のサンプリング点における各瞬時値I(t)、V(t)の値が用いられる。
【0159】
このように同一のサンプリング点で各瞬時値I(t)、V(t)の積を算出するためには、演算部33により予め瞬時値V(t)のゼロクロス点を求めておくのが好ましい。
【0160】
図12に示すように、各閾値V1、V2の絶対値を等しく設定しておけば、ゼロクロス点Qは、各出力信号S1、S2が共にローレベルである期間の長さXの中点として求めることができる。
【0161】
そして、そのゼロクロス点Qを始点にして同一のサンプリング周波数Fで各瞬時値I(t)、V(t)のサンプリングを開始すれば、同一のサンプリング点における各瞬時値I(t)、V(t)を求めることができる。
【0162】
なお、このようにゼロクロス点Qを求める場合は、演算部33が隣接するゼロクロス点Qの間隔T1を算出し、当該間隔T1の二倍を周期Tとして求めてもよい。このようにすると、負荷が安定せず瞬時値V(t)の波形が不安定な場合でも周期Tを正確に求めることができるので、その周期Tから得られるサンプリング周波数F(=64/T)の正確性が増す。
【0163】
特に、プラグ差込部1aに接続される負荷がAC−DC電源の場合に瞬時値V(t)の波形が不安定になりがちなので、このようにゼロクロス点Qから周期Tを求める実益がある。
【0164】
次に、ステップP31に移り、演算部33が次の式(13)に基づいてプラグ差込部1a毎の皮相電力値Sを算出する。
【0165】
【数13】
【0166】
なお、式(13)において、IrmsはステップP12(図14参照)で求めた電流の実効値であり、VrmsはステップP24(図15)で求めた実効電圧値Vrmsである。
【0167】
次いで、ステップP32に移り、上記で算出した有効電力値Pと皮相電力値Sとを用いて、演算部が次の式(14)に基づいてプラグ差込部1a毎の力率cosθを算出する。
【0168】
【数14】
【0169】
なお、式(14)において、θは、電圧と電流の各々の実効値V(t)、I(t)の位相差である。
【0170】
以上により、電力測定を終了する。
【0171】
演算部33は、図13図16の各ステップを行った後、有効電力値P、皮相電力値S、及び力率cosθを含む出力データSoutを出力ポート34(図8参照)に出力する。
【0172】
出力データSoutの規格は特に限定されず、USB(Universal Serial Bus)規格、有線LAN(Local Area Network)、及び無線LANのいずれかで出力データSoutをフォーマットし得る。
【0173】
更に、その出力データSoutには、電流の瞬時値I(t)、実効電流値Irms、電源電圧の瞬時値V(t)、及び実効電圧値Vrms等も含ませるのが好ましい。
【0174】
なお、演算部33は、上記の電力測定の他に、次のようにして電源電圧が安定しているかどうかを判断することもできる。
【0175】
図17は、電源電圧の瞬時値V(t)が安定した正弦波である場合の第1の出力信号S1と第2の出力信号S2のタイミングチャートである。
【0176】
この場合は、第1の閾値V1と第2の閾値V2の各々の絶対値を同じに設定しておけば、第1の出力信号S1がローレベルである期間の長さX1と第2の出力信号S2がローレベルでる期間のX2の長さが同じになる。
【0177】
一方、図18は、電源電圧の瞬時値V(t)が不安定な場合の第1の出力信号S1と第2の出力信号S2のタイミングチャートである。
【0178】
この例では、電源電圧の瞬時値V(t)の負側のピーク電圧が、正側のピーク電圧よりも低い場合を例示している。
【0179】
この場合は、第1の閾値V1と第2の閾値V2の各々の絶対値を同じに設定しておくと、長さX2が長さX1よりも長くなる。
【0180】
図17及び図18のように、長さX1、X2は、瞬時値V(t)が安定しているか否かを判断する目安として使用し得る。これを利用して、演算部33は、以下のようにして電源電圧の安定性を判断することができる。
【0181】
図19は、電源電圧が安定しているかどうかを判断する手順について示すフローチャートである。
【0182】
最初のステップP40では、演算部33が、第1の出力信号S1がローレベルである期間の長さX1と第2の出力信号S2がローレベルでる期間のX2の長さが同じかどうかを判断する。
【0183】
ここで、同じである(YES)と判断された場合には、ステップP41に移り、図17に示したように瞬時値V(t)は正弦波で安定していると判断する。
【0184】
一方、同じではない(NO)と判断された場合には、ステップP42に移り、図18に示したように瞬時値V(t)は不安定であると判断する。
【0185】
以上により、この電源電圧の安定性を判断するための基本ステップを終了する。
【0186】
その判断結果は、演算部33が出力データSoutに含ませて出力ポート34(図8参照)に送信する。
【0187】
次に、このテーブルタップ1を利用した電力測定システムについて説明する。
【0188】
図20は、本実施形態に係る電力測定システム80について説明するための模式図である。
【0189】
テーブルタップ1の使用に際しては、図20に示すように、壁面コンセント78にプラグ2を差し込む。
【0190】
そして、テーブルタップ1の各プラグ差込部1aに、第1〜第4の電気機器71〜74のコンセントプラグ71a〜74aを差し込む。なお、全てのプラグ差込部1aを電気機器に接続する必要はなく、複数のプラグ差込部1aの中に未使用のものがあってもよい。
【0191】
更に、パーソナルコンピュータ等の電子計算機76とテーブルタップ1の出力ポート34とをUSBケーブル等の信号ケーブル75で接続する。
【0192】
このようにすると、既述の出力データSoutを介して、電気機器71〜74の各々における有効電力値P、皮相電力値S、及び力率cosθが電子計算機76に取り込まれる。
【0193】
これらの有効電力値P、皮相電力値S、及び力率cosθは、電気機器71〜74毎にモニタ77に表示される。
【0194】
ユーザは、モニタ77を監視することにより、各電気機器71〜74においてどの程度の電力が消費されているかをリアルタイムに把握することができ、省エネルギ化のために各電気機器71〜74の電力を低減すべきかどうかの判断材料を得ることができる。
【0195】
なお、ユーザの便宜に資するため、出力データSoutを利用してモニタ77に電源電圧の瞬時値V(t)や実効電圧値Vrmsを表示してもよいし、各プラグ差込部1aから供給されている電流の瞬時値I(t)や実効電流値Irmsを表示してもよい。
【0196】
また、電子計算機76内にデータベース76aを設け、そのデータベース76aに各電器機器71〜74の所定期間内における総電力を格納してもよい。これにより、電力を低減すべきかどうかの判断材料を更に増やすことができる。
【0197】
以上説明した本実施形態によれば、図20を参照して説明したように、テーブルタップ1に接続された各電気機器71〜74の電力値を個別にモニタすることができる。
【0198】
そして、図8を参照して説明したように、電源電圧の瞬時値V(t)を監視するためにサージ耐性が高い第1のフォトカプラ41と第2のフォトカプラ42を使用しているので、サージにより電圧測定部50が破損する危険性が少ない。
【0199】
しかも、式(12)を参照して説明したように、有効電力値Pの算出に際しては、電源電圧の瞬時値V(t)と電流の瞬時値I(t)を使用する。これにより、実使用下における瞬時値V(t)、I(t)の変動が有効電力値Pに反映され、例えば実効電圧値Vrmsを100Vに固定して電力値を計算する場合と比較して、有効電力値Pの算出精度が向上する。
【0200】
更に、温度測定部60で測定された温度Yに基づき、式(7)や式(10)のように電源電圧の瞬時値V(t)を補正することで、テーブルタップ1の周囲の温度Yが変動した場合でも有効電力値Pを正しく算出することができる。
【0201】
また、図3に示したように、電流の瞬時値I(t)については他の磁界測定素子よりも小さなホール素子22で測定するため、テーブルタップ1の大型化を招くことなく、テーブルタップ1内で電力値を算出することができる。
【0202】
(第2実施形態)
図21は、本実施形態に係るテーブルタップ101の外観図である。なお、図21において、第1実施形態で説明したのと同一の機能を有する要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0203】
図21に示すように、このテーブルタップ101では、複数のプラグ差込部1aの各々に対応してスイッチ102を設ける。
【0204】
図22は、下部筐体5と上部筐体6を外した状態でのテーブルタップ101の斜視図である。
【0205】
各スイッチ102はロッカースイッチであって、ユーザがボタン102xをオン側やオフ側に押すことで、第2のバスバー12に各分岐バー17を電気的に接続させたり、第2のバスバー12から各分岐バー17を電気的に遮断したりすることができる。
【0206】
また、第1の回路基板20には、磁性体コア21(図3参照)を収容するカバー108がネジ110により固定される。
【0207】
図23は、図22の構造から第1の回路基板20、スイッチ102、及びカバー108を除いた状態での斜視図である。
【0208】
なお、図23において、第1実施形態で説明したのと同じ機能を有する要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0209】
図23に示すように、本実施形態では、第2のバスバー12に第4のコンタクト12eを設けると共に、分岐バー17の先端に第5のコンタクト17eを設ける。
【0210】
更に、第1〜第3のバスバー11〜13の他に、各スイッチ102が内蔵するLED等の光源に電力を供給するための補助バー104を設ける。
【0211】
その補助バー104は、真鍮板等の金属板を型抜きしてそれを曲げ加工することで作製され、各スイッチ102に対応した複数の枝104aを有する。そして、その枝104aの先端には、枝104aの延在方向から垂直方向に屈曲した第6のコンタクト104eが形成される。
【0212】
図24は第1のバスバー11と補助バー104の斜視図である。
【0213】
図24に示すように、第1のバスバー11と補助バー104は、接続ケーブル110によって互いに電気的に接続され、互いに同電位にされる。
【0214】
一方、図25は第2のバスバー12の斜視図であり、図26は第3のバスバー13の斜視図である。
【0215】
これらのバスバー12、13も真鍮板等の金属板を型抜きしてそれを曲げ加工することで作製され得る。
【0216】
また、図27は、本実施形態に係る分岐バー17の斜視図である。
【0217】
図27に示すように、分岐バー17の端部には、第2のコンタクト17aの延長部17yが設けられる。
【0218】
図28は、テーブルタップ101の分解斜視図である。
【0219】
図28に示すように、カバー108は、その内側に磁性体コア21を収容する大きさを有し、分岐バー17が挿通するスリット108aを備える。
【0220】
更に、そのカバー108の底部には二つの嵌合突起108bが設けられる。その嵌合突起108bは第1の回路基板20に設けられた嵌合孔20eに嵌合し、それによりカバー108と第1の回路基板20とが位置決めされる。
【0221】
このように磁性体コア21毎にカバー108を設け、ネジにより第1の回路基板20にカバー108を固定することで、第1の回路基板20上での磁性体コア21の安定性が向上する。
【0222】
一方、スイッチ102には第1〜第3の端子102a〜102cが設けられる。これらの端子102a〜102cは、それぞれ上記の第4のコンタクト12e、第5のコンタクト17e、及び第6のコンタクト104eに嵌合する。
【0223】
図29は、このスイッチ102を含むテーブルタップ101の回路図である。なお、図30では、アース線となる第3のバスバー13については省いてある。
【0224】
図29に示すように、各スイッチ102は、光源120と二枚の導電刃118を有する。これらの導電刃118はボタン102x(図22参照)と機械的に接続されており、ボタン102xの操作によりスイッチ102がオン状態になると、分岐バー17と枝104aとが同時に第2のバスバー12に電気的に接続される。
【0225】
このようにオン状態になると光源120が発光し、その光によって透光性のボタン102x(図22参照)の全体が照らされて、スイッチ102がオン状態であることをユーザが知ることができる。
【0226】
なお、本実施形態に係るテーブルタップ101も、図8と同じ回路構成の送信回路部27を有し、第1実施形態と同じ電力測定方法を行うことができる。
【0227】
以上説明した本実施形態によれば、図21に示したように、各プラグ差込部1aの各々にスイッチ102を設ける。これにより、プラグ差込部1aに接続されている電気機器が不使用の場合、そのプラグ差込部1aに対応したスイッチ102をオフにすることで、プラグ差込部1aから電気機器に供給される電力を遮断して、当該電気機器の待機電力をカットすることができる。
【0228】
更に、図28に示したように、カバー108の内側に磁性体コア21を収容し、第1の回路基板20にカバー108を固定することで、回路基板20上で磁性体コア21が位置ずれし難くなり、回路基板20への磁性体コア21の取り付けの安定性が向上する。
【0229】
以上、各実施形態について詳細に説明したが、各実施形態は上記に限定されない。
【0230】
例えば、上記では、図1図21のようにテーブルタップ1、101に複数のプラグ差込部1aが設けられた場合について説明したが、一つのプラグ差込部1aのみをテーブルタップ1、101に設けるようにしてもよい。
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