特許第5661816号(P5661816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661816
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】水素化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20150108BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20150108BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20150108BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20150108BHJP
   C07C 5/09 20060101ALI20150108BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20150108BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150108BHJP
【FI】
   B01J37/02 101D
   B01J37/08
   B01J37/16
   B01J23/66 Z
   C07C5/09
   C07C11/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-557547(P2012-557547)
(86)(22)【出願日】2011年3月17日
(65)【公表番号】特表2013-522018(P2013-522018A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2011054011
(87)【国際公開番号】WO2011113881
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2014年1月9日
(31)【優先権主張番号】10157055.4
(32)【優先日】2010年3月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツフエルト,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ホーアイゼル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】クレムト,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】パクルスキー,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】プライジング,ヘンリ
(72)【発明者】
【氏名】シヨーデル,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】フアン・デル・ザイエン,ドルフ
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−509194(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/127406(WO,A2)
【文献】 特開昭52−011185(JP,A)
【文献】 特開平08−173807(JP,A)
【文献】 特開2000−153154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C07C 1/00−409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素フィード中の不飽和炭化水素を選択的に水素化するための担持金属触媒を製造する方法であって、以下の段階:
(a) 触媒支持体を提供する段階;
(b) 少なくとも1種類の還元剤を含んでいる第1の液体媒体を段階(a)で提供された触媒支持体に塗布する段階であり、段階(a)で提供された触媒支持体の総細孔容積の10%から90%が、第1の液体媒体で満たされる段階;
(c) 段階(b)で得られた触媒支持体に少なくとも1種類の遷移金属を含んでいる第2の液体媒体を含浸させて、含浸前駆物質を得る段階であり、段階(a)で提供された触媒支持体の総細孔容積の少なくとも91%が、第1の液体媒体及び第2の液体媒体で満たされる段階;
(d) 段階(c)で得られた含浸前駆物質を80℃から350℃の温度で乾燥させて、乾燥された含浸前駆物質を得る段階;及び、
(e) 段階(d)で得られた乾燥された含浸前駆物質を350℃から700℃の温度で処理して、担持金属触媒を得る段階;
を含んでいる、前記方法。
【請求項2】
段階(b)において、段階(a)で提供された触媒支持体の総細孔容積の10%から70%が、第1の液体媒体で満たされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(b)における還元剤が、ヒドラジン、ギ酸及びホルムアルデヒドからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
段階(c)において、少なくとも2種類の遷移金属が使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種類の遷移金属が、Pd、Pt、Cu、Ni、Au及びAgからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法のうちのいずれか1つで得られる炭化水素フィード中の不飽和炭化水素を選択的に水素化するための触媒。
【請求項7】
少なくとも1種類の遷移金属及び支持体を含んでいる請求項6に記載の触媒であって、400μmの最大侵入深さを有する外殻領域及び中心部分を含んでおり、該少なくとも1種類の遷移金属の総量の少なくとも90%が、該外殻領域内に分配されている、前記触媒。
【請求項8】
段階(c)において2種類の遷移金属が使用されており、及び、調製された触媒がPd−Ag−触媒である、請求項6又は7に記載の触媒。
【請求項9】
触媒に含まれている金属微結晶の総量の少なくとも90%が該少なくとも2種類の遷移金属を含んでいる、請求項6から8のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項10】
少なくとも2種類の遷移金属及び支持体を含んでいる二金属触媒又は多金属触媒である請求項6に記載の触媒であって、400μmの最大深さを有する外殻領域及び中心部分を含んでおり、該少なくとも2種類の遷移金属の総量の少なくとも90%(触媒全体の重量に基づいて計算)が、該外殻領域内に分配されており、及び、該触媒に含まれている金属微結晶の総量の少なくとも90%が、該少なくとも2種類の遷移金属を含んでいる、前記二金属触媒又は多金属触媒。
【請求項11】
銀、パラジウム及び支持体を含んでいる、請求項8から10のいずれか1項に記載のPd−Ag−触媒であって、400μmの最大深さを有する外殻領域及び中心部分を含んでおり、該銀及びパラジウムの総量の少なくとも90%(触媒全体の重量に基づいて計算)が、該外殻領域内に分配されており、及び、該触媒に含まれている金属微結晶の総量の少なくとも90%が、銀及びパラジウムを含んでいる、前記Pd−Ag−触媒。
【請求項12】
Pdの濃度が、0.02から0.05重量%(触媒の総重量を基準)である、請求項11に記載のPd−Ag−触媒。
【請求項13】
不飽和炭化水素の第1の群及び第2の群を含んでいる炭化水素フィードを選択的に水素化する方法であって、第1の群が、アルキン、アルカジエン、アルカトリエン及びアルカポリエンから成る群から選択される高不飽和炭化水素を含み、第2の群が、アルケンから選択される低不飽和炭化水素を含み、該炭化水素フィードを適切な水素化条件の下で請求項6から12のいずれか1項に記載の触媒と接触させ、該炭化水素フィード中の第1の群の不飽和炭化水素を水素化する、前記方法。
【請求項14】
炭化水素フィードが、その不飽和炭化水素の第1の群の中に、アセチレンを含んでいる、請求項13に記載の水素化方法。
【請求項15】
炭化水素フィードを10から250℃の温度で触媒と接触させる、請求項13又は14に記載の水素化方法。
【請求項16】
炭化水素フィードを0.5から90バールの圧力で触媒と接触させる、請求項13から15のいずれかに記載の水素化方法。
【請求項17】
炭化水素フィードを1000から15000v/vhのGHSV(気体時間当たり空間速度)で触媒と接触させる、請求項13から16のいずれかに記載の水素化方法。
【請求項18】
炭化水素フィードを水素流と接触させる、請求項13から17のいずれかに記載の水素化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担持金属触媒を製造する方法、それによって得られる触媒及び水素化プロセスにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
精製所及び石油化学施設においては、加工段階の間に及びその貯蔵において問題を引き起こすかなりの量の不飽和炭化水素を含んでいる大量の炭化水素が製造され、貯蔵される。そのような不飽和化合物は、例えば、アセチレン、プロピン(propine)、プロパジエン、ブタジエン類、ビニルアセチレン、ブチン類(butines)、フェニルアセチレン及びスチレンなどである。
【0003】
アセチレンは、重合プロセスにおいて触媒の活性を低減させることが知られており、ポリマーの質が損なわれる。かくして、エチレンからのポリエチレンの合成において、アセチレンの濃度は最少限度に抑えられるべきである。
【0004】
望ましくない不飽和化合物は、主に、これらの化合物を好ましくは含有量が数ppm未満になるまで水素化する選択的水素化によって除去される。エチレンを選択的に水素化してエタンとすること並びに高級炭化水素のオリゴマー化及びコークスの生成を回避することは、アセチレンの選択的水素化にとって重要である。
【0005】
当技術分野において、選択的水素化のためには、硫化ニッケル、W/NiS又は銅含有触媒が使用された。それらの活性が高温では低いことに起因して、ポリマーの形成が増大した。選択的水素化プロセスに関して酸化アルミニウムと酸化ケイ素に基づいた担持Pd触媒を使用することも知られている。
【0006】
JP 58017835には、55から120m/gの表面積を有するPd−Al触媒が開示されている。JP 65017813には、Pd−Al触媒の中のPdの微結晶の寸法は、少なくとも5.0nmであるべきであるということが開示されている。US 4,762,956には、3種類の異なった酸化アルミニウム水和物の混合物を支持体として使用することによってPd−Al触媒の選択性が改善されるということが開示されている。AS 1171901には、0.01から0.09重量%のPd含有量及び0.4cm/gの最大細孔容積を有するPd−Al触媒が開示されている。GB 1,133,253には、0.01から1.0重量%のPd含有量及び表面積250から450m/gのケイ酸からなる支持体を有するPd−SiO触媒が開示されている。DE 69720235には、アセチレンの選択的水素化のためのPd−Al触媒〔ここで、Pdの微結晶は、主に、(100)領域と(111)領域を有し、及び、吸着された水素は、2種類の異なった温度領域で脱着される〕が開示されている。
【0007】
JP 54157507には、Pd−Al触媒(ここで、該触媒のα−Al支持体は、Alの層で被覆され、次に、400から700℃の温度でか焼された)が開示されている。工業用途で使用されるPd−Al触媒とPd−SiO触媒の有利点は硫化ニッケル触媒と比較して際だっていたが、それらの耐久性は不充分であった。従って、該触媒の特性及び該プロセス条件を修正するための努力が企てられた。US 4,329,530には、Pd侵入深さ(penetration depth)が300μm未満であるアルミン酸カルシウム担持Pd触媒が開示されている。FR 2603578には、促進金属(promoting metal)として金を有しているPd−Al触媒が開示されている。US 2,802,889には、銅、銀及び金を含んでいるPd触媒(ここで、金属層中の第8亜族の元素の含有量は1から40%である)を用いてアセチレンを選択的に水素化する方法が開示されている。これらの触媒は、ケイ藻土支持体にPd/Cu塩、Pd−Ag塩及びPd/Au塩の溶液を含浸させ、乾燥させ、か焼し、並びに、450℃未満の温度で水素を用いて還元することによって製造される。DE 19757990には、Ni、Co又はAg、及び、Na、K又はCa、並びに、沈降有機シラン(precipitated organic silane)の層を含んでいる担持Pd触媒が開示されている。US 3,243,387には、Fe−αAl支持体に硝酸金属塩の溶液を含浸させることとそれに続く乾燥段階、か焼段階及び還元段階によって製造された、Fe−αAl支持体に担持されているPd−Ag−触媒が開示されている。
【0008】
US 4,484,015には、Pd−Ag−Al触媒(ここで、Agは触媒全体に均一に分配されており、Pdの90%は侵入深さ300μmで外殻領域の中に分配されている)が開示されている。さらに、AgとPdの重量比は、2から6である。該金属イオンは、含浸段階、乾燥段階及びか焼段階の後で、水素含有ガスを用いて還元される。DE 19840373には、第8亜族の少なくとも1種類の金属(これは、卵殻(eggshell)に分配されている)と第1亜族の少なくとも1種類の金属(これは、触媒全体に均一に分配されている)を含んでいる触媒が開示されている。第1亜族の金属と第8亜族の金属の重量比は、1.95以下である。US 5,510,550には、含浸、乾燥及びか焼の後でアルカリ化合物の存在下で水溶液中のヒドラジン、ギ酸、ホルムアルデヒド又は水素化ホウ素アルカリで還元されたPd−Ag−触媒が開示されている。EP 0722776には、硫黄含有ガス流のためのKF含有Pd−Ag−Al触媒が開示されている。US 2004/0248732には、KSbF、KPF、KBF及びKAlFからなる群から選択される化合物を含んでいるPd−Ag−Al触媒が開示されている。KR 2000−0059743には、Pdを酸化チタンで促進すること、それによってPdの選択性がSMSI効果によって増大されるということが開示されている。US 7,453,017には、SMSI効果が300℃で誘発されるという方法が開示されている。US 6,797,669においては、触媒の耐久性は、Pdと侵入深さが300μmを超える第1亜族の金属を均一に分配し、Pdと当該第1亜族の金属のモル比を1から20とし、合金の微結晶の寸法を2から10nmとし、及び、平均細孔直径を40から100nmとすることによって、増大されている。該触媒は、該金属塩をpH値1から4で同時に含浸させ、乾燥させ、か焼し、及び、水素で還元することによって製造される。US 2006/0107424には、Pd、Ag及びアルカリの組成物のために支持体としてZn、Mg及びCaのアルミン酸金属塩を使用することができるということが開示されている。US 6,255,548には、Ge、Sn、Pb、Re、Ga、In、Au、Ag及びTlで促進された担持Pd触媒が開示されている。該触媒は、助触媒の少なくとも1種類の水溶性金属有機組成物を用いて製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−017835号公報
【特許文献2】JP 65017813号
【特許文献3】米国特許第4,762,956号明細書
【特許文献4】AS 1171901号
【特許文献5】英国特許出願公開第1,133,253号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第69720235号明細書
【特許文献7】特開昭54−157507号公報
【特許文献8】米国特許第4,329,530号明細書
【特許文献9】仏国特許出願公開第2603578号明細書
【特許文献10】米国特許第2,802,889号明細書
【特許文献11】独国特許出願公開第19757990号明細書
【特許文献12】米国特許第3,243,387号明細書
【特許文献13】米国特許第4,484,015号明細書
【特許文献14】独国特許出願公開第19840373号明細書
【特許文献15】米国特許第5,510,550号明細書
【特許文献16】欧州特許出願公開第0722776号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2004/0248732号明細書
【特許文献18】韓国公開特許第2000−0059743号公報
【特許文献19】米国特許第7,453,017号明細書
【特許文献20】米国特許第6,797,669号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2006/0107424号明細書
【特許文献22】米国特許第6,255,548号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
最新技術によれば、特に、水素化プロセスにおいて使用される場合、特に、アセチレン、プロピン、プロパジエン、ブタジエン類、ビニルアセチレン、ブチン類、フェニルアセチレン及びスチレンを気相中で水素化するための選択的水素化プロセスにおいて使用される場合、触媒は、不充分な耐久性及び選択性を示す。
【0011】
従って、本発明の基礎をなす技術的な問題は、上記で認定された不利点を克服すること、特に、炭化水素フィードを水素化するための触媒を製造する方法及びそれによって得られる触媒を提供することである。好ましくは、該触媒は、不飽和炭化水素(特に、アセチレン、プロピン、プロパジエン、ブタジエン類、ビニルアセチレン、ブチン類、フェニルアセチレン及びスチレン)を含んでいる炭化水素フィード(特に、気相炭化水素フィード)の中の不飽和炭化水素を選択的に水素化するのに適しており、高い(特に、改善された)耐久性又は選択性又は耐久性と選択性の両方を示す。
【0012】
さらに、本発明の基礎をなす技術的な問題は、上記で認定された不利点を克服し且つ特に高い(特に、改善された)耐久性又は選択性又は耐久性と選択性の両方を特徴とする炭化水素フィードを水素化するためのプロセス、特に、不飽和炭化水素(特に、アセチレン、プロピン、プロパジエン、ブタジエン類、ビニルアセチレン、ブチン類、フェニルアセチレン及びスチレン)を含んでいる炭化水素フィード(特に、気相炭化水素フィード)の中の不飽和炭化水素を選択的に水素化するためのプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記技術的な問題は、添付されている「特許請求の範囲」の教示によって解決される。
【0014】
特に、本発明は、その技術的な問題を、以下の段階:
(a) 触媒支持体を提供する段階;
(b) 少なくとも1種類(好ましくは、1種類)の還元剤を含んでいる第1の液体媒体を段階(a)で提供された触媒支持体に塗布する段階〔段階(a)で提供された触媒支持体の総細孔容積の10から90%(好ましくは、10から70%)が、第1の液体媒体で満たされる〕;
(c) 段階(b)で得られた触媒支持体に少なくとも1種類の遷移金属を含んでいる第2の液体媒体を含浸させて、含浸前駆物質を得る段階〔段階(a)で提供された触媒支持体の総細孔容積の少なくとも91%が、第1の液体媒体及び第2の液体媒体で満たされる〕;
(d) 段階(c)で得られた含浸前駆物質を80から350℃の温度で乾燥させて、乾燥された含浸前駆物質を得る段階;及び、
(e) 段階(d)で得られた乾燥された含浸前駆物質を350から700℃の温度で処理して、担持金属触媒を得る段階;
を含んでいる、担持金属触媒の製造方法によって解決する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関連して、「液体媒体」は、好ましくは、溶液である。本発明に関連して、「液体媒体」は、懸濁液であってもよい。本発明の好ましい実施形態では、該溶液又は懸濁液は、水溶液又は水性懸濁液である。
【0016】
本発明に関連して、用語「均一に満たされている」は、前記塗布及び/又は含浸の後で、触媒支持体の単独の全ての細孔の中に本質的に同一の又は同一量の液体媒体が存在していることを意味する。該触媒支持体の細孔を均一に満たすことで、本質的に同一の又は同一モル含有量の還元剤及び/又は遷移金属が単独の全ての細孔の中に存在する。かくして、該触媒支持体の単独の全ての細孔の中で、本質的に同一の還元剤及び遷移金属又は還元剤と遷移金属の本質的に同一の比率が達成され得る。
【0017】
かくして、好ましくは、細孔系の少なくとも1の(好ましくは、全ての)種類(例えば、ミクロ細孔又はマクロ細孔)の全ての利用可能な表面領域及び容積領域(volumetric region)が、均一に湿らされるか又は覆われる。
【0018】
本発明に関連して、表現「還元剤」は、還元−酸化反応において電子を別の化学種に供与する化合物を意味し、この意味は、普通の一般的な知識である。即ち、本発明に関連して、還元剤は、本発明の触媒製造方法の段階(c)において使用される第2の液体媒体の遷移金属を還元することが可能な化合物である。例えば、遷移金属がパラジウムである場合、該液体媒体のPd2+は該還元剤によってPd(Pd金属)に還元され得る(2個の電子を供与)。
【0019】
本発明に関連して、2つの要素の間で使用される表現「及び/又は」は、当該用語で連結されている両方の要素について追加的に又は代替的に言及されていることを意味することが意図されている。かくして、表現「A及び/又はB」は、意味「A又はB」及び意味「A及びB」を包含し、これは、「A又はB又はAとBの両方のいずれか1つ」を意味する。
【0020】
本明細書の教示において与えられている「重量%」値は、特に別途示されていない限り、乾燥触媒全体の重量を示している。本発明に関連して、該触媒の成分は、総量が100重量%となるように、最も好ましくは、100重量%を超えないように、選択されるべきである。
【0021】
本発明に関連して、用語「外殻領域」は、触媒の周辺領域であり、これは、段階(c)において含浸された少なくとも1種類の遷移金属(好ましくは、銀又はパラジウム又は銀とパラジウムの両方)の総量の好ましくは少なくとも90%の存在(触媒の総重量に基づいて計算)によってその範囲が定められ、及び、これは、該触媒の外側周辺領域、好ましくは、400μm、350μm、300μm、250μm、好ましくは220μm、好ましくは200μm及び最も好ましくは150μmの触媒内部に向かって含浸する金属の拡散方向における軸に沿って計算された最大深さ(特に、触媒の表面の所与の点における接線に対して垂直に触媒の内部に向かって引かれた軸に沿って計算された最大深さ)を有する該触媒の中心部分と該触媒の表面の間の領域である。かくして、該触媒の周辺領域は、該触媒全体に含まれている少なくとも1種類の遷移金属(好ましくは、銀又はパラジウム又は銀とパラジウムの両方)の総量の好ましくは少なくとも90%が存在しており、且つ、該触媒の表面から該触媒の幾何学的表面の下方に400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下、好ましくは220μm以下、好ましくは200μm以下及び最も好ましくは150μm以下にまで達する、領域である。かくして、該外殻領域の深さは、該外殻領域の断面的な深さであり、従って、該触媒の幾何学的な表面と触媒中心部分の境界線の間の距離に等しい。
【0022】
本発明に関連して、触媒の中心部分は、触媒の残りの部分、即ち、触媒の内部領域である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、触媒の中心部分の直径は、外殻領域の深さよりも、少なくとも、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍又は20倍大きい。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、該触媒の中心部分の半径は、外殻領域の深さよりも、少なくとも、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍又は20倍大きい。本発明に関連して、用語「触媒支持体(catalyst support)」は、触媒活性を示す金属を含んでいない純粋な担体であると理解されるか、又は、触媒活性を示す少なくとも1種類の金属(好ましくは、遷移金属、例えば、パラジウム)を含んでいる担体であると理解される。該触媒支持体の中に好ましくは既に存在している触媒活性を示す該金属は、該触媒支持体全体にわたって均一に分配されているか又は不均一に分配されている。
【0025】
かくして、本発明の方法は、段階(a)において、触媒支持体として、触媒活性を示す金属を含んでいない担体を使用するか、又は、別の実施形態では、触媒活性を示す少なくとも1種類の金属(好ましくは、遷移金属)を既に含んでいて、プロセス段階(b)の後で、次のプロセス段階(c)において少なくとも1種類のさらなる金属(特に、少なくとも1種類の遷移金属)が含浸される担体を使用する。
【0026】
本発明に関連して、用語「炭化水素」は、C原子とH原子のみからなる炭化水素、並びに、付加的に少なくとも1の官能基及び/又は少なくとも1のヘテロ原子を含んでいる炭化水素(例えば、芳香族ニトロ化合物)の両方を意味する。
【0027】
従って、特に好ましい実施形態では、用語「炭化水素」は、C原子とH原子のみからなる炭化水素を意味する。好ましい別の実施形態では、用語「炭化水素」は、付加的に少なくとも1の官能基及び/又は少なくとも1のヘテロ原子を含んでいる炭化水素(例えば、芳香族ニトロ化合物)を意味する。
【0028】
本発明に関連して、用語「不均一な」は、金属が触媒全体に非一様に分配されていることを意味する。不均一な分配は、好ましくは、支持体に触媒活性を示す金属(特に、Ag又はPd)を含浸させることによって達成される。
【0029】
不均一な分配を得るための別の方法を使用することができ、そのような方法は当技術分野では公知である。従って、支持体材料、使用する金属及び/又は金属前駆物質並びにプロセス条件(特に、pH、温度及び圧力)を適切に選択することにより、たとえ液体媒体が触媒全体に均一に分配されていたとしても、不均一な分配を達成し得る。かくして、一実施形態では、金属の不均一な分配は、本発明において使用される液体媒体を均一に分配させることによっても達成され得る。所望される不均一な分配を達成するために、さらに別の方法、例えば、沈澱法又は滴下法などを使用することができる。
【0030】
別の実施形態では、金属の均一な分配は、適切なプロセス条件を適用することにより、含浸、沈澱又は別の方法によって達成し得る。
【0031】
本発明に関連して、用語「炭化水素フィードの選択的水素化」は、それに従って不飽和炭化水素の2つの群を含んでいる炭化水素フィードを水素化に付すプロセス〔ここで、特定の不飽和炭化水素からなる第1の群(特に、高不飽和炭化水素、例えば、アルキン類及びジ不飽和炭化水素又はオリゴ不飽和炭化水素、例えば、アルカジエン類、アルカトリエン類又はアルカポリエン類、特に、アセチレン、ブタジエン、プロピン及びプロパジエン)は水素化され、且つ、別の低不飽和炭化水素からなる第2の群(特に、モノ不飽和炭化水素、即ち、アルケン類、例えば、エチレン)は実質的に不飽和形態のままでいる〕を意味することが意図されている。かくして、本発明による選択的水素化は、好ましくは、特定の不飽和炭化水素からなる第1の群、特に、アセチレンを含んでいる第1の群は水素化されて、好ましくはエチレンとなり、且つ、別の特定の不飽和炭化水素からなる第2の群、特に、エチレンを含んでいる第2の群は、水素化されずにモノ不飽和のままであるような水素化である。
【0032】
本発明に関連して、CO−化学吸着は、0℃の化学吸着温度でAutoChem 2920(会社:Micromeritics)を使用するインパルス化学吸着法によって測定する。分析のために、触媒を200℃で活性化する(P. A. Webb, C. Orr, Analytical Methods in Fine Particle Technology, Micromeritics Instrument Corporation, 1997)。
【0033】
本発明に関連して、金属微結晶の組成は、下記方法によって確認する: 100μmの深さ(表面から計算されたもの)にある触媒の外殻領域を摩耗させ、ミクロトームを用いて単離した。得られた材料をエタノールに添加し、超音波を用いて霧状にした。次に、霧状にされた材料を担体フィルムの上に噴霧した。エネルギー分散微量分析を行うために、走査透過型電子顕微鏡JEM 2000 ex(Jeol, 日本)、EDX spectrometer Genesis(EDAX, 米国)及びデジタル画像処理システムDISS 5(Point Electronic, 独国)を使用した。励起電圧200kVで選択的分析を実施した。測定の間中、電子ビームを微結晶に沿って幾何学的に移動させた。得られたスペクトルの定量分析を行うために、Kα線(例えば、Pd及び/又はAgのKα線)を使用して、少なくとも2の塊の量的関係を求めた。
【0034】
細孔容積、特に、総細孔容積及び部分細孔容積は、水銀ポロシメトリーによって測定する(AutoPor IV;company:Micromeritics;P. A. Webb, C. Orr, Analytical Methods in Fine Particle Technology, Micromeritics Instrument Corporation, 1997)。
【0035】
かくして、本発明の基礎をなす技術的な問題は、第1段階で触媒支持体を提供する担持金属触媒の製造によって解決される。第2段階において、第1の液体媒体(好ましくは、第1の溶液又は懸濁液)を該触媒支持体に塗布する。第1の液体媒体は、少なくとも1種類(好ましくは、1種類)の還元剤を含んでいる。第2段階において、該触媒支持体の総細孔容積の10から90%(好ましくは、10から70%)が、少なくとも1種類の還元剤を含んでいる第1の液体媒体で、特に均一に、満たされる。第3段階において、少なくとも1種類の還元剤を含んでいる第1の液体媒体で満たされた該触媒支持体に少なくとも1種類の遷移金属を含んでいる第2の液体媒体(好ましくは、第2の溶液又は懸濁液)を含浸させる。第2の液体媒体を含浸させた後、該触媒支持体の総細孔容積の少なくとも91%は、好ましくは、均一に、満たされており、例えば、該総細孔容積の少なくとも91%は第1及び第2の液体媒体で満たされている、好ましくは、第1及び第2の溶液又は懸濁液で満たされている。第4段階において、第1及び第2の液体媒体が含浸された前駆物質を80から350℃の温度で乾燥させる。第5段階において、乾燥された含浸前駆物質を350から700℃の温度で処理(特に、か焼)して、所望の担持金属触媒を得る。
【0036】
本発明による方法のいずれかによって、1種類の金属(好ましくは、パラジウム)と第2の金属(特に、Ag)の間の極めて強力な相互作用、及び、場合により、さらに、第3の金属に対する極めて強力な相互作用を得ることができるということが示され得る。そのような強力な相互作用は、合金の形成を可能とし、そして、該金属の電子挙動に影響を及ぼす。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、段階(b)の少なくとも1種類の還元剤は、ヒドラジン、ギ酸及びホルムアルデヒドからなる群から選択される。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、該少なくとも1種類の還元剤は、ヒドラジンである。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、触媒の総細孔容積の20から80%、特に、30から70%、及び、特に、35から70%は、第1の液体媒体で満たされている。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、触媒の総細孔容積の20から80%、特に、30から70%、及び、特に、30から65%は、第2の液体媒体で満たされている。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、第1及び第2の液体媒体は、その総量が総細孔容積の少なくとも91%になるまで、好ましくは、少なくとも92%になるまで、93%になるまで、94%になるまで、95%になるまで、96%になるまで、97%になるまで、98%になるまで、99%になるまで、及び、特に、100%になるまで、触媒の細孔の中に入れられる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、総細孔容積の少なくとも91%、好ましくは、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び、特に、100%が、第1及び第2の液体媒体で満たされている。
【0043】
本発明の好ましい別の実施形態では、第1及び第2の液体媒体は、総量で総細孔容積の100%を超えるまで、好ましくは、最大で120%まで、好ましくは、最大で110%まで、及び、特に、最大で105%まで、触媒の細孔に塗布される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、触媒支持体の細孔は、例えば、少なくとも1種類の遷移金属の濃度の最大値が外殻領域内に位置するように、即ち、触媒の表面から触媒の中心部分に向かって計算して50から200μm、好ましくは、50から150μm、好ましくは、70から130μm、好ましくは、90から110μmの深さの範囲内にある外殻領域の小領域内に位置するように、第1及び第2の液体媒体で満たされている。
【0045】
かくして、本発明は、好ましい実施形態において、上記で定義されている外殻領域の範囲内に、即ち、少なくとも1種類の遷移金属の総量の好ましくは少なくとも90%が位置していて且つ幾何学的表面の下方(即ち、触媒の表面から計算して)400μmの最大深さによって範囲が定められる触媒の周辺領域の範囲内に、小領域(ここで、その小領域の中に、該少なくとも1種類の遷移金属の濃度の最大値が存在しており、及び、該小領域は、該触媒の表面から計算して50μmの深さから該触媒の表面から計算して200μmの深さまでの領域内に位置している)が存在しているということを想定する。かくして、該少なくとも1種類の遷移金属の濃度の最大値は、好ましくは、外殻領域の特定の領域内の層に含まれている。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、第2の液体媒体は、少なくとも2種類の遷移金属を含んでいる。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、第2の液体媒体は、少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類又は少なくとも6種類の遷移金属を含んでいる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種類の(好ましくは、2種類の)遷移金属は、Pd、Pt、Cu、Ni、Au及びAgからなる群から選択される。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、該遷移金属のうちの1種類はPdであり、且つ、少なくとも1種類の別の遷移金属は、Pt、Cu、Ni、Au及びAgからなる群から選択される。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、1種類の遷移金属はPtであり、且つ、少なくとも1種類の別の遷移金属は、Pd、Cu、Ni、Au及びAgからなる群から選択される。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、第2の液体媒体は、遷移金属として、Pd及びAgのみを含んでいる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種類の遷移金属に対する該還元剤の化学量論的過剰は、2から50、好ましくは、5から10、好ましくは、6から9、及び、特に、7から8である。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、液体媒体は、段階(b)において、液体媒体を触媒の表面上に噴霧することによって塗布される。本発明の好ましい実施形態では、段階(c)において、該液体媒体を該触媒の表面上に噴霧することによって含浸される。好ましくは、段階(b)及び段階(c)は、両方とも、該液体媒体を噴霧する形態で実施される。該液体媒体を該触媒支持体の表面上に噴霧することによって、特に均一な分配が達成される。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、該液体媒体の該触媒の表面上への噴霧は、溶液又は懸濁液などの液体を微細に分散させることが可能なノズルを用いて実施される。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、第1の液体媒体は、触媒支持体の細孔の中に均一に分配される。本発明の好ましい実施形態では、第2の液体媒体は、該触媒支持体の細孔の中に均一に分配される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、第1及び第2の液体媒体は、該触媒支持体の細孔の中に均一に分配される。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、段階(c)は、段階(b)の直後に実施される。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、段階(d)の乾燥温度は、80から350℃、好ましくは、90から300℃、好ましくは、100から250℃、好ましくは、110から200℃、及び、特に、120から150℃である。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、段階(d)における含浸前駆物質の乾燥は、乾燥残渣が99%になるまで、好ましくは、99.5%になるまで、好ましくは、99.9%になるまで、及び、特に、100%になるまで、実施される。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、該乾燥は、静的条件又は動的条件の下で、例えば、固定床又は移動床の中で実施することができる。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による触媒は、好ましくは、乾燥後、及び、好ましくは、処理(好ましくは、か焼)の前、好ましくは、300から350℃の温度で、好ましくは、350℃の温度で、不活性化される(inerted)。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、該不活性化(inerting)は、乾燥温度と同じ温度で実施される。
【0063】
本発明の好ましい実施形態では、好ましくは、段階(e)における処理(特に、か焼)の前に、さらなる段階(d’)において、段階(d)で得られた乾燥された含浸前駆物質に水素をフラッシングする(flushed)。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、段階(d’)で実施される水素によるフラッシング(flushing)は、2から20分間、好ましくは、2から5分間行われる。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明は、不活性化段階とフラッシング段階の両方を含んでいる。
【0066】
好ましい実施形態は、乾燥段階(d)の後で、含浸され乾燥された触媒は、段階(e)において、不活性化され、次いで、水素でフラッシングされ、次いで、処理(好ましくは、か焼)されることを、想定する。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、段階(e)における処理(特に、か焼)は、400から700℃の温度で、好ましくは、500から700℃の温度で、及び、特に、600から700℃の温度で、実施される。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、該プロセスは、温度を処理(好ましくは、か焼)の温度まで上昇させる間、触媒を窒素流に晒すことを想定する。
【0069】
本発明の好ましい実施形態では、段階(e)における処理は、窒素含有ガス(好ましくは、空気、又は、好ましくは、窒素)を用いて実施される。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、該処理(好ましくは、か焼)は、固定床反応器又は移動床反応器の中で実施される。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、触媒の選択性及び/又は耐久性は、さらに、段階(e)における処理の前及び/又は処理中に窒素含有ガス(好ましくは、窒素)に添加することによって増大される。従って、水素、空気、酸素、水蒸気及びNOからなる群から好ましくは選択されるガスを、0から500ppmv(体積百万分率)、好ましくは、10から400ppmv、好ましくは、20から300ppmv、好ましくは、30から200ppmv、及び、特に、50から100ppmvの含有量で、使用する。
【0072】
本発明の好ましい実施形態では、乾燥された含浸前駆物質は、段階(e)において、1から20時間、好ましくは、2から18時間、好ましくは、3から15時間、好ましくは、5から10時間、及び、特に、5から8時間、処理(好ましくは、か焼)される。
【0073】
本発明の好ましい実施形態では、乾燥された含浸前駆物質は、段階(e)において、10から5000v/vh、好ましくは、1000から4500v/vh、及び、特に、3000から4000v/vhのGHSV(気体時間当たり空間速度(gas hourly space velocity))で、処理(好ましくは、か焼)される。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、触媒は、段階(e)において、処理(好ましくは、か焼)の後で、窒素含有ガスの中で、例えば、窒素保護雰囲気下で、好ましくは、50℃未満の温度まで、冷却される。
【0075】
本発明の基礎をなす技術的な問題は、さらにまた、本発明の触媒によって、好ましくは、本発明による方法のうちのいずれか1つの方法によって得られる本発明の触媒によって、解決される。
【0076】
好ましい実施形態では、少なくとも1種類の遷移金属及び支持体を含んでいる触媒〔該触媒は、400μm、350μm、300μm、250μm、220μm、200μm又は150μmの最大深さを有する外殻領域及び中心部分を含んでおり、ここで、好ましくは、該少なくとも1種類の遷移金属の総量の少なくとも90%は、該外殻領域内に分配されている〕、好ましくは、該方法のうちのいずれか1つの方法によって得られる触媒が提供される。
【0077】
本発明は、本発明の基礎をなす技術的な問題を、上記で識別された方法(特に、本発明による担持金属触媒を製造するための方法)で得られる金属触媒を提供することによっても解決する。好ましい実施形態では、本発明の触媒は、少なくとも2種類の金属を含んでいる触媒、即ち、少なくとも2種類の遷移金属(好ましくは、銀及びパラジウム)と支持体を含んでいる二金属触媒又は多金属触媒であり、ここで、該触媒は、400μm、350μm、300μm、250μm、220μm、200μm又は150μmの最大深さを有する外殻領域及び中心部分を含んでおり、ここで、好ましくは、該少なくとも2種類の遷移金属(特に、銀及びパラジウム)の総量の少なくとも90%(触媒全体の重量に基づいて計算)は、該外殻領域内に分配されており、及び、ここで、該触媒に含まれている金属微結晶の総量の少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、特に、少なくとも90%は、該少なくとも2種類の遷移金属(特に、銀及びパラジウム)を含んでいる。特に好ましい実施形態では、上記触媒が提供され、ここで、該少なくとも2種類の遷移金属(好ましくは、銀及びパラジウム)の濃度の最大値は、外殻領域内の小領域(これは、該触媒の50から200μmの深さにある層の中に位置している)の中に位置している。本発明によって調製された触媒は、驚くべきことに、極めて長い触媒寿命(即ち、耐久性)及び除去すべき不飽和炭化水素に対する特に高い選択性を示す。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種類の遷移金属(好ましくは、パラジウム及び/又は銀)は、触媒全体に不均一に分配され、好ましくは、外殻領域内に位置しており、特に、該外殻領域内のみに位置している。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明は、パラジウム及び銀並びに支持体を含んでいるPd−Ag−触媒を提供し、ここで、該触媒は、好ましくは400μm、350μm、300μm、250μm、220μm、200μm又は150μmの最大深さを有する外殻領域及び中心部分を含んでおり、ここで、該銀及びパラジウムの総量の少なくとも90%(触媒全体の重量に基づいて計算)は、該外殻領域内に分配されており、及び、ここで、該触媒に含まれている金属微結晶の総量の少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、特に、少なくとも90%は、銀及びパラジウムを含んでいる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態では、該少なくとも1種類(好ましくは、少なくとも2種類)の遷移金属の総量の少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び、最も好ましくは、100%(触媒全体に基づいて計算)は、外殻領域内に分配されている。
【0081】
本発明の好ましい実施形態では、銀の総量の少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び、特に、100%(触媒全体に基づいて計算)は、外殻領域内に分配されている。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、パラジウムの総量の少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び、特に、100%(触媒全体に基づいて計算)は、外殻領域内に分配されている。
【0083】
本発明の好ましい実施形態では、パラジウム及び銀の総量の少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び、特に、100%(触媒全体に基づいて計算)は、外殻領域内に分配されている。
【0084】
本発明の好ましい実施形態では、触媒に含まれている金属微結晶の総量の少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び、特に、100%は、少なくとも2種類の遷移金属を含んでいる。
【0085】
本発明の好ましい実施形態では、触媒に含まれている金属微結晶の総量の少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び、特に、100%は、両方の金属(銀及びパラジウム)を含んでいる。
【0086】
本発明の好ましい実施形態では、触媒に含まれている金属微結晶は、銀とパラジウムからなる。
【0087】
本発明の好ましいさらなる実施形態では、銀とパラジウムは、触媒全体における唯一の金属、特に、触媒活性を示す唯一の金属である。
【0088】
本発明の好ましい実施形態では、パラジウムの濃度は、0.01から2.50、好ましくは、0.1から2.0、好ましくは、0.5から1.5、及び、特に、0.8から1.2(触媒の総重量を基準)である。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、パラジウムの濃度は、0.02から0.05重量%、好ましくは、0.03から0.04重量%、及び、特に、0.035重量%(触媒の総重量を基準)である。
【0090】
本発明の好ましい実施形態では、白金の濃度は、0.01から2.50、好ましくは、0.1から2.0、好ましくは、0.5から1.5、及び、特に、0.8から1.2(触媒の総重量を基準)である。
【0091】
本発明の好ましい実施形態では、金の濃度は、0.01から2.50、好ましくは、0.1から2.0、好ましくは、0.5から1.5、及び、特に、0.8から1.2(触媒の総重量を基準)である。
【0092】
本発明の好ましい実施形態では、銀の濃度は、0.01から2.50、好ましくは、0.1から2.0、好ましくは、0.5から1.5、及び、特に、0.8から1.2(触媒の総重量を基準)である。
【0093】
本発明の好ましい実施形態では、銀の濃度は、0.0068から0.03重量%、好ましくは、0.01から0.03重量%、及び、特に、0.01から0.025重量%(触媒の総重量を基準)である。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では、銅の濃度は、0.01から5.00、好ましくは、0.1から4.0、好ましくは、0.5から3.0、及び、特に、1.0から2.0(触媒の総重量を基準)である。
【0095】
本発明の好ましい実施形態では、ニッケルの濃度は、0.01から5.00、好ましくは、0.1から4.0、好ましくは、0.5から3.0、及び、特に、1.0から2.0(触媒の総重量を基準)である。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、パラジウムの濃度は、0.02から0.05重量%、好ましくは、0.03から0.04重量%、及び、特に、0.035重量%(触媒の総重量を基準)であり、並びに、銀の濃度は、0.0068から0.03重量%、好ましくは、0.01から0.03重量%、及び、特に、0.01から0.025重量%(触媒の総重量を基準)である。
【0097】
本発明の好ましい実施形態では、パラジウムと銀の重量比は、1.7から3.0、好ましくは、2.0から3.0、及び、特に、2.5である。
【0098】
好ましい実施形態では、本発明は、該少なくとも1種類の遷移金属(好ましくは、銀及びパラジウム)の濃度の最大値が、外殻領域内に(即ち、触媒の表面から触媒の中心部分に向かって計算して50から200μm、好ましくは、50から150μm、好ましくは、70から130μm、好ましくは、90から110μmの深さの範囲内にある外殻領域の小領域内に)位置している触媒を提供する。かくして、本発明は、好ましい実施形態において、上記で定義されている外殻領域の範囲内に、即ち、銀及びパラジウムの総量の好ましくは少なくとも90%が位置していて且つ幾何学的表面の下方(即ち、触媒の表面から計算して)400μm(好ましくは、250μm)の最大深さによって範囲が定められる触媒の周辺領域の範囲内に、小領域(ここで、その小領域の中に、該銀及びパラジウムの濃度の最大値が存在しており、及び、該小領域は、該触媒の表面から計算して50μmの深さから該触媒の表面から計算して200μmの深さまでの領域内に位置している)が存在していることを想定する。かくして、該銀及びパラジウムの濃度の最大値は、好ましくは、外殻領域の特定の領域内の層に含まれている。
【0099】
本発明の好ましい実施形態では、一酸化炭素の化学吸着は、Pd−Ag−触媒の1g当たり0.10から0.70μmolのCO、好ましくは、Pd−Ag−触媒の1g当たり0.20から0.50μmolのCO、好ましくは、Pd−Ag−触媒の1g当たり0.15から0.40μmolのCO、特に、Pd−Ag−触媒の1g当たり0.25から0.40μmolのCOである。
【0100】
本発明の好ましい実施形態では、BET表面積は、Pd−Ag−触媒の1g当たり5から18m、好ましくは、Pd−Ag−触媒の1g当たり7から15m、特に、Pd−Ag−触媒の1g当たり9から13mである。
【0101】
本発明の好ましい実施形態では、支持体は、C、TiO、Al、ZrO及びSiOからなる群から選択される。触媒支持体として、C、TiO、Al、ZrO及びSiOの変形を使用することも可能である。好ましくは、C、TiO、Al、ZrO及びSiOからなる群から選択される触媒支持体の組合せを使用することが可能である。
【0102】
本発明の好ましい実施形態では、触媒支持体は、Al又はその変形である。
【0103】
本発明の好ましい実施形態では、触媒は、中空円筒、タブレット、球体又は押出物の形態にあり得る。
【0104】
本発明の好ましい実施形態では、触媒は、1.5から8.0mm、好ましくは、3.7から8.0mm、好ましくは、3.2から5.8mm、好ましくは、3.3から5.7mm、好ましくは、3.4から5.5mmの直径を有している。
【0105】
本発明の好ましい実施形態では、触媒の中心部分は、1.0から7.7mm、好ましくは、2.2から7.2mm、好ましくは、3.0から4.4mm、好ましくは、3.7から4.3mm、好ましくは、3.9から4.1mm、特に、4.0mmの直径を有している。
【0106】
本発明の好ましい実施形態では、中心部分の半径と、触媒の幾何学的表面と触媒中心部分の境界の間の距離の比率は、15から2、好ましくは、12から4、好ましくは、10から6、特に、9から7、及び、最も好ましくは、8である。
【0107】
本発明の好ましい実施形態では、(好ましくは、球形の)触媒は、1.5から3.0mmの直径を有し、ここで、該触媒は、250μm、220μm、200μm又は150μmの最大深さを有する外殻領域及び中心部分を含んでおり、ここで、少なくとも2種類の遷移金属(特に、銀及びパラジウム)の総量の好ましくは少なくとも90%(触媒全体の重量に基づいて計算)は、該外殻領域内に分配されている。好ましい触媒の中心部分は、1.0から2.7mmの直径を有しており、及び、中心部分の半径と、触媒の幾何学的表面と触媒中心部分の境界の間の距離の比率は、2から15である。
【0108】
本発明の好ましい実施形態では、触媒は、3.0から8.0mmの直径を有している。好ましい触媒の中心部分は、2.2から7.7mmの直径を有しており、及び、中心部分の半径と、触媒の幾何学的表面と触媒中心部分の境界の間の距離の比率は、2から15である。
【0109】
本発明による触媒は、有意に延長されたサイクル時間を可能とする特に長い触媒寿命で、好ましくは、水素化プロセスにおいて、特に、不飽和炭化水素を含んでいる水素フィードの選択的水素化において、使用することができる。該触媒の特に優れた耐久性に基づいて、水素化プロセスは、好ましくはバッチ式で行う場合、該触媒を再生させなければならなくなる前に、より多く繰り返すことが可能である。有利には、本発明の触媒は、緑油の形成を低減させる。
【0110】
本発明の技術的な問題は、さらにまた、炭化水素フィードを水素化する方法、好ましくは、気相中で炭化水素フィードを水素化する方法、特に、不飽和炭化水素〔特に、望ましくない不飽和炭化水素(即ち、高不飽和炭化水素)からなる第1の群(特に、芳香族化合物、アルキン類及び/又はジ不飽和炭化水素、トリ不飽和炭化水素若しくはポリ不飽和炭化水素、特に、アルカジエン類、アルカトリエン類若しくはアルカポリエン類、例えば、アセチレン、プロピン、プロパジエン、ブタジエン類、ビニルアセチレン、ブチン類、フェニルアセチレン及び/又はスチレン)、及び、望ましい不飽和炭化水素(即ち、低不飽和炭化水素)からなる第2の群(特に、モノ不飽和炭化水素、即ち、アルケン類、特に、エチレン〕を含んでいる炭化水素フィードを選択的に水素化する方法によっても解決され、ここで、該方法においては、不飽和炭化水素の望ましくない第1の群を除去し、特に、それらを水素化し、好ましくは、それらを水素化して望ましい低不飽和炭化水素とし、それによって、不飽和炭化水素の第2の群をそれらのモノ不飽和形態で残しておくために、該炭化水素フィードを適切な水素化条件下で本発明による触媒と接触させる。かくして、本発明は、低不飽和炭化水素の存在下で高不飽和炭化水素を選択的に水素化する方法を提供し、ここで、該方法は、本発明による触媒を使用することを特徴とする。
【0111】
本発明による触媒は、水素化プロセスにおいて、特に、不飽和炭化水素を含んでいる水素フィードの選択的水素化において、有意に延長されたサイクル時間を可能とする特に長い触媒寿命で使用することができる。該触媒の特に優れた耐久性に基づいて、該触媒を再生させなければならなくなる前に水素化プロセスをより多く繰り返すことが可能であり、あるいは連続固定床においては寿命を延ばし及び/若しくは転化率を増大させる。有利には、本発明の触媒は、高級炭化水素の形成を低減させる。
【0112】
かくして、本発明の好ましい実施形態では、該水素化は、気相中で実施する。
【0113】
好ましいさらなる実施形態では、本発明の水素化プロセスは、好ましくはC2からC3炭化水素を水素化するために、フロントエンド水素化プロセス又はテールエンド水素化プロセスの条件に従って実施する。
【0114】
本発明の好ましい実施形態では、炭化水素フィードは、特に低不飽和炭化水素の存在下において、その不飽和炭化水素の第1の群の中にアセチレンを含んでいる。好ましい実施形態では、本発明のプロセスは、特に低不飽和炭化水素(好ましくは、エチレン)の存在下において、好ましくはアセチレンをエチレンに還元することを想定する。
【0115】
好ましい実施形態では、アセチレンをエチレンに選択的に水素化する。
【0116】
本発明の好ましい実施形態では、炭化水素フィードを、10から250℃、好ましくは、30から200℃、好ましくは、50から180℃、及び、特に、60から120℃の温度で、水素化プロセスにおいて触媒と接触させる。
【0117】
本発明の好ましい実施形態では、炭化水素フィードを、0.5から90バール、好ましくは、0.5から60バール、好ましくは、5から20バール、及び、特に、10から20バールの圧力で、水素化プロセスにおいて触媒と接触させる。
【0118】
本発明の好ましい実施形態では、炭化水素フィードを、1000から15000v/vh、3000から12000v/vh、好ましくは、3000から7000v/vh、及び、特に、3000から4000v/vhのGHSV(気体時間当たり空間速度)で、水素化プロセスにおいて触媒と接触させる。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、モデレーターとしての一酸化炭素を使用せずに、炭化水素フィードを水素化プロセスにおいて触媒と接触させる。さらに、該水素化は、一酸化炭素なしで実施することが可能である、即ち、モノカルボキシドフリー(monocarboxide−free)プロセスである。
【0120】
本発明の好ましい実施形態では、水素とアセチレンのモル比は、0.8から1.8、好ましくは、1.0から1.5、及び、特に、1.0から1.3であり、特に、1.2である。
【0121】
本発明の好ましい実施形態では、水素とアセチレンのモル比は、1.8から100、好ましくは、1.8から70、好ましくは、1.8から30、及び、特に、1.8から10である。
【0122】
本発明の好ましい実施形態では、水銀及びヒ素などの毒性金属は、好ましくは保護床を使用して、水素化プロセスの前に除去する。
【0123】
水素化プロセスに関する好ましい実施形態では、該炭化水素フィードを水素と接触させて、水素化生成物を得る。
【0124】
好ましいさらなる実施形態は、従属請求項の対象である。
【0125】
本発明のさらなる有利点については、下記実施例によって例証する。
【実施例】
【0126】
実施例
実施例1(本発明による実施例)
400gのα−酸化アルミニウム支持体(タブレット 4×4mm)にヒドラジン水溶液(ヒドラジンの含有量2%)を含浸させた。該溶液の体積は、該支持体の総細孔容積の35%に等しい。次に、該支持体に硝酸銀と硝酸パラジウムの水溶液を含浸させた。該溶液中の該貴金属の濃度は、その溶液が完全に吸収されたときに該触媒中におけるパラジウムの含有量が0.035重量%であり且つ銀の含有量が0.025重量%となるように選択した。該貴金属を含んでいる溶液の体積は、該支持体の総細孔容積の65%に等しい。その含浸された触媒前駆体を移動床の中で完全に乾燥させ、次に、窒素雰囲気下に630℃の温度で5時間か焼した。
【0127】
実施例2(本発明による実施例)
400gのα−酸化アルミニウム支持体(タブレット 4×4mm)にヒドラジン水溶液(ヒドラジンの含有量1%)を含浸させた。該溶液の体積は、該支持体の総細孔容積の70%に等しい。次に、該支持体に硝酸銀と硝酸パラジウムの水溶液を含浸させた。該溶液中の該貴金属の濃度は、その溶液が完全に吸収されたときに該触媒中におけるパラジウムの含有量が0.035重量%であり且つ銀の含有量が0.022重量%となるように選択した。該貴金属を含んでいる溶液の体積は、該支持体の総細孔容積の30%に等しい。その含浸された触媒前駆体を移動床の中で完全に乾燥させ、350℃の温度で不活性化し、次に、2分間水素でフラッシングし、及び、次に、窒素雰囲気下に630℃の温度で5時間か焼した。
【0128】
実施例3(DE 69514283による実施例)
400gのα−酸化アルミニウム支持体(球体 2から4mm)にクエン酸と硝酸パラジウムと硝酸銀からなる溶液240mLを含浸させた。次に、その含浸された材料を120℃の温度で乾燥させ、及び、空気下に750℃の温度でか焼した。得られた触媒は、0.05重量%のパラジウム及び0.005重量%の銀を含んでいる。該触媒を、触媒作用について測定する前に、120℃の温度で還元した。
【0129】
分析
CO−化学吸着は、0℃の化学吸着温度でAutoChem 2920(会社:Micromeritics)を使用して、インパルス化学吸着法によって測定した。分析するために、該触媒を200℃で活性化した(P. A. Webb, C. Orr, Analytical Methods in Fine Particle Technology, Micromeritics Instrument Corporation, 1997)。
【0130】
金属微結晶の組成は、下記方法によって確認した: 100μmの深さ(表面から計算されたもの)にある触媒の外殻領域を摩耗させ、ミクロトームを用いて単離した。得られた材料をエタノールに添加し、超音波を用いて霧状にした。次に、霧状にされた材料を担体フィルムの上に噴霧した。エネルギー分散微量分析を行うために、走査透過型電子顕微鏡JEM 2000 ex(Jeol, 日本)、EDX spctrometer Genesis(EDAX, 米国)及びデジタル画像処理システムDISS 5(Point Electronic, 独国)を使用した。励起電圧200kVで選択的分析を実施した。測定の間中、電子ビームを微結晶に沿って幾何学的に移動させた。得られたスペクトルの定量分析を行うために、Kα線(例えば、Pd及び/又はAgのKα線)を使用して、少なくとも2の塊の量的関係を求めた。
【0131】
細孔容積、特に、総細孔容積及び部分細孔容積は、Hgポロシメトリーによって測定した(AutoPor IV;会社:Micromeritics;P. A. Webb, C. Orr, Analytical Methods in Fine Particle Technology, Micromeritics Instrument Corporation, 1997)。
【0132】
触媒の触媒特性
触媒の触媒性能は、以下の試験によって特徴付けた。工業用テールエンド反応器(technical tail end reactor)の第1反応器の実験条件に非常に類似した実験条件を選択した:
・ 5層中に15mLの触媒;
・ 85mL希釈(α−Αl);
・ GHSV 4,000v/vh;
・ フィードの組成(Mol−%):
1.0 C
1.0 H
30 C
1.0 C
残余 Ar
・ 圧力: 10バール;
・ 作動モード: 反応器排出口において、アセチレン3,000ppm;
・ 基準: 選択性、及び、製造中の平均反応器温度対時間。
【0133】
アセチレンの転化は、以下のように計算した:
[(アセチレン注入口濃度−アセチレン排出口濃度)/アセチレン注入口濃度]×100。
【0134】
エチレンに対する選択性は、以下のように計算した:
[(エチレン排出口濃度−エチレン注入口濃度)/(アセチレン注入口濃度−アセチレン排出口濃度)]×100。
【0135】
下記表1から、本発明による触媒が優れた耐久性を示すことは明らかである。
【0136】
【表1】
【0137】
触媒の特性
【0138】
【表2】