【文献】
素晴らしき現場力 −安全・訓練編1−,Raisers 2009年2月号,一般社団法人情報通信エンジニアリング協会,2009年,第8−10頁,URL,http://itea.or.jp/works/pdf/genba07_0902-03_anzenkunren.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載された技術はいずれも、実際の家屋の屋根を施工するための技術であり、すなわち、恒久的に屋根を施工するための技術である。
【0007】
屋根勾配を変えたり、瓦の種類を交換したりして瓦の高さや滑り易さを体験するためには、勾配の異なる屋根や瓦の種類が異なる屋根に上る必要があり、手間と時間とを要するものであった。そこで、本願の発明者は、瓦の歩行体験するために、簡易な構成で、屋根勾配を変えたり、瓦の種類を交換したりして歩行を体験するために、屋根勾配が変更自在で、瓦の着脱が容易な可搬式瓦歩行体験装置を考えるにいたった。ここで、可搬式とするのは、場所を選ばず、どこでも瓦歩行体験をできるようにするためである。
【0008】
そこで、この発明は、前記の課題を解決し、簡易な構成で勾配を調節自在で、瓦の着脱が容易な可搬式瓦歩行体験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、屋根勾配による高さや滑りを体験する可搬式瓦歩行体験装置であって、瓦が載置可能で、傾斜角度が調節自在な板材と、前記板材を支持する支持部とを有する架台と、前記板材の上面部に所定間隔で配設され、前記瓦の軒先側の外縁部を支持する桟木と、前記瓦の棟側の下面部を形状に沿って支持する台座とを有する瓦支持手段と、を備えることを特徴とする可搬式瓦歩行体験装置である。
【0010】
この発明によれば、板材の上面部に所定間隔で配設された桟木によって、瓦の軒先側の外縁部が支持され、台座によって瓦の棟側の下面部が形状に沿って支持される。そして、このような瓦支持手段が配設された架台の板材は傾斜角度が調節自在となっている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可搬式瓦歩行体験装置において、前記傾斜角度は、屋根勾配に合わせて設定されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、板材の上面部に所定間隔で配設された桟木によって瓦の軒先側の外縁部が支持され、台座によって瓦の棟側の下面部が形状に沿って支持される。すなわち、傾斜角度が調節自在な板材に配設された瓦支持手段によって瓦が支持されているので、板材の傾斜角度を調節することにより、屋根勾配の異なる瓦の歩行を体験することができるようになる。
【0013】
また、瓦は、板材の上面部に所定間隔で配設された桟木によって瓦の軒先側の外縁部が支持され、台座によって瓦の棟側の下面部が形状に沿って支持されるように配設すればよいので、高度な熟練を要さず、誰でも容易に瓦を設置することができる。
【0014】
さらに、瓦は下面側を桟木や台座によって支持されているだけであるので、着脱が容易であり、設置や撤去に要する手間や時間を削減できる。
【0015】
すなわち、屋根勾配を変えたり、瓦の種類を交換したりして瓦の高さや滑り易さを体験するために、勾配の異なる屋根や瓦の種類が異なる屋根に上る必要がなく、瓦の歩行体験に要する手間と時間とを削減できる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、屋根の勾配に合わせて傾斜を調節自在であるので、屋根の勾配の差による瓦の滑りを体験することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、この発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0019】
図1ないし
図6は、この発明の実施の形態を示している。可搬式瓦歩行体験装置1は、瓦100の上を歩行することによって、高さや滑り易さを、場所を選ばずに体験するものであり、
図1に示すように、主として、架台2と、瓦支持手段としての瓦支持部3とを備えている。
【0020】
架台2は、傾斜角度が調節自在なものであり、
図1、
図2に示すように、主として、板材21と、支持部としての枠部22および脚部23、24を備えている。ここで、この実施の形態においては、
図6に示すように、架台2上に、瓦100
1〜100
8を2列、4段に並べて配設するものとする。
【0021】
板材21は、瓦100
1〜100
8が載置可能で、傾斜角度が調節自在なものであり、横約1000mm、縦約600mmの長方形状の木材で構成されている。板材21は、上面部に瓦100
1〜100
8を載置した状態で、その上を歩行可能な強度を有している。この板材21は、一方の短辺側(下端側)を軸として、蝶番を介して枠部22に対して回動自在(開閉自在)に配設されている。また、板材21の長辺側両側面部には、後述する脚部23、24の係止孔23a、24a(図示略)と係止可能な係止孔(図示略)が形成されている。すなわち、板材21の係止孔と脚部23、24の係止孔23a、24aとの位置を合わせた状態で、それぞれにネジを挿通して締結できるようになっており、枠部22に対して所定の角度で固定されるようになっている。さらに、板材21を、枠部22側に沿うように閉じた状態では省スペースとなり、運搬や収納に適している。
【0022】
枠部22は、板材21の外周と同等の大きさに設定されており、具体的には、長方形状の外枠と、その内側に短手方向に平行に配設された複数の梁とを有する構成となっている。枠部22の一方の短辺側側面部には、板材21の一方の短辺側側面部が蝶番を介して回動自在に配設されている。
【0023】
脚部23は、長さ数100mmの棒状の木材で構成されており、体験者が歩行する板材21を脚部24とともに支持可能な強度を有している。脚部23は、一端側が枠部22の一方の長辺側側面部に回動自在に配設されており、
図3に示すように、自由端側には、所定間隔で係止孔23aが形成されている。この係止孔23aを板材21の係止孔と位置を合わせた状態でネジによって締結し固定することによって、板材21を枠部22に対して所定の角度に傾斜させることができるようになっている。ここでは、係止孔23aとしては、板材21の傾斜角度が屋根勾配と合うように、4寸勾配用係止孔、4.5寸勾配用係止孔、5寸勾配用係止孔、5.5寸勾配用係止孔、6寸勾配用係止孔、6.5寸勾配用係止孔が形成されている。ここで、屋根の勾配は、水平方向(底辺)を10としたときの高さによって示されるものである。例えば、係止孔23aとして4.5寸勾配用係止孔を板材21の係止孔と合わせてネジによって締結した場合は、板材21の傾斜が4.5寸勾配となるように設定されている。すなわち、所望の勾配用係止孔23aによって板材21を固定することによって、板材21の勾配が所望の屋根勾配となるように設定されている。また、脚部23は、枠部22に沿った状態、すなわち、閉じた状態では省スペースとなり、運搬や収納に適している。
【0024】
脚部24は、脚部23と同様に構成されており、脚部23と対向する用に配設されており、具体的には、一端側が枠部22の他方の長辺側側面部に回動自在に配設されており、例えば、板材21の傾斜を4.5寸勾配とする場合は、係止孔23a、24aはいずれも4.5寸勾配用係止孔を板材21の係止孔と合わせてネジによって締結するようになっている。
【0025】
このように脚部23、24は、枠部22の長辺側両側面部に対向するように配設されており、板材21の長辺側両側面部の係止孔と固定可能となっている。
【0026】
つまり、支持部としての枠部22および脚部23、24によって、板材21は傾斜角度が調整自在に支持されている。
【0027】
また、板材21の長辺側側面部には、取手状の把持部25、26が配設されており、この把持部25、26を把持した状態で、架台2の角度を調節したり、可搬式瓦歩行体験装置1を運搬したりできるようになっている。
【0028】
瓦支持部3は、
図1、
図2に示すように、架台2の板材21の上面部に所定間隔で配設され、
図4、
図5に示すように、主として、瓦100の頭側(軒先側)の谷部の外縁部100aを支持する桟木31と、瓦100の棟側の下面部100bを形状に沿って支持する第1の台座32と、第2の台座33と、第3の台座34とを有している。
【0029】
桟木31は、瓦100が軒先側に滑り落ちることを防止するものであり、
図1、
図2に示すように、板材21の短手方向と略同等の長さの木材で構成されており、板材21の短手方向に延びるように所定間隔で配設されている。この桟木31は、釘によって板材21に固定されている。ここで、桟木31の配設間隔は、
図6に示すように、板材21に瓦100
1〜100
8を2列、4段に並べて配設した際に、各段の瓦100の軒先側が位置する間隔に設定されており、例えば、瓦100の長さが305mmの場合は約265mmに設定されている。
図3、
図5に示すように、桟木31の板材21の傾斜の上側、すなわち、棟側に位置する側面部は、板材21上に配設された瓦100の軒先側の谷部の外縁部100aと当接することによって、瓦100が軒先側に滑り落ちることを防止するようになっている。
【0030】
第1の台座32は、
図3ないし
図5に示すように、平面形状が台形の木材で構成されており、各桟木31の軒先側と接するように配設されている。第1の台座32の上面部32aは、板材21と略平行となっており、瓦100
1の桟側の下面部100
1bを下方から支持可能となっている。また、第1の台座32の斜面部32bは、瓦100
1の桟側から谷部にかけて湾曲した下面部100
1cと接触可能な形状となっており、当接することによって下方から支持可能となっている。この第1の台座32は、板材21に釘によって固定されている。
【0031】
第2の台座33は、平面形状が直角三角形の木材を、直角を挟む1辺同士が接するように配設した形状に形成されて、各桟木31の軒先側と接するように配設されており、隣接する瓦100
1、100
2を下方から支持するようになっている。具体的には、第2の台座33は、斜面33aによって瓦100
1の桟側と対向する側(差し込み側)の下面部100
1dを下方から支持し、斜面33bによって瓦100
2の桟側の下面部100
2cを下方から支持可能となっている。すなわち、斜面33aは、瓦100
1の谷部から差し込み側にかけて湾曲した下面部100
1dと接触可能な形状となっており、当接することによって下方から支持可能となっている。また、斜面33bは、瓦100
2の桟側から谷部にかけて湾曲した下面部100
2cと接触可能な形状となっており、当接することによって下方から支持可能となっている。この第2の台座33は、板材21に釘によって固定されている。
【0032】
第3の台座34は、平面形状が直角三角形の木材で構成されており、各桟木31の軒先側と接するように配設されている。第3の台座34の斜面部34aは、瓦100
2の桟側から谷部にかけて湾曲した下面部100
2dと接触可能な形状となっており、当接することによって下方から支持可能となっている。この第3の台座34は、板材21に釘によって固定されている。
【0033】
このような瓦支持部3によって、隣接する瓦100
1、100
2は次のように支持されている。すなわち、具体的には、
図5に示すように、瓦100
1の軒先側は板材21上に載置されており、瓦100
1の軒先側の谷部の外縁部100
1aが桟木31の棟側の側面部と当接することによって支持され、板材21上を滑り落ちることが防止されている。また、瓦100
1の桟側の下面部100
1bは、第1の台座32の上面部32aと当接することによって下方から支持され、瓦100
1の桟側から谷部へ湾曲した下面部100
1cは、第1の台座32の斜面部32bと当接することによって下方から支持され、瓦100
1の谷部から差し込み側へ湾曲した下面部100
1dは、第2の台座33の斜面部33aと当接することによって下方から支持されている。また、瓦100
2の軒先側は板材21上に載置されており、瓦100
2の軒先側の谷部の外縁部100
2aが桟木31の棟側の側面部と当接することによって支持され、板材21上を滑り落ちることが防止されている。また、瓦100
2の桟側の下面部100
2bは、瓦100
1の差し込み側の上面部と当接することによって下方から支持され、瓦100
2の桟側から谷部へ湾曲した下面部100
2cは、第2の台座33の斜面部33bと当接することによって下方から支持され、瓦100
2の谷部から差し込み側へ湾曲した下面部100
2dは、第3の台座34の斜面部34aと当接することによって下方から支持されている。
【0034】
つづいて、可搬式瓦歩行体験装置1の設置方法および可搬式瓦歩行体験装置1を用いた瓦100の歩行体験方法について説明する。
【0035】
まず、折り畳んだ状態の可搬式瓦歩行体験装置1と、瓦100が体験場所に運搬される。このとき、可搬式瓦歩行体験装置1は、把持部25、26を把持することによって容易に運搬される。
【0036】
体験場所に到着すると、可搬式瓦歩行体験装置1が地面に置かれ、脚部23、24が立ちあげられる。そして、例えば、4寸勾配用係止孔23a、24aと板材21の係止孔が位置合わせされて、係止具によって係止される。このとき、把持部25、26を把持することによって板材21は容易に回動されて角度が調節される。これにより、板材21の勾配が4.5寸に設定される。
【0037】
そして、板材21に瓦100
1〜100
8が載置される。具体的には、
図6において、最下段(1段目)左側の瓦100
1が、軒先側の谷部の外縁部100
1aが板材21の1段目の桟木31と当接するように配設される。このとき、瓦100
1の棟側の下面部100
1b、100
1c、100
1dが台座32、33と当接するように載置される。
【0038】
そして、瓦100
1の差し込み側の上に、右側の瓦100
2の軒先側が重なり、軒先側の谷部の外縁部100
2aが板材21の1段目の桟木31と当接し、瓦100
2の棟側の下面部100
2b、100
2c、100
2dが台座33、34と当接するように載置される。
【0039】
そして、2段目左側の瓦100
3が、軒先側の谷部の外縁部100
3aが2段目の桟木31と当接し、瓦100
1の棟側と一部が重なり、瓦100
3の棟側の下面部100
3b、100
3c、100
3dが2段目の台座32、33と当接するように載置される。
【0040】
そして、2段目右側の瓦100
4が、瓦100
2の差し込み側の上に瓦100
4の軒先側が重なり、瓦100
3の差し込み側の上に瓦100
4の桟側が重なり、軒先側の谷部の外縁部100
4aが2段目の桟木31と当接し、瓦100
4の棟側の下面部100
4b、100
4c、100
4dが台座33、34と当接するように載置される。
【0041】
同様に、瓦100
5〜100
8が架台2上に配設される。
【0042】
そして、4.5寸勾配に設定された架台2上に配設された瓦100
1〜100
8上を体験者が歩いて高さや滑り易さが体験される。
【0043】
つぎに、架台2上に瓦100
1〜100
8が載置されたまま、4.5寸勾配用係止孔23a、24aと板材21の係止孔を固定していた係止具が取り外され、5.5寸勾配用係止孔23a、24aと板材21の係止孔が位置合わせされて、係止具によって係止される。これにより、板材21の勾配が5.5寸に変更される。
【0044】
そして、5.5寸勾配に設定された架台2上に配設された瓦100
1〜100
8上を体験者が歩いて高さや滑り易さが体験される。
【0045】
つぎに、架台2上に瓦100
1〜100
8が載置されたまま、5.5寸勾配用係止孔23a、24aと板材21の係止孔を固定していた係止具が取り外され、4.5寸勾配用係止孔23a、24aと板材21の係止孔が位置合わせされて、係止具によって係止される。これにより、板材21の勾配が4.5寸に戻される。さらに、瓦100
1〜100
8上に水が撒かれて、その上を体験者が歩いて滑り易さが体験される。
【0046】
また、瓦の種類を交換する場合は、架台2上に載せている瓦100
1〜100
8が取り外されて、他の種類の瓦100が同様に架台2上に配設されて、その瓦100の上を体験者が歩いて滑り易さが体験される。このとき、瓦100は種類が異なっても同程度の大きさであれば同様に容易に配設される。
【0047】
このようにして、可搬式瓦歩行体験装置1によって、架台2上に瓦100を載置した状態で架台2の勾配が変更されたり、瓦100の種類が変更されたりして体験者が歩くことによってその差異が体験される。
【0048】
以上のように、この可搬式瓦歩行体験装置1によれば、板材21の上面部に所定間隔で配設された桟木31によって、瓦100の軒先側の谷部の外縁部100aが支持され、台座32、33、34によって瓦100の棟側の下面部100bが形状に沿って下方から支持される。このため、可搬式瓦歩行体験装置1は、瓦100を瓦支持部3上に並べて置くだけで容易に配設することができる。すなわち、瓦100を架台2上に配設するために、特殊な工具や技術を必要としないため、誰でも簡単に可搬式瓦歩行体験装置1を使用して瓦の歩行を体験することができる。
【0049】
また、瓦100は瓦支持部3によって下面側から支持されているだけであるので、着脱が容易であり、設置や撤去に要する手間と時間とを削減できる。このため、瓦の種類を交換して瓦上を歩行して、種類による滑り易さの違いを体験することも容易である。
【0050】
さらに、このような瓦支持部3が配設された架台2は、係止孔23a、24aによって傾斜角度が屋根勾配に合わせて、例えば、4寸勾配、4.5寸勾配、5寸勾配、5.5寸勾配、6寸勾配、6.5寸勾配と調節自在となっている。すなわち、瓦支持部3によって瓦100を支持した架台2の傾斜角度を変えることによって、屋根勾配の異なる瓦100上を歩行して、屋根勾配の違いによる滑り易さの違いを体験することも容易である。
【0051】
このように、屋根勾配を変えたり、瓦の種類を交換したりして瓦の高さや滑り易さを体験するために、勾配の異なる屋根や瓦の種類が異なる屋根に上る必要がなく、瓦の歩行体験に要する手間と時間とを削減できる。
【0052】
さらにまた、この可搬式瓦歩行体験装置1によれば、場所を選ばず、どこでも瓦歩行体験が可能である。
【0053】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、瓦支持部3は、瓦100の軒先側の谷部の外縁部100aを支持する桟木31と、瓦100の棟側の下面部100bを形状に沿って支持する第1の台座32と、第2の台座33と、第3の台座34とを有しているものとして説明したが、この構成に限定されないことはもちろんである。具体的には、瓦支持部3は、瓦100の軒先側の谷部の外縁部100aが軒先側に滑り落ちないように支持し、瓦100の棟側の下面部100bを形状に沿って下方から支持する機能を有するものであればよい。