特許第5661857号(P5661857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5661857-支線用アンカー 図000002
  • 特許5661857-支線用アンカー 図000003
  • 特許5661857-支線用アンカー 図000004
  • 特許5661857-支線用アンカー 図000005
  • 特許5661857-支線用アンカー 図000006
  • 特許5661857-支線用アンカー 図000007
  • 特許5661857-支線用アンカー 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661857
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】支線用アンカー
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/80 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   E02D5/80 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-102413(P2013-102413)
(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-222004(P2014-222004A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2013年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】頼田 浩志
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−248732(JP,A)
【文献】 特開2006−342669(JP,A)
【文献】 特開平02−153111(JP,A)
【文献】 特開2007−146468(JP,A)
【文献】 特開平11−303072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22〜5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に立設される柱状物と地面との間に傾斜して架設される支線の端部に接続されるとともに、地中に埋め込まれる支線用アンカーにおいて、
上部に支線が接続されるとともに、前記上部が地面から露出するように地中に埋め込まれる、上下方向に延びる固定部材と、
固定部材の側面から外方に延出される一対の側板であって、上下方向に延びる一対の側板と、
該一対の側板の下端部を閉塞する底板とを備えることを特徴とする支線用アンカー。
【請求項2】
前記固定部材の上部に、前記支線が接続される雄ねじが上下方向に螺合されることを特徴とする請求項1に記載の支線用アンカー。
【請求項3】
前記一対の側板は交差するように延出されることを特徴とする請求項1または2に記載の支線用アンカー。
【請求項4】
前記底板は、外方に向かうにしたがって下降傾斜することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の支線用アンカー。
【請求項5】
前記固定部材は、角柱状で、下端部が先細りに形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の支線用アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に立設される柱状物、例えば、電線が架設された電柱を支線によって補強支持する際に用いられる支線用アンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
地面に立設される柱状物、例えば、上部に複数の電線が架設される電柱Pは、図6に示すように、電柱Pと地面Gとの間に斜めに架設される支線Cによって補強支持されているのが一般的である。そして、支線Cは、一端部が電柱Pの上部に所定の固定具(図示せず)によって固定され、他端部が電柱Pの設置箇所から所定の間隔をおいた箇所に埋め込まれる。この支線Cの他端部には、支線用アンカー(図示せず)が取り付けられている。この支線アンカーによって、支線Cの他端部は、地面Gに対して強固に固定される。
【0003】
従来のこの種の支線用アンカー50としては、例えば、図7(a)に示すように、先端側に電柱の支線が連結される円筒形状の案内板51と、案内板51の基端側から湾曲して延出する長尺状の抵抗板52と、案内板51の基端側から延出する長尺状の2つの安定板53とを備えている(特許文献1参照)。
【0004】
かかる支線用アンカー50によれば、案内板51の基端側に連結された抵抗板52の先端を地面Gに突き当てて、この抵抗板52の凹んだ面が電柱P側に向くように、抵抗板52を直立させる。この状態で、抵抗板52の基端側にロットハンマーを当てて、抵抗板52を地中に打ち込む。そうすることで、湾曲している抵抗板52が地中に打ち込まれる。この際、この抵抗板52の凹んだ面が支線Cに対して略鉛直となる。
【0005】
つぎに、一方の安定板53に案内板51を挿通して、一方の安定板53の基端側にロットハンマーを当接して、一方の安定板53を地中に打ち込む。そうすることで、図7(b)に示すように、一方の安定板53が土地の一直線状の境界線Aに沿うように位置する。
【0006】
つぎに、他方の安定板53に案内板51を挿通して、他方の安定板53の基端側にロットハンマーを当接して、他方の安定板53を地中に打ち込む。そうすることで、他方の安定板53が土地の境界線Aに沿うように位置する。すなわち、一対の安定板53,53が同一直線上に位置する。そして、案内板51の先端部に電柱Pの支線Cを接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−248732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記公報の支線用アンカー50の場合、支線用アンカー50は境界線Aの直近に打ち込むことはできても、支線Cは境界線Aに接近した状態で地中に引き込まれている。具体的には、境界線Aから離れた図7(b)に示す符号Xの位置に引き込まれている。したがって、支線を施設する土地の所有者にとっては、土地の有効利用ができないという問題がある。
【0009】
また、地中に引き込まれた支線Cの端部に接続される支線用アンカー50の接続部位は、外部からは視認できないため、支線用アンカー50を施設する土地に隣接する土地の所有者は、支線Cの端部の先にある支線用アンカー50が境界線Aを越えているのではないのか、という疑義が生じる。
【0010】
ここで、支線Cと支線用アンカー50との接続部位を境界線A直近に位置させるべく、支線Cが接続される支線用アンカー50の接続部位を地面から露出程度に打ち込むことが考えられるが、そうした場合、支線用アンカー50が十分な土圧を受けることができず、支線Cを十分に地面に固定できない。したがって、上述した土地の所有者とのトラブルを回避できないという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、支線用アンカーを施設する土地を有効利用できるとともに、支線用アンカーを施設する土地に隣接する土地の所有者が、支線の端部の先にある支線用アンカーが境界線を越えているか否かを外部から視認することができる支線用アンカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る支線用アンカーは、地面に立設される柱状物と地面との間に傾斜して架設される支線の端部に接続されるとともに、地中に埋め込まれる支線用アンカーにおいて、上部に支線が接続されるとともに、地面から前記上部が露出するように地中に埋め込まれる、上下方向に延びる固定部材と、固定部材の側面から外方に延出される一対の側板であって、上下方向に延びる一対の側板と、該一対の側板の下端部を閉塞する底板とを備えることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、上下方向に延びる固定部材を、該固定部材の上部が露出するように地中に埋め込むようにしたので、固定部材が地中に対して直立した状態で埋め込まれるようになる。したがって、土地の境界線の直近に支線を接続することができるので、支線用アンカーが施設される土地を有効利用することができる。
【0014】
また、支線と支線用アンカーとの接続部が外部から視認できるので、支線用アンカーが施設される土地に隣接する土地の所有者とのトラブルを回避することができる。
【0015】
また、上下方向に延びる固定部材と、該固定部材の側面から外方に延出される一対の側板であって、上下方向に延びる一対の側板と、該一対の側板の下端部間を閉塞する底板とで形成される空間に土圧を受けることになるので、地面に対して支線を十分に固定できるようになる。
【0016】
また、本発明に係る支線用アンカーの一態様として、前記固定部材の上部に、前記支線が接続される雄ねじが上下方向に螺合されるような構成を採用することもできる。
【0017】
この場合、固定部材から雄ねじを分離できるので、固定部材を地中に残しておくことができる。
【0018】
また、本発明に係る支線用アンカーの他態様として、前記一対の側板は交差するように延出されることもある。
【0019】
この場合、一対の側板が、土地の境界線の角部の線上に沿うようになるので、境界線の角部の直近で、支線用アンカーを埋め込むことができる。
【0020】
また、本発明に係る支線用アンカーの他態様として、前記底板は、外方に向かうにしたがって下降傾斜するような構成を採用することもできる。
【0021】
この場合、底板が、外方に向かうにしたがって下降傾斜するので、より大きな土圧を受けることができ、支線用アンカーをより強固に地中に固定することができる。
【0022】
また、本発明に係る支線用アンカーの他態様として、前記固定部材は、角柱状で、下端部が先細りに形成されるような構成を採用することもできる。
【0023】
この場合、固定部材を地中に埋め込む際に軸心がぶれにくく、固定部材を直立した状態で埋め込むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、支線用アンカーを施設する土地を有効利用できるとともに、支線用アンカーを施設する土地に隣接する土地の所有者が、支線の端部の先にある支線用アンカーが境界線を越えているか否かを外部から視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る支線用アンカーを示す斜視図。
図2】同実施形態に係る支線用アンカーの側面図。
図3】同実施形態に係る支線用アンカーの平面図。
図4】同実施形態に係る支線用アンカーの使用態様を説明する斜視図。
図5】同実施形態に係る支線用アンカーの使用態様を説明する平面図。
図6】電柱が支線によって補強支持されている状態を示す図。
図7】(a)は、従来の支線用アンカーを示す斜視図、(b)は、支線用アンカーの使用態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態に係る支線用アンカーについて図1図5を参照しながら説明する。本実施形態に係る支線用アンカー1は、図1に示すように、固定部材2と、一対の側板3,3と、底板4とを備えている。
【0027】
固定部材2は、図1に示すように、上下方向に延びる角柱部材により構成されている。そして、固定部材2の上端部2aの端面中央部に、軸心に沿ってねじ孔20が形成されている。このねじ孔20に雄ねじ21が上下方向に螺合される。また、固定部材2の下端部2bは、地中に埋め込む際に、その中心がぶれないように、先細りに形成されている。
【0028】
雄ねじ21は、その上端部に、支線Cの端部が接続される接続用リング210が設けられている。そして、固定部材2は、図4に示すように、上部(雄ねじ21)が地面から露出するように地中に埋め込まれ、雄ねじ21の接続用リング210が地面から突出することになる。
【0029】
一対の側板3,3は、互いが交差(直交)するように、固定部材2の隣接する一対の側面2c、2cから外方に延出される。具体的には、固定部材2の隣接する一対の側面2cから、角部Bを形成する一対の境界線A,Aに平行するように延出される。また、一対の側板3,3は、側面視略平行四辺形に形成されており、平行する上下一対の辺が外側に向かうにしたがって下降傾斜している。また、上側の辺に対して、下側の辺がやや大きくなっている。
【0030】
底板4は、平面視扇形状を呈している。また、底板4は、一対の側板3,3の下端部3b,3bを閉塞するように配置されるとともに、外方に向かうにしたがって下降傾斜している。また、底板4は、一対の側板3,3の先端部3c,3cを繋ぐべく、その先端部が円弧状になっている。そして、底板4の先端部4cの円弧状部の中央部と、一対の側板3,3間に位置する固定部材2の角部2dとを結ぶ線上に沿ってリブ40が形成されている。このリブ40によって、土圧を受ける底板4の強度を確保することができる。
【0031】
したがって、支線用アンカー1は、上面および前面が開放された有底筒状を呈しており、一対の側板3,3および底板4によって、十分な土圧を受ける容積を確保している。すなわち、支線Cを地面Gに十分に固定できるようになる。
【0032】
なお、支線用アンカー1の材質としては、鋼材、コンクリート、硝子繊維強化プラスチック(以下、FRPという)のうちいずれかである。例えば、支線用アンカー1として、重量が優先される場合は、鋼材またはコンクリートであり、作業性が優先される場合は、FRPを選択する。また、支線用アンカー1の大きさとしては、アースオーガーで掘削した掘削孔Hに収まる程度の大きさとする。
【0033】
つぎに本実施形態に係る支線用アンカー1の使用態様について説明する。まず、図4に示すように、電柱Pが設置されている箇所から所定の間隔をおいた箇所、すなわち、土地の境界線A,Aの角部Bに、アースオーガーで掘削孔Hを形成する。一方、支線用アンカー1は、固定部材2のねじ孔20に雄ねじ21を予め螺合させた状態にしておく。
【0034】
つぎに、固定部材2の先細りした下端部2bを下向きにするとともに、一対の側板3,3が、角部Bを形成する一対の境界線A,A上に沿うようにして、前記掘削孔H内に、固定部材2を直立した状態で配置する。
【0035】
そして、固定部材2の上部に螺合した雄ねじ21の接続用リング210が地面Gから突出する程度の位置で、支線用アンカー1に土を被せて、掘削孔H内に支線用アンカー1を埋めこむ。
【0036】
そして、地面Gから突出した接続用リング210に支線Cの端部を接続する。この際、図5に示すように、支線Cは、電柱Pの中心と、支線アンカー1の固定部材2の中心とを結ぶ線上に沿うように接続される。したがって、支線アンカー1の一対の側板3,3に対して、支線Cの張力が均等にかかるようになり、バランスよく支持されることになる。また、底板4が一対の側板3,3の下端部を閉塞するように配置されているので、一対の側板3,3と底板4との大きな容積を形成しており、その分、十分な土圧を受けることができる。すなわち、地面Gに対して支線Cを十分に固定できるようになる。また、支線用アンカー1の一対の側板3,3が境界線A,Aに沿うようにして埋めこまれることで、境界線A,Aにより形成される角部Bの直近に支線用アンカー1を埋め込むことができる。
【0037】
これによって、支線Cを施設する土地の所有者は、土地を有効活用することができる。また、支線Cを施設する土地に隣接する土地の所有者は、支線Cおよび支線用アンカー1が境界線A,Aの直近に埋めこまれることが外部から視認することができる。
【0038】
なお、雄ねじ210を取り外した後の固定部材2のねじ孔20の開口部は、キャップ(図示せず)を装着するようにして、固定部材2、一対の側板3,3、底板4は地中に据え付けたままとする。
【0039】
以上、本発明に係る支線用アンカーによれば、支線用アンカー1を施設する土地を有効利用することができる。また、支線用アンカー1を施設する土地に隣接する土地の所有者が、支線Cの端部の先にある支線用アンカー1が境界線A,Aを越えて埋め込まれているか否かを外部から視認することができる。したがって、土地所有者とのトラブルが回避される。
【0040】
また、本発明に係る支線用アンカーは、前記実施形態に限定することなく種々変更することができる。
【0041】
例えば、前記実施形態の場合、一対の側板3,3が交差(直交)するように、固定部材2の側面2cから延出したが、互いの側板3,3が一直線上に並ぶように、固定部材2の側面2cから延出してもよい。
【0042】
また、前記実施形態の場合、底板4について、外側に向かうにしたがって下降傾斜するようにしたが、水平であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…支線用アンカー、2…固定部材、2a…上端部、2b…下端部、2c…側面、2d…角部、3…側板、3b…側板の下端部、3c…側板の先端部、4…底板、4c…底板の先端部、20…ねじ孔、21…雄ねじ、40…リブ、210…接続用リング、A…境界線、B…角部、C…支線、G…地面、H…掘削孔、P…電柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7