特許第5661878号(P5661878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5661878-アモルファス変圧器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661878
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】アモルファス変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20150108BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   H01F27/24 C
   H01F27/26 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-163979(P2013-163979)
(22)【出願日】2013年8月7日
(62)【分割の表示】特願2010-289858(P2010-289858)の分割
【原出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-243401(P2013-243401A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2013年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 諒介
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 博之
(72)【発明者】
【氏名】中ノ上 賢治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊明
(72)【発明者】
【氏名】本間 徹
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−129464(JP,A)
【文献】 特開2005−286169(JP,A)
【文献】 特開平7−106156(JP,A)
【文献】 特開2001−60522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
H01F 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス材により形成され、ラップ部を上部に配置し、鉄心支持部材により支持された状態でほぼ垂直に自立したアモルファス鉄心と、該アモルファス鉄心に挿入するコイルとを有するアモルファス変圧器において、
前記鉄心支持部材は、前記アモルファス鉄心の側面を支持する側面支持部と該鉄心のコーナ部を支持するコーナ部支持部とから構成されており、
前記コーナ部支持部は、前記鉄心のコーナ部のそれぞれに対して所定の間隔で複数配置されたL型形状の部分と、前記鉄心のコーナ部の曲線に倣った形状の部分とから構成され
前記アモルファス鉄心と前記側面支持部とが前記コイルに挿入されたことを特徴とするアモルファス変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファス変圧器を提供する技術に関し、特にアモルファス鉄心を自立させて組み立てるときの支持部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、変圧器において、非結晶磁性合金、アモルファス材を用いたものが開発されている。変圧器鉄心にアモルファス材を採用すると、アモルファス破片が飛散するため防止する必要がある。その防止するための容器が特許文献1(特開2001−196234)に開示されている。この破片飛散防止の容器は、金属製の2個の矩形筒状形状をしており、これに逆U字形状のアモルファス鉄心を挿入し、上下には四角の箱状の蓋を設けてアモルファス破片の飛散を防止するものである。
【0003】
また、特許文献2(特願平9−129464号公報)には、アモルファス鉄心の組立時において、アモルファス薄帯から破片が生じ難くする工夫が開示され、図25には載置枠体のコーナ部に三相巻鉄心のコーナ部支持が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−196234
【特許文献2】特開平9−129464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1または特許文献2には、鉄心を自立させて組み立てるときの支持部材については開示されていない。また、図7にアモルファス鉄心を自立させて組立てる課題を示し、以下説明する。ラップ部が開放されたアモルファス鉄心710を鉄心支持部材の箱体710に挿入して組立てる場合、アモルファス鉄心の長辺から短辺に移るコーナ部が自重により図7(a)から図7(b)のように変化する。すなわち、鉄心のコーナ部712は、自重により垂れ下がり、鉄心の設計時の形状を保持できなくなる。このように、鉄心のコーナ部が形状を保持できなくなると、コイル挿入後のラップ接合ができなくなるという恐れがある。また、鉄心が大きくなると、鉄心自重が増大すると共に、コイル寸法及び重量を増加するため鉄心にコイルを挿入する作業が困難になると予想され、自立させる工夫が必要になる。
【0006】
従って、本発明の目的は、アモルファス鉄心を良好に自立させ、自立させたときの鉄心のコーナ部の垂れ下がりを改善し、鉄心とコイルの組立をスムーズに行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、アモルファス材により形成され、ラップ部を上部に配置し、鉄心支持部材により支持された状態でほぼ垂直に自立したアモルファス鉄心と、該アモルファス鉄心に挿入するコイルとを有するアモルファス変圧器において、前記鉄心支持部材は、前記アモルファス鉄心の側面を支持する側面支持部と該鉄心のコーナ部を支持するコーナ部支持部とから構成されており、前記コーナ部支持部は、前記鉄心のコーナ部のそれぞれに対して所定の間隔で複数配置されたL型形状の部分と、前記鉄心のコーナ部の曲線に倣った形状の部分とから構成され、前記アモルファス鉄心と前記側面支持部とが前記コイルに挿入されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アモルファス材の鉄心を自立させることが可能となり、鉄心自立状態でアモルファス鉄心やコイルへかかる負荷を最小限としながら、コイルの挿入がスムーズにできる。また、鉄心コーナ部の自重によって垂れることが従来よりも改善され、ラップ部の接合が従来よりも容易にでき、接合も良好となる。
これらにより、例えば、変圧器を輸送時に振動などが加わっても、ラップ部の接合が弱くなることも従来より改善される。また、輸送等の振動などによって、鉄心のコーナ部の形状変化も低減されるので、変圧器の特性も良好に維持されることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のアモルファス変圧器の鉄心支持部材と、鉄心及びコイルの組立方法を示す図である。
図2】本発明の鉄心支持部材の変形例と、鉄心を2列並べたときの鉄心及びコイルの組立方法を示す図である。
図3】本発明の別のコーナ部支持部材を用いたときの鉄心組立の斜視図を示す。
図4】本発明の別の鉄心支持部材を採用したときの鉄心の構成図を示す。
図5】本発明の鉄心コーナ部を支持するコーナ部支持部材の変形例を示す図である。
図6】本発明の鉄心及びコイルの組立作業を示すフロー図を示す。
図7】従来の鉄心の組立による課題を説明するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるアモルファス変圧器の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明のアモルファス変圧器の1実施例であって、アモルファス鉄心へのコイル組立の作業を示す斜視図で、三相五脚アモルファス鉄心変圧器を用いた場合について説明する。
【0012】
図1(a)は、アモルファス鉄心を支持する鉄心支持部材100と、アモルファス鉄心のコーナ部の垂れを防止するコーナ部支持部材101を示している。鉄心支持部材100は、巻鉄心のアモルファス鉄心の側面をラップ部を上部にして、沿うようにほぼ垂直に設置している。そしてその高さは、ほぼアモルファス鉄心のラップ部を開いた状態の高さとする。しかし、この高さに限ることはない。さらに、鉄心を受ける支持板103は、鉄心を沿うように立て掛け、ラップ部が開いた状態で巻回されたコイル120を鉄心に挿入するため空間部104を有している。コイル120は、鉄心110と支持板103とを挿入してラップ部を接合する。アモルファス鉄心のコーナ部支持部材101は、巻鉄心のアモルファス鉄心のコーナ部が自重で垂れ下がるのを防止するため、そのコーナ部の半径Rに基づいて制作した支持部材101を鉄心のコーナ部に対応した箇所に設けている。鉄心支持部材100とコーナ部支持部材101は、支持板を溶接等により固定して一体化し、鉄心の重量で破壊されないように構成している。
【0013】
図1(b)は、鉄心支持部材100とコーナ部支持部材101にアモルファス鉄心を載置した図を示している。コーナ部支持部材101の長さは、アモルファス鉄心の幅とほぼ同じにしている。また、コーナ部支持部材101は、すべての鉄心のコーナ部に設置している。鉄心支持部材100は、両端がL字形形状で内側はT字形形状として、各々の支持板の空間に鉄心を設置している。設置方法は、上方より鉄心を吊り下げて設置する。
【0014】
図1(c)は、鉄心支持部材100とコーナ部支持部材101にアモルファス鉄心を設置し、コイル120を挿入する場合を示している。図1(c)において、コイル120が、2個隣り合う鉄心の上方のラップ部111より鉄心支持部材100と共に挿入して設置され、左側のコイル120が上方より鉄心に挿入され設置される状態を示している。コイル120の鉄心110への設置は、コイル120を吊り下げて位置合わせを行い、挿入して設置する。
【0015】
図1(d)は、鉄心110にコイル120を挿入して設置後、アモルファス鉄心のラップ部111を接合した状態を示している。そして、鉄心のコーナ部の下側は、コーナ部支持部材101が設けられ、鉄心のコーナ部の自重による垂れ下がりを防止している。図1(d)のラップ部を接合した状態で、鉄心とコイルの組立は完了となる。
【0016】
このように、実施例1によると、アモルファス鉄心110を自立させることができ、アモルファス鉄心110の自重によってコーナ部の垂れ下がりが従来より大きく改善される。従って、ラップ部111の接合が従来よりも容易となり、良好な接合ができる。さらに経時変化に対しても、コーナ部支持部材により鉄心のコーナ部の垂れ下がりは減少するため、特性を維持することができる。
【0017】
また、本発明の構成は、アモルファス鉄心110が鉄心支持部材100で支持され、自立した状態のためコイル挿入をスムーズに行うことができ、作業効率が大幅にアップする。
【0018】
(実施例2)
図2は、鉄心2列の三相5脚アモルファス鉄心変圧器の鉄心組立と、鉄心支持部材200及びコーナ部支持部材201を示す図である。
【0019】
図2(a)は、鉄心を2列配置するときの鉄心支持部材200とコーナ部支持部材201の斜視図である。鉄心支持部材200の内側は十字形形状で、両端側はT字形形状の構造である。アモルファス鉄心は、十字形形状の突出した支持板で形成された空間、及びT字形形状の側板と十字形形状の突出した支持板で形成された空間に設置する。また、コーナ部支持部材201は、アモルファス鉄心が設置され、鉄心のコーナ部212に対応する箇所に設ける。その構造は図1の場合と同じである。
【0020】
図2(b)は、2列の三相五脚アモルファス変圧器の鉄心及びコイルを支持部材200に設置した場合の斜視図を示している。図2(b)において、アモルファス鉄心とコイルの組立について説明する。鉄心支持部材200に対し、アモルファス鉄心210は、上記の十字形形状の突出した支持板に、ラップ部211を開放した状態で、支持材に2列並べる。その後、コイル220を内側の隣り合う鉄心に挿入する。このとき、内側の十字形形状の支持板と2列の鉄心もまとめて、1個のコイル220に挿入する。従って、図1に示した変圧器の鉄心の幅より図2に示した変圧器の鉄心の幅が拡大している。このように、鉄心幅を大きくすることで大容量の変圧器を提供できる。
【0021】
鉄心2列の場合も、鉄心1列と同じようにラップ部211を開放した状態で、支持部材に鉄心を並べて設置し、コーナ部支持部材と鉄心支持部材とにより鉄心を自立させることができ、コイル220の挿入がスムーズにいき、作業性が大幅に向上する。
【0022】
(実施例3)
図3は、鉄心を2列鉄心支持部材200に並べ、コイル220を挿入して、鉄心のラップ部211を接合して組立てた斜視図を示している。
【0023】
図3において、図2の構成と異なる点はコーナ部支持部材301である。図3のコーナ部支持部材301は、鉄心のコーナ部を受ける支持部が連続でなく、ある幅を有した支持部材301で、この支持部材をほぼ一定間隔で複数配置したものである。コーナ部支持部材301の受け部の形状は、鉄心のコーナ部の形状と同じとする。
【0024】
(実施例4)
本実施例を図4に示すが、鉄心支持部材400とコーナ部支持部材401を一体に形成していない場合の鉄心支持部材である。
【0025】
図4において、図4(a)は鉄心支持部材400を箱型の形状としたときの斜視図である。図4(b)は、箱型の鉄心支持部材400にアモルファス鉄心を挿入し、コーナ部に鉄心コーナ用支持部材を挿入し、上下反転した図を示す。
【0026】
図4(a)において、鉄心支持部材400について説明する。鉄心支持部材400は、細長い箱型形状、すなわち直方体の形状を有しており、面積の最も小さい一方の側を開放し、アモルファス鉄心を挿入できる構成にする。また、他方の側のコーナ部は、鉄心のコーナ部が支持されるように空間(隙間)を持たせ、外部から物が入るように窓403を設ける。また、この箱型形状の鉄心支持部材には、コイルを挿入するための細長い切り込みを設けて、箱型をU字形形状とする。
【0027】
図4(b)において、箱型形状の鉄心支持部材400の開放された側よりアモルファス鉄心を挿入し、ラップ部411を接合して上下反転する。この状態が図4(b)の左側の図である。この図4(b)の左側の図において、鉄心支持部材400のコーナ部の空間(隙間)の窓に金属製の細い棒材を挿入し、変圧器のコーナ部の円弧形状に倣うように充填する。充填が完了したら、アモルファス鉄心が挿入された鉄心支持部材400を再度上下反転させる。この状態が図4(b)の図である。
【0028】
この箱型の鉄心支持部材を一列に並べて、すなわち図1のような構成にして三相五脚アモルファス鉄心を構成する。また、容量の大きい変圧器の場合は、図4(b)の構成を二列に並べて、すなわち図2のような構成にして、鉄心の幅を拡大して対応する。
【0029】
図5は、コーナ部鉄心支持部材の変形例を示す。図5(a)は、図1(a)と同じものを表している。鉄心のコーナ部の半径Rに倣った形状で、ムクで連続した構造の支持部材201で、鉄心のコーナ部を支持している。この構造の支持部材は金属で構成すると支持する機能は大きいが、ムクのため重量があり、全体的に重くなる傾向にある。
【0030】
図5(b)は、コーナ部支持部材を、半径Rの支持板501とその板材を支えるL型の支持板502とを組み合わせたものである。半径Rの支持板501とL型の支持板502を溶接して一体化すると、強度は増大する。そして、半径Rの板材501とL型の板材502の間は中空のため、支持部材として軽量化を図ることができる。
【0031】
図5(c)は、図5(b)のL型の支持板50を連続とせずに、所定の寸法に切断し複数配置されたL型の支持板512で、半径Rの支持板511を支持し、鉄心のコーナ部を支持するものである。この構成は(b)よりさらに軽量化を図れる。
【0032】
図5(d)は、図4の構成の部分拡大図である。上記のとおり、コーナ部支持部材は、金属製の細い棒材を空間(間隙)に挿入し、変圧器のコーナ部の円弧形状に倣うように充填して構成する。この構成は、棒材がより細ければ細いほど円弧形状に倣う。
【0033】
また、図6に本発明のアモルファス変圧器の組立方法についてのフローチャートを示し、この図により工程を説明する。図6のアモルファス変圧器の組立方法において、先ず、フープ状に巻かれたアモルファス材を引き出し、所定の長さに切断する工程601と、所定の長さに切断したアモルファス材を位置決めして積層する積層工程602を有する。
【0034】
また、この積層工程602の後、鉄心をU字形状に矩形成形するが、矩形成形の工程は図示していない。鉄心を矩形成形した後、焼鈍を行う焼鈍工程603を有する。焼鈍は、鉄心を矩形成形等で変形させるため鉄心に歪が生じ、その歪を取り除き、特性を向上させるための工程である。
【0035】
鉄心の焼鈍後、鉄心を支持部材に配置する(工程604)。鉄心を鉄心支持部材に配置した後、コイルを鉄心と鉄心支持部材との挿入するコイル挿入工程605と、コイル挿入後、鉄心のラップを接合するラップ接合工程606を有する。このラップの接合工程によって鉄心とコイルの組立が完了する。
【0036】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置換ることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0037】
例えば鉄心支持部材はすべてを一体型とすることや分割型にすることも可能であり、支持部材の寸法や鉄心との当り面の枚数を追加・削除をすることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
100、200、400‥鉄心支持部材 101‥コーナ部支持部材
110、210‥アモルファス鉄心 111、114‥ラップ部
120、220‥コイル 212、412、712‥鉄心コーナ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7