(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661881
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】少なくとも1個の差動ラインを駆動する回路装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H03F 3/26 20060101AFI20150108BHJP
H03F 3/45 20060101ALI20150108BHJP
H03K 19/0175 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
H03F3/26
H03F3/45 Z
H03K19/00 101F
H03K19/00 101Q
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-190279(P2013-190279)
(22)【出願日】2013年9月13日
(62)【分割の表示】特願2010-515529(P2010-515529)の分割
【原出願日】2008年7月14日
(65)【公開番号】特開2014-27670(P2014-27670A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2013年10月11日
(31)【優先権主張番号】102007032876.3
(32)【優先日】2007年7月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509348867
【氏名又は名称】シリコン・ライン・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】グレープル,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルトケ,ホルガー
【審査官】
柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特表平09−502588(JP,A)
【文献】
特開平10−145217(JP,A)
【文献】
特開平06−029824(JP,A)
【文献】
実開昭60−001020(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/26
H03F 3/45
H03K 19/0175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ伝送を目的として、
− 少なくとも1個の第1の出力接続(Out+)及び
− 少なくとも1個の第2の出力接続(Out−)
に接続可能であり、少なくとも1個の電圧源(SQ)によって供給可能な、少なくとも1個の差動ラインを駆動する回路装置(S''')であって、
当該回路装置(S''')は、互いに左右対称に配置され、前記電圧源(SQ)を少なくとも1個の基準電位(GND)に接続する、少なくとも2個の経路(P1、P2)を備え、
― 当該第1の経路(P1)は、
―― 少なくとも1個の第1の入力接続(In1+)に割り当てられたゲート接続を有する、少なくとも1個の第1のトランジスタ(T1)と、
―― 少なくとも1個の第2の入力接続(In2−)に割り当てられたゲート接続を有する、少なくとも1個の第2のトランジスタ(T2)とを備え、
前記第1の出力接続(Out+)は、前記第1のトランジスタ(T1)と前記第2のトランジスタ(T2)との間で接続されており、
― 当該第2の経路(P2)は、
―― 少なくとも1個の第3の入力接続(In3−)に割り当てられたゲート接続を有する、少なくとも1個の第3のトランジスタ(T3)と、
―― 少なくとも1個の第4の入力接続(In4+)に割り当てられたゲート接続を有する、少なくとも1個の第4のトランジスタ(T4)とを備え、
前記第2の出力接続(Out−)は、前記第3のトランジスタ(T3)と前記第4のトランジスタ(T4)との間で接続されている、回路装置であって、
― 前記第1の経路(P1)は、
―― 前記電圧源(SQ)と前記第1のトランジスタ(T1)との間に接続された、少なくとも1個の第1のドレイン低下抵抗(R1)、及び
―― 前記第1のトランジスタ(T1)と前記第1の出力接続(Out+)との間に接続された、少なくとも1個の第1の分離抵抗(R3)、及び前記第2のトランジスタ(T2)と前記第1の出力接続(Out+)との間に接続された、少なくとも1個の第2の分離抵抗(R4)の一方又は双方を備え、
前記第2の経路(P2)は、
―― 前記電圧源(SQ)と前記第3のトランジスタ(T3)との間に接続された、少なくとも1個の第2のドレイン低下抵抗(R9)、及び、
―― 前記第3のトランジスタ(T3)と前記第2の出力接続(Out−)との間に接続された、少なくとも1個の第3の分離抵抗(R11)、及び前記第4のトランジスタ(T4)と前記第2の出力接続(Out−)との間に接続された、少なくとも1個の第4の分離抵抗(R12)の一方又は双方を備え、
前記第1のドレイン低下抵抗(R1)、前記第1の分離抵抗(R3)及び前記第2の分離抵抗(R4)は無視できず、そして
前記第2のドレイン低下抵抗(R9)、前記第3の分離抵抗(R11)及び前記第4の分離抵抗(R12)は無視できない
ことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
前記第1のドレイン低下抵抗(R1)は、少なくとも1個の第3のノード(C)と前記第1のトランジスタ(T1)のドレイン接続との間に接続され、
前記第2のドレイン低下抵抗(R9)は、前記第3のノード(C)と前記第3のトランジスタ(T3)のドレイン接続との間に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
前記第1の分離抵抗(R3)及び前記第2の分離抵抗(R4)は、前記第1のトランジスタ(T1)のソース接続と前記第2のトランジスタ(T2)のドレイン接続との間に接続され、
前記第3の分離抵抗(R11)及び前記第4の分離抵抗(R12)は、前記第3のトランジスタ(T3)のソース接続と前記第4のトランジスタ(T4)のドレイン接続との間に接続されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の回路装置。
【請求項4】
前記第1の分離抵抗(R3)は、前記第1のトランジスタ(T1)のソース接続と少なくとも1個の第1のノード(A)との間に接続され、
前記第2の分離抵抗(R4)は、前記第1のノード(A)と前記第2のトランジスタ(T2)のドレイン接続との間に接続され、
前記第3の分離抵抗(R11)は、前記第3のトランジスタ(T3)のソース接続と少なくとも1個の第2のノード(B)との間に接続され、
前記第4の分離抵抗(R12)は、前記第2のノード(B)と前記第4のトランジスタ(T4)のドレイン接続との間に接続されている
ことを特徴とする請求項3に記載の回路装置。
【請求項5】
前記第1のトランジスタ(T1)、前記第2のトランジスタ(T2)及び前記第1の出力接続(Out+)の間に接続される、少なくとも1個の第1の出力直列抵抗(R7)、及び
前記第3のトランジスタ(T3)、前記第4のトランジスタ(T4)及び前記第2の出力接続(Out−)の間に接続される、少なくとも1個の第2の出力直列抵抗(R8)
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の回路装置。
【請求項6】
前記第1の出力直列抵抗(R7)は、前記第1のトランジスタ(T1)のソース接続、前記第2のトランジスタ(T2)のドレイン接続、及び前記第1の出力接続(Out+)の間に接続され、そして
前記第2の出力直列抵抗(R8)は、前記第3のトランジスタ(T3)のソース接続、前記第4のトランジスタ(T4)のドレイン接続、及び前記第2の出力接続(Out−)の間に接続される
ことを特徴とする請求項5に記載の回路装置。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の少なくとも1個の回路装置(S''')により少なくとも1個の差動ラインを駆動する方法であって、
− 正のフルシグナル作動の範囲において、
―― 前記第1のトランジスタ(T1)及び前記第4のトランジスタ(T4)は線形領域に位置して伝導し、そして
―― 前記第2のトランジスタ(T2)及び前記第3のトランジスタ(T3)はオフ状態であり、
― 負のフルシグナル作動の範囲において、
―― 前記第1のトランジスタ(T1)及び前記第4のトランジスタ(T4)はオフ状態であり、
―― 前記第2のトランジスタ(T2)及び前記第3のトランジスタ(T3)は線形領域に位置して伝導し、そして
― 正のフルシグナル作動と負のフルシグナル作動との間の遷移範囲において、
―― 前記第1の入力接続(In1+)における入力電圧が低下することにより、前記第1のトランジスタ(T1)の作動点は、線形領域における作動から飽和領域における作動へと変化し、
―― 前記第2の入力接続(In2−)における入力電圧が前記遷移範囲の略中心点まで増加したとき、前記第2のトランジスタ(T2)は、依然として飽和領域にあり、
―― 前記第3の入力接続(In3−)における入力電圧が前記遷移範囲の略中心点まで増加したとき、前記第3のトランジスタ(T3)は、依然として飽和領域にあり、そして
―― 前記第4の入力接続(In4+)における入力電圧が低下することにより、前記第4のトランジスタ(T4)の作動点は、線形領域における作動から飽和領域における作動へと変化する
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の少なくとも1個の回路装置(S''')により少なくとも1個の差動ラインを駆動する方法であって、
− 正のフルシグナル作動の範囲において、
―― 前記第1のトランジスタ(T1)及び前記第4のトランジスタ(T4)は線形領域に位置して伝導し、そして
―― 前記第2のトランジスタ(T2)及び前記第3のトランジスタ(T3)はオフ状態であり、
― 負のフルシグナル作動の範囲において、
―― 前記第1のトランジスタ(T1)及び前記第4のトランジスタ(T4)はオフ状態であり、
―― 前記第2のトランジスタ(T2)及び前記第3のトランジスタ(T3)は線形領域に位置して伝導し、そして
― 正のフルシグナル作動と負のフルシグナル作動との間の遷移範囲において、
―― 前記第1の入力接続(In1+)における入力電圧が低下することにより、前記第1のトランジスタ(T1)の作動点は、線形領域における作動から飽和領域における作動へと変化し、
―― 前記第2の入力接続(In2−)における入力電圧が前記遷移範囲の略中心点まで増加したとき、前記第2のトランジスタ(T2)は、依然として飽和領域にあり、
―― 前記第3の入力接続(In3−)における入力電圧が前記遷移範囲の略中心点まで増加したとき、前記第3のトランジスタ(T3)は、依然として飽和領域にあり、そして
―― 前記第4の入力接続(In4+)における入力電圧が低下することにより、前記第4のトランジスタ(T4)の作動点は、線形領域における作動から飽和領域における作動へと変化する
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
遷移領域における前記第1の出力直列抵抗(R7)を低減することによって、前記第1の出力インピーダンス(ZOut1)を低減させ、そして
遷移領域における前記第2の出力直列抵抗(R8)を低減することによって、前記第2の出力インピーダンス(ZOut2)を低減させる
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
正のフルシグナル作動の場合、制御電圧はそれぞれ、
前記第1の入力接続(In1+)について約1.2ボルト、
前記第2の入力接続(In2−)について約0ボルト、
前記第3の入力接続(In3−)について約0ボルト、
前記第4の入力接続(In4+)について約1.2ボルト、
負のフルシグナル作動の場合、制御電圧はそれぞれ、
前記第1の入力接続(In1+)について約0ボルト、
前記第2の入力接続(In2−)について約1.2ボルト、
前記第3の入力接続(In3−)について約1.2ボルト、
前記第4の入力接続(In4+)について約0ボルト
であることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
− 前記第1の入力接続(In1+)における入力電圧が低下することにより、前記第1のトランジスタ(T1)の前記作動点が線形領域における作動から飽和領域における作動へと変化するとき、前記第1のドレイン低下抵抗(R1)は、前記第1の出力インピーダンス(ZOut1)に対してほぼ効力がなく、そして
− 前記第3の入力接続(In3−)における入力電圧が増加することにより、前記第3のトランジスタ(T3)の前記作動点がオフ状態から飽和領域における作動へと変化するとき、前記第2のドレイン低下抵抗(R9)は、前記第2の出力インピーダンス(ZOut2)に対して効力のない状態から前記第2の出力インピーダンス(ZOut2)に対してわずかに寄与する状態へと移行する過程にある
ことを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
遷移領域における前記第1の分離抵抗(R3)及び前記第2の分離抵抗(R4)を増加させることによって、前記第1の経路(P1)を流れる横方向電流を低減させ、そして
遷移領域における前記第3の分離抵抗(R11)及び前記第4の分離抵抗(R12)を増加させることによって、前記第2の経路(P2)を流れる横方向電流を低減させる
ことを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
− 前記第1の入力接続(In1+)及び前記第4の入力接続(In4+)は、位相シフトの方法で制御され、一方のトランジスタ(T1又はT4)の制御信号の上昇又は下降勾配は、他方のトランジスタ(T4又はT1)の制御信号の上昇又は下降勾配より急勾配であり、そして
− 前記第2の入力接続(In2−)及び前記第3の入力接続(In3−)は、位相シフトの方法で制御され、一方のトランジスタ(T2又はT3)の制御信号の上昇又は下降勾配は、他方のトランジスタ(T2又はT3)の制御信号の上昇又は下降勾配より急勾配である
ことを特徴とする請求項7から12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個のデータソース、例えば少なくとも1個の第1の集積回路から、少なくとも1個のデータシンク、例えば少なくとも1個の第2の集積回路への、データ伝送、特にデジタルデータ伝送を目的として、特定のラインインピーダンスを有するラインを駆動する技術分野に関する。
【0002】
本発明はより具体的には、回路装置、特に請求項1の前文部分によるドライバ出力段に関し、また請求項4の前文部分による少なくとも1個の差動ラインを駆動する方法に関する。
【0003】
本発明の範囲において、「無視できる」の語は、回路装置、特にドライバ出力段が、出力側に有する出力インピーダンスの約1パーセントであるものとして理解される。「無視できない」の語は、回路装置、特にドライバ出力段が、出力側に有する出力インピーダンスの約10パーセントを超えるものであるものとして理解される。
【背景技術】
【0004】
低データ速度での伝送時に、ドライバとラインとのインピーダンス整合は、一般に行われず、あるいは必要でないことが多い。この場合、単純なインバータ回路が用いられることが多い(
図2Aに一例を示す従来技術による第1の回路装置を参照)。
【0005】
図2Aによる従来の回路装置は、1個の出力ノードを備える(=シングルエンド方式)。電圧源SQに割り当てられたトランジスタ(
図2A中、上側)は、Pチャネルトランジスタを含み、基準電位(=例えばグラウンド電位、ゼロ電位又は接地)に割り当てられたトランジスタ(
図2A中、下側)は、Nチャネルトランジスタを含む。
【0006】
少ないエラーで高速データ伝送を行うために、出力段のインピーダンス又はラインドライバの出力インピーダンスZ
Outは一般に、ライン入力インピーダンスZ
Lに対して整合が図られる(Z
Out=Z
L=例えば50オームとする整合)。そのようなインピーダンス整合の結果、伝送信号の品質に悪影響を及ぼしうる信号反射が吸収される。
【0007】
また、干渉を最小化する目的で、高速データ伝送は差動信号として行われることが多い。例として、LVDS(=低電圧差動信号)、SLVS(=スケーラブル低電圧信号)、差動ECL(=エミッタ結合論理)、差動LVPECL(=低電圧正エミッタ結合論理)またはそれらに類するものが挙げられる。
【0008】
これら差動回路では、出力ノードは1個(=いわゆるシングルエンド配置)のみではなく、差動出力段である。
【0009】
これは、2個の出力信号に差が生じることで、基準電位、例えばグラウンド電位、ゼロ電位又は接地に関する干渉が互いに補償され、効力を有さないことを意味する(
図2B、2C、2Dに一例を示す従来技術による差動回路装置を参照)。
【0010】
図2Bにおいて、電圧源SQ(理想的な、無視できるインピーダンスを有するもの)は、約1.2ボルトを提供する。例えばそれぞれ50オーム(それぞれ基準電位、例えばグラウンド電位、ゼロ電位又は接地に対する)の2個の負荷抵抗は、Out+とOut−との間が計約100オームとなるように、出力インピーダンスとして機能する。入力信号におけるIn−が、In+における入力信号に対して180度の位相シフトを有する。
【0011】
第1のNチャネルトランジスタT1におけるゲート電圧V
G1[T1のゲート接続が第1の入力接続In+に割り当てられる]が、電源電圧V
S1とトランジスタしきい値電圧V
thN[T1のソース接続は定電流源KQ(理想的な、無視できるインピーダンスを有するもの)であり第2のNチャネルトランジスタT2のソース接続に割り当てられる]との合計より小さい場合、NチャネルトランジスタT1は高い抵抗を有し、オフ状態である。この第1のNチャネルトランジスタT1におけるゲート電圧V
G1が、電源電圧V
S1とトランジスタしきい値電圧V
thNとの合計より大きい場合、この第1のNチャネルトランジスタT1が導通する。
【0012】
図2Bにおける差動回路装置は、ハードスイッチングを可能にする切換スイッチを備えており、それぞれの場合、2個の負荷抵抗ノードのうち1個が下方(低電位側)へ引っ張られる。しかし、
図2Bによる差動回路装置には、電流効率が約25パーセントに過ぎないため、すなわち供給電圧源SQから取り出された電流の約25パーセントしか駆動対象のデータラインを流れないため、特に電力効率が非常に低いという不利な点がある。データラインに対して所望の電流振幅を実現するには、供給電圧から4倍の量の電流を取り出す必要がある。
【0013】
図2Cにおいて、電圧源SQ(理想的な、無視できるインピーダンスを有するもの)は約2.5ボルトを提供する。2個のトランジスタT2、T4はNチャネルトランジスタを含む一方、2個のトランジスタT1、T3はそれぞれ、ゲート電圧V
G3[T1のゲート接続は第1の入力接続In+に割り当てられ、T3のゲート接続は第2の入力接続In−に割り当てられる]が、電源電圧V
S3とトランジスタしきい値電圧V
thP[T1又はT3のソース接続は電圧源SQに割り当てられる]との合計より大きいときにオフ状態となる、高い抵抗を有するPチャネルトランジスタである。T1又はT3におけるゲート電圧が、電源電圧V
S3とトランジスタしきい値電圧V
thPとの合計より小さい場合、PチャネルトランジスタT1又はT3は、抵抗が無視できることから、導通する。
【0014】
しかし
図2Aのインバータ回路に関連する
図2Cによる差動回路装置には原則的に、特に約50パーセントの低い電力効率を有するに過ぎず、すなわち電圧源から取り出される供給電流は、利用可能な出力電流の約2倍の高さであるという不利な点がある。
【0015】
図2Dにおいて、それぞれ50オームの2個の負荷抵抗は、例えば終端(ターミネート)機能を有する(実際には、トランジスタはそれぞれ約3オームの低い残留抵抗を有しているので、2個の負荷抵抗はそれぞれ約47オームに過ぎず、
図2Dによる差動回路装置は終端の精度の点で不適当である)。
【0016】
実際に、
図2Dによる差動回路装置は非常に高い電力効率(ほぼ100パーセントの電流効率)を有する。しかし
図2Dによる差動回路装置には、スイッチング時にインピーダンスの不整合が起こるという特に不利な点がある。
【0017】
このような状況において、差動信号を伝送する一般に高いデータ速度における干渉を最小化するために、スイッチング時間の占める割合を全時間の約20パーセント、最大約30パーセントとすることが考えられる[理論上仮定される理想的な0及び1パルスは現実には存在せず、すなわち上昇勾配又は下降勾配が、ゼロ状態(オフ状態)と1状態(オン状態)との間で観察されるはずである]。
【0018】
つまりこれは、高データ速度における上昇時間と下降時間が、確かに関与していることを意味する(電磁環境適合性(EMC)の意味においては、完全に望ましくないというわけではない。理想では、すなわち非常に急な勾配[無視できる時間差]の場合、[フーリエ変換後の]非常に高い数の干渉周波数が現れうる)。
【0019】
PチャネルトランジスタT1とNチャネルトランジスタT2とに存在するゲート電圧が(同時に)、例えば1.2ボルトから0ボルトへ降下した場合、PチャネルトランジスタT1は、低下する電圧の略中相に至るまで、すなわち例えば約0.6ボルトまで応答しないが、NチャネルトランジスタT2は既に停止し始める。すなわち、NチャネルトランジスタT2は、低下する電圧の中相において、すなわち例えば0.6ボルトにおいて、実質的に増加するインピーダンスを有している。その結果、スイッチング勾配中に出力インピーダンスが顕著に増加し、反射減衰と信号品質とにおける劣化が起こる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上で概要を説明した不利な点や不適当な点を発端として、また概要を説明した従来技術を認めた上で、本発明の目的は、冒頭で特定したこの種の回路装置と、冒頭で特定したこの種の方法を、スイッチング時に増加する出力インピーダンスを回避し、これにより高い信号品質を確保するようにさらに開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、
− 請求項1に特定される特徴を有する回路装置によって、特に、制御された出力インピーダンスを有する電力効率の良いラインドライバによって、
− 請求項4に特定される特徴を有する方法によって、特に、低反射でエラーのないデジタル伝送を目的とする、少なくとも1個の差動ラインを駆動する方法によって、実現される。
本発明の有利な実施形態及び目的に適った更なる発展は、従属請求項それぞれに特徴付けられている。
【0022】
本発明の方法により作動する本発明の回路装置は、特に少なくとも1個のガラス繊維、少なくとも1個の合成繊維又は空気等の少なくとも1個のキャリア媒体の末端又は終端に位置する、少なくとも1個の感光部品、例えば少なくとも1個のフォトダイオードの、下流に接続することができる。
【0023】
本発明は、
− 少なくとも1個の通信システム、特に移動式の通信システム、例えば少なくとも1個の携帯電話等の少なくとも1個の通信装置において、
− 少なくとも1個のデータ通信システム、特に移動式のデータ通信システム、あるいは少なくとも1個のデータ処理装置、特に移動式のデータ処理装置、例えば少なくとも1個のハンドヘルドパソコン、少なくとも1個のノートパソコン又は少なくとも1個の携帯情報端末(PDA)において、
− 少なくとも1個のデータ記録及び/又は再生装置、特に移動式のデータ記録及び/又は再生装置、例えば少なくとも1個のビデオカメラ、少なくとも1個のデジタルカメラ又は少なくとも1個の高精細度テレビ(HDTV)において、あるいは
− 少なくとも1個の輸送手段、例えば自動車の少なくとも1個の運転者支援システム又は少なくとも1個のナビゲーションシステムにおいて、
有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
上で説明したように、本発明の教示を、利点が得られるように様々に構成し発展させることが可能である。このため、とりわけ
図1A、1B、1C及び1Dによって例示される4個の代表的実施形態を参照して、さらなる実施形態、本発明の特徴と利点を以下詳細に説明する。
【0025】
【
図1A】本発明の方法により作動する本発明による回路装置の第1の代表的実施形態を示す模式図である。
【
図1B】本発明の方法により作動する本発明による回路装置の第2の代表的実施形態を示す模式図である。
【
図1C】本発明の方法により作動する本発明による回路装置の第3の代表的実施形態を示す模式図である。
【
図1D】本発明の方法により作動する本発明による回路装置の第4の代表的実施形態を示す模式図である。
【
図2A】従来技術の第1の方法により作動する従来技術の回路装置の第1の例を示す模式図である。
【
図2B】従来技術の第2の方法により作動する従来技術の回路装置の第2の例を示す模式図である。
【
図2C】従来技術の第3の方法により作動する従来技術の回路装置の第3の例を示す模式図である。
【
図2D】従来技術の第4の方法により作動する従来技術の回路装置の第4の例を示す模式図である。
【0026】
図1A〜2Dにおいて、同一又は類似の実施形態、素子又は特徴には、同一の参照符号を付した。
【発明を実施するための形態】
【0027】
不要な繰り返しを避けるために、本発明の実施形態、特徴及び利点についての以下の説明は(特に記載しない限りは)下記に関するものである。
−
図1Aに示す本発明による回路装置Sの第1の代表的実施形態、
−
図1Bに示す本発明による回路装置S’の第2の代表的実施形態、
−
図1Cに示す本発明による回路装置S”の第3の代表的実施形態、及び
−
図1Dに示す本発明による回路装置S’’’の第4の代表的実施形態。
【0028】
(ドライバ出力)回路装置S(
図1A参照)、S’(
図1B参照)、S”(
図1C参照)、S'''(
図1D参照)の動作モードを説明する前に、まずこれら回路S、S’、S”、S'''の設計及び構造を詳述する。
【0029】
ドライバ出力回路S、S’、S”、S'''には、基準電位GND(=例えば接地電位、集合電位(マスポテンシャル)又はゼロ電位)と第3の節点C(=第3の分岐C)との間に接続される電圧源SQによって電圧又は電流が供給されており、デジタルデータ伝送を目的として、
− 第1の出力接続Out+及び
− 第2の出力接続Out−
に接続することのできる差動ラインを駆動することを企図している。
【0030】
回路装置S、S’、S”、S'''は、節点Cから出発して、互いに左右対象に配置され
かつ電圧源SQを基準電位GNDに接続する、2個の経路P1、P2を有する。
【0031】
この場合、第1の経路P1は、
− 第1の制御電圧が作用する第1の入力接続In
1+に割り当てられたゲート接続を有する、NチャネルMOSFET(MOSFET=金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)の形態の第1のトランジスタT1と、
− 第2の制御電圧が作用する第2の入力接続In
2−に割り当てられたゲート接続を有する、別のNチャネルMOSFETの形態の第2のトランジスタT2と
を備え、
第1の出力接続Out+は、第1のトランジスタT1と第2のトランジスタT2との間で第1のノードA(=第1の分岐A)を介して接続されている。
【0032】
それとは左右対称に、第2の経路P2は、
− 第3の制御電圧が作用する第3の入力接続In
3−に割り当てられたゲート接続を有する、別のNチャネルMOSFETの形態の第3のトランジスタT3と、
− 第4の制御電圧が作用する第4の入力接続In
4+に割り当てられたゲート接続を有する、別のNチャネルMOSFETの形態の第4のトランジスタT4と
を備え、
第2の出力接続Out−は、第3のトランジスタT3と第4のトランジスタT4との間で第2のノードB(=第2の分岐B)を介して接続されている。
【0033】
図1Aに例示される本発明の第1の代表的実施形態において、第1のドレイン低下抵抗R1は、例えば約20オームであり、節点Cと第1のトランジスタT1のドレイン接続との間に接続され、第1の経路P1に配置される。
【0034】
それとは左右対称に、
図1Aに例示される本発明の第1の代表的実施形態において、第2のドレイン低下抵抗R9は、例えば、約20オームであり、節点Cと第3のトランジスタT3のドレイン接続との間に接続され、第2の経路P2に配置される。
【0035】
それぞれのゲート接続において、対応する高い電圧によって、第1のトランジスタT1又は第3のトランジスタT3が非常に低い抵抗の完全な伝導作動状態(=飽和領域外での作動)に変換されるときにのみ、これら2個のドレイン低下抵抗R1又はR9は、出力接続Out+又はOut−それぞれについてのインピーダンスとして効力がある。これにより、全出力インピーダンスZ
Out1又はZ
Out2それぞれにおいて、起こりうる低下が回避される。
【0036】
図1Bに例示される本発明の第2の代表的実施形態において、
− 第1のトランジスタT1のソース接続と第1の出力接続Out+との間に接続される第1の分離抵抗R3及び
− 第2のトランジスタT2のドレイン接続と第1の出力接続Out+との間に接続される第2の分離抵抗R4が、第1の経路P1に配置されている。
【0037】
分離抵抗R3、R4は、第1のトランジスタT1と第2のトランジスタT2とを分離することができ、所望の第1の出力インピーダンスZ
Out1を維持しつつ、第1のノードAと(第1の出力インピーダンスZ
Out2を有する)第1の出力接続Out+との間に接続される第1の出力直列抵抗R7の値を低下させることができる。特に2個の分離抵抗R3、R4は、
− スイッチング時に流れる横方向電流(いわゆるシュートスルー電流)を低減し、
− スイッチング時に、第1の出力インピーダンスZ
Out1を低下させる
機能を有する。
【0038】
それとは左右対称に、
− 第3のトランジスタT3のソース接続と第2の出力接続Out−との間に接続される第3の分離抵抗R11及び
− 第4のトランジスタT4のドレイン接続と第2の出力接続Out−との間に接続される第4の分離抵抗R12
が、第2の経路P2に配置されている。
【0039】
分離抵抗R11、R12は、第3のトランジスタT3と第4のトランジスタT4とを分離することができ、所望の第2の出力インピーダンスZ
Out2を維持しつつ、第2のノードBと(第2の出力インピーダンスZ
Out2を有する)第2の出力接続Out−との間に接続される第2の出力直列抵抗R8の値を低下させることができる。特に2個の分離抵抗R11、R12は、
− スイッチング時に流れる横方向電流(いわゆるシュートスルー電流)を低減し、
− スイッチング時に、第2の出力インピーダンスZ
Out2を低下させる
機能を有する。
【0040】
図1Aに例示される本発明の第1の代表的実施形態では、分離抵抗R3、R4又はR11、R12はある適度の無視ができ、これは出力インピーダンスZ
Out1又はZ
Out2それぞれの約1パーセント未満の抵抗又はインピーダンスとして、本発明の範囲に含まれると理解されるべきであり、一方
図1Bに例示される本発明の第2の代表的実施形態において、ドレイン低下抵抗R1又はR9はある程度の無視ができる。
【0041】
図1Cに例示される本発明の第3の代表的実施形態において、ドレイン低下抵抗R1又はR9、あるいは分離抵抗R3、R4又はR11、R12は無視できない。ドレイン低下抵抗R1、R9の両方、4個の分離抵抗R3、R4、R11、R12はいずれも無視できず、出力インピーダンスZ
Out1又はZ
Out2それぞれの約10パーセント超の抵抗又はインピーダンスとして、本発明の範囲に含まれると理解されるべきである。
【0042】
図1A、1B又は1Cの構成図それぞれから更に分かるように、差動回路装置S、S’又はS”の第1の経路P1は、第2のトランジスタT2のソース接続と基準電位GNDとの間に接続されるソース低下抵抗R6を備えている。
【0043】
それとは左右対称に、
図1A、1B又は1Cの構成図それぞれから更に分かるように、差動回路装置S、S’又はS”の第2の経路P2は、第4のトランジスタT4のソース接続と基準電位GNDとの間に接続される第2のソース低下抵抗R14を備えている。
【0044】
しかし、
図1Dを参照に例示される本発明による回路装置の第4の代表的実施形態として示される差動回路装置S'''のサイズが、第1の経路P1における2個のNチャネルMOSFETT1、T2を介して、又は第2の経路P2における2個のNチャネルMOSFETT3、T4を介して得られる場合、第1のソース低下抵抗R6又は第2のソース低下抵抗R14は、ゼロになりうる、すなわち消滅しうる。
【0045】
図1A、1B又は1Cの構成図それぞれから更に分かるように、
図1A、1B又は1Cにおける差動回路装置S、S’又はS”の左側部分は、第1のトランジスタT1のソース接続、第2のトランジスタT2のドレイン接続、及び第1の出力接続Out+の間に接続され、第1のノードAに割り当てられた、第1の出力直列抵抗R7を備えている。
【0046】
図1A、1B又は1Cの構成図それぞれから更に分かるように、それとは左右対称に、
図1A、1B又は1Cにおける差動回路装置S、S’又はS”の左側部分は、第3のトランジスタT3のソース接続、第4のトランジスタT4のドレイン接続、及び第2の出力接続Out−の間に接続され、第2のノードBに割り当てられた、第2の出力直列抵抗R8を備えている。
【0047】
しかし、第1の経路P1における分離抵抗R3、R4それぞれ、又は第2の経路P2における分離抵抗R11、R12それぞれが、所望の全出力インピーダンスZ
Out1又はZ
Out2を達成するのに十分に高いものが選択された場合、この第1の出力直列抵抗R7又は第2の出力直列抵抗R8は、ゼロになりうる、すなわち消滅しうる。
【0048】
(ドライバ出力)回路S(
図1A参照)、S’(
図1B参照)、S”(
図1C参照)、S'''(
図1D参照)は、以下のように機能する。
【0049】
正のフルシグナル作動の場合、すなわち制御電圧それぞれがIn
1+=1.2ボルト、In
2−=0ボルト、In
3−=0ボルト、In
4+=1.2ボルトである間、
− 第1のNチャネルトランジスタT1及び(電圧差が最小である結果、幾分小さな)第4のNチャネルトランジスタT4は、伝導して線形領域に位置し、すなわちドレイン電源電圧は、ドレイン電源電圧からしきい値電圧V
thを引いたものとして与えられる飽和電圧より低く、そして
− 第2のNチャネルトランジスタT2及び第3のNチャネルトランジスタT3は、オフ状態である。
【0050】
ラインドライバS(
図1A参照)、S’(
図1B参照)、S”(
図1C参照)の出力インピーダンスZ
Out1、Z
Out2は、
Z
Out1=R1+R2+R3+R7=Z
L1及び
Z
Out2=R8+R12+R13+R14=Z
L2
(ここでZ
L1+Z
L2=Z
Lであり、例えばZ
L1=50オーム、Z
L2=50オームである)として得られる。
【0051】
負のフルシグナル作動の場合、すなわち制御電圧が逆極性を有し、例えばIn
1+=0ボルト、In
2−=1.2ボルト、In
3−=1.2ボルト、In
4+=0ボルトである間、
− 第1のNチャネルトランジスタT1及び第4のNチャネルトランジスタT4は、オフ状態であり、そして
− 第2のNチャネルトランジスタT2及び第3のNチャネルトランジスタT3は、伝導して線形領域に位置し、すなわちドレイン電源電圧は、ドレイン電源電圧からしきい値電圧V
thを引いたものとして与えられる飽和電圧より低い。
【0052】
ラインドライバS(
図1A参照)、S’(
図1B参照)、S”(
図1C参照)の出力インピーダンスZ
Out1、Z
Out2は、
Z
Out1=R7+R4+R5+R6=Z
L1及び
Z
Out2=R9+R10+R11+R8=Z
L2として得られる。
【0053】
この場合、原理上は、抵抗R1〜R14の取りうる複数の値が、整合条件:Z
Out1=Z
Out2=Z
L1/2を満たす。
【0054】
ラインドライバS(
図1A参照)、S’(
図1B参照)、S”(
図1C参照)のスイッチング時の出力インピーダンスZ
Out1、Z
Out2を考慮すると、例としてスイッチング勾配の中心点の範囲で、すなわち例えば初期値約1.2ボルトから約0.6ボルトへ低下する制御電圧において(出力インピーダンスは、任意の作動点全てにおいて特定することができる)、この場合は以下の状態が得られる(ノードCにおける電圧は例えば約0.4ボルトが仮定される)。
【0055】
スイッチング勾配の始めにおいて、第1のNチャネルトランジスタT1はその線形領域に位置し(すなわち、伝導状態の低抵抗スイッチとしてある程度作動を始め)、すなわちドレイン電源電圧は飽和電圧より低くなっている。その結果、第1のNチャネルトランジスタT1の同等のドレイン−ソース抵抗R2は、例えば約3オーム等、非常に低くなる。
【0056】
第1の入力接続In
1+における電圧の低下によって、第1のトランジスタT1の作動点は、ドレイン低下抵抗R1が第1の出力インピーダンスZ
Out1に約100パーセント寄与する線形領域における作動から、飽和領域におけるソースフォロワとしての作動へと変化する。
【0057】
第1のNチャネルトランジスタT1がソースフォロワとして作動しているので、この変化によって、第1の出力インピーダンスZ
Out1に対する第1のドレイン低下抵抗R1の効力は、ほぼなくなる(例えば第1のドレイン低下抵抗R1の約10パーセントのみが第1の出力インピーダンスZ
Out1に寄与する)(――>Z
Out1に対する効力=R1g
DS/g
m+R2
S+R3+R7、ここでg
DSはドレイン−ソース導電性でありg
mは相互コンダクタンスである(スルーレートとしても知られる相互コンダクタンスg
mは、出力電流対入力電圧の比を与える特性である)。例えばg
DS/g
mは約0.1であり、R2
Sはg
m−1にほぼ等しく、約50オームであり、約3オームのR2より大きい)。
【0058】
同時に、標準の電源回路において作動する第2のNチャネルトランジスタT2は、伝導を開始するが、遷移の典型的中心点付近に位置しており、すなわち例えば約0.6ボルトの制御電圧において、依然として飽和領域にある。第2のNチャネルトランジスタT2が飽和領域にある限り、その出力インピーダンスは比較的高い。
【0059】
この遷移中、第3の入力接続In
3−における制御電圧の増加によって、第3のトランジスタT3の作動点が、オフ状態から飽和領域の作動へ変化するとき、第2のドレイン低下抵抗R9は、第2の出力インピーダンスZ
Out2 に対して効力のない状態から第2の出力インピーダンスZ
Out2に対して少なくともわずかに寄与する状態へと移行する過程にある。
【0060】
その結果、節点Aと節点Cとの間のインピーダンスと並列に切り替わるが、その高い値のために実際の出力インピーダンスZ
Out1にほとんど影響を与えない、比較的高いインピーダンスが、節点Aと基準電位GND(=例えば接地電位、ゼロ電位又はグラウンド電位)との間に存在する。
【0061】
大まかに、ドレイン低下抵抗R1の初期値として、R2(<――>線形モードにある第1のトランジスタT1)とR2
S(<――>飽和モードにある第1のトランジスタT1)との差、例えば約12オーム程度の大きさを選択することができる。追加の並列経路R4−R5
S−R6を考慮に入れると、ドレイン低下抵抗R1は、例えば約20オームに増加する。
【0062】
ドレイン低下抵抗R1と第1の分離抵抗R3とを適切に選択することにより(これは例えば反復法によって達成される)、スイッチング時にもフルシグナル作動時とほぼ同一の値に保たれるように、出力インピーダンスZ
Out1を調節することが可能である。
【0063】
抵抗を正しく調節するには、第1の出力直列抵抗R7を低減させることによって及び2個の分離抵抗R3、R4を同時に増加させることによって、
− スイッチング時に流れる横方向電流、特に立ち上がる電流ピークを低減させ、
− スイッチング時に、インピーダンスZ
Out1を低減させる(その逆はスイッチング中におけるインピーダンスZ
Out1の増加に当てはまる)
ことが更に重要である。
【0064】
この自由度があることで、Z
Out1を、他の全ての作動点について高精度で実現することができる。
【0065】
正確な出力インピーダンスZ
Out1の調節における別の自由度が、位相シフト時に第1の入力接続In
1+と第4の入力接続In
4+とにおいて起こる制御によって、有利なことに得られる。これらの制御は、それぞれ整合する上昇及び下降勾配を有する。これはIn
1+とIn
4+とが別々に最適化されることを意味する(ここでは説明しない第2の入力接続In
2−、及びここでは説明しない第3の入力接続In
3−について、同様のことが当てはまる)。
【0066】
差動回路装置S、S’、S”又はS'''の第2の経路P2については、上で明確に説明していないが、
図1A、1B、1C又は1Dの右半分について、上記説明が適宜当てはまる。
【0067】
本発明は、低い相同出力電圧が達成されることのみならず、非常に低い要求電力を達成することに特徴がある。また高データ伝送速度に有利な(かつ必要な)ことであるが、スイッチング時に、非常に良好な出力インピーダンス整合を、従って高い反射減衰を実現することができる。
【0068】
好ましい形態では、都合のよいことに、
− 少なくとも1個の受光部品、例えば少なくとも1個のフォトダイオードの下流に接続され、
− デカップリングコンデンサによって支持さる、
図1A、1B、1C又は1Dに例示される差動回路装置S、S’、S”又はS'''におい
て、電圧源SQは約0.4ボルトの電圧を提供する。
【0069】
接続される差動ラインに対する出力インピーダンスZ
Out1、Z
Out2の整合には、上記した抵抗R1〜R14を選択することが推奨される。この場合、抵抗は、例えば星型回路(
図1B又は1Cに示す)又は周回路の形態で、配置することができる。
【0070】
図1Aによる差動回路装置S、
図1BによるS’、又は
図1CによるS”は、4個のNチャネル金属酸化物半導体(MOS)トランジスタT1、T2、T3、T4を用いて本発明によって設計することができる。従って、例えば第1のソース低下抵抗R6及び/又は第2のソース低下抵抗R14は、ゼロになりうる。
【0071】
本発明は、少なくとも1個のデータソース、例えば少なくとも1個の第1の集積回路から、少なくとも1個のデータシンク、例えば少なくとも1個の第2の集積回路への、低反射でエラーのないデジタルデータ伝送を目的として、特定のラインインピーダンスを有するラインを駆動するのに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0072】
A 第1のノード、第1の節点、第1の分岐又は第1の分岐点
B 第2のノード、第2の節点、第2の分岐又は第2の分岐点
C 第3のノード、第3の節点、第3の分岐又は第3の分岐点
GND 基準電位、特に接地電位、グラウンド電位又はゼロ電位
In+ 制御電圧が作用することのできる入力接続(=従来技術の例;
図2A参照)、特に第1の制御電圧が作用することのできる第1の入力接続(=従来技術の例;
図2B、
図2C、
図2D参照)
In− 第2の制御電圧が作用することのできる第2の入力接続(=従来技術の例;
図2B、
図2C、
図2D参照)
In
1+ 第1の制御電圧が作用することのできる第1の入力接続
In
2− 第2の制御電圧が作用することのできる第2の入力接続
In
3− 第3の制御電圧が作用することのできる第3の入力接続
In
4+ 第4の制御電圧が作用することのできる第4の入力接続
KQ 定電流源(=従来技術の例;
図2B、
図2C参照)
Out+ 第1の出力接続
Out− 出力接続(=従来技術の例;
図2A参照)又は第2の出力接続
P1 第1の経路、特に第1の信号経路
P2 第2の経路、特に第2の信号経路
R1 第1のドレイン低下抵抗
R2 第1のトランジスタT1のドレイン−ソース抵抗
R2
S 飽和領域における第1のトランジスタT1のドレイン−ソース抵抗
R3 第1の分離(スプリット)抵抗又は第1の分離(セパレート)抵抗
R4 第2の分離抵抗又は第2の分離抵抗
R5 第2のトランジスタT2のドレイン−ソース抵抗
R5
S 飽和領域における第2のトランジスタT2のドレイン−ソース抵抗
R6 第1のソース低下抵抗
R7 第1の出力直列抵抗
R8 第2の出力直列抵抗
R9 第2のドレイン低下抵抗
R10 第3のトランジスタT3のドレイン−ソース抵抗
R10
S 飽和領域における第3のトランジスタT3のドレイン−ソース抵抗
R11 第3の分離抵抗又は第3の分離抵抗
R12 第4の分離抵抗又は第4の分離抵抗
R13 第4のトランジスタT4のドレイン−ソース抵抗
R13
S 飽和領域における第4のトランジスタT4のドレイン−ソース抵抗
R14 第2のソース低下抵抗
S 回路装置、特にラインドライバ又はドライバ出力段(=第1の代表的実施形態;
図1A参照)
S’ 回路装置、特にラインドライバ又はドライバ出力段(=第2の代表的実施形態;
図1B参照)
S” 回路装置、特にラインドライバ又はドライバ出力段(=第3の代表的実施形態;
図1C参照)
S''' 回路装置、特にラインドライバ又はドライバ出力段(=第4の代表的実施形態
;
図1D参照)
SQ 電圧源
T1 第1のトランジスタ、特に第1の金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)、例えば第1のPチャネルMOSFET(=従来技術の例;
図2A、
図2C、
図2D参照)又は第1のNチャネルMOSFET
T2 第2のトランジスタ、特に第2の金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)、例えば第2のNチャネルMOSFET
T3 第3のトランジスタ、特に第3の金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)、例えば第3のPチャネルMOSFET(=従来技術の例;
図2C、
図2D参照)又は第3のNチャネルMOSFET
T4 第4のトランジスタ、特に第4の金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)、例えば第4のNチャネルMOSFET
Z
L ラインインピーダンス、特にライン入力インピーダンス(=従来技術の例;
図2A、
図2B、
図2C、
図2D参照)
Z
Out 出力インピーダンス(=従来技術の例;
図2A、
図2B、
図2C、
図2D参照)
Z
L1 第1のラインインピーダンス、特に第1のライン入力インピーダンス
Z
L2 第2のラインインピーダンス、特に第2のライン入力インピーダンス
Z
Out1 第1の出力インピーダンス
Z
Out2 第2の出力インピーダンス