(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定ボルト孔を有し、この固定ボルト孔に固定ボルトが挿通されて、この固定ボルトによって、回転される刃取付部に対して着脱自在に取り付けられ、相手側刃物との間で被破砕物を剪断破砕することができる破砕機用回転刃において、
前記破砕機用回転刃の外表面であって、前記固定ボルト孔の開口縁部に、固定ボルト孔の前記開口縁部の角部を除去して形成された傾斜平面部又は傾斜曲面部からなる変形抑制部を設けてあり、前記変形抑制部は、前記破砕機用回転刃によって被破砕物を破砕したときに、前記開口縁部が前記固定ボルト孔の開口内周面よりも内側に変形することによって形成される内向き凸部の突出量を規制することを特徴とする破砕機用回転刃。
前記変形抑制部は、前記固定ボルト孔の前記開口縁部の角部に形成された前記傾斜平面部又は前記傾斜曲面部に対して、焼入れ加工を施したものであることを特徴とする請求項1記載の破砕機用回転刃。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来の回転刃3は、
図11に示すように、被破砕物を順次剪断破砕したときに、特に、回転刃3に形成されている固定ボルト孔8(座ぐり部8a)の稜線部3a側の開口縁部のうち、稜線部3aと交わる交差部10は、先端が尖った三角錐状に形成されているので、被破砕物との衝突によって変形し易くなっており、したがって、2つの各交差部10は、被破砕物との衝突によって、座ぐり部8aの開口内面8bよりも内側に変形して内向き凸部100が形成される。
【0008】
このように、交差部10に内向き凸部100が形成されると(
図11参照)、例えば、回転刃3を交換したり補修等するために、固定ボルト5を緩めて固定ボルト孔8から取り外すときに、この内向き凸部100に邪魔されて固定ボルト5を固定ボルト孔8から容易に取り外すことができず、その結果、回転刃3をロータ2から取り外すことが困難となる。
【0009】
このようなときには、作業者が内向き凸部100を削り落とす作業が必要となり、手間が掛かるし、回転刃3の交換時間や補修時間が長く掛かり、これによって、破砕機1の停止時間が長引くことになる。
【0010】
また、
図9に示すように、回転刃3に形成されている座ぐり部8aは、回転刃3を側面方向から見た状態で、座ぐり部8aの座面8cに着座する頭部5aがこの座ぐり部8aから露出する形状となっているので、被破砕物を剪断破砕しているときに、固定ボルト5の頭部5aに向かってくる被破砕物が、固定ボルト5の頭部5aに衝突する可能性が大きく、これによって、固定ボルト5の頭部5aが、被破砕物と衝突して磨耗したり変形することがある。
【0011】
その結果、例えば、固定ボルト5の頭部5aに設けられ、六角レンチ等の工具を係合させて固定ボルト5を回転させるための六角孔等の係合凹部(図示せず)の係合機能が低下することがあり、これによって、固定ボルト5の寿命が短くなる。
そして、固定ボルト5の頭部5aの磨耗や変形によって、固定ボルト5による回転刃3のロータ2に対する取付け強度の低下を招くことがある。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、被破砕物を剪断破砕する破砕作業を行った後でも、固定ボルトを固定ボルト孔から容易に取り外すことができ、その結果、回転刃を刃取付部から容易に取り外すことができる破砕機用回転刃、それを備える破砕機及び破砕機用回転刃の取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る破砕機用回転刃は、固定ボルト孔を有し、この固定ボルト孔に固定ボルトが挿通されて、この固定ボルトによって、回転される刃取付部に対して着脱自在に取り付けられ、相手側刃物との間で被破砕物を剪断破砕することができる破砕機用回転刃において、前記破砕機用回転刃の外表面であって、前記固定ボルト孔の開口縁部に変形抑制部を設けてあり、前記変形抑制部は、前記破砕機用回転刃によって被破砕物を破砕したときに、前記開口縁部が前記固定ボルト孔の開口内周面よりも内側に変形することによって形成される内向き凸部の突出量を、この内向き凸部が、前記固定ボルトの着脱の際にその頭部に引っ掛からない大きさに規制する構成であることを特徴とするものである。
本発明に係る破砕機用回転刃を破砕機に取り付けて使用するときは、複数の破砕機用回転刃(以下、単に「回転刃」と言うこともある。)を破砕機の刃取付部(例えば、ロータ)に対して着脱自在に取り付ける。
そして、この刃取付部を回転させることによって、複数の回転刃と、相手側刃物(相手側固定刃又は相手側回転刃)との間で被破砕物を挟み込んで、この被破砕物を順次剪断破砕することができる。
被破砕物を順次剪断破砕したときに、回転刃の外表面が被破砕物との衝突によって変形するが、回転刃の外表面であって固定ボルト孔の開口縁部に変形抑制部を設けてあるので、この開口縁部が固定ボルト孔の開口内周面よりも内側に変形することによって形成される内向き凸部の突出量を、この内向き凸部が、固定ボルト孔に対する固定ボルトの着脱の際にその頭部に引っ掛からない大きさに規制することができる。
【0014】
これによって、例えば、回転刃を交換したり補修等するために、固定ボルトを緩めて固定ボルト孔から取り外すときに、前記内向き凸部に邪魔されずに固定ボルトを固定ボルト孔から容易に取り外すことができ、その結果、回転刃を刃取付部から容易に取り外すことができる。
この発明に係る破砕機用回転刃において、前記変形抑制部は、前記固定ボルト孔の前記開口縁部の角部を除去して形成された傾斜平面部又は傾斜曲面部であるものとすることができる。
このように、固定ボルト孔の開口縁部の角部を除去して形成された傾斜平面部又は傾斜曲面部は、破砕作業の際に、固定ボルト孔の開口縁部が被破砕物との衝突によって変形したときでも、この開口縁部が固定ボルト孔の開口内周面よりも内側に変形することによって形成される内向き凸部の突出量を、この内向き凸部が、固定ボルト孔に対する固定ボルトの着脱の際にその頭部に引っ掛からない大きさに規制することができる。
この発明に係る破砕機用回転刃において、前記変形抑制部は、前記固定ボルト孔の前記開口縁部の角部に形成された前記傾斜平面部又は前記傾斜曲面部に対して、焼入れ加工を施したものとすることができる。
このようにすると、被破砕物を剪断破砕したときに、固定ボルト孔の開口縁部が、その開口内に向かう方向の変形量を小さくすることができる。
これによって、固定ボルトを固定ボルト孔から取り外すときに、その開口縁部に形成される内向き凸部によって邪魔される可能性を更に低下させることができる。
この発明に係る破砕機用回転刃において、前記破砕機用回転刃は、略多角柱形状に形成され、その先端部に刃部が設けられ、前記固定ボルト孔は、前記略多角柱形状の破砕機用回転刃の外表面に形成されている稜線部を通るように設けられ、前記変形抑制部は、前記固定ボルト孔の前記稜線部側の開口縁部のうち、前記稜線部と交わる交差部であって、前記破砕機用回転刃の回転方向を基準にして前側となる前記交差部及び後側となる前記交差部の両方に、又はいずれか一方の前記交差部に設けられているものとすることができる。
このようにすると、被破砕物を順次剪断破砕したときに、回転刃に形成されている固定ボルト孔の稜線部側の開口縁部のうち、特に、稜線部と交わる交差部が被破砕物との衝突によって変形することがあるが、この交差部には、変形抑制部を設けてあるので、この変形抑制部は、その交差部が固定ボルト孔の開口内周面よりも内側に変形することによって形成される内向き凸部の突出量を、この内向き凸部が、固定ボルト孔に対する固定ボルトの着脱の際にその頭部に引っ掛からない大きさに規制することができる。
この発明に係る破砕機用回転刃において、前記固定ボルト孔は、前記破砕機用回転刃に形成されている外平面部を通るように設けられ、前記変形抑制部は、前記固定ボルト孔の前記外平面部の開口縁部に設けられているものとすることができる。
このように、固定ボルト孔を、破砕機用回転刃に形成されている外平面部を通るように設けた場合は、固定ボルト孔の外平面部の開口縁部は、被破砕物との衝突によって変形する程度が小さい場合があるが、このような開口縁部にも変形抑制部を設けることで、その開口縁部に形成される内向き凸部によって、固定ボルトの取り外しが邪魔される可能性を更に低下させることができる。
この発明に係る破砕機用回転刃において、前記破砕機用回転刃の外表面であって、前記固定ボルト孔の開口部には、座ぐり部が形成され、この座ぐり部は、その座面に前記固定ボルトの頭部が着座した状態で、前記頭部の上端部が前記座ぐり部の開口縁部よりも下側に配置される高さに形成されているものとすることができる。
このように、破砕機用回転刃が刃取付部に固定ボルトで取り付けられて、固定ボルトの頭部が座ぐり部の座面に着座した状態で、その頭部の上端部が座ぐり部の開口縁部よりも下側に配置されるようにすると、被破砕物を剪断破砕しているときに、固定ボルトの頭部に向かってくる被破砕物が回転刃の外表面に衝突することとなり、固定ボルトの頭部に衝突する可能性を小さくすることができる。
これによって、固定ボルトの頭部が、被破砕物と衝突して磨耗したり変形することを抑制することができる。
【0015】
その結果、例えば、固定ボルトの頭部に設けられ、工具を係合させて固定ボルトを回転させるための係合凹部の係合機能の低下を抑制することができる。
つまり、工具を係合させるための係合凹部の係合機能を保護することができ、これによって、固定ボルトの寿命を延ばすことができる。
そして、固定ボルトの頭部の磨耗や変形を抑制できるので、固定ボルトによる回転刃の刃取付部に対する取付け強度の低下を抑制することができる。
この発明に係る破砕機用回転刃において、前記破砕機用回転刃の前記刃取付部に対する取付けの向きは、変更不可であり、前記座ぐり部は、前記固定ボルト孔の両方の開口部のうち一方の開口部に形成されているものとすることができる。
このように、座ぐり部を、固定ボルト孔の両方の開口部のうち一方の開口部に形成するようにすると、座ぐり部の深さ寸法を大きくすることができ、これによって、固定ボルトの頭部の上端部と、座ぐり部の開口縁部との距離を十分に大きく取ることが可能となる。
よって、固定ボルトの頭部が、被破砕物との衝突や摩擦によって損傷することを十分に抑制することができる。
本発明に係る破砕機は、本発明の破砕機用回転刃を備えることを特徴とするものである。
本発明に係る破砕機によると、刃取付部を回転させることによって、破砕機用回転刃と、相手側刃物(相手側固定刃又は相手側回転刃)との間で被破砕物を挟み込んで、この被破砕物を順次剪断破砕することができる。
そして、この破砕機に適用されている破砕機用回転刃は、本発明に係る破砕機用回転刃と同様に作用する。
本発明に係る破砕機用回転刃の取付構造は、本発明の破砕機用回転刃と、前記刃取付部に固定して取り付けられていると共に前記回転刃の後端部と当接し、前記回転刃が被破砕物を剪断破砕するときに働く力によって前記回転刃が移動することを阻止するための移動阻止部とを備えることを特徴とするものである。
本発明に係る破砕機用回転刃の取付構造によると、回転刃と相手側刃物との間で被破砕物を破砕する際には、被破砕物から回転刃に対して様々な方向の力が作用する。
そのため、仮に、移動阻止部が存在していなければ、刃取付部に対する回転刃の取付け位置がずれることがあり、そのようなときは、回転刃が相手側刃物に干渉することがあり、回転刃及び相手側刃物が破損するおそれがある。
しかし、移動阻止部を設けることによって、移動阻止部が回転刃の後端部と当接して、回転刃の移動を阻止することができるので、回転刃及び相手側刃物の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る破砕機用回転刃によると、被破砕物を剪断破砕する破砕作業を行った後でも、固定ボルトを固定ボルト孔から容易に取り外すことができる構成としたので、回転刃を刃取付部から容易に取り外すことが可能となる。
したがって、例えば、回転刃の交換作業や補修作業等を、少ない労力で、しかも短時間で行うことができ、これによって、破砕機の停止時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る破砕機用回転刃(以下、単に、「回転刃」と言うこともある。)、それを備える破砕機及び破砕機用回転刃の取付構造の第1実施形態を、
図1乃至
図7を参照して説明する。
この破砕機11は、例えば、一軸破砕機であり、廃木材、廃プラスチック、古紙等の被破砕物12を所定の大きさに粉砕することができる装置である。
そして、被破砕物12を破砕機11によって破砕するのは、廃棄物等の被破砕物12を、ボイラー燃料や農業資材としてリサイクルできるようにするためである。
【0019】
破砕機11は、
図1に示すように、ケーシング13と、ケーシング13の内部に配設されたロータ(刃取付部)14と、ロータ14の表面に取り付けられた複数の回転刃15と、ケーシング13に設けられ、ロータ14の表面に沿って配置された固定刃16と、ケーシング13の上部に取り付けられたホッパ17と、ケーシング13の側部に取り付けられたプッシャ18とを備えている。
【0020】
ケーシング13は、上記の各部品を支持する基台となる部分である。
そして、ケーシング13の内部には、被破砕物12を収容する平面視略四角形の収容空間Sが形成されており、ロータ14、ホッパ17及びプッシャ18等は、収容空間Sを取り囲むようにしてケーシング13に固定されている。
【0021】
図2に示すように、ロータ14は、中空円筒状又は中実円柱状のロータ本体14aと、ロータ本体14aの軸方向両端部の中心に形成された回転軸14bとを有しており、この回転軸14bは、ケーシング13に取り付けられた軸受(図示省略)によって回動自在に支持されている。
このようにして、ロータ14が回動自在に軸受によって支持されている。
また、ロータ14の回転軸14bには、ギアユニット等を介して駆動モータ(図示省略)が接続されている。
この駆動モータによって、ロータ14を所定方向19に回転させることができる。
【0022】
そして、ロータ本体14aの表面には、例えば、複数の取付溝20が複数条の螺旋状に並ぶように形成されており、取付溝20のそれぞれには、回転刃15が1つずつ固定ボルト21で取り付けられている。
これにより、ロータ14の軸方向に一直線上に並ぶ回転刃15の数の低減が図られており、複数の各回転刃15が、固定刃16との間で被破砕物12を挟み込んで剪断破砕するときに、固定刃16及びロータ14に過大な負荷が掛かることを防止できる。
【0023】
なお、取付溝20及び回転刃15は、破砕機用回転刃の取付構造22(
図3乃至
図7)を構成するものであり、これらの具体的構成については後述する。
【0024】
更に、
図1に示すように、ケーシング13の内部でロータ14が回動自在に支持された状態において、ロータ本体14aの外周面の一部は、収容空間Sに面するように配置されており、ロータ本体14aの外周面の他の部分は、スクリーン23によって覆われている。
このスクリーン23には、多数の孔が形成され、被破砕物12は、スクリーン23に形成されている多数の孔の大きさよりも小さくなるまで、複数の回転刃15と、固定刃16との間で繰り返し剪断破砕される。
したがって、孔径の異なるスクリーン23に交換することによって、最終的に得られる破砕片qの大きさを調整することができる。
【0025】
固定刃16は、
図1に示すように、回転刃15との間で被破砕物12を剪断力によって破砕するものであり、硬質の金属材料等によって板状に形成されている。
そして、
図2に示すように、固定刃16は、接合部24と、この接合部24に設けられた複数の刃部25とを備えている。
【0026】
固定刃16の刃部25は、略三角形の板状体であり、細長い板状の接合部24のロータ本体14aの表面に向かう側の縁部に、その縁部に沿って連なるように複数固定して取り付けられている。
【0027】
このように構成された固定刃16は、
図1及び
図2に示すように、固定刃16と、複数の各回転刃15との間で被破砕物12を順次剪断破砕できるようになっている。
【0028】
ホッパ17は、収容空間Sの内部に被破砕物12を供給するための供給口を形成しており、ホッパ17の内面の少なくとも一部は、供給口が外側に向かって広がるように傾斜して形成されている。
【0029】
プッシャ18は、ホッパ17から収容空間Sの内部に供給された被破砕物12を、複数の回転刃15と固定刃16との間で挟み込んで剪断破砕する破砕領域Q(
図1及び
図2)に供給するものであり、被破砕物12を押圧する押圧部18aと、押圧部18aを破砕領域Qに対して接近する方向及び引き離す方向に往復移動させる駆動部18bとを有している。
【0030】
次に、破砕機用回転刃の取付構造22を、
図3乃至
図7を参照して説明する。
この破砕機用回転刃の取付構造22は、
図3に示すように、ロータ14の表面に形成された取付溝20と、取付溝20に装着された回転刃15と、ロータ14に設けられたねじ穴35と、取付溝20に回転刃15を固定する固定ボルト21と、回転刃15の移動を阻止する移動阻止部材37とを備えている。
【0031】
取付溝20は、
図3に示すように、略V字状の溝であり、取付溝20の底部には、回転刃15の下角部を収容する溝38が形成されている。
また、取付溝20の後端部には、移動阻止部材37の嵌合部39が嵌合される略V字状の凹部40が形成されており、凹部40の底部には、嵌合部39の下部を収容するように溝38が形成されている。
そして、取付溝20の後部壁の上端縁には、開先41が形成されている。
【0032】
回転刃15は、
図3に示すように、刃台42と、刃台42の先端部に設けられた刃部43と、刃台42の後端部に設けられた当接部44とを有している。
刃台42は、略正四角柱形状の部材であり、刃台42の長さ方向の略中央部には、対角線方向に延びる固定ボルト孔45が形成されている。
つまり、固定ボルト孔45は、略正四角柱形状の回転刃15の外表面に形成されている稜線部46を通るように設けられている。
【0033】
そして、固定ボルト孔45の一方端部には、第1座ぐり部47が形成されており、固定ボルト孔45の他方端部には、第2座ぐり部48が形成されている。
つまり、刃台42は、固定ボルト孔45の第2座ぐり部48がねじ穴35に対向する「第1状態(
図6)」と、固定ボルト孔45の第1座ぐり部47がねじ穴35に対向する「第2状態(図示省略)」とを選択的にとり得るように構成されており、いずれの状態においても、ロータ14に対して回転刃15を固定ボルト21で固定できるようになっている。
【0034】
刃部43は、
図3に示すように、刃台42の先端面の全面を覆うように略四角形に形成されており、固定ボルト孔45に対して平行方向における刃部43の一方端部(ロータ14の半径方向の外側端部)は、刃台42が「第1状態」をとったときに固定刃16との間で被破砕物12を破砕する第1部分となっている。
そして、刃部43の他方端部(ロータ14の半径方向の内側端部)は、刃台42が「第2状態」をとったときに固定刃16との間で被破砕物12を破砕する第2部分となっている。
【0035】
当接部44は、
図4に示すように、刃台42が「第1状態」をとったときに、取付溝20の溝底側に向かうにつれて固定ボルト21から離れるように傾斜する第1係止面44aと、刃台42が「第1状態」をとったときに、取付溝20の溝底側に向かうにつれて固定ボルト21に接近するように傾斜する第2係止面44bとを有している。
そして、刃台42の基端面(後端面)における固定ボルト孔45に対して直交する対角線が、第1係止面44aと第2係止面44bとの境界となっている。
【0036】
移動阻止部材37は、
図4乃至
図7に示すように、ロータ14に固定される嵌合部39と、嵌合部39と一体に形成された突出部51とを備えている。
嵌合部39は、
図4に示すように、凹部40の内側面40aに当接する略V字状の第1当接面39aと、取付溝20の内側面20aに当接する略V字状の第2当接面39bとを有するブロック状の部分であり、第1当接面39aと第2当接面39bとの境界には、段差52に係止される段差53が形成されている。
また、嵌合部39の幅方向中央部の下面には、平坦面39cが形成されており、嵌合部39の後部の下面には、傾斜面39dが形成されており、これらによってロータ14に対する嵌合部39の干渉が防止されている。
【0037】
一方、突出部51は、ロータ14の表面から突出する四角錐台状の部分であり、突出部51における刃台42側に位置する側面には、押え面51aが形成されている。
この押え面51aは、第1係止面44a及び第2係止面44bが選択的に当接され、取付溝20の底面側に向かうにつれて固定ボルト21から離れるように傾斜して形成されている。
そして、移動阻止部材37をロータ14に固定する際には、移動阻止部材37の段差53がロータ14の段差52に係止された状態で、嵌合部39が凹部40に嵌合され、その後、開先41(
図6)において移動阻止部材37がロータ14に溶接される。
【0038】
上記のように構成された破砕機用回転刃の取付構造22によれば、刃部43の第1部分(前記一方端部)が磨耗した場合でも、回転刃15を上下逆向きに装着することによって第2部分(前記他方端部)を使用することができるので、刃部43の寿命を延ばすことが可能であり、回転刃15の交換サイクルを長くしてコストを低減することができる。
【0039】
上記のように構成された破砕機用回転刃の取付構造22によると、回転刃15と固定刃16(相手側刃物)との間で被破砕物12を破砕する際には、被破砕物12から回転刃15に対して様々な方向の力が作用する。
そのため、仮に、移動阻止部材37が存在していなければ、ロータ14(刃取付部)に対する回転刃15の取付け位置がずれることがあり、そのようなときは、回転刃15が固定刃16に干渉することがあり、回転刃15及び固定刃16が破損するおそれがある。
しかし、移動阻止部材37を設けることによって、移動阻止部材37が回転刃15の後端部に形成された当接部44と当接して、回転刃15の移動を阻止することができるので、回転刃15及び固定刃16の破損を防止することができる。
【0040】
なお、回転刃15における刃台42の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円柱状体や、六角柱状体等の多角柱状体であってもよい。
また、刃部43は、少なくとも前記第1部分と前記第2部分とを有するものであればよく、その形状は適宜変更されてもよいし、第1部分と第2部分とが互いに独立して設けられてもよい。
更に、当接部44及び移動阻止部材37は、「第1状態」及び「第2状態」のいずれにおいても回転刃15の移動を阻止できるように構成されていればよく、それらの形状は適宜変更されてもよい。
【0041】
次に、
図1を参照して上記のように構成された破砕機11の作用を説明する。
この
図1に示す破砕機11を使用して被破砕物12を破砕するときは、駆動モータを駆動してロータ14を所定方向に回転させると共に、被破砕物12をホッパ17の供給口から収容空間Sの内部に供給する。
すると、プッシャ18は、自動的に動作して被破砕物12を破砕領域Qに押し込むことができる。
これによって、ロータ14の表面に取り付けられた複数の回転刃15と固定刃16との間で被破砕物12を挟み込んで、この被破砕物12を順次剪断破砕することができる。
そして、破砕された被破砕物12の破砕片qは、複数の各回転刃15の刃部43によって回転移送されてスクリーン23の上に落下する。
破砕片qがスクリーン23に形成された多数の各孔よりも小さい場合には、破砕片qは当該多数の孔を通ってその下方に設けられている搬送装置の上に落下し、この搬送装置によって次の工程に搬送される。
【0042】
ただし、破砕片qがスクリーン23に形成された各孔よりも大きい場合には、破砕片qはロータ14とスクリーン23との間に留まるため、各回転刃15に押されて収容空間S内に戻される。
【0043】
次に、この発明に係る破砕機用回転刃15の特徴とする変形抑制部55を、各図を参照して説明する。
この変形抑制部55は、
図5及び
図6に示すように、破砕機用回転刃15の第1座ぐり部47及び第2座ぐり部48(固定ボルト孔45)のそれぞれの開口縁部56に設けてある。
更に詳しく説明すると、変形抑制部55は、第1座ぐり部47及び第2座ぐり部48のそれぞれの開口縁部56のうち、稜線部46と交わる交差部58であって、回転刃15の回転方向19を基準にして前側となる交差部58及び後側となる交差部58の両方に設けられている。
【0044】
つまり、この変形抑制部55は、
図5及び
図6に示すように、交差部58の角部を除去して形成された傾斜平面部である。
この傾斜平面部は、
図6における水平方向に対して約45°の角度で傾斜している。
【0045】
ただし、変形抑制部55は、
図5及び
図6に示すように、傾斜平面部として形成したが、これに代えて、外側に突出する又は内側に窪む傾斜曲面部としてもよい。
【0046】
また、この
図6に示す変形抑制部55は、回転刃15を、その第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)を外側に向けてロータ14に取り付けた状態で、回転刃15によって被破砕物12を破砕したときに、第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)の2つの交差部58が、第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)の開口内周面47a又は48aよりも内側に変形することによって形成される内向き凸部100(
図11参照)の突出量を、この内向き凸部100が、第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)に対する固定ボルト21の着脱の際にその頭部21aに引っ掛からない大きさに規制する構成である。
【0047】
次に、上記のように構成された破砕機用回転刃15の作用を説明する。
この
図6及び
図7に示す回転刃15を使用して被破砕物12を順次剪断破砕したときは、回転刃15に形成されている第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)の稜線部46と交わる各交差部58が、被破砕物12との衝突によって変形することがあるが、各交差部58には、変形抑制部55を設けてあるので、この変形抑制部55は、各交差部58が第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)の開口内周面47a又は48aよりも内側に変形することによって形成される内向き凸部100の突出量を、この内向き凸部100が、第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)に対する固定ボルト21の着脱の際にその頭部21aに引っ掛からない大きさに規制することができる。
【0048】
これによって、例えば、回転刃15を交換したり補修等するために、固定ボルト21を緩めて第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)を含む固定ボルト孔45から取り外すときに、前記内向き凸部100に邪魔されずに固定ボルト21を第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)を含む固定ボルト孔45から容易に取り外すことができ、その結果、回転刃15をロータ14(刃取付部)から容易に取り外すことができる。
【0049】
したがって、例えば、回転刃15の交換作業や補修作業等を、少ない労力で、しかも短時間で行うことができる。
これによって、破砕機11の停止時間を短縮することができる。
【0050】
また、
図6及び
図7に示すように、第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)は、その座面60に固定ボルト21の頭部21aが着座した状態で、頭部21aの上端部が第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)の開口縁部56よりも下側に配置される高さHに形成されている。
【0051】
このように、破砕機用回転刃15がロータ14に固定ボルト21で取り付けられて、固定ボルト21の頭部21aが第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)の座面60に着座した状態で、その頭部21aの上端部が第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)の開口縁部56よりも下側に配置されるようにすると、被破砕物12を剪断破砕しているときに、固定ボルト21の頭部21aに向かってくる被破砕物12が回転刃15の外表面に衝突することとなり、固定ボルト21の頭部21aに衝突する可能性を小さくすることができる。
これによって、固定ボルト21の頭部21aが、被破砕物12と衝突して磨耗したり変形することを抑制することができる。
【0052】
その結果、固定ボルト21の頭部21aに設けられ、六角レンチ等の工具を係合させて固定ボルト21を回転させるための六角孔等の係合凹部21bの係合機能の低下を抑制することができる。
つまり、工具を係合させるための係合凹部21bの係合機能を保護することができ、これによって、固定ボルト21の寿命を延ばすことができる。
そして、固定ボルト21の頭部21aの磨耗や変形を抑制できるので、固定ボルト21による回転刃15のロータ14に対する取付け強度の低下を抑制することができる。
【0053】
次に、本発明に係る破砕機用回転刃の第2実施形態を、
図8を参照して説明する。
この
図8に示す第2実施形態に係る回転刃61と、
図6に示す第1実施形態に係る回転刃15とが相違するところは、
図6に示す第1実施形態では、回転刃15のロータ14に対する取付けの向きは、上下変更可能な構成であり、固定ボルト孔45の両方の各開口部には、第1及び第2座ぐり部47、48がそれぞれ形成されているのに対して、
図8に示す第2実施形態では、回転刃61のロータ14に対する取付けの向きは、上下変更不可の構成であり、固定ボルト孔45の一方の開口部には、第1座ぐり部47が形成されているが、他方の開口部には、第2座ぐり部48が形成されていないところである。
【0054】
これ以外は、第1実施形態と同等であるので、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。
【0055】
このように、第1座ぐり部47のみを、固定ボルト孔45の一方の開口部に形成するようにすると、第1座ぐり部47の深さ寸法Hを大きくすることができ、これによって、固定ボルト21の頭部21aの上端部と、座ぐり部の開口縁部56との距離Jを十分に大きく取ることが可能となる。
よって、固定ボルト21の頭部21aが、被破砕物12との衝突や摩擦によって損傷することを十分に抑制することができる。
【0056】
なお、
図8に示す回転刃61では、第1座ぐり部47の深さ寸法Hを大きくすることができるのは、
図6に示す回転刃15のように、第1座ぐり部47の座面60と、第2座ぐり部48の座面60との間隔として、必要な強度が得られる厚みを確保する必要性がないからである。
【0057】
ただし、上記実施形態では、
図6に示すように、変形抑制部55を、第1及び第2座ぐり部47、48のそれぞれの稜線部46と交わる交差部58であって、回転刃15の回転方向19を基準にして前側となる交差部58及び後側となる交差部58の両方に設けたが、これに代えて、いずれか一方の交差部58に設けてもよい。
このようにしても、固定ボルト21を第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)を含む固定ボルト孔45から取り外し易くすることができる。
【0058】
そして、上記実施形態では、変形抑制部55を、第1及び第2座ぐり部47、48の稜線部46と交わる交差部58に設けたが、これに代えて、第1及び第2座ぐり部47、48の開口縁部56の全周に亘って設けてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、
図6に示すように、第1及び第2座ぐり部47、48を含む固定ボルト孔45を、回転刃15の稜線部46を通るように設けたが、これに代えて、回転刃15の稜線部46から外れる外平面部に設けてもよい。
このようにした場合は、変形抑制部を第1及び第2座ぐり部47、48のそれぞれの開口縁部の全周に亘って設けるとよい。
【0060】
このように、第1及び第2座ぐり部47、48を含む固定ボルト孔45を、回転刃15に形成されている外平面部を通るように設けた場合は、第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)の外平面部側の開口縁部は、被破砕物12との衝突によって変形する程度が小さい場合があるが、このような開口縁部にも変形抑制部を設けることで、その開口縁部に形成される内向き凸部100によって、固定ボルト21の取り外しが邪魔される可能性を更に低下させることができる。
【0061】
更に、変形抑制部55は、
図6に示す第1及び第2座ぐり部47、48のそれぞれの開口縁部56の交差部58に形成された傾斜平面部(又は傾斜曲面部)に対して、又は、第1及び第2座ぐり部47、48のそれぞれの開口縁部56の全周に亘って、例えば、高周波焼入れ加工を施したものとしてもよい。
【0062】
このようにすると、被破砕物12を剪断破砕したときに、第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)の各交差部58、又は開口縁部56が、第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)の開口内に向かう方向の変形量を小さくすることができる。
これによって、固定ボルト21を第1座ぐり部47(又は第2座ぐり部48)から取り外すときに、その交差部58、又は開口縁部56に形成される内向き凸部100によって邪魔される可能性を更に低下させることができる。
【0063】
そして、上記実施形態では、本発明を一軸破砕機に適用したが、これに代えて、二軸破砕機に適用してもよい。