特許第5661894号(P5661894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5661894マイクロメカニカル素子および加速度検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661894
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】マイクロメカニカル素子および加速度検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20150108BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20150108BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20150108BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   G01P15/125 Z
   G01P15/00 K
   H01L29/84 Z
   B81B3/00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-216638(P2013-216638)
(22)【出願日】2013年10月17日
(62)【分割の表示】特願2011-506636(P2011-506636)の分割
【原出願日】2009年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-62907(P2014-62907A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2013年10月17日
(31)【優先権主張番号】102008001442.7
(32)【優先日】2008年4月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス クラッセン
(72)【発明者】
【氏名】ラース テビエ
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−530914(JP,A)
【文献】 特開2007−298410(JP,A)
【文献】 特開2007−298385(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0097957(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/121812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/125
G01P 15/18
B81B 3/00
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)と、1つのサイズモ質量体(3)と、第1の検出手段(4)および第2の検出手段(5)とを備えるマイクロメカニカル素子(1)であって、
前記基板(2)は主面(100)を備え、
前記第1の検出手段(4)は、前記主面(100)に平行な第1の方向(14’)に沿った、前記サイズモ質量体(3)の並進運動的な第1の変位(14)を検出するために設けられ、
前記第2の検出手段(5)は、前記主面(100)に垂直な第2の方向(15’)に平行な第1の回転軸(15’’)の周りの、前記サイズモ質量体(3)の回転運動的な第2の変位(15)を検出するために設けられており、
前記主面(100)に平行な第3の方向(16’)に平行な第2の回転軸(16’’)の周りの、前記サイズモ質量体(3)の回転運動的な第3の変位(16)を検出するための第3の検出手段(6)を備え、
前記第1の方向(14’)、前記第2の方向(15’)および前記第3の方向(16’)は互いに垂直に方向付けられており、
前記サイズモ質量体(3)は、2つのねじり曲げバネの形態のバネ部材(9)を介して前記基板(2)に固定されており、かつ、前記第1の変位(14)、前記第2の変位(15)および前記第3の変位(16)を可能とするように、前記基板(2)に対して可動に設けられており、
前記2つのねじり曲げバネは、以下のように、すなわち、
− 前記第1の変位(14)の際、前記2つのねじり曲げバネがほぼ前記第1の方向(14’)に曲げられ、
− 前記第2の変位(15)の際、前記2つのねじり曲げバネの一方は前記第1の方向(14’)に変位され、前記2つのねじり曲げバネの他方は、前記第1の方向(14’)に逆平行に変位され、
− 前記第3の変位(16)の際、前記2つのねじり曲げバネは、ほぼ前記第2の回転軸(16’’)の回りに回転され、前記サイズモ質量体(3)は記第2の回転軸(16’’)の回りを回転する、
ように構成されている、
ことを特徴とするマイクロメカニカル素子。
【請求項2】
前記サイズモ質量体(3)は、ロッカとして構成されており、該ロッカは記第1の回転軸(15’’)および/または前記第2の回転軸(16’’)の周りに回動可能に支承されている、請求項1記載のマイクロメカニカル素子。
【請求項3】
前記第1の検出手段(4)、前記第2の検出手段(5)および/または前記第3の検出手段(6)は、前記第1の変位(14)、前記第2の変位(15)および/または前記第3の変位(16)を容量に基づいて測定するための電極を有し、前記第1の検出手段(4)および/または前記第2の検出手段(5)は櫛状電極および/または指状電極として構成され、ならびに/あるいは、前記第3の検出手段(6)は平面電極として構成されている、請求項1または2記載のマイクロメカニカル素子。
【請求項4】
前記第1の検出手段(4)および/または前記第2の検出手段(5)は、前記サイズモ質量体(3)の少なくとも1つの部分領域に配置され、および/または、前記サイズモ質量体(3)の切り欠き部(8)に配置されている、請求項1乃至3のいずれか1項記載のマイクロメカニカル素子。
【請求項5】
前記第3の検出手段(6)は、前記主面(100)に垂直な方向において、前記サイズモ質量体(3)に覆われて配置されている、請求項1乃至4のいずれか1項記載のマイクロメカニカル素子。
【請求項6】
前記サイズモ質量体(3)は、バネ部材(9)を介して前記基板(2)に接続され、前記バネ部材(9)は、記サイズモ質量体(3)の前記第1の変位(14)、前記第2の変位(15)および/または前記第3の変位(16)が発生するように構成されている、請求項1乃至5のいずれか1項記載のマイクロメカニカル素子。
【請求項7】
基板(2)と、1つのサイズモ質量体(3)と、第1の検出手段(4)および第2の検出手段(5)とを備えるマイクロメカニカル素子(1)であって、
前記基板(2)は主面(100)を備え、
前記第1の検出手段(4)は、前記主面(100)に平行な第1の方向(14’)に沿った、前記サイズモ質量体(3)の並進運動的な第1の変位(14)を検出するために設けられているマイクロメカニカル素子を用いた加速度検出方法であって、
前記第2の検出手段(5)は、前記主面(100)に垂直な第2の方向(15’)に平行な第1の回転軸(15’’)の周りの、前記サイズモ質量体(3)の回転運動的な第2の変位(15)を検出するために設けられており、
前記マイクロメカニカル素子(1)は、前記主面(100)に平行な第3の方向(16’)に平行な第2の回転軸(16’’)の周りの、前記サイズモ質量体(3)の回転運動的な第3の変位(16)を検出するための第3の検出手段(6)を備えており、
前記第1の方向(14’)における前記マイクロメカニカル素子(1)の加速度を、前記サイズモ質量体(3)の並進運動的な前記第1の変位(14)の測定により検出し、および、前記第1の方向(14’)に垂直な第3の方向(16’)における前記マイクロメカニカル素子(1)の加速度を、前記サイズモ質量体(3)の回転運動的な前記第2の変位(15)の測定により検出し、
前記第1の方向(14’)および前記第3の方向(16’)にそれぞれ垂直な前記第2の方向(15’)における、前記マイクロメカニカル素子(1)の加速度を、前記サイズモ質量体(3)の転運動的な前記第3の変位(16)の測定により検出し、
前記サイズモ質量体(3)は、2つのねじり曲げバネの形態のバネ部材(9)を介して前記基板(2)に固定されており、かつ、前記第1の変位(14)、前記第2の変位(15)および前記第3の変位(16)を可能とするように、前記基板(2)に対して可動に設けられており、
− 前記第1の変位(14)の際、前記2つのねじり曲げバネがほぼ前記第1の方向に曲げられ、
− 前記第2の変位(15)の際、前記2つのねじり曲げバネの一方は前記第1の方向(14’)に変位され、前記2つのねじり曲げバネの他方は、前記第1の方向(14’)に逆平行に変位され、
− 前記第3の変位(16)の際、前記2つのねじり曲げバネは、ほぼ前記第2の回転軸(16’’)の回りに回転され、前記サイズモ質量体(3)は記第2の回転軸(16’’)の回りを回転する、
ことを特徴とする加速度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載されているマイクロメカニカル素子に関する。
【背景技術】
【0002】
その種のマイクロメカニカル素子は、一般的に知られている。例えば、DE19719779A1公報には、基板に対して可動に設けられ、加速度の作用に基づいて一方向に変位可能な振動構造体と、振動構造体の加速度に起因する変位を検出するための評価手段とを有する加速度センサが開示されている。もっとも、有利とはいえないことに、1つの加速度センサしか有しないことから、互いに垂直な複数の方向に平行な方向における加速度の作用の検出は意図されていない。したがって、多方向の加速度測定のためには、その種の加速度センサを複数使用して、それらを互いに異なって方向づけることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE19719779A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
独立請求項に記載の本発明にかかるマイクロメカニカル素子およびマイクロメカニカル素子の作動方法は従来技術に対して、ただ1つのサイズモ質量体を用いるだけで、少なくとも2つの互いに垂直に方向付けられた、マイクロメカニカル素子への加速度の作用を別個に検出できるという利点を有する。この利点は、第1の方向に実質的に平行なサイズモ質量体の並進運動の形態のサイズモ質量体の第1の変位が第1の検出手段により検出および測定され、さらには、実質的に第1の回転軸の周りのサイズモ質量体の回転運動の形態のサイズモ質量体の第2の変位が第2の検出手段により検出および測定されることにより達成される。したがって、ただ1つのサイズモ質量体を用いるだけで少なくとも2方向の加速度を測定することができる。すなわち、マイクロメカニカル素子は加速力に対して第1の方向においても、この第1の方向に垂直な第3の方向においても同時に感度を有する。したがって、従来技術に比べて、多方向に感度を有する加速度センサを著しく小型に構成することができ、また消費電力を低減することができるので、一方で製造原価を、他方で実装費用を大きく低下させることができる。有利には、サイズモ質量体は、第1の回転軸に関して非対称な質量分布を有するか、第1の回転軸を通りかつ第3の方向に平行に延びる直線に関して非対称な質量分布を有するので、特に、第3の方向に平行な加速度の作用、すなわち、第1の方向に垂直であり、かつ第1の回転軸に垂直な方向の加速度の作用により、サイズモ質量体に作用する回転モーメントが発生する。これにより、サイズモ質量体の第2の変位が、実質的にサイズモ質量体の第1の回転軸の周りの回転という形で生じる。上述した本発明の検出および測定は、特に、各変位のそれぞれの質的および/または量的な識別および決定を含む。
【0005】
本発明の有利な実施形態および改善形態は、従属請求項、並びに、図面を参照する以下の詳細な説明から理解される。
【0006】
有利な実施形態によれば、マイクロメカニカル素子は、主面に実質的に平行な第3の方向に平行な第2の回転軸の周りに発生する1つのサイズモ質量体の実質的に回転運動的な第3の変位を検出するための第3の検出手段を備える。これにより特に有利には、第1の方向に平行でありかつ第3の方向に平行な、マイクロメカニカル素子への加速度の作用の測定に加え、第3の検出手段を用いることにより第2の方向に平行なマイクロメカニカル素子への加速度の作用を測定することができるので、3方向加速度センサを実現することができる。特に、サイズモ質量体は第2の回転軸、特に、直線に対応する回転軸に関して非対称な質量分布を有するので、第2の回転軸に垂直でありかつ第1の方向に垂直な方向において、サイズモ質量体に作用する加速力は、サイズモ質量体に作用する別の回転モーメントを発生し、実質的にサイズモ質量体は第2の回転軸の周りを回転する。
【0007】
好ましい実施形態によれば、サイズモ質量体はロッカとして構成されている。このロッカは、特に、第1の回転軸および/または第2の回転軸に回動するように支承されている。有利には、第1の軸および/または第2の軸に回動するロッカとしてサイズモ質量体を実現することにより、相応する検出手段を例えばサイズモ質量体の下方において、特に簡単に実現することができる。ロッカは、各回転軸に関して、有利には、非対称な質量分布を有する。
【0008】
別の好ましい実施形態によれば、第1の検出手段、第2の検出手段および/または第3の検出手段は電極、特に、第1の変位、第2の変位および/または第3の変位を容量に基づいて測定するための電極を含む。第1の検出手段および/または第2の検出手段は好ましくは指状電極として構成され、および/または、第3の検出手段は好ましくは平面電極として構成されている。特に好ましくは、比較的簡単かつ低コストに第1の検出手段、第2の検出手段および/または第3の検出手段を実現することができる。特に、それらの演出手段は第1の変位、第2の変位および第3の変位を容量に基づいて測定することにより、第1、第2および/または第3の方向に平行な加速度の作用を比較的正確に検出および測定することができる。特に好ましくは指状電極を使用することにより、第1の方向、第2の方向および/または第3の方向に平行な加速度の作用を差動的に測定することができる。
【0009】
別の好ましい実施形態によれば、第1の検出手段および/または第2の検出手段は、サイズモ質量体の少なくとも1つの部分領域に配置され、および/または、サイズモ質量体の第1の切り欠き部および第2の切り欠き部に設けられている。これにより、特に好ましくは、第1の検出手段および/または第2の検出手段を比較的小型の構造に組み込むことができ、特に、複数の指状電極をマイクロメカニカル素子およびサイズモ質量体中に組み込むことができる。特に好ましくは、第1の検出手段および/または第2の検出手段により、第1の変位および/または第2の変位の差動的な評価が行われる。
【0010】
別の好ましい実施形態によれば、第3の検出手段が主面に垂直な方向においてサイズモ質量体に覆われるように配置されている。したがって、好ましくは主面に垂直に方向付けられている第3の方向に平行な第3の変位を特に好ましくは測定することができる。サイズモ質量体の第2の回転軸に関する非対称な質量分布に基づいて、特に好ましくは、サイズモ質量体の「下方に」配置されている第3の検出手段による第3の変位を差動的に評価することができるので、プロセス技術としては比較的煩雑である、サイズモ質量体の「上方に」電極を配置することは、第3の変位を測定するためには必要ではない。
【0011】
他の好ましい実施形態によれば、サイズモ質量体は、バネ部材、特に、ねじり曲げバネを介して基板と接続されている。第1のバネ部材は、好ましくは、サイズモ質量体の第1の変位、第2の変位および/または第3の変位が発生するように構成されている。特に有利には、第1の方向、第2の方向および第3の方向に平行な加速度の作用を測定するために1つのサイズモ質量体しか使用しないことから、従来技術とは異なり、サイズモ質量体を可動に支承するために第1のバネ部材しか必要とされない。有利には、第1バネ部材は2つのねじり曲げバネを含む。これらのねじり曲げバネは第1の変位の発生中には、ほぼ第1の方向にねじられ、またこれらは第2の変位の発生中には、第1の方向に平行に反対にねじられる。すなわち、2つのねじり曲げバネのうち一方は第1の方向に偏位され、他方は第1の方向に逆平行に偏位される。さらにねじり曲げバネには第3の変位の発生中に、第2の回転軸についてのトーションが生じる。
【0012】
他の好ましい実施形態によれば、マイクロメカニカル素子は、特に、第1の方向、第2の方向および第3の方向は互いに垂直に方向付けられているので、特に好ましくは、マイクロメカニカル素子に作用する3つ全ての空間方向の加速度を、ただ1つのサイズモ質量体を用いるだけで測定することができる。
【0013】
本発明の他の対象は、マイクロメカニカル素子の作動方法である。この作動方法においては、サイズモ質量体の実質的に並進運動的な第1の変位の測定により、第1の方向におけるマイクロメカニカル素子の加速度が検出され、サイズモ質量体の実質的に回転的な第2の変位の測定により、第1の方向に実質的に垂直な第2の方向におけるマイクロメカニカル素子の加速度が検出される。これにより、従来技術と異なり、ただ1つのサイズモ質量体を用いるだけで、マイクロメカニカル素子に作用する少なくとも2方向の加速度の測定が、実質的に並進運動的な第1の変位および実質的に回転運動的な第2の変位の測定により可能となる。
【0014】
好ましい実施形態によれば、第1の方向および第2の方向にそれぞれ実質的に垂直な第3の方向におけるマイクロメカニカル素子の加速度を、サイズモ質量体の実質的に回転運動的な第3の変位の測定により測定することができる。これにより、有利には、ただ1つのサイズモ質量体を用いるだけで、マイクロメカニカル素子への第3の方向に平行な加速度の作用も測定することができる。
【0015】
他の好ましい実施形態によれば、第1の変位は第1の検出手段により測定され、第2の変位は第2の検出手段により測定され、および/または、第3の変位は第3の検出手段により測定される。これにより、特に好ましくは、第1の方向、第2に方向および/または第3の方向における加速度の作用を、互いに独立して、第1の検出手段、第2の検出手段および/または第3の検出手段により測定することができる。
【0016】
以下では、図面を参照しつつ、本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a図1aは、x、yおよびz方向にそれぞれ感度を持つ、従来技術にかかる加速度センサの概略平面図を示す。
図1b図1bは、x、yおよびz方向にそれぞれ感度を持つ、従来技術にかかる加速度センサの概略平面図を示す。
図1c図1cは、x、yおよびz方向にそれぞれ感度を持つ、従来技術にかかる加速度センサの概略平面図を示す。
図2a図2aは、z方向にそれぞれ感度を持つ、従来技術にかかる加速度センサの概略側面図を示す。
図2b図2bは、z方向にそれぞれ感度を持つ、従来技術にかかる加速度センサの概略側面図を示す。
図3a図3aは、本発明の例示的実施形態にかかるマイクロメカニカル素子の概略平面図を示す。
図3b図3bは、本発明の例示的実施形態にかかるマイクロメカニカル素子の概略平面図を示す。
図3c図3cは、本発明の例示的実施形態にかかるマイクロメカニカル素子の概略平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
異なる図面中、同一部分には全て同一の参照番号を付しているので、それぞれの部分は全体を通して一度しか説明しない。
【0019】
図1a、1b、1cには、x、y、z方向にそれぞれ感度を持つ従来技術にかかる加速度センサの概略平面図が示される。図1a中に示される、x方向に平行な方向に感度を持つ加速度センサは、基板2と、サイズモ質量体3とを備えている。x方向は、基板2の主面に平行である。サイズモ質量体3は基板2に相対的にx方向に平行に可動であるように、2つのバネ部材29および2つの固定アンカ31を介して基板2に固定されている。加速度センサに作用するx方向に平行な成分を有する加速力は、基板2とは反対に働くサイズモ質量体3の慣性力に基づき、x方向に平行なサイズモ質量の変位を発生する。この変位は、電極の形態の検出手段34により測定される。電極は、サイズモ質量体3の切り欠き部に固定されている。サイズモ質量体3あるいはその部分領域は電極に対する対向電極を構成する。これにより、電極と対向電極との間の容量変化によって、サイズモ質量体3の変位を測定することができる。図1bには、y方向に平行な加速度の作用を検出するための、y方向に感度を持つ加速度センサが示される。y方向は、主面に平行かつx方向に垂直な方向である。y方向に感度を持つ加速度センサは、図1aに示した、x方向に感度を持つ加速度センサと同一であるが、主面で90度回転されて配置されている。図1cには、z方向に感度を持つ加速度センサが示されている。z方向はx方向およびy方向に垂直な方向である。z方向に感度を持つ加速度センサは同様に、基板2と、基板2に対して可動な、ロッカの形態のサイズモ質量体3とを備える。サイズモ質量体3は、固定アンカ31を用いてサイズモ質量体3の切り欠き部内で基板2に固定されており、バネ部材30を用いて切り欠き部内でバネ部材30に平行な回転軸38の周りを回動可能に支承されている。すなわち、回転軸38は特にy方向に平行に設けられ、実質的に軸方向においてバネ部材30を通って延びている。サイズモ質量体3の質量分布は回転軸38に関して非対称であるので、加速度センサにz方向に平行な加速度が作用することにより、回転軸38についてサイズモ質量体3が回転する。このサイズモ質量体3の回転を平面電極6によって測定することができる。平面電極6は、サイズモ質量体3の下に、すなわち、z方向でサイズモ質量体3に覆われて基板2上またはその内部に設けられている。したがって、従来技術によれば、3つ全ての方向に作用する加速度を同時に測定するためには、x、y、zの3つの方向にそれぞれ感度を持つ複数の加速度センサを使用しなければならなかった。
【0020】
図2a、2bに、従来技術にかかる、z方向に感度を持つ加速度センサの概略側面図を示す。また、サイズモ質量体3の質量分布が回転軸38に関して非対称であることが、補足的に示したサイズモ質量体3の部分領域32によって明らかにされている。平面電極6とサイズモ質量体3との間で測定される電気容量(図2bで平板キャパシタ33として示される)の値が、回転軸38についてのサイズモ質量体3の回転中に変化するので、z方向における加速度センサへの加速度の作用を測定することができる。
【0021】
図3a、3b、3cには、本発明の例示的実施形態にかかるマイクロメカニカル素子1のサイズモ質量体3の概略平面図が示されており、それぞれに第1の変位14、第2の変位15、第3の変位16が示されている。マイクロメカニカル素子1は、基板2と、サイズモ質量体3と、第1の検出手段4と、第2の検出手段5と、第3の検出手段6とを備える。基板2は主面100を備える。第1の検出手段4は、図3aにおいて主面100に実質的に平行な第1の方向14’に沿って、実質的に並進運動的なサイズモ質量体3の第1の変位14を検出するために設けられている。第1の変位14は、第1の方向14’に平行な方向におけるマイクロメカニカル素子1への加速度の作用により発生する。第2の検出手段5は、図3b中、主面100に実質的に垂直な第2の方向15’に平行な第1の回転軸15’’の周りに示されている、実質的に回転運動的なサイズモ質量体3の第2の変位15を検出するために設けられる。サイズモ質量体3は、第1の回転軸15’’に関して非対称な質量分布を有するか、あるいは、第1の回転軸15’’を通りかつ第3の方向16’に平行に延びる直線112に関して非対称な質量分布を有しているので、第2の変位15は、第1の方向14’および第2の方向15’にそれぞれ垂直な第3の方向16’に平行な方向におけるマイクロメカニカル素子1への加速度の作用により発生する。第3の検出手段6は、図3c中、第3の方向16’に平行な第2の回転軸16’’の周りに示されている、実質的に回転運動的なサイズモ質量体3の変位16を検出するために設けられている。第3の変位16は、第2の方向15’に平行な方向におけるマイクロメカニカル素子1への加速度の作用、および、直線112に関するサイズモ質量体3の非対称な質量分布により発生する。したがって、サイズモ質量体3はロッカとして構成されている。ロッカは、第1の回転軸15’’および第2の回転軸16’’の周りをそれぞれ回動可能、または、揺動可能に支承されている。第1の検出手段4および第2の検出手段5はサイズモ質量体3の切り欠き部8内に配置され、また電極として構成されているので、第1の変位14および第2の変位15は、各電極の容量変化により、特に図1aに示されるx方向に感度を持つ加速度センサおよび1bに示されるy方向に感度を持つ加速度センサにおけるように、それぞれ差動的に測定することができる。第3の検出手段6は第2の方向15’に平行な平面電極として、サイズモ質量体3の下方に配置されており、また特に、図1c、2a、2bに示したz方向に感度を持つ加速度センサとしての原理に従って機能する。サイズモ質量体3は、2つのねじり曲げバネの形態のバネ部材9を介して基板2に固定されており、かつ、第1の変位14、第2の変位15、第3の変位16が発生するように、基板2に対向して可動に支承されている。第1の変位14の発生中、2つのねじり曲げバネは、ほぼ第1の方向にねじられる。第2の変位15の発生中、2つのねじり曲げバネは相互に反対方向で第1の方向に対向して平行にねじられる。すなわち、2つのねじり曲げバネの一方は第1の方向に偏位され、他方は第1の方向に逆平行に偏位されるので、サイズモ質量体3は、全体として、実質的に、第1の回転軸15’’について回転する。第3の変位運動の間、ねじり曲げバネは、ほぼ第2の回転軸16’’について回転されるので、サイズモ質量体3は実質的に第2の回転軸16’’について回転する。
【符号の説明】
【0022】
2 基板、 3 サイズモ質量体、 6 平面電極、 8 切り欠き部、 9 バネ部材、 14 第1の変位、 14’ 第1の方向、 15 第2の変位、 15’ 第2の方向、 15’’ 第1の回転軸、 16 第3の変位、 16’ 第3の方向、 16’’ 第2の回転軸、 29、30 バネ部材、 31 固定アンカ、 33 平板キャパシタ、 34 検出手段、 38 回転軸、 100 主面、 直線 112
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c