(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の演算ステップは、前記判定ステップで異常であると判定された測線毎に、複数種類の前記異常時用の補正テーブルのいずれかの異常時用の補正テーブルを選択的に用いて流量を算出する、請求項4に記載の流量算出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した多測線線型の超音波流量計では、各測線での流速が、所定の範囲内であるか否かを判定することによって、測線での流速が異常であるか否かの判定を行っている。複数の測線のうちのいずれかの測線が故障し、その測線での流速が所定の範囲内から外れて異常であると判定された場合には、故障した測線での流速が、所定の範囲内の中央値に置き換えると共に、他の正常な測線での流速と一緒に演算に用いられている。すなわち、測線が故障した場合であっても、その測線での流速を所定値に置き換えて演算に用いられており、測線が正常なときと同様に所定値に重み付け係数を乗算して、上述の加重平均として平均流速を用いて、流量を算出していた。
【0008】
このような演算を行っているため、本発明に関連する多測線線型の超音波流量計では、測線が故障した場合、演算によって求められる流量の確からしさ(以下、流量の精度と称する)が低下してしまう問題があった。
【0009】
さらに、複数の測線が故障した場合には、複数の測線での流速が所定値に置き換えられて演算に用いられるので、演算によって求められる流量の精度が著しく低下してしまう問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記関連する技術の課題を解決し、複数の測線のいずれかの測線が故障した場合であっても、算出される流量の精度の低下を抑えることができる、流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明に係る、測線の故障に予め準備した補正値により対応可能な流量計は、流路内の流体の流速を計測するための一組の超音波送受波器を有する測線であって、流路に間隔をあけて配置された複数の測線と、
超音波送受波器の計測値に基づいて各測線における流速を算出する第1の演算処理部と、
測線にて計測できなかったときに測線が異常であると判定すると共に、測線での流速が所定の範囲から外れたときに測線が異常であると判定する判定処理部と、
各測線での流速を補正するために各測線における流速の各々を重み付けるための係数を有する補正テーブルであって、全ての測線が正常であるときに用いる正常時用の補正テーブルと、正常時用の補正テーブルとは異なる異常時用の補正テーブルとを含む複数種類の補正テーブルが記憶された記憶部と、
各測線における流速と、補正テーブルの係数とを乗算して複数の補正値の平均としての平均流速を算出する第2の演算処理部と、を備える。
【0012】
判定処理部によって測線が異常であると判定された場合、第2の演算処理部は、異常な測線での流速を演算から除外し、正常な残りの測線での流速と、異常時用の補正テーブルとを用いて算出された平均流速に基づいて、流量を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る流量算出方法は、流路に設けられた一組の超音波送受波器を有する測線を複数用いて流路内の流量を算出する流量算出方法であって、
超音波送受波器での計測値に基づいて測線における流速を算出する第1の演算ステップと、
測線にて計測できなかったときに測線が異常であると判定すると共に、測線での流速が所定の範囲を外れたときに該測線が異常あると判定する判定ステップと、
各測線での流速を補正するために各測線における流速の各々を重み付けるための係数を有する補正テーブルであって、全ての測線が正常であるときに用いる正常時用の補正テーブルと、正常時用の補正テーブルとは異なる異常時用の補正テーブルとを含む複数種類の補正テーブルを用いて、各測線における流速と、補正テーブルの係数とを乗算した複数の補正値の平均としての平均流速を算出する第2の演算ステップと、有する。
【0014】
第2の演算ステップでは、複数の測線のうちでいずれかの測線が異常であると判定した場合、異常な測線での流速を除外した正常な測線での流速と、異常時用の補正テーブルとを用いて算出された平均流速に基づいて、流量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の測線のいずれかの測線に異常が生じた場合であっても、算出される流量の精度が低下することを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1に、実施形態の超音波流量計の模式図を示す。
図2に、実施形態の超音波流量計が備える複数の測線を説明するための模式図を示す。実施形態の超音波流量計は、液体として、例えば、冷却回路の流路を流れる冷却液の流量を算出するために用いられるが、気体の流量を算出するために用いられてもよいことは勿論である。
【0019】
図1に示すように、実施形態の超音波流量計1は、円管3内を流れる液体の流速を計測するための一組の超音波送受波器5をそれぞれ有し、流路4に間隔をあけて配置された第1の測線M1から第8の測線M8と、超音波送受波器5での計測値に基づいて各第1の測線M1〜第8の測線M8における流速を算出する第1の演算処理部としての演算回路7と、を備えている。
【0020】
また、超音波送受波器1は、各第1の測線M1から第8の測線M8での流速を補正するために各第1の測線M1から第8の測線M8における流速の各々を重み付ける係数(以下、重み付け係数と称する)を有する補正テーブルであって、全ての測線Mが正常であるときに用いる正常時用の補正テーブルと、正常時用の補正テーブルとは異なる異常時用の補正テーブルとを含む複数種類の前記補正テーブルが記憶された記憶部としての記憶回路8を備えている。
【0021】
また、超音波流量計1は、各第1の測線M1から第8の測線M8における流速と、補正テーブルが有する重み付け係数とを乗算した複数の補正値の平均としての平均流速を算出する第2の演算処理部としての演算回路7と、第1の測線M1から第8の測線M8において計測できなかったときにその測線Mが異常であると判定すると共に、各第1の測線M1から第8の測線M8の計測値のいずれかが測線M1〜M8毎に予め設定された所定の範囲を外れたときにその測線Mが異常であると判定する判定処理部としての判定回路9と、を備えている。
【0022】
そして、判定回路9によって測線Mが異常であると判定された場合、演算回路7は、異常な測線Mでの流速を除外して、正常な残りの測線Mでの流速と、異常時用の補正テーブルとを用いて算出された平均流速に基づいて、流量を算出する。
【0023】
また、超音波流量計1は、図示しないが、各測線M1〜M8での計測が、他の測線Mでの計測と干渉することを避けるために超音波を送受波するタイミングを決定するための処理回路と、超音波の出力するための出力回路と、各測線で計測された計測値を一時的に記憶するための一時記憶回路と、を備えている。
【0024】
超音波送受波器5は、超音波を送る送波器及び超音波を受ける受波器を有しており、圧電素子によって構成されている。
図2(a)、
図2(b)に示すように、1つの測線Mにおいて、超音波を発すると共に超音波を受ける超音波送受波器5が、流路4を挟んで対向する位置に配置されている。また、1つの測線においては、一方の超音波送受波器5が流路4の上流側に配置されており、他方の超音波送受波器5が流路4の下流側に配置されている。
【0025】
また、第1〜第4の測線M1〜M4は、流路4の同一断面上に間隔をあけて互いに平行に配置されている。第5〜第8の測線M5〜M8は、第1〜第4の測線M1〜M4が配置された断面とは異なる、流路4の同一断面上に間隔をあけて互いに平行に配置されると共に、第1〜第4の測線M1〜M4の各々と直交するように配置されている。
【0026】
記憶回路8は、例えば半導体メモリによって構成されており、演算回路7及び判定回路9と電気的に接続されている。演算回路7及び判定回路9は、例えばCPUによって構成されており、第1〜第8の測線M1〜M8を構成する各超音波送受波器5と電気的に接続されている。なお、本実施形態では、演算回路7と判定回路9が独立して構成されているが、1つの処理回路によって行われるように構成されてもよいことは勿論である。また、測線Mにて計測できなかったときに測線Mが異常であると判定する判定回路と、測線Mでの計測値が所定の範囲から外れたときに測線が異常であると判定する判定回路は、個別に設けられてもよい。
【0027】
1つの測線Mでの流速には、複数の測線Mでの流速における相対的な重みとしての重み付け係数が設定されている。この重み付け係数は、流路4における測線Mの位置に応じて異なっており、流体の種類、温度、圧力、不純物の濃度などの流体の性状や、流量、流路4の形状や大きさ等に応じて予め算出されて設定されている。
【0028】
また、記憶回路8に記憶されている補正テーブルは、複数の測線Mの各々に対応する複数の重み付け係数を有している。
【0029】
また、演算回路7は、異常であると判定された測線Mに応じて、複数種類の異常時用の補正テーブルのうち、所望の補正テーブルを選択し、選択した補正テーブルを用いて演算を行う。例えば、第1の測線M1が故障した場合に用いる異常時用の補正テーブルと、第2の測線M2が故障した場合に用いる異常時用の補正テーブルとは異なっている。
【0030】
ここで、超音波流量計1が備える1つの測線Mにおいて、流路4を流れる流体の流量を求めるための原理と演算について説明する。
【0031】
超音波流量計1の測線Mは、流路4内の流体に対して超音波を伝播させ、超音波の伝播時間を検出することで、超音波の伝播速度を計測する。このとき、流体を伝播する超音波の伝播速度は、流体の流速に応じて変動する。
【0032】
超音波の速度をc(m/sec)、流体の流速をV(m/sec)とすれば、上流から下流に向かって超音波が伝播するときに観測される伝播速度はc+Vとなり、下流から上流に向かって超音波が伝播するときに観測される伝播速度はc−Vとなる。流体が流れる向きに対して、超音波が伝播する方向が角度θをなしているとき、伝播速度はc±Vcosθとなる。流路4内で流体が流速分布を有する場合、上述した流体の流速Vは、超音波が伝播する経路上での平均流速となる。
【0033】
流路4内の流量(m
3/sec)を算出するためには、流路4の断面平均速度(m/sec)を求めて、この断面平均流速と流路4の断面積とを乗算することによって流量を算出する。
【0034】
図3に、1つの測線Mにおいて一組の超音波送受波器5を用いて行う演算を説明するための模式図を示す。
図3に示すように、円管3内の流路4で、流速分布Aのような流れが生じているものとする。
【0035】
図3に示すように、流路4の上流側に超音波送受波器5aが配されており、流路4の下流側に超音波送受波器5bが配されている。
【0036】
ここで、2つの超音波送受波器5a、5bとの間で超音波が伝播する距離(超音波伝幡経路の長さ)をL、円管3に取り付けられた超音波送受波器5a,5bの金属部分を超音波が伝わる伝播時間をt0、上流の超音波送受波器5aから下流の超音波送受波器5bまで超音波が伝わる伝播時間をt1、下流の超音波送受波器5bから上流の超音波送受波器5aまで超音波が伝わる伝播時間をt2とする。
【0037】
上流の超音波送受波器5aから送信された超音波は、流体の流れの向きに移動しながら、下流の超音波送受波器5bで受信される。一方、下流の超音波送受波器5bから送信された超音波は、流体の流れの向きと逆向きに移動しながら、上流の超音波送受波器5aで受信される。
【0038】
超音波送受波器5aと超音波送受波器5bとの間の伝播時間から、金属中の伝播時間t0を減算して、流体中の伝播時間t1、t2を算出する。
【0039】
流体の流れに関する上流の超音波送受波器5aから下流の超音波送受波器5bに超音波が送られたときの超音波の伝播速度は、c+Vcosθとなり、流体の流れに逆らった下流の超音波送受波器5bから上流の超音波送受波器5aに超音波が送られたときの超音波の伝播速度は、c―Vcosθとなる。ここで、流体の速度をVとし、同一流体、同一温度、同一圧力の静止流体中の超音波速度をcとする。
【0040】
このとき、c+Vcosθ=L/t1、c−Vcosθ=L/t2となるので、
【0044】
以上のように、流路4内の流体の平均流速は、超音波の伝播時間t1、t2と、その伝播時間の差△tとを用いて求めることができる。あるいは、静止流体中の超音波速度cと、伝播時間の差△tとを用いて求めることができる。伝播時間の差△tは、超音波送受波器5aで計測した信号と超音波送受波器5bで計測した信号とを比較して位相差を求めるような手段を用いて計測精度を高めることで、計測精度の向上を図ることが可能である。
【0045】
実施形態の超音波流量計1は、円管3の同一断面上に配置された第1〜第4の測線M1〜M4、及び同一断面上に配置された第5〜第8の測線M5〜M8からなる8つの測線Mを備えているので、8つの測線Mでの計測値から8つの流速がそれぞれ算出される。
【0046】
以上のように構成された超音波流量計1において、測線Mに異常が生じた場合における処理を、
図4を参照して説明する。
【0047】
まず、超音波流量計1は、ステップS0に示すように、8つの測線Mを用いて計測された計測値(後述する伝播時間t1、t2、伝播時間の差△t)基づいて、演算回路7が流速をそれぞれ算出する。演算回路7は、算出した8つの測線Mでの流速を判定回路9に送る。
【0048】
このとき、超音波送受波器5で超音波を受信できないために演算回路7が流速を演算不能だった場合、判定回路9は、測線Mにおいて計測できず、その測線Mが異常であると判定する。このように、判定回路9は、ステップS1に示すように、演算回路7から受信した信号に基づいて8つの測線Mの全てで計測できたか否かについて判定する。8つの測線Mのいずれかで計測ができなかった場合には、後述するステップS4に移行する。8つの測線Mの全てで計測を行えた場合にはステップS2に移行し、判定回路9は、8つの測線Mでの流速の各々が正常であるか否か、すなわち所定の範囲内であるか否かを判定する。8つの測線Mでの流速の全てが所定の範囲内である場合、判定回路9は、8つの測線Mの全てで正常に計測されたと判定する。
【0049】
なお、各測線Mから判定回路9に信号が直接送られ、まず判定回路9が、各測線Mにて計測ができたか否かを判定した後、計測できた測線Mの計測値に基づいて演算回路7が流速を算出するように構成されてもよい。
【0050】
全ての測線Mが正常である場合、ステップ3に示すように、8つの測線Mでの流速を用いて、正常時用の補正テーブルが有する重み付け係数を用いて補正値を演算し、複数の補正値の平均としての平均流速の算出が行われる。そして、このように算出された平均流速と、流路4の断面積の値とを用いて、演算回路7は、流路4内の流量を算出し、流量計測を終了する。
【0051】
つぎに、いずれかの測線Mにて計測ができなかったとき、及びいずれかの測線Mでの流速が所定の範囲内から外れたとき、判定回路9は、その測線Mに異常が生じたと判定する(ステップS1、S2)。本実施形態では一例として、ステップS4に示すように、流速が異常な測線Mが2つ以上であるか否かを判定回路9が判定しており、2つ以上の測線Mが異常であると判定された場合、流量計測の失敗として処理する。勿論、2つの測線Mが同時に異常な場合に対応する異常時用の補正テーブルを用意しておくこともできるが、この場合には、計測される流量の確からしさの低下が想定される。
【0052】
ステップS4において、1つの測線Mが異常であると判定された場合には、ステップS5に移る。ステップS5に示すように、異常が生じたと判定された測線Mでの流速は、平均流速の算出に用いられずに除外され、残りの正常な7つの測線Mのみでの流速を用いて平均流速の算出が行われる。
【0053】
このとき、判定回路9は、第1〜8の測線M1〜M8のいずれかである第n(n=1〜8)の測線Mを除いて、7つの正常な測線Mでの流速を用いて、複数種類の補正テーブルから、演算から除外する測線Mに応じた所望の異常時用の補正テーブルを選択する。続いて、7つの測線Mでの流速を用いて、異常時用の補正テーブルが有する重み付け係数を用いて補正値を演算し、平均流速の算出が行われる。そして、このように算出された平均流速と、流路4の断面積の値とを用いて、演算回路7は、流路4内の流量を算出する。上述のように、超音波流量計1は、流路4に応じて異常時用の補正テーブルを備えることで、流速分布を有する流路4に対応することができる。
【0054】
続いて、実施形態における補正テーブル及び具体的な演算について更に詳細に説明する。
【0055】
上述したように本実施形態では、8つの測線Mでの8つの流速に基づいて、流路4の断面平均流速を算出する方法として、校正実験などを行って予め求めておいた重み付け係数Wiを、各測線Mでの流速値viに乗算して、その総和に基づいて、断面平均流速を算出する方法を採用している。
【0056】
上述した補正テーブルの重み付け係数Wi以外にも、偏流の度合い(8つの流速の計測値の偏りの度合い)に依存するメーターファクタ(Meter Factor)MF、温度に伴う円管3の断面積の変化を補正するエリアファクタAFなどの要素を用いた補正を行って、下記式(3)のように最終的に流量値Qを算出している。なお、式(3)において、管内径をDIとする。
【0058】
実施形態の超音波流量計1では、校正実験を行って予め最適な重み付け係数(Wi)
i=1〜8を求めておくことで、8つの測線Mにて正常に計測されたときに、各流速値viと重み付け係数(Wi)
i=1〜8とを乗算した補正値を利用して、確からしい流量値を算出することができる。
【0059】
また、8つの測線Mのうち、1つの測線Mを除いた7つの測線Mでの流速値viだけを用いて、確からしい流量を算出するために最適な重み付け係数(Wi)
i=1〜7を予め計算して用意しておくことで、いずれか1つの測線Mでの流速値viが異常であった場合にも、確からしい流量を算出することができる。
【0060】
なお、8つの測線Mのうち、7つの測線Mでの流速値viのみを用いて流量を算出するときの、適切な重み付け係数(Wi)
i=1〜7としては、第1の測線M1〜第8の測線M8のいずれかの流速値viを用いない場合について、8通りの補正テーブルを用意しておく。このように7つの測線Mでの流速値viを用いて算出された流量値の精度(確からしさ)は、8つの測線Mでの流速値viを用いて算出された流量値よりも、僅かに低下するが、要求される流量値の精度を満たすように流体の性状の条件範囲を限定した場合の各々について予め校正実験を行って適切な重み付け係数Wiを求めておけばよい。
【0061】
なお、ソフトウェア・シミュレーションを利用して、流体の性状や、流量値を変えた場合における各測線Mでの流速値viを予め計算しておき、これらの計算値をデータベースとして用意しておくことが考えられる。このようなデータベースを用いることで、各測線Mで実測された流速値viから流量値を検索することも可能になる(データライブラリ方式)。データベースを検索する場合には、以下の方式によって、高速に検索を行って最も確からしい流量値を決定することができる。
【0062】
各測線Mでの流速値viは、8つの測線Mにおける8つの流速値viのうちでの最大値を基準値として、各測線Mの流速値viを、基準値によって除算することによって、無次元化された数値に変換してデータベースに登録する。このように無次元化される数値は、0.0〜1.0の間の値となる。また、流量値viについても、基準値で除算した数値をデータベースに登録しておく。そして、データベースを検索するためのキーとしては、後述するハッシュ値を予め計算してデータベースに登録しておく。
【0063】
各測線Mでの無次元化値を、求めたい有効数字の桁数よりも1桁分短い数値に変換する。そして、このように変換された8つの数値を並べて結合した数値をハッシュキーとして利用する。一例としては、下記のように行われる。
【0064】
8つの測線Mでの流速値viが、1.000、1.198、1.197、0.998、0.999、1.196、1.199、0.999、であり、このときに算出された流量値が1.123であり、希望する有効桁数が4桁である場合について考える。
【0065】
この場合、実測された流速値viのうちで最大値が1.199であるので、この最大値で各流速値viを除算すると、0.8340、0.9992、0.9983、0.8324、0.8332、0.9975、1.0000、0.8332となる。続いて、3桁になるように端数処理(例えば4桁目を切り捨てる)を行ったとき、0.834、0.999、0.998、0.832、0.833、0.997、1.000、0.833となる。
【0066】
この場合、ハッシュキーは、08340999099808320833099710000833とする。少なくともハッシュキーと、基準値 1.199と、流量値 1.123との3つを、記憶回路8にデータベースとして登録しておき、ハッシュ・インデックスによって高速に引き出せるようにする。上述のようなハッシュキーを採用することで、僅かに流速値や流量値が異なる複数のデータが、同一のハッシュ値を持つことになる。
【0067】
実際に、8つの測線Mを用いて流速を計測した場合、計測誤差などの影響によって、上述と僅かにかけ離れた流速値viが観測される。例えば、0.9998、1.19781、1.1968、0.9978、0.9988、1.1988、0.9988となる。この例の場合、各流速値viは、上述した流速値と僅かに異なっているが、この場合でもハッシュキーが同一となる。このときのハッシュキーを用いて検索したときに、非常に近い流速分布のいくつかの流量値のデータが検索されるが、これらは全て非常に近い流速分布Aや非常に近い流量値のデータであるので、検索された全てのデータの流量値の平均値を最も確からしい流量値とすることができる。このとき、実測された流速値viのうちで最大値が1.998であり、検索された基準値が1.198であり、検索された流量値が1.123であれば、1.123 × 1.1998/1.198 = 約1.124が、有効桁数が4桁である最も確からしい流量値である。
【0068】
なお、上述の説明では、説明を簡素化するために10進数を用いて説明したが、速値viを2進数で用いて、希望する有効桁数や、端数処理を行う桁数を選択することで、より一層細かいデータベースを作ることができる。
【0069】
以上のようなデータライブラリ方式において、7つの測線Mでの流速値viから導き出したハッシュキーについても8種類のハッシュキーをデータベースに登録して検索可能にすることで、8つの測線Mのうちで7つの測線Mのみが正常に計測された場合であっても、8つの測線Mが正常である場合と同様に、確からしい流量値を求めることができる。
【0070】
上述したように、実施形態の超音波流量計1によれば、第1の測線M1から第8の測線M8のうちのいずれかの測線Mが故障した場合に、故障した測線Mでの流速を演算に用いずに除外し、正常な測線Mでの流速と、適切な補正テーブルとを用いて演算を行うことで、測線Mが故障したときであっても、算出される流量の精度が低下することを防ぐことができる。したがって、実施形態の超音波流量計1によれば、故障した測線Mの交換作業が行われるまでの期間であっても、流量の精度を低下させることなく計測を続けて行うことが可能になる。
【0071】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、8つの測線Mのうちの1つの測線Mに異常が生じた場合に、8種類の異常時用の補正テーブルのうちのいずれかの補正テーブルを用いて演算を行うように構成された。本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、上述した実施形態と同様に、2つの測線Mに異常が生じた場合に、8つの測線Mのうちの6つの測線Mでの流速のみを用いて流量値を演算してもよい。
【0072】
6つの測線Mでの流速を用いて演算を行う場合、流量の精度が更に低下しやすくなるので、要求される流量の精度を同程度に確保する場合には、流体の性状を更に限定した条件範囲において重み付け係数を予め求めておくことが必要になる。本実施形態では、故障した測線Mの組み合わせに応じて、異なる重み付け係数を有する複数種類の異常時用の補正テーブルが記憶回路8に記憶されている。
【0073】
したがって、8つの測線Mのうちの2つの測線Mに異常が生じた場合にも、異常が生じた2つの測線Mの組み合わせ毎に、重み付け係数が異なる複数種類の異常時用の補正テーブルを予め用意しておくことで、2つの測線Mが故障した場合であっても、算出される流量の精度が低下することを防ぐことができる。
【0074】
上述と同様に、8つの測線Mのうちの3つの測線Mに異常が生じた場合についても、異常が生じた3つの測線Mの組み合わせ毎に、複数種類の異常時用の補正テーブルを予め用意しておくことで、3つの測線Mが故障した場合にも、流量の精度が低下することを防ぐことができる。
【0075】
このように、異常になった測線Mの個数ごとに異常な測線Mの組み合わせを考慮し、組み合わせ毎に適切な重み付け係数を有する複数種類の異常時用の補正テーブルを予め用意しておくことによって、本発明は、例えば8つの測線Mのうちの4つの測線Mが異常になった場合であっても、流量の精度の低下を抑えることが可能である。
【0076】
なお、上述した実施形態の超音波流量計では、測線を構成する一組の超音波送受波器5が、流路4を挟んで対向する位置に配置されて構成されたが、この構成に限定されるものではなく、超音波を流路の内壁で反射させるように配置された反射型の流量計に本発明が適用されてもよいことは勿論である。
【解決手段】各測線Mでの流速の各々を重み付けるための係数を有する補正テーブルであって、全ての測線Mが正常であるときに用いる正常時用の補正テーブルと、正常時用の補正テーブルとは異なる異常時用の補正テーブルとを含む複数種類の補正テーブルが記憶された記憶回路と、各測線Mにおける流速と、補正テーブルの係数とを乗算した複数の補正値の平均としての平均流速を算出する演算回路と、測線Mにて計測できなかったときに測線Mが異常であると判定すると共に、測線Mでの流速が所定の範囲から外れたときに測線Mが異常であると判定する判定回路と、を備える。判定回路によって測線Mが異常であると判定された場合、演算回路は、異常な測線Mでの流速を演算から除外し、正常な残りの測線Mでの流速と、異常時用の補正テーブルとを用いて算出された平均流速に基づいて、流量を算出する。