(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661918
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】2個の熱ブロックを含むPCR装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20150108BHJP
C12Q 1/68 20060101ALN20150108BHJP
【FI】
C12M1/00 A
!C12Q1/68 A
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-506087(P2013-506087)
(86)(22)【出願日】2011年4月22日
(65)【公表番号】特表2013-524808(P2013-524808A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】KR2011002911
(87)【国際公開番号】WO2011132977
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2012年12月25日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0037352
(32)【優先日】2011年4月21日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2010-0037960
(32)【優先日】2010年4月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512273624
【氏名又は名称】ナノバイオシス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NANOBIOSYS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム・スンウー
(72)【発明者】
【氏名】キム・ダクジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム・スンジン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ・ホースン
(72)【発明者】
【氏名】イー・ドンフン
【審査官】
鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/005001(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/004695(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0053801(US,A1)
【文献】
特開平06−277036(JP,A)
【文献】
特開2010−002353(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0298129(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/68
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された第1熱ブロックと、
前記基板上に、前記第1熱ブロックと離隔配置された第2熱ブロックと、
前記第1熱ブロック及び第2熱ブロック上に駆動手段により、左右及び/または上下の移動が自在であり、PCR用チップが装着されたチップホルダと、
前記第1熱ブロックと第2熱ブロックとの間に配置された光源と、
前記チップホルダよりも上方に配置された、前記光源から放出される光を検出するための光検出部と
を含み、
前記PCR用チップは、第1プレートと、前記第1プレート上に配置され、貫通開口チャンネルを具備する第2プレートと、前記第2プレート上に配置され、前記貫通開口チャンネル上の一領域に形成された貫通開口流入部、及び他の一領域に形成された貫通開口流出部を具備する第3プレートと、を含むことを特徴とするPCR(polymerase chain reaction)装置。
【請求項2】
基板上に配置された第1熱ブロックと、
前記基板上に、前記第1熱ブロックと離隔配置された第2熱ブロックと、
前記第1熱ブロック及び第2熱ブロック上に駆動手段により、左右及び/または上下の移動が自在であり、PCR用チップが装着されたチップホルダと、
前記チップホルダよりも上方に配置された光源と、
前記第1熱ブロックと第2熱ブロックとの間に配置された、前記光源から放出される光を検出するための光検出部と
を含み、
前記PCR用チップは、第1プレートと、前記第1プレート上に配置され、貫通開口チャンネルを具備する第2プレートと、前記第2プレート上に配置され、前記貫通開口チャンネル上の一領域に形成された貫通開口流入部、及び他の一領域に形成された貫通開口流出部を具備する第3プレートと、を含むことを特徴とするPCR(polymerase chain reaction)装置。
【請求項3】
前記第1熱ロック及び第2熱ブロックは、その内部に熱線が配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のPCR装置。
【請求項4】
前記熱線は、前記第1熱ブロック及び第2熱ブロックの内部温度を、全体的に一定に維持するために、各熱ブロック面の中心点を基準に、上下及び/または左右の方向に対称になるように配置されたことを特徴とする請求項3に記載のPCR装置。
【請求項5】
前記第1熱ブロックまたは前記第2熱ブロックは、PCR反応の変性段階温度を維持するように具現されたことを特徴とする請求項1または2に記載のPCR装置。
【請求項6】
前記変性段階温度は、90℃ないし100℃であることを特徴とする請求項5に記載のPCR装置。
【請求項7】
前記第1熱ブロックまたは第2熱ブロックは、PCR反応のアニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階温度を維持するように具現されたことを特徴とする請求項1または2に記載のPCR装置。
【請求項8】
前記アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階温度は、55℃ないし75℃であることを特徴とする請求項7に記載のPCR装置。
【請求項9】
前記第1熱ブロックと第2熱ブロックは、相互熱交換が起きないように既定の距離ほど離隔配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のPCR装置。
【請求項10】
前記駆動手段は、左右方向に延長されたレール、及び前記レールを介して左右方向に摺動自在に配置され、上下方向に摺動自在な連結部材を含み、前記連結部材の一末端には、前記チップホルダが配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のPCR装置。
【請求項11】
前記PCR用チップは、前記チップホルダに着脱自在であることを特徴とする請求項1または2に記載のPCR装置。
【請求項12】
前記PCR用チップは、前記第1熱ブロックまたは第2熱ブロックの一面に接触され、増幅する核酸を含むサンプル溶液を収容するように具現されたことを特徴とする請求項11に記載のPCR装置。
【請求項13】
前記PCR用チップは、透光性プラスチック材質であることを特徴とする請求項1または2に記載のPCR装置。
【請求項14】
前記第1プレート及び第3プレートは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエーテルスルホン(PES)及びポリエチレンテレフタレート(PET)、並びにその化合物で構成された群から選択される材質を含み、前記第2プレートは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリスチレン(PS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、及びその化合物で構成された群から選択される熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂材質を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のPCR装置。
【請求項15】
前記第3プレートの貫通開口流入部は、直径1.0mmないし3.0mmで選択され、前記貫通開口流出部は、直径1.0mmないし1.5mmで選択され、前記第3プレートの厚みは、0.1mmないし2mmで選択され、前記第2プレートの厚みは、100μmないし200μmで選択され、前記貫通開口チャンネルの幅は、0.5mmないし3mmで選択され、前記貫通開口チャンネル長は、20mmないし40mmで選択されることを特徴とする請求項1または2に記載のPCR装置。
【請求項16】
前記光検出部は、前記駆動手段よりも上方に配置され、前記駆動手段は、前記光源から放出される光を通過させるための貫通部が配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のPCR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸増幅反応に使われる熱ブロック(heating block)を含むPCR(polymerase chain reaction)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重合酵素連鎖反応、すなわち、PCR(polymerase chain reaction)は、核酸を含むサンプル溶液を反復して加熱及び冷却し、前記核酸の特定塩基配列を有する部位を連鎖的にコピーし、その特定塩基配列部位を有する核酸を幾何級数的に増幅する技術であり、生命科学、遺伝工学及び医療分野などで、分析及び診断の目的に広く使われている。
【0003】
最近、前記PCRを遂行するためのPCR装置が多様に開発されている。一例によるPCR装置は、1つの反応チャンバに核酸を含むサンプル溶液を含む容器を装着し、前記容器を反復して加熱及び冷却してPCR反応を遂行する。しかし、前記一例によるPCR装置は、1つの反応チャンバを具備するから、全体構造が複雑ではないが、正確な温度制御のための複雑な回路を具備しなければならず、1つの反応チャンバに対する反復的な加熱及び冷却によって、全体PCR反応の全体時間が長くなってしまう。また、他の一例によるPCR装置は、PCR反応のための温度を有する複数個の反応チャンバを装着し、それら反応チャンバを通過する1つのチャンネルを介して、核酸を含むサンプル溶液を流してPCR反応を遂行する。しかし、前記他の一例によるPCR装置は、複数個の反応チャンバを利用するから、正確な温度制御のための複雑な回路は要求されないが、高温及び低温の反応チャンバを通過するための長い流路が必ず必要であるので、全体構造が複雑になってしまい、前記反応チャンバを通過するチャンネルに流れる核酸を含むサンプル溶液の流速を制御するための別途の制御装置が要求される。
【0004】
従って、全体構造が単純であり、全体PCR反応時間を最小化するだけでなく、信頼し得るPCR反応収率を得ることができるPCR装置の必要性が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、核酸増幅反応で、卓越な性能を発揮することができるPCR装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一具体例は、基板上に配置された第1熱ブロックと、前記基板上に、前記第1熱ブロックと離隔配置された第2熱ブロックと、前記第1熱ブロック及び第2熱ブロックの上に、駆動手段によって、左右及び/または上下移動自在であり、PCR(polymerase chain reaction)用チップが装着されたチップホルダを含むPCR装置を提供する。
【0007】
本発明の一具体例によれば、前記第1熱ブロック及び第2熱ブロックは、その内部に熱線が配置されてもよい。
【0008】
本発明の一具体例によれば、前記熱線は、前記第1熱ブロック及び第2熱ブロックの内部温度を、全体的に一定に維持するために、各熱ブロック面の中心点を基準に、上下及び/または左右の方向に対称になるように配置されてもよい。
【0009】
本発明の一具体例によれば、前記第1熱ブロックまたは前記第2熱ブロックは、PCR反応の変性段階温度を維持するように具現されてもよい。
【0010】
本発明の一具体例によれば、前記変性段階温度は、90℃ないし100℃であってもよい。
【0011】
本発明の一具体例によれば、前記第1熱ブロックまたは第2熱ブロックは、PCR反応のアニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階温度を維持するように具現されてもよい。
【0012】
本発明の一具体例によれば、前記アニーリング及び延長(あるいは増幅)段階温度は、55℃ないし75℃であってもよい。
【0013】
本発明の一具体例によれば、前記第1熱ブロックと第2熱ブロックは、相互入れ替えが可能である。
【0014】
本発明の一具体例によれば、前記第1熱ブロックと第2熱ブロックは、相互熱交換が起きないように既定の距離ほど離隔配置されてもよい。
【0015】
本発明の一具体例によれば、前記駆動手段は、左右方向に延長されたレール、及び前記レールを介して左右方向に摺動自在に配置され、上下方向に摺動自在な連結部材を含み、前記連結部材の一末端は、前記チップホルダが配置されてもよい。
【0016】
本発明の一具体例によれば、前記PCR用チップは、前記チップホルダに着脱自在なものであってもよい。
【0017】
本発明の一具体例によれば、前記PCR用チップは、前記第1熱ブロックまたは第2熱ブロックの一面に接触され、増幅する核酸を含むサンプル溶液を収容するように具現されてもよい。
【0018】
本発明の一具体例によれば、前記PCR用チップは、透光性プラスチック材質であってもよい。
【0019】
本発明の一具体例によれば、前記PCR用チップは、第1プレートと、前記第1プレート上に配置され、貫通開口チャンネルを具備する第2プレートと、前記第2プレート上に配置され、前記貫通開口チャンネル上の一領域に形成された貫通開口流入部、及び他の一領域に形成された貫通開口流出部を具備する第3プレートと、を含んでもよい。
【0020】
本発明の一具体例によれば、前記第1プレート及び第3プレートは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエーテルスルホン(PES)及びポリエチレンテレフタレート(PET)、並びにその化合物で構成された群から選択される材質を含み、前記第2プレートは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリスチレン(PS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、及びその化合物で構成された群から選択される熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂材質を含んでもよい。
【0021】
本発明の一具体例によれば、前記第3プレートの貫通開口流入部は、直径1.0mmないし3.0mmで選択され、前記貫通開口流出部は、直径1.0mmないし1.5mmで選択され、前記第3プレートの厚みは、0.1mmないし2mmで選択され、前記第2プレートの厚みは、100μμmないし200μmで選択され、前記貫通開口チャンネルの幅は、0.5mmないし3mmで選択され、前記貫通開口チャンネル長は、20mmないし40mmで選択されてもよい。
【0022】
本発明の一具体例によれば、前記第1熱ブロックと第2熱ブロックとの間に光源がさらに配置され、前記チップホルダ
よりも上
方に、前記光源から放出される光を検出するための光検出部がさらに配置されるか、あるいは前記第1熱ブロックと第2熱ブロックとの間に光源から放出される光を検出するための光検出部がさらに配置され、前記チップホルダ
よりも上
方に光源がさらに配置されてもよい。
【0023】
本発明の一具体例によれば、前記光検出部は、前記駆動手段
よりも上
方に配置され、前記駆動手段は、前記光源から放出される光を通過させるための貫通部が配置されてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明による2個の熱ブロックを含むPCR装置を提供することにより、核酸増幅反応を効率的に遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態による2個の熱ブロックを含むPCR装置を図示する図面である。
【
図2】本発明の一実施形態によるPCR装置のチップホルダの移動による核酸増幅反応の各段階を図示する図面である。
【
図3】本発明の一実施形態によるPCR装置を利用し、リアルタイムで核酸増幅反応を観察する段階を図示する図面である。
【
図4】本発明の一実施形態によるPCR装置のチップホルダに装着されるPCR用チップを図示する図面である。
【
図5】両面接着剤、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が処理された本発明の一実施形態によるPCR装置のチップホルダに装着されるPCR用チップの断面を図示する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による2個の熱ブロックを含むPCR(polymerase chain reaction)装置を図示している。
【0027】
本発明の一実施形態によるPCR装置1は、基板400上に配置された第1熱ブロック100と、前記基板400上に、前記第1熱ブロック100と離隔配置された第2熱ブロック200と、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200の上に、駆動手段500によって、左右及び/または上下の移動が自在であり、PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300と、を含む。
【0028】
前記PCR装置1は、特定塩基配列を有する核酸を増幅するPCRに使うための装置である。例えば、特定塩基配列を有するDNA(deoxyribonucleic acid)を増幅するためのPCR装置は、二重鎖のDNAを含むサンプル溶液を特定温度、例えば、約95℃に加熱し、前記二重鎖のDNAを、単一鎖のDNAに分離する変性段階(denaturing step)、前記サンプル溶液に、増幅する特定塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド(oligonucleotide)プライマーを提供し、前記分離した単一鎖のDNAと共に、特定温度、例えば、55℃に冷却し、前記単一鎖のDNAの特定塩基配列に、前記プライマーを結合させて部分的なDNA・プライマー複合体を形成するアニーリング段階(annealing step)、及び前記アニーリング段階後、前記サンプル溶液を適正温度、例えば、72℃に維持し、DNA重合酵素(polymerase)によって、前記部分的なDNA・プライマー複合体のプライマーを基に、二重鎖のDNAを形成する延長(あるいは、増幅)段階(extension step)を遂行し、前記3段階を、例えば、20回ないし40回で反復することにより、前記特定塩基配列を有するDNAを幾何級数的に増幅することができる。また、場合によって、PCR装置は、前記アニーリング段階と前記延長(あるいは、増幅)段階とを同時に遂行することができ、その場合、PCR装置は、前記延長段階と、前記アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階とで構成された2段階を遂行することにより、第1循環を完成することもできる。従って、本発明の一具体例によるPCR装置1は、前記段階を遂行するためのモジュールを含む装置をいい、本明細書に記載していない細部のモジュールは、PCRを遂行するための従来技術において、開示されて自明である範囲でいずれも具備していることを前提にする。
【0029】
本発明の一実施形態によるPCR装置1は、基板400上に配置された第1熱ブロック100、及び前記基板400上に、前記第1熱ブロック100と離隔配置された第2熱ブロック200を含む。
【0030】
前記基板400は、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200の加熱及び温度維持によって、その物理的及び/または化学的な性質が変わらず、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200間で、相互熱交換を起こさせない材質を有するすべての物質を含む。例えば、前記基板400は、プラスチックなどの材質を含むか、あるいはかような材質で構成されてもよい。
【0031】
前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200は、核酸を増幅するための変性段階、アニーリング段階及び延長(あるいは、増幅)段階を遂行するための温度を維持するためのものである。従って、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200は、前記各段階に要求される必要な温度を提供し、これを維持するための多様なモジュールを含むか、あるいはかようなモジュールと駆動自在に連結される。従って、前記PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300が、前記各第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200の一面に接触される場合、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200は、前記PCR用チップ900との接触面を全体的に加熱及び温度維持を行うことができて、PCR用チップ900内のサンプル溶液を、均一に加熱及び温度維持することができる。従来、単一熱ブロックを使うPCR装置は、前記単一熱ブロックでの温度変化率が、秒当たり3ないし7℃範囲内で行われるのに比べ、本発明の一実施形態による2個の熱ブロックを含むPCR装置1は、それぞれの第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200での温度変化率が、秒当たり20ないし40℃範囲内で行われ、PCR反応時間を大きく縮めることができる。
【0032】
前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200は、その内部に熱線(図示せず)が配置されてもよい。前記熱線は、前記変性段階、アニーリング段階及び延長(あるいは、増幅)段階を遂行するための温度を維持するように、多様な熱源と駆動自在に連結され、前記熱線の温度をモニタリングするための多様な温度センサと駆動自在に連結される。前記熱線は、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200の内部温度を、全体的に一定に維持するために、それぞれの第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200の面の中心点を基準に、上下及び/または左右の方向に対称になるように配置されてもよい。前記上下及び/または左右の方向に対称になった熱線の配置は、多様である。また、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200は、その内部に薄膜ヒータ(thin film heater)(図示せず)が配置されもする。前記薄膜ヒータは、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200の内部温度を、全体的に一定に維持するために、それぞれの第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200の面の中心点を基準に、上下及び/または左右の方向に、一定間隔で離隔配置されもする。前記上下及び/または左右の方向に一定した薄膜ヒータの配置は、多様である。
【0033】
前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200は、同一の面積に対する均等な熱分布及び迅速な熱伝達のために、金属材質、例えば、アルミニウム材質を含むか、あるいはアルミニウム材質で構成されもする。
【0034】
前記第1熱ブロック100は、前記変性段階、またはアニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階を遂行するための適正温度を維持するように具現されもする。例えば、本発明の一実施形態によるPCR装置1の第1熱ブロック100は、50℃ないし100℃を維持することができ、望ましくは、前記第1熱ブロックで前記変性段階を遂行する場合90℃ないし100℃を維持することができ、望ましくは、95℃を維持することができ、前記第1熱ブロックで、前記アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階を遂行する場合には、55℃ないし75℃を維持することができ、望ましくは、72℃を維持することができる。ただし、前記変性段階、またはアニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階を遂行することができる温度であるならば、それに制限されるものではない。前記第2熱ブロック200は、前記変性段階、またはアニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階を遂行するための適正温度を維持するように具現されもする。例えば、本発明の一実施形態によるPCR装置1の第2熱ブロック200は、前記第2熱ブロックで、前記変性段階を遂行する場合、90℃ないし100℃を維持することができ、望ましくは、95℃を維持することができ、前記第2熱ブロックで、前記アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階を遂行する場合には、55℃ないし75℃を維持することができ、望ましくは、72℃を維持することができる。ただし、前記変性段階、またはアニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階を遂行することができる温度であるならば、それらに制限されるものではない。従って、本発明の一実施形態によれば、前記第1熱ブロック100は、PCR反応の変性段階温度(denaturing temperature)を維持することができ、変性段階温度が90℃より低ければ、PCR反応のテンプレートになる核酸の変性が起きて効率が落ち、PCR反応効率が落ちるか、あるいは反応が起きないこともあり、変性段階温度が100℃より高くなれば、PCR反応に利用される酵素が活性を失うことになるので、前記変性段階温度は、90℃ないし100℃であり、望ましくは、95℃である。また、本発明の一実施形態によれば、前記第2熱ブロック200は、PCR反応のアニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階温度(annealing/extension temperature)を維持することができる。アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階温度が55℃より低ければ、PCR反応産物の特異性(specificity)が落ち、アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階温度が74℃より高ければ、プライマーによる延長が起きないこともあるから、PCR反応効率が落ちることになるので、前記アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階温度は、55℃ないし75℃であり、望ましくは、72℃である。
【0035】
前記第1熱ブロック100と第2熱ブロック200は、相互熱交換が起きないように、既定の距離ほど離隔配置されもする。これにより、前記第1熱ブロック100と、第2熱ブロック200との間で熱交換が起きないから、微細な温度変化によっても、重大な影響を受けることがある核酸増幅反応において、前記変性段階と前記アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階との正確な温度制御が可能である。
【0036】
本発明の一実施形態によるPCR装置1は、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200上に、駆動手段500によって、左右及び/または上下の移動が自在であり、PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300を含む。また、前記PCR用チップ900は、前記第1熱ブロック100または第2熱ブロック200の一面に接触され、増幅する核酸を含むサンプル溶液を収容するように具現されもする。
【0037】
前記PCR用チップ900は、核酸、例えば、二重鎖DNA、増幅する特定塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド・プライマー、DNA重合酵素、三リン酸化デオキシリボヌクレオチド(dNTP:deoxyribonucleotide triphosphates)、PCR反応緩衝液(PCR reaction buffer)を含むサンプル溶液を含んでもよい。前記PCR用チップ900は、前記サンプル溶液を取り入れるための流入部(図示せず)、核酸増幅反応を完了したサンプル溶液を排出するための流出部(図示せず)、及び前記サンプル溶液の核酸増幅反応が遂行される反応チャンバ(または、チャンネル)(図示せず)を含んでもよい。前記PCR用チップ900が、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200に接触する場合、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200の熱は、前記PCR用チップ900に伝達され、前記PCR用チップ900の反応チャンバ(または、チャンネル)に含まれたサンプル溶液は、加熱及び温度維持されもする。また、前記PCR用チップ900は、全体的に平面形状を有することができるが、これに制限されるものではない。また、前記PCR用チップ900の外壁は、前記PCR装置1によって、核酸増幅反応が遂行される場合、前記PCR用チップ900が、前記チップホルダ300から離脱しないように、前記チップホルダ300の内部空間に固定装着されるための形状及び構造を有することができる。前記PCR用チップ900の詳細な事項は、以下、
図4及び
図5で説明する。
【0038】
前記チップホルダ300は、PCR用チップ900が、前記PCR装置1に装着されるモジュールである。前記チップホルダ300の内壁は、前記PCR装置1によって、核酸増幅反応が遂行される場合、前記PCR用チップ900が、前記チップホルダ300から離脱しないように、前記PCR用チップ900の外壁と固定装着されるための形状及び構造を有することができる。前記チップホルダ300は、前記駆動手段500に駆動自在に連結される。また、前記PCR用チップ900は、前記チップホルダ300に着脱自在である。
【0039】
前記駆動手段500は、前記PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300を、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200に上に、左右及び/または上下の移動を自在にするすべての手段を含む。前記駆動手段500の左右移動により、前記PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300は、前記第1熱ブロック100と、第2熱ブロック200との間で往復動が自在であり、前記駆動手段500の上下移動により、前記PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300は、前記第1熱ブロック100と、第2熱ブロック200とに接触及び分離することができる。
図1に図示された本発明の一実施形態によるPCR装置1の駆動手段500は、左右方向に延長されたレール510、及び前記レール510を介して、左右方向に摺動自在に配置され、上下方向に摺動自在な連結部材520を含み、前記連結部材520の一末端には、前記チップホルダが配置される。前記駆動手段500の左右及び/または上下の移動は、前記PCR装置1の内部または外部に駆動自在に配置された制御手段(図示せず)によって制御されもし、前記制御手段は、PCRの変性段階、並びにアニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階のための前記PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300と、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200との接触及び分離を制御することができる。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態によるPCR装置のチップホルダの移動による核酸増幅反応の各段階を図示している。
【0041】
本発明によるPCR装置による核酸増幅反応は、下記段階による。まず、前記PCR用チップ900に、核酸、例えば、二重鎖DNA、増幅する特定塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド・プライマー、DNA重合酵素、三リン酸化デオキシリボヌクレオチド(dNTP)、PCR反応緩衝液を含むサンプル溶液を導入し、前記PCR用チップ900を、前記チップホルダ300に装着する段階を遂行する。その後、またはそれと同時に、前記第1熱ブロック100を、変性段階のための温度、例えば、90℃ないし100℃に加熱及び維持し、望ましくは、95℃に加熱及び維持する段階を遂行する。前記第2熱ブロック200を、アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階のための温度、例えば、55℃ないし75℃に加熱及び維持し、望ましくは、72℃に加熱及び維持する段階を遂行する。
【0042】
その後、前記駆動手段500の連結部材520を制御し、前記PCR用チップ900を下向き移動させ、前記PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300を、前記第1熱ブロック100に接触させ、PCRの第1変性段階を遂行する(x段階)。
【0043】
その後、前記駆動手段500の連結部材520を制御し、前記PCR用チップ900を上向き移動させ、前記PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300を、前記第1熱ブロック100から分離させてPCRの第1変性段階を終了し、前記駆動手段500の連結部材520を制御し、前記PCR用チップ900を第2熱ブロック200の上に移動させる段階を遂行する(y段階)。
【0044】
その後、前記駆動手段500の連結部材520を制御し、前記PCR用チップ900を下向き移動させ、前記PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300を、前記第2熱ブロック100に接触させ、PCRの第1アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階を遂行する(z段階)。
【0045】
最後に、前記駆動手段500の連結部材520を制御し、前記PCR用チップ900を上向き移動させ、前記PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300を、前記第2熱ブロック100から分離させ、PCRの第1アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階を終了し、前記駆動手段500の連結部材520を制御し、前記PCR用チップ900を、第1熱ブロック200の上に移動させた後、前記x,y,z段階を反復することにより、核酸増幅反応を遂行する(循環段階)。
【0046】
図3は、本発明の一実施形態によるPCR装置を利用し、リアルタイムで核酸増幅反応を観察する段階を図示している。
【0047】
本発明の一実施形態によるPCR装置1は、前記第1熱ブロック100と、第2熱ブロック200との間に光源700がさらに配置され、前記チップホルダ300
よりも上
方に、前記光源700から放出される光を検出するための光検出部800がさらに配置されるか、あるいは前記第1熱ブロック100と、第2熱ブロック200との間に、光源700から放出される光を検出するための光検出部800がさらに配置され、前記チップホルダ300
よりも上
方に、光源700がさらに配置されもする。また、前記光検出部800は、前記駆動手段500
よりも上
方に配置され、前記駆動手段900は、前記光源700から放出される光を通過させるための貫通部530が配置されもする。また、前記PCR用チップ900は、透光性材質、具体的には、透光性プラスチック材質であってもよい。前記PCR用チップ900の詳細な事項は、以下、
図4及び
図5で説明する。
【0048】
前記光源700及び光検出部800の配置により、本発明の一実施形態によるPCR装置1による核酸増幅の反応時、前記PCR用チップ900内で、核酸が増幅される程度をリアルタイムで検出する。前記PCR用チップ900内で、核酸が増幅される程度を検出するためには、前記PCR用チップ900に導入するサンプル溶液に、別途の蛍光物質をさらに添加することができる。前記光源700は、前記第1熱ブロック100と、第2熱ブロック200との間の離隔された空間に、できる限り広く分布するように配置され、できる限り同一の光を放出するように配置される。前記光源700は、前記光源700から放出される光を捕集するレンズ(図示せず)、及び特定波長台の光を濾過する光フィルタ(図示せず)と駆動自在に連結配置されもする。
【0049】
本発明の一実施形態によるPCR装置1による核酸増幅反応時、前記PCR用チップ900内で、核酸が増幅される程度をリアルタイムで検出する段階は、下記段階による。
前記PCRの第1変性段階の終了後、前記駆動手段500の連結部材520を制御し、前記PCR用チップ900を、第1熱ブロック100の上から、第2熱ブロック200の上に移動させるか、あるいは前記PCRの第1アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階の終了後、前記駆動手段500の連結部材520を制御し、前記PCR用チップ900を、第2熱ブロック200の上から、第1熱ブロック100の上に移動させる場合、前記PCR用チップ900が装着されたチップホルダ300を、前記駆動手段500の連結部材520を制御し、前記第1熱ブロック100と、第2熱ブロック200との間の離隔された空間上に停止させる段階を遂行する。その後、前記光源700から光を放出させ、前記放出された光は、前記透光性のPCR用チップ900、具体的には、前記PCR用チップ900の反応チャンバ(または、チャンネル)を通過し、その場合、前記反応チャンバ(または、チャンネル)内の核酸の増幅によって発生する光信号を、前記光検出部800が検出する。その場合、前記透光性のPCR用チップ900を通過した光は、前記駆動手段500、具体的には、前記レール510に配置された貫通部530を通過し、前記光検出部800に逹することができる。
【0050】
従って、本発明の一実施形態によるPCR装置1によれば、前記PCR反応の各循環段階が進められる間、前記反応チャンバ(または、チャンネル)内で、(蛍光物質が結合された)核酸の増幅による反応結果を、リアルタイムでモニタリングすることにより、初期反応サンプルに含まれている標的核酸の量を、リアルタイムで測定及び分析することができる。
【0051】
図4は、本発明の一実施形態によるPCR装置のチップホルダに装着されるPCR用チップを図示している。
【0052】
前記PCR用チップ900は、核酸、例えば、二重鎖DNA、増幅する特定塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド・プライマー、DNA重合酵素、三リン酸化デオキシリボヌクレオチド(dNTP)、PCR反応緩衝液を含むサンプル溶液を含んでもよい。前記PCR用チップ900は、前記サンプル溶液を導入するための流入部931、核酸増幅反応を完了したサンプル溶液を排出するための流出部932、及び増幅する核酸を含むサンプル溶液が収容された一つ以上のPCR反応チャンバ(または、チャンネル)921を含んでもよい。前記PCR用チップ900が、前記第1熱ブロック100または第2熱ブロック200に接触する場合、前記第1熱ブロック100並びに第2熱ブロック200の熱は、前記PCR用チップ900に伝達され、前記PCR用チップ900のPCR反応チャンバ(または、チャンネル)921に含まれたサンプル溶液は、加熱されるか冷却され、一定温度が維持されもする。また、前記PCR用チップ900は、全体的に平面形状を有することができるが、これに制限されるものではない。また、前記PCR用チップ900は、前記チップホルダ300に装着された状態で、前記第1熱ブロック100または第2熱ブロック200に接触配置されもする。従って、本発明の一実施形態において、前記PCR用チップ900が、前記第1熱ブロック100または第2熱ブロック200の一面に配置されるということは、前記PCR用チップ900が、前記チップホルダ300に装着された状態で、前記第1熱ブロック100または第2熱ブロック200に接触配置されることを含む。また、前記PCR用チップ900は、透光性材質で具現されもし、望ましくは、透光性プラスチック材質を含む。前記PCR用チップ900は、プラスチック材質を使い、プラスチック厚の調節だけで、熱伝達効率を上昇させることができ、製作工程が単純であって、製造コストを節減することができる。また、前記PCR用チップ900は、全体的に光透過性の性質を具備することができるから、前記第1熱ブロック100または第2熱ブロック200の一面に配置された状態で、直接に光の照射が可能であり、リアルタイムで核酸増幅いかん及び増幅程度を測定及び分析することができる。
【0053】
第1プレート910は、第2プレート920上に配置される。前記第1プレート910が、前記第2プレート920の下部面に接着配置されることにより、前記貫通開口チャンネル921は、一種のPCR反応チャンバを形成する。また、前記第1プレート910は、多様な材質で具現されもするが、望ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエーテルスルホン(PES)及びポリエチレンテレフタレート(PET)、並びにその化合物で構成された群から選択される材質であってもよい。また、前記第1プレート910の上端面は、親水性物質922が処理され、PCRを円滑に遂行することができる。前記親水性物質922の処理によって、前記第1プレート910上に、親水性物質922を含む単一層が形成されもする。前記親水性物質は、多様な物質であってもよいが、望ましくは、カルボン酸基(−COOH)、アミン基(−NH2)、ヒドロキシル基(−OH)及びスルホン基(−SH)で構成された群から選択されるものであり、前記親水性物質の処理は、当業界に公知された方法によって遂行することができる。
【0054】
前記第2プレート920は、前記第1プレート910上に配置される。前記第2プレート920は、貫通開口チャンネル921を含む。前記貫通開口チャンネル921は、第3プレート930に形成された、貫通開口流入部931と、貫通開口流出部932とに対応される部分と連結され、一種のPCR反応チャンバを形成する。従って、前記貫通開口チャンネル921に、増幅するサンプル溶液が導入された後、PCR反応が進められる。また、前記貫通開口チャンネル921は、本発明の一実施形態によるPCR装置1の使用目的及び範囲によって、2以上存在することができ、
図4によれば、6個の貫通開口チャンネル921が例示されている。また、前記第2プレート920は、多様な材質で具現されもするが、望ましくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリスチレン(PS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、及びその化合物で構成された群から選択される熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂材質であってもよい。また、前記第2プレート920の厚みは、多様であるが、100μmないし200μmで選択されもする。また、前記貫通開口チャンネル921の幅と長さは、多様であるが、望ましくは、前記貫通開口チャンネル921の幅は、0.5mmないし3mmで選択され、前記貫通開口チャンネル921の長さは、20mmないし40mmで選択されもする。また、前記第2プレート920の内壁は、DNA・タンパク質(protein)吸着を防止するために、シラン(silane)系、BSA(bovine serum albumin)などの物質でコーティングすることができ、前記物質の処理は、当業界に公知された方法によって遂行されもする。
【0055】
前記第3プレート930は、前記第2プレート920上に配置される。前記第3プレート930は、前記第2プレート920に形成された貫通開口チャンネル921上の一領域に形成された貫通開口流入部931、及び他の一領域に形成された貫通開口流出部932を具備する。前記貫通開口流入部931は、増幅する核酸を含むサンプル溶液が流入される部分である。前記貫通開口流出部932は、PCR反応が終わった後、前記サンプル溶液932が流出される部分である。従って、前記第3プレート930は、下記の第2プレート920に形成された貫通開口チャンネル921をカバーするが、前記貫通開口流入部931及び貫通開口流出部932は、前記貫通開口チャンネル921の流入部及び流出部の役目を行うことになる。また、前記第3プレート930は、多様な材質で具現されもするが、望ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエーテルスルホン(PES)及びポリエチレンテレフタレート(PET)、並びにその化合物で構成された群から選択される材質であってもよい。また、前記貫通開口流入部931は、多様な大きさを具備することができるが、望ましくは、直径1.0mmないし3.0mmで選択されもする。また、前記貫通開口流出部932は、多様な大きさを具備することができるが、望ましくは、直径1.0mmないし1.5mmで選択されもする。また、前記貫通開口流入部931及び貫通開口流出部932は、別途のカバー手段(図示せず)を具備し、前記貫通開口チャンネル921内で、サンプル溶液に対するPCR反応が進められるとき、サンプル溶液漏れを防止することができる。前記カバー手段は、多様な形状、大きさまたは材質でもって具現されもする。また、前記第3プレートの厚みは、多様なものであるが、望ましくは、0.1mmないし2.0mmで選択されもする。また、前記貫通開口流入部931及び貫通開口流出部932は、2以上存在することができる。
【0056】
図5は、両面接着剤、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が処理された本発明の一実施形態によるPCR装置のチップホルダに装着されるPCR用チップの断面を図示している。
【0057】
前記PCR用チップ900は、機械的加工を介して、貫通開口流入部931及び貫通開口流出部932を形成し、第3プレート930を提供する段階と、前記第3プレート930の下部面と対応する大きさを有するプレート材に、前記第3プレート930の貫通開口流入部931と対応する部分から、前記第3プレート930の貫通開口流出部932に対応する部分まで、機械的加工を介して、貫通開口チャンネル921を形成し、第2プレート920を提供する段階と、前記第2プレート920の下部面と対応する大きさを有するプレート材の上部面に、表面処理加工を介して、親水性物質922で具現された表面を形成し、第1プレート910を提供する段階と、前記第3プレート930の下部面を、前記第2プレート920の上部面に、接合工程を介して接合し、前記第2プレート920の下部面を、前記第1プレート910の上部面に、接合工程を介して接合する段階と、を含む方法によって容易に製造されもする。
【0058】
前記第3プレート930の貫通開口流入部931及び貫通開口流出部932、及び前記第2プレート920の貫通開口チャンネル921は、射出成形、ホット・エンボシング(hot−embossing)、キャスティング(casting)及びレーザ・アブレーション(laser ablation)で構成された群から選択される加工方法によって形成されもする。また、前記第1プレート910表面の親水性物質922は、酸素及びアルゴンプラズマ処理、コロナ放電処理及び界面活性剤塗布から構成された群から選択される方法によって処理されもし、当業界に公知された方法によって遂行されもする。また、前記第3プレート930の下部面及び前記第2プレート920の上部面、並びに前記第2プレート920の下部面及び前記第1プレート910の上部面は、熱接合、超音波融着、溶媒接合の工程によって接着されもし、当業界に公知された方法によって遂行されもする。前記第3プレート930と第2プレート920との間、及び前記第2プレート920と第3プレート910との間には、両面接着剤、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂500が処理されもする。
【実施例】
【0059】
現在商用化された他社のPCR装置と、
図3に図示された本発明の一実施形態によるPCR装置とをそれぞれ使い、核酸増幅反応を遂行した結果を比較分析した。他社PCR装置は、単一熱ブロックで構成されたロッシュ(ROCHE)社のライトサイクラ1.5(LightCycler 1.5)を使った。
【0060】
核酸増幅反応の結果の信頼性のために、陽性対照群(positive control)のサンプル溶液、及び陰性対照群(negative control)のサンプル溶液をそれぞれ準備した。前記陽性対照群として、2X SYBRグリーンバッファ(green buffer)30μl、二重鎖テンプレートcDNA(template cDNA)4.4μl(50ng/20μl)、特定塩基配列に相補的に結合するプライマー対、具体的には、フォワードプライマー(forward primer;6μl、1pmole)、リバースプライマー(reverse primer;6μl、1pmole)及び蒸溜水(distill water;13.6μl)を含む約60μlのサンプル溶液を準備し、前記陰性対照群として、2X SYBRグリーンバッファ(green buffer)30μl及び蒸溜水(distill water;30μl)を含む約60μlのサンプル溶液を準備した。前記他社PCR装置と、本発明の一実施形態によるPCR装置との規格及び大きさの差を考慮し、他社PCR装置に装着されるPCR用チップには、約30μlのサンプル溶液を導入し、本発明の一実施形態によるPCR装置に装着されるPCR用チップには、約5μlのサンプル溶液を導入した。
【0061】
前記実験条件を前提に、まず、本発明の一実施形態によるPCR装置を利用し、20循環(cycle)のPCR反応を行った。第1熱ブロックを95℃、すなわち、許容温度範囲は、90℃ないし100℃に加熱及び温度維持し、第2熱ブロックを72℃、すなわち、許容温度範囲は、55℃ないし75℃に加熱及び温度維持した。前記陽性対照群及び陰性対照群のサンプル溶液を、PCR用チップに導入し、前記PCR装置のチップホルダに装着した。その後、前記PCR装置を駆動させた。約10秒間変性段階を遂行し、連続して10秒間アニーリング及び延長(あるいは、増幅)段階を遂行し、それぞれの1循環段階ごとに、核酸増幅による蛍光検出値を測定した。その結果、前記PCR装置の駆動時点から5分が経過して蛍光検出値が上昇維持曲線を示した。
【0062】
また、前記実験条件を前提に、前記他社PCR装置を利用し、20循環のPCR反応を遂行した。その結果、本発明の一実施形態によるPCR装置を利用した核酸増幅反応と同一の蛍光検出値に逹する時間が、30分以上かかった。