特許第5661920号(P5661920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661920
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】撮像装置および撮像方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   A61B6/00 300G
   A61B6/00 320Z
   A61B6/00 300R
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-508564(P2013-508564)
(86)(22)【出願日】2010年5月6日
(65)【公表番号】特表2013-525053(P2013-525053A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】IB2010001806
(87)【国際公開番号】WO2011138632
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2013年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】512098418
【氏名又は名称】イーオーエス イメージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】デソーテ、 パスカル
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−280659(JP,A)
【文献】 特開平05−161639(JP,A)
【文献】 特開平02−007036(JP,A)
【文献】 特開昭62−129034(JP,A)
【文献】 特表2006−527434(JP,A)
【文献】 特表2002−537932(JP,A)
【文献】 特開平09−262233(JP,A)
【文献】 特開平02−238448(JP,A)
【文献】 特開2008−173233(JP,A)
【文献】 特開2009−005922(JP,A)
【文献】 特表2003−503095(JP,A)
【文献】 特開平04−312449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射方向を含む照射面においてX線を放射するように適合された放射デバイス(5)と、
X線を検出するように適合された検出デバイス(6)と、
前記放射デバイスと検出デバイスとの間に画定され、撮像される患者を受容するように適合された患者用空間(4)と、
前記患者用空間と前記検出デバイスとの間に配置され、X線が透過する検出器側スリット(21)が形成されているX線吸収プレートを有する検出器側コリメータ(19)と、
前記照射面に垂直な変位軸(Z)に沿って、前記放射デバイスと検出デバイスと検出器側コリメータとを患者に対して相対的に移動させるように適合された駆動デバイス(7)であって、前記検出器側スリットが前記変位軸()に沿う少なくとも1つの寸法(dh)を有している、駆動デバイス(7)と、
複数の取得物を得るように、前記放射デバイスと検出デバイスとを前記移動中に動作させるように適合され、その取得物のそれぞれは同一入射方向に沿って得られるものであってかつ前記変位軸に沿った別々の位置の1つにある、制御デバイス(17)と、
を備える撮像装置において、
前記検出器側スリットの寸法(dh)を修正するように適合された設定デバイス(29)を備えていることを特徴とし、
前記制御デバイス(17)は、患者に関連したパラメータを入力として少なくとも受信するとともに、設定デバイス(29)によって設定される前記寸法を、該パラメータおよびデータベースに基づいて決定するように適合された、処理デバイスを有している、
撮像装置。
【請求項2】
さらに、前記放射デバイスと前記患者用空間との間に配置された患者側コリメータ(15)を備え、
該患者側コリメータは、X線が透過する患者側スリット(18)が形成されたX線吸収プレートを有し、この患者側スリットは、前記変位軸に沿う少なくとも1つの寸法(ph)を有して前記照射面を画定するものであり、
前記駆動デバイス(7)がさらに、前記変位軸()に沿って前記患者側コリメータを前記患者に対して相対的に移動させるように適合されている、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記設定デバイス(29)が、患者側コリメータ(15)の前記患者側スリットの少なくとも前記寸法を修正するように適合されている、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
少なくとも1つのスリットが、前記変位軸に沿って測定される高さとその高さに垂直な幅とを有する矩形であって、
前記設定デバイス(29)が記スリットの前記幅を修正するように適合されている、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御デバイス(17)が、
少なくとも1つのスリットの少なくとも1つの寸法に関連するパラメータを入力として少なくとも受信するとともに、前記設定デバイスによって設定される別のスリットの少なくとも1つの寸法を、そのパラメータに基づいて決定するように適合されている処理デバイスを備えている、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記設定デバイス(29)が、前記相対的な移動中に、一方のスリットの寸法を修正するように適合されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
さらに、
第2の入射方向にX線を放射するように適合され、第2の照射面が前記照射面に平行である、第2の放射デバイス(5’)と、
X線を検出するように適合された第2の検出デバイス(6’)と、
を備え、
前記第2の放射デバイスと第2の検出デバイスとは前記患者用空間(4)の側部に配置されており、
さらに、
前記患者用空間と前記検出デバイスとの間に配置され、X線が透過する検出器側スリットが形成されたX線吸収プレートを有する第2の検出器側コリメータであって、前記検出器側スリットは前記変位軸に沿う少なくとも1つの寸法を有している、第2の検出器側コリメータを備え、
前記駆動デバイス(7)が、前記第2の放射デバイスと第2の検出デバイスと第2の検出器側コリメータとを前記変位軸に沿って患者に対して相対的に移動させるようにも適合されており、
前記制御デバイス(17)は、複数の第2の取得物を得るように前記第2の放射デバイスと第2の検出デバイスとを前記移動中に動作させるように適合されており、該第2の取得物のそれぞれは前記入射方向に垂直な同一の第2の入射方向に沿って得られるものであってかつ前記変位軸に沿った別々の位置の1つで得られ、
前記設定デバイス(29)が、第2の検出器側コリメータの前記検出器側スリットの寸法を修正するように適合されている、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記放射デバイス(5)と第2の放射デバイス(5’)との患者に対する移動が同期されており、
前記制御デバイス(17)は、前記放射デバイス(5)と前記検出デバイス(6)との動作を前記第2の放射デバイス(5’)と第2の検出デバイス(6’)との動作と同期させるように適合されている、
請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記設定デバイス(29)が、
(i)前記検出器側コリメータのスリットの寸法、および(ii)前記放射デバイスと前記患者用空間との間に配置された患者側コリメータ(15)を備える場合にはその患者側コリメータのスリットの寸法とは独立して、前記第2の検出器側コリメータの前記検出器側スリットの前記寸法を修正するように適合されている、請求項7または8に記載の撮像装置。
【請求項10】
撮像装置を用意するステップであって、該撮像装置が、
入射方向を含む照射面においてX線を放射するように適合された放射デバイス(5)と、
X線を検出するように適合された検出デバイス(6)と、
前記放射デバイスと前記検出デバイスとの間に画定され、撮像される患者を受容するように適合された患者用空間(4)と、
前記患者用空間と前記検出デバイスとの間に配置され、X線が透過する検出器側スリットが形成されているX線吸収プレートを有する検出器側コリメータ(19)であって、前記検出器側スリットがコリメータ方向に沿って少なくとも1つの寸法を有する、検出器側コリメータ(19)と、
を備えている、撮像装置を用意するステップと、
データベースを使用し、患者に関連したパラメータを入力として少なくとも用いてスリットの少なくとも1つの前記寸法を設定するステップと、
照射面に垂直であってコリメータ方向に平行な変位軸(Z)に沿って、前記放射デバイスと検出デバイスと検出器側コリメータとを、駆動デバイスにより、患者に対して相対的に移動させるステップと、
複数の取得物を得るように前記駆動デバイスの動作中に前記放射デバイス(5)および検出デバイス(6)を動作させるステップであって、その取得物のそれぞれは同一入射方向に沿って得られるものであってかつ前記変位軸に沿った別々の位置の1つにある、ステップと、
を含む撮像方法。
【請求項11】
データベースを用い、入力として
別のスリットの少なくとも1つの寸法に関連するパラメータと、
前記変位軸に沿った前記相対的な移動の速度と、
のうちの少なくとも1つを用いて、前記寸法を設定するステップを含む、請求項10に記載の撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
具体的には、本発明は、
入射方向を含む照射面においてX線を放射するように適合された放射デバイスと、
X線を検出するように適合された検出デバイスと、を備えており、
患者用空間が、放射デバイスと検出デバイスとの間に画定され、撮像される患者を受容するように適合されており、
さらに、
上記患者用空間と上記検出デバイスとの間に配置されている検出器側コリメータであって、X線を透過する検出器側スリットが形成されているX線吸収プレートを備えている検出器側コリメータと、
照射面に垂直な変位軸に沿って、放射デバイス、検出デバイス、および検出器側コリメータを患者に対して相対的に移動させるように適合されている駆動デバイスと、
を備え、
検出器側スリットは、変位軸に沿って少なくとも1つの寸法を有しており、
さらに、
複数の取得物を得るように放射デバイスおよび検出デバイスを上記移動中に動作させるように適合されている制御デバイスであって、その取得物はそれぞれ同じ入射方向に沿って得られそれぞれ上記変位軸に沿った異なる複数の位置のそれぞれ1つにある、制御デバイスと、
を備えている撮像装置に関する。
【0003】
EP−A−1 168249には、既に、患者のセグメント全体(場合によっては、さらに全身)の放射線写真を撮るように動作可能であるという点で非常に有益なこうした撮像装置が記載されている。
【0004】
上記で説明したような装置の有効性により、非常に広範囲の用途において利用されているはずである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特に、幅広い用途で上記の装置の使用を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、撮像装置は、検出器側スリットの上記寸法を修正するように適合されている設定デバイス備えている。
【0007】
これらの特性によって、撮像される患者および/または実施される検査に撮像装置の特性を適合させることが可能である。
【0008】
さらに、請求項11による撮像方法が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、従属請求項で定義されている特性のうちの1つまたは複数を利用することも可能である。
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例として提示されている以下の本発明の3つの実施形態の説明および添付の図面から簡単に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態による撮像装置の斜視図である。
図2図1の装置の部分側面図である。
図3図2の拡大図である。
図4】コリメータの部分平面図である。
図5a図3に対応する、他の構成の図である。
図5b図3に対応する、他の構成の図である。
図6】本発明の第2の実施形態および第3の実施形態をそれぞれ示す上面図である。
図7】本発明の第2の実施形態および第3の実施形態をそれぞれ示す上面図である。
図8】別の検出技術を用いる撮像装置に関する概略的な説明である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
異なる図において、同じ参照記号は同様または類似の要素を指している。
【0013】
図1は、第1の実施形態による撮像デバイス1を示している。このデバイスはフレーム2を備え、そのフレーム2は、患者が配置される観察領域4(患者用空間)を画定している。可動式フレーム2は、モータ7や任意の適切な種類の移動伝達デバイス7’により、ガイド3に沿い、垂直の長手方向軸Zに沿って患者用空間4に対して移動可能となっている。
【0014】
可動式のフレーム2には、放射線発生装置5と検出器6とが保持されている。以下の説明では、一例で、放射線発生装置5と検出器6とは入射方向Yに沿って互いに離れている。
【0015】
それらの放射線発生装置および検出器を、例えば、当業者に知られているタイプのものとすることができる。
【0016】
X方向とY方向とがZ方向に垂直な平面を画定している。装置内で患者の向きが図示のような場合、Y方向は患者の前後方向に対応し、X方向は他の水平方向(患者の横方向)に対応する。
【0017】
放射線発生装置5はX線源を有しており、そのX線源は、概して、立体角の大きいX線(図示せず)を放射する。X線源は、X線が透過する窓を有するX線吸収ハウジング12に収容されており、その窓は、X線源の動作時に、放射されるX線9のビームが主に撮像される患者Pに向かって確実に放射されるように適合されている。
【0018】
検出器6は、対応する線源の方を向くように領域4の他方側に配置されている。
【0019】
検出器6は、分析される患者の解剖学的部位に到達しそれを貫通したX線のエネルギーを検出するように設計されている。検出器は、伝達される放射線に対応する信号をコンピュータ17に送信する。
【0020】
フレーム2の動きは、コンピュータ17もしくは他の電子制御システムによって実行されるロジックによって制御される。本明細書では詳細に説明しないが、本発明の目的のためにロジックを実施する多くの適切な手法は種々存在する。
【0021】
コンピュータ17は、線源5および/または検出器6の動作を制御することもできる。
【0022】
取得中、検出器を読み取る必要がときどきあることから、コンピュータ17は所定の頻度で検出器の読取りを命令することができる。こうした読取り命令は、予めプログラムし固定されていてもよいし、および/または、フレーム2の移動と同期するものであってもよい。
【0023】
コンピュータ17は、検出器から送信される信号を記録する記録手段(コンピュータ17のメモリ)を備えていてもよい。
【0024】
図2図1のシステムの側面図である(縮尺は正確ではない)。図示するように、患者側コリメータ15は、線源の下流(ここで下流とは線源からのX線の伝播を指す)であって、患者用空間4より上流に配置されている。患者側コリメータ15は、X線吸収プレート16(例えば十分に厚い銅とタングステンとの合金または鉛から作製される)を有することができ、そのX線吸収プレート16にはX線が透過するスリット18が形成されている。患者側コリメータ15は、放射されるX線9を遮断するとともに患者に作用するX線ビーム10を正確に画定するように設計されている。スリット18は、平面状の(わずかに拡散した)X線扇形ビームを、撮像される患者Pの照射のためのX−Y平面(照射面)に供給することを可能にするダイアフラムを形成している。スリット18は、スキャン方向、すなわちZ軸に沿って画定されている1つの寸法である高さphを有する形状によって画定されている。スリットは、患者の横方向の寸法に沿って画定される1つの寸法pw(本明細書でpwは軸Xに沿って測定される)である幅も有している。説明を簡単にするために、残りの説明ではスリットをXZ平面に矩形の部分を有するものと見なすが、本明細書は矩形のスリットに限定されるものではない。スリット18に関する対象の別の寸法は、X線の放射方向(軸Yに沿って測定される)に沿った厚さptである。X線がそこを延在する照射面が、スリット18によって画定されており線源を備えている実質的に中間の面として画定されており、その照射面は、入射方向(線源から検出器の方向、本明細書ではY方向)および横断方向(本明細書ではX方向)を含んでいる。
【0025】
患者の下流には検出器側コリメータ19が配置されている。検出器側コリメータ19は例えば十分に厚い銅と亜鉛の合金から作製され、X線吸収プレート20を有することができ、そのX線吸収プレート20を通ってX線を透過させるスリット21が形成されている。検出器側コリメータ19は、対象Pによって生成される乱放射線をなくすのに役立つ。検出器側コリメータは、患者用空間を通ったのち検出器に作用するX線ビーム10の許容角度を正確に画定するように設計されている。スリット21は、患者側コリメータの寸法phがそれに沿って測定される方向(本明細書では方向Z)に平行な方向に沿って測定される1つの寸法dh、すなわち高さを有する形状によって画定されている。スリットは、患者側コリメータの寸法pwがそれに沿って測定される方向(本明細書では方向X)に平行な方向に沿って測定される1つの寸法dw、すなわち幅も有している。説明を簡単にするために、残りの説明ではスリットをXZ平面に矩形の部分を有するものと見なすが、本明細書は矩形のスリットに限定されるものではない。スリット21が検出器6の放射線透過性の入口窓FEの正面に配置されるように、検出器側コリメータ19が検出器6を覆うように配置されてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、X線源の焦点と検出器側コリメータの面との間の距離は約1300mmである。X線源の焦点と患者側コリメータとの間の距離は約450mmである。医療用の撮像の場合は、これらの寸法が、線源から検出器の距離に関係する、可能性のある画質を考慮に入れた、患者用キャビンのサイズやそのキャビンへの患者のアクセスのし易さを最適にすると考えられる。しかしながら、例えば保安管理の用途の場合などでは他の寸法も可能である。
【0027】
コリメータ15、19は、例えばフレーム2に固定された関連の線源および検出器と一緒に移動する。
【0028】
図2に示されているように、本発明の第1の実施形態では、検出デバイス6はガス検出器44を有している。適切な検出器は、例えば、FR2749402またはEP0678896に記載されており、それらの文献は、参照によりその全体が全ての目的で本明細書に援用される。ガスアバランシェ検出器44は、入口窓FEを備えているガスチャンバ110を含んでおり、その入口窓FEを通して検出されるX線ビームが検出器44に入る。入口窓FEは、コリメータスリット18および21に平行に位置合わせされており、また、X線ビームが検出器6に入ることを可能にし、その検出器6は、大気圧またはそれよりも高い動作圧力においてガスチャンバ110からのガスの漏出に対して信頼できるシールを設けながらも高い通過性を有している。ガスチャンバ内では、通過したX線がガスと相互作用し、X線エネルギーを示す検出可能な信号が生成される。
【0029】
図2の図面は、少なくとも垂直の延在部に沿って(方向Zに沿って)X線源のアノードが点の線源として理想化されている理想的な描写である。しかし、実際には、図3に示すように、X線源は点ではなく、所定の垂直の延在部shを有する。これはまずX線を放射するアノードのエリアが純粋の点状の源ではないことにもとづく。その垂直の延在部shは次の理由から増大する場合がある:例えば、アノード36のアノードターゲット37が方向Yに対して角度がついており、したがって軸Zに沿った延在部を有しているため、および/または、例えば、アノードが回転式アノードタイプの場合には、回転中にアノードがその回転軸を中心にぐらつくため、もしくは、アノード技術の種類に応じた他の何らかの理由のためである。
【0030】
実際には、したがって、放射されるX線ビームは、個々の基本的なX線ビーム(軸Zに沿ったアノードの対応する基本的な各点によって放射されたビーム)の合計として見なすべきである。
【0031】
第1の実施形態では、図示のように、検出器6はシングルラインの検出セルを有している。これは、検出セルが全て方向Xに沿って設けられていることを意味している。これは、例えば上記で説明したようなガス検出器の場合である。この場合、X線画像の垂直の解像度は、検出器側コリメータ19のスリット21の寸法dhによって直接定まる。
【0032】
検査中に患者を通るX線は、患者側コリメータ15を通るX線として定義される。線源が垂直方向に沿う延在部shを有しているので、それらのX線は、アノードの最も上の点Tおよび最も下の点Bによって放射されるX線によって画定されるエンベロープ内に包含されている。点Tによって放射され患者を通るX線のエンベロープは、図3aでは線Tおよび線Tによって定義される。同様に、患者を通り点Bから放射されるX線のエンベロープは、図3では線BおよびBによって定義される。
【0033】
検出器側コリメータ19のさらに詳細な説明を図4を参照して以下に示す。図示のように、設定デバイス29を用いて、軸Z(スキャン方向)に沿ったスリット21の寸法を設定する。例えば、設定デバイス29は、検出器側コリメータ19の放射線不透過性のプレート20と、放射線不透過性のフラップ30aとを備えている。フラップ30aは、最大開放位置と最小開放位置との間で、プレート20に対して移動可能である(図4は、フラップ30aが中間開放位置にあるところを示している)。フラップ30aは、プレート20に対して移動するように案内されていてもよく、この案内は、例えばプレートのレール31がフラップ30aの相補的なレール32を受容するといった任意の適切な案内デバイスによってなされてもよい。駆動デバイス33を用いてフラップ30aをプレート20に対して変位させてもよい。電気機械式のアクチュエータなど、任意の適切な駆動デバイスを使用することができる。駆動デバイス33はコンピュータ17からの制御の下で動作させてもよい。
【0034】
例えば、フラップ30aとフラップ30bとを用いてスリットの高さの寸法phを設定してもよい。そのフラップ30bは、その軸Xに対してフラップ30aに対称形である。コンピュータ17の制御下でフラップ30bの駆動デバイス33を、フラップ30aの駆動デバイス33とは関係なくまたはそれに関連付けて(具体的には対称形に)動作させることができる。
【0035】
例えば、スリットのスキャン方向に沿った寸法(高さ)は、約100マイクロメートルから2ミリメートルに設定可能である。
【0036】
任意選択で、X線ビームを患者に芯合わせするためにスリットの幅寸法pwが1つまたは図示のような2つのフラップ30c、30d(方向Xに沿って同様に動作する)を用いて設定されてもよい。
【0037】
図4では、完全に開放されている状態のスリットを点線34で示している。
【0038】
同じ説明は患者側コリメータ15にも当てはめることができる。患者側コリメータ15のスリット18の寸法は、必ずしも検出器側コリメータ19の寸法と同一ではない。スリット18の1つまたは複数の寸法を、スリット21の対応する寸法に応じて、またはそれとは関係なしに設定することもできる。例えば、患者側コリメータのスキャン方向に沿ったスリットの寸法(高さ)は、約100マイクロメートルから2ミリメートルに設定可能である。スリットの他の寸法(幅)は、X線ビームの角度の半分が撮像装置の中間面Y−Zから0度から10度になるように画定するように設定可能である。
【0039】
すぐ前に説明したデバイスは以下の通りに動作する。
【0040】
撮像される患者が患者用空間4に配置される。撮像パラメータを決定する。こうしたパラメータは、例えば、患者に固有および/または撮る画像に固有のものであり、例えば:
フレーム2の開始位置および/または停止位置、
フレーム2の移動特性(例えば速度特性)、
X線源5の特徴(例えば線源5の電圧特性および/または強度特性)、
スリット21(さらに、任意選択でスリット18)の特徴(例えばその寸法)、
検出器6の特徴(例えばその読取り頻度)、
を含んでいてもよい。
【0041】
こうしたパラメータは、コンピュータ17を用い、訓練を受けた医療関係者によって定義されてもよい。あるいは、これらのパラメータが標準値としてマイクロコンピュータのデータベースに予め設定されていてもよい。別の選択肢として、これらのパラメータを患者に固有のおよび/または検査に固有のものとして定義することもできる。こうした場合には、それらのパラメータを患者にいくつかの固有のパラメータの入力のために取り入れたデータベースを用いてコンピュータ17の処理デバイスによって定義することができる。具体的には、体重または何らかの生理的測定値など、いくつかの患者に固有のパラメータは、非常に十分な訓練を受けた医療関係者によって決定する必要がなく、データベースに入力として入れられてもよく、上記の撮像パラメータのうちの一部または全てがそれらから決定されてもよい。
【0042】
例えば、平均的な身長および体重の患者の全身画像を有することを決定する。開始位置および停止位置は患者の身長から決定され、そして、フレーム2がその開始位置まで移動させられる。
【0043】
フレーム2、X線源5、および検出器6の特徴を設定する。例えば、フレーム2を一定の速度で移動させ、検出器を所定の一定の頻度で読み取る。
【0044】
さらに、スリット18、21の寸法を設定する。例えば、それらの寸法は、フレームの変位全体にわたってその開始から停止まで軸Zに沿って一定になるように設定される。
【0045】
検出器側コリメータのスリット18の幅dwを、X線ビーム10の幅全体が検出されるように設定する。検出器側コリメータのスリットの高さdhを、例えば、所定の垂直の画像解像度が与えられるように設定する。
【0046】
次いで、検出器側コリメータのスリットの高さdhを考慮に入れて、患者側コリメータのスリットの高さphを設定する。例えば、検出器のどの点からも線源の垂直の延在部sh全体が見えるように、図5aに示すように設定する。言い換えると、線TおよびBが検出器側コリメータ19のスリット21の縁部を通るように設定する。したがって、この線を検出することになる検出器の点MPがアノードの垂直の広がり全体を見ることができないので(アノードの最も上の領域が、コリメータ15の最も上の領域によって隠されている)、図5aに示す線BxのようなX線はその検出に含まれないように選択されている。
【0047】
この実施形態では、画像解像度は適切である(撮像を考えると適切である)が、患者は線Bxのような検出に使用されない線で照射されることとなる。したがって、有効な信号と放射された信号との比は最適ではない。「有効な信号」とは、放射された信号のうちの検出に有効な部分、すなわち信号のうちのこの図面のTとBとの間に囲まれた部分を指す。
【0048】
図5bは別形態の動作を示している。図5bの記載では、患者側コリメータ15のスリットの開放は図5aと同様に維持されている。図5aと比べ、高さdhが大きくなっており、そのため、患者を通るX線が全て検出される。他で指定した通り、線BおよびTはここでは検出器側コリメータ19のスリット21の縁部を通る。この構成の場合、患者を通るX線は全て信号の検出に用いられる。しかし、高さdhが高くなるため、画像解像度は低下する。検出器側コリメータの高さdhを、例えば、検出器6の入口窓FEの高さまで高くすることができることに留意されよう。
【0049】
この実施形態では、したがって、任意の特定の検査の場合に、一方の画像解像度と、他方の有効な線量と放射される線量の比との間の最良の妥協点を定義することが可能である。この妥協は、特定の医師または患者の要件に基づいて、全ての患者および/または全ての医療検査のために行うことができる。
【0050】
こうした決定は、
形状および/または生理的測定値といった患者の測定値、
患者固有の要求、
検査固有の要求、
患者の予備検査(例えば同じ撮像装置を用いての好ましくは低エネルギーの患者に対する予備X線撮像など)、
上記のうち1つまたは複数に基づいてスリットの開口度を決定できるようにするデータベースなどの優先知識、
のうちの1つまたは複数に基づくことができる。
【0051】
第2の実施形態によれば、図6に示すように、正面の撮像を実行した後で患者の横方向の画像を撮る場合に、軸Zを中心にフレーム2を90度回転させることができる。第1のスキャンの停止位置は第2のスキャンの開始位置になる。
【0052】
フレーム2および観察領域4が垂直の軸Zを中心に互いに回転移動可能な場合、線源−検出器の軸と領域4との相対位置を、水平軸Zに垂直な平面において、0度〜90度の角度だけ修正することができる。放射線生成手段は、したがって、患者へのそれぞれのいくつかの入射で、具体的には直交する2つの入射で、X線を放射することができる。
【0053】
当然ながら、患者の寸法(厚さおよび横幅)が正面方向と横方向とで異なる場合があることを考慮して、スリットの垂直の寸法を修正することもできる。水平の寸法hwに関して、スリットの寸法uは撮像装置1の中心の垂直面を基準にして対称形であったが、患者Pの腹部のサイズを考慮に入れ、横方向の撮像で2つのフラップ30c、30dを独立に修正することもできる。
【0054】
第3の実施形態によれば、図7に示すように、ちょうど説明した前後方向の撮像に加えて、横方向の撮像を、異なる線源5’および検出器6’によって異なるX線入射方向に沿って実行することもできる。それにより、例えば、同時に2つの画像を撮ることが可能になり、それにより、2回の取得の間に患者が動くリスクが低減される。例えば、2つの線源5、5’および検出器6、6’は同じフレーム2に保持されてもよい。
【0055】
上記の実施形態は、具体的には整形外科の用途のために、立位など、患者の実際の負荷下の姿勢の患者Pを撮像するのに有効である。
【0056】
しかし、別の実施形態によれば、横になっている患者に対して水平にスキャンを行うこともできる。
【0057】
上記のどの実施形態でも、検出器側コリメータのスリット21の高さdhは、所定のスキャンに関して一定に設定されていると記載されている。上記いずれの実施形態においても適用可能な変形形態では、この高さがスキャン中に可変となるように設定されていてもよい。患者を領域A(例えば頭部)から領域B(例えば足)までスキャンするとき、高い解像度が必要と考えられる領域では解像度を高くするか、または有効な信号と放射される信号の比を改善することが有効と考えられる患者の領域ではその比を改善するように、スキャンにこの高さdhが修正されてもよい。例えば、太り気味の患者の脊柱を撮像する場合、患者が薄い領域(例えば頚椎)では解像度を高くし、患者が厚い領域(例えば腰椎)では解像度を低くすることもできる。スリットの開放方針は全て撮像の前に決定することもできる。あるいは、スキャン中に動的に決定してもよい。こうした場合、例えば、最新の(すなわち、前の線に対応する)検出データを分析し、その分析によってスキャンを継続する場合のスリットの開閉が左右されてもよい。こうした分析は、例えば、検出される信号と放射される信号の比を現在の検出データに基づいて改善する必要がありそうかどうか、あるいは、対照的にその比を低下させそれにより解像度を改善することが可能でありそうかどうか、に基づくこともできる。
【0058】
変形形態によれば、図8に概略的に示しているように、必ずしもガス検出器を使用するひつようはない。時間遅延積分(TDI)を実行する固体検出器を用いてもよい。上記の実施形態のいずれかにおいて、ガス検出器の代わりにTDI検出器を用いることもできる。この検出方法、ガス検出器の場合の検出器側コリメータ19のスリット21によって画定されている高さdhを有している検出用セルの代わりに、方向Zに沿って配置された複数のセル(例えば、10個から100個のセル)が用いられる。3つのセル34a、34b、34cを図8に概略的に示している。図8では、システムの形状を1回目は直線で、2回目は混合線で、3回目は混合した点線で示している。2回目および3回目では、明確にするために検出器を1回目の検出器に対して横方向にずらして示しているが、実際には検出器は軸Zのみに沿って移動する。
【0059】
1回目は、線源5および検出器6は第1の位置にある。セル34a、34b、34cはそれぞれ、患者の異なる領域を通って通過したX線に対応する信号を受信する。具体的には、セル34cは患者の点Pを通る信号を受信する。他のセルも信号を受信するが、明確にするために図に示していない。
【0060】
2回目は、線源5および検出器6の両方が方向Zに沿って第2の位置に移動している。目に見えるように、セル34bが、ここでは、患者の点Pを通って通過したX線に対応する信号を受信する。しかし、一方で、1回目にセル34cで受信された信号は、検出用セル34bに電子的にシフトしている。3回目は、患者の点Pを通る信号を受信するのはセル34aである。2回目と3回目との間に、信号はセル34bからセル34aに電子的にシフトされている。したがって、フレームの変位をセルのシフトの頻度と慎重に同期させることによって、患者の点Pを通して通過したX線に対応する信号は、放射されるX線ビーム内に点Pがある間はずっと蓄積される。最後のセルは読み取られてコンピュータ17に行く。
【0061】
この検出技術の場合、スキャン方向に沿って開口を設定できるスリットを有するコリメータの使用によって行われるトレードオフ(妥協点)は、信号に対する画像の奥行きの範囲である。スリットをさらに開けば信号は増える。実際、上記の説明から、検出器側スリットが2つのセル34acおよび34bにのみ対応する開口部を画定する場合に、撮像中に点Pに関する信号を受信するために3つのセル34c、34b、および34aに関してスリットが十分に開放している場合と比べて、点Pに関して検出する信号が少なくなることが理解されよう。
【0062】
しかし、この技術の場合、検出器側スリットがより大きく開放されるほど、奥行きの範囲が小さくなる。図8で理解できるように、患者の点Qは、点Pの後ろに配置されており、1回目はセル34cによって見られ、2回目はセル34bによって見られるが、3回目はセル34aによって見られない。したがって、検出器側スリットが2つのセル34cおよび34bに対応するように開放しているときは、画像の奥行きの範囲に少なくとも点PおよびQが含まれている。3つのセル全てに対応するように開放するときは、点Qに関する情報があいまいになる。当然ながら、明確にするために3つのセルの場合に生じるこうした現象は、数千個のセルが働き始めるときは拡大する。
【0063】
上記のいずれかの実施形態の変形形態では、X線源5および検出器6を固定することができ、画像を供給するために適切な動きで患者Pが移動する。
【0064】
上記のどの実施形態でも、コンピュータ17は、そのメモリに、撮像した対象物の一部の3次元の汎用モデルを有することができる。こうした汎用モデルは、例えば、特定の試験体に、または当該対象物の平均の形態に対応しており、後者の平均の形態では、統計学的方法によって、多数の同様の対象物を分析することによってその汎用モデルが予め生成される。汎用モデルを、患者の構造の3次元画像を生成するために患者に固有の画像に適合させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8