特許第5661924号(P5661924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許5661924ピエゾアクチュエーターの製造方法及びピエゾアクチュエーター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661924
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ピエゾアクチュエーターの製造方法及びピエゾアクチュエーター
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/083 20060101AFI20150108BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 41/273 20130101ALI20150108BHJP
   H01L 41/293 20130101ALI20150108BHJP
【FI】
   H01L41/083
   H01L41/047
   H01L41/273
   H01L41/293
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-513647(P2013-513647)
(86)(22)【出願日】2011年6月6日
(65)【公表番号】特表2013-533617(P2013-533617A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011059285
(87)【国際公開番号】WO2011154352
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2013年2月7日
(31)【優先権主張番号】102010022911.3
(32)【優先日】2010年6月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【復代理人】
【識別番号】100188569
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 ゆう
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】カトリン ベンカート
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン ベーディンガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン デネラー
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ヨハネス カストル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス レンク
(72)【発明者】
【氏名】カールステン シュー
【審査官】 上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−066878(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007037500(DE,A1)
【文献】 国際公開第2006/087871(WO,A1)
【文献】 特開2005−216997(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/092740(WO,A2)
【文献】 独国特許出願公開第102006011293(DE,A1)
【文献】 米国特許第05254212(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第10260853(DE,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00766325(EP,A1)
【文献】 国際公開第2008/119702(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/047,41/083,41/273,41/293
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
−交互に連続する複数のグリーンシート(4′、5′)及び貫通する内部電極層(6、7)からの完全活性グリーンスタック(1′)を準備する工程、この場合、内部電極層(6、7)は、グリーンスタック(1′)から製造すべきピエゾスタック(1)の外側に配置すべき外部電極(2、3)2つのうち1つごとと交互に、電気的に接続し、そして、そのつど他方の外部電極(2、3)とは電気的絶縁性であることが予定されている、
−内部電極層(6、7)が相応する外部電極(2、3)とは電気的絶縁性であるべき領域において、完全活性グリーンスタック(1′)の外側に溝(8、9)を設ける工程、その結果、溝(8、9)が、この領域において内部電極層(6、7)を、グリーンスタック(1′)の外側から内側へと短くさせる、
−溝(8、9)を、電気的絶縁性スラリー(10、11)で充填する工程、
−溝(8、9)が電気的絶縁性スラリー(10、11)で充填されているグリーンスタック(1′)を後加工して、グリーンシート(4′、5′)からピエゾ電気層(4、5)を、そして、グリーンスタック(1′)からピエゾスタック(1)を形成する工程、
−両外部電極(2、3)をピエゾスタック(1)の外側に設け、両外部電極(2、3)を交互に、内部電極層(6、7)と電気的に接続させる工程、
を有する、1つのピエゾスタック(1)及びピエゾスタック(1)の外側に配置された2つの外部電極(2、3)を備えるピエゾアクチュエーター(100)の製造方法において、
−スクリーン印刷、浸漬、吹付け又は真空浸潤の方法の1によって、溝(8、9)を電気的絶縁性スラリー(10、11)で充填し、
電気的絶縁性スラリー(10、11)中のセラミック粒子の収縮挙動を、ピエゾスタック(1)の収縮挙動に適合させ、その際、熱処理の際に、電気的絶縁性スラリー(10、11)に、その収縮挙動に影響を及ぼす剤として、Ag、AgO又はPbOを混入することを特徴とする方法。
【請求項2】
電気的絶縁性スラリー(10、11)での溝(8、9)の充填に加えて、電気的絶縁性スラリー(10、11)を有するパッシベーション層(12、13)の形成のために、ピエゾスタック(1)の表面を電気的絶縁性スラリー(10、11)で覆うことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
電気的絶縁性スラリー(10、11)を用いた溝(8、9)の充填及びピエゾスタック(1)の表面へのパッシベーション層(12、13)の設置を、共通の加工工程において行うことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
ホットエンボスによって、完全活性グリーンスタック(1′)の外側に溝(8、9)を設けることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
作成すべき溝(8、9)の数及び配置に相応する数及び配置の突出部を有するスタンプを使用することを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
電気的絶縁性スラリーの収縮挙動に影響を及ぼす剤が、電気的絶縁性スラリーの0.05〜1.00質量%を占めることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
電気的絶縁性スラリー(10、11)中のセラミック粒子の焼結活性が、粒度又は一次粒子径の減少によって高められることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
溝(8、9)中に配置された電気的絶縁性スラリー(10、11)をプレス処理するために、溝(8、9)が電気的絶縁性スラリー(10、11)で充填されているグリーンスタック(1′)を液体浴中で加圧することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
電気的絶縁性スラリー(10、11)での溝(8、9)の充填が、複数の工程において行われることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾアクチュエーターの製造方法並びにピエゾアクチュエーターに関する。
【0002】
重なり合って積層されたピエゾ素子からの部材は、(ピエゾ)スタックと称される。ピエゾ素子の機能は、ピエゾセラミック材料、例えば鉛−ジルコナート−チタナートの変形及び電場の作用に基づく。ピエゾ素子に電圧がかけられると、この素子は、電圧によって生じた電場に対して垂直方向において広がる。個々のピエゾ素子は、比較的小さな調節行程(Stellweg)を有し、そのため、大きな調節行程については、交互に連続する複数のピエゾ電気的層及びいわゆる内部電気層からのピエゾスタックが使用される。
【0003】
内部電極層は、通常は、交互に、ピエゾスタックの向かい合った外面に配置された外部電極と電気的に接続している。したがって、両方の外部電極のうち1つと電気的に接続している内部電極層は、外部電極との電気的接続に通じている、この外部電極が配置されている外側までである。内部電極層を、他の外部電極とは電気的に絶縁させるため、内部電極層は、更なる外部電極が配置されているピエゾスタック外側までには届かない。この領域においては、内部電極層は、外側から戻った位置にある。これは、例えば、ピエゾスタックがこの領域においてシリコーン樹脂、プラスチック又は塗料で満たしたスリットを備えていることによって達成される。
【0004】
戻った位置にある内部電極層によって、この領域において配置されたピエゾ電気層、いわゆる不活性区域が生じ、これは外部電極層又は内部電極層に電圧がかけられた場合には、減少した電界強度によって貫かれ、したがって、電圧がかけられる場合には、ピエゾ電気層の残りのいわゆる活性区域に比較して極めて少なくしか伸びない。このことは、機械的圧力を、特に不活性区域及び不活性区域に対する周辺領域で生じ、かつ、いわゆる分極亀裂(Polungsrisse)を、ピエゾ電気層の不活性区域及び活性区域において並びに外部電極において生じることがある。この場合に、分極亀裂の危険性は、不活性区域が大きいほど、より大きい。
【0005】
可能な限り小さい不活性区域が形成されている、ピエゾスタックを備えるピエゾアクチュエーターを提供することができるためには、DE 10 2006 011 293 A1は、完全活性グリーンスタックを更に加工することを基礎とする方法を提案する。
【0006】
完全活性グリーンスタック(又は完全活性ピエゾスタック)として、複数のグリーンシート(ピエゾ電気層)及びこの間に配置された電導層から形成され、前記電導層が、スタックの内部電極層を形成し、そして、スタックの外側層まで貫通して形成されているグリーンスタック(ピエゾスタック)が称される。したがって、このような完全活性グリーンスタック(ピエゾスタック)は、不活性区域を有さず活性区域のみを有し、即ち、2つの内部電極層の間に配置された、完全活性グリーンスタック(ピエゾスタック)のグリーンシート(ピエゾ電気層)は、その一方の側で内部電極層によって、そして、そのもう一方の側で、他の内部電極層によって完全にカバーされる。このような完全活性ピエゾスタックの利点は、既知のプロセス工程を用いたその比較的簡易な製造にある。
【0007】
内部電極層は、交互に、グリーンスタックから作成されたピエゾスタックの外側に配置すべき外部電極と、電気的に接続することができるように予定されている。しかし、内部電極層が、このために予定された外部電極としか電気的に接続せず、かつ、他の外部電極とは電気的絶縁性のままであるように、更なる外部電極が後から配置される外側の領域には溝が備えられる。溝によって、内部電極層はこの領域において、完全活性グリーンスタックのそのつどの外側から後方に戻り、これによって、この領域では極めて小さな不活性区域が発生する。内部電極層が、後の外部電極設置の際に、予定される外部電極とだけ電気的に接続するためにも、外部電極の設置前に溝を、電気絶縁性スラリー、セラミック粉末とバインダーからの液状混合物、で充填する。
【0008】
DE 10 2006 011 293 A1で提案された方法を用いて、溝ひいては溝を備えたピエゾスタックの不活性区域を、相応する外部電極に対する内部電極層の良好な電気絶縁化のために絶対に必要であるよりも大きくないように、寸法決定することができる。これによって、このピエゾスタックの不活性区域は極めて小さく仕上げることができ、これによって、分極亀裂発生の危険性は低下される。
【0009】
溝の製造のために、DE 10 2006 011 293 A1は、レーザーを使用することを提案する。このやり方の欠点は、溝のレーザー処理によってこの領域においてグリーンスタック中の有機物が燃焼されることにある。この場合に、セラミックは、耐火性一級酸化物、例えばZrO2及びTiO2の形成下で、部分的に分解されることができる。孔のないかつ亀裂のない溝充填を保証するために、この燃焼した材料は、引き続き完全に、この溝から除去されなくてはならない。このことは、高度な手間を用いてのみ可能であり、その際、同時に、ピエゾスタックの損傷の危険性は高い。
【0010】
スラリーを溝中に導入するために、DE 10 2006 011 293 A1は、同様に、溝の作成のために使用されたレーザー法に頼ることを提案する。このやり方の欠点は、この方法が比較的時間がかかり、そして、コスト集約的であることにあり、というのも、溝の製造はレーザーによって逐次行われる必要があるからである。
【0011】
本発明の課題は、可能な限り少ない不活性区域を有するピエゾスタックを備えるピエゾアクチュエーターを、より簡易に製造することができる方法を提供することである。本発明の更なる課題は、ピエゾアクチュエーターを提供することである。
【0012】
この課題は、特許請求の範囲の請求項1の特徴部に応じた方法並びに特許請求の範囲の請求項13の特徴部に応じたピエゾアクチュエーターによって解決される。
【0013】
1つのピエゾスタック及びこのピエゾスタックの外側に配置された2つの外部電極を備えるピエゾアクチュエーターを製造するための本発明の方法は、DE 10 2006 011 293 A1に記載の方法を基礎とする。この方法は、次の工程を含む:交互に連続する複数のグリーンシート及び貫通する内部電極層からの完全活性グリーンスタックを準備する工程、この場合に、前記内部電極層は、グリーンスタックから製造すべきピエゾスタックの外側に配置すべき外部電極2つと交互に、電気的に接続し、そして、そのつど他方の外部電極とは電気的絶縁性であるように予定されている、内部電極層が相応する外部電極とは電気的絶縁性であるべき領域において、完全活性グリーンスタックの外側に溝を設ける工程、その結果、溝が、この領域において内部電極層を、グリーンスタックの外側から内側へと短くさせる、電気的絶縁性スラリーで溝を充填する工程、溝がスラリーで充填されているグリーンスタックを後加工して、グリーンシートからピエゾ電気層を、そして、グリーンスタックからピエゾスタックを形成させる工程、両外部電極をピエゾスタックの外側に設け、両外部電極を交互に、内部電極層と電気的に接続させる工程。本発明によれば、スクリーン印刷、浸漬、吹付け又は真空浸潤の方法の1によって溝をスラリーで充填する。
【0014】
スラリーで溝を充填するための本発明の方法は、スラリーを簡易かつ均一に、溝を備えたグリーンスタックに簡易なやり方で設けることができる利点を有する。更なる利点は、高い均質性が、電気的絶縁性スラリーでの溝の充填の際に達成できることにある。このことは、特に、スクリーン印刷方法の利用の場合に該当し、この場合に、溝中に導入されるべきスラリーの量は、定義して定めることができる。
【0015】
完全活性ピエゾ電気部材におけるセラミックスラリーでの溝の充填によって、極めて小さい不活性領域が発生する。これは、相応する外部電極に対する内部電極層の良好な電気絶縁化のために絶対に必要であるよりも大きくないように、寸法決定されることができる。分極亀裂発生の危険性は、これによって減少されることができる。
【0016】
目的に適った実施態様においては、スラリーを用いた溝の充填に加えて、ピエゾスタックの表面を、スラリーを有するパッシベーション層の形成のために、スラリーで覆う。これによって、パッシベーション層の設置にさもなければ付加的に必要な工程が省略できる。スラリーを設けるための、本発明により使用される方法を用いて、この場合に、パッシベーション層の層厚を均一に設けることができることが確実にされている。スラリーがスクリーン印刷方法によって設けられる場合には、グリーンスタックは、全体として加工すべき表面側がスラリーで覆われ、かつ、パッシベーションされるまで、例えば工作機械において回転される。
【0017】
特に、スラリーを用いた溝の充填及びピエゾスタックの表面へのパッシベーション層の設置を、共通の加工工程において行うことが予定されている。
【0018】
溝の充填、及び、任意に、ピエゾスタック表面へのスラリーの設置後に、グリーンスタックは知られているように、脱バインダー及び焼結のプロセス工程に供され、その結果、グリーンシートからピエゾ電気層が発生する。脱バインダー及び焼結によって、次いで、準完全活性(quasi-vollaktiv)グリーンスタックから準完全活性ピエゾスタックが発生し、これには更に、溝を備える側面の機械的加工(例えば研磨)後に、外部電極が備えられることができる。
【0019】
更なる目的に適った実施態様によれば、ホットエンボスによって完全活性グリーンスタックの外側層に溝を設ける。この箇所での溝のレーザー処理によってグリーンスタック中の有機物がその高温のために燃焼し、これによって、部分的にセラミックが耐火物一級酸化物の形成下で分解できる一方で、この溝はホットエンボス法の使用下で、これに比較してかなり低温で生じさせられることができる。この場合に、溝は、燃焼材料の形成なしに、グリーンスタックへと導入されることができる。グリーンスタックへの溝の導入が行われるので、既に焼結したピエゾスタック中への導入に対して、電極のより良好な視覚的認識が与えられている。グリーンスタックでは、この寸法は、焼結のプロセス工程前に、この熱加工工程後に比較して約20%より大きい。
【0020】
ホットエンボス法のためには、作成すべき溝の数及び配置に相応する数及び配置の突出部を有するスタンプを使用することができる。この場合に、突出部の間隔は、スタックのそれぞれの第2の内部電極の間の間隔に相応する。特に、このようなスタンプでは、唯一の方法工程において、ピエゾスタックの外側の全ての溝を作成することができる。
【0021】
更なる目的に適った実施態様によれば、スラリー中のセラミック粒子の圧縮挙動を、ピエゾスタックの圧縮挙動に適合させる。このやり方は、グリーンスタックのセラミックを、焼結のプロセス工程の間に、溝中でセラミックスラリーに比較して低温で圧縮するという考えを基礎とする。この理由は、一方では、グリーンスタックが、重なり合って配置されたグリーンシートの貼り合わせによって既に予備圧縮されており、これによって、より高いグリーン密度を有することである。他方では、AgPdからなる電極中への銀の拡散は、低温で圧縮を支援する。焼結の間の異なる圧縮挙動は、溝の領域において亀裂形成を生じることがある。最悪の場合には、これによって、接触したピエゾスタックにおいてショートが引き起こされることがある。この亀裂形成を減少するために、スラリー中のセラミック粒子の収縮挙動を、ピエゾスタックの収縮挙動(セラミック含分のそのつどの圧縮から生じる)に適合させることが予定されている。
【0022】
第一の変法において、このために、熱処理(焼結)の際に、スラリーに、その収縮挙動に影響を及ぼす剤を混入する。スラリーの収縮挙動に影響を及ぼす剤として、Ag、AgO又はPbOを使用することができる。スラリーの収縮挙動に影響を及ぼす剤は、特にスラリーの0.05〜1.00質量%を占め、その結果、セラミック粉末の「ドーピング」と言うことができる。
【0023】
第二の変法において、スラリー中のセラミック粒子の焼結活性が、粒度又は一次粒子径の減少によって高められる。
【0024】
第三の変法において、その溝がスラリー(収縮挙動に影響を及ぼす剤なし)で充填されているグリーンスタックは、溝中に配置したスラリーをプレス処理するために、液体浴において加圧される。プロセス実施は、この場合に、好ましくは、セラミックスラリーのアイソスタティックプレス処理が行われ、そして、重なり合って配置されているグリーンシート(即ち、グリーンスタック)に対しておおよそ同一のグリーン密度が達成されているように行われる。したがって、このやり方によって、溝中に存在するスラリーの後圧縮が行われる。
【0025】
上述した選択肢は、グリーンスタックの収縮挙動に、溝中のスラリーの収縮挙動を適合させるべく、(任意に)相互に組み合わされることもできる。
【0026】
更なる目的に適った実施態様によれば、スラリーでの溝の充填は複数の工程において行われ、これによって、グリーンスタックの平らな表面が、設けるべき外部電極の領域において達成される。
【0027】
本発明は、更に、上記方法により製造された、1つのピエゾスタック及び前記ピエゾスタックの外側に配置された2つの外部電極を備えるピエゾアクチュエーターを達成する。
【0028】
本発明は、以下では、実施例に基づき詳説される。図面は次のことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1a)及び1b)は、そのつど側方断面図における、第一の実施例に応じた本発明のピエゾアクチュエーターを示し、図1c)は、平面断面図における、図1a)及び1b)に応じた本発明のピエゾアクチュエーターを示す図である。
図2図2a)及び2b)は、そのつど側方断面図における、第二の実施例に応じた本発明のピエゾアクチュエーターを示し、図2c)は、平面断面図における、図2a)及び2b)に応じた本発明のピエゾアクチュエーターを示す図である。
【0030】
図1及び2に示したピエゾアクチュエーター100のための出発点は、本実施例の場合には、平面図においてそれぞれ直方体に仕上げた完全活性グリーンスタック1′(これは複数のグリーンシート4′、5′、及び、この間に配置された内部電極層6、7を有する)である(参照、図1c)及び2c))。グリーンスタック1′は、一般に知られているように、内部電極層及びグリーンシートの交互の積み重ねによって生じる。グリーンシート4′、5′は、ピエゾセラミック材料、例えば鉛−ジルコナート−チタナートを含む。内部電極層6、7は、例えば、グリーンスタック1′を貫通して貫いている、即ち、グリーンスタック1′の外側まで貫通して形成されている、電導性金属層であり、その結果、グリーンスタック1′はまず、不活性区域を有さず、単に活性区域のみを有する。内部電極層6、7は、グリーンスタック1′から製造すべきピエゾスタック1の外側に配置すべき外部電極2、3の2つと交互に、電気的に接続し、そして、そのつど他方の外部電極3、2とは電気的絶縁性であるよう予定されている。
【0031】
ピエゾアクチュエーター100の製造には、完全活性グリーンスタック1′からは、不活性区域を有するスタックが発生するように、グリーンスタック1′の少なくとも1の外側に溝8、9が予定される。この両方の、図1及び2に示されている実施例においては、溝8、9は、向かい合っている、グリーンスタック1′の外側に予定されている。図1の実施例においてはそのつどの溝がその外側面に対して中心に配置されている一方で(図1c)の断面図を特に参照)、図2に示されている実施例においては溝8、9は、向かい合っている外側面の斜めに向かい合った側方角の領域に配置されている(図2c)参照)。
【0032】
グリーンスタック1′のそのつどの外側は、各内部電極6が溝8によりグリーンスタック1′の内部へと戻っており、そして、残りの内部電極7は当該外側面に完全に通じたままであるように、溝8又は9を備えている。相応して、溝9は別の外側で、そのつど内部電極7がグリーンスタック1′の内部へと戻っており、その一方で、内部電極6がこの外側に通じているように仕上げられている。したがって、図1及び2に示された実施例の場合には、溝8が内部電極6に、そして、溝9が内部電極7に配置されている。
【0033】
本実施例の場合には、溝8、9は好ましくはホットエンボスにより作成される。このためには、グリーンスタック1′が、当該外側へと、スタンプを用いて高められた温度で加圧される(T>Tg、グリーンスタック中のポリマーバインダーのガラス転移温度、典型的には20〜200℃)。このスタンプは、作成すべき溝8、9の数及び配置に相応する数及び配置の突出部を有し、これによって、グリーンスタック1′は突出部の領域において溝の形成のために変形される。この場合に、突出部の間隔は、内部電極層6又は7の間隔に相応する。
【0034】
ホットエンボス法を用いて、溝は、(レーザー処理に比較してわずかにだけ高められた)温度及び圧力で、グリーンスタック1′へと導入されることができる。この場合に、溝は、燃焼材料の形成下で導入される。当該グリーンスタック1′でのホットエンボス法の適用は、グリーンスタック1′のより大きい寸法のために、既に焼結されたピエゾスタック1に対し電極のより良好な視覚的認識を可能にし、その結果、本方法は、簡易かつ信頼のできるやり方で実施できる。
【0035】
代わりに、溝の導入は、レーザーアブレーション、(多数)円形鋸刃を用いた鋸処理、マイクロフライス処理、リーマー処理、超音波浸食並びに水照射、砂照射又はCO2照射によっても行うことができる。
【0036】
引き続き、溝8、9を、電気絶縁性の、セラミックスラリー10又は11で充填する。スラリー10、11を用いた溝8、9の充填は、好ましくは、スクリーン印刷、浸漬、吹付け又は真空浸潤によって行われる。この場合に、好ましくは同時に、グリーンスタック1′の表面が、パッシベーション層の形成のために、スラリーで覆われる。溝のための充填剤としてのセラミックスラリーの使用は、均質なピエゾスタック1を備え、スラリー充填した溝とグリーンシート4′、5′の間に焼結後に分離線(Trennlinie)を発生しないピエゾアクチュエーター100の製造を可能にする。これによって、分極亀裂が回避されることができる。
【0037】
スクリーン印刷によるスラリーの設置が特に好ましいことが判明し、というのも、これによって、均質な層厚が、スラリー充填した溝8、9に関しても、パッシベーション層12、13に関しても達成されるからである。このために、加工すべきグリーンスタック1′は、加工機械において、相応して回転され、その結果、スクリーン印刷はスタックの全外面で実現されることができる。
【0038】
溝8、9へのスラリー10、11の導入並びにパッシベーション層12、13の任意の作成後に、プロセス工程 脱バインダー、焼結及び機械的加工(例えば研磨)が実施され、これによって、ピエゾスタック1が発生する。引き続き、両外部電極2又は3が、内部電極層6又は7と電気的に接続するように、両外部電極2、3をピエゾスタック1のそのつどの外側に設ける。
【0039】
外部電極2、3は、ピエゾスタック1の当該外面に沿って外側メタライジングとして設けられる。この場合に、外部電極2は、内部電極層7と接続している。外部電極3は、内部電極層6と電気的に接続している。外部電極2、3はそのつど溝8、9の幅に比較して狭く、そして、スラリー10、11で充填された溝8、9を介して進み、その結果、外部電極2、3は、内部電極層6、7とは電気的に絶縁されている。溝8、9の深さ、幅及び高さは、この溝が電気的絶縁性スラリー10、11との接続において、外部電極3又は2からの、内部電極6又は7の信頼できる電気的絶縁が保証されるように選択されている。
【0040】
溝を作成した外部電極にパッシベーション層が備えられている場合には、これらは、当該外側に隣接する内部電極層6、7を露出させるために、事前の機械的加工(例えば研磨)に供される。そうして初めて引き続き、外部電極2、3の作成が行われる。
【0041】
グリーンスタック1′、即ち、グリーンシート4′及び5′のセラミックは、溝8、9中のスラリー中のセラミック粒子よりも低温で焼結の際に圧縮する。この原因は、グリーンスタック1′が、重なり合って積層されたグリーンシート4′、5′の貼り合わせによって既に予備圧縮されており、これによって、より高いグリーン密度を有することにある。他方では、AgPdからなる電極からの銀の拡散は、低温でのグリーンスタック1′の圧縮を支援する。異なる圧縮挙動は、溝中でスラリーの亀裂形成を生じることがあり、したがって、完成したピエゾスタック中のショートを引き起こすことがある。
【0042】
グリーンスタック1′中の及びスラリー中のセラミック含分がこれに対してほぼ同じ温度で圧縮する場合には、溝中のセラミックの亀裂形成が回避できる。したがって、亀裂形成の回避のために、スラリー中のセラミック粒子の圧縮挙動を、グリーンスタック1′中のセラミックの圧縮挙動に適合させる。このことは、スラリーへの銀、銀酸化物又は鉛酸化物の添加によって行うことができる。この場合に、収縮挙動に影響を及ぼす剤を、0.05〜1.00質量%の範囲で添加している場合に十分である。代わりに、セラミック粒子の焼結活性は、より微細な一次粒子径又は粒度を用いることによって、高められることができる。
【0043】
更に代わりに、溝中に存在するスラリーの後圧縮が、その乾燥後に行われることができる。このために、例えば、アイソスタティックプレス過程が、液体浴中で実施できる。結果として、この記載の変法は、グリーンスタック1′により良好に適合させた、スラリーのグリーン密度を溝中で生じ、これによって、収縮挙動は相互に適合され、かつ、焼結活性が高められている。この関連において、スタック外側の平らな表面を獲得するために、溝8、9中へのスラリーの導入が複数の部分工程において行われる場合が好ましい。
【0044】
代わりに、前述した方法の組み合わせも、グリーンスタックの収縮挙動に溝中のスラリーの収縮挙動を適合させるべく、使用できる。
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図2a)】
図2b)】
図2c)】