(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661947
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】内側冷却部を備えた蛍光体装置、および、当該蛍光体装置を備えた反射照明装置
(51)【国際特許分類】
F21V 9/16 20060101AFI20150108BHJP
F21V 9/10 20060101ALI20150108BHJP
F21V 29/50 20150101ALI20150108BHJP
F21S 2/00 20060101ALI20150108BHJP
F21Y 101/02 20060101ALN20150108BHJP
【FI】
F21V9/16 100
F21V9/10 200
F21V29/02 100
F21V29/02 500
F21S2/00 377
F21Y101:02
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-549765(P2013-549765)
(86)(22)【出願日】2012年1月5日
(65)【公表番号】特表2014-503110(P2014-503110A)
(43)【公表日】2014年2月6日
(86)【国際出願番号】EP2012050129
(87)【国際公開番号】WO2012098020
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2013年9月20日
(31)【優先権主張番号】102011002961.3
(32)【優先日】2011年1月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512288684
【氏名又は名称】オスラム ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OSRAM GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クラウス フィンスターブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ハートヴィヒ
(72)【発明者】
【氏名】ニコ モアゲンブロート
【審査官】
太田 良隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−217566(JP,A)
【文献】
特開2003−156796(JP,A)
【文献】
特開2007−093690(JP,A)
【文献】
特開2005−294185(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/133214(WO,A1)
【文献】
特開2011−075657(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/118345(WO,A1)
【文献】
特開2010−197497(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/112961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V9/10,9/16
F21V29/00−29/02
F21S2/00
F21Y101/02
G03B21/14,21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ2面を有するディスク状の2つの支持部材(2,3)と、
蛍光体を含む少なくとも1つの変換領域(4,5)と
を含む、内側冷却部を備えた蛍光体装置(1)であって、
一方の前記支持部材の一方の面が他方の前記支持部材の一方の面の方を向くことにより、前記蛍光体装置(1)の相互に対向する2つの内側面(2b,3b)を成し、かつ、前記2つの各支持部材の他方の面は外側の方を向いていることにより、前記蛍光体装置(1)の2つの外側面(2a,3a)を成すように、前記2つの支持部材(2,3)は相互間に間隔をおいて配置されており、
前記変換領域(4,5)は、前記2つの支持部材(2,3)の両外側面(2a,3a)に設けられており、
前記蛍光体装置(1)はさらに、
前記2つの支持部材のうちの少なくとも1つの支持部材(2)に設けられた少なくとも1つの開口(6)を有し、
前記少なくとも1つの開口(6)は、前記2つの支持部材(2,3)の両内側面(2b,3b)間の内側スペースに連通しており、当該内側スペースは、前記両支持部材(2,3)の外縁部まで連通しており、
冷媒が前記開口(6)と前記内側スペース内とを通流する
ことを特徴とする、蛍光体装置(1)。
【請求項2】
前記2つの外側面のうち少なくとも1つ(33a)に、散乱反射面を有する少なくとも1つの散乱領域(34)が設けられている、
請求項1記載の蛍光体装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの変換領域(4;31,32)および/または前記少なくとも1つの散乱領域(34)は、1つの環状領域を有するか、または、複数の同心状の環状領域を有する、
請求項1または2記載の蛍光体装置。
【請求項4】
前記蛍光体は2つ以上の種類の蛍光体を含み、
前記2つ以上の種類の蛍光体は、複数の扇形に分かれて配置されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の蛍光体装置。
【請求項5】
前記蛍光体装置は、当該蛍光体装置(1)の前記2つの内側面(2b,3b)間の内側スペースに設けられた複数の放熱フィン(8)を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の蛍光体装置。
【請求項6】
前記複数の放熱フィン(8)は曲げられており、前記開口(6)から半径方向に、ディスク状の前記支持部材(2,3)の縁部に向かって延びており、かつ、実質的に1つの内側面(2b)からもう1つの内側面(3b)まで延びている、
請求項5記載の蛍光体装置。
【請求項7】
前記蛍光体装置は、前記2つの支持部材(2,3)のうち少なくともいずれかの支持部材を回転させるための手段(7)を有し、
前記支持部材を回転させるための手段(7)は、前記2つの支持部材のうち1つの支持部材(2)の前記開口(6)に対して軸方向に、前記2つの支持部材のうち1つの支持部材(3)に結合されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の蛍光体装置。
【請求項8】
少なくとも1つの反射器(21,22)と、
励起レーザ光(27,28)を放出するように構成された少なくとも1つの励起レーザ(23,24)と、
請求項1から7までのいずれか1項記載の蛍光体装置(1)と
を有する反射照明装置(20)であって、
前記励起レーザ光(27,28)が前記蛍光体装置(1)の少なくとも1つの変換領域(4,5)に当たり、前記少なくとも1つの変換領域(4,5)の蛍光体によって波長変換され、波長変換された前記光の少なくとも一部が前記少なくとも1つの反射器(21,22)に当たるように構成されている
ことを特徴とする、反射照明装置(20)。
【請求項9】
前記励起レーザ光(27,28)の少なくとも一部が少なくとも一時的に、前記蛍光体装置の前記少なくとも1つの散乱領域(34)に当たって、前記少なくとも1つの散乱領域(34)の散乱反射面により散乱反射され、
散乱反射された前記光の少なくとも一部は前記少なくとも1つの反射器(21,22)に当たる、
請求項8記載の反射照明装置。
【請求項10】
ディスク状の前記2つの支持部材(2,3)のうち少なくとも1つが回転し、かつ、
冷媒が、前記少なくとも1つの開口(6)を通って流入し、前記内側スペースを通って流れ、当該支持部材の外縁部において流出する、
請求項8または9記載の反射照明装置。
【請求項11】
ディスク状の前記2つの支持部材(2,3)の両内側面(2b,3b)間のスペースにおいて実質的に半径方向に延在する複数の放熱フィン(8)が、前記蛍光体装置の回転方向と反対方向に曲げられている、
請求項10記載の反射照明装置。
【請求項12】
前記冷媒は、閉じられた冷却循環系の構成要素である、
請求項10または11記載の反射照明装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの反射器(21,22)は少なくとも1つの焦点(FA,FC)を有し、前記少なくとも1つの変換領域(4,5)の少なくとも一部は、前記少なくとも1つの焦点(FA,FC)を通って回転するように構成されている、
請求項8から12までのいずれか1項記載の反射照明装置。
【請求項14】
前記反射器は、それぞれ少なくとも1つの焦点(FA,FC)を有する2つのハーフシェル形反射器(21,22)を含み、
両方の各変換領域(4,5)はそれぞれ、各ハーフシェル形反射器(21,22)の焦点(FA,FC)を通って回転するように構成されている、
請求項8から12までのいずれか1項記載の反射照明装置。
【請求項15】
前記2つの各ハーフシェル形反射器(21,22)はそれぞれ、1次焦点(FA,FC)と2次焦点(FB,FD)とを有し、
前記2つの支持部材(2,3)の両外側面(2a,3a)の各変換領域(4,5)はそれぞれ、各1次焦点(FA,FC)を通って回転し、
2つの前記2次焦点(FB,FD)は相互に一致して1つの共通の焦点(FB,D)を成す、
請求項14記載の反射照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起レーザ光を変換光に変換するための蛍光体装置に関する。さらに本発明は、当該蛍光体装置を備えた反射照明装置にも関する。変換用に設けられた蛍光体表面における励起レーザビームスポットの面積あたりのパワー密度が高いこと、ないしは、波長変換時にストークスシフト作用が生じることから、前記蛍光体装置は通常、自由に回転する「蛍光体ホイール」として構成される。その場合には蛍光体は、回転するディスクの片面に設けられる。このような構成により、目下照射される蛍光体部分領域は、蛍光体が持続的に局所的に損傷されたり破壊される前に、励起レーザビームスポットの下を回転していく。蛍光体ホイールが回転すると、照射される領域は1回転するごとに環状の軌道を描く。それゆえ、蛍光体は通常、蛍光体ホイールの片面に環状の軌道を成すように設けられる。動作時間が経過するにつれて励起レーザ光により生じる、蛍光体の加熱は、とりわけ、蛍光体ホイールの裏面を介して周辺へ放熱される(放射冷却および対流冷却)。このような蛍光体装置、および、当該蛍光体装置を備えた反射照明装置は、高い照度を有する光源を必要とする多くの用途に適しており、たとえば映像プロジェクション、導光体を有する医療用および工業用の内視鏡、効果照明、自動車投光器等に適しており、これらの用途は従来、ハロゲン白熱ランプや放電ランプをベースとする反射色ランプが得意とする分野であった。
【0002】
従来技術
WO2009/112961A1に、レーザ光を放出する少なくとも1つの素子と、(予め決定された場所に前記レーザ光を向けるための)少なくとも1つの光源出力部材と、少なくとも1つの変換部材と、反射装置とを有するレーザ光源が記載されている。前記少なくとも1つの変換部材は、前記レーザ光の少なくとも一部を波長変換光ないしは変換光に変換する蛍光体を含む。前記反射装置は、この変換光と前記レーザ光とを組み合わせて出力混合光を生成する。US2009284148A1に、励起光源と、回転する蛍光体ホイールとを備えた、プロジェクタ用の光源装置が開示されている。この蛍光体ホイールは、透明な円形のディスクを有し、このディスクの片面に、分割された環状の軌道が設けられている。この軌道は、同じ大きさの3つの区間に分割されており、赤色波長領域を放出する蛍光体(R)と、緑色波長領域を放出する蛍光体(G)と、拡散透過領域(135)とに分割されている。励起光は回転蛍光体ホイールの裏面に入射し、その透明なディスクを通過して、当該ディスクのもう片方の面において環状軌道の蛍光体を励起する。つまり、前記蛍光体ホイールはいわゆる透過モードで使用される。入射する励起光の軸には、導光体が前記環状軌道と対向するように配置されており、この導光体が変換光を送光する。
【0003】
従来の蛍光体ホイールの欠点は、とりわけ励起レーザパワーが上昇すると、励起レーザ光によって励起される蛍光体の劣化を防止したり、少なくともこの劣化を十分な期間だけ遅らせるためには、冷却が不十分になることである。両面コーティングされた蛍光体ホイールの場合、蛍光体ホイールの裏面を介して行われる放熱が格段に少なくなるという理由だけでなく、むしろ、蛍光体がコーティングされた裏面にも励起レーザ光が入射し、これに伴って加熱がさらに増大するという理由も重なって、上述の冷却の問題はさらに深刻になる。
【0004】
発明の開示
本発明の課題は、励起レーザ光に対して改善された蛍光体装置を提供することである。
【0005】
前記課題はさらに、上述の蛍光体装置を備えた、改善された反射照明装置を提供することも対象とする。
【0006】
前記課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。有利な実施形態は、とりわけ従属請求項から導き出すことができる。
【0007】
前記課題は、それぞれ2面を有するディスク状の2つの支持部材と、蛍光体を含む少なくとも1つの変換領域と、前記2つの支持部材のうち少なくとも1つの支持部材に設けられた少なくとも1つの開口とを含む、内側冷却部を備えた蛍光体装置であって、一方の前記支持部材の一方の面が他方の前記支持部材の一方の面の方を向くことにより、前記蛍光体装置の相互に対向する2つの内側面を成すように、かつ、前記2つの各支持部材の他方の面は外側の方を向いていることにより、前記蛍光体装置の2つの外側面を成すように、前記2つの支持部材は相互間に間隔をおいて配置されており、前記変換領域は、前記2つの外側面のうち少なくとも1つの外側面に配置されている蛍光体装置によって解決される。
【0008】
基本的思想は、強制冷却部として内側通気部を有する蛍光体ホイールを提供し、この蛍光体ホイールを、「2重蛍光体ホイール」の形態の蛍光体装置によって実現することである。それゆえ、以下では本発明の蛍光体装置を「2重蛍光体ホイール」とも称する。この2重蛍光体ホイールでは、ディスク状の2つの支持部材が設けられており、これらの支持部材は相互に間隔を置いて平行に配置されていることにより、実質的に当該2重蛍光体ホイールの基本構造を成す。蛍光体は、前記2重蛍光体ホイールのディスク状の両外側面のうち一方または双方に配置された有利には環状の変換領域に、すなわち、円状の蛍光体軌道上に設けられている。前記2重蛍光体ホイールが回転するときに十分な冷却空気流が得られることを保証するためには、ディスク状の両支持部材のうち少なくとも一方に少なくとも1つの開口が、有利には軸の近傍に、または軸に対して同心状に設けられる。前記2重蛍光体ホイールが回転すると、周辺空気が、または場合によっては別の冷媒が、前記少なくとも1つの開口を通ってディスク状の両支持部材間のスペースに流れ込み、実質的に半径方向に外側に向かって流れ、このように通過する冷却空気によって、内側面が能動的に冷却される。このような強制的な流れを生じさせるためには、前記開口において圧力差に起因して生じる渦作用が利用される。というのも、空気は前記スペースの中心よりも前記スペースの縁部領域において速く回転するからである。前記ディスク状の支持部材は有利には、良好な熱伝導率を有する材料から、たとえば銅から成る。このような材料により、この「内側冷却」によって最終的には、励起レーザ光によって蛍光体にもたらされる熱を良好に放熱することができる。前記2重蛍光体ホイールの両内側面間のスペースには、放熱を改善するために放熱フィンを設けることができる。有利には、前記放熱フィンは翼状であり、1つの内側面からもう1つの内側面まで、実質的に半径方向に前記ディスク状の支持部材の縁部の方向に向かって延在するように形成されている。このようにして、前記開口から前記スペースの縁部への半径方向の空気流が支援されるようにする。前記2つのディスク状の支持部材が相互に別個に回転可能である2重ホイールの場合には、これら2つの各支持部材がそれぞれ、放熱フィンのセットを有することができる。また、前記放熱フィンは有利には、流れに有利になるように、回転方向とは逆方向に曲げられている。このようにして、回転する前記スペースにおける半径方向の空気の流れがさらに改善され、ひいては、冷却作用がさらに改善される。その点では前記放熱フィンが、翼状の流れ部材の機能にも適している。
【0009】
冷媒としては、周辺空気の他に、有利にはガス状である別の媒体も考えられる。こうするために有利なのは、冷却循環系が閉じられていること、たとえば、この冷却循環系内において前記蛍光体装置全体が適切な容器内に封入されていることである。また、前記冷媒を事前冷却しておくことも可能であり、そのために、たとえば熱交換器を用いることができる。
【0010】
回転するためには、一般的に蛍光体ホイールにおいて慣用されているように、前記2重蛍光体ホイールに適切な回転手段が設けられ、たとえば、適切な回転軸受または回転軸が設けられる。上述の回転手段は、前記2つのディスク状の支持部材のうち少なくとも1つに結合されており、有利には、前記2つのディスク状の支持部材のうちいずれかに設けられた開口に対して軸方向に結合されている。前記2つのディスク状の支持部材を相互に相対回動不能に結合することができ、または両支持部材が相互に相対的に動いて独立して回転できるようにすることも可能である。後者の場合には、動作中に前記2つのディスク状の支持部材のうち1つのみが回転するか、または、前記2つのディスク状の支持部材がそれぞれ異なる回転数で回転するように(2つの駆動軸)構成することができる。すでに述べたように、その際には両支持部材がそれぞれ、放熱フィンのセットを有することも可能である。前記2つのディスク状の支持部材の変換領域に設けられた蛍光体は、典型的には紫外光または青色光である励起レーザ光(たとえば400〜450nm)を、通常は波長がより長いより広帯域の光に波長変換する機能を有する(down conversion)。このようにして、要求に応じて異なる光色を生成することができ、たとえば赤色(R)、緑色(B)および青色(B)を生成することができ、また、たとえば黄色等である他の光色を生成することもできる。適した蛍光体の種類にはたとえば、緑色光(G)を生成する、CerドープされたYAG、赤色光(R)を生成する、ユーロピウムドープされたYAG等がある。場合によっては、前記少なくとも1つの変換領域の他にさらに少なくとも1つの散乱領域を設けることにより、白色光を生成するために加法混色を行う場合に通常使用される青色光成分(B)を青色励起レーザ光自体から取り出すことが可能である。前記散乱領域もまた、前記2重蛍光体ホイールの2つの外側面のうち少なくともいずれかに設けられる。前記散乱領域は蛍光体を有さず、散乱反射面を有し、これにより、青色励起レーザ光を直接そのまま、すなわち蛍光体によって変換することなく利用することができる。この散乱反射面により、とりわけプロジェクション用に直接使用する際に妨害となるスペックル作用(励起レーザ光の空間的コヒーレンス特性に起因する)が有利には消失するか、または少なくとも低減する。
【0011】
前記変換領域および散乱領域、ないしは、場合によっては複数の異なる蛍光体種類は、同じ環状領域内に並べて配置することができ、または、同心状に配置された複数の環状領域として設けることができる。しかし必ずしも、上述の複数の異なる蛍光体種類を複数の扇形に分けて配置しなければならないわけではなく、むしろ蛍光体混合物として、1つの環状の変換領域に設けることもできる。必要な場合には、前記環状の変換領域に散乱反射面を混ぜることも可能である。この詳細は、実施例の説明において記載されている。
【0012】
変換光を生成するためには、本発明の蛍光体装置に、すなわち、内側冷却部を有する2重蛍光体ホイールに、励起レーザ光を放出するように構成された少なくとも1つの励起レーザと、少なくとも1つの反射器とを追加することによって、本発明の反射照明装置を構成する。前記励起レーザ光が、前記蛍光体装置の回転する前記少なくとも1つの変換領域に入射し、当該少なくとも1つの変換領域の蛍光体によって波長変換され、波長変換された光の少なくとも一部が前記少なくとも1つの反射器に当たるように、本発明の反射照明装置は構成されている。
【0013】
さらに、前記少なくとも1つの反射器に少なくとも1つの開口が設けられており、前記少なくとも1つの励起レーザビームは当該開口を通って前記回転する2重蛍光体ホイールの変換領域に当たり、2重蛍光体ホイールに散乱領域が設けられている場合には、前記励起レーザビームが少なくとも一時的にこの散乱領域にも当たるように構成されている。前記少なくとも1つの励起レーザビームは有利には、1つのレーザダイオードによって生成されるか、または、波長が等しいかまたは相違する複数のレーザダイオードによって生成される。前記複数のレーザダイオードは、少なくとも1つの反射器開口を通って前記2重蛍光体ホイールに照射するように配置される。有利には、前記複数のレーザビームは変換面の同じ場所に当たる。その後、反射器から来た有効光(変換光と、場合によっては散乱反射した励起光)は用途に応じて、別の光学部品および/またはオプトエレクトロニクス素子へ供給することができ、とりわけ、光インテグレータにおいて多色光成分を混合するために供給することができる。
【0014】
とりわけプロジェクション用に用いる場合、色域を拡張するために有利なのは、それぞれ異なるレーザ線を有する2つ以上の励起レーザを使用することである。また、設定により近い反射を実現したり、または前記2重蛍光体ホイールの放出スペクトルを改善したり、または光学的なシステム効率を上昇させるために、前記反射器にダイクロイックフィルタ層を設けることも有利である。
【0015】
前記少なくとも1つの反射器は有利には、少なくとも1つの焦点を成すように構成されている。こうするためには、前記反射器はたとえば、放物面状または楕円形の形状を有するか、または、適切な自由形を有することもできる。さらに、前記少なくとも1つの変換領域の少なくとも一部が前記少なくとも1つの焦点を通って回転するように、前記反射器と前記2重蛍光体ホイールとは相互に配置されている。このような構成の利点は、前記焦点の近傍において変換領域または散乱領域から放出された複数の光ビームの少なくとも大部分が、前記反射器によって同様に結像され、たとえば楕円形反射器の2次焦点に結像されることである。こうするためには、前記励起レーザビームが理想的には、変換領域ないしは散乱領域において前記反射器の(1次)焦点に当たるように、反射照明装置を構成する。本発明の特に有利な実施形態の反射照明装置では、前記2重蛍光体ホイールの2つの支持部材の両外側面に少なくとも1つの変換領域が設けられる。前記反射器は、それぞれ少なくとも1つの焦点を有する2つのハーフシェル形反射器から成り、その際には前記反射照明装置は、前記2つの各変換領域がそれぞれ1つの前記ハーフシェル反射器の焦点を通って回転するように構成される。このような実施形態により、本発明の2重蛍光体ホイールを特に有利に使用することができる。というのも、両側の変換領域が光変換に使用されるからである。
【0016】
1つの有利な実施形態では、前記2つのハーフシェル形反射器はそれぞれ1次焦点と2次焦点とを有し、前記2つの支持部材の両外側面に設けられた変換領域は、それぞれ対応する1次焦点を通って回転し、前記2つの2次焦点は相互に一致して、1つの共通の焦点となる。こうするためには、両ハーフシェル形反射器を相互に適切に傾斜させる。この実施形態は、生成した光を光インテグレータに、たとえば導光体に入力結合するのに、特に適している。この詳細は、実施例の説明において記載されている。また、たとえば励起レーザ光に対して複数の異なる蛍光体軌道を駆動できるようにするためには、2重蛍光体ホイールを前記反射装置に対してずらすのが有利である。たとえば異なる幅の蛍光体軌道を使用する場合、前記2つの反射器ハーフシェルをそれぞれ異なって成形することができる。このことはたとえば、自動車投光器においてハイビームおよびロービーム等である複数の異なる照明機能を実現できるようにするのに有利である。環状の蛍光体軌道はそれぞれ異なる半径を有することができる。よって、両方の外側面にこれらの環状蛍光体軌道を相互に対向させて配置する必要はない。
【0017】
以下、実施例を参酌して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1a】内側冷却部を有する本発明の一実施例の蛍光体装置(2重蛍光体ホイール)の側面図である。
【
図1b】
図1aの蛍光体装置を方向Aから見た前面図である。
【
図1c】
図1aの蛍光体装置を切断線BBに沿って切断した断面図である。
【
図3】本発明の別の実施例の、複数の環状軌道を有する蛍光体装置を、
図1bと同様に示す平面図である。
【
図4】本発明の別の実施例の、分割された環状軌道を有する蛍光体装置を、
図1bと同様に示す平面図である。
【0019】
本発明の有利な実施形態
図1a〜1cの各図には、一実施例の、内側冷却部を有する蛍光体装置(2重蛍光体ホイール)の側面図と、当該側面図に対して90°回転させて方向Aから見たときの当該蛍光体装置の前面図と、線B‐Bに沿って切断したときの断面図とを示す。蛍光体装置1は2つのディスク状の支持部材2,3を有し、各支持部材2,3はそれぞれ2つの面2a,2bないしは3a,3bを有する。両支持部材2,3は、良好な熱導電率を有する材料から成り、たとえば銅またはアルミニウムから成り、一方の支持部材2の一方の面2bが他方の支持部材3の一方の面3bの方を向くように、すなわち、前記2つの各支持部材2,3の一方の面が前記蛍光体装置1の2つの相互に対向する内側面2b,3bを成すように、両支持部材2,3は相互に間隔をおいて配置されている。前記2つの各支持部材2,3の他方の面2a,3aは外側を向いている。すなわち、前記2つの内側面2b,3bによって形成されたスペースとは反対側を向いている。すなわち、前記蛍光体装置の2つの外側面2a,3aを成す。各外側面2a,3aには双方とも、蛍光体から成る環状の変換領域4,5が設けられている。一方の面の蛍光体は、励起時に緑色光(G)を放出する、CeドープYAGから成る層であり、他方の面の蛍光体は、励起時に赤色光(R)を放出する、EuドープYAGから成る層である。このような構成により、励起レーザ光が蛍光体装置1によって変換されることにより、2つの異なる色を有する光を生成することができる。必要に応じて、両面に配置される変換領域に使用される蛍光体を、同じ蛍光体とすることもできる。たとえば、複数の異なる光色をそれぞれ別個の照明装置によって生成し、各光色成分を適切に組み合わせることが可能である。
図1aの右側の支持部材2は、中心に円状の開口6を有する。
図1aの左側の支持部材3の外側面3aから、この孔に対して軸方向に離れていく方向に、蛍光体装置1の動作時に両支持部材2,3を回転させるための回転軸7が延在している。両支持部材2,3は、両支持部材2,3の両内側面2b,3b間のスペースに設けられた8つの翼状の放熱フィン8を用いて、相互に結合されている。これらの翼状の放熱フィン8の向きは、両内側面2b,3bに対して垂直方向にされており、放熱フィン8は、まず最初に前記開口6から半径方向に出てきて、流れに有利になるように、矢印で示された回転方向と反対方向に曲げられて、外側縁部まで延在する。動作中は、回転によって周辺空気が開口6内に軸方向に流れ込み、内側面2b,3bと相互に隣接する翼状の放熱フィン8との間のスペース内において実質的に半径方向に流れ、2重蛍光体ホイールの縁部領域に沿って当該縁部領域において流れて、再び外部へ出て戻っていく。このようにして、空気の能動的な流れにより、励起レーザ光によって両側の環状の変換領域4,5の蛍光体にもたらされる熱の排出を改善することができる。必要な場合には、さらに、放熱フィン8を流れに最適な形状に成形することにより、放熱を一層改善することができる。
【0020】
図2は、
図1a〜1cに示された蛍光体装置1(2重蛍光体ホイール)を備えた、本発明の一実施例の反射照明装置20の概略的な縦断面図である。この切断面は、蛍光体装置1の回転軸を通る面である。前記反射照明装置20は前記蛍光体装置1の他にさらに、2つの楕円形のハーフシェル形反射器21,22と、2つの励起レーザ23,24とを有する。前記2つの励起レーザ23,24は2つの異なるレーザダイオードであり、これらの各レーザダイオードはそれぞれ、約450nmないしは405nmの波長の励起レーザビームを放出する。両面に配置された各環状の変換領域4,5がそれぞれ、各対向するハーフシェル形反射器21,22の1次焦点F
A,F
Cを通って回転するように、前記2つの楕円形のハーフシェル形反射器21,22は前記蛍光体装置1に対して配置されている(2重蛍光体ホイール1の回転に通常使用される、たとえば回転軸、電動機等の手段は、より概観しやすくするために図示していない)。さらに、両ハーフシェル形反射器21,22の2次焦点F
B,F
Dが反射照明装置20の光軸L上において一致して1つの共通の焦点F
B,Dとなるように、両ハーフシェル形反射器21,22は相互に斜めになっている。前記2つの各ハーフシェル形反射器21,22はそれぞれ、円形の開口25,26を有し、両励起レーザ23,24の各励起レーザビーム27,28はこれらの各開口25,26を通って、各1次焦点F
A,F
Cの領域において環状の変換領域3,4に照射される。両支持部材2,3が回転すると、前記励起レーザビーム27,28は前記環状の変換領域4,5を順次なぞるように照射される。このことにより、どの時点においても必ず、各励起レーザビーム27,28によって各環状変換領域4,5における蛍光体の一部領域が加熱される時間は、常に短時間のみとなる。さらに、前記励起レーザビーム27,28によって生じた熱は、両支持部材2,3を介して、とりわけ、軸上の開口6を通って2重蛍光体ホイール1内に流入して当該2重蛍光体ホイール1の縁部において実質的に半径方向に流出していく強制冷却空気流により、効率的に放熱される。このことにより、蛍光体が過度に急速に劣化したり破壊することなく、変換領域4,5における励起レーザのパワー密度を高くすることができる。各蛍光体によって波長変換された各光ビームは、場合によっては、波長変換されずに散乱反射しただけの青色(B)励起レーザビームの成分と合わさって、各ハーフシェル形反射器21,22によって共通の第3の焦点F
B,Dへ反射される。この第3の焦点F
B,Dに導光体29の入射面が位置決めされている。前記導光体29は、両ハーフシェル形反射器21,22から来た、光色成分R,G,Bを有する光ビームを混合してさらに導光するための光インテグレータとして設けられている。このRGB混合光はたとえば、映像プロジェクション用の画像出力装置(LCD,DLPまたはLCoS等)に供給することができる(図示されていない)。
【0021】
図中に示していない実施例では、両ハーフシェル形反射器の1次焦点が光軸に関して同じ位置にあるのではなく、むしろ光軸に沿って所期のように間隔をおいてずらされるように、前記反射照明装置は構成される。このことにより、両面において、2重蛍光体ホイールの特定の回転角度において、それぞれ異なる半径を有しひいてはそれぞれ異なる長さを有する環状の蛍光体領域および/または散乱反射領域に照射することが可能になる。このようにして、変換により生成される混合光の色座標を所期のように調整することができる。2次焦点を1つの共通の焦点としたい場合には、両ハーフシェル形反射器を適切に傾けてずらさなければならない。
【0022】
図3は、別の実施例の、内側冷却部を有する蛍光体装置を、
図1bと同様に示す前面図である。しかし、この実施例の蛍光体装置30は2つの環状の変換領域31,32を有し、これらの環状の変換領域31,32は同心状に、前記ディスク状の支持部材33の外側面33aに設けられている。外側の環状変換領域31はCeドープYAG(G)から成り、内側の環状変換領域32はEuドープYAG(R)から成る。さらに、前記2つの環状変換領域31,32間には環状の散乱領域34が配置されている。この散乱領域34は、前記励起レーザ光を直接そのまま用いるために使用され、この場合には、この励起レーザ光はとりわけ青色波長領域内(たとえば450nm)にある(B)。この環状散乱領域34は散乱反射面として形成されている。これにより、直接用いられる励起レーザ光の、プロジェクション用途において妨害となるスペックル特性が、有利には消失し、または少なくとも低減する。この励起レーザビームは、ほぼ、
図3中にて方形35により囲まれた領域に照射され、この領域は、上述の3つの環状領域31,32,34すべての各一部を含む。このように照射するためには、光学系を用いて前記励起レーザビームを適切に成形する。また、前記3つの各環状軌道は相互に接近するように配置されている。このような構成により、1つの外側面33aだけですでに3つの光色成分である赤色(R)、緑色(G)および青色(B)を実現することができる。したがってこの実施例では、反対側の他方の外側面(
図3では見えなくなっている)は、図中に示した外側面33aと同一に構成されている。図示されていない1つの実施例では、反射器において2重蛍光体ホイールをずらすことにより、有利には、励起レーザビームスポットが各時点において当たる蛍光体軌道が1つのみとなるように、それぞれ異なる種類の蛍光体を有する複数の環状の変換領域が同心状に構成および配置されている。このような構成により、上述のようにずらすことによって、変換のために所望のいずれかの光色を選択的に選択することができる。
図4は、別の実施例の、内側冷却部を有する蛍光体装置40を、
図1bと同様に示す前面図である。両面に設けられる、前記励起レーザ光の各照射面をそれぞれ、両ハーフシェル形反射器の各焦点により近づけて保持できるようにするため、かつ、前記3つの基本光色である赤色、緑色および青色を生成するためには、ディスク状の前記2つの各支持部材41の各外側面41aにそれぞれ、赤色を放出する蛍光体円弧部分42と、緑色を放出する蛍光体円弧部分43と、散乱反射円弧部分44とが、1つの環状の軌道45に順次交互に配置されている(他方の外側面は、
図4では隠れている)。概観しやすくするため、
図4では各4分割円にそれぞれ、1つの赤色放出蛍光体円弧部分42と、1つの緑色放出蛍光体円弧部分43と、散乱反射円弧部分44とのみを示しているが、実際には、特にプロジェクション用に使用する場合、1つの4分割円あたり複数の円弧部分を設けることもできる。加法光混色は必ず、対応する円弧部分42〜44が回転したときに前記励起レーザビームスポット(
図4には示していない)を通って生成された光色成分の、視覚による平均化によって生成される。最後に、1つの前記環状変換領域において複数の蛍光体を混合することにより(図示されていない)、静止時にもすでに光混色が行われるようにすることが可能であり、必要な場合には、励起レーザ光の部分反射散乱と組み合わせることも可能である。