特許第5661962号(P5661962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5661962
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】路面段差部用のスロープ構造体
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/08 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   E01C9/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-113769(P2014-113769)
(22)【出願日】2014年6月2日
【審査請求日】2014年8月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509264268
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・メンテナンス北陸株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】前多 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】川畑 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】増田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】東 裕二
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 章司
(72)【発明者】
【氏名】清明 邦央
【審査官】 ▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−093807(JP,U)
【文献】 特開2004−042817(JP,A)
【文献】 実開平03−079304(JP,U)
【文献】 実開平04−054838(JP,U)
【文献】 特開2010−255247(JP,A)
【文献】 特開2008−138446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 3/00 − 17/00
E02D 3/00 − 3/10
E02D 17/18 − 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の段差部に設置してスロープ面を形成する路面段差部用のスロープ構造体であって、
下位側の路面上に敷設する折り畳み可能なセル構造体と、
展開した前記セル構造体のセル内に充填する中詰材と、
前記セル構造体の上面に敷設して中詰材を封止するグリッド材と、
前記グリッド材を被覆し、その上面にスロープ走行面を形成する保護層とを具備し、
前記セル構造体は上下を開放した複数のセルを有する立体ハニカム構造を呈しているとともに、展開方向の一方から他方へ向けてその高さが徐々に低くなるようにその片面に傾斜面を形成し、
前記セル構造体の高位側が路面の段差面と対向するとともに、該セル構造体の低位側が段差面から離隔するように、前記セル構造体が展開して敷設され、
前記グリッド材がセル構造体と協働して中詰材の変位を拘束するとともに、保護層の変位を拘束することを特徴とする、
路面段差部用のスロープ構造体。
【請求項2】
断面形状が楔状を呈し、上面にスロープ面を形成した嵩上げ用の嵩上げスロープ体をさらに含み、前記路面上に設置した嵩上げスロープ体のスロープ面に前記セル構造体を載置してセル構造体を嵩上げしたことを特徴とする、請求項1に記載の路面段差部用のスロープ構造体。
【請求項3】
前記中詰材と保護層とが硬質粒状体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の路面段差部用のスロープ構造体。
【請求項4】
前記嵩上げスロープ体が硬質粒状体であることを特徴とする、請求項2または3に記載の路面段差部用のスロープ構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は災害時等において短時間で、かつ、省労力で段差を解消して緊急輸送路を確保できる路面段差部用のスロープ構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災時には、道路と橋梁の路面境界部や地中埋設物の上方の路面境界に段差を生じて交通網が各所で寸断された。
特許文献1には段差部の段差面に金属を主体とした脚付きの段差解消プレートの基端を取り付け、段差面の上部から斜め下方へ向けて張り出した段差解消プレートを利用して車両の通行を行うことが開示されている。
また段差の解消手段として、複数の土のうを積み上げる方法や、土のうと敷鉄板を組み合せる方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−90534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
<1>特許文献1に開示された段差解消プレートは金属製の重量物であるため設置に重機を必要とするだけでなく、資材コストも嵩み、段差解消プレートの取り付けに多くの時間と労力を要する。
<2>土のうを用いる方法にあっては、被災直後に多数の土のうを製作するために多大の労力と時間を必要とする。
また大量の土のうを備蓄しておく方法もあるが、広い保管スペースを必要とするだけでなく、袋体が一年程度で劣化するために、定期的に土のうの詰め替えが必要であり、メンテナンスコストが嵩むといった問題もある。
<3>土のうを積み上げただけの構造体ではスロープ面の起伏が激しいために車両が通行し難い。くわえて数回の走行で袋体が破れてしまい耐久性に問題があった。
殊に、積載量が10tクラスの大型車両の連続走行に耐えられることが困難である。
<4>土のうの表面に敷鉄板を被覆する方法は、多数の土のうの積み上げ作業を経た後に敷鉄板を設置しなければならず、作業完了までに多くの時間と労力を要する。
殊に敷鉄板は800kg以上の重量物であるため、敷鉄板の積み込み場所と敷設現場の両方の場所でクレーン等の機材を使用する必要がある。
<5>応急的措置の役割を終えた後に、段差部に仮設舗装を行う場合がある。
この際、応急手段として設置した敷鉄板や多数の土のうの撤去が必要であるが、これらの資材の撤去作業に多くの時間と労力を必要とする。
【0005】
本発明は既述した点に鑑みてなされたもので、その目的とするところはつぎの路面段差部用のスロープ構造体を提供することにある。
<1>短時間で、かつ、省労力で施工できて、被災時に大型車両の連続走行が可能であること。
<2>資材の備蓄がメンテナンスフリーでかつ省スペースであること。
<3>応急的措置の役割を終えた後における撤去性にも優れこと。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、路面の段差部に設置してスロープ面を形成する路面段差部用のスロープ構造体であって、下位側の路面上に敷設する折り畳み可能なセル構造体と、展開した前記セル構造体のセル内に充填する中詰材と、前記セル構造体の上面に敷設して中詰材を封止するグリッド材と、前記グリッド材を被覆し、その上面にスロープ走行面を形成する保護層とを具備し、前記セル構造体は上下を開放した複数のセルを有する立体ハニカム構造を呈しているとともに、展開方向の一方から他方へ向けてその高さが徐々に低くなるようにその片面に傾斜面を形成し、前記セル構造体の高位側が路面の段差面と対向するとともに、該セル構造体の低位側が段差面から離隔するように、前記セル構造体が展開して敷設され、前記グリッド材がセル構造体と協働して中詰材の変位を拘束するとともに、保護層の変位を拘束することを特徴とする。
さらに本発明の他の形態においては、断面形状が楔状を呈し、上面にスロープ面を形成した嵩上げ用の嵩上げスロープ体をさらに含み、前記路面上に設置した嵩上げスロープ体のスロープ面に前記セル構造体を載置してセル構造体を嵩上げしたことを特徴とする。
さらに本発明の他の形態において、前記中詰材と保護層とが硬質粒状体である。
さらに本発明の他の形態において、前記嵩上げスロープ体が硬質粒状体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は少なくとも次の一つの効果を得ることができる。
<1>スロープ構造体を構成するセル構造体やグリッド材等の資材の運搬と組み立てが容易であり、さらに特殊な重機や機材を使用せずに、短時間で、かつ、省労力でスロープ構造体を施工することができる。
<2>軽量で取扱いが簡易な資材を用いて構築したスロープ構造体は、耐久性に優れ、被災時に大型車両の連続走行が可能な緊急輸送路として活用することができる。
<3>資材の備蓄スペースが小さく、長期間に亘ってメンテナンスも特に必要がない。
<4>嵩上げスロープ体を併用することで、セル構造体を実質的に嵩上げしてセル構造体高さの不足分を補うことができる。
したがって、路面の段差がどんなに大きくとも、市販されている低廉なセル構造体を使用して段差を解消することができる。
<5>セル構造体やグリッド材を吊り上げることでスロープ構造体を短時間に解体撤去することができて、スロープ構造体の施工時だけでなく撤去時も短時間で作業を行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一部を省略した本発明に係るスロープ構造体の斜視図
図2図1におけるII−IIの断面図
図3】スロープ構造体の施工方法の説明図
図4】スロープ構造体の施工方法の説明図
図5】スロープ構造体の撤去方法の説明図
図6】嵩上げスロープ体を用いた他の実施形態に係るスロープ構造体の斜視図
図7図6におけるVII−VIIの断面図
図8】スロープ構造体の施工方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。
【0010】
<1>路面段差部用のスロープ構造体の概要
図1,2を参照して説明すると、図の左方の路面11と右方の路面12との間には段差を生じている。
本発明に係るスロープ構造体Aは、下位側の路面12上に敷設する折り畳み可能なセル構造体20と、展開したセル構造体20のセル空間に充填する中詰材30と、セル構造体20の上面に敷設して中詰材30を封止するグリッド材40と、グリッド材40を被覆する保護層50とを具備する。
【0011】
<2>セル構造体
セル構造体20は、幅方向に並設した複数の帯状シートを互い所定の間隔で千鳥状に繰り返して部分的に熱融着等により接合し、これを幅方向の直交方向に展張することによってハニカム状に複数のセル21を形成した折り畳み式の立体ハニカム構造体である。
【0012】
<2.1>素材
有孔構造または無孔構造のセル構造体20は、耐候性、耐久性に優れた樹脂又は繊維素材又はこれらの複合材で形成されている。セル構造体20としては、例えば「セルデム(登録商標)」(前田工繊株式会社製)が使用可能である。
セル構造体20は、複数の上下を開放したセル21を有する。
また運搬性、取扱性を考慮して人力で取扱い可能な重量単位に小分けしておくとよい。
保管にあたっては、高さ寸法の異なる数種類のセル構造体20を準備しておくとよい。
【0013】
<2.2>傾斜面
セル構造体20はその上面または下面に傾斜面22を形成していて、展開方向の一方から他方へ向けてその高さが徐々に低くなっている。
切断設備の整った工場等で、セル構造体20を折り畳んだ状態でその片面を斜めにカットすることで傾斜面22を容易に形成できる。
セル構造体20の高さは段差面13の高さより低い関係にある。
傾斜面22を形成したのは、セル構造体20の展開時に上面をスロープ面として利用するためであり、その勾配θはセル構造体20の展開長等を考慮して適宜選択する。
【0014】
<3>中詰材
中詰材30としては土砂、砕石、砂利、コンクリートガラ等の硬質粒状体を使用することができる。
【0015】
<4>グリッド材
グリッド材40はセル構造体20の上面と保護層50の間に敷設するメッシュ状またはシート状の部材であり、例えば樹脂製のジオグリッド、菱形金網、溶接金網等を使用することができる。耐候性と保管スペースを考慮するとジオグリッドが好適である。
グリッド材40のサイズは少なくとも複数のセル21の上部間を封鎖できる寸法であればよい。
グリッド材40を使用するのは、各セル21内に充填した中詰材30および保護層50の拘束性を高めるためである。
【0016】
<5>保護層
保護層50はセル構造体20およびグリッド材40の保護材であり、例えば砕石等の硬質粒状体を使用できる。
【0017】
[スロープ構造体の施工方法]
つぎにスロープ構造体Aの施工方法について説明する。
【0018】
<1>資材の保管
主要幹線道路には道路管理施設が配備されているので、これらの施設にスロープ構造体Aを構成するセル構造体20やグリッド材40等の資材を保管しておくとよい。段差の発生が予想される場合にはその近傍に専用の保管施設を設けておくことも可能である。
セル構造体20は折り畳んで保管でき、またグリッド材40が可撓性を有する場合はロール状に巻き取って保管できるので、資材の保管スペースが小さくて済む。
さらにセル構造体20やグリッド材40は、土のう用の袋体と比べて耐候性が格段に優れた素材で形成されているため長期保管が可能であり、保管中のメンテナンスは原則不要である。
【0019】
<2>資材の現場搬入
被災時において、発生段差に見合った高さのセル構造体20等を搬送車両に積み込み現場へ搬送する。
セル構造体20やグリッド材40の積み下ろしを作業員の人力で行えるので、特別な機材は必要としない。
【0020】
<3>セル構造体の展開と中詰材の充填
図3を参照して説明すると、現場へ搬入したセル構造体20を低位側の路面12上で展開した後、各セル21の内外に中詰材30を投入し、さらにセル構造体20の上面に沿って平らに敷き均すことで、上面にスロープ面を有する仮スロープ構造体を構築する。
【0021】
セル構造体20を敷設する際、セル構造体20の高位側を路面11,12の段差面13に対向して接面させ、セル構造体20の低位側を段差面13から離隔させる。
本発明ではセル構造体20の上面をグリッド材40と保護層50で覆うことで中詰材30を確実に拘束できるので、転圧機による中詰材30の締め固めを省略できる。
【0022】
路面11,12の段差面13が平面であることは少なく、縦横方向へ向けて凹凸を生じる場合が多い。本発明ではセル構造体20の可撓性を利用して段差面13の凹凸形状に追従させて敷設できるから、凹凸のある段差面13を平らに切除する作業も不要である。
【0023】
<4>グリッド材の被覆
図4を参照して説明すると、現場のスロープ長に合せてグリッド材40をカットする。
そしてセル構造体20の上部全面に亘って連続性を有するグリッド材40を敷設して各セル21内に投入した中詰材30を封止する。
路面12の幅員がグリッド材40の横断幅寸法を越えるときは、セル構造体20の展開方向へ向けた複数枚のグリッド材40を路面12の幅員方向に沿って敷き並べる。
【0024】
<5>保護層の被覆
最後に、図2に示すようにグリッド材40の表面に砕石等を敷き詰めて保護層50を形成して断面形状が略楔状を呈するスロープ構造体Aの施工を完了する。
保護層50の層厚を適宜選択することで、上位の路面11との不陸調整を行うことができる。
既述した一連の作業を作業員の人力だけで行うことで、高低差のある路面11,12の間に跨って連続したスロープ走行面を有するスロープ構造体Aを構築することができる。
【0025】
<6>大型車両の連続走行
図2において、セル構造体20が中詰材30を複数の区画で拘束することにより、中詰材30を構成する硬質粒状体間のインターロッキング効果と、セル構造体20およびグリッド材40による中詰材30の拘束作用とが組み合わさり、さらにグリッド材40による保護層50の補強作用も加わることで、スロープ構造体Aを圧縮強度、せん断強度、曲げ強度及びじん性の高い構造物とすることができる。
さらにセル構造体20の上面を覆うグリッド材40と保護層50が協働して、載荷重を分散して伝達するので、一部の中詰材30が局所的に圧密変形することを効果的に抑制できる。
くわえて、グリッド材40が保護層50を補強することで、保護層50に轍を生じ難くなっている。
したがって、路面11,12の段差部に設けたスロープ構造体Aは重荷重の大型緊急車両の連続走行を可能にする。
【0026】
[スロープ構造体の撤去方法]
応急的措置の役割を終えた後に、段差部に仮設舗装を行う場合、スロープ構造体Aを撤去する必要がある。図5を参照してスロープ構造体Aの撤去方法の一例について説明する。
【0027】
<1>セル構造体とグリッド材の一括撤去
グリッド材40の周縁部の一部と、セル構造体20の周縁部の一部を図示しない簡易クレーンのフックに連結し、セル構造体20とグリッド材40を同時に吊り上げる。
グリッド材40の吊り上げに伴い、保護層50を構成する砕石等の硬質粒状体がグリッド材40の開口を通過して落下するか、或いはグリッド材40の表面を滑落する。
またセル構造体20の吊り上げに伴い、中詰材30を構成する砕石等の硬質粒状体が、セル構造体20の各セル21の底部開口を通じて落下する。
このように、セル構造体20とグリッド材40を同時に吊り上げるだけの簡単な作業できわめて短時間のうちにスロープ構造体Aを解体撤去できる。
なお、路面12上に残った砕石等の硬質粒状体は、仮設舗装の路盤材料として使用可能である。
【0028】
<2>セル構造体とグリッド材の分離撤去
スロープ構造体Aの撤去方法の他の撤去方法としては、グリッド材40を先行して吊り上げ撤去した後に、セル構造体20を吊り上げ撤去してもよい。
【0029】
[他の実施の形態]
図6〜8を参照して段差の大きい場合に適用可能なスロープ構造体Aについて説明する。その説明に際し、前記した形態と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0030】
<1>セル構造体の概要
本例に係るスロープ構造体Aは、段差面13に当接させて下位側の路面12上に形成した断面楔状の嵩上げスロープ体60と、嵩上げスロープ体60の上面のスロープ面61とスロープ面61の延長方向に位置する路面12との間に跨って敷設した折り畳み可能なセル構造体20と、展開したセル構造体20のセル空間に充填した中詰材30と、セル構造体20の上面に敷設して中詰材30を封止するグリッド材40と、グリッド材40を被覆した保護層50とを具備する。
【0031】
<2>嵩上げスロープ体
嵩上げスロープ体60はセル構造体20の高さの不足分を補うための耐圧性に優れた構造体であり、換言すればスロープ構造体Aの一部を嵩上げする構造体である。
嵩上げスロープ体60の上面には所定の勾配を有するスロープ面61を形成している。
嵩上げスロープ体60としては、例えば土砂、砕石、砂利、コンクリートガラ等の硬質粒状体を撒き均して形成することができる。
嵩上げスロープ体60の他の素材としては、断面形状が略楔状を呈する発泡スチロール体等を使用することも可能である。
【0032】
<3>セル構造体
先の実施形態ではセル構造体20の全長に亘って傾斜面22を形成した。
本例では図7に示すように、その一部に傾斜面22を形成したセル構造体20を使用する。
すなわち、嵩上げスロープ体60のスロープ面61に載置するセル構造体20の図面左方の部位は高さが均一であり、嵩上げスロープ体60の後方の路面12に載置するセル構造体20の図面右方の部位に傾斜面22を形成していて、展開方向の一方から他方へ向けてその高さが徐々に低くなっている。
【0033】
<4>スロープ構造体の施工方法
つぎにスロープ構造体Aの施工方法について説明する。
【0034】
<4.1>嵩上げスロープ体の構築
図8を参照して説明すると、段差面13に接面させて下位側の路面12上に断面楔状の嵩上げスロープ体60を形成する。
嵩上げスロープ体60の高位側を段差面13に接面させ、嵩上げスロープ体60の低位側を段差面13から離隔させて配置する。
砕石等の硬質粒状体を撒き均して嵩上げスロープ体60を構築した場合、転圧機による締め固めを省略することができる。
また必要に応じてスロープ面61の全面に土木シート65を敷設する。
【0035】
<4.2>以降の作業
図7を参照して説明すると、嵩上げスロープ体60のスロープ面61と、スロープ面61の延長上に位置する路面12を支持面として、既述した作業と同様に、セル構造体20の展開設置作業、およびセル構造体20のセル21内への中詰材30の投入作業、セル構造体20の上面へのグリッド材40の敷設作業、グリッド材40の上面への保護層50の被覆作業を経てスロープ構造体Aを構築する。
【0036】
<5>スロープ構造体の撤去方法
本例におけるスロープ構造体Aの撤去方法は基本的に既述した実施形態と同様である。
【0037】
<6>本例の作用効果
本例にあっては、段差が大きくセル構造体20の高さが不足する場合であっても、嵩上げスロープ体60を形成して段差部側を嵩上げする簡単な作業を追加するだけで、セル構造体20の高さの不足分を補うことができる。
したがって、全長の高いセル構造体20を特別に製作しなくとも、市販されている低廉なセル構造体20を使用することで、路面11,12間に発生した大きな段差を解消できて、大型緊急車両の連続走行が可能なスロープ構造体Aを提供することができる。
【符号の説明】
【0038】
A・・・・・・スロープ構造体
11・・・・・下位側の路面
12・・・・・上位側の路面
13・・・・・段差面
20・・・・・セル構造体
21・・・・・セル
22・・・・・傾斜面
30・・・・・中詰材
40・・・・・グリッド材
50・・・・・保護層
60・・・・・嵩上げスロープ体
61・・・・・スロープ面
【要約】
【課題】短時間で、かつ、省労力で施工できて、被災時に大型車両の連続走行が可能であること。
【解決手段】下位側の路面12上に敷設する折り畳み可能なセル構造体20と、展開したセル構造体20のセル内に充填する中詰材30と、セル構造体20の上面に敷設して中詰材を封止するグリッド材40と、グリッド材40を被覆する保護層50とを具備する。グリッド材40がセル構造体20と協働して中詰材30の変位を拘束するとともに、保護層50の変位を拘束する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8