特許第5662002号(P5662002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5662002-液晶表示装置用反射フィルム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662002
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】液晶表示装置用反射フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13357 20060101AFI20150108BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20150108BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   G02F1/13357
   G02F1/1335
   G02F1/1335 520
   G02B5/08 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2009-5650(P2009-5650)
(22)【出願日】2009年1月14日
(65)【公開番号】特開2010-164689(P2010-164689A)
(43)【公開日】2010年7月29日
【審査請求日】2011年11月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】301020226
【氏名又は名称】帝人デュポンフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】栂野 真也
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/032073(WO,A1)
【文献】 特開平04−239540(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/148544(WO,A1)
【文献】 特開平07−110476(JP,A)
【文献】 特開2006−330535(JP,A)
【文献】 特開平11−064613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13357
G02F 1/1335
G02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色フィルムおよび該フィルムのうえに設けられた塗布層からなる液晶表示装置用反射フィルムであって、該液晶表示装置用反射フィルムの直上に光源を有し、該塗布層は、有機蛍光体を含有するバインダー組成物90〜10重量部および透明粒子10〜90重量部からなり、バインダー組成物には、塗布層の全重量100重量%を基準にして0.5〜5重量%の有機蛍光体が含有され、
5〜100%の露出率で塗布層表面から露出している透明粒子が50〜100%の被覆率で白色フィルムの表面を被覆していることを特徴とする、バックライト方式液晶表示装置用反射フィルム。
【請求項2】
上記透明粒子の平均粒子径が10μm以上である、請求項1に記載のバックライト方式液晶表示装置用反射フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライトユニットにおいて光源の反射フィルムとして用いられる、液晶表示装置用反射フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトユニットには、表示装置の背面に光源を置くバックライト方式と、側面に光源を置くサイドライト方式があり、いずれの方式においても光源からの光が画面の背面へ逃げるのを防ぐために背面に反射フィルムが設置される。この反射フィルムには、薄く、かつ高い反射率を備えることが要求される。この反射フィルムとして、フィルムの内部に微細な気泡を含有する白色ポリエステルフィルムが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−62104号公報
【特許文献2】特公平8−16175号公報
【特許文献3】特開2000−37835号公報
【特許文献4】特開2005−125700号公報
【特許文献5】特開2004−50479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶テレビの多くは、バックライト方式のバックライトユニットを備えるが、テレビの高輝度化に対応するために、より高輝度のバックライトユニットが求められている。しかし、反射フィルムの反射率を向上することだけでは限界がある。
【0005】
バックライト方式においては、反射フィルムの鏡面反射が強いと、反射フィルムのうえに位置する光源自体に反射光が返り、その光は表示面には到達しないため光のロスが生じて輝度低下の原因になる。本発明は、フィルムによる鏡面反射を抑え、直上の光源を回避する指向性を反射光に付与して反射させることにより、液晶表示装置のバックライト方式のバックライトユニットに反射フィルムとして用いたときに高い輝度を得ることのできるとともに、従来であれば表示に用いられない波長域の光エネルギーを可視光に変換することで高い輝度を得ることのできる、液晶表示装置用反射フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、白色フィルムおよび該フィルムのうえに設けられた塗布層からなる液晶表示装置用反射フィルムであって、該液晶表示装置用反射フィルムの直上に光源を有し、該塗布層は、有機蛍光体を含有するバインダー組成物90〜10重量部および透明粒子10〜90重量部からなり、バインダー組成物には、塗布層の全重量100重量%を基準にして0.5〜5重量%の有機蛍光体が含有され、
5〜100%の露出率で塗布層表面から露出している透明粒子が50〜100%の被覆率で白色フィルムの表面を被覆していることを特徴とする、バックライト方式液晶表示装置用反射フィルムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィルムによる鏡面反射を抑え、直上の光源を回避する指向性を反射光に付与して反射させることにより、液晶表示装置のバックライト方式のバックライトユニットに反射フィルムとして用いたときに高い輝度を得ることのできるとともに、従来であれば表示に用いられない波長域の光エネルギーを可視光に変換することで高い輝度を得ることのできる、液晶表示装置用反射フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】被覆率の測定においてミクロトームを用いて切断したフィルムの切断面のうち各測定方向の測定領域の長さ3mmの範囲の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
[白色フィルム]
本発明における白色フィルムは、熱可塑性樹脂からなり、白色の着色剤またはボイド形成物質を熱可塑性樹脂の中に含有させることによって白色を呈するようにしたフィルムである。着色剤またはボイド形成物質としては、例えば無機粒子、有機粒子を用いることができる。
白色フィルムの光線反射率は、波長550nmにおける反射率として、好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、特に好ましくは97%以上である。
【0011】
白色フィルムは、単層フィルムであっても積層フィルムであってもよい。白色フィルムが積層フィルムである場合、白色フィルムは好ましくは白色反射層と支持層から構成される。高い光線反射率と機械的強度を得る観点から、白色フィルムは積層フィルムであることが好ましい。その場合、白色反射層として比較的多くのボイドを含有する層と、支持層として比較的少ないボイドを含有するかボイドを含有しない層とから構成される白色フィルムであることが好ましい。
【0012】
白色フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレンを挙げることができ、機械的特性および熱安定性に優れる白色フィルムを得る観点から、白色フィルムの白色反射層、支持層ともにポリエステルから構成されることが好ましい。
【0013】
[ポリエステル]
白色フィルムの熱可塑性樹脂としてポリエステルを用いる場合、ポリエステルとしては、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなるポリエステルを用いる。このジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4’―ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸を挙げることができる。ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1,6―ヘキサンジオールを挙げることができる。
【0014】
これらのポリエステルのなかでも芳香族ポリエステルが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。ポリエチレンテレフタレートはホモポリマーであってもよいが、共重合ポリマーが好ましい。
【0015】
特に、白色フィルムとして、白色反射層として比較的多くのボイドを含有する層と、支持層として比較的少ないボイドを含有するかボイドを含有しない層とから構成される白色フィルムを用いる場合、白色反射層に用いるポリエステルは共重合ポリエステルであることが好ましい。この場合、共重合成分の割合は、全ジカルボン酸成分を基準として例えば3〜20モル%、好ましくは4〜15モル%、さらに好ましくは5〜13モル%である。共重合成分の割合をこの範囲とすることによって、ボイドを比較的多く含有する白色反射層についても優れた製膜性を得ることができ、熱寸法安定性に優れた白色フィルムを得ることできる。
【0016】
[着色剤またはボイド形成物質]
白色反射層の着色剤またはボイド形成物質として無機粒子を用いる場合、白色無機粒子が好ましい。この白色無機粒子としては、硫酸バリウム、二酸化チタン、二酸化珪素、炭酸カルシウムの粒子を例示することができる。
【0017】
無機粒子の平均粒子径は、例えば0.2〜3.0μm、好ましくは0.3〜2.5μm、さら好ましくは0.4〜2.0μmである。この範囲の無機粒子を用いることで、熱可塑性樹脂、特にポリエステル中で適度に分散させることができ、粒子の凝集が起こりずらく、粗大突起のないフィルムを得ることができ、同時に、フィルムの表面が粗くなり過ぎず、適切な範囲に光沢度をコントロールすることができる。なお、無機粒子は、どのような粒子形状でもあってもよく、例えば、板状、球状であってもよい。無機粒子は、分散性を向上させるための表面処理を行ってあってもよい。
【0018】
白色反射層の着色剤またはボイド形成物質として有機粒子を用いる場合、有機粒子としてポリエステルに非相溶な樹脂の粒子を用いる。この有機粒子としては、シリコーン樹脂粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子が好ましい。有機粒子の平均粒子径は、例えば0.2〜10μm、好ましくは0.3〜8.0μm、さらに好ましくは0.4〜6.0μmである。この範囲の有機粒子を用いることで、ポリエステル中で適度に分散させることができ粒子の凝集が起こりずらく、粗大突起のない白色フィルムを得ることができる。
【0019】
[バインダー組成物]
塗布層は、有機蛍光体を含有するバインダー組成物90〜10重量部および透明粒子10〜90重量部からなる。透明粒子が10重量部未満であると十分な集光効果が得られず、90重量部を超えると透明粒子が白色フィルムの表面から脱落する。
【0020】
[バインダー組成物]
本発明において塗布層は有機蛍光体を含有する。さらに詳しくいうと、塗布層を構成するバインダー組成物は、塗布層の全重量100重量%を基準にして0.5〜5重量%の有機蛍光体を含有する。有機蛍光体が0.5重量%未満であると輝度を向上する効果を得ることができない。他方、5重量%を超えると有機蛍光体による着色が顕著になり、液晶表示装置の反射フィルムとして用いたときに正確な色再現ができない。なお、塗布層の全重量は透明粒子とバインダー組成物を含めた重量である。
【0021】
[バインダー]
バインダー組成物のバインダーとしては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、これらの共重合体やブレンド物を用いることができる。
バインダー組成物は、上述のバインダーの他に、さらに架橋剤を含有してもよい。架橋剤として、例えばイソシアネート系、メラミン系、エポキシ系の架橋剤を用いることができ、これらは架橋されていてもよい。
【0022】
[蛍光体]
本発明における有機蛍光体は、400〜450nmの波長の光で励起し500〜600nmの波長の光を発光する蛍光体であることが好ましい。これは、本発明における蛍光体の励起波長が400〜450nmの帯域にあり、かつその発光波長が500〜600nmにあることを意味する。励起波長がこの範囲あることによって、液晶表示装置のバックライトユニットの反射フィルムとして用いたときに、蛍光体による着色が実質的になく、かつ一層高い反射率を示す反射フィルムを得ることができる。
【0023】
上記の励起波長および発光波長についての要件を満足する有機蛍光体として、例えば、スチルベン系蛍光剤、ジスチルベン系蛍光剤、ベンゾオキサゾール系蛍光剤、スチリル・オキサゾール系蛍光剤、ピレン・オキサゾール系蛍光剤、クマリン系蛍光剤、イミダゾール系蛍光剤、ベンゾイミダゾール系蛍光剤、ピラゾリン系蛍光剤、アミノクマリン系蛍光剤、ジスチリル−ビフェニル系蛍光剤、ナフタルイミド系蛍光剤を用いることができる。これらの中でも、耐久性が高く、反射率を向上する効果が高いことから、ベンゾオキサゾール系蛍光剤、スチリル・オキサゾール系蛍光剤、ナフタルイミド系蛍光剤が好ましく、具体的には、イーストブライト OB−1(イーストマン社製 ベンゾオキサゾール系蛍光剤)、Uvitex−OB(チバガイギー社製 スチリル・オキサゾール系蛍光剤)、ルモゲングリーン850(BASF社製 ナフタルイミド系蛍光剤)を用いることが好ましい。
【0024】
[透明粒子]
本発明の液晶表示装置用反射フィルムにおいては、透明粒子が塗布層に含有される。この透明粒子は白色フィルム表面を被覆していることが好ましく、後に定義する被覆率で、好ましくは50〜100%、さらに好ましくは60〜100%、さらに好ましくは70〜100%、特に好ましくは80〜100%の被覆率で白色フィルム表面を被覆している。被覆率がこの範囲であることによって、液晶表示装置において反射フィルムの直上に配置される光源に返る反射光を少なくすることができ、特に高い輝度を得ることできる。
【0025】
本発明において、被覆率は、フィルム面内の直交する二方向のそれぞれ長さ3mmの測定領域の合計長さ6mmの測定領域について観察を行い、測定領域において白色フィルム表面を透明粒子が被覆している割合として定義される。
【0026】
具体的には、ミクロトームを用いて、フィルム面内に無作為に選んだ一方向とフィルムの厚み方向が切断面となるように切片サンプル1を切り出し、切片サンプル1で選んだ無作為な一方向と直交する方向と厚み方向が切断面となるように切片サンプル2を切り出し、切片サンプル1のバインダーの塗膜面の長さ3mmの領域と、切片サンプル2のバインダーの塗膜面の長さ3mmの領域との合計長さ6mmの測定領域について、日立製作所製S−4700形電界放出形走査電子顕微鏡を用い、倍率3000倍にて観察し、切片サンプルの切断面内における測定領域において、透明粒子に被覆されていないフィルム表面の部分の長さを積算して、下記式で求める(図1参照)。
被覆率
=(6mm−(透明粒子に被覆されていない部分の積算長さ))/6mm×100(%)
【0027】
なお、切断面において透明粒子の最大径部分が塗膜表面より外側に出ている場合には、透明粒子の最大径で覆われる部分を透明粒子に被覆されているとみなし、透明粒子の最大径部分が塗膜表面より内側にある場合、すなわち塗膜中に沈みこんでいる場合には、透明粒子のうち塗膜より外に出ている部分が作るドーム状突起の最大径を粒子に被覆されているとみなす。
【0028】
本発明における被覆率の算出において、白色フィルム表面を被覆しているとして扱う透明粒子は、反射フィルムの表面に透明粒子の一部分または全部が露出しているものである。この露出は、本発明で定義する露出率で5〜100%、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは20〜100%の露出率での露出をいう。このように、露出率5%未満の透明粒子を被覆している粒子として扱わないのは、露出率が5%未満であると本発明の目的とする、露出粒子による集光効果を得ることができないからである。
【0029】
透明粒子は、透明粒子を白色フィルムの表面に支持するために白色フィルムの表面に設けられたバインダーの塗膜に支持されている。このため、透明粒子の一部は、バインダーの塗膜に接するか、沈み込んでいる。なお、露出率100%は、切断面において、白色フィルム表面と透明粒子表面が接する形でバインダーによって白色フィルムの表面に支えられている状況にあたり、露出率0%は、切断面において、白色フィルム表面に設けられたバインダーの塗膜の中に透明粒子が完全に沈み込んでいる状態であり、露出率50%は、切断面において、白色フィルム表面に設けられたバインダーの塗膜の中に透明粒子の半分が埋まり、残りの半分が塗膜の外に突出している状態である。
【0030】
より正確に露出率を定義すると、露出率は、切片サンプルの切断面内における透明粒子の断面の中心を通りフィルムの塗膜面に垂直に向かう直線を引いたときに、この直線がフィルム切片の切断面内において透明粒子の表面と交わる2つの点のうち、露出した側の表面にある点をS、露出していない側の表面にある点をTとし、さきの直線がバインダーの塗膜面と交わる点をBとしたとき、(SとBとの間の距離)/(SとTとの間の距離)で表される。
【0031】
すなわち、露出率(%)は、下記式で定義される。
露出率=(SとBとの間の距離)/(SとTとの間の距離)×100(%)
なお、切断面内における透明粒子の断面の中心は、粒子が球状の場合はその断面の円の中心とし、粒子が非球状の場合は、その断面の重心とする。
【0032】
透明粒子は、バインダーの塗膜で白色ポリエステルフィルム上に支持される。このバインダーとしては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、これらの共重合体やブレンド物を用いることができる。
塗膜は、上述のバインダーの他に、さらにイソシアネート系、メラミン系、エポキシ系の架橋剤を配合して架橋されていてもよい。
【0033】
透明粒子としては、無機透明粒子、有機透明粒子のいずれも用いることができる。これらは複数の粒子を併用していもよい。透明粒子は、それを構成する素材自体の光線透過率が50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であるものがよく、可視領域において光の吸収がないものが好ましい。
【0034】
有機透明粒子として、例えば、アクリル粒子、シリコーン粒子、スチレン粒子を用いることができる。可視光領域における光の吸収が殆ど無いことから、アクリル粒子、スチレン粒子が好ましい。無機透明粒子としては、例えばガラス粒子を用いることができる。
【0035】
透明粒子としては、光を集光するために曲面で構成されるか、曲面と平面で構成される形状のものを用いる。この形状として、例えば、球状、ラグビーボール状、凸レンズ状のものを用いることができる。効果的に輝度を向上するために、アスペクト比が3以下のものが好ましく、さらにアスペクト比が1.2以下のものが好ましい。得に好ましい形状は球状粒子である。なお、アスペクト比は長径/短径である。そして、透明粒子の粒子径は、透明粒子が球状でない場合には、長径と短径の平均をとった値である。
【0036】
透明粒子の大きさは、平均粒子径でいうと、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは7〜45μm、特に好ましくは8〜40μm、最も好ましくは10〜30μmである。この範囲の平均粒子径であることによって、凝集が生じがたく、光の指向性をコントロールし易い点に加え、粒子の脱落や塗工に際しての筋状の塗布欠陥が発生し難い状態とすることができる。
【0037】
[製造方法]
以下、本発明の液晶表示装置用反射フィルムを製造する方法の一例を説明する。この例では、白色フィルムとして白色反射層と支持層から構成される積層フィルムである白色フィルムを用いる。
【0038】
白色フィルムに用いるポリエステルは、線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き20〜50μmの不織布型フィルターを用いて濾過を行うことが好ましい。この濾過を行うことで、通常は凝集して粗大凝集粒子となりやすい粒子の凝集を抑え、粗大異物の少ない積層フィルムを得ることができる。
【0039】
濾過したポリエステルの組成物は、溶融した状態でフィードブロックを用いた同時多層押出法により、ダイから多層に状態で押出し、積層未延伸シートを製造する。
ダイより押出された積層未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、積層未延伸フィルムとなる。この積層未延伸フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して積層縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸は、ポリエステルのガラス転移点(Tg)以上の温度で行うことが好ましい。延伸倍率は、縦方向、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)ともに、好ましくは2.2〜4.0倍、さらに好ましくは2.3〜3.9倍である。2.2倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。
【0040】
縦延伸後の積層フィルムは、続いて、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して積層二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度から始める。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満であるとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。以下、融点をTmと略す。
【0041】
横延伸後のフィルムは、両端を把持したまま(Tm−20℃)〜(Tm〜100℃)の温度で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。熱処理温度が(Tm−20℃)より高いとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。(Tm−100)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがあり好ましくない。また、熱収縮量を調整するために、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させることができる。弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜2.5%、さらに好ましくは0.2〜2.3%、特に好ましくは0.3〜2.0%の速度ダウンを実施してフィルムを弛緩(この値を「弛緩率」という)して、弛緩率をコントロールすることによって縦方向の熱収縮率を調整する。また、フィルム横方向は両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることができる。
【0042】
このようにして作成された積層フィルムである白色フィルムの表面に、塗膜を形成するための塗液として、透明粒子、有機蛍光体、バインダー、要すれば架橋剤を溶媒に分散または溶解させた塗液を、コーティング装置を用いて所定量塗工し、120℃まで段階的に温度設定したオーブンにより乾燥させることによって、本発明の液晶表示装置用反射フィルムを得ることができる。コーティング装置として、例えばダイコーティング装置やグラビアロールコーティング装置を用いることができる。なお、塗液の塗布量は、乾燥前のwet塗布厚みとして好ましくは10〜50g/mである。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0044】
(1)光線反射率
分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaSO白板を100%とした時の反射率を波長550nmで測定し、この値を光線反射率とした。
【0045】
(2)相対輝度
液晶表示装置に反射板として用いたときの表示装置の輝度を評価した。ソニー(株)製32インチテレビ(ブラビアKDL−32V2500)のバックライトの反射フィルムを取り外し、かわり評価対象のフィルムを設置し、輝度計(大塚電子製Model MC−940)を用いて、バックライトの中心を真正面より測定距離500mmで輝度を測定した。相対輝度は、透明粒子の塗布層を設けていない比較例1の反射フィルムの輝度を基準として算出した、輝度の相対値である。
相対輝度=(反射フィルムの輝度)/(比較例1の反射フィルムの輝度)×100(%)
【0046】
(3)色度差
バックライトにフィルムを組み込み測定、評価した。使用したバックライトは、評価用に用意した液晶テレビ(SHARP社製AQUOS−20V)に使用される直下型バックライト(対角線20インチ)ユニットであり、元々組み込まれていた反射シートに替えて、測定対象とする反射フィルムを組み込んだ。
測定では、バックライト面を、バックライト面の中心を通りバックライト面の幅方向に平行な直線と、バックライト面の中心を通りバックライト面の縦方向に平行な直線とで4分割し、分割されたそれぞれの領域の中心を測定点とした。
トプコン社製の輝度計BM−7を用いて、バックライト面からの距離50cm、測定角1°の条件で測定点4箇所における色度(x、y)を測定し、単純平均を求め、平均色度(x、y)とした。平均色度(x、y)と基準色(x=0.300、y=0.310)との距離を算出して色度差Δxyを算出した。
Δx=基準座標(x=0.300)−測定座標(x)
Δy=基準座標(y=0.310)−測定座標(y)
Δxy=(Δx+Δy1/2
算出されたΔxyを、下記の基準で評価した。
◎: Δxy < 0.005
○: 0.005 ≦ Δxy < 0.010
×: 0.010 ≦ Δxy
【0047】
(4)白色フィルムの有機粒子の平均粒子径
粒度分布計(堀場製作所製LA−950)にて、粒子の粒度分布を求め、d50での粒子径を平均粒子径とした。
【0048】
(5)透明粒子の平均粒子径
日立製作所製S−4700形電界放出形走査電子顕微鏡を用い、倍率1000倍にて、粒子を100個任意に測定し(球状以外の場合は(長径+短径)/2にて求める)、平均粒子径を求めた。
【0049】
(6)透明粒子のアスペクト比
日立製作所製S−4700形電界放出形走査電子顕微鏡を用い、倍率500倍にて、露出した粒子30個任意に観察し、長径、短径の値から下記式で求め平均値を算出した。
アスペクト比=長径/短径
【0050】
(7)透明粒子の露出率
(7−1)サンプルの作成
ミクロトームを用いて、フィルムから切片サンプル1と切片サンプル2を切り出した。切片サンプル1は、フィルム面内に無作為に選んだ一方向とフィルムの厚み方向が切断面となるように切り出した切片サンプルであり、切片サンプル2は、切片サンプル1で選んだ無作為な一方向と直交する方向と厚み方向が切断面となるように切り出した切片サンプルである。
(7−2)測定
切片サンプル1のバインダーの塗膜面の長さ3mmの領域と、切片サンプル2のバインダーの塗膜面の長さ3mmの領域との合計長さ6mmの測定領域について、日立製作所製S−4700形電界放出形走査電子顕微鏡を用い、倍率3000倍にて観察した。
露出率は、切片サンプルの切断面内における透明粒子の断面の中心を通りフィルムの塗膜面に垂直に向かう直線を引いたときに、この直線がフィルム切片の切断面内において透明粒子の表面と交わる2つの点のうち、露出した側の表面にある点をS、露出していない側の表面にある点をTとし、さきの直線がバインダーの塗膜面と交わる点をBとしたとき、(SとBとの間の距離)/(SとTとの間の距離)で表される。
すなわち、露出率(%)は、下記式で定義される。
露出率=(SとBとの間の距離)/(SとTとの間の距離)×100(%)
なお、切断面内における透明粒子の断面の中心は、粒子が球状の場合はその断面の円の中心とし、粒子が非球状の場合は、その断面の重心とする。
【0051】
(8)透明粒子によるフィルム表面の被覆率
(8−1)サンプルの作成
上記(6)で得たサンプルについて評価を行った。
(8−2)測定
切片サンプル1のバインダーの塗膜面の長さ3mmの領域と、切片サンプル2のバインダーの塗膜面の長さ3mmの領域との合計長さ6mmの測定領域について、日立製作所製S−4700形電界放出形走査電子顕微鏡を用い、倍率3000倍にて観察した。
被覆率は、切片サンプルの切断面内における測定領域において、透明粒子に被覆されていないフィルム表面の部分の長さを積算して、下記式で求めた(図1参照)。
被覆率
=(6mm−(透明粒子に被覆されていない部分の積算長さ))/6mm×100(%)
【0052】
(9)バインダー層厚み
フィルムサンプルの断面をデジタルマイクロスコープ(HIROX Co.Ltd.,
HI−SCOPE Advanced KH−3000)にて倍率5倍にて観察撮影し、写真からバインダーの厚みを判定し、任意に10点測定してそれらの平均値を求めた。
【0053】
[実施例1]
ボイド形成剤として硫酸バリウム粒子を含有するポリエステル組成物からなる反射層とポリエステルからなる支持層の2層から構成されたフィルム総厚み225μmの白色フィルム(帝人デュポンフィルム製 テイジンテトロンUX02−225)の反射層(反射率98.5%)のうえに、バーティング装置にて下記のレシピにて配合した塗液を白色反射層側にwet塗布量で25g/m塗布し、その後オーブン内にて乾燥して反射フィルムを得た。この反射フィルムの評価結果を表1に示す。なお、透明粒子の粒子径とアスペクト比を表1にまとめて示す。
調液レシピ1)
・透明粒子: 積水化成品工業 MBX−15 (35.0重量%)
・アクリルバインダー: 日本触媒 ユーダブルS2740 (22.6重量%)
・架橋剤: 日本ポリウレタン工業社 コロネートHL (2.0重量%)
・有機蛍光体: イーストマン社 イーストブライトOB−1
(ベンゾオキサゾール系蛍光剤) (0.4重量%)
・有機溶剤: 酢酸ブチル (40.0重量%)
【0054】
[実施例2]
塗液を下記の調液レシピに示す組成からなる塗液に変更する他は実施例1と同様にして反射フィルムを得た。この反射フィルムの評価結果を表1に示す。
調液レシピ2)
・透明粒子: 積水化成品工業 MBX−15 (35.0重量%)
・アクリルバインダー: 日本触媒 ユーダブルS2740 (20.7重量%)
・架橋剤: 日本ポリウレタン工業社 コロネートHL (2.0重量%)
・有機蛍光体: チバガイギー社 Uvitex−OB
(スチリル・オキサゾール系蛍光剤) (2.3重量%)
・有機溶剤: 酢酸ブチル (40.0重量%)
【0055】
[実施例3]
塗液を下記の調液レシピに示す組成からなる塗液に変更する他は実施例1と同様にして反射フィルムを得た。この反射フィルムの評価結果を表1に示す。
調液レシピ3)
・透明粒子: 積水化成品工業 MBX−15 (35.0重量%)
・アクリルバインダー: 日本触媒 ユーダブルS2740 (22.5重量%)
・架橋剤: 日本ポリウレタン工業社 コロネートHL (2.0重量%)
・有機蛍光体: BASF社 ルモゲングリーン850
(ナフタルイミド系蛍光剤) (0.5重量%)
・有機溶剤: 酢酸ブチル (40.0重量%)
【0056】
[実施例4]
塗液を下記の調液レシピに示す組成からなる塗液に変更する他は実施例1と同様にして反射フィルムを得た。この反射フィルムの評価結果を表1に示す。
調液レシピ4)
・透明粒子: 積水化成品工業 MBX−12 (38.0重量%)
・アクリルバインダー: 日本触媒 ユーダブルS2740 (18.0重量%)
・架橋剤: 日本ポリウレタン工業社 コロネートHL (3.0重量%)
・有機蛍光体: イーストマン社 イーストブライトOB−1
(ベンゾオキサゾール系蛍光剤) (1.0重量%)
・有機溶剤: 酢酸ブチル (40.0重量%)
【0057】
[比較例1]
白色フィルムの白色反射層に蛍光体を添加しない以外は実施例1と同様にして白色フィルムを得て、白色フィルムに塗液をコートせずに、白色フィルムを評価した。評価結果を表1に示す。
【0058】
[比較例2]
塗液を下記の調液レシピに示す組成からなる塗液に変更する以外は実施例1と同様にして反射フィルムを得た。評価結果を表1に示す。輝度上昇は大きいものの、着色による色ズレが大きく、実用上使用困難であった。
調液レシピ5)
・透明粒子: 積水化成品工業 MBX−15 (35.0重量%)
・アクリルバインダー: 日本触媒 ユーダブルS2740 (19.0重量%)
・架橋剤: 日本ポリウレタン工業社 コロネートHL (2.0重量%)
・有機蛍光体: イーストマン社 イーストブライトOB−1
(ベンゾオキサゾール系蛍光剤) (4.0重量%)
・有機溶剤: 酢酸ブチル (40.0重量%)
【0059】
[比較例3]
塗液を下記の調液レシピに示す組成からなる塗液に変更する以外は実施例1と同様にして反射フィルムを得た。評価結果を表1に示す。着色による色ズレは小さいものの、輝度の上昇が小さかった。
調液レシピ6)
・透明粒子: 積水化成品工業 MBX−15 (35.0重量%)
・アクリルバインダー: 日本触媒 ユーダブルS2740 (23.0重量%)
・架橋剤: 日本ポリウレタン工業社 コロネートHL (2.0重量%)
・有機溶剤: 酢酸ブチル (40.0重量%)
【0060】
[比較例4]
塗液を下記の調液レシピに示す組成からなる塗液に変更する以外は実施例1と同様にして反射フィルムを得た。評価結果を表1に示す。着色による色ズレは小さいものの、輝度の上昇が小さかった。
調液レシピ7)
・透明粒子: 積水化成品工業 MBX−15 (2.0重量%)
・アクリルバインダー: 日本触媒 ユーダブルS2740 (55.6重量%)
・架橋剤: 日本ポリウレタン工業社 コロネートHL (2.0重量%)
・有機蛍光体: イーストマン社 イーストブライトOB−1
(ベンゾオキサゾール系蛍光剤) (0.4重量%)
・有機溶剤: 酢酸ブチル (40.0重量%)
【0061】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の液晶表示装置用反射フィルムは、液晶表示装置の反射フィルムとして、特に、液晶テレビなどの表示装置の背面に光源を置くバックライト方式の液晶表示装置の反射フィルムとして好適に用いることができる。
図1