特許第5662021号(P5662021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5662021構造指向剤およびN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンを用いたモレキュラーシーブの調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662021
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】構造指向剤およびN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンを用いたモレキュラーシーブの調製
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   C01B39/48
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2009-529431(P2009-529431)
(86)(22)【出願日】2007年9月25日
(65)【公表番号】特表2010-504275(P2010-504275A)
(43)【公表日】2010年2月12日
(86)【国際出願番号】US2007079368
(87)【国際公開番号】WO2008039742
(87)【国際公開日】20080403
【審査請求日】2010年9月24日
(31)【優先権主張番号】60/826,882
(32)【優先日】2006年9月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100124969
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100088926
【弁理士】
【氏名又は名称】長沼 暉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102897
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 幸弘
(74)【代理人】
【識別番号】100097870
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 斎子
(74)【代理人】
【識別番号】100140556
【弁理士】
【氏名又は名称】新村 守男
(74)【代理人】
【識別番号】100114719
【弁理士】
【氏名又は名称】金森 久司
(74)【代理人】
【識別番号】100143258
【弁理士】
【氏名又は名称】長瀬 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ、ステイシー、アイ.
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特表平05−503499(JP,A)
【文献】 特表2008−513335(JP,A)
【文献】 特表平07−504151(JP,A)
【文献】 特表平05−502009(JP,A)
【文献】 特開平09−040417(JP,A)
【文献】 特開昭58−088118(JP,A)
【文献】 特表2008−520432(JP,A)
【文献】 特表2009−513475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 − 39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第1の4価元素の酸化物と(2)3価元素、5価元素、前記第1の4価元素とは異なる第2の4価元素またはそれらの混合物の酸化物とのモル比が15より大きい結晶性モレキュラーシーブを調製する方法であって、
A.(1)第1の4価元素の酸化物の供給源、(2)3価元素、5価元素、前記第1の4価元素とは異なる第2の4価元素またはそれらの混合物の酸化物の供給源、(3)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の供給源、(4)前記モレキュラーシーブを生成することができる有機構造指向剤、および(5)N,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンを含む水性反応混合物を生成する工程と、
B.結晶が生成するまで、前記水性混合物を充分な結晶化条件に維持する工程と
を含み、前記モレキュラーシーブがSSZ−13、SSZ−33、SSZ−35またはSSZ−42からなる群から選択される、
結晶性モレキュラーシーブを調製する方法。
【請求項2】
酸化物(1)は酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、またはそれらの混合物であり、酸化物(2)は酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化ホウ素、酸化チタン、酸化インジウムおよびそれらの混合物から選択される酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応混合物が、以下に示される範囲に入るモル比で表される組成を有する、請求項2に記載の方法:
YO/X 5〜無限大
OH/YO 0.10〜1.0
Q/YO 0.05〜0.50
n+/YO 0.05〜0.30
O/YO 2〜200
Q/Q+Mn+ 0.30〜0.90
(ここで、Yはケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの混合物であり、Xはアルミニウム、ホウ素、ガリウム、チタン、鉄またはそれらの混合物であり、aは1または2であり、aが1のときbは2であり、aが2のときbは3であり、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、nはMの価数であり、Qは前記モレキュラーシーブを生成することができる有機構造指向剤とN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとの混合物である)。
【請求項4】
反応混合物が以下に示される範囲に入るモル比で表される組成を有する、請求項3に記載の方法:
YO/X 10〜無限大
OH/YO 0.20〜0.30
Q/YO 0.10〜0.25
n+/YO 0.05〜0.15
O/YO 25〜60
Q/Q+Mn+ 0.40〜0.60
【請求項5】
有機構造指向剤が、モレキュラーシーブの細孔容積すべてを満たすのに必要な量よりも少ない量で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
有機構造指向剤が、モレキュラーシーブの細孔容積すべてを満たすのに必要な量よりも少ない量で使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
有機構造指向剤前記N,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとのモル比が、1:9以である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
有機構造指向剤前記N,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとのモル比が、1:9以である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
有機構造指向剤と前記N,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとのモル比が、1:9から4:1である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
有機構造指向剤とN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとのモル比が、1:4から4:1である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
モレキュラーシーブが、SSZ−13、SSZ−33、SSZ−35またはSSZ−42からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
合成されたまま、および無水状態において、モル比で表して以下の組成を有し、SSZ−13、SSZ−33、SSZ−35またはSSZ−42からなる群から選択されるモレキュラーシーブ:
(1〜5またはそれ以上の)Q:(0.1〜1の)Mn+:X:(15より大きい)YO
(ここで、Yはケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの混合物であり、Xはアルミニウム、ホウ素、ガリウム、チタン、鉄またはそれらの混合物であり、aは1または2であり、aが1のときbは2であり、aが2のときbは3であり、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、nはMの価数であり、Qは前記モレキュラーシーブを生成することができる有機構造指向剤とN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとの混合物である)。
【請求項13】
有機構造指向剤が、前記モレキュラーシーブの細孔容積すべてを満たすのに必要な量よりも少ない量で使用される、請求項12に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項14】
有機構造指向剤N,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとのモル比が、1:9以である、請求項12に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項15】
有機構造指向剤とN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとのモル比が、1:9から4:1である、請求項14に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項16】
有機構造指向剤とN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとのモル比が、1:4から4:1である、請求項15に記載のモレキュラーシーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年9月25日に出願された仮出願第60/826882号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
結晶性モレキュラーシーブは通常、アルカリまたはアルカリ土類金属酸化物の供給源、酸化ケイ素の供給源、および場合により、たとえば酸化ホウ素および/または酸化アルミニウムの供給源を含む水性反応混合物から調製される。
【0003】
モレキュラーシーブは、通常は窒素含有有機カチオンである有機構造指向剤(「SDA」)を含む反応混合物から調製されてきた。たとえば、1990年10月16日付けでZonesに付与された米国特許第4963337号には、SSZ−33と称されるモレキュラーシーブが、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン4級アンモニウムカチオンSDAを用いて調製できることが開示されている。1985年10月1日付けでZonesに付与された米国特許第4544538号には、1−アダマンタミン、3−キヌクリジノール、または2−エキソ―アミノノルボルナンから誘導されたSDAを用いて製造されるSSZ−13と称されるモレキュラーシーブが開示されている。1994年5月31日付けでNakagawaに付与された米国特許第5316753号には、アザ−多環環状化合物を含むSDAを用いて製造されるSSZ−35と称されるモレキュラーシーブが開示されている。1997年8月5日付けでZonesに付与された米国特許第5653956号には、N−ベンジル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンカチオンまたはN−ベンジル−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタンカチオンを含むSDAを用いて製造されるSSZ−42と称されるモレキュラーシーブが開示されている。
【0004】
潜在的に興味を引く触媒特性を有する潜在的にユニークな触媒を製造するために用い得る、いくつかのゼオライト系モレキュラーシーブが小規模で合成されてきた。これらの材料のさらなる開発に対する障害は、モレキュラーシーブを大規模量で製造するためのコストが高いということである。満足できる純度のモレキュラーシーブを製造するために比較的大量の標準的でない構造指向剤(テンプレートとしても知られている)が必要な場合には、そのコストはとくに高く、実用できないものとなる。したがって、顕著に低減したポンド当たりのコストで商業的な量のモレキュラーシーブを製造するための方法を開発することは極めて望ましく、また実際上、重要である。このことは、合成に用いられる構造指向剤の単位量当たりのコストを大幅に低減することによりなされ得る。本発明は、構造指向剤の一部をより安価な化合物で置き換えることにより大幅に低減したコストでモレキュラーシーブを合成することを可能にするプロセスを提供する。
【0005】
1998年7月28日付けでZonesらに付与された米国特許第5785947号には、少量の有機テンプレート化合物およびより大量の、1個から8個の炭素原子を有する少なくとも1つのアミン、水酸化アンモニウム、またはそれらの混合物を含むアミン成分を用いた結晶性ゼオライトの調製方法が開示されている。該アミン成分は、好ましくは8個以下の炭素原子を含む脂肪族または脂環式アミンであることが開示されている。該アミン成分の開示された例は、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、n−ブチルアミン、ピペリジン、4−メチルピペリジン、シクロヘキシルアミン、1,1,3,3−テトラメチル−ブチルアミンおよびシクロペンチルアミンである。
【0006】
1998年1月13日付けでNakagawaらに付与された米国特許第5707600号には、ゼオライトを生成し得る低分子中性アミンを用いた中孔径ゼオライトを調製するプロセスであって、該アミンが(a)炭素、窒素および水素原子のみ、(b)1つの1級、2級、または3級であり、4級ではないアミノ基、および(c)3級窒素原子、少なくとも1つの3級炭素原子、または少なくとも1つの2級炭素原子に直接結合した窒素原子を含み、該プロセスが4級アンモニウム化合物の非存在下に実施されるプロセスが開示されている。該低分子中性アミンの開示された例は、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリメチルアミン、シクロペンチルアミン、ジイソプロピルアミン、sec−ブチルアミン、2,5−ジメチルピロリジンおよび2,6−ジメチルピペリジンである。
【0007】
1998年1月13日付けでNakagawaに付与された米国特許第5707601号には、ゼオライトを生成し得る低分子中性アミンを用いたMTT結晶構造を有するゼオライトを調製するプロセスであって、該アミンが(a)炭素、窒素および水素原子のみ、(b)1つの1級、2級または3級であり、4級ではないアミノ基、および(c)3級窒素原子、少なくとも1つの3級炭素原子、または少なくとも1つの2級炭素原子に直接結合した窒素原子を含み、該プロセスが4級アンモニウム化合物の非存在下に実施されるプロセスが開示されている。該低分子中性アミンの開示された例は、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジイソプロピルアミンおよびトリメチルアミンである。
【0008】
2006年4月4日付けでYuenらに付与された米国特許第7022308号には、(1)酸化ケイ素、酸化ゲルマニウムおよびそれらの混合物と(2)酸化ホウ素または酸化ホウ素と酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化チタンまたは酸化鉄およびそれらの混合物との混合物とのモル比が約15:1より大きいモレキュラーシーブSSZ−33を調製する方法であって、
A.(1)酸化ケイ素、酸化ゲルマニウムおよびそれらの混合物の供給源、(2)酸化ホウ素または酸化ホウ素と酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化チタンまたは酸化鉄およびそれらの混合物との混合物の供給源、(3)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の供給源、(4)N,N,N−トリアルキル−8−アンモニウム−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン4級アンモニウムカチオン、および(5)N,N−ジアルキル−8−アミノ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン化合物を含む水性反応混合物を生成する工程と、
B.前記水性混合物を結晶が生成するまで充分な結晶化条件に維持する工程と
を含む方法が開示されている。
【0009】
発明の概要
(1)第1の4価元素の酸化物と(2)3価元素、5価元素、前記第1の4価元素と異なる第2の4価元素またはそれらの混合物の酸化物とのモル比が約15より大きい結晶性モレキュラーシーブを調製する方法であって、
A.(1)第1の4価元素の酸化物の供給源、(2)3価元素、5価元素、前記第1の4価元素と異なる第2の4価元素またはそれらの混合物の酸化物の供給源、(3)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の供給源、(4)前記モレキュラーシーブを生成することができる有機構造指向剤(以後、単に「SDA」と称する)、および(5)N,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンを含む水性反応混合物を生成する工程と、
B.該水性混合物を結晶が生成するまで充分な結晶化条件に維持する工程と
を含む方法が提供される。「モル比が約15より大きい」という語句は、酸化物(2)が存在しない、すなわち酸化物(1)と酸化物(2)のモル比が無限大である場合を含むことに注意されたい。その場合には、モレキュラーシーブは実質的にすべて酸化物(1)からなる。
【0010】
1つの態様においては、酸化物(1)は酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、またはそれらの混合物であり、酸化物(2)は酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化ホウ素、酸化チタン、酸化インジウムおよびそれらの混合物から選択される酸化物である。
【0011】
前記反応混合物は、下記表Aに示される範囲内に入るモル比で表される組成を有し得る。
表A
【表1】

ここで、Yはケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの混合物であり、Xはアルミニウム、ホウ素、ガリウム、チタン、鉄またはそれらの混合物であり、aは1または2であり、aが1のときbは2(すなわちXは4価)であり、aが2のときbは3(すなわちXは3価)であり、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、nはMの価数(すなわち1または2)であり、Qはモレキュラーシーブを生成することができるSDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンの混合物である。上記のように、反応混合物中のYO/Xモル比は5〜無限大である。このことは、反応混合物中にXが存在しない場合があることを意味する。この結果、実質的にすべてYOであるモレキュラーシーブが生じる。本明細書中では、「実質的にすべてYO」、「実質的にすべて酸化ケイ素」または「実質的にすべてシリカ」は、該モレキュラーシーブの結晶構造がYO(たとえば酸化ケイ素)のみを含む、またはYOと極微量の、YOの供給源に不純物として導入されることのある酸化アルミニウムなどの他の酸化物のみを含むことを意味する。
【0012】
1つの態様においては、SDAはモレキュラーシーブの細孔容積のすべてを満たすために要求される量よりも少ない量、すなわちN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンの非存在下でモレキュラーシーブを結晶化させるために要求される量よりも少ない量で用いられる。典型的には、SDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとのモル比は約1:9以上、たとえば約1:4から約4:1である。
【0013】
合成されたままで、無水状態で、モル比で表して下記の組成を有するモレキュラーシーブもまた提供される。
(1〜5またはそれ以上の)Q:(0.1〜1の)Mn+:X:(15より大きい)YO
ここで、Q、M、n、X、a、bおよびYは上で定義した通りである。
【0014】
1つの態様においては、合成されたままのモレキュラーシーブは、SDAがモレキュラーシーブの細孔容積のすべてを満たすために要求される量よりも少ない量、すなわちN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンの非存在下でモレキュラーシーブを結晶化させるために要求される量よりも少ない量で用いられる方法によって製造される。典型的には、SDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンのモル比は、約1:9以上、たとえば約1:4から約4:1である。
【0015】
詳細な説明
モレキュラーシーブは、該モレキュラーシーブを生成することができるSDAおよびN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンを含む水性混合物を調製することを含む方法により調製できる。典型的には、SDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンのモル比は、約1:9以上、たとえば約1:4から約4:1である。該調製にはモレキュラーシーブの種を使用してもよい。
【0016】
本発明により、SDAの単独使用に比べてかなりのコストの改善が得られる。
【0017】
モレキュラーシーブは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物の供給源、ケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの混合物の酸化物の供給源、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化ガリウム、酸化チタンまたは酸化鉄およびそれらの混合物の供給源、SDAおよびN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンを含む水性反応混合物から適切に調製できる。前記混合物は、下記表Aに示される範囲内に入るモル比で表される組成を有すべきである。
表A
【表2】

ここで、Yはケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの混合物であり、Xはアルミニウム、ホウ素、ガリウム、チタン、鉄またはそれらの混合物であり、aは1または2であり、aが1のときbは2(すなわちXは4価)であり、aが2のときbは3(すなわちXは3価)であり、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、nはMの価数(すなわち1または2)であり、QはSDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンの混合物である。
【0018】
該反応混合物は、標準的なモレキュラーシーブ調製方法を用いて調製される。酸化ケイ素の典型的な供給源には、フュームドシリカ、ケイ酸塩、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイダルシリカ、テトラ−アルキルオルソシリケート、および水酸化シリカが含まれる。前記反応混合物用のホウ素の供給源には、ボロシリケートガラスおよび他の反応性酸化ホウ素が含まれる。これらにはホウ酸塩、ホウ酸およびホウ酸エステルが含まれる。酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化チタンまたは酸化鉄などの他の酸化物の供給源は、酸化ホウ素および酸化ケイ素の供給源と類似している。
【0019】
混合物Qは、モレキュラーシーブを生成することができるSDAおよびN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンを含む。混合物Qは、SSZ−13、SSZ−33、SSZ−42およびSSZ−35と称されるモレキュラーシーブを含むがこれらに限定されないモレキュラーシーブを調製するために使用できる。
【0020】
SSZ−13
1985年10月1日付けでZonesに付与された米国特許第4544538号には、1−アダマンタミンから誘導されるSDAを用いて製造され得るSSZ−13と称されるモレキュラーシーブが開示されている。このSDAは下記の構造を有する。
SDA1
【化1】

ここで、R、R、およびRはそれぞれ独立に低級アルキル、たとえばメチルである。該カチオンにはモレキュラーシーブの生成に有害でないアニオン(ここでAまたはXで示される)が結合している。そのようなアニオンの代表は塩素イオン、臭素イオンおよびヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、水酸イオン、酢酸イオン、硫酸イオンおよび炭酸イオンを含む。水酸イオンが好ましいアニオンである。たとえばハロゲンイオンを水酸イオンにイオン交換することにより、必要なアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を減少または除去することが有利な場合もある。
【0021】
下記のカチオンをSSZ−13を調製するために用いてもよい。
【化2-1】

【化2-2】
【0022】
SDA1と同様に、前記カチオンのそれぞれには、SSZ−13の生成に有害でないアニオン(1種または複数)が結合している。
【0023】
米国特許第4544538号は全体として参照により本明細書に取り込まれる。
【0024】
SSZ−33
1990年10月16日付けでZonesに付与された米国特許第4963337号には、SSZ−33と称されるモレキュラーシーブが、式:
SDA2
【化3】

(ここで、R、RおよびRはそれぞれ独立に低級アルキル、たとえばメチルである)
を有するトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン4級アンモニウムカチオンSDAを用いて調製できることが開示されている。該カチオンには、SSZ−33の生成に有害でないアニオンAが結合している。
【0025】
N、N、N−トリアルキル−8−アンモニウムトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン4級アンモニウムカチオンは、全体として参照により本明細書に取り込まれる前述の米国特許第4963337号の実施例1に記載された方法で合成することができる。
【0026】
SSZ−35
1994年5月31日付けでNakagawaに付与された米国特許第5316753号には、式:
SDA3
【化4】

1,3,3,8,8−ペンタメチル−3−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタン
を有するアザ−多環環状化合物を含むSDAを用いて製造されるSSZ−35と称されるモレキュラーシーブが開示されている。
【0027】
米国特許第5316753号は、全体として参照により本明細書に取り込まれる。
【0028】
SSZ−42
1997年8月5日付けでZonesに付与された米国特許第5653956号には、式:
SDA4
【化5】

を有するN−ベンジル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンカチオンを含むSDAを用いて製造されるSSZ−42と称されるモレキュラーシーブが開示されている。
【0029】
該カチオンに結合するアニオン(X)は、ゼオライトの生成に有害でない任意のアニオンでよい。
【0030】
前記N,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンは式:
【化6】

を有する。
ここで、R、RおよびRはそれぞれ独立に低級アルキル、たとえばメチルまたはエチルである。該カチオンには、モレキュラーシーブの生成に有害でないアニオンAが結合している。そのようなアニオンの代表は、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンおよびヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、水酸イオン、酢酸イオン、硫酸イオンおよび炭酸イオンを含む。水酸イオンが好ましいアニオンである。たとえばハロゲンイオンを水酸イオンにイオン交換することにより、必要なアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を減少または除去することが有利な場合もある。
【0031】
混合物Qは、典型的には、約1:9以上、たとえば約1:4から約4:1の、SDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンのモル比を有する。
【0032】
混合物QにおいてN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンを使用することにより、混合物Qで使用されるSDAの量を低減することができ、それにより顕著なコスト削減がもたらされる。実際、混合物QにおいてN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンを用いることにより、SDAの量を、モレキュラーシーブの細孔容積を満たすために必要なレベルより低いレベル、すなわちN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンの非存在下で、モレキュラーシーブを結晶化させるために必要な量より少ない量まで低減することができることが見出された。
【0033】
前記反応混合物には、モレキュラーシーブの結晶を種として加えて、結晶化を誘導および加速し、かつ望ましくない汚染物質の生成を最小限にすることができる。典型的には、種を使用する際には、それらは反応混合物中の酸化ケイ素の重量に対して約2〜3重量%の量で用いられる。
【0034】
反応混合物は、モレキュラーシーブの結晶が生成するまで、高温に保たれる。水熱結晶化工程の間の温度は、典型的には、約140℃から約200℃、たとえば約150℃から約170℃、または約155℃から約165℃に保たれる。結晶化期間は、典型的には1日より長く、たとえば約3日から約7日である。
【0035】
水熱結晶化は加圧下、通常はオートクレーブ中で行い、反応混合物が自己加圧されるようにする。反応混合物は結晶化の間、反応器を回転させることなどにより攪拌できる。水熱結晶化工程の間、モレキュラーシーブ結晶は反応混合物から自発的に核化させることができる。
【0036】
モレキュラーシーブ結晶が生成したら、固体生成物を濾過などの標準的な機械的分離技術によって反応混合物から分離することができる。結晶を水洗し、次にたとえば90℃から150℃で8時間から24時間乾燥して、合成されたままのモレキュラーシーブ結晶を得ることができる。乾燥工程は、大気圧下または大気圧以下の圧力で実施できる。
【0037】
本明細書中では、「合成されたまま」という用語は、モレキュラーシーブ結晶が反応混合物から回収され、その孔の中に混合物Qをまだ含んでいる、すなわち混合物Qがモレキュラーシーブ結晶から(典型的には)焼成によって除去されていないことを意味する。モレキュラーシーブは、合成されたままで、無水状態において、下記表Bに示されるモル比で表される組成を有する。
合成されたままのモレキュラーシーブの組成
表B
(1〜5またはそれ以上の)Q:(0.1〜1の)Mn+:X:(15より大きい)YO
ここで、Q、M、n、X、a、bおよびYは上で定義した通りである。「(1〜5またはそれ以上の)Q」という用語は、より多量のYOを含む合成されたままのモレキュラーシーブは、またより多量のQを含むであろうということを意味する。なぜなら、合成されたままのモレキュラーシーブにおいて、Qの量はYOの量に依存するからである。
【0038】
モレキュラーシーブは、合成されたままで使用することもでき、または熱処理(焼成)することもできる。「熱処理」という用語により、水蒸気の存在下または非存在下に約200℃から約820℃に加熱することを意味する。還流溶媒によって抽出することにより生成物の孔の中からSDAの一部または全部を除去することも可能であろう。通常、イオン交換によってアルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンを除去し、これを水素、アンモニウム、または任意の所望の金属イオンで置換することが望ましい。水蒸気を含む熱処理は、結晶格子を酸による攻撃から安定化させることの助けになる。
【0039】
本明細書で開示された方法によって製造されたモレキュラーシーブは、炭化水素転換反応において有用である。これらの使用例は、参照により本明細書に組み込まれる、1990年10月16日付けでZonesに付与された米国特許第4963337号に記載されている。それらはまた、内燃機関からの低温始動排出物を低減するのに有用であろう。
【0040】
実施例
実施例1〜6
ボロシリケートSSZ−33およびSSZ−42の合成
SDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンの混合物2ミリモル(SDAの同定およびSDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとの比については下表参照)を、Cabosil M5 フュームドシリカ0.60g、ホウ酸ナトリウム10水塩0.04gおよび水全体量7gと混合する。1N水酸化ナトリウム1gを加える。たとえばSSZ−33の種を、このSSZ−33反応混合物に加えることができる。反応器を密閉し、結晶性生成物が得られるまで、回転しながら(43RPM)6〜9日間、反応物を160℃に加熱する。
【0041】
適切なSDAを用いて同じ反応を実施し、SSZ−42を製造することができる。
アルミノシリケートSSZ−13およびSSZ−35の合成
【0042】
SDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンの混合物(SDAの同定およびSDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンとの比については下表参照)の全量2mM(また水価は5.2g)を、1N KOH2g、Reheis F−2000アルミナ(Al53%)0.05gおよびCabosil M5 フュームドシリカ0.60gの反応物に加える。これらの反応におけるSDAは、SSZ−13の製造用にはアダマンタン誘導体、またはSSZ−35の製造用にはピペリジン誘導体である。SSZ−35の場合には、KOHの代わりに1N NaOHを用いるのが有利かもしれない。ここでも、種を加えるのが有利なことがある。これらの反応も、160℃、43RPMで、6〜9日間、生成物が充分に落ち着くまで実施する。
【表3】

*反応混合物はSSZ−33を製造するために充分なSDA2を含んでいなかった。MTWはSDAとN,N,N−トリアルキルベンジル4級アンモニウムカチオンから製造した。