(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662063
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】踏切遮断機用ばねユニット及び踏切遮断機
(51)【国際特許分類】
B61L 29/04 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
B61L29/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-143966(P2010-143966)
(22)【出願日】2010年6月24日
(65)【公開番号】特開2012-6481(P2012-6481A)
(43)【公開日】2012年1月12日
【審査請求日】2013年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130476
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 昭穂
(74)【代理人】
【識別番号】100170678
【弁理士】
【氏名又は名称】江頭 達哉
(72)【発明者】
【氏名】加治木 智彦
【審査官】
島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−061972(JP,A)
【文献】
特開2007−308103(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3120008(JP,U)
【文献】
特開平8−276845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切遮断機の筐体に少なくとも2か所で固定して取り付けるための取付部を有する外箱と、
前記外箱の内部に両端を固定して取り付けられた案内棒と、
前記案内棒に套設されたコイルばねと、
前記案内棒を貫通させ前記コイルばねの一端に隣接する摺動体と、
遮断桿の回転運動を、前記案内棒上における前記摺動体の摺動運動に変換するリンク機構とを含む、
ばねユニット。
【請求項2】
モータと、遮断桿と、ばねユニットとを含む踏切遮断機であって、
前記モータは、前記遮断桿を回転駆動するものであり、
前記ばねユニットは、請求項1に記載されたものであって、前記遮断桿の回転軸に連結されている、
踏切遮断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切遮断機用ばねユニット及び踏切遮断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、踏切遮断機では、遮断桿にバランス・ウェイトを設けることによりモータの所要出力を低減してあった。しかし、バランス・ウェイトを用いた場合には、広い設置スペースが必要となる。そこで、バランス・ウェイトの代わりに、遮断桿に引張ばねを連結し、その引張バネ力を利用してバランスをとる構造の踏切遮断機が提案されている(特許文献1、2)。このような踏切遮断機は、ウエイトレス・タイプと称されている。
【0003】
しかし、引張ばねを利用する構造では、遮断桿の下降動作(踏切遮断動作)の度毎にばねが伸びるので、ばねに金属疲労を生じ易い。しかも、ばねスペースが大きくなる等の問題もある。
【0004】
更に、踏切遮断機においては、遮断桿の長さや構造によって、負荷モーメントが大きく変動する。例えば、屈折形と称される踏切遮断機では、遮断桿が長く、しかも、その中間部で屈折する構造であるので、駆動モータに対する遮断桿の負荷モーメントが極めて大きくなる。
【0005】
一方、直腕形と称される踏切遮断機は、遮断桿自体の長さが屈折形のものよりも短く、しかも、屈折する構造も持たないので、駆動モータに対する遮断桿の負荷モーメントが、屈折形に比して、小さくなる。
【0006】
従って、引張ばねを用いたウエイトレス・タイプの踏切遮断機では、遮断桿の負荷モーメントの大小、即ち、屈折形か、直腕形かに応じた2種類の引張ばね機構を準備しなければならないし、踏切遮断機の内部構造もそれに応じて変える必要があり、製造すべき機種が増えてしまうという問題点があった。ユーザ側でも、予備機として2種類の機種を持つ必要があり、余分なコスト的負担を余儀なくされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−154433号公報
【特許文献2】特開2009−179184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、耐久性、信頼性の高いウエイトレス・タイプの踏切遮断機の実現に寄与しえるばねユニット及びそれを用いた踏切遮断機を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの課題は、小型化に適したウエイトレス・タイプの踏切遮断機の実現に寄与しえるばねユニット及びそれを用いた踏切遮断機を提供することである。
【0010】
本発明の更にもう一つの課題は、踏切遮断機に対する取付、取り外しの簡単なばねユニット及びそれを用いた踏切遮断機を提供することである。
【0011】
本発明の更にもう一つの課題は、ウエイトレス・タイプの踏切遮断機の標準化及び部品の共通化に寄与しえるばねユニット及びそれを用いた踏切遮断機を提供することである。
【0012】
本発明の更にもう一つの課題は、ユーザにおいて、直腕形又は屈曲形など、遮断桿の負荷モーメントの違いにかかわらず、一種の予備機を備えるだけで済むばねユニット及びそれを用いた踏切遮断機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題の少なくとも1つを解決するため、本発明に係る踏切遮断機用ばねユニットは、コイルばねを有する。前記コイルばねは、遮断桿の下降動作時には圧縮されて前記下降動作を制動し、前記遮断桿の上昇動作時には、その上昇動作を圧縮ばね圧により補助する働きを有する。
【0014】
このばねユニットを踏切遮断機に組み込んだ場合、踏切遮断機においては、モータによって駆動される遮断桿の下降トルク及び上昇トルクが、ばねユニットによって制御されることになるから、バランス・ウエートを省略し、圧縮ばねを利用してバランスをとるウェイトレスタイプの踏切遮断機が得られる。
【0015】
本発明に係るばねユニットは、遮断桿の下降トルク及び上昇トルクの制御過程の全てが、コイルばねの圧縮動作の下において行われる。コイルばねが自然状態から強制的に引っ張られる過程が存在しない。このため、コイルばねの強制的な引張伸びによる金属疲労を生じない。しかも、コイルばねの長さは、最大化した場合でも、自然長が限度であり、それ以上に長くならないから、コイルばねの収納スペースが小さくて済む。これは、踏切遮断機の小型化に寄与する。
【0016】
本発明に係るばねユニットは、具体的な構成として、外箱と、案内棒と、コイルばねと、摺動体と、リンク機構とを含むことができる。前記外箱は、取付部を有しており、前記案内棒は、前記外箱の内部に取り付けられている。前記コイルばねは、前記案内棒に套設されており、前記摺動体は、前記案内棒を貫通させ前記コイルばねの一端に隣接している。前記リンク機構は、遮断桿の回転運動を、前記案内棒上における前記摺動体の摺動運動に変換する。踏切遮断機との結合に当たっては、リンク機構の入力端を、遮断桿の回転軸に連結すればよい。
【0017】
上述したばねユニットでは、構成部分の全てが、取付部を有する外箱と一体化される。従って、本発明に係るばねユニットは、踏切遮断機に対する取付け及び取り外しもを簡単に行うことができる。
【0018】
更に、外箱、案内棒、摺動体及びリンク機構等はそのままにして、コイルばねのばね定数を変える、即ち、コイルばねを適切に選択し、交換することによって、遮断桿の下降トルク及び上昇トルクを、適切に制御することができる。このため、ウエイトレス・タイプの踏切遮断機の標準化及び部品の共通化に寄与しえる。また、ユーザにおいて、直腕形又は屈曲形など、遮断桿の負荷モーメントの違いにかかわらず、一種の予備機を備えるだけで済む。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)耐久性、信頼性の高いウエイトレス・タイプの踏切遮断機の実現に寄与しえるばねユニット及びそれを用いた踏切遮断機を提供することができる。
(b)小型化に適したウエイトレス・タイプの踏切遮断機の実現に寄与しえるばねユニット及びそれを用いた踏切遮断機を提供することができる。
(c)踏切遮断機に対する取付、取り外しの簡単なばねユニット及びそれを用いた踏切遮断機を提供することができる。
(d)ウエイトレス・タイプの踏切遮断機の標準化及び部品の共通化に寄与しえるばねユニット及びそれを用いた踏切遮断機を提供することができる。
(e)ユーザにおいて、直腕形又は屈曲形など、遮断桿の負荷モーメントの違いにかかわらず、一種の予備機を備えるだけで済むばねユニット及びそれを用いた踏切遮断機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る遮断機用ばねユニットの側面図である。
【
図4】
図1〜
図3に示したばねユニットを組込んだ踏切遮断機の構造を示す図である。
【
図5】
図4に示し踏切遮断機の中間動作位置を示す図である。
【
図6】
図4に示し踏切遮断機の遮断動作位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜
図3を参照すると、本発明に係るばねユニットは、具体的な構成として、外箱1と、第1案内棒21〜第4案内棒24と、第1コイルばね31〜第4コイルばね34と、摺動体4と、リンク機構5とを含む。
【0022】
外箱1は、適当な金属板材を用いて構成されるもので、その底板11、又は、幅方向において相対向する第1側面板12及び第2側面板13から突出する複数個の取付部14を有している。取付部14のそれぞれは、互いに間隔をおいて配置され、ねじやボルトなどを通す取付孔15が設けられている。
【0023】
第1案内棒21〜第4案内棒24は、外箱1の内部に取り付けられている。実施の形態では、第1案内棒21〜第4案内棒24は4本であって、それぞれは4角形の各隅部に配置され、両端が外箱1の長さ方向で相対向する第3側面板16及び第4側面板17に、取付ねじ18などによって取り付けられている。第1案内棒21〜第4案内棒24は、適当な金属材料を用いて、例えば、断面円形状、断面角形状などに形成されたものである。これらの第1案内棒21〜第4案内棒24は、4本に限定されない。遮断桿から駆動側に与えられる負荷モーメントに応じて選定されるもので、4本より少なくてもよいし、多くてもよい。
【0024】
第1コイルばね31〜第4コイルばね34は、遮断桿の下降動作時には圧縮されて下降動作を制動し、遮断桿の上昇動作時には、その上昇動作を圧縮ばね圧により補助する働きをする。図示の第1コイルばね31〜第4コイルばね34は、第1案内棒21〜第4案内棒24のそれぞれに、緩く套設されている。第1コイルばね31〜第4コイルばね34は、コイル材料として知られた金属材料によって構成される。
【0025】
摺動体4は、第1案内棒21〜第4案内棒24のそれぞれを、緩く貫通させてあり、第1コイルばね31〜第4コイルばね34の一端に隣接している。摺動体4は金属材料で構成されている。第1コイルばね31〜第4コイルばね34の他端は、第1案内棒21〜第4案内棒24に設けられたストッパによって受けられている。
【0026】
リンク機構5は、遮断桿の回転運動を、第1案内棒21〜第4案内棒24上における摺動体4の摺動運動に変換するものである。図示のリンク機構5は、回動片51と、リンク片52とを含んでいる。回動片51は、一端側に、外箱1の外部で遮断桿を連結する連結孔53を有すると共に、他端側にリンク片52を捉える開口部54を有する。連結孔53は、遮断桿の回転軸連結部における断面形状に併せて、例えば、から回りしないような角形状に形成されている。開口部54は、両開口縁が先端部で互いに近づく方向に突出する第1爪状部55及び第2爪状部56を有していて、第1爪状部55及び第2爪状部56によって狭められた入り口部の内奥に、拡張された空間領域を有している。踏切遮断機との結合に当たっては、リンク機構5の入力端を、遮断桿の回転軸に連結すればよい。
【0027】
図示の回動片51は、連結孔53の中間部で分離される第1片511及び第2片512から構成されていて、第1片511及び第2片512をねじなどの結合手段513によって連結するようになっている。第1片511は、開口部54を有し、外箱1の第1側面板12に設けられた切欠121をとおして、外箱1の内部に導かれ、第1コイルばね31及び第3コイルばね33の間に生じる間隔、及び、第2コイルばね32及び第4コイルばね34の間に生じる間隔内において動作する。
【0028】
リンク片52は、一端側に、回動片51によって捕捉される第1突起521を有すると共に、他端側に、摺動体4に立設された第2突起41に嵌合する長穴522を有する。リンク片52は、摺動体4に設けられた空洞部42の内部で動く。
【0029】
次に、上述したばねユニットを組み込んだ踏切遮断機について、
図4〜
図6を参照して説明する。踏切遮断機の筐体6の内部には、駆動用モータ61、減速装置62など、この種踏切遮断機に通常配置されるべき駆動装置が内蔵されている。筐体6の内部には、本発明に係るばねユニット63が、ねじなどの結合手段64によって取り付けられており、その連結孔53に遮断桿65の回転軸66が嵌めこまれている。回転軸66の連結部における形状は、角形状である。
【0030】
まず、
図4は、遮断桿65が上昇位置(踏切開)にある場合を示している。この状態では、遮断桿65からばねユニット63に加わる負荷モーメントは最小であり、第1案内棒21〜第4案内棒24上の第1コイルばね31〜第4コイルばね34は、最伸長状態(ほぼ自然長)にある。従って、摺動体4は、図において、最左側に位置する。リンク片52の第1突起521は、回動片51の第1爪状部55の内側に抱え込まれている。
【0031】
次に、モータ61を駆動して、遮断桿65の回転軸66を矢印R1の方向に回転させ、下降動作にはいると、回転軸66の回転と共に、回動片51が回転する。すると、ある回転位置で、リンク片52の第1突起521が回動片51の第2爪状部56によって抱え込まれ、摺動体4の第2突起41がリンク片52の長穴522の後縁に当接し、摺動体4が矢印F1の方向に引っ張られる。その結果、摺動体4は、第1コイルばね31〜第4コイルばね34の圧縮反力を受けながら、第1案内棒21〜第4案内棒24上を、矢印F1の方向に直線的に摺動する。
図5は、遮断桿65が
図4の上昇静止位置から45度回転した中間動作位置を示す。
【0032】
図5に示す状態から、更に遮断桿65を回転させると、回転軸66の回転と共に、回動片51が更に回転する。すると、回動片51の第2爪片56によって、リンク片52の第1突起521が抱え込まれた状態で、摺動体4が矢印F1の方向に引っ張られて第1案内棒21〜第4案内棒24上を直線的に移動する。その結果、摺動体4は、第1コイルばね31〜第4コイルばね34から圧縮反力を受けながら、第1案内棒21〜第4案内棒24上を、矢印F1の方向に摺動することになる。圧縮反力は、遮断桿65の下降トルクを支える力となるから、減速装置62や、モータ61に加わる下降トルク負荷を軽減することができる。
図6は、遮断桿65が
図5の中間動作位置から45度回転した遮断動作位置(遮断桿65が水平)を示す。
【0033】
上述したように、本発明に係るばねユニット63を組み込んだ踏切遮断機では、下降動作時に、遮断桿65の下降トルクが、ばねユニット63によって受けられ、減速装置62やモータ61に加わる負荷が軽減されることになるから、バランス・ウエートを省略し、圧縮ばねを利用してバランスをとるウェイトレスタイプの踏切遮断機が得られる。
【0034】
図6の踏切遮断位置から、
図5の中間動作位置を経て、
図4の踏切開通位置に遮断桿65を上昇回転させるには、モータ61を逆回転させる。この上昇回転動作におては、第1コイルばね31〜第4コイルばね34に蓄積されたばね圧縮エネルギーが、モータ61の上昇回転力に加わる。下降動作と上昇動作をあわせ考えると、本発明に係るばねユニット63を用いることにより、遮断桿65の下降動作時には第1コイルばね31〜第4コイルばね34が圧縮されて、遮断桿65の下降動作を制動し、遮断桿65の上昇動作時には、その上昇動作を圧縮ばね圧により補助する働きを生じる。よって、バランス・ウエートを省略し、第1コイルばね31〜第4コイルばね34の圧縮ばね作用を利用してバランスをとるウェイトレスタイプの踏切遮断機が得られる。
【0035】
しかも、遮断桿65の下降トルク及び上昇トルクの制御過程の全てが、第1コイルばね31〜第4コイルばね34の圧縮動作において行われる。第1コイルばね31〜第4コイルばね34が自然状態から強制的に引っ張られる過程が存在しない。このため、第1コイルばね31〜第4コイルばね34の強制的な引張伸びによる金属疲労を生じない。また、第1コイルばね31〜第4コイルばね34の長さは、最大化した場合でも、自然長が限度であり、それ以上に長くならないから、第1コイルばね31〜第4コイルばね34の収納スペースが小さくて済む。これは、踏切遮断機の小型化に寄与する。
【0036】
上述したばねユニット63では、構成部分の全てが、取付部14を有する外箱1と一体化される。従って、本発明に係るばねユニット63は、踏切遮断機に対する取付け及び取り外しもを簡単に行うことができる。
【0037】
更に、外箱1、案内棒、摺動体4及びリンク機構5等はそのままにして、第1コイルばね31〜第4コイルばね34のばね定数を変える、即ち、第1コイルばね31〜第4コイルばね34を適切に選択し、交換することによって、遮断桿65の下降トルク及び上昇トルクを、適切に制御することができる。このため、ウエイトレス・タイプの踏切遮断機の標準化及び部品の共通化に寄与しえる。また、ユーザにおいて、直腕形又は屈曲形など、遮断桿65の負荷モーメントの違いにかかわらず、一種の予備機を備えるだけで済む。
【0038】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0039】
1 外箱
21〜24 第1乃至第4案内棒
31〜34 コイルばね
4 摺動体
5 リンク機構