(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1〜
図17を参照しながら本発明の第1の実施形態について説明する。なお、以下の説明中の方向は図中に記載した矢線方向を基準とする。
図示を省略した自動車(車両)の車内床面を構成する床板F(
図1参照)にはスライドシート装置10が設けてある。床板Fには一つのスライドシート装置10に対して4つ(左右それぞれに前後2つずつ)のネジ孔F1が穿設してあり、床板Fの下面における各ネジ孔F1と対応する位置にはネジ孔F1と同心をなすウェルドナットNが固定してある。また床板Fには前側のネジ孔F1の直後に位置する位置決め孔F2が穿設してある。スライドシート装置10は、その下部を構成するスライドレール装置15と、スライドレール装置15(アッパレール35)の上面に固定したシート11と、を備えている。
【0014】
次にスライドレール装置15の詳しい構造について説明する。
スライドレール装置15は大きな構成要素として、左右一対のレールユニット20と、左右のレールユニット20の前端部同士を接続するループハンドル70と、を具備している。左右のレールユニット20は同じ構造であり、かつループハンドル70は左右対称形状なので、スライドレール装置15は全体として左右対称である。
左右のレールユニット20は以下の構造である。
レールユニット20は床板Fに載置されるロアレール21を有している。ロアレール21は前後方向に延びかつ上面が開口した金属製のチャンネル材であり、略水平な底壁22と、底壁22の左右両側部から上方に延びる左右一対の外壁部23と、左右の外壁部23の上縁部から内側において下方に延びる左右一対の内壁部24と、を具備している。
図4、10等に示すように、左右の内壁部24の下縁部には多数のロック溝25が前後方向に並べて形成してある。
図11に示すように各ロック溝25の前後幅は下方に向かうにつれて広くなっており、ロック溝25の前縁と後縁の下端部は傾斜案内面25aとなっている。さらに
図4に示すように、底壁22の前後両端近傍には一対のボルト挿入孔22aが穿設してあり、前側のボルト挿入孔22aの直後には位置決め孔22bが穿設してある。底壁22の下面の前後両端近傍にはスペーサ27が固定してあり、スペーサ27に形成した貫通孔28がボルト挿入孔22aと同心をなしている。さらに
図4及び
図5に示すように、底壁22の前部には左右一対の前側ストッパ片29aが垂直方向に対して傾斜する左右対称な部材として切り起こしにより形成してあり、底壁22の後部には左右一対の後側ストッパ片29bが前側ストッパ片29aと同じ形状の部材として切り起こしにより形成してある。
底壁22の前後のボルト挿入孔22aには上方から前後一対の固定ボルト30がそれぞれ挿入してある。固定ボルト30は、上端部を構成する頭部31と、頭部31の下端に接続する頭部31及びボルト挿入孔22aより大径のフランジ32と、フランジ32の下面から下方に延びるボルト挿入孔22a及び貫通孔28より若干小径のネジ部33と、を有している。
【0015】
レールユニット20は、ロアレール21に対して前後方向にスライド可能なアッパレール35を有している。アッパレール35は前後方向に延びかつ下面が開口した金属製のチャンネル材であり、断面形状が略下向きコ字形をなしその内部空間がレバー収納溝37を構成する基部36(略水平な天井部36aと、天井部36aの左右両側部から垂下する一対の側壁部36bと、を具備している)と、側壁部36bの長手方向の中央部を除く部分から上方に延びる立上り壁38と、該中央部から上方に延びる被ロック壁39と、を具備している。
図3、4、6等に示すように、左右の被ロック壁39の下縁部と基部36の側壁部36bの下縁部とに跨る部分には4つの前後動規制溝40が上向きに形成してあり、さらに基部36の側壁部36bの下縁部には前後動規制溝40の下端より下方まで延びる下向きの規制片41が前後一対として一体的に突設してある。さらに
図3、
図7等に示すように、基部36の天井部36aの中央部近傍には下方に向かった後に後方に延びる係止片42が切り起こしにより形成してあり、左右の側壁部36bの中央部よりやや前側に位置する部分には内向きの係止片43がそれぞれ切り起こしにより形成してある。
【0016】
レールユニット20はさらにアッパレール35に装着したロック解除レバー47とロックバネ(付勢手段)63を具備している。
ロック解除レバー47は金属板のプレス成形品であり、前後方向に延びかつ下面が開口した金属製のチャンネル材であり、基壁47dと、基壁47dの左右両側縁部から垂下する側壁51と、を具備している。ロック解除レバー47の断面形状は全長に渡って略下向きコ字形であり、ロック解除レバー47の長手方向の中央部の直前に位置する部分は内部空間が受容凹部48aを構成する中間部48を構成しており、中間部48の直後に位置する部分はその前後に比べて狭幅の狭幅部49となっている。さらに左右の側壁51の該側面(中間部48と狭幅部49の接続部付近の外側面)に形成された上下方向に延びる稜線部47bはR面となっている(
図3、
図4、
図8、
図9、
図13参照)。
図3、
図4、
図8、
図9に示すようにロック解除レバー47の上面には左右方向に延びる回転接触凸部50が突設してある。またロック解除レバー47の左右の側壁51の後端近傍部の下面にはバネ掛け溝52がそれぞれ凹設してあり、ロック解除レバー47の基壁47dにはロックバネ係止孔53とバネ係止孔54がそれぞれ穿設してある。また、左右の側壁51におけるバネ掛け溝52の直前には稜線部47bと略同じ形状である稜線部52aが形成してある(
図8、
図9、
図13参照)。ロック解除レバー47の中間部48より前方に位置する部分は中間部48に比べて広幅である接続部55を構成しており、接続部55より後方に位置する部分がレール内蔵部47aを構成している。接続部55の前端部の天井部の下面は偏平な前方規制部56となっており、前方規制部56の直下の空間は前方許容空間57を構成している。さらに接続部55における前方規制部56の直後には凹部58が形成してあり、該凹部58によって形成された空間が後方許容空間59を構成している。また凹部58の左右の下縁部からは互いに近づく方向に延びる略水平な後方規制片60(上面が後方規制部60aを構成している)が突設してある。また前方許容空間57と後方許容空間59を合わせた空間が接続空間61を構成している。
ロックバネ63は金属製の線材を曲折加工した略左右対称な部材である。ロックバネ63の左右両側部の長手方向の中央部よりやや後方に位置する部分には外側に向かって略水平に延びる前後一対のロック部(ロック部)64が形成してある。ロック部64より後方に位置する部分は自由状態においてロック部64から上斜め後方に向かって延びており、ロック部64より前方に位置する部分は自由状態においてロック部64から上斜め前方に向かって延びている。ロックバネ63の前端には左右一対の前端係止片65が上向きに突設してあり、前端係止片65の直後に位置する部分はレバー押圧部66を構成している。
ロック解除レバー47のレール内蔵部47aはアッパレール35のレバー収納溝37内に収納してあり、回転接触凸部50が基部36の天井面に接触している(
図8、
図9の接触部A参照。レール内蔵部47a上面における回転接触凸部50以外の部分とレバー収納溝37の天井面の間には空間が形成されている)。
図7から
図9に示すようにロックバネ63は、その後端部を係止片42に係止し(
図8の三角印を参照)、ロック部64よりやや前側に位置する部分を左右の係止片43にそれぞれ係止し(
図8の三角印を参照)、各ロック部64を対応する前後動規制溝40に下方から係合し、さらに左右の前端係止片65を下方からロックバネ係止孔53に挿入し、かつ左右のレバー押圧部66の前端近傍部をロックバネ係止孔53の後縁部に係止し、ロックバネ63における一対のロック部64の間に位置する部分にバネ掛け溝52を上方から係止している。このようにしてロックバネ63をアッパレール35及びロック解除レバー47に取り付けるとロックバネ63はアッパレール35に対して、ロックバネ63の後端部と係止片42の係止が解除されず、かつ、前端係止片65がロックバネ係止孔53から抜け出さない微小範囲内で前後方向に移動可能となり、さらにロックバネ63の左右の一部(前半部)が狭幅部49の両側壁51とアッパレール35の両側壁部36bの間に形成された左右一対の空間内に位置する(
図7参照)。またレバー収納溝37に収納されたロックバネ63は弾性変形することにより上向きの付勢力(弾性力)を発生するため(
図8の↑印を参照)、この付勢力によってロック解除レバー47の回転接触凸部50が基部36の天井部36aに押しつけられ、ロック解除レバー47は天井部36aと回転接触凸部50の接触部Aを中心にして回転接触凸部50回りに(左右方向の仮想回転軸回りに)回転可能となり、接続部55に上向きの外力を掛けないときロック解除レバー47は
図8に示すロック位置に保持される。一方、ロックバネ63の付勢力に抗して接続部55に上向きの外力を掛けるとロック解除レバー47は
図9に示すアンロック位置まで回転する。すると、
図9に示すようにロック解除レバー47のバネ掛け溝52が一対のロック部64の間に位置する部分を下方に押し下げるので、各ロック部64が対応する前後動規制溝40から下方に脱出する(
図9、及び
図11に仮想線で描かれた中段のロック部64を参照)。
【0017】
このようにして一体化したアッパレール35、ロック解除レバー47、及び、ロックバネ63を、ロアレール21の前端開口又は後端開口からロアレール21の内部に挿入することによりアッセンブリしたものがレールユニット20である。レールユニット20をアッセンブリすると
図5に示すように、アッパレール35の立上り壁38及び被ロック壁39が外壁部23と内壁部24の間に形成された空間に入り込み、さらに当該空間に配設したリテーナ68に回転可能に支持された複数のベアリングボール69が立上り壁38の外面と外壁部23の内面にそれぞれ回転可能に接触するので、アッパレール35(及びロック解除レバー47、ロックバネ63)はロアレール21に対して前後方向にスライド可能となる。
またアッパレール35の各規制片41が前側ストッパ片29aと後側ストッパ片29bの間に位置し、さらに左側の規制片41は左側の前側ストッパ片29aと左側の後側ストッパ片29bを結ぶ前後方向に延びる直線上に位置し、右側の規制片41は右側の前側ストッパ片29aと右側の後側ストッパ片29bを結ぶ前後方向に延びる直線上に位置する。そのためアッパレール35はロアレール21に対して、前側の左右の規制片41が左右の前側ストッパ片29aにそれぞれ後方から当接する前端位置(
図1の位置)と、後側の左右の規制片41が左右の後側ストッパ片29bにそれぞれ前方から当接する後端位置(
図2)の間をスライド可能である。
またロック解除レバー47がロック位置に位置するときは、
図8、
図10、及び
図11の実線で示すように各ロック部64が対応する前後動規制溝40及びロック溝25に下方から係合するので、アッパレール35のロアレール21に対するスライドは規制される。一方、ロック解除レバー47をアンロック位置まで下方に回転させると、
図9及び
図11の仮想線で示すように各ロック部64が係合していたロック溝25から下方に脱出するので、アッパレール35はロアレール21に対してスライド可能となる。
アッセンブリされた左右一対のレールユニット20は、互いを平行にしかつ互いの前後位置を合わせた上で(アッパレール35のロアレール21に対するスライド位置も一致させる)、アッパレール35の上面にシート11の座部の下面が載せられ、図示を省略した複数のボルトによって左右のアッパレール35にシート11の座部が固定される。
【0018】
このようにして左右のレールユニット20とシート11を一体化したら、左右のロック解除レバー47に対してトーションスプリング(付勢手段)76を利用してループハンドル(ハンドル)70を接続する。
ループハンドル70は断面円形をなす金属製のパイプ材を曲げ加工したものであり、左右方向に延びる直線部と該直線部の左右両端部から後斜め下方に向かって延びる一対の傾斜部とを有する把持部71と、把持部71の左右両端部からそれぞれ後方に向かって延びる一対の後端接続部72と、を具備している。左右の後端接続部72の下面には凹部が形成してあり、該凹部の上面は下側当接面73となっている。また後端接続部72の下面には下側当接面73の直前に位置する左右方向に延びる係止溝74が形成してある。
トーションスプリング76は金属製の線材を曲折加工した略左右対称な部材である。トーションスプリング76の後端部には上向き突片77が突設してあり、トーションスプリング76の前縁部には左右方向に延びる前側係止部78となっている。さらにトーションスプリング76の一方の側部の前半部の後端には上向きの係止突起79が突設してあり、後半部の前端には下向きの係止突起80が突設してある。
ループハンドル70とトーションスプリング76をロック解除レバー47に接続するには、まず左右のロック解除レバー47の接続空間61にトーションスプリング76をそれぞれ挿入し、上向き突片77を下方からバネ係止孔54に挿入することによりトーションスプリング76の接続部55に対する前後動を規制し、さらに一方の側部(右側のトーションスプリング76は右側部、左側のトーションスプリング76は左側部)の中間部を一方の後方規制片60(右側の接続部55は右側の後方規制片60、左側の接続部55は左側の後方規制片60)の上面(後方規制部60a)に載せ、他方の側部(右側のトーションスプリング76は左側部、左側のトーションスプリング76は右側部)の係止突起79を他方の後方規制片60(右側の接続部55は左側の後方規制片60、左側の接続部55は右側の後方規制片60)の後縁に下方から係止すると共に他方の側部の係止突起80を他方の後方規制片60の前縁に上方から係止する(
図12、
図14、
図15参照)。次いでループハンドル70の左右の後端接続部72を前方から左右の接続空間61にそれぞれ挿入し、後端接続部72の後部をトーションスプリング76の左右の側部間の空間に挿入し、かつ係止溝74を前側係止部78に係止させる。
このようにループハンドル70及びトーションスプリング76を左右のレールユニット20と一体化することによりスライドシート装置10をアッセンブリすると、後端接続部72によってトーションスプリング76の前部(後方規制片60より前方に位置する部分)が僅かに下方に弾性変形されるので、トーションスプリング76の前部が発生する上向きの付勢力(弾性力)によって後端接続部72の上面前部が前方規制部56に接触すると共に下側当接面73が左右の後方規制片60の後方規制部60aに接触する(
図16参照)。このようにしてループハンドル70を左右のロック解除レバー47(接続部55)に接続した後に乗客が手で把持部71を掴んでループハンドル70全体を上方に回転させると、この回転力が後端接続部72から前方規制部56と後方規制部60aにそれぞれ掛かり、ロック解除レバー47(接続部55)が後端接続部72と一緒に上方に回転するので、ロック位置に位置していたロック解除レバー47をアンロック位置まで回転させることができる。一方、ループハンドル70全体を下方に回転させると、左右の後端接続部72が前側係止部78との係合部を支点として回転し(後端接続部72の後部は後方許容空間59内を上方に回転し、後端接続部72の前部は前方許容空間57内を下方に回転する)前方規制部56と後方規制部60aからそれぞれ離れるので(
図17参照)、この回転力が後端接続部72から対応するロック解除レバー47(接続部55)に伝わることはない(左右のロック解除レバー47は回転しない)。
【0019】
図1、
図3、
図4に示す位置決めピンPの下半部を床板Fの位置決め孔F2に嵌合した後に、床板Fから上方に突出した位置決めピンPの上部にスライドシート装置10の左右のロアレール21の位置決め孔22bをそれぞれ嵌合させると、左右のロアレール21に固定したスペーサ27の下面が床板Fの上面に接触し、各ボルト挿入孔22a及び貫通孔28が対応するネジ孔F1の直上に位置するので、固定ボルト30の頭部31の下面が底壁22の上面に圧接するまでネジ部33を対応するネジ孔F1に螺合させれば、スライドシート装置10が床板Fに固定される。
【0020】
以上説明した本実施形態のスライドシート装置10では、アッパレール35とロック解除レバー47にロック解除レバー47をアッパレール35に対して回転可能に支持するための構造(アッパレール35側の回転軸と、該回転軸に回転可能に嵌合するロック解除レバー47側の軸受け孔)を設けずに、ロックバネ63の付勢力を利用して回転接触凸部50を基部36の天井面に接触させることにより、ロック解除レバー47をアッパレール35に回転可能に支持しているため、構造が簡単である。
【0021】
また、アッパレール35とロック解除レバー47の間には、ロック解除レバー47のアッパレール35に対する前方への相対移動を規制する規制手段(ロックバネ63の後端部と係止片42)は存在するものの、ロック解除レバー47のアッパレール35に対する後方への相対移動を規制する手段は存在しない。
しかしながら、ロック解除レバー47がロック位置に位置するときはロックバネ63のロック部64がアッパレール35の前後動規制溝40(及びロアレール21のロック溝25)に係合するので、この係合関係によってロック解除レバー47のアッパレール35に対する前後動は規制される。また、ロック解除レバー47をアンロック位置に位置させたときは、ロックバネ63のロック部64がロアレール21のロック溝25のみならずアッパレール35の前後動規制溝40からも下方に脱出することがある(
図11に仮想線で描かれた下段のロック部64を参照)。しかし、この場合は
図11に示すように前後の規制片41によってロックバネ63(ロック部64)の前後動可能範囲が所定範囲に機械的に制限される。そのため、ロック解除レバー47がロック位置とアンロック位置のいずれに位置する場合も、ロック解除レバー47がアッパレール35に対して後方へ大きく移動することによりロックバネ63の後端部と係止片42の係止が解除されることはないので、ロック解除レバー47のアッパレール35に対する安定した回転動作を実現できる。
さらにロック解除レバー47がアンロック位置に位置するときに前後の規制片41がロック部64の前後動を上記所定範囲内に規制すると、
図11の仮想線で示すようにロック部64が前後動規制溝40から下方に脱出した場合であっても各ロック部64を構成する金属線材全体は対応する前後動規制溝40の直下に位置する(対応する前後動規制溝40の前縁より前方に位置せず、かつ前後動規制溝40の後縁より後方に位置しない)。そのため、この後にロック解除レバー47をロック位置に移動復帰させると、対応する前後動規制溝40を通り抜けて上方に移動した各ロック部64(金属線材)は、対応するロック溝25の前後いずれかの傾斜案内面25aによって案内されながら(もしくは傾斜案内面25aに接触することなく)ロック溝25の上部まで円滑に進入する。従って、レールユニット20を確実にロック状態に戻すことが可能である。
【0022】
また、ロック解除レバー47の接続部55もループハンドル70の後端接続部72を回転支持するための回転軸を具備していないので、接続部55に対するループハンドル70(後端接続部72)の回転支持構造は構造が簡単である。
【0023】
続いて本発明の第2の実施形態を
図18〜22を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のスライドシート装置10’は、アッパレール35’、ロック解除レバー47’、及び、付勢バネ(付勢手段)63’の構造がスライドシート装置10の対応する部材とは異なる。
アッパレール35’の基本構造はアッパレール35と同じであるが、前後動規制溝40が3つしかない点と、天井部36aの前端近傍部に下向きの係止片35aを有する点がアッパレール35とは異なる。
ロック解除レバー47’の基本構造はロック解除レバー47と同じであり、ロック解除レバー47と同様にレール内蔵部47aと接続部55を具備している。ロック解除レバー47’の回転接触凸部50より前方に位置する部分の天井部にはロックバネ挿入孔47eと前側ロックバネ係止孔47fが形成してあり、レール内蔵部47aの後端部近傍の天井部には後側ロックバネ係止孔47gが形成してある。さらにレール内蔵部47aの左右の側壁51の後端部には外側に向かって略水平に延びる3本のロック爪(ロック部)47hが前後に並べて一体的に突設してある。
付勢バネ63’は、ロックバネ63と同様に金属製の線材を曲折加工した略左右対称な部材であるが、ロックバネ63とは異なりロック部64は具備していない。さらに付勢バネ63’の後端部には上向きの後端係止部67aが突設してある。一方、付勢バネ63’の一方(右側の付勢バネ63’は右側の金属線材、左側の付勢バネ63’は左側の金属線材)の前端には他方の金属線材側に向かって延びる横向き係止片67bが突設してあり、他方(右側の付勢バネ63’は左側の金属線材、左側の付勢バネ63’は右側の金属線材)の前端には上向きの前側係止片67cが突設してある。左右の金属線材における横向き係止片67bと前側係止片67cの直後に位置する部分はそれぞれレバー押圧部66を構成している。
【0024】
図20及び
図21に示すように付勢バネ63’は、その後端係止部67aを下方から後側ロックバネ係止孔47gに係止し、レバー押圧部66よりやや後方に位置する部分を左右の係止片43にそれぞれ係止し、横向き係止片67bが形成された金属線材の前端部をロックバネ挿入孔47eを通して下方からロック解除レバー47’の上方に突出させると共に横向き係止片67bを前方からアッパレール35の係止片35aに係止し、前側係止片67cを下方から前側ロックバネ係止孔47fに係止している。このようにして付勢バネ63’をアッパレール35’及びロック解除レバー47’に取り付けると付勢バネ63’はアッパレール35に対して、横向き係止片67bと係止片35aの係止が解除されず、かつ、前側係止片67cと後端係止部67aが前側ロックバネ係止孔47fと後側ロックバネ係止孔47gから抜け出さない微小範囲内で前後方向に移動可能となり、付勢バネ63’の前端部(横向き係止片67b側の金属線材のロックバネ挿入孔47eから上方に突出する部分と前側係止片67c)と後端係止部67aを除く部分は平面視で左右の側壁51の間に位置する。またこのようにして付勢バネ63’を利用してロック解除レバー47’をアッパレール35’に取り付けると付勢バネ63’が弾性変形することにより、付勢バネ63’の後端係止部67aと後側ロックバネ係止孔47gの前縁部との接触部、横向き係止片67bが形成された側のレバー押圧部66とロックバネ挿入孔47eの後縁部との接触部、及び、前側係止片67cが形成された側のレバー押圧部66と前側ロックバネ係止孔47fの後縁部との接触部において付勢バネ63’からロック解除レバー47’に上向きの付勢力(弾性力)が及ぶので、この付勢力によってロック解除レバー47’の回転接触凸部50が基部36の天井部36aに押しつけられ、ロック解除レバー47’は天井部36aと回転接触凸部50の接触部Aを中心にして回転接触凸部50回りに回転可能となり、接続部55に上向きの外力を掛けないときロック解除レバー47’は
図20に示すロック位置に保持される。一方、付勢バネ63’の付勢力に抗して接続部55に上向きの外力を掛けるとロック解除レバー47’はアンロック位置(図示略)まで回転する。
【0025】
このようにして一体化したアッパレール35’、ロック解除レバー47’、及び、付勢バネ63’をアッセンブリすると、アッパレール35’の各規制片41が前側ストッパ片29aと後側ストッパ片29bの間に位置し、さらに左側の規制片41は左側の前側ストッパ片29aと左側の後側ストッパ片29bを結ぶ前後方向に延びる直線上に位置し、右側の規制片41は右側の前側ストッパ片29aと右側の後側ストッパ片29bを結ぶ前後方向に延びる直線上に位置する。
またロック解除レバー47’がロック位置に位置するときは、
図20、及び、
図22の実線で示すようにロック解除レバー47’の各ロック爪47hが対応するロック溝25及び前後動規制溝40に下方から係合するので、アッパレール35’のロアレール21に対するスライドは規制される。一方、ロック解除レバー47’をアンロック位置まで回転させると、
図22の仮想線で示すように各ロック爪47hが係合していたロック溝25及び前後動規制溝40から下方に脱出するので、アッパレール35’はロアレール21に対してスライド可能となる。
【0026】
以上構成の本実施形態では、アッパレール35’とロック解除レバー47’の間には、ロック解除レバー47’のアッパレール35’に対する後方への相対移動を規制する規制手段(付勢バネ63’の横向き係止片67bと係止片35a)は存在するものの、ロック解除レバー47’のアッパレール35’に対する前方への相対移動を規制する手段は存在しない。
しかしながら、ロック解除レバー47’がロック位置に位置するときはロック解除レバー47’のロック爪47hがロアレール21のロック溝25及びアッパレール35’の前後動規制溝40に係合するので、この係合関係によってロック解除レバー47’のアッパレール35’に対する前後動は規制される。また、ロック解除レバー47’がアンロック位置に位置するときはロック爪47hがロック溝25のみならず前後動規制溝40からも下方に脱出することがあるが(
図22に仮想線で描かれた下段のロック爪47hを参照)、この場合は
図22に示すように前後の規制片41によってロック爪47hの前後動可能範囲が所定範囲に制限される。そのためロック解除レバー47’がロック位置とアンロック位置のいずれに位置する場合も、ロック解除レバー47’がアッパレール35’に対して前方へ大きく移動することにより付勢バネ63’の横向き係止片67bとアッパレール35’の係止片35aの係止が解除されることはないので、ロック解除レバー47’のアッパレール35’に対する安定した回転動作を実現できる。
さらにロック解除レバー47’がアンロック位置に位置するときに前後の規制片41がロック爪47hの前後動を上記所定範囲内に規制すると、
図22の仮想線で示すようにロック爪47hが前後動規制溝40から下方に脱出した場合であっても各ロック爪47h全体が対応する前後動規制溝40の直下に位置する(対応する前後動規制溝40の前縁より前方に位置せず、かつ前後動規制溝40の後縁より後方に位置しない)。そのため、この後にロック解除レバー47’をロック位置に移動復帰させると、対応する前後動規制溝40を通り抜けて上方に移動した各ロック爪47hは、対応するロック溝25の前後いずれかの傾斜案内面25aによって案内されながら(もしくは傾斜案内面25aに接触することなく)ロック溝25の上部まで円滑に進入する。従って、レールユニット20’を確実にロック状態に戻すことが可能である。
【0027】
以上、上記第1及び第2の実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明は様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば、ロック溝25及び前後動規制溝40を上端が開放し下端が閉塞する溝としてもよい。
さらに第1の実施形態においてロックバネ63をアッパレール35に対して前後のいずれかにのみ(僅かに)移動可能としたり、第2の実施形態においてロック解除レバー47’をアッパレール35’に対して前後のいずれかにのみ(僅かに)移動可能としてもよい。
また、第1の実施形態においてロックバネ63とロック解除レバー47を、ロックバネ63がロック解除レバー47に対して前方に移動可能(後方への移動不能)として互いに係止したり、第2の実施形態において付勢バネ63’とロック解除レバー47’を、付勢バネ63’がロック解除レバー47’に対して後方に移動可能(前方への移動不能)として互いに係止してもよい。さらにロックバネ63とロック解除レバー47の間や付勢バネ63’とロック解除レバー47’の間から両者の前後動を規制する係止手段を省略してもよい。