特許第5662097号(P5662097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662097
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】平行でない管腔を有するシールアンカー
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20150108BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20150108BHJP
   A61B 17/02 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   A61B17/34
   A61B1/00 320E
   A61B17/02
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-223272(P2010-223272)
(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公開番号】特開2011-72795(P2011-72795A)
(43)【公開日】2011年4月14日
【審査請求日】2013年7月22日
(31)【優先権主張番号】61/247,654
(32)【優先日】2009年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/887,847
(32)【優先日】2010年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507362281
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー オコニウスキー
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−101150(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/103151(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0198188(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールアンカー部材であって、該シールアンカー部材は、
筺体であって、該筺体は先頭端および後続端を含み、該筺体は長手軸を画定する、筺体と、
該先頭端および後続端を通って延びる1つ以上の管腔であって、該1つ以上の管腔各々は、その中に器具を実質的にシールした状態で受容するように適合され該筺体に適用される力がない場合に、該1つ以上の管腔は、該筺体の長手軸に対して平行でない軸を画定する、1つ以上の管腔と
を含み、
該筺体の該後続端は、該管腔のうちの少なくとも1つの近位端に隣接するグルーブを含み、該グルーブは、円弧状または半円筒状の外形を有する、シールアンカー部材。
【請求項2】
シールアンカー部材であって、該シールアンカー部材は、
筺体であって、該筺体は先頭端および後続端を含む、筺体と、
該先頭端および該後続端を通って延びる複数の管腔であって、各管腔は、その中に器具を実質的にシールした状態で受容するように適合され、各管腔は、軸を画定する、複数の管腔と
を含み、
該筺体に適用される力がない場合に、該管腔のうちの少なくとも2つは、該筺体が側面断面図においてみられたときに互いに対して交差する軸を画定し、
該筺体の該後続端は、該管腔のうちの少なくとも1つの近位端に隣接するグルーブを含み、該グルーブは、円弧状または半円筒状の外形を有する、シールアンカー部材。
【請求項3】
シールアンカー部材であって、該シールアンカー部材は、
筺体であって、該筺体は先頭端および後続端を含み、該筺体は長手軸を画定する、筺体と、
該先頭端および後続端を通って延びる複数の管腔であって、各管腔は、その中に器具を実質的にシールした状態で受容するように適合される、複数の管腔と
を含み、
該管腔のうちの少なくとも2つは、真っ直ぐで、互いに対して平行でなく、
該筺体の該後続端は、該管腔のうちの少なくとも1つの近位端に隣接するグルーブを含み、該グルーブは、円弧状または半円筒状の外形を有する、シールアンカー部材。
【請求項4】
前記管腔は、横方向に距離をあけて離されている、請求項3に記載のシールアンカー部材。
【請求項5】
前記筺体は、圧縮可能材料から形成され、前記管腔内に挿入される前記器具は、該筺体の長手軸に対してある角度を画定し、該角度は調整可能である、請求項3に記載のシールアンカー部材。
【請求項6】
前記管腔は、該管腔内に受容された器具に及ぼされる半径方向の力がない場合に、互いに対して平行ではない、請求項3に記載のシールアンカー部材。
【請求項7】
前記グルーブは、前記管腔のうちの少なくとも1つの中に挿入される器具を安定化させるように適合される、請求項3に記載のシールアンカー部材。
【請求項8】
前記グルーブは、前記管腔のうちの前記少なくとも1つの近位端から半径方向外側に延びる、請求項7に記載のシールアンカー部材。
【請求項9】
前記筺体は、組織路内への前記シールアンカー部材の少なくとも部分的な挿入を容易にする第一の圧縮状態と、該組織路内に、該組織路を画定する組織表面と実質的に関連して、該シールアンカー部材を固定することを容易にする第二の状態との間で遷移するように適合される、請求項3に記載のシールアンカー部材。
【請求項10】
前記筺体は、実質的に砂時計の形状を画定する、請求項3に記載のシールアンカー。
【請求項11】
前記先頭端および前記後続端各々は、円弧状の外形を有する、請求項3に記載のシールアンカー。
【請求項12】
前記管腔の近位端は、前記後続端付近で半径方向に距離をあけて離されている、請求項3に記載のシールアンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第61/247,654号(2009年10月1日出願)の優先権および利益を主張し、この出願の開示は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(1.技術分野)
本開示は、外科処置における使用のためのシールに関する。さらに具体的には、本開示は、組織内の切開内への挿入に適合されたシールアンカー部材に関し、このシールアンカー部材は、1つ以上の外科用物体のシールされた受容に適合された複数の平行でない管腔を含み、それにより、実質的に流体密なシールが組織と単数または複数の外科用物体とによって形成される。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の背景)
今日、患者への外傷および回復時間の両方を低減しようとの努力において、多くの外科処置は、従来の処置に一般的に必要とされるより大きな切開との比較において、皮膚の小さい切開を通して実行される。概して、そのような処置は、患者の腹部において実行されなければ、「内視鏡的」と呼ばれ、処置が患者の腹部において実行されれば、「腹腔鏡的」と呼ばれる。本開示全体にわたって、用語「最小侵襲性」とは、内視鏡処置および腹腔鏡処置の両方を含むと理解されるべきである。
【0004】
一般的な最小侵襲性処置の間、外科用アクセス装置(例えば、トロカールおよびカニューレのアセンブリ)または内視鏡のような外科用物体は、組織内の切開を通して患者の身体内に挿入される。一般に、患者の身体内への外科用物体または器具の導入前に、通気ガスが目標の外科部位を囲む領域を拡大するために用いられて、より大きく、よりアクセス容易な作業領域を作り出す。従って、実質的に流体密なシールの維持が、通気ガスの漏出および拡大された外科部位の収縮または圧壊を防ぐために望ましい。
【0005】
この目的のために、様々なバルブおよびシールが、最小侵襲性処置の過程の間に使用され、それらは当該技術分野において周知である。外科用器具を受容するための管腔を含む様々なシールが開発されてきた。特定の外科処置のニーズに応じて、器具は、長い期間の間、互いに対して角度を付けられている必要があり得る。器具を互いに対して角度をつけて維持すること、および/または器具が挿入されるシールアンカー部材の内的なバイアスに打ち勝つことは、外科医を疲労させ、および/またはシールアンカー部材と周囲の組織との間の流体密な障壁を破綻させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、新規なシールアンカー部材に対して継続したニーズが存在し、そのようなシールアンカー部材は、組織内の切開内に直接挿入されることができ、通気された作業空間の完全性を維持しつつ、様々な外科用物体または器具を収容することができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
先頭端(leading end)および後続端(trailing end)と、それらを通る1つ以上の管腔とを含む筺体を含むシールアンカー部材が本明細書において開示される。管腔の各々は、外科用器具を実質的にシールされた受容状態で受容するように適合される。1つ以上の管腔が筺体の長手軸に対して角度を付けられている。管腔のうちの少なくとも2つが、互いに対して平行でない軸を画定する。一実施形態において、筺体は、複数の管腔、例えば、3つの管腔を含み、管腔のうちの1つは、長手軸に対して平行であり、他の2つの管腔は、互いに対して、および長手軸に対して平行ではない。本明細書に述べられているように、管腔は、交差する軸を画定するが、互いにクロスはしない。なぜなら、管腔は横方向に距離をあけられているからであり、すなわち、管腔ではなく、軸が、筺体が側面断面図においてみられるときに交差しているからである。この管腔の配列は、シールアンカー部材内での複数の外科用物体または器具の、同時であって平行でない設置を容易にする。しかしながら、他の実施形態においては、管腔は交差し得る。
【0008】
さらに、管腔は、先頭端において開口を画定し得、この開口は後続端付近では半径方向に距離をあけられて離れている。代替的に、管腔は、先頭端において開口を画定し得、この開口は後続端の直径に沿って距離をあけている。管腔によって画定される開口は、後続端の軸の周りで千鳥状であり得るか、または、直径に沿っているが、直径からずれて設置され得る。代替的に、管腔によって画定される開口は、後続端の弦または直径上に配置され得る。
【0009】
筺体は、圧縮可能材料から形成され得、それにより、管腔内に挿入される器具の間の角度および筺体の長手軸に対する角度を調整することを容易にする。管腔内に挿入される器具上に、半径方向の力などの力が作用しなければ、管腔は、互いに角度が付いている、すなわち、平行ではない。使用中、管腔の角度は、力を作用させることによって調整することが可能である。
【0010】
後続端は、管腔のうちの少なくとも1つの近位端に隣接して配置されるグルーブ、カットアウト、または凹部を含み得る。グルーブは、器具を安定化させ、管腔内に器具を導くことによって、管腔内に器具を挿入することを容易にするように構成、適合される。グルーブは、概して円弧状であり得る。グルーブは、グルーブの近位端から遠位端までで狭くなり得る。グルーブは、少なくとも1つの管腔の近位端から半径方向外側に延び得る。
【0011】
さらに、シールアンカーの筺体は、組織路内へのシールアンカー部材の少なくとも部分的な挿入を容易にする第一の圧縮状態と、組織路内に、そして、組織路を画定する組織表面との実質的にシールした関係でシールアンカー部材を固定することを容易にする第二の拡張状態との間で遷移するように適合され得る。一実施形態において、筺体は、圧縮可能材料または発泡材料から形成され得る。一実施形態において、発泡材料は、ポリイソプレン、ウレタン、およびシリコンから成る群から選択される材料から少なくとも部分的に構成され得る。別の実施形態において、筺体は、ゲル材料から形成され得る。
【0012】
筺体は、また、実質的に円弧状の外形を画定し得る。筺体は、実質的に砂時計の形状を画定し得る。さらに、管腔は、先頭端における開口を画定し得、これらの開口は後続端付近で半径方向に距離をあけている。代替的に、管腔は、後続端の直径に沿って距離をあけられている開口を画定し得る。管腔によって画定される開口は、後続端の軸周りに千鳥状にされ得るか、または、直径に沿っているがその直径からずれて設置され得る。代替的に、管腔によって画定される開口は、後続端の弦または直径上に設置され得る。
【0013】
本明細書において開示される装置についてのこれらの、および他の特徴が、本開示の様々な実施形態についての以下の詳述から、当業者にはさらに容易に明らかになるであろう。
【0014】
本発明は、さらに以下を提供する。
(項目1)
シールアンカー部材であって、
筺体であって、該筺体は先頭端および後続端を含み、該筺体は長手軸を画定する、筺体と、
該先頭端および後続端を通って延びる1つ以上の管腔であって、該1つ以上の管腔は、各々、その中に器具を実質的にシールした状態で受容するように適合され、該1つ以上の管腔は、該筺体に適用される力がない場合に、該筺体の長手軸に対して平行でない軸を画定する、1つ以上の管腔と
を含む、シールアンカー部材。
(項目2)
シールアンカー部材であって、
筺体であって、該筺体は先頭端および後続端を含む、筺体と、
該先頭端および該後続端を通って延びる複数の管腔であって、各管腔は、その中に器具を実質的にシールした状態で受容するように適合され、軸を画定する、複数の管腔と
を含み、
該筺体に適用される力がない場合に、該筺体が側面断面図においてみられたときに、少なくとも2つの該管腔は、互いに対して交差する軸を画定する、シールアンカー部材。
(項目3)
シールアンカー部材であって、
筺体であって、該筺体は先頭端および後続端を含み、該筺体は長手軸を画定する、筺体と、
該先頭端および後続端を通って延びる複数の管腔であって、各管腔は、その中に器具を実質的にシールした状態で受容するように適合される、複数の管腔と
を含み、
少なくとも2つの該管腔は、真っ直ぐで、互いに対して平行でない、シールアンカー部材。
(項目4)
上記管腔は、横方向に距離をあけて離されている、上記項目のうちのいずれか一項に記載のシールアンカー部材。
(項目5)
上記筺体は、圧縮可能材料から形成され、上記管腔内に挿入される上記器具は、該筺体の長手軸に対してある角度を画定し、該角度は調整可能である、上記項目のうちのいずれか一項に記載のシールアンカー部材。
(項目6)
上記管腔は、該管腔内に受容された器具に及ぼされる半径方向の力がない場合に、互いに対して平行ではない、上記項目のうちのいずれか一項に記載のシールアンカー部材。
(項目7)
上記先頭端は、上記管腔のうちの少なくとも1つの近位端に隣接するグルーブを含み、該グルーブは該管腔のうちの少なくとも1つの中に挿入される器具を安定化させるように適合される、上記項目のうちのいずれか一項に記載のシールアンカー部材。
(項目8)
上記グルーブは、概して円弧状である、上記項目のうちのいずれか一項に記載のシールアンカー部材。
(項目9)
上記グルーブは、上記管腔のうちの少なくとも1つの近位端から半径方向外側に延びる、上記項目のうちのいずれか一項に記載のシールアンカー部材。
(項目10)
上記筺体は、組織路内への上記シールアンカー部材の少なくとも部分的な挿入を容易にする第一の圧縮状態と、該組織路内に、該組織路を画定する組織表面と実質的に関連して、該シールアンカー部材を固定することを容易にする第二の状態との間で遷移するように適合される、上記項目のうちのいずれか一項に記載のシールアンカー部材。
(項目11)
上記筺体は、実質的に砂時計の形状を画定する、上記項目のうちのいずれか一項に記載のシールアンカー。
(項目12)
上記先頭端および後続端は、各々、円弧状の外形を有する、上記項目のうちのいずれか一項に記載のシールアンカー。
(項目13)
上記管腔の近位端は、上記後続端付近で半径方向に距離をあけて離されている、上記項目のうちのいずれか一項に記載のシールアンカー。
(摘要)
長手軸を画定する筺体を画定するシールアンカー部材であって、筺体は先頭端および後続端を含み、該先頭端と該後続端との間を延びる複数の管腔を含み、各管腔は、その中に物体を実質的にシールした状態で受容するように適合され、長手軸を画定しており、少なくとも2つの該管腔は、平行でない長手軸を画定することにより、シールアンカー部材内における複数の器具の角度の付いた、静止した設置を容易にする、シールアンカー部材である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の様々な実施形態が、次の図を参照して以下に述べられる。
図1図1は、組織と関連して示されている、本開示に従うシールアンカーの正面斜視図である。
図2A図2Aは、互いに平行である管腔をその中に有するシールアンカー部材の正面斜視図である。
図2B図2Bは、その中に医療器具が挿入されて示されている図1のシールアンカーの正面斜視図である。
図3図3は、本開示に従うシールアンカーの別の実施形態である。
図4図4は、本開示に従うシールアンカーのさらに別の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の図および記載において、類似の参照番号は、同様の、または同一の
構成要素を識別し、当該技術分野において慣例的であり、公知であるように、用語「近位の」は、使用中において臨床医に最も近い端を指し、用語「遠位の」は、臨床医から最も遠い端を指す。外科処置における使用のためのシールアンカーは、米国特許出願公開第2009/0093752号に示され、記載され、その全内容は本明細書に参照によって援用される。シールアンカー部材は、シールアンカーが切開内に挿入される最小侵襲性処置の間、使用され得る。代替的に、シールアンカーは、自然発生開口(例えば、肛門または膣)または患者の皮膚内の任意の切開を通して使用され得る。
【0017】
一般的な最小侵襲性処置の過程の間におけるシールアンカー部材100の使用および機能が議論される。最初に、腹膜腔(図示されず)が、例えば、COガスのような好適な生物学的適合性ガスによって通気されることにより、窩壁はその中に収容される内側の器官および組織から引き上げられ、持ち上げられて、それらへのより大きなアクセスを提供する。通気は、当該技術分野において一般的であるように、通気ニードルまたは同様の装置によって実行され得る。通気の前後のいずれかにおいて、組織路12が組織「T」内につくられ、それの寸法は、処置の性質に応じて変更され得る。
【0018】
シールアンカー100が、ここで、図1および2を参照して述べられる。シールアンカー100は、長手軸「A」を画定し、それぞれの後続端(または、近位端)102および先頭端(または、遠位端)104、後続端102と先頭端104との間に配置される中間部分106を有する。シールアンカー部材100は、後続端102と先頭端104との間に配置された1つ以上の管腔(または、出入口)108a、108b、108cを含み、これらの管腔は対応する長手軸「X」、「Y」、「Z」を画定する。図1にみられるように、管腔108a、108b、108cによって画定される軸「X」、「Y」、「Z」は、それぞれ、互いに対して平行ではない。管腔108a、108b、108cの各々の中への器具の同時の設置を容易にするために、管腔108a−cは、互いにクロスしない。管腔108a−cは、横方向に距離をあけて離れており、それにより、管腔108a−cは互いに対して角度が付いてはいるものの、管腔108a−cは互いに交差しない。しかしながら、別の実施形態において、管腔は互いにクロスするように配列され得る。シールアンカー100とは対照的に、平行で、交差しない管腔98を有するシールアンカー90が図2Aに図示される。
【0019】
図2Bにみられるように、管腔108a−cは、実質的にシールされた態様でその中に器具類を受容するように適合される。管腔108a−cは、器具類が体腔内に挿入されているか、または挿入されていない状態で、体腔内の通気ガスが漏出することを抑制するように適合される。従って、管腔108a−cは、その中に外科用器具が挿入されていない状態において収縮するように適合され、実質的にシールされた態様で器具類を収容するために拡張するように適合される。
【0020】
図2Bに示されるように、管腔108内に挿入される器具類は、これらに限定するものではないが、管腔108のうちの1つの中に挿入され得るカメラ20、および別の管腔108のうちの2つの中に挿入され得る1対の外科用器具21を含み得る。2つの管腔108a、108cの軸「X」および「Z」は、それらを通して1対の外科用器具21が挿入されるが、互いにクロスし、外科用器具21の遠位端間の距離は、軸「X」、「Z」が互いに平行である場合の距離よりも大きい。管腔108a、108cは、平行ではない軸を画定するので、器具21が互いの使用を妨害する確率がより小さいために、外科用器具21の操作は容易にされる。さらに、管腔108a−cの静止状態は、互いに対して角度が付いているので、外科医の疲労は、長い継続時間の間中そのような位置調整を必要とする処置に対して低減される。互いに対する管腔の角度調整は、半径方向の力を管腔108a−c内に設置された外科用器具類に作用させて、シールアンカー部材100の内的なバイアス力を克服することによって促進される。
【0021】
上記で議論したように、図2Aは、互いに平行である管腔98を含むシールアンカー90を図示している。外科用器具21およびカメラ20が管腔98内に挿入されている。図2Aにみられるように、管腔98の平行な構成は、カメラ20が手術部位の鮮明な視野を獲得することを妨げる。シールアンカー100の管腔108a−cの平行でない、交差する構成は、シールアンカー90を用いて獲得することが可能な視野よりも妨害がより少ない視野を獲得することを促進する。特に、図2Bに示されるように、軸「X」および「Z」は、その間に角度「θ」を画定する。角度θの値が大きい程、外科用器具21がカメラ20の視野を妨害する確率はより小さくなる。さらに、角度「θ」が大きい程、処置の間における器具21の間の妨害の確率はより小さくなる。さらに、角度「θ」が大きい程、手術領域内、および器具21の到達範囲内に含まれる内部組織の数はより大きくなる。
【0022】
シールアンカー部材の近位端102は、第一の直径Dを画定し、遠位端104は、第二の直径Dを画定する。シールアンカー部材100の一実施形態において、近位端102および遠位端104のそれぞれの第一の直径Dおよび第二の直径Dは、図1にみられるように、実質的に等しいが、直径D、Dが異なるシールアンカー部材100の実施形態も本開示の範囲内にある。図1に示されるように、近位端102および遠位端104は、実質的に平面である表面を画定する。しかしながら、近位端102および遠位端104のいずれかまたは両方が、それぞれ実質的に円弧状の表面を画定し、それにより、切開のような、組織表面14によって画定され、組織「T」内に形成される組織路12の中にシールアンカー部材100を挿入することを支援する実施形態もまた本明細書において企図され、以下においてさらに詳細に議論される。
【0023】
中間部分106は、半径方向の寸法「R」を画定し、近位端102と遠位端104との間を長手方向にそれぞれ延びることにより、軸方向の寸法または長さ「L」を画定する。中間部分106の半径方向の寸法「R」は、それの軸の寸法または長さ「L」に沿って変化する。従って、以下にさらに詳細に議論されるように、シールアンカー部材100は、それの長さ「L」に沿って変化する断面寸法を画定し、このことは組織「T」内にシールアンカー部材100を定着することを容易にする。しかしながら、シールアンカー部材100の実施形態であって、それの軸方向寸法「L」に沿って半径方向の寸法「R」が実質的に一様なままである、実施形態形態もまた本開示の範囲内にある。
【0024】
中間部分106の半径方向の寸法「R」は、近位端102および遠位端104のそれぞれの直径D、Dよりもかなり小さく、その結果、シールアンカー部材100は、「砂時計」の形状または外形を画定して、組織「T」内にシールアンカー部材100を定着することを支援し、このことは以下においてさらに詳細に議論される。しかしながら、代替の実施形態において、中間部分106の半径方向の寸法「R」は、近位端102および遠位端104のそれぞれの直径D、Dに実質的に等しくあり得る。断面において、中間部分106は、例えば、実質的に円形、楕円形、長方形である、任意の好適な外形を呈し得る。
【0025】
シールアンカー100は、拡張状態から圧縮状態まで遷移するように適合され得、それにより、組織「T」内の組織路12内にそれを挿入および固定することを容易にする。拡張状態において、シールアンカー100は静止しており、シールアンカー100の近位端102および遠位端104のそれぞれの直径D、Dは、中間部分106の半径方向の寸法Rと同様に、シールアンカー100が組織路12内に挿入されることが不可能である程度のものである。しかしながら、シールアンカー100は、圧縮状態に遷移し得、その結果、近位端102および遠位端104は、中間部分106と同様に、組織路12の中への挿入に必要な寸法にされる。
【0026】
拡張状態と圧縮状態との間の遷移を容易にするために、シールアンカー100は、内的なバイアス力を有する圧縮可能材料から形成され得、その結果、シールアンカー100は、組織路12内にシールアンカー100を挿入したときに遷移して拡張状態に戻り、これによって、シールアンカー100と組織路12との間のシールを確実なものにする。シールアンカー100は、形状記憶材料、発泡材料、ゲル材料などから形成され得るが、他の材料からも形成され得る。一実施形態において、シールアンカー100は、ポリイソプレン、ウレタン、およびシリコンから成る群から選択される材料から形成され得る。
【0027】
後続端102および先頭端104の設置部材114、115は、それぞれ、組織路12の体腔を画定する壁と係合し得、それにより、身体組織内にシールアンカー部材100を固定することを容易にする。例えば、先頭端104における設置部材115は、内側の腹膜腔と係合し得、後続端102に隣接する設置部材114は、組織「T」内の切開12に隣接する外側の表皮組織と係合し得る。シールアンカー部材100の別の実施形態において、1つ以上の付加的な設置部材114が中間部分106と関連付けられ得る。
【0028】
一般的な最小侵襲性処置の進行の間におけるシールアンカー部材100の使用および機能が議論される。最初に、腹膜腔(図示されず)が、例えば、COガスのような好適な生物学的適合性ガスによって通気されることにより、窩壁はその中に収容される内側の器官および組織から引き上げられ、持ち上げられ、それらへのより大きなアクセスを提供する。通気は、当該技術分野において一般的であるように、通気ニードルまたは同様の装置によって実行され得る。通気の前後のいずれかにおいて、組織路12が組織「T」内につくられ、それの寸法は、処置の性質に応じて変更され得る。
【0029】
シールアンカーの様々な実施形態が図3および4を参照して述べられる。シールアンカー200,300は、管腔の外形を除いて、実質的にシールアンカー100と同様であり、管腔内に挿入された器具類を安定させるための構造をさらに含む。図3および4に示されるシールアンカー200およびシールアンカー300の両方は、交差する軸を画定する管腔を含む。シールアンカー200は、後続端202および遠位端204を含む。複数の管腔208が、後続端202と遠位端204との間に配置される。管腔208は、後続端202内に、後続端202に沿って半径方向に設置される開口を画定する。少なくとも1つの管腔208から外側に延びる、後続端内のカットアウトまたはグルーブ201は、管腔208内に挿入された器具類の安定化を促進する。
【0030】
代替的な実施形態において、先頭端と後続端302、304の間に配置された複数の管腔を含むシールアンカー300が、図4に示される。円弧状または半円筒状の外形のカットアウトまたはグルーブ301が後続端内に配置される。少なくとも1つの管腔308がグルーブ301内に配置される。グルーブ301は、グルーブ301によって画定される領域内に配置される少なくとも1つ管腔308内に挿入される器具類の安定化を促進するように適合される。
【0031】
本開示の例示的な実施形態が、添付図面を参照して本明細書において述べられてきたが、上記の記述、開示および図は、限定ではなく単に特定の実施形態の実例として解釈されるべきである。従って、開示がそれらのまさにその実施形態に限定されると理解されるべきではなく、そして、様々な他の変更および修正が、開示の範囲または精神から逸脱することなく当業者によってもたらされ得ることも理解されるべきである。
【符号の説明】
【0032】
100 シールアンカー
102 後続端
104 先頭端
106 中間部分
108a、108b、108c 管腔
114、115 設置部材
図1
図2A
図2B
図3
図4