特許第5662110号(P5662110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662110
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】自動車の無段変速機用油圧制御システム
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/00 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   F16H61/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-251853(P2010-251853)
(22)【出願日】2010年11月10日
(65)【公開番号】特開2012-82948(P2012-82948A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年7月24日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0100447
(32)【優先日】2010年10月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 ヒョン 錫
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−126239(JP,A)
【文献】 特開2011−047418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマリプーリとセカンダリプーリを通じてエンジンの回転動力を受けて出力する無段変速ベルト機構と、
遊星歯車セットと前記遊星歯車セットを制御する複数の摩擦要素とを含み、前記無段変速ベルト機構から入力される回転動力を2つの前進変速段と1つの後進変速段で変速して出力する前後進制御機構とを含み、
前記複数の摩擦要素は、前進1速で作動する第1ブレーキと、前進2速で作動する第1クラッチと、後進変速段で作動する第2ブレーキとを含む無段変速機の油圧制御システムであって、
前記第1クラッチおよび前記第2ブレーキは、第1比例制御ソレノイドバルブで制御されてマニュアルバルブを介して供給される作動圧によって作動し、前記第1ブレーキは、マニュアルバルブを介して受けた油圧を第2比例制御ソレノイドバルブで制御される作動圧によって作動することを特徴とする自動車の無段変速機用油圧制御システム。
【請求項2】
前記マニュアルバルブは、ライン圧の供給を受ける第1ポートと、前記第1ポートに供給された油圧を前記第2比例制御ソレノイドバルブに供給する第2ポートと、前記第1比例制御ソレノイドバルブから油圧の供給を受ける第3ポートと、前記第3ポートの油圧を前記第1クラッチに供給する第4ポートと、前記第3ポートの油圧を第2ブレーキに供給する第5ポートとを含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車の無段変速機用油圧制御システム。
【請求項3】
前記第1比例制御ソレノイドバルブと前記マニュアルバルブを連結する管路と、前記第2比例制御ソレノイドバルブと前記第1ブレーキを連結する管路上に、それぞれアキュムレータが配置され、安定して油圧が供給されることを特徴とする請求項1に記載の自動車の無段変速機用油圧制御システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の無段変速機に係り、より詳細には、マニュアルバルブがスイッチバルブの機能を兼ねることにより原価節減と信頼性を向上させた自動車の無段変速機用油圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に車両に用いられている無段変速機の大半は、無段変速ベルト機構と、遊星歯車セットからなる前後進制御機構と、前後進制御機構に適用される摩擦要素を制御する油圧制御システムと、を含んで構成される。無段変速ベルト機構は、エンジンの回転動力がプライマリプーリに入力されてセカンダリプーリを介して出力がなされるが、この時、無段変速はプライマリプーリとセカンダリプーリの半径を可変させることによって実現される。前後進制御機構は、シングルまたはダブルピニオン遊星歯車セットと、この遊星歯車セットを制御する複数の摩擦要素とで構成され、摩擦要素の制御に応じてセカンダリプーリから入力される回転動力を前進または後進方向に転換させる。前後進制御機構は単に前進および後進制御のみがなされるように構成されるが、通常は動力伝達の効率を高めるために前進2速および後進1速で制御がなされるように構成する。
【0003】
油圧制御システムは、前後進制御機構に適用される摩擦要素の作動を制御し、上述のように、前進2速および後進1速の変速を行なうが、前進2速および後進1速を実現する従来の油圧制御システムは、詳しくは図1のとおりである。まず、前進2速および後進1速の変速を実現するためには、前進1速を実現する第1ブレーキB1と、前進2速を実現する第1クラッチC1と、後進変速を実現する第2ブレーキB2とが適用され、油圧制御システムは摩擦要素C1、B1、B2を制御する。
【0004】
具体的には、圧力調節手段(図示せず)から供給される油圧が運転席のセレクトレバーのレンジ選択に応じて制御されるマニュアルバルブ2を介してスイッチバルブ4に供給される。これにより、スイッチバルブ4はマニュアルバルブ2から供給される前後進圧を選択的に第1圧力制御ソレノイドバルブ6に供給し、第1圧力制御ソレノイドバルブ6では、この油圧を制御し、他の管路を介して再びスイッチバルブ4に供給する。そして、スイッチバルブ4に供給された第1圧力制御ソレノイドバルブ6の制御圧は、第1クラッチ(C1)または第2ブレーキ(B2)の作動圧として供給される。また、マニュアルバルブ2から供給された前進圧の一部は第2圧力制御ソレノイドバルブ8に供給され、第2圧力制御ソレノイドバルブ8で制御されて、第1ブレーキ(B1)に供給される。
【0005】
このため、マニュアルバルブ2は、圧力調節手段から油圧の供給を受ける第1ポート10と、第1ポート10に供給された油圧を前進(D)レンジ時にスイッチバルブ4および第2圧力制御ソレノイドバルブ8に供給する第2ポート12と、第1ポート10に供給された油圧を後進(R)レンジ時にスイッチバルブ4に供給する第3ポート14とを含んで構成される。
【0006】
これにより、前進(D)レンジ時には第1ポート10の油圧が第2ポート12に供給され、後進(R)レンジ時には第1ポート10の油圧が第3ポート14に供給される。スイッチバルブ4は、一側端でマニュアルバルブ2から供給される前進圧を制御圧として供給を受ける第1ポート16と、第1ポート16に隣接して配置され第1圧力制御ソレノイドバルブ6から油圧の供給を受ける第2ポート18と、第2ポート18の油圧を第1クラッチ(C1)に供給する第3ポート20と、第2ポート18の油圧を第2ブレーキ(B2)に供給する第4ポート22と、マニュアルバルブ2から前進圧の供給を受ける第5ポート24と、マニュアルバルブ2から後進圧の供給を受ける第6ポート26と、第5ポート24および第6ポート26に供給された油圧を選択的に第1圧力制御ソレノイドバルブ6に供給する第7ポート28と、を含んで構成される。
【0007】
前進(D)レンジでは、第5ポート24に供給される前進圧が、第7ポート28を介して第1圧力制御ソレノイドバルブ6に供給される。第1圧力制御ソレノイドバルブ6で制御された前進圧が、第2ポート18および第3ポート20を介して第1クラッチ(C1)に供給される。後進(R)レンジでは、第6ポート26に供給される後進圧が、第7ポート28を介して第1圧力制御ソレノイドバルブ6に供給され、第1圧力制御ソレノイドバルブ6で制御された後進圧が、第2ポート18および第4ポート22を介して第2ブレーキ(B2)に供給される。また、第1ブレーキ(B1)には、第2圧力制御ソレノイドバルブ8で制御された油圧が作動圧として供給される。これにより、前進1速では第1ブレーキ(B1)が作動し、前進2速では第1クラッチ(C1)が作動し、後進変速段では第2ブレーキ(B2)が作動して、前進2速および後進1速の変速段を実現できる。
【0008】
このような従来の無段変速機の油圧制御システムでは、スプールバルブであるスイッチバルブが設けられて、これによる流路を形成しなければならないため、バルブボディーの構成が複雑で原価上昇の要因となっていた。また、バルブスティックの発生の恐れがあり、信頼性が低下するという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−28282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、マニュアルバルブがスイッチバルブの機能を兼ねることで原価節減および信頼性を向上させた自動車の無段変速機用油圧制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、プライマリプーリとセカンダリプーリを通じてエンジンの回転動力を受けて出力する無段変速ベルト機構と、
遊星歯車セットと前記遊星歯車セットを制御する複数の摩擦要素とを含み、前記無段変速ベルト機構から入力される回転動力を2つの前進変速段と1つの後進変速段で変速して出力する前後進制御機構とを含み、
前記複数の摩擦要素は、前進1速で作動する第1ブレーキと、前進2速で作動する第1クラッチと、後進変速段で作動する第2ブレーキとを含む無段変速機の油圧制御システムであって、
前記第1クラッチおよび前記第2ブレーキは、第1比例制御ソレノイドバルブで制御されてマニュアルバルブを介して供給される作動圧によって作動し、前記第1ブレーキは、マニュアルバルブを介して受けた油圧を第2比例制御ソレノイドバルブで制御される作動圧によって作動することを特徴とする。
【0012】
前記マニュアルバルブは、ライン圧の供給を受ける第1ポートと、前記第1ポートに供給された油圧を前記第2比例制御ソレノイドバルブに供給する第2ポートと、前記第1比例制御ソレノイドバルブから油圧の供給を受ける第3ポートと、前記第3ポートの油圧を前記第1クラッチに供給する第4ポートと、前記第3ポートの油圧を第2ブレーキに供給する第5ポートとを含んで構成されることを特徴とする。
【0013】
前記第1比例制御ソレノイドバルブと前記マニュアルバルブを連結する管路と、前記第2比例制御ソレノイドバルブと前記第1ブレーキを連結する管路上に、それぞれアキュムレータが配置され、安定して油圧が供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来のスプールバルブからなるスイッチバルブを省略することができ、スイッチバルブの役割をマニュアルバルブが兼ねることによって部品数が節減され、これに伴うバルブボディーの構成を単純化して生産原価を節減できる。また、本発明によれば、スプールバルブによるバルブスティックの発生を根本的に解決でき、バルブスティックの発生による信頼性の低下を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の無段変速機油圧制御システムを示す構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る油圧制御システムのN−Pレンジを示す構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る油圧制御システムの前進1速における油圧を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る油圧制御システムの前進2速における油圧を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る油圧制御システムの後進における油圧を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。なお、本発明は多様な形態で実現することができ、この実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係る無段変速機の油圧制御システムである。この実施形態は、前進1速を実現する第1ブレーキ(B1)と、前進2速を実現する第1クラッチ(C1)と、後進変速を実現する第2ブレーキ(B2)とを制御するための油圧制御システムである。具体的には、油圧はオイルポンプ(図示せず)で生成され圧力調節手段(図示せず)から供給される。すなわち圧力調節手段が無段変速機の運用に適合するライン圧に調節して供給する。ライン圧の一部は、運転席のセレクトレバーのレンジ変化に応じて制御されるマニュアルバルブ100に供給され、一部は第1比例制御ソレノイドバルブ(VFS1)で制御されてマニュアルバルブ100に供給される。また、マニュアルバルブ100に直接供給された油圧はDレンジで第2比例制御ソレノイドバルブ(VFS2)を介して制御されて第1ブレーキ(B1)の作動圧として供給される。第1比例制御ソレノイドバルブ(VFS1)を介して制御されてマニュアルバルブ100に供給された油圧は、Dレンジで第1クラッチ(C1)に供給され、Rレンジとして第2ブレーキ(B2)に供給される。
【0018】
マニュアルバルブ100は、ライン圧の供給を受ける第1ポート102と、第1ポート102に供給された油圧を第2比例制御ソレノイドバルブ(VFS2)に供給する第2ポート104と、第1比例制御ソレノイドバルブ(VFS1)から油圧の供給を受ける第3ポート106と、第3ポート106の油圧を第1クラッチ(C1)に供給する第4ポート108と、第3ポート106の油圧を第2ブレーキ(B2)に供給する第5ポート110とを含んで構成される。
【0019】
これにより、N−Pレンジでは、図2に示すように、ライン圧がマニュアルバルブ100と第1比例制御ソレノイドバルブ(VFS1)によって遮断され、いかなる作動もされない。
【0020】
また、Dレンジ前進1速では、図3に示すように、マニュアルバルブ100の第1ポート102に供給された油圧が第2ポート104を介して第2比例制御ソレノイドバルブ(VFS2)に供給され、この油圧は第2比例制御ソレノイドバルブ(VFS2)で制御されて第1ブレーキ(B1)に供給されることで変速がなされる。
【0021】
また、前進2速では、図4に示すように、第2比例制御ソレノイドバルブ(VFS2)が第1ブレーキ(B1)に供給される油圧を遮断し、第1比例制御ソレノイドバルブ(VFS1)で制御された油圧がマニュアルバルブ100の第3ポート106と第4ポート108を介して第1クラッチ(C1)に供給されることで変速がなされる。
【0022】
さらに、Rレンジでは、図5に示すように、マニュアルバルブ100に直接供給されたライン圧は遮断され、第1比例制御ソレノイドバルブ(VFS1)で制御された油圧がマニュアルバルブ100の第3ポート106と第5ポート110を介して第2ブレーキ(B2)に供給されことで後進変速がなされる。
【0023】
すなわち、前進2速と後進変速段で作動する第1クラッチ(C1)および第2ブレーキ(B2)は、第1比例制御ソレノイドバルブVFS1で制御されてマニュアルバルブ100を介して供給される作動圧によって作動する。前進1速で作動する第1ブレーキ(B1)は、マニュアルバルブ100を介して受けた油圧を第2比例制御ソレノイドバルブ(VFS2)で制御する作動圧で作動する。
【0024】
また、本発明の油圧制御システムでは、第1比例制御ソレノイドバルブ(VFS1)とマニュアルバルブ100を連結する管路116と、第2比例制御ソレノイドバルブ(VFS2)と第1ブレーキ(B1)を連結する管路114上に、それぞれアキュムレータ120、122を配置し、安定して油圧が供給されるようにした。
【0025】
また、第1比例制御ソレノイドバルブ(VFS1)および第2比例制御ソレノイドバルブ(VFS)は、一般に使用される比例制御バルブである。第1比例制御ソレノイドバルブ(VFS1)は、ノーマルオープン型を適用し、第2比例制御ソレノイドバルブ(VFS2)は、ノーマルクロス型を適用している。
【0026】
本発明に係る油圧制御システムは、このように、従来のスイッチバルブを省略して、これをマニュアルバルブが兼ねるように構成できる。このため、部品数が節減でき、バルブボディーが単純化されて生産原価も節減できる。また、スプールバルブによるバルブスティックの発生を根本的に解決するので、バルブスティックの発生による信頼性の低下を未然に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、マニュアルバルブがスイッチバルブの機能を兼ねる小型で信頼性の高い無段変速機用油圧制御システムに適している。
【符号の説明】
【0028】
100 マニュアルバルブ
120、122 アキュムレータ
VFS1 第1比例制御ソレノイドバルブ
VFS2 第2比例制御ソレノイドバルブ

図1
図2
図3
図4
図5