特許第5662166号(P5662166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5662166胃癌の診断、予後診断及び治療のためのマイクロRNAに基づいた方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662166
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】胃癌の診断、予後診断及び治療のためのマイクロRNAに基づいた方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20150108BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20150108BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150108BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20150108BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20150108BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12Q1/68 A
   A61P35/00
   A61P1/04
   A61K45/00
   A61K48/00
   A61K31/7105
   G01N33/574 Z
   G01N37/00 102
【請求項の数】5
【全頁数】108
(21)【出願番号】特願2010-548899(P2010-548899)
(86)(22)【出願日】2009年2月27日
(65)【公表番号】特表2011-516032(P2011-516032A)
(43)【公表日】2011年5月26日
(86)【国際出願番号】US2009035458
(87)【国際公開番号】WO2009108853
(87)【国際公開日】20090903
【審査請求日】2012年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/067,445
(32)【優先日】2008年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593172050
【氏名又は名称】ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】THE OHIO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100128750
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】クロース,カーロ・エム
(72)【発明者】
【氏名】ペトロッカ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ベッキオネ,アンドレア
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/081740(WO,A1)
【文献】 Molecular and Cellular Biology,2008年 4月,Vol. 28, No. 7,p. 2167-2174
【文献】 Cancer Cell,2008年 3月,Vol. 13,p. 272-286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
A61K 31/7105
A61K 45/00
A61K 48/00
A61P 1/04
A61P 35/00
C12Q 1/68
G01N 33/574
G01N 37/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CiNii
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における胃癌又は当該癌を発症するリスクの検出を補助する、あるいは胃癌を有する対象の予後の検出を補助する方法であって、
該対象からの試験サンプル中の少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定すること、ここで該少なくとも一つのバイオマーカーはmiR−106b及びmiR−93の一つ以上を含む、を含み、
ここで対照サンプル中の対応するバイオマーカーのレベルと比較した、該試験サンプル中の該バイオマーカーのレベルの増加は、該対象が該癌を有するか、又は発症するリスクがあることの指標である、前記方法。
【請求項2】
該少なくとも一つのバイオマーカーがmiR−106b、miR−93及びmiR−25を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
miR−106b及びmiR−93の一つ以上を含む、胃癌のバイオマーカー。
【請求項4】
胃癌を検出するための試薬を含むキットであって、センスまたはアンチセンスmiR−93、ならびに、miR−25およびmiR−106bからなる群より選択されるセンスまたはアンチセンスmiRの1またはそれより多く、を含む、前記キット。
【請求項5】
胃癌細胞状態の同定または予測を補助するための方法であって、以下:
a.細胞を含有する試験試料におけるmiRフィンガープリントを、対照と相関させ、そして
b.当該相関を胃癌細胞状態を同定または予測するための指標とする、
ことを含み、ここで当該対照は、低発現miR−93マーカー、ならびに、低発現miR−25および低発現miR−106bからなる群より選択される1またはそれより多くのマーカー、を含むmiRフィンガープリントを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[00001]本出願は、2008年2月28日に出願の米国仮出願番号61/067,445の権益を主張し、その全ての開示は参照により本明細書に明確に組み入れられる。
【0002】
連邦政府支援の研究に関する宣言
[00002]本発明は、NCI助成金番号CA76259及びCA8134のもと、政府の支援により行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明の産業上の利用可能性
[00003]本発明は一般的には分子生物学の分野に関する。本発明のある側面は、胃癌関連障害の診断法、治療法及び予後診断法における応用を含む。
【背景技術】
【0004】
[00004]このセクションで開示された背景技術が合法的に先行技術を構成すると認められるものはない。
[00005]胃癌の発生は1940年代から1980年代にかけて西欧諸国においては低下しているが、世界的には重要な公衆衛生問題として残っており、世界的には二番目に多く診断される悪性腫瘍であり、毎年全ての癌関連死の12%の原因となっている(Uemura et al., 2001)。胃腫瘍の95%以上は、組織学的に腸型(intestinal type)あるいはびまん型(diffuse type)に分類される腺癌である(Lauren P, 1965)。腸腫瘍の進展は、多数の逐次的ステップを介した進行により特徴付けられている。中でも、二つのイベントが胃腫瘍発生で特徴的である:E2F1の上方調節(Suzuki et al., 1999)及びTGFE耐性の発生(Ju et al., 2003; Park et al., 1994)。
【0005】
[00006]E2F1は、G1/S移行を促進する細胞周期の主レギュレーターであり、染色体DNA複製に関与する多様な遺伝子をトランス活性化し(transactivate)、それ自身のプロモーターを含む(DeGregori, 2002)。E2F1の過剰発現は、それ自体が発癌イベントであり、細胞を形質転換する素因となる一方(Pierce et al., 1999)、決定的閾値を超えて生じた場合、強力なアポトーシスシグナルでもある(Lazzerini Denchi et al., 2005)。
【0006】
[00007]一方、トランスフォーミング増殖因子−ベータ(TGFβ)は、胃腸管細胞を増殖、分化又はアポトーシスに導く、上皮及び間質性コンパートメント間クロストークの複雑なシステム、いわゆる形態形成プログラムで主たる役割を果たしているサイトカインである(van den Brink and Offerhaus, 2007)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Uemura, N., Okamoto, S., Yamamoto, S., Matsumura, N., Yamaguchi, S., Yamakido, M., Taniyama, K., Sasaki, N., and Schlemper, R. J. (2001). Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer. N Engl J Med 345, 784-789.
【非特許文献2】Lauren P (1965) The two histological main types of gastric carcinoma: Diffuse and so-called intestinal-type carcinoma. An attempt at a histo-clnical classification. Acta Pathol Microbiol Scand 64: 31-49.
【非特許文献3】Suzuki, T., Yasui, W., Yokozaki, H., Naka, K., Ishikawa, T., and Tahara, E. (1999). Expression of the E2F family in human gastrointestinal carcinomas. Int J Cancer 81, 535-538.
【非特許文献4】Ju, H. R., Jung, U., Sonn, C. H., Yoon, S. R., Jeon, J. H., Yang, Y., Lee, K. N., and Choi, I. (2003). Aberrant signaling of TGF-beta1 by the mutant Smad4 in gastric cancer cells. Cancer Lett 196, 197-206.
【非特許文献5】Park, K., Kim, S. J., Bang, Y. J., Park, J. G., Kim, N. K., Roberts, A. B., and Sporn, M. B. (1994). Genetic changes in the transforming growth factor beta (TGF-beta) type II receptor gene in human gastric cancer cells: correlation with sensitivity to growth inhibition by TGF-beta. Proc Natl Acad Sci U S A 91, 8772-8776.
【非特許文献6】DeGregori, J. (2002). The genetics of the E2F family of transcription factors: shared functions and unique roles. Biochim Biophys Acta 1602, 131-150.
【非特許文献7】Pierce, A. M., Schneider-Broussard, R., Gimenez-Conti, I. B., Russell, J. L., Conti, C. J., and Johnson, D. G. (1999). E2F1 has both oncogenic and tumor-suppressive properties in a transgenic model. Mol Cell Biol 19, 6408-6414.
【非特許文献8】Lazzerini Denchi, E., and Helin, K. (2005). E2F1 is crucial for E2F-dependent apoptosis. EMBO Rep 6, 661-668.
【非特許文献9】van den Brink, G. R., and Offerhaus, G. J. (2007). The morphogenetic code and colon cancer development. Cancer Cell 11, 109-117.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[00008]これらの疾患を治療するための療法についてのかなりの研究にもかかわらず、現在でも効果的に診断する及び治療するのが困難であり、患者で観察された死亡率は、本疾患の診断、治療及び予防の改善が必要とされていることを示している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[00009]第一の側面において、対象が胃関連障害を有する、又は発症するリスクがあるかどうかを診断する、胃癌及び/又は関連障害を有する対象の予後を決定する、及び/又はこうした障害を有する対象を治療する方法が本明細書において提供され、該対象からの試験サンプル中の少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを含み、ここで、対照サンプル中の対応するバイオマーカーと比較した、該試験サンプル中の該バイオマーカーのレベルの変化は、該対象が該障害を有するか、又は発症するリスクがあることを示す。
【0010】
[00010]ある態様において、該試験サンプル中の該少なくとも一つのバイオマーカーのレベルは、該対照サンプル中の対応するバイオマーカーのレベルよりも低い。
[00011]ある態様において、該試験サンプル中の該少なくとも一つのバイオマーカーのレベルは、該対照サンプル中の対応するバイオマーカーのレベルよりも高い。
【0011】
[00012]ある態様において、差次的に発現される該少なくとも一つのバイオマーカーは、図13−表1に列挙された群より選択される。
[00013]ある態様において、該障害は慢性胃炎を含み、そして少なくとも一つのバイオマーカーは、上方調節されているmiR−1及びmiR−155から成る群より選択される。
【0012】
[00014]ある態様において、該障害は慢性胃炎を含み、そして少なくとも一つのバイオマーカーは下方調節されているmiR−205、miR−203、miR−202、miR−20及びmiR−26bから成る群より選択される。
【0013】
[00015]ある態様において、差次的に発現される該少なくとも一つのバイオマーカーは、図14−表2に列挙された群より選択される。
[00016]ある態様において、該障害は胃腺癌を含み、そして少なくとも一つのバイオマーカーは、上方調節されているmiR−21、miR−223、miR−25、miR−17−5−p、miR−125b、miR−181b、miR−106a、miR−107、miR−92、miR−103、miR−221、miR−93、miR−100、miR−181、miR−106b、miR−191、miR−214、miR−130、miR−342、miR−222、miR−320及びmiR−99bから成る群より選択される。
【0014】
[00017]ある態様において、該障害は胃腺癌を含み、そして少なくとも一つのバイオマーカーは、下方調節されているmiR−136、miR−218、miR−212、miR−96、miR−339及びmiR−130bから成る群より選択される。
【0015】
[00018]ある態様において、該差次的に発現される少なくとも一つのバイオマーカーは、図16−表3に列挙された群:miR−21、miR−223、miR−25、miR−92、miR−107、miR−93、miR−106b、miR−17−5p、miR−181b及びmiR−106aから選択される。
【0016】
[00019]ある態様において、該少なくとも一つのバイオマーカーはmiR−160b−25クラスター:miR−106b、miR−93及びmiR−25を含む。
[00020]別の側面において、図18−表6に列挙された遺伝子:PHLPPL、GM632、ALX4、PLEKHMl、JOSD1、ZFPM2、GATAD2B、ZNF238、ATXN1、NEUROD1、BCL2L11、KLF12、UBE2W、OSBPL5、SNF1LK、PCAF、PAPOLA、及びCFL2の一つ以上の発現の変調における、miR−160b−25クラスター:miR−106b、miR−93及びmiR−25を含む少なくとも一つのバイオマーカーの使用が本明細書において提供される。
【0017】
[00021]別の側面において、E2F1発現を調節することを、それを必要とする対象において行う方法が本明細書に提供され、E2F1の発現を変調するのに十分な、miR−106b及び/又はmiR−93又はそれらの機能的変異体の有効量を投与することを含む。
【0018】
[00022]別の側面において、E2F1発現を調節するための、それを必要とする対象におけるmiR−106b及びmiR−93の使用が本明細書に提供される。
[00023]別の側面において、CDKN1A(p21Waf1/Cip1)及び/又はBCL2L11(Bim)の発現を妨害するTGFE腫瘍抑制経路を変調する方法が本明細書に提供され、miR−106b、miR−93及びmiR−25の一つ以上を上方調節することを含む。
【0019】
[00024]別の側面において、胃癌での、E2F1転写後調節及びTGFE抵抗性の発生の変調におけるmiR−106b−25クラスターの使用が本明細書に提供される。
[00025]別の側面において、E2F1発現を制御することを、それを必要とする対象において行う方法が本明細書に提供され、該対象においてmiR−106b及びmiR−93のレベルを変調することを含む。
【0020】
[00026]別の側面において、Mcm7と並行してmiR−106b−25発現を調節するための、それを必要とする対象におけるE2F1の使用が、本明細書に提供される。
[00027]別の側面において、E2F1タンパク質合成の速度を制御し、その過剰な蓄積を防止することを、それを必要とする対象において行う方法が本明細書に提供され、該対象におけるmiR−106b−25クラスターのレベルを変調することを含む。
【0021】
[00028]別の側面において、TGFE誘発細胞周期停止を害するための、それを必要とする対象におけるmiR−106b及びmiR−93の使用が本明細書に提供される。
[00029]別の側面において、転写後レベルでp21の発現を阻害することにより、TGFO誘発細胞周期停止を妨害するための、それを必要とする対象におけるmiR−106b及びmiR−93の使用が、本明細書に提供される。
【0022】
[00030]別の側面において、TGFO誘発アポトーシスの開始を妨げることにおける、それを必要とする対象でのmiR−106b及びmiR−93と協同したmiR−25の使用が、本明細書に提供される。
【0023】
[00031]別の側面において、アポトーシスからの胃癌細胞の保護を妨げるため、それを必要とする対象においてmiR−106b−25クラスターの発現を変調するための方法が本明細書に提供される。
【0024】
[00032]別の側面において、胃癌において特有のマイクロRNA発現シグネチャーが本明細書に提供され、腫瘍マイクロRNAプロセッシングを調節する一つ以上のバイオマーカーの発現の変化を含む。
【0025】
[00033]別の側面において、胃癌における標的mRNAの転写産物量及び/又はタンパク質発現に影響を及ぼす方法が本明細書に提供され、それを必要とする対象において一つ以上のマイクロRNAを調節解除することを含む。
【0026】
[00034]ある態様において、該方法はさらに、癌関連遺伝子のタンパク質発現を抑制することを含む。
[00035]ある態様において、癌関連遺伝子のタンパク質発現を阻害するため、miR−106b、miR−93及びmiR−25の一つ以上の発現を変化させることをさらに含む。
【0027】
[00036]別の側面において、ヒト胃癌で生じるマイクロRNA機能の変化を同定するための、マイクロRNA及びタンパク質コードRNAの両方の大規模遺伝子発現プロファイリングの使用が、本明細書に提供される。
【0028】
[00037]胃癌を有する対象の予後を決定することを含む請求項1の方法は、該対象からの試験サンプル中の少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを含み、ここで:i)該バイオマーカーは、こうした癌の予後不良に関連し;そしてii)対照サンプル中の対応するバイオマーカーのレベルと比較した、該試験サンプル中の該少なくとも一つのバイオマーカーのレベルの変化は、予後不良を示す。
【0029】
[00038]ある態様において、該方法は対象が胃癌を有するか、又は発症するリスクがあるかどうかを診断することをさらに含み、1)対象から得られた試験サンプルからのRNAを逆転写して、標的オリゴデオキシヌクレオチドの組を提供し;2)該標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせて該試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供し;及び、3)該試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルと対照サンプルから生成されたハイブリダイゼーションプロファイルを比較することを含み、ここで、少なくとも一つのmiRNAのシグナルの変化は、該対象がこうした癌を有する、又は発症するリスクがあることを示す。
【0030】
[00039]ある態様において、該少なくとも一つのmiRNAのシグナルは、対照サンプルから発生されたシグナルと比較して下方調節されており、及び/又は該少なくとも一つのmiRNAのシグナルは、対照サンプルから発生されたシグナルと比較して上方調節されている。
【0031】
[00040]ある態様において、表13、表14及び表16に列挙された群より選択される少なくとも一つのバイオマーカーのシグナルの変化は、該対象が予後不良のこうした癌を有する、又は発症するリスクがあることを示す。
【0032】
[00041]別の側面において、miR−106b、miR−93及びmiR−25の一つ以上を含む、胃障害又は疾患のバイオマーカーが本明細書に提供される。
[00042]別の側面において、胃癌細胞中のmiR−106b、miR−93及びmiR−25の一つ以上の発現を変調することを含む、胃癌細胞中でタンパク質発現を調節するための方法が本明細書に提供される。
【0033】
[00043]別の側面において、胃癌細胞中のE2F1、CDKNlA(p21Waf1Cip1)及びBCL2L11(Bim)の一つ以上の発現を変調するための組成物が本明細書に提供され、該組成物は、miR−106b、miR−93及びmiR−25、又はそれらの機能的変異体の一つ以上を含む。
【0034】
[00044]別の側面において、E2F1及びp21/WAFlタンパク質レベルの一つ以上を調節することを、それを必要とする対象において行う方法が本明細書に提供され、miR−106b、miR−93及びmiR−25又はそれらの機能的変異体の一つ以上を使用することを含む。
【0035】
[00045]別の側面において、胃癌細胞におけるp21/WAFl及び/又はE2F1タンパク質レベルを、それを必要とする対象において増加させるために有用なアンチセンスmiR−106bを含む組成物が、本明細書に提供される。
【0036】
[00046]別の側面において、対照細胞と比較して、少なくとも一つのバイオマーカーが対象の癌細胞で下方調節又は上方調節されている胃癌を有する対象において、胃癌を治療する方法が本明細書に提供され、1)該癌細胞中で該少なくとも一つのバイオマーカーが下方調節されている場合、該対象における癌細胞の増殖が抑制されるように、少なくとも一つの単離されたバイオマーカー、又は単離された変異体又はそれらの生物学的に活性な断片の有効量を該対象に投与すること;又は2)該癌細胞中で該少なくとも一つのバイオマーカーが上方調節されている場合、該対象における癌細胞の増殖が抑制されるように、該少なくとも一つのバイオマーカーの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することを含む。
【0037】
[00047]別の側面において、対象の胃癌を治療する方法が本明細書に提供され:1)対照細胞と比較して、胃癌細胞中の少なくとも一つのバイオマーカーの量を決定すること:そして2)i)もし、該癌細胞中で発現されたバイオマーカーの量が、対照細胞中で発現されたバイオマーカーの量よりも少ないならば、少なくとも一つの単離されたバイオマーカーの有効量を該対象に投与することにより;又はii)もし、該癌細胞中で発現されたバイオマーカーの量が、対照細胞中で発現されたバイオマーカーの量よりも多いならば、該少なくとも一つのバイオマーカーの発現を抑制するための少なくとも一つの化合物の有効量を該対象に投与することにより、胃癌細胞中で発現されたバイオマーカーの量を変化させること;を含む。
【0038】
[00048]別の側面において、少なくとも一つの単離されたバイオマーカー及び薬学的に許容できる担体を含む、胃癌を治療するための医薬組成物が本明細書に提供される。
[00049]ある態様において、該少なくとも一つの単離されたバイオマーカーは、対照細胞と比較して胃癌細胞中で下方調節されているバイオマーカーに対応する。
【0039】
[00050]ある態様において、該医薬組成物は少なくとも一つのmiR発現阻害化合物及び薬学的に許容できる担体を含む。
[00051]別の側面において、抗胃癌剤を同定する方法が本明細書に提供され、細胞に試験剤を与えること、そして胃癌細胞中の減少した発現レベルに関連する少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを含み、ここで、対照細胞と比較した、該細胞中のバイオマーカーのレベルの増加は、該試験剤が抗胃癌剤であることを示す。
【0040】
[00052]別の側面において、抗胃癌剤を同定する方法が本明細書に提供され、細胞に試験剤を与えること、そして胃癌細胞中の増加した発現レベルに関連する少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを含み、ここで、対照細胞と比較して、該細胞中のバイオマーカーのレベルの減少は、該試験剤が抗胃癌剤であることを示す。
【0041】
[00053]別の側面において、胃癌関連疾患を予防する、診断する及び/又は治療するための療法の有効性を評価する方法が本明細書に提供され:i)その有効性が評価されている療法を動物に供すること;そしてii)表13、14及び16の一つ以上に列挙された少なくとも一つのバイオマーカーを評価することにより、該疾患を治療する又は予防することについて試験されている治療の有効性のレベルを決定すること;を含む。
【0042】
[00054]該候補療法剤が、医薬組成物、栄養補助食品組成物及びホメオパシー組成物の一つ以上を含む、前記請求項の方法。
[00055]ある態様において、評価されている療法は、ヒト対象での使用のためである。
【0043】
[00056]別の側面において、製品が本明細書に提供され:表13、14及び16の一つ以上に列挙された少なくとも一つのバイオマーカーを含む、胃癌関連疾患のためのマーカーに結合する少なくとも一つの捕捉試薬を含む。
【0044】
[00057]別の側面において、胃癌関連疾患を治療する療法剤の候補化合物をスクリーニングするためのキットが本明細書に提供され、該キットは:表13、14及び16の一つ以上に列挙された少なくとも一つのバイオマーカーの一つ以上の試薬、及び少なくとも一つのバイオマーカーを発現している細胞を含む。
【0045】
[00058]ある態様において、該バイオマーカーの存在は、少なくとも一つのバイオマーカーと特異的に結合する抗体又は抗体断片を含む試薬を使用して検出される。
[00059]別の側面において、個体における該疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重症度を限定する医薬の製造のための、胃癌関連疾患応答シグナル伝達経路を妨害する剤の使用が本明細書に提供され、該剤は、表13、14及び16の一つ以上に列挙された少なくとも一つのバイオマーカーを含む。
【0046】
[00060]別の側面において、胃癌関連疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重症度を限定することを、それを必要とする個体で行う方法が本明細書において提供され:少なくとも胃癌関連疾患応答カスケードを妨害する剤を該個体に投与することを含み、該剤は、表13、14及び16の一つ以上に列挙された少なくとも一つのバイオマーカーを含む。
【0047】
[00061]別の側面において、個体における胃癌関連疾患合併症を治療する、予防する、逆行させる、又は重症度を限定する医薬の製造のための、少なくとも胃癌関連疾患応答カスケードを妨害する剤の使用が、本明細書に提供され、該剤は、表13、14及び16の一つ以上に列挙された少なくとも一つのバイオマーカーを含む。
【0048】
[00062]別の側面において、miR−106b、miR−93及びmiR−25の一つ以上のアンチセンス阻害剤を含む組成物が、本明細書に提供される。
[00063]別の側面において、胃障害を治療することを、それを必要とする対象において行う方法が本明細書に提供され、該組成物の療法的有効量を対象に投与することを含む。
【0049】
[00064]ある態様において、該組成物は予防的に投与される。
[00065]ある態様において、該組成物の投与は、胃癌の一つ以上の症状の発症を遅延させる。
【0050】
[00066]ある態様において、該組成物の投与は、胃癌の発生を抑制する。
[00067]ある態様において、該組成物の投与は、腫瘍の増殖を抑制する。
[00068]別の側面において、生物学的サンプル中の胃癌の存在を検出する方法が本明細書に提供され:i)胃癌を含有すると疑われる生物学的サンプルを、それらのためのマーカーに暴露すること;そしてii)もしあれば、該サンプル中の該マーカーの存在又は不存在を検出すること;を含む。
【0051】
[00069]ある態様において、該マーカーは検出可能な標識を含む。
[00070]ある態様において、該方法は、該対象からの生物学的サンプル中の該マーカーの量と、正常対象からの対応する生物学的サンプル中の該マーカーの量を比較することをさらに含む。
【0052】
[00071]ある態様において、該方法は、異なる時点で対象から複数の生物学的サンプルを集めること、及び各生物学的サンプル中の該マーカーの量を比較して、時間とともに該対象において該マーカーの量が増加している又は減少しているかどうかを決定することをさらに含む。
【0053】
[00072]別の側面において、対象の胃癌を治療するための方法が本明細書に提供され、該方法は、胃癌レセプターアゴニストを含む。
[00073]ある態様において、該レセプターアゴニストは、miR−106b、miR−93及びmiR−25の一つ以上のアンチセンス阻害剤である。
【0054】
[00074]別の側面において、胃癌の治療のための薬剤を製造するための、表13、14及び16に示したmiR、それらから派生する配列、こうしたmiRの相補的配列、及びこうした相補的配列から派生する配列の内から選択される核酸分子を含む使用が、本明細書に提供される。
【0055】
[00075]ある態様において、該薬剤は、表13、14及び16に列挙されたmiR、こうしたmiRから派生する配列、こうしたmiRの相補的配列、及びこうした相補的配列から派生する配列の内から選択された配列を提示する核酸分子を含む。
【0056】
[00076]別の側面において、胃癌細胞の分化を誘発するために有効な療法剤又は療法剤の組み合わせを同定するためのインビトロの方法が本明細書に提供され、該方法は:i)胃腫瘍に由来する細胞を培養すること、ii)該細胞株の培養培地に少なくとも一つの化合物を添加すること、iii)段階(i)及び(ii)間の少なくとも一つのmiRの発現レベルの漸進的変化を分析すること、及びiv)段階(i)及び(ii)間のmiRの発現レベルの変化を誘発する化合物又は化合物の組み合わせを同定する;段階を含む。
【0057】
[00077]ある態様において、段階(iii)は、少なくとも一つのmiRの発現レベルの分析を含む。
[00078]ある態様において、段階(iv)は、少なくとも一つのmiRの発現レベルを変調する化合物又は化合物の組み合わせの同定を含む。
【0058】
[00079]ある態様において、段階(iv)は、少なくとも一つのmiRの発現レベルを減少させる化合物又は化合物の組み合わせの同定を含む。
[00080]ある態様において、該化合物は癌の治療のための療法剤である。
【0059】
[00081]本発明の種々の目的及び利点は、付随する図面を照らし合わせて読むことにより、好ましい態様の以下の詳細な説明から、当業者には明らかになるであろう。
[00082]本特許又は出願ファイルは一枚以上のカラーで仕上げられた図及び/又は一つ以上の写真を含む。カラーの図及び/又は写真を含むこの特許又は特許出願印刷物のコピーは、依頼及び必要な料金の支払い後、本特許庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1A】[00083]図1A−1E:慢性胃炎及び胃腺癌におけるmiRNA発現の変化。miRNAはSAM分析(FDR=0%、q=0)によると、慢性胃炎(図1A)あるいは胃腺癌(図1B)に有意に関連する。赤及び緑色は、それぞれ上方調節及び下方調節を示す。正常胃粘膜、慢性胃炎及び胃腺癌の代表的な組織学的特徴が示されている:ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色。
図1B-1】図1A−1E:慢性胃炎及び胃腺癌におけるmiRNA発現の変化。miRNAはSAM分析(FDR=0%、q=0)によると、慢性胃炎(図1A)あるいは胃腺癌(図1B)に有意に関連する。赤及び緑色は、それぞれ上方調節及び下方調節を示す。正常胃粘膜、慢性胃炎及び胃腺癌の代表的な組織学的特徴が示されている:ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色。
図1B-2】図1A−1E:慢性胃炎及び胃腺癌におけるmiRNA発現の変化。miRNAはSAM分析(FDR=0%、q=0)によると、慢性胃炎(図1A)あるいは胃腺癌(図1B)に有意に関連する。赤及び緑色は、それぞれ上方調節及び下方調節を示す。正常胃粘膜、慢性胃炎及び胃腺癌の代表的な組織学的特徴が示されている:ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色。
図1C図1A−1E:慢性胃炎及び胃腺癌におけるmiRNA発現の変化。図1C:Mcm7のイントロン13中に存在するmiR−106b−25クラスターゲノム座位の略図。この遺伝子の一次転写産物は、プライマーの二つの異なった組(#1及び#2)を使用してSnu−16細胞から逆転写し、増幅し及び配列決定した独特の分子内に融合された、三つすべてのmiRNAを含む。
図1D図1A−1E:慢性胃炎及び胃腺癌におけるmiRNA発現の変化。RNAiによるドローシャの下方調節(図1D)はこの転写体の劇的な蓄積を誘導して(図1E)活性な一次miRNAの存在を裏付けているので、この分子はMcm7転写の単なる副産物ではない。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。このクラスターは、それぞれ第13番染色体及びX染色体に位置する、miR−17−92及びmiR−106a−92クラスターと高度の相同性を共有する。色は、同じファミリーのmiRNAを規定する。
図1E図1A−1E:慢性胃炎及び胃腺癌におけるmiRNA発現の変化。RNAiによるドローシャの下方調節(図1D)はこの転写体の劇的な蓄積を誘導して(図1E)活性な一次miRNAの存在を裏付けているので、この分子はMcm7転写の単なる副産物ではない。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。このクラスターは、それぞれ第13番染色体及びX染色体に位置する、miR−17−92及びmiR−106a−92クラスターと高度の相同性を共有する。色は、同じファミリーのmiRNAを規定する。
図2A】[00084]図2A−2G:E2F1はmiR−106b−25発現を調節する。図2A:12時間のノコダゾール処理、そして続いての新鮮培地への放出により有糸分裂が同期化されたAGS細胞のFACS解析。
図2B図2A−2G:E2F1はmiR−106b−25発現を調節する。細胞を異なる時点で採取し、ウエスタンブロットによりE2F1タンパク質含有量(図2B)及びqRT−PCRによりMcm7、miR−106b、miR−93及びmiR−25前駆体RNAレベル(図2C)について分析した。各分析は、3重に実行した。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。AGS細胞は90%コンフルエンスで播種し、0.5%FBS含有RPMI1640培地中、36時間飢餓状態にした。細胞は次ぎに、25のM.O.I.でアデノGFPあるいはアデノE2Flウイルスに感染させ、さらに21時間インキュベートした;この時点では、細胞は形態学、トリパンブルー染色及びサブディプロイドDNA含量の分析により決定されるアポトーシスの徴候は示さなかった(データは示していない)。
図2C図2A−2G:E2F1はmiR−106b−25発現を調節する。細胞を異なる時点で採取し、ウエスタンブロットによりE2F1タンパク質含有量(図2B)及びqRT−PCRによりMcm7、miR−106b、miR−93及びmiR−25前駆体RNAレベル(図2C)について分析した。各分析は、3重に実行した。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。AGS細胞は90%コンフルエンスで播種し、0.5%FBS含有RPMI1640培地中、36時間飢餓状態にした。細胞は次ぎに、25のM.O.I.でアデノGFPあるいはアデノE2Flウイルスに感染させ、さらに21時間インキュベートした;この時点では、細胞は形態学、トリパンブルー染色及びサブディプロイドDNA含量の分析により決定されるアポトーシスの徴候は示さなかった(データは示していない)。
図2D図2A−2G:E2F1はmiR−106b−25発現を調節する。
図2E図2A−2G:E2F1はmiR−106b−25発現を調節する。miR−106b、miR−93及びmiR−25前駆体は、上記qRT−PCRにより測定した。Snu16細胞を、E2F1に対するsiRNA(100nM)でトランスフェクトし、miR−106b−25前駆体(図2E)及び成熟(図2F)種の発現を、上記qRT−PCRにより72時間後に決定した。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。
図2F図2A−2G:E2F1はmiR−106b−25発現を調節する。miR−106b、miR−93及びmiR−25前駆体は、上記qRT−PCRにより測定した。Snu16細胞を、E2F1に対するsiRNA(100nM)でトランスフェクトし、miR−106b−25前駆体(図2E)及び成熟(図2F)種の発現を、上記qRT−PCRにより72時間後に決定した。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。
図2G図2A−2G:E2F1はmiR−106b−25発現を調節する。図2G図9に示したものと同一の胃原発性腫瘍中のE2F1タンパク質の発現。赤丸はqRT−PCRによって決定された、対応する腫瘍中のMcm7及びmiR−106b−25前駆体RNAの過剰発現を示す。
図3A】[00085]図3A−3F:E2F1は、miR−106b及びmiR−93の標的である。図3A:ステムループqRT−PCRにより決定された、ヒト胃癌細胞株及び正常粘膜における成熟miR−106b、miR−93及びmiR−25の内因性発現;バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。Snu−1細胞は胃神経内分泌腫瘍(NET)に由来すると考えられており、一方、RF1及びRF48細胞は胃のB細胞リンパ腫からである。すべての他の細胞株は胃腺癌からである。
図3B図3A−3F:E2F1は、miR−106b及びmiR−93の標的である。図3B:ASOトランスフェクションによるmiR−106b及びmiR−93の阻害又は(図3C)オリゴヌクレオチドトランスフェクションによる同一miRNAの過剰発現、又は(図3D)レンチウイルス形質導入、48時間後のSnu−16細胞のウエスタンブロット。スクランブルRNA又はLNAオリゴヌクレオチドを、陰性対照として使用した。タンパク質発現を定量し、GAPDHで正規化した。類似の結果がAGS及びMKN−74細胞において得られた(データは示していない)。
図3C図3A−3F:E2F1は、miR−106b及びmiR−93の標的である。図3B:ASOトランスフェクションによるmiR−106b及びmiR−93の阻害又は(図3C)オリゴヌクレオチドトランスフェクションによる同一miRNAの過剰発現、又は(図3D)レンチウイルス形質導入、48時間後のSnu−16細胞のウエスタンブロット。スクランブルRNA又はLNAオリゴヌクレオチドを、陰性対照として使用した。タンパク質発現を定量し、GAPDHで正規化した。類似の結果がAGS及びMKN−74細胞において得られた(データは示していない)。
図3D図3A−3F:E2F1は、miR−106b及びmiR−93の標的である。図3B:ASOトランスフェクションによるmiR−106b及びmiR−93の阻害又は(図3C)オリゴヌクレオチドトランスフェクションによる同一miRNAの過剰発現、又は(図3D)レンチウイルス形質導入、48時間後のSnu−16細胞のウエスタンブロット。スクランブルRNA又はLNAオリゴヌクレオチドを、陰性対照として使用した。タンパク質発現を定量し、GAPDHで正規化した。類似の結果がAGS及びMKN−74細胞において得られた(データは示していない)。
図3E図3A−3F:E2F1は、miR−106b及びmiR−93の標的である。(図3E)pGL3−E2Fl−3’UTR及びmiR−106b又はmiR−93オリゴヌクレオチドで共トランスフェクトされた細胞において減少したルシフェラーゼ活性を示しているルシフェラーゼアッセイ。miRNAシード領域(seed region)と相補的な、三つの推定miR−106b/miR−93結合部位中の最初の三つの塩基の欠失は、この効果を取り消した(MUT)。バーは、ウミシイタケルシフェラーゼ活性+/−SDで正規化されたホタルルシフェラーゼ活性を示す。各レポータープラスミドは少なくとも2回トランスフェクトし(異なった日に)、そして各サンプルは3重にアッセイした。
図3F図3A−3F:E2F1は、miR−106b及びmiR−93の標的である。図3F図3Cに示したものと同一の細胞におけるE2F1 mRNA下方制御を示しているqRT−PCR分析。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。
図4A】[00086]図4A−4E:miR−106b及びmiR−93はp21タンパク質発現を抑圧する。図4A:miR−106b及びmiR−93のASO(図4A)又は模倣体(図4BA)によるトランスフェクション、又は同一miRNAのレンチウイルス形質導入(図4C)後に、0.5%FBS含有RPMI1640中で増殖させたSnu−16細胞におけるP21発現。
図4B図4A−4E:miR−106b及びmiR−93はp21タンパク質発現を抑圧する。図4A:miR−106b及びmiR−93のASO(図4A)又は模倣体(図4BA)によるトランスフェクション、又は同一miRNAのレンチウイルス形質導入(図4C)後に、0.5%FBS含有RPMI1640中で増殖させたSnu−16細胞におけるP21発現。
図4C図4A−4E:miR−106b及びmiR−93はp21タンパク質発現を抑圧する。図4A:miR−106b及びmiR−93のASO(図4A)又は模倣体(図4BA)によるトランスフェクション、又は同一miRNAのレンチウイルス形質導入(図4C)後に、0.5%FBS含有RPMI1640中で増殖させたSnu−16細胞におけるP21発現。
図4D図4A−4E:miR−106b及びmiR−93はp21タンパク質発現を抑圧する。図4D:miR−106bあるいはmiR−93オリゴヌクレオチドでトランスフェクトしたSnu−16細胞中のp21 mRNAレベルに有意な差がないことを示しているqRT−PCR結果。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。
図4E図4A−4E:miR−106b及びmiR−93はp21タンパク質発現を抑圧する。図4E:pGL3−p21−3’UTR及びmiR−106b又はmiR−93オリゴヌクレオチドで共トランスフェクトされた細胞において減少したルシフェラーゼ活性を示しているレポーターアッセイ。miRNAシード領域と相補的な、miR−106b/miR−93予測結合部位の最初の3塩基の欠失は、この効果を取り消した(MUT)。バーは、ウミシイタケルシフェラーゼ活性+/−SDで正規化されたホタルルシフェラーゼ活性を示す。各レポータープラスミドは少なくとも2回トランスフェクトし(異なった日に)、そして各サンプルは3重にアッセイした。
図5A】[00087]図5A−5D:miR−106b及びmiR−93の過剰発現は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を妨げる。図5A:1ng/mlのTGFEに対するSnu−16細胞の生理応答:刺激の初期段階(16時間)において、細胞はGl/S細胞周期停止を行うが、一方、サブディプロイド(subdiploid)DNA含量により決定されるアポトーシスは未だ限定されている。アポトーシスを行っている細胞の数は、続いての時間において次第に増加する。
図5B図5A−5D:miR−106b及びmiR−93の過剰発現は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を妨げる。図5B:TGFE刺激16時間後の、E2F1タンパク質(図5C)及びMcm7、miR−106b、miR−93及びmiR25前駆体の下方調節。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。
図5C図5A−5D:miR−106b及びmiR−93の過剰発現は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を妨げる。図5B:TGFE刺激16時間後の、E2F1タンパク質(図5C)及びMcm7、miR−106b、miR−93及びmiR25前駆体の下方調節。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。
図5D-1】図5A−5D:miR−106b及びmiR−93の過剰発現は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を妨げる。図5D:Snu−16細胞を、示されたオリゴヌクレオチドでトランスフェクトし、12時間後、1ng/mlのTGFEで処理した。上のパネル:p21タンパク質発現。下のパネル:FACS解析、対応のない(unpaired)t検定を使用する、偽及びmiRNAトランスフェクト細胞間のGl/S分画の比較。
図5D-2】図5A−5D:miR−106b及びmiR−93の過剰発現は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を妨げる。図5D:Snu−16細胞を、示されたオリゴヌクレオチドでトランスフェクトし、12時間後、1ng/mlのTGFEで処理した。上のパネル:p21タンパク質発現。下のパネル:FACS解析、対応のない(unpaired)t検定を使用する、偽及びmiRNAトランスフェクト細胞間のGl/S分画の比較。
図6A】[00088]図6A−6F:内因性miR−106b及びmiR−93発現の抑制は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を増強する。図6A:ASOトランスフェクションにより内因性miRNAを抑制後、TGFEで処理されたSnu−16細胞における細胞周期の分析。p値は、ASOトランスフェクト細胞と偽トランスフェクト細胞中のGl分画を比較して計算した(対応のないt検定)。
図6B図6A−6F:内因性miR−106b及びmiR−93発現の抑制は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を増強する。(図6B)0.1〜5.0ng/mlの範囲の、TGFPの段階的用量で処理されたSnu−16の用量応答曲線。FACS解析により決定されるように、ASOトランスフェクションによる内因性miR−106b又はmiR−93の抑制は、さもなくば抵抗性であるTGFP用量である(0.1〜0.3ng/ml)に対してSnu−16細胞の感受性を回復する。はP<0.0001を示す。
図6C図6A−6F:内因性miR−106b及びmiR−93発現の抑制は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を増強する。それぞれウエスタンブロット及びqRT−PCRによる、p21タンパク質(図6C)及び(図6D)p21mRNA発現の分析。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。内因性miR−106b及びmiR−93の抑制により誘発されるp21タンパク質上方調節の程度は、TGFPの存在により非常に増強され、おそらくp21 mRNAの増加した転写により支えられている。
図6D図6A−6F:内因性miR−106b及びmiR−93発現の抑制は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を増強する。それぞれウエスタンブロット及びqRT−PCRによる、p21タンパク質(図6C)及び(図6D)p21mRNA発現の分析。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。内因性miR−106b及びmiR−93の抑制により誘発されるp21タンパク質上方調節の程度は、TGFPの存在により非常に増強され、おそらくp21 mRNAの増加した転写により支えられている。
図6E図6A−6F:内因性miR−106b及びmiR−93発現の抑制は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を増強する。(図6E)Snu−16細胞を、p21に対するsiRNA単独、又はmiR−106bあるいはmiR−93模倣体と組み合わせてトランスフェクトし、そして1ng/mlのTGFPで16時間処理した。p21サイレンシング後、miR−106bは細胞周期に対するその効果のすべてを失ったが、miR−93は残余効果を未だに維持していた。miR−106b及びmiR−93間のこの異なった応答は、統計的に有意であった(P=0.0272)。
図6F図6A−6F:内因性miR−106b及びmiR−93発現の抑制は、TGFE−依存性Gl/S細胞周期停止を増強する。(図6F)TGFP刺激によるGl/Sチェックポイントに関与する種々のタンパク質のウエスタンブロットによる発現の分析。
図7】[00089]図7A−7G:miR−25は、miRNA模倣体でトランスフェクトされたSnu−16細胞のTGFP誘発アポトーシスの発生を妨げることにおいて(CCK−8生存率アッセイ)、miR−106b及びmiR−93と協力する。
図7A図7A−7G:miR−25は、miRNA模倣体でトランスフェクトされたSnu−16細胞のTGFP誘発アポトーシスの発生を妨げることにおいて(CCK−8生存率アッセイ)、miR−106b及びmiR−93と協力する。は、miR−106b、miR−93、miR−25及び/又はmiR−106b−25でのトランスフェクション、続いての1ng/mlのTGFPで48時間の処理による、生存細胞数の有意差を示す(P<0.001)。
図7B図7A−7G:miR−25は、miRNA模倣体でトランスフェクトされたSnu−16細胞のTGFP誘発アポトーシスの発生を妨げることにおいて(CCK−8生存率アッセイ)、miR−106b及びmiR−93と協力する。(図7B)逆に、miR−106b、miR−93及びmiR−25の阻害は、TGFPに対する応答を協力的に増大させる:三つのASOの混合物のトランスフェクションで統計的有意性(P<0.001)に達した。
図7C図7A−7G:miR−25は、miRNA模倣体でトランスフェクトされたSnu−16細胞のTGFP誘発アポトーシスの発生を妨げることにおいて(CCK−8生存率アッセイ)、miR−106b及びmiR−93と協力する。(図7C)生存率の有意な喪失は、サブディプロイドDNA含量の分析により確認した。
図7D図7A−7G:miR−25は、miRNA模倣体でトランスフェクトされたSnu−16細胞のTGFP誘発アポトーシスの発生を妨げることにおいて(CCK−8生存率アッセイ)、miR−106b及びmiR−93と協力する。(図7D)miRNA模倣体あるいはASOでのトランスフェクション後、又は同一のmiRNAのレンチウイルス形質導入後48時間でのSnu−16細胞のBimタンパク質発現。Bim発現に対する同じ効果がAGS及びMKN−74細胞で得られた(データは示していない)。
図7E図7A−7G:miR−25は、miRNA模倣体でトランスフェクトされたSnu−16細胞のTGFP誘発アポトーシスの発生を妨げることにおいて(CCK−8生存率アッセイ)、miR−106b及びmiR−93と協力する。(図7E)pGL3−Bim−3’UTR及びmiR−25で共トランスフェクトされた細胞において減少したルシフェラーゼ活性を示しているルシフェラーゼアッセイ。miRNAシード領域と相補的な、miR−25予測結合部位の最初の3塩基の欠失は、この効果を取り消した(MUT)。バーは、ウミシイタケルシフェラーゼ活性+/−SDで正規化されたホタルルシフェラーゼ活性を示す。各レポータープラスミドは少なくとも2回トランスフェクトし(異なった日に)、そして各サンプルは3重にアッセイした。
図7F図7A−7G:miR−25は、miRNA模倣体でトランスフェクトされたSnu−16細胞のTGFP誘発アポトーシスの発生を妨げることにおいて(CCK−8生存率アッセイ)、miR−106b及びmiR−93と協力する。(図7F)miR−25オリゴヌクレオチドでトランスフェクトしたSnu−16細胞におけるBim mRNA(二つの主なアイソフォームBim EL及びBim Lを認識するTaqManプローブ)において相違がないことを示しているqRT−PCR分析。バーはU6+/−SDで正規化されたRNA発現を示す。
図7G図7A−7G:miR−25は、miRNA模倣体でトランスフェクトされたSnu−16細胞のTGFP誘発アポトーシスの発生を妨げることにおいて(CCK−8生存率アッセイ)、miR−106b及びmiR−93と協力する。(図7G)miR−25オリゴヌクレオチド、si−Bim、両方又はスクランブルオリゴヌクレオチドでトランスフェクトし、その後1ng/mlのTGFEOで24時間処理したSnu−16細胞中のサブディプロイドDNA含量のFACS分析。上記のように統計分析。
図8】[00090]図8:E2Fl/miR−106b−25/p21経路。モデルは.本明細書に記載されたmiR−106、miR−93及びmiR−25の作用機構を要約している。
図9A】[00091]図9A−9D:胃癌におけるmiR−106b−25クラスターの発現。図9A:293T/17細胞は、示されたように、100nMのmiRNAオリゴヌクレオチド(Ambion)でトランスフェクトし、ステムループqRT−PCRによりmiRNA発現についてアッセイした。miR−106b、miR−93、miR−25プライマーは高い特異性を示し、一方、miR−17−5p及びmiR−92プライマーは、それぞれmiR−106a及びmiR−25と交差ハイブリダイズした。結果はU6で正規化し、同一のスケールに変換した。
図9B図9A−9D:胃癌におけるmiR−106b−25クラスターの発現。10の胃原発性腫瘍及び10の非腫瘍対照の組における成熟(図9B)及び前駆体(図9C)miRNAの発現はqRT−PCRにより決定した。バーは、同じ患者からの腫瘍及び非腫瘍組織間の相対的変化倍率+/−SDを示す。各サンプルは3重に分析し、各々RNU49(成熟miRNAs)又はCAPN2(前駆体 miRNA及びMcm7)で正規化した:これらの遺伝子は、試験されたこれらのサンプルの12の異なった標準化物の中で最も少ない生存率(<0.4Ct値)を示した。
図9C図9A−9D:胃癌におけるmiR−106b−25クラスターの発現。10の胃原発性腫瘍及び10の非腫瘍対照の組における成熟(図9B)及び前駆体(図9C)miRNAの発現はqRT−PCRにより決定した。バーは、同じ患者からの腫瘍及び非腫瘍組織間の相対的変化倍率+/−SDを示す。各サンプルは3重に分析し、各々RNU49(成熟miRNAs)又はCAPN2(前駆体 miRNA及びMcm7)で正規化した:これらの遺伝子は、試験されたこれらのサンプルの12の異なった標準化物の中で最も少ない生存率(<0.4Ct値)を示した。
図9D図9A−9D:胃癌におけるmiR−106b−25クラスターの発現。(図9)Snu−16細胞に、miR−106b、miR−93、miR−25又はmiR−106b−25クラスターを運んでいるレンチウイルスベクターを形質導入し、72時間後、qRT−PCRにより成熟miRNAレベルを測定した。バーは、U6+/−SDで正規化され、同一のスケールに変換されたRNA発現を示す。>90%の導入効率を蛍光顕微鏡法により確認した。類似の結果がAGS細胞においても得られた(データは示していない)。
図10A】[00092]図10A〜l0G:高い/低いmiR−106b−25(基本条件)を有する細胞の増殖研究。それぞれmiRNA ASO又は模倣体でトランスフェクトしたSnu−16(図10A図10C)及びAGS(図10B図10D)細胞のFACS分析及び増殖曲線。
図10B図10A〜l0G:高い/低いmiR−106b−25(基本条件)を有する細胞の増殖研究。それぞれmiRNA ASO又は模倣体でトランスフェクトしたSnu−16(図10A図10C)及びAGS(図10B図10D)細胞のFACS分析及び増殖曲線。
図10C図10A〜l0G:高い/低いmiR−106b−25(基本条件)を有する細胞の増殖研究。それぞれmiRNA ASO又は模倣体でトランスフェクトしたSnu−16(図10A図10C)及びAGS(図10B図10D)細胞のFACS分析及び増殖曲線。
図10D図10A〜l0G:高い/低いmiR−106b−25(基本条件)を有する細胞の増殖研究。それぞれmiRNA ASO又は模倣体でトランスフェクトしたSnu−16(図10A図10C)及びAGS(図10B図10D)細胞のFACS分析及び増殖曲線。
図10E図10A〜l0G:高い/低いmiR−106b−25(基本条件)を有する細胞の増殖研究。(図10E)CMVプロモーター制御下のmiR−106b、miR−93、miR−25又はmiR−106b−25前駆体を運んでいる蛍光レンチウイルスベクターで安定的に形質導入されたAGS細胞の増殖曲線。>95%の感染効率は、蛍光顕微鏡法により決定した。
図10F-1】図10A〜l0G:高い/低いmiR−106b−25(基本条件)を有する細胞の増殖研究。(図10F)コロニー形成アッセイ:AGS細胞を、miR−106b、miR−93、miR−25又はmiR−106b−25前駆体又はスクランブル配列をコードするpRetroSuper-Puro構築物でトランスフェクトし、14日間、2ug/mlピューロマイシン中で増殖させた。これらすべての条件による効率的miRNA発現及びプロセッシングはノーザンブロット及びステムループqRT−PCRによりアッセイした(データは示していない)。
図10F-2】図10A〜l0G:高い/低いmiR−106b−25(基本条件)を有する細胞の増殖研究。(図10F)コロニー形成アッセイ:AGS細胞を、miR−106b、miR−93、miR−25又はmiR−106b−25前駆体又はスクランブル配列をコードするpRetroSuper-Puro構築物でトランスフェクトし、14日間、2ug/mlピューロマイシン中で増殖させた。これらすべての条件による効率的miRNA発現及びプロセッシングはノーザンブロット及びステムループqRT−PCRによりアッセイした(データは示していない)。
図10F-3】図10A〜l0G:高い/低いmiR−106b−25(基本条件)を有する細胞の増殖研究。(図10F)コロニー形成アッセイ:AGS細胞を、miR−106b、miR−93、miR−25又はmiR−106b−25前駆体又はスクランブル配列をコードするpRetroSuper-Puro構築物でトランスフェクトし、14日間、2ug/mlピューロマイシン中で増殖させた。これらすべての条件による効率的miRNA発現及びプロセッシングはノーザンブロット及びステムループqRT−PCRによりアッセイした(データは示していない)。
図10G図10A〜l0G:高い/低いmiR−106b−25(基本条件)を有する細胞の増殖研究。(図10G)RNAiによりp21あるいはE2F1が選択的にサイレンシングされているSnu−16細胞の増殖曲線及び(H)FACS解析。p21発現の抑制は、細胞周期に影響を及ぼしたが、miR−93とは区別できなかった。
図10H】(図10G)RNAiによりp21あるいはE2F1が選択的にサイレンシングされているSnu−16細胞の増殖曲線及び(H)FACS解析。p21発現の抑制は、細胞周期に影響を及ぼしたが、miR−93とは区別できなかった。
図11】[00093]図11:TGFE存在下におけるMKN−74細胞生存率アッセイ。MKN−74細胞を、示したLNAオリゴヌクレオチドでトランスフェクトして内因性miRNA発現をサイレンシングし、続いてTGFEで96時間処理した。細胞生存率は、CCK−8アッセイにより決定した。
図12-1】[00094]図12:miR−25を過剰発現している細胞のアネキシンVアッセイ。図7Gに示した結果は、アネキシンV染色により確認した。
図12-2】[00094]図12:miR−25を過剰発現している細胞のアネキシンVアッセイ。図7Gに示した結果は、アネキシンV染色により確認した。
図12-3】[00094]図12:miR−25を過剰発現している細胞のアネキシンVアッセイ。図7Gに示した結果は、アネキシンV染色により確認した。
図12-4】[00094]図12:miR−25を過剰発現している細胞のアネキシンVアッセイ。図7Gに示した結果は、アネキシンV染色により確認した。
図13】[00095]図13:表1:慢性胃炎対正常胃粘膜において差次的に発現されたmiRNA。
図14】[00096]図14−表2:胃腺癌対非腫瘍胃粘膜において差次的に発現されたmiRNA。
図15-1】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-2】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-3】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-4】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-5】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-6】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-7】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-8】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-9】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-10】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-11】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-12】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-13】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-14】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-15】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-16】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-17】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-18】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-19】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-20】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-21】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-22】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図15-23】[00097]図15−表3:ヒト胃癌細胞株におけるマイクロRNA発現。
図16】[00098]図16−表4:qRT−PCRによる、対にしたヒト原発性腫瘍対非腫瘍対照におけるマイクロアレイデータの検証。
図17】[00099]図17:表5:10対の胃原発性腫瘍及び非腫瘍対照におけるMcm7 mRNA及びmiR−106b−25発現。
図18】[000100]図18:表6:同一3’UTR上に推定miR−106b、miR−93及びmiR−25結合部位を有するヒト遺伝子。
【発明を実施するための形態】
【0061】
好ましい態様の詳細な説明
[000101]本開示を通して、種々の刊行物、特許及び公開された特許明細書は引用を特定することにより参照される。これらの刊行物、特許及び公開された特許明細書の開示は、本発明が関与する分野の状態をより完全に記述するために、本開示に引用文献として組み入れられる。
【0062】
[000102]E2F1活性及びTGFEへの抵抗性の調節解除は、胃癌の顕著な特徴である。マイクロRNA(miRNA)は、ヒト悪性腫瘍でしばしば誤調節されている、短鎖非コードRNAである。
【0063】
[000103]ここに我々は、ヒト胃腫瘍のサブセット中の上方調節されたmiR−106b−25クラスターが、その宿主遺伝子Mcm7と並行してE2F1により活性化されていることを示す。順に、miR−106b及びmiR−93はE2F1発現を調節し、miRNA依存性ネガティブフィードバックループを確立している。さらに、これらのmiRNAの上方調節は、CDKN1A(p21/WAF1/Cip1)及びBCL2L11(Bim)の発現を妨害している、TGFE腫瘍抑制経路を害する。一緒にすると、これらの結果は、miR−106b−25クラスターが、E2F1転写後調節に関与することを示し、胃癌におけるTGFE抵抗性の発生に鍵となる役割を果たすことができる。
【0064】
[000104]マイクロRNA(miRNA)は、標的mRNA翻訳を抑制するか、又はその分解を誘発して、全ヒト遺伝子のおよそ30%の発現を調節することができる、短鎖非コードRNAである。これらの遺伝子は、ヒト悪性腫瘍において異常に発現されており、それらの生物学的重要性をますます明らかなものにしている。胃癌は、毎年、全癌関連死の12%の原因となっており、この疾患の発症の基礎をなす分子機構のより深い理解に基づいたより良い治療が必要とされている。
【0065】
[000105]ここに、miR−106b−25クラスターの過剰発現が、G1/Sチェックポイントを破壊し及びTGFE依存性アポトーシスに対する抵抗性を付与する、TGFEエフェクターp21/WAF1/Cip1及びBimのような重要な癌関連遺伝子の調節解除を導くことが示される。
【0066】
[000106]マイクロRNA(miRNA)が胃腫瘍発生に関与できることも示される。miRNAは、mRNAの翻訳を抑制するか、又はその分解を誘発して、ヒト遺伝子の30%までの発現を調節すると考えられている、非タンパク質コード遺伝子である(Lewis et al.2005)。細胞分化及び生物体発生における重要な役割(Kloosterman and Plasterk, 2006)のほかにも、miRNAはヒト癌においてしばしば誤調節されており(Lu et al., 2005; Volinia et al., 2006)、そしてそれらは強力な癌遺伝子かあるいは腫瘍抑制遺伝子として働き得る(Esquela-Kersher et al. 2006)。
【0067】
[000107]ここに、E2F1が、Mcm7遺伝子に含まれるイントロン性miRNAのクラスター、miR−106b、miR−93及びmiR−25を調節し、胃原発性腫瘍においてそれらの蓄積を誘発することが示される。逆に、miR−106b及びmiR−93はE2F1発現を制御し、E2F1自己活性化そして、おそらくアポトーシスを防止することにおいて重要であることができる、ネガティブフィードバックループを確立している。
【0068】
[000108]一方、miR−106b、miR−93及びmiR−25過剰発現が、それぞれTGFE依存性細胞周期停止及びアポトーシスの二つの最も重要な下流エフェクター、p21及びBimの合成を妨げる、TGFEに対する胃癌細胞の減少した応答を引き起こしていることを発見した。
【0069】
[000109]これらのmiRNAは、癌細胞におけるTGFE抵抗性の発生に寄与しており、胃癌治療の新規の治療標的であると発明者は現在考えている。
[000110]本発明は以下の実施例でさらに説明され、特に記載しない限り、すべての部分及びパーセンテージは重量によるものであり、度は摂氏である。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示しているが、例示のためにのみ与えられていることを理解すべきである。上記の議論及びこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特徴を確かめることができ、そしてそれらの精神及び範囲から離れることなく、多様な使用及び条件に適合させるために本発明の多様な変形及び修正を行うことができる。本明細書で言及された、特許及び非特許文献を含む全ての出版物は、本明細書において特別に援用される。
【実施例】
【0070】
[000111]実施例1
[000112]ヒト胃癌におけるmiRNA発現の調節解除
[000113]ほとんどの胃腺癌は、慢性炎症性バックグラウンドとの関連において生じ、しばしば、ヘリコバクターピロリ(HP)感染に関連する(Uemura et al., 2001)。それにもかかわらず、Th1免疫応答が胃の萎縮症及び腸上皮化生のような前癌病変部の発生に決定的であるようであるが、HP発癌性の原因となる分子機構には不明の点が多い(Houghton et al., 2002; Fox et al., 2000)。
【0071】
[000114]胃腫瘍発生に関与する可能性があるmiRNAの探索において、特別注文のmiRNAマイクロアレイを使用し、腸型の20の胃原発性腫瘍(各々が同一患者からの隣接する非腫瘍胃組織と対になっている)及び6の胃癌細胞株の広範囲のmiRNA発現を分析した。炎症及び/又は前癌病変部に関連した特異的変化を同定するため、最初に、慢性胃炎の組織学的兆候を有する非腫瘍組織(n=13)と他の正常粘膜(n=7)を比較した。対応のないマイクロアレイの有意性分析(SAM)により、7のmiRNAが慢性炎症と関連しており、癌の素因である(Costinean et al., 2006)及び免疫応答の調節に主な役割を果たす(Rodriguez et al., 2007; Thai et al., 2007) ことが知られているmiR−155が含まれていた(図1A図13−表1)。
【0072】
[000115]次に、胃原発性腫瘍及び癌細胞株のmiRNA発現プロファイルを試験した:対応のあるSAMにより、非腫瘍対照と比較して原発性腫瘍においては総計で14のmiRNAが2倍又はそれ以上の中央値の過剰発現を示した(図1B図14−表2)。これらの内、発現されなかったmiR−223を除き、発現の観点から全ての胃癌細胞株において、14の内の13が80パーセンタイル以上に位置付けられた(図15−表3)。5つのmiRNAのみが癌において下方調節された(図1B図14−表2)。試験されたmiRNAの10の内の9についてはステムループqRT−PCRによりマイクロアレイデータを確認した(図16−表4)。誤調節されたmiRNAの内、miR−21、miR−223、miR−25及びmiR−17−5pは、それぞれ4.5、4.2、3.7及び3.7の中央値変化倍率を有し、腫瘍中で最も高い過剰発現を示した。
【0073】
[000116]腫瘍発生の最も早期の段階は、miR−21(Meng et al., 2006)及びmiR−17−5p(He et al., 2005)のような既知の発癌特性を有するmiRNAを伴うので、これらの結果は、miRNA発現パターンの特異的な改変がヒト胃癌に特徴的であることを示している。
【0074】
[000117]miR−106b−25クラスターは胃癌において過剰発現されている
[000118]過剰発現されたmiRNAの中で、miR−25が、特に有用であり、胃腫瘍発生において役割を果たしている魅力的な候補であることが発見された。実際、これは原発性胃腫瘍において3番目に最も強く上方制御されており(中央値の変化倍率:3.7;1.0〜26.8の範囲)、そして全てのヒト胃癌細胞株で最も高く発現されたmiRNAに位置付けられている(97パーセンタイル以上)。miR−106b(中央値変化倍率:2.0;1.0〜6.5の範囲)及びmiR−93(中央値変化倍率:2.3;1.0〜7.7の範囲)も原発性腫瘍において上方制御されており、そして全ての胃癌細胞株において高く発現されている(それぞれ82及び89パーセンタイル以上)。
【0075】
[000119]これら3つのmiRNA(以後miR−106b−25)は、染色体7q22上のMcm7のイントロン13にクラスター化しており、Mcm7一次RNA転写産物との関連で活発に共転写される(Kim et al., 2007、及び図1C〜E)。いくつかの研究は、胃腫瘍におけるこの領域の増幅を報告している(Weiss et al., 2004; Peng et al., 2003; Takada et al., 2005)。しかしながら我々は、我々のサンプルにおいて、miR−106b−25座位の何の増幅も検出できず(データは示していない)、胃癌におけるmiR−106b−25過剰発現に他の機構が寄与しなければならないことを示唆している。
【0076】
[000120]Mcm7は、G1/S期移行で中心的役割を果たし、染色体DNAの複製フォークの正しい組み立てを組織化し、そして各細胞周期で二回以上ではなく一回のみ全ゲノムが複製されることを確実にしている(Blow and Hodgson, 2002)。Mcm7の過剰発現は、前立腺及び子宮内膜癌における予後不良に関係してきているので(Ren et al., 2006; Li et al., 2005)、我々は、Mcm7発癌性を、少なくとも一部は、含まれているmiRNAの過剰発現に結び付けることができるということを仮定した。さらに、miR−106b−25クラスターは、miR−17−92クラスターと高度に相同性を共有し(図1C)、そのことは発癌に役割を有しているようである(He et al., 2005; O’Donnell et al., 2005; Dews et al., 2006)。
【0077】
[000121]我々は次ぎに、miR−106b−25クラスターを調べた。我々はステムループqRT−PCRの特異性を最初に決定した。miR−106b、miR−93及びmiR−25のためのプライマーは高度に特異的であるが、一方、miR−17−5p及びmiR−92プローブは、それぞれmiR−106a及びmiR−25と交差ハイブリダイズした(図9A)。次ぎに、同一患者からの非腫瘍胃粘膜と対になった10の胃原発性腫瘍の独立した組における、成熟miRNA種の発現をアッセイするために、ステムループqRT−PCRを使用した。
【0078】
[000122]成熟miR−106b、miR−93及びmiR−25は、それぞれ、これらの腫瘍の6/10、6/10及び5/10において過剰発現されたけれども、それらの発現レベルに相互相関はなかった(図9B)。
【0079】
[000123]慣用的qRT−PCRにより、同一の腫瘍中のmiRNA前駆体レベルを試験し(図9C)、miR−106b、miR−93及びmiR−25前駆体種が腫瘍中で一致して発現されていることを発見した[r(106b/93)=0.93;r(106b/25)=0.78;r(93/25)=0.88、図17−表5]。
【0080】
[000124]miR−106b−25前駆体を過剰発現している5腫瘍の内、3腫瘍は成熟miR−106b、miR−93及びmiR−25も高レベルで発現していたが、一方、残りの腫瘍は各成熟miRNAの不定発現を示し、個々のmiRNAを制御している転写後調節の追加のレベルを示している。
【0081】
[000125]Mcm7 mRNAは、5/10腫瘍においても過剰発現されており、miR−106b、miR−93及びmiR−25前駆体レベルとのほとんど完全な相関(それぞれ、r=0.98、0.92、0.72、図9C及び図17−表5)を示している。
【0082】
[000126]これらのデータは、miR−106b−25前駆体が、Mcm7 mRNAと並行して胃原発性腫瘍のサブセットにおいて特異的に過剰発現されていることを示す。miR−106b−25独立プロモーターの可能性を排除することができないけれども、我々の結果は、胃腫瘍におけるmiR−106b−25転写が、宿主遺伝子Mcm7により駆動されていることを示している。さらに、最近他のmiRNAについて提案されたように(Thomson et al., 2006)、転写後機構も成熟miR−106b−25のレベルの決定に主要な役割を果たしている。
【0083】
[000127]ネガティブフィードバックループはE2F1及びmiR−106b−25発現を制御する
[000128]E2F1は、Mcm7(Suzuki et al., 1998; Arata et al., 2000)を含む染色体DNA複製に関与する、多様な遺伝子をトランス活性化する転写因子である(Johnson and DeGregori, 2006)。発明者は現在、miR−106b−25転写が同様 にE2F1により調節されるであろうと考えている。このことを試験するため、我々は最初に、E2F1タンパク質レベルの内因性変動が、Mcm7及びmiR−106b−25発現の同様の変化に一致するかどうかを決定した。興味深いことに、12時間のノコダゾール処理により有糸分裂が停止されているAGS胃癌細胞は、E2F1タンパク質を発現せず、そして対数増殖期細胞と比較して、Mcm7転写体(2倍)及び、miR−106b、miR−93及びmiR−25前駆体(それぞれ4.0、5.2及び12.0倍)の減少を示した。細胞を解放すると、G1期に再び入り、E2F1発現はMcm7、miR−106b、miR−93及びmiR−25前駆体RNA再蓄積と並行していた(図2A〜C)。
【0084】
[000129]このプロセスは、E2F1発現と直接的に関連しており、なぜなら、アデノウイルス形質導入によるその特異的過剰発現(図2D)又はRNA干渉によるサイレンシング(図2E)も、miR−106b−25前駆体レベルの一致した変化を誘導するからである。その上、E2F1の機能喪失は、72時間後に成熟miRNAの発現に影響を与える(図2F)。
【0085】
[000130]インビボでのデータをさらに検証するため、ウエスタンブロットにより10の原発性胃腫瘍におけるE2F1タンパク質発現を分析し、E2F1タンパク質とMcm7/miR−106b−25前駆体発現間に正の相関を見出した(図2G)。実際、E2F1を過剰発現している5腫瘍の内の4が、Mcm7及びmiR−106b−25前駆体のより高いレベルを示した(図9C)。これらの内、3腫瘍は成熟miR−106b、miR−93及びmiR−25も過剰発現した(図9B)。しかしながら、1腫瘍は、E2F1の検出可能なレベルなしに、Mcm7及びmiR−106b−25前駆体上方調節を示し、他の転写因子も、miR−106b−25の調節に関与することを示している。
【0086】
[000131]これらの結果は、E2F1がMcm7と並行してmiR−106b−25発現を調節することを示し、胃癌におけるこれらのmiRNAの過剰発現は、少なくとも一部は、E2F1上方調節によるものであることを示している。
【0087】
[000132]最近、miR−17−5pが、E2F1の新規転写後調節因子として提案された(O’ Donnell et al., 2005)。miR−17−5p、miR−106b及びmiR−93配列間の類似性を考え、miR−106b及びmiR−93がE2F1発現の調節に関与することができる可能性を調べた。なぜなら、これらのmiRNAは、qRT−PCRにより分析された12の胃癌細胞株の一団において散在的に発現されており(図3A)、miR−106b−25に拮抗するための機能の喪失アプローチを採用した。miR−106b及びmiR−93に対するLNAアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトランスフェクションは、Snu−16細胞においてE2F1タンパク質の蓄積を誘発し、これらのmiRNAの内因性レベルがその発現を制御していることを示している(図3B)。
【0088】
[000133]また、オリゴヌクレオチドトランスフェクションあるいはレンチウイルス形質導入によるこれらのmiRNAの過剰発現(図9D)は、Snu−16及びAGS胃癌細胞株においてE2F1タンパク質レベルを明瞭に減少させ(図3C及び図3D)、そしてE2F1 3’UTRを含有するレポーターベクターの発現を抑制した。レポーターベクター中の推定miRNA結合部位の突然変異はこの効果を取り消し、miR−106b及びmiR−93がE2F1 3’UTRと直接的に相互作用することを示している(図3E)。しかしながら、miR−106b及びmiR−93トランスフェクションによりE2F1 mRNAは2倍減少し、恐らく部分的mRNA分解又はE2F1転写活性化因子の下方変調のためであろう(図3F)。
【0089】
[000134]miR−17−5pが、実際にE2F1転写を活性化し、miR−17−5p標的でもあるAIB−1タンパク質を抑制することにより、E2F1発現を二次的に抑制できることが議論されてきた(Hossain et al., 2006)。miRNAが同一経路内の異なった標的に作用することは非常に道理にあっているが、我々はAGS及びSnu−16細胞におけるAIB−1タンパク質レベルを分析し、miR−106bあるいはmiR−93でトランスフェクトした細胞中では、それぞれ、非常にわずかな減少か、又は少しも相違しておらず、AIB−1はmiR−106bの真に低親和性標的であり、部分的にのみE2F1下方制御に寄与することができることを示している(図3C)。
【0090】
[000135]これらの結果を一緒にすると、E2F1はmiR−106b−25発現を調節するが、miR−106b及びmiR−93の標的でもあり、胃癌細胞におけるネガティブフィードバックループを確立していることを示す。E2F1は、ポジティブフィードバックループを介してそれ自身のプロモーターを自己活性化することが知られており、これらのmiRNAは、相同体miR−17−5p及びmiR−20aについて最近提案されたように(Sylvestre et al., 2007; Woods et al., 2007)、E2F1タンパク質合成の速度を調節することができ、その過剰な蓄積を防止している。
【0091】
[000136]miR−106b及びmiR−93はTGFE誘発細胞周期停止を害する
[000137]これらの結果は、細胞が有糸分裂を示し、そしてG1期に再び入ると、miR−106b−25転写が迅速に誘導されることを示している。これに基づいて、理想的にはE2F1と協同して、G0/G1関連活性を抑制することにおけるmiR−106b−25の可能な役割が仮定された。それ故、TargetScanデータベースを調べ、E2F1により負に制御されることが知られている遺伝子を探し、miR−106b及びmiR−93の推定標的としてCDKN1A(p21)を同定した。ヒト癌において高頻度に機能不全に陥るこの遺伝子は、細胞周期の鍵となる阻害因子である(Mattioli et al, 2007)。興味深いことに、Snu−16細胞において内因的に発現されたmiR−106b及びmiR−93が、p21を転写後に調節することが確認された。実際、ASOによるそれらの阻害は、p21タンパク質の発現を増強した(図4A)。逆に、オリゴヌクレオチドトランスフェクション(図4B)あるいはレンチウイルス形質導入(図4C)により達成されたmiR−106b及びmiR−93の上方調節は、p21mRNAレベルの有意な変化なしに、p21タンパク質発現を抑制した(図4D)。さらに、miR−106b及びmiR−93模倣体は、p21 3’UTRを含有するレポーターベクターの発現を阻害したが、一方、推定miRNA結合部位の突然変異はこの効果を抑止した(図4E)。
【0092】
[000138]細胞周期の調節におけるp21の重要性を考慮し、胃癌細胞の増殖を調節することにおけるmiR106b−25の役割を追求することが決定された。予期せぬことに、ASOトランスフェクションにより誘発されたmiR−106b、miR−93及び/又はmiR−25機能の喪失は、Snu−16細胞の細胞周期及び増殖に有意な変化をもたらさなかった(図10A及び図10C)。同様に、オリゴヌクレオチドトランスフェクションあるいはレンチウイルス形質導入による三つのmiRNAの過剰発現は、AGS細胞の増殖速度及びコロニー形成効率を有意に改変しなかったが、miR−93過剰発現による限定されているがしかし再現性のある細胞周期摂動が注目された(S期の細胞が+8%、図10B、10D及び10E)。
【0093】
[000139]GTL−16及びMKN−74胃癌細胞株を使用して類似の結果が得られており(データは示していない)、miR−106b−25機能が、インビトロでの胃癌細胞の生存及び増殖に必須ではないことを示している。しかしながら、RNAiによるp21あるいはE2F1の特異的サイレンシングは、同様に増殖には有意な変化を生み出さず(図10G及び10H)、これらの癌細胞株はp21基礎レベルに応答せず、そしてE2F1発現の喪失をうまく埋め合わせることが確認される。
【0094】
[000140]次ぎに、TGFO存在下でのmiR−106b−25の役割を追求した:このサイトカインはp21及び他の抗増殖性分子の発現を誘導することにより、時宜を得た協調的な細胞周期停止及び消化管における成熟細胞のアポトーシスを確かにし、上皮細胞の生理学的回転を制御している(van den Brink and Offerhaus, 2007)。この極めて重要な腫瘍抑制経路の機能障害は、胃癌の顕著な特徴である(Ju et al., 2003; Park et al., 1994)。しかしながら、数少ない胃癌細胞株の中でも、Snu−16細胞はそれでもインビトロで比較的高用量のTGFOに応答して、G1/S停止及び続けての広範なアポトーシスを起こしている(Ohgushi et al., 2005 及び図5A)。それにもかかわらず、細胞の生存は24時間後に減少しており、このことはTGFOに付随する早期の分子変化を研究するための窓を開けている。
【0095】
[000141]興味深いことに、TGFOによる刺激は、細胞が生理学的にG1/S停止を起こしている16時間後に、E2F1タンパク質、Mcm7 mRNA及びmiR−106b−25前駆体の著しい下方調節を誘発し、これらのmiRNAの下方変調が、TGFOに対する生理学的応答の一部であることを示唆している(図5B及び5C)。このプロセスの重要性を確立するため、TGFO存在下、Snu−16細胞にmiR−106b、miR−93及び/又はmiR−25模倣体を導入することにより、miR−106b−25下方調節に対抗させた。とりわけ、miR−93の過剰発現はTGFO誘発細胞周期停止を完全に抑止し、一方、miR−106bはそれを部分的に減少させ(P<0.0002)、これらのmiRNAにより誘発されたp21の下方調節の程度と一致する(図5D)。
【0096】
[000142]逆に、ASOにより内因性miR−106b及びmiR−93の発現を拮抗させると、TGFO依存性細胞周期停止を起こしているSnu−16細胞の数が有意に増加し(P<0.0013)、さもなければこれらの細胞が抵抗性である、TGFOの最適以下での投与量に対する感受性を回復した(P<0.0001)(図6a及び6B)。
【0097】
[000143]従って、TGFO存在下、内因性miR106b及びmiR−93を抑制することにより達成されたp21上方調節の程度は(図6C)、基礎的条件の2倍であり(図4A)、おそらく活性なp21mRNAの転写により支えられているのであろう(図6D)。
【0098】
[000144]miR−106b及びmiR−93の機能の獲得/欠失に関連する表現型を誘導することにおけるp21の役割を確立するため、TGFPで処理したSnu−16細胞において、RNAi(si−p21)によりp21を特異的にサイレンシングした。このことは、細胞周期分布に対するmiR−106b及びmiR−93過剰発現の効果をほぼ完全に再現し(図5D)、一方、si−p21とmiR−106b及びmiR−93のコトランスフェクションは、TGFO誘発細胞周期停止に対するこれらのmiRNAの効果を劇的に減少させ、この生物学的状況において、p21が一次標的であることを示唆している(図6E)。しかしながら、miR−93によるTGFO依存性細胞周期停止に対する小さいけれども統計学的に有意な効果が、p21の不存在下でそれでも観察可能であり(P=0.0272)、他の直接的又は間接的標的がp21と協同していることを暗示している。G1/Sチェックポイントに関与する遺伝子についての発現の分析から、p27がmiR−93の可能な間接的標的である(図6F)。
【0099】
[000145]これらのデータは、miR−106b及びmiR−93が、転写後レベルでp21の発現を主として抑制してTGFO誘発細胞周期停止を妨げていることを示している。しかしながら、p21非依存性経路も、細胞周期制御に対するmiR−93の完全な効果を送達することに関与することができる。
【0100】
[000146]miR−25は、TGFO誘発アポトーシスの開始を防止することにおいてmiR−106b及びmiR−93と協同する
[000147]これらの結果は、TGFP刺激の初期段階に細胞周期停止を変調することにおけるmiR−106b及びmiR−93の役割を示している。最終的にはアポトーシスをもたらす、TGFPへの長期の暴露でのmiR−106b−25機能を分析した(Ohgushi et al., 2005、及び図5B)。
【0101】
[000148]テトラゾリウム還元アッセイにより、TGFPで24〜48時間刺激したSnu−16細胞の生存率を試験した。これらの細胞へのmiR−106b、miR−93及び/又はmiR−25模倣体の導入はTGFPに対する著しい抵抗性を誘発した(図7A)。逆に、ASOトランスフェクションは、三つすべてのmiRNAが同時に抑制された場合、統計的有意性(P=0.003)に達する細胞数の負の傾向を誘発した(図7B)。三つのmiRNAのサイレンシングでサブディプロイド細胞数の有意な増加を示す(P<0.001)FACS分析により、この結果が確認された。さらに、このアッセイのより高い感度は、miR−106b、miR−93又はmiR−25の個々の抑制による、サブディプロイド細胞のパーセンテージのより小さいけれども有意な変化(P<0.001)の検出を可能にする(図7C)。最後に、miR−106b−25のサイレンシングは、さもなくば抵抗性のMKN−74細胞において、TGFEへの感受性を部分的に回復した(図11)。一緒にすると、これらの結果は、内因性miR−106b、miR−93及びmiR−25が、一つ以上の標的仲介TGFE依存的アポトーシスの発現を変調することにおいて協同するモデルと一致する。
【0102】
[000149]アポトーシスのエフェクターを探すためにTargetScanデータベースを検索し、miR−106b、miR−93及びmiR−25の推定結合部位を同時に含む18のヒト遺伝子の内、唯一の有力な候補としてBCL2L11(Bim)が同定された(図18−表6)。Bimは、Box及びBadのようなアポトーシス促進性分子を活性化することにより、及びBcl2及びBillのような抗アポトーシス分子に拮抗することにより、さまざまな組織においてアポトーシスを決定的に調節する、単BH3タンパク質である(Gross et al., 1999)。Bim及びそのパートナータンパク質の細胞内濃度の微妙なバランスが、アポトーシスを適切に調節するために極めて重要である。Bimはハプロ不全であり、単一アレルの不活性化でさえ、他のアレルの喪失なしに、マウスにおいて腫瘍のMyc誘発発生を促進する(Egle et al., 2004)。特に、BimはTGFE経路の最も下流のアポトーシスエフェクターであり、その下方変調はSnu−16細胞においてTGFE依存性アポトーシスを抑止する(Ohgushi et al., 2005)。
【0103】
[000150]BimがmiR−106b−25の直接標的であったかどうかを決定した。Snu−16細胞はBimの三つの主なアイソフォーム、即ち、Bim EL、Bim L及びBim Sを発現する。興味深いことに、ASOにより内因性miR−25に拮抗することは、Snu−16細胞において三つすべてのアイソフォームの蓄積を誘発し、一方、オリゴヌクレオチドトランスフェクションあるいはレンチウイルス形質導入によるmiR−25過剰発現はこれらの発現を減少させた。これに反して、miR−106b及びmiR−93は、三つの試験された胃癌細胞株の内の三つにおいて、Bim発現に影響を及ぼさなかった(図7D)。
【0104】
[000151]他の組織でのBim発現を調節することにおいて、miR−106b及びmiR−93がmiR−25と協同することはまだ可能であるが、これは胃癌において、三つのmiRNAの各々によりアポトーシスの複数のエフェクターが抑制されているモデルを支持する。
【0105】
[000152]これらのアポトーシスエフェクターの一つとしてBimに焦点を当て、その3’UTR上のmiR−25予測結合部位が標的認識、及び引き続いての翻訳の阻害を仲介することを、ルシフェラーゼアッセイにより決定した(図7E)。さらに、Bim ELびBim L mRNAレベルは、Snu−16細胞においてmiR−25過剰発現によっても変化せず、転写後調節機構を示している(図7F)。
【0106】
[000153]miR−25特異的抗アポトーシス機能に関連したBim下方制御の重要性を確立するため、三つの主なアイソフォームに対するsiRNAを使用してSnu−16細胞中のBimタンパク質を抑制し(si−Bim、図7D)、そして引き続いて、これらの細胞をTGFEで24時間処理した。特に、si−Bim及びmiR−25によりもたらされるアポトーシスからの保護は、サブディプロイドDNA含量及びアネキシンV染色により決定されるように、非常に類似していた。さらに、Bim及びmiR−25のコトランスフェクションは、有意な相加効果を有しておらず(P=0.6328)、Bim下方調節が、miR−25過剰発現細胞におけるTGFE誘発アポトーシスに対する抵抗性の主たる機構であることを示唆している(図7G及び図12)。
【0107】
[000154]E2F1により活性化され、そしてヒト胃腺癌において上方制御されているmiR−106b−25クラスターが、細胞周期停止及びアポトーシスの両方に影響するTGFEに対する胃癌細胞の生理学的応答を変化させることが示された(図8)。
【0108】
[000155]これらの発見は、TGFE腫瘍抑制経路の機能障害が胃腫瘍の発生決定的段階であるという胃癌モデルに特に関係している。
[000156]考察
[000157]胃癌発生の異なった段階において、miRNA発現の全ゲノム分析を実行した。胃腫瘍の大部分は慢性炎症性バックグラウンドを起源としており(Uemura et al., 2001)、前腫瘍及び腫瘍特異的変化間を区別する特定の関係性を考察した。
【0109】
[000158]最初に、これまで無視されてきた、ヒト腫瘍中のmiRNAクラスターの特異的過剰発現を同定した。我々は胃癌に焦点を合わせたけれども、癌の他のタイプにおけるmiR−106b、miR−93及びmiR−25の過剰発現は一般的であるが、いまだ過小評価されているイベントである。
【0110】
[000159]実際、miR−106b−25発現は、細胞増殖の基礎的機構に関与するE2F1及びMcm7の発現に密接に関連している。例えば、Mcm7は前立腺癌において高頻度に過剰発現されており(Ren et al., 2006)、実際、癌のこのタイプの大規模miRNA研究においてmiR−25上方調節が以前に記述されている(Volinia et al., 2006)。さらに、ステムループqRT−PCRプローブが、miR−25と交差ハイブリダイズし、ほとんどのヒト腫瘍において過剰発現されているmiR−92の発現のアッセイで普通に使用されることが示されている(Volinia et al., 2006)。しかしながら、ほとんど同一の配列と仮定すると、miR−106b−25及びmiR−17−92が、類似の(同一でなくとも)機能を発揮することにおいて協同することも非常にありそうであり、実際、miR−17−5p、miR−18a及びmiR−20aが同様にp21発現を阻害し、一方、miR−92はBim発現を抑制する(F.P. 及び A. V., 未発表データ)。さらに、miR−106b−25及びmiR−17−92の両方がE2F1により調節されている。けれども、これらのクラスターはいくつかの相違も示す。例えば、miR−106bはmiR−17−5pに似ているが、3ヌクレオチド短い:3’末端中の特異的配列がmiRNAの細胞内局在性を規定し得ることが報告されている(Hwang et al., 2007)。さらに、miR−19ファミリーは、miR−106b−25クラスターに示されていない(図2A)。
【0111】
[000160]一方、miR−93はmiR−372及びmiR−373と同一のファミリーに属している:これらのmiRNAは、精巣性胚細胞腫瘍中で過剰発現され、そこでそれらはLATS2発現を害し、細胞を高p21レベルに対して非感受性にしている(Voorhoeve et al., 2006)。
【0112】
[000161]本明細書で示したように、miR−93は同一経路内で作用し、直接的にp21発現を標的としている。それ故、miRNAのこのファミリーは、細胞周期の制御のための極めて重要なハブの調節に関与していると現在信じられており、そして癌に特定の関連性を有することができる。
【0113】
[000162]さらに、miR−93はmiR−291−3p、miR−294及びmiR−295と高い配列相同性を共有する:これらのmiRNAは多能性ES細胞において特異的に発現され、そしてそれらは分化によりサイレンシングされるか、又は下方調節される(Houbaviy et al., 2003)。理論に縛られるわけではないが、本発明者は、これらのmiRNAはp21の調節に同様に関与することができることを本明細書において考えている。
【0114】
[000163]本発明者は、miRNAが異なった機構を介して、細胞周期の調節に役割を果たしていることを示した。E2F1の場合、miRNAは調節性、重複フィードバックループとの関連において主として作用するように思われる。実際、別々のmiRNAクラスター上に位置するmiR−106b、miR−93、miR−17−5p及びmiR−20aは、E2F1によって制御され、おそらくその翻訳を阻害することにおいて協同している。
【0115】
[000164]同時に、我々は、これらのmiRNAがp21発現の調節及びTGFEに対する早期応答に関与していることを発見した。本発明者は、これらがp21に収束する他の腫瘍抑制経路をも調節すると考えている。突然変異、欠失、過剰メチル化、ユビキチン化又は誤った局在化によるp21機能の喪失は頻繁なイベントであり、そしてヒト胃癌における負の予後因子である(Mattioli et al., 2007)。しかしながら、p21調節におけるmiRNAの役割は、従来探索されたことがない。研究された胃原発性腫瘍の80%は検出可能レベルでp21タンパク質を発現しないので、miRNA及びp21タンパク質発現間の逆の相関を確立することができなかった。しかしながら、原発性腫瘍におけるp21mRNAレベルは、しばしば正常組織に匹敵し、胃癌におけるp21下方調節の高頻度の原因としての翻訳後調節を示している(F.P及びA.V.、未発表データ)。
【0116】
[000165]興味深いことに、p21発現の誘導は、TGFE刺激の初期段階においてmiR−106b/miR−93関連応答を惹起するための必要条件であるようである。逆に、RNAiによるp21のサイレンシングは、細胞周期に対するこれらのmiRNAの効果を劇的に減少させた。コンピューターによる方法により各miRNAについて数百の異なった標的が予測されるけれども、「一次miRNA標的」が特異的生物学的機能に重要であろうという証拠が増加している。例えば、miR−10bは乳癌細胞の細胞運動性及び侵襲性を増強し、このmiRNAについて百を超える標的が予測されるけれども、この表現型はその標的HOXD10の構成的発現で完全に元に戻る(Ma and Weinberg, 2007)。もちろん、これらの観察は、単一のmiRNAによる複数の標的の並行した調節が特異的機能を発揮するために必要であるという他の状況を排除するものではない。さらに、複数のmiRNAが、同一の機能を発揮することにおいて協同することができる。
【0117】
[000166]これは、miR−106b−25クラスターが胃癌細胞をアポトーシスから保護する事例である。こうした効果は、異なったアポトーシス促進性分子の発現を抑制することにおいて協同する三つのmiRNA間で分配されている。我々は、miR−25の鍵となる標的として、TGFE経路の最も下流のアポトーシスエフェクター、Bim(Ohgushi et al., 2005)を同定した。これは胃癌モデルと特に関連性を有する。実際、TGFEは、胃恒常性維持の主な調節因子の一つであり、アポトーシスを介した上皮細胞の生理学的回転の調節において必須である(van den Brink and Offerhaus, 2007)。miR−106b及びmiR−93アポトーシス促進性標的の同一性は不明瞭なまま残っているが、miR−106b、miR−93及び/又はmiR−25過剰発現及び阻害にそれぞれ関連する抗アポトーシス及びアポトーシス促進性応答は明瞭に検出できる;これらの特性は、細胞周期停止が撤回される場合、TGFE刺激の後期段階で出現し、アポトーシスがTGFEへの胃細胞の応答を特徴付ける優位なプロセスとなる。サブディプロイドDNA含量の分析により容易に検出できる、単一miRNAの阻害で観察された小さいがしかし有意な変化は、三つのASOが一緒に送達された場合に生物学的一貫性を獲得し、これらのクラスター化miRNA間の協同的関係を裏付けている。
【0118】
[000167]テトラゾリウム還元アッセイ及びサブディプロイドDNA含量の分析の両方により、単一ASOでトランスフェクトしたTGFE刺激細胞において反対の傾向が観察されたけれども、テトラゾリウム還元アッセイにおいては統計的有意性には達していなかった。これは、より小さな相違を除外するこのアッセイに付随する5〜10%の標準誤差のためである。これに反して、サブディプロイドDNA含量の分析における標準誤差は、我々が行って2%未満であった。
【0119】
[000168]原発性腫瘍におけるBim発現を検討した場合、正常組織と比較して普遍的過剰発現が注目された(F.P.and A.V.未発表データ)。このことは、Bimが異常増殖を防ぐための自己防御機構として、発癌ストレスにより誘導されることを示している先行研究と一致している。具体的には、BimはMycトランスジェニックマウスにおいて過剰発現され、正常細胞の広範なアポトーシスを決定している。しかしながら、これらのマウスにおける腫瘍の発生は、不十分になる一つのBimアレルの喪失と一致する。さらに、Bimは、発癌ストレスを受けていない健常組織と比較して、腫瘍においては確かに過剰発現されたままである(Egle et al., 2004)。それ故、それ未満ではBimが不十分にしか生じない閾値を規定するのは難しく、インビボでのmiR−25上方調節の重要性を規定するための別の戦略が必要とされている。
【0120】
[000169]転写調節からタンパク質分解まで、癌においてBim下方調節を導くいくつかの機構が記述されてきた(Yano et al., 2006; Tan et al., 2005)。これらの機構のすべてが明白にBimサイレンシングに寄与するが、我々は、胃癌におけるBim転写後調節の新規機構としてmiR−25干渉を提案する。
【0121】
[000170]miRNAは単なる微調整分子であるのか、又はそれらは鍵となる遺伝子スイッチとして作用するのかどうかが、広範囲に論争されてきた。最近の研究は、特定の生物学的状況に依存して、両方の仮説がおそらく正しいことを示唆している。この視点から、癌におけるmiRNAの療法的可能性は、特定のmiRNA依存性機能変化の発生と厳密に関連していてもよい。腫瘍関連miRNAの作用機構を知ることは、miRNA依存性腫瘍の分子診断を確立することにおいて有用であり、miRNAに基づいた療法に最終的に応答する患者の合理的選択を可能にする。
【0122】
[000171]実験手順
[000172]細胞培養及び処理
[000173]全ての細胞株は、ATCCから得、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン及びストレプトマイシンを補給したRPMI1640培地中で培養した。細胞は100nMマイクロRNA前駆体(Ambion)、100nM si−p21(Santa Cruz)、100nM si−Bim(Cell Signaring)又は100nM LNAマイクロRNAアンチセンスオリゴヌクレオチド(Exiqon)を使用し、リポフェクタミン2000(Invitrogen)でトランスフェクトした。タンパク質可溶化液及び全RNAは示した時点に採取した。miRNAプロセッシング及び発現はノーザンブロット及びステムループqRT−PCRにより検証した。すべての細胞株について、BLOCK-IT Fluorescent Oligo(Invitrogen)を使用してトランスフェクション効率(>95%)を確認した。
【0123】
[000174]同期化実験のためには、AGS細胞を0.03Pg/mlノコダゾール含有10%FBS RPMI1640中で12時間増殖させ、その後新鮮培地に放出する。細胞周期の進行を8時間までFACS分析により追跡し、その後、細胞は迅速に同期を失った。
【0124】
[000175]TGFE実験のため、6ウェルプレート中、5ulリポフェクタミン2000及び100nM miRNA前駆体(Ambion)又はLNAアンチセンスオリゴヌクレオチド(Exiqon)を使用し、2x10Snu−16細胞をOptimem(GIBCO)及びRPMI1640 10%FBS(Sigma)の1:1混合物中でトランスフェクトした。12時間後、培地を1ng/mlヒト組み換えTGFE1(Sigma)含有RPMI1640 10%FBSに交換した。生存細胞の数は、製造元の説明書の通りWSTテトラゾリウム塩(CCK-8, Dojindo)を使用してアッセイした。すべての実験は3重に実施した。結果は平均±SDで表されている。
【0125】
[000176]qRT−PCR
[000177]成熟miRNA及び他のmRNAは、それぞれ、製造元の説明書(Applied Biosystems, Foster City, CA)に従った単一チューブTaqman MicroRNA Assays及びGene Expression Assaysを使用してアッセイした。非鋳型対照及びRTマイナス対照を含む全てのRT反応は、GeneAmp PCR 9700 Thermocycler(Applied Biosystems)中で実行した。RNA濃度はNanoDrop(NanoDrop Technologies, Inc.)で決定した。サンプルは、示されているようにRNU49又はCAPN2(Applied Biosystems)で正規化した。遺伝子発現レベルは、ABI Prism 7900HT Sequence 検出システム(Applied Biosystems)を使用して決定した。比較リアルタイムPCRは3重に実施し、非鋳型対照を含んでいた。相対的発現は比較Ct法を使用して計算した。
【0126】
[000178]ルシフェラーゼアッセイ
[000179]MKN−74胃癌細胞は、6ウェルプレート中、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用し、1ugのpGL3ホタルルシフェラーゼレポーターベクター(補足実験手順参照されたい)、0.1ugのphRLSV40対照ベクトル(Promega)及び100nMマイクロRNA前駆体(Ambion)で共トランスフェクトした。ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼ活性は、トランスフェクション24時間後、Dual Luciferase Assay(Promega)を使用することにより連続して測定した。各レポータープラスミドで、少なくとも2回トランスフェクトし(異なった日に)、及び各サンプルは3重にアッセイした。
【0127】
[000180]フローサイトメトリー
[000181]細胞周期分析のため、2x10細胞を冷メタノール中で固定し、リボヌクレアーゼで処理し、そしてヨウ化プロピジウム(Sigma)で染色した。二重識別ゲートを使用するEPICS-XLスキャン(Beckman Coulter)により、細胞のDNA含量を分析した。全ての分析は3重に実施し、20,000ゲートイベント/サンプルを計数した。アポトーシス分析については、細胞を冷PBS中で洗浄し、アネキシンV−FITC(BD Biopharmingen)及びPI(Sigma)と暗所で15分インキュベートし、1時間以内に分析した。
【0128】
[000182]統計分析
[000183]実験の結果は、平均±SDで表されている。対応のないスチューデンt検定を、試験及び対照サンプルの値を比較するために使用した。P<0.05は有意差を示す。
【0129】
[000184]実施例II
[000185]組織サンプル
[000186]原発性胃腫瘍サンプルは、Department of Histopathology(Sant’Andrea Hospital, University of Rome “La Sapienza”, Italy)から得た。全てのサンプルは、患者のインフォームドコンセントを有し、組織学的に確認された。組織採取のためのプロトコルは、Sant’Andrea Hospital Bioethical Committee により承認された。各腫瘍は、同じ患者からの非腫瘍胃粘膜対照と対をなしている。
【0130】
[000187]マイクロアレイ
[000188]マイクロアレイ分析は、記述されているように(Liu et al., 2004)実行した。簡単には、全RNAの5ugを、二次発生miRNAマイクロアレイチップ(V2)上でのハイブリダイゼーションに使用した。これらのチップは、接触技術によりスポットされ、ポリマーマトリックスに共有結合で結合された、250のヒトmiRNAのための遺伝子特異的40−merオリゴヌクレオチドプローブを含有する。マイクロアレイは、6X SSPE(0.9M NaCl_60mM NaHPO_HO_8mM EDTA、pH7.4)、30%ホルムアミド中、25℃で18時間ハイブリダイズさせ、37℃で40分、0.75X TNT(トリス/HCl/NaCl/トウィーン20)で洗浄し、ストレプトアビジン−Alexa Fluor 647コンジュゲートによるビオチン含有転写体の直接的検出法を使用することにより処理した。処理したスライドは、635nmに設定されたレーザー、固定されたPMT設定、及び10mmのスキャン分解能を有するマイクロアレイスキャナーを使用することによりスキャンした。アレイデータはGlobal Median 、重み付き局所回帰(Lowess)又はクオンタイル(Quantile)法を使用して正規化し、類似の結果を得た。本研究で公表されたデータは、クオンタイル正規化により導き出された。miRNAの発現差異は、マイクロアレイの有意性分析(SAM)内のt検定法を使用することにより同定した。
【0131】
[000189]ウエスタンブロット
[000190]免疫ブロットのための抗体は以下の通りであった:E2F1(Santa Cruz、マウスモノクローナル、1:500)、AIB−1(Cell Signalling、マウスモノクロナール、1:1000)、p21(Cell Signalling、マウスモノクロナール、1:1000)、p27(Santa Cruz、マウスモノクロナール、1:500)、CDK2(Cell Signalling、マウスモノクロナール、1:1000)、CDK4(Cell Signalling、マウスモノクロナール、1:1000)、サイクリンD1(Cell Signalling、マウスモノクロナール、1:1000)、サイクリンE(Santa Cruz、ウサギポリクロナール、1:500)、pl5(Cell Signalling、ウサギポリクロナール、1:1000)、Bim(Cell Signalling、ウサギポリクロナール、1:1000)、ビンキュリン(Santa Cruz、マウスモノクロナール、1:500)、GAPDH(Calbiochem、マウスモノクロナール、1:3000)。バンドはGelDoc ソフトウェア(Biorad)を使用して定量した。
【0132】
[000191]アデノウイルス及びレンチウイルス感染
[000192]アデノE2F1は、G. Leoneより親切にも提供され、感染は記述されているように(Leone et al., 1998)実行した。miR−106b、miR−93、miR−25及びmiR−106b−25前駆体cDNAは、293T/17細胞ゲノムDNAからPCR増幅し、レポーターGFP及びmiRNAの両方を同時に形質導入するように、CMVプロモーター下、Tweenと称される変異体第三世代レンチウイルスベクター、pRRL−CMV−PGK−GFP−WPRE内にクローン化した。レンチウイルス上清調製及び感染は記述されているように(Bonci et al., 2003)実施した。レンチウイルス形質導入は、qRT−PCRにより決定されるように、miRNA発現に710倍の変化を生み出した。導入効率>90%は、蛍光顕微鏡法により検証した。
【0133】
[000193]qRT−PCR(miRNA前駆体)
[000194]マイクロRNA前駆体qRT−PCRについては、TRIzol試薬(Invitrogen)で分離した全RNAは、cDNAへの直接的DNase処理(Ambion)後、ThermoScriptキット(Invitrogen)を使用する逆転写により処理した。標的配列は、Power Syb-Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用するqPCRにより増幅した。サンプルはU6に対して正規化した。プライマー配列は要請があれば入手可能である。
【0134】
[000195]センサープラスミド
[000196]E2F1、p21及びBim3’UTR含有推定miRNA結合部位は、ゲノムDNA(293T/17細胞)からPCRにより増幅し、ホタルルシフェラーゼの終止コドンのすぐ下流のXba−I部位を使用することにより、pGL3制御ベクター(Promega)内に挿入した。miRNAシード領域相補領域部位中の最初の3ヌクレオチドの欠失を、製造業者のプロトコルに従い、QuikChange部位特異的突然変異導入キット(Stratagene)を使用して突然変異体構築物に挿入した。プライマー配列は要請があれば入手可能である。
【0135】
[000197]それらの使用及び定義の例
[000198]本発明の実施は、特に示されない限り、当業者が習得している薬理学、化学、生化学、組み換えDNA技術及び免疫学の従来の方法を用いるであろう。こうした技術は文献に十分に説明されている。例えば、Handbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell eds., Blackwell Scientific Publications); A. L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition); Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.)を参照されたい。
【0136】
[000199]そのようであるので、本明細書の定義はさらなる説明のために提供されており、限定と解釈してはならない。
[000200]本明細書で使用される冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法的目的語の一つ又は一つより多く(即ち、少なくとも一つ)を指す。例として、「an element」は一つの要素又は一つより多くの要素を意味する。
【0137】
[000201]「マーカー」及び「バイオマーカー」は、遺伝子及び/又はタンパク質又はそれらの機能的変異体であり、正常又は健康な組織又は細胞における発現レベルから変化した、組織又は細胞におけるその発現のレベルは、障害及び/又は疾患状態に関連する。
【0138】
[000202] マーカーの発現の「正常」レベルとは、障害及び/又は疾患状態に罹患していないヒト対象又は患者の細胞におけるマーカーの発現のレベルである。
[000203] マーカーの「過剰発現」又は「有意により高いレベルの発現」とは、発現を評価するために用いられたアッセイの標準誤差よりも大きく、及びある態様では、対照サンプル(例えば、マーカー関連障害及び/又は疾患状態を有していない健康な対象からのサンプル)中のマーカーの発現レベルの少なくとも2倍、他の態様では、3、4、5又は10倍、及びある態様においては、いくつかの対照サンプル中のマーカーの平均発現レベルである、試験サンプル中の発現レベルを指す。
【0139】
[000204]マーカーの「有意により低いレベルの発現」とは、対照サンプル(例えば、マーカー関連障害及び/又は疾患状態を有していない健康な対象からのサンプル)中のマーカーの発現レベルの少なくとも2分の1、及びある態様では、3、4、5又は10分の1、及びある態様においては、いくつかの対照サンプル中のマーカーの平均発現レベルである、試験サンプル中の発現レベルを指す。
【0140】
[000205]キットは、マーカーの発現を特異的に検出するための少なくとも一つの試薬、例えば、プローブを含むいずれかの製品(例えば、パッケージ又は容器)である。該キットは、本発明の方法を実施するためのユニットとして、宣伝し、流通させ、又は販売することができる。
【0141】
[000206]「タンパク質」は、マーカータンパク質及びそれらの断片;変異体マーカータンパク質及びそれらの断片;マーカー又は変異体マーカータンパク質の少なくとも15アミノ酸セグメントを含むペプチド及びポリペプチド;マーカー又は変異体マーカータンパク質、又はマーカー又は変異体マーカータンパク質の少なくとも15アミノ酸セグメントを含む融合タンパク質を包含する。
【0142】
[000207] 本明細書に記載された組成物、キット及び方法は中でも以下の非制限的使用を有する:
1)対象が、障害及び/又は疾患状態を患っているかどうかを評価すること;
2)対象の障害及び/又は疾患状態のステージを評価すること;
3)対象の障害及び/又は疾患状態のグレードを評価すること;
4)対象の障害及び/又は疾患状態の性質を評価すること;
5)対象が障害及び/又は疾患状態を発生する可能性を評価すること;
6)対象の障害及び/又は疾患状態に関連する細胞の組織学的タイプを評価すること;
7)対象の障害及び/又は疾患状態を治療するために有用である抗体、抗体断片又は抗体誘導体を作製すること;
8)対象の細胞における障害及び/又は疾患状態の存在を評価すること;
9)対象の障害及び/又は疾患状態を抑制するための一つ以上の試験化合物の有効性を評価すること;
10)対象の障害及び/又は疾患状態を抑制するための療法の有効性を評価すること;
11)対象の障害及び/又は疾患状態の進行をモニターすること;
12)対象の障害及び/又は疾患状態を抑制するための組成物又は療法を選択すること;
13)障害及び/又は疾患状態を患った対象を治療すること;
14)対象の障害及び/又は疾患状態を抑制すること;
15)試験化合物が有害である可能性を評価すること;及び
16)障害及び/又は疾患状態の発症のリスクを有する対象においてそれらを予防すること。
【0143】
[000208]スクリーニング法
[000209]動物モデルを作り出すことができ、対象の障害及び/又は疾患状態を治療する又は予防するために有用な療法剤のスクリーニングを可能にするであろう。従って、本方法は対象の障害及び/又は疾患状態を治療する又は予防するための療法剤を同定するために有用である。本方法は、本明細書に記載された方法により作製された動物モデルに候補剤を投与し、候補剤が投与されていない対照動物モデルと比較し、該動物モデルにおける少なくとも一つの応答を評価すること含む。もし、少なくとも一つの応答が症状を軽減し又は発症が遅延したならば、該候補剤は該疾患を治療する又は予防する剤である。
【0144】
[000210]該候補剤は、当該技術分野ですでに公知である薬理的剤であってもよく、又は何らかの薬理学的活性を有する以前には知られていなかった剤でもよい。該剤は、天然に生じたものでも又は実験室で設計されたものでもよい。それらは、微生物、動物又は植物から単離されたものでもよく、又は組換え的に産生された、又は適した化学合成法により合成されてもよい。それらは、小分子、核酸、タンパク質、ペプチド又はペプチド模倣物であることができる。ある態様において、候補剤は、50以上及び約2,500ダルトン未満の分子量を有する小有機化合物である。候補剤は、タンパク質との構造的相互作用に必要な官能基も含む。候補剤は、限定されるわけではないが:ペプチド、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体又はそれらの組み合わせを含む生体分子の中でも発見されている。
【0145】
[000211]候補剤は、合成又は天然化合物のライブラリーを含む広範囲の起源から得られる。例えば、ランダム化オリゴヌクレオチド及びオリゴペプチドの発現を含む、広範囲の有機化合物及び生体分子の無作為及び方向付けられた合成に、多数の手段が利用可能である。もしくは、細菌、真菌、植物及び動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが利用可能であるか、又は容易に産生される。加えて、天然に又は合成的に産生されたライブラリー及び化合物群は、慣用的な化学的、物理的及び生化学的手段を介して容易に修飾され、コンビナトリアルライブラリーを産生するために使用することができる。ある態様において、該候補剤は、非制限例として:生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な並行固相又は液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「一ビーズ一化合物」ライブラリー法;及びアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法によるものを含む、コンビナトリアルライブラリー法分野における多数のアプローチのいずれかを使用して得ることが可能である。
【0146】
[000212]さらなるある態様において、ある種の薬理学的剤を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化のような方向付けられた又は無作為の化学修飾にかけることができ、構造類似体が生成される。
【0147】
[000213]対象の障害及び/又は疾患状態を治療するための療法剤を同定するためと同じ方法を、インビトロ研究から生じたリード化合物/剤を検証するためにも使用し得る。
[000214]該候補剤は、対象の一つ以上の障害及び/又は疾患状態応答経路を上方又は下方調節する剤であることができる。ある態様において、該候補剤は、こうした経路に影響するアンタゴニストであることができる。
【0148】
[000215]障害及び/又は疾患状態を治療するための方法
[000216]本明細書において障害及び/又は疾患状態応答を治療する、抑制する、寛解する又は逆行させるための方法が提供される。本明細書に記載された方法において、シグナル伝達カスケードを妨害する剤が、限定されるわけではないが、こうした合併症がまだ明白ではない、及びすでに少なくとも一つのこうした応答を有する対象のような、それを必要とする個体に投与される。
【0149】
[000217]前の例において、こうした治療は、こうした応答の発生を予防するため及び/又はそれらが生じる程度を軽減するために有用である。後の例において、こうした治療は、こうした応答の発生の程度を軽減する、それらのさらなる発生を予防する、又は該応答を逆行させるために有用である。
【0150】
[000218]ある態様において、該応答カスケードを妨害する剤は、こうした応答に特異的な抗体であることができる。
[000219]バイオマーカー(単数又は複数)の発現
[000220]マーカーの発現は、多くの方法で抑制することが可能であり、非制限例として、マーカー(単数又は複数)の転写、翻訳又は両方を抑制するため、疾患細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供し得ることを含む。もしくは、マーカータンパク質に特異的に結合する抗体、抗体誘導体又は抗体断片をコードし、適切なプロモーター/調節因子領域と機能可能なように連結されたポリヌクレオチドを、該タンパク質の機能又は活性を抑制するであろう細胞内抗体を発生させるために細胞に提供し得る。マーカーの発現及び/又は機能は、マーカータンパク質に特異的に結合する抗体、抗体誘導体又は抗体断片で該疾患細胞を治療することによっても抑制することができる。本明細書に記載された方法を使用し、多様な分子(特に、細胞膜を通過可能な十分に小さい分子を含む)を、マーカーの発現を抑制する又はマーカータンパク質の機能を抑制する分子を同定するためにスクリーニングすることが可能である。そうのように同定された化合物を、対象の疾患細胞を抑制するために該対象に提供し得る。
【0151】
[000221]いずれのマーカー又はマーカーの組み合わせ、ならびに該マーカーと組み合わされたいずれのマーカーも、本明細書に記載された組成物、キット及び方法で使用することができる。一般に、疾患細胞中のマーカーの発現のレベル及び正常結腸系細胞中の同じマーカーの発現のレベル間の相違が可能な限り大きなマーカーを使用するのが望ましい。この相違はマーカーの発現を評価するための方法の検出限界ほど小さくすることができるけれども、相違は少なくとも評価法の標準誤差よりも大きく、及びある態様において、正常組織中の同一マーカーの発現のレベルよりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、100、500、1000倍またはそれ以上の相違が望ましい。
【0152】
[000222]ある種のマーカータンパク質が細胞を取り巻く細胞外空間に分泌されることが認められている。こうしたマーカータンパク質は、組織バイオプシサンプルよりもヒト対象からより容易に集めることができる体液サンプル中で検出することができるので、これらのマーカーが、組成物、キット及び方法のある態様において使用された。加えて、マーカータンパク質の検出のためのインビボ技術には、該タンパク質に対して方向付けられた標識抗体を対象内へ導入することが含まれる。例えば、該抗体を放射性マーカーで標識することができ、対象中でのその存在及び位置を標準イメージング技術により検出し得る。
【0153】
[000223]どの特定のタンパク質が分泌されたタンパク質であるかを決定するため、マーカータンパク質が、例えば、ヒト細胞株のような哺乳類細胞中で発現され、細胞外液を集め、細胞外液中のタンパク質の存在又は不存在を評価する(例えば、該タンパク質に特異的に結合する標識抗体を使用する)。
【0154】
[000224]こうした細胞を含んでいる対象のサンプルを、本明細書に記載された方法において使用できることが理解されるであろう。これらの態様において、該マーカーの発現のレベルは、サンプル中の量(例えば、絶対量又は濃度)を評価することにより評価し得る。該細胞サンプルは、もちろん、サンプル中のマーカー量を評価することに先立って、多様な採取後調製及び保存技術(例えば、核酸及び/又はタンパク質抽出、固定、保存、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離など)にかけることができる。
【0155】
[000225]該マーカーは、細胞から、例えば、呼吸器系、消化器系、血流及び/又は間質腔内へ排出することもできることも理解されるであろう。該排出マーカーは、例えば、痰、BAL、血清、血漿、尿、便などを試験することにより試験し得る。
【0156】
[000226]本組成物、キット及び方法は、発現する細胞の表面上に提示された少なくとも一つの部分を有する、マーカータンパク質の発現を検出するために使用し得る。例えば、全細胞上のこうしたタンパク質を検出するために免疫学的方法を使用することができ、少なくとも一つの細胞外ドメインの存在を予測するために、コンピューター支援配列分析法を使用することができる(即ち、分泌されたタンパク質及び少なくとも一つの細胞表面ドメインを有するタンパク質の両方を含む)。細胞の表面上に提示されている少なくとも一つのタンパク質を有するマーカータンパク質の発現は、細胞を溶解する必要なく検出することができる(例えば、該タンパク質の細胞表面ドメインに特異的に結合する標識抗体を使用して)。
【0157】
[000227]マーカーの発現は、転写された核酸又はタンパク質の発現を検出するための多種多様な方法のいずれかにより評価することができる。こうした方法の非制限例には、分泌された、細胞表面、細胞質又は核タンパク質の検出のための免疫学的方法、タンパク質精製法、タンパク質機能又は活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法及び核酸増幅法が含まれる。
【0158】
[000228]特定の態様において、マーカーの発現は、その正常翻訳後修飾を全て又は一部を受けたマーカータンパク質を含むマーカータンパク質又はそれらの断片と特異的に結合する、抗体(例えば、放射標識された、発色団標識された、フルオロフォア標識された又は酵素標識された抗体)、抗体誘導体(例えば、基質又はタンパク質リガンド対のタンパク質又はリガンドとコンジュゲートされた抗体)又は抗体断片(例えば、一本鎖抗体、単離された抗体高頻度可変ドメインなど)を使用して評価される。
【0159】
[000229]別の特定の態様において、マーカーの発現は、対象サンプル中の細胞からmRNA/cDNA(即ち、転写されたポリヌクレオチド)を調製することにより、及びmRNA/cDNAとマーカー核酸又はそれらの断片と相補的である参照ポリヌクレオチドをハイブリダイズすることにより評価される。cDNAは、参照ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに先立って、多様なポリメラーゼ連鎖反応法のいずれかを使用して増幅されていてもよい;好ましくは、増幅されない。一つ以上のマーカーの発現も同様に、定量的PCRを使用して検出することが可能であり、マーカー(単数又は複数)の発現のレベルが評価される。もしくは、マーカーの突然変異又は変異体(一塩基多型性、欠失など)を検出する任意の多くの方法を対象におけるマーカーの出現を検出するために使用することができる。
【0160】
[000230]関連する態様において、サンプルから得られた転写されたポリヌクレオチドの混合物を、マーカー核酸の少なくとも一部(例えば、少なくとも7、10、15、20、25、30、40、50、100、500、又はそれ以上のヌクレオチド残基)と相補的又は相同的ポリヌクレオチドが固定された支持体と接触させる。もし、相補的又は相同的ポリヌクレオチドが支持体上で別個に検出可能ならば(例えば、異なる発色団又はフルオロフォアを使用して、又は異なって選択された位置に固定されて検出可能)、複数のマーカーの発現のレベルを、単一支持体(例えば、選択された位置に固定されたポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」マイクロアレイ)を使用して同時に評価し得る。一つの核酸と別の核酸のハイブリダイゼーションを含んだマーカー発現の評価方法が使用された場合、ハイブリダイゼーションはストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で実施されることが望ましい。
【0161】
[000231]ある態様において、バイオマーカーアッセイは、質量分析法又は表面プラズモン共鳴法を使用して実施される。多様な態様において、対象の障害及び/又は疾患状態に対して活性な剤を同定する方法は:
a)一つ以上のマーカー又はそれらの誘導体を含んでいる細胞のサンプルを提供すること;
b)こうした細胞から抽出物を調製すること;
c)該抽出物と、マーカー結合を含有する標識核酸プローブを混合すること;及び
d)試験剤の存在又は不存在下でマーカー及び核酸プローブ間の複合体の形成を決定すること;
の一つ以上を含み得る。決定工程は、前記抽出物/核酸プローブ混合物を電気泳動移動度シフトアッセイにかけることを含み得る。
【0162】
[000232]ある態様において、該決定工程は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光に基づいたアッセイ及び超高スループットアッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴法(SPR)又は蛍光相関分光法(FCS)アッセイから選択されるアッセイを含む。こうした態様において、SPRは金属誘電性表面での小さな屈折率変化に敏感であるので、SPRセンサーは生体分子相互作用の直接リアルタイム観察に有用である。SPRは、およそ200nmのSPRセンサー/サンプルインターフェース内の10〜10−6屈折率(RI)単位の変化に感受性である表面技術である。従って、SPR分光法は、センシング層上に堆積された薄い有機フィルムの成長のモニタリングのために有用である。
【0163】
[000233]本組成物、キット及び方法は、一つ以上のマーカーの発現レベルの相違の検出に依存しているので、マーカーの発現のレベルは、少なくとも一つの正常細胞及び結腸癌におかされた細胞中での発現を評価するために使用される方法の最小検出限界よりも有意に大きいことが望まれる。
【0164】
[000234]一つ以上のマーカーを使用する追加の対象サンプルのルーチンスクリーニングにより、ある種のマーカーが、対象の特定の障害及び/又は疾患状態を含む、多様なタイプの細胞中で過剰発現されていることに気付くであろうことが理解される。
【0165】
[000235]加えて、非常に多くの対象サンプルがマーカーの発現について評価され、及びサンプルが得られた個々の対象の結果が関連付けられるので、ある種のマーカーの変化した発現が対象の障害及び/又は疾患状態と強く関連付けられること、及び他のマーカーの変化した発現が他の疾患と強く関連付けられることも確認されるであろう。本組成物、キット、及び方法はそれ故、対象の障害及び/又は疾患状態のステージ、グレード、組織学的型、及び性質の一つ以上を特徴付けるために有用である。
【0166】
[000236]本組成物、キット、及び方法が、対象の障害及び/又は疾患状態のステージ、グレード、組織学的型、及び性質の一つ以上を特徴付けるために使用される場合、マーカー又はマーカーのパネルは、対応するステージ、グレード、組織学的型、又は性質の障害及び/又は疾患状態を患っている少なくとも約20%、及びある態様においては、少なくとも約40%、60%又は80%、及び実質的にすべての対象において陽性結果が得られるように選択される。本発明のマーカー又はマーカーのパネルは、一般集団については約10%より大きな陽性予測値が得られるように選択される(非制限例において、80%より大きなアッセイ特異性と組み合わされる)。
【0167】
[000237]複数のマーカーが本組成物、キット及び方法で使用される場合、対象サンプル中の各マーカーの発現レベルは、単一反応混合物(即ち、各マーカーについて異なった蛍光プローブのような試薬を使用して)か、あるいは一つ以上のマーカーに対応する個々の反応混合物中で、同一タイプの非障害及び/又は非疾患サンプル中の複数のマーカーの各々の発現の正常レベルと比較し得る。一つの態様において、対応する正常レベルと比べ、サンプルにおける複数のマーカーの一つより多くの発現の有意に増加したレベルは、該対象が障害及び/又は疾患状態を患らっていることの指標である。複数のマーカーが使用される場合、2、3、4、5、8、10、12、15、20、30又は50又はそれ以上の個々のマーカーを使用し得る;ある態様において、より少ないマーカーの使用が望ましいであろう。
【0168】
[000238]本組成物、キット及び方法の感度を最大にするため(即ち、対象サンプル中の系起源の細胞に起因する妨害による)、本明細書で使用されるマーカーは、限定された組織分布を有する、例えば、非系組織では通常発現されないマーカーであることが望ましい。
【0169】
[000239]本組成物、キット及び方法は、対象において障害及び/又は疾患状態を発症する増強されたリスクを有する対象及びその医学的アドバイザーに対して特に役に立つであろうことが認められる。障害及び/又は疾患を発症する増強されたリスクを有すると認められる対象には、例えば、こうした障害又は疾患の家族歴を持つ対象が含まれる。
【0170】
[000240]正常ヒト系組織中のマーカーの発現レベルは、多様な方法で評価し得る。一つの態様において、この発現の正常レベルは、正常と思われる系細胞の一部におけるマーカーの発現のレベルを評価することにより、及びこの発現の正常レベルを、異常であると疑われている系細胞の一部における発現のレベルと比較することにより評価される。もしくは、及び特に、さらなる情報が本明細書に記載されたルーチン検査の結果として入手可能であるので、該マーカーの正常発現についての集団平均値を使用することができる。他の態様において、マーカーの発現の「正常」レベルは、非罹患対象から得られた対象サンプル、対象に障害及び/又は疾患状態の発症が疑われる以前の患者サンプル、保存された対象サンプルなどのマーカーの発現を評価することにより決定することができる。
【0171】
[000241]本明細書において、サンプル(例えば、保存された組織サンプル又は対象から得られたサンプル)中の障害及び/又は疾患状態細胞の存在を評価するための組成物、キット及び方法も提供される。これらの組成物、キット及び方法は、上記のものと実質的に同一であるが、但し必要な場合、該組成物、キット及び方法は、対象サンプル以外のサンプルでの使用に適用される。例えば、使用されるべきサンプルがパラフィン処理された保存ヒト組織サンプルである場合、該サンプル中でのマーカー発現のレベルを評価するため、組成物中、キット中、又は方法において化合物の比を調節する必要があろう。
【0172】
[000242]キット及び試薬
[000243]該キットは、疾患細胞(例えば、対象サンプルのようなサンプル中の)の存在を評価するために有用である。該キットは、複数の試薬を含み、その各々は、マーカー核酸又はタンパク質と特異的に結合することが可能である。マーカータンパク質との結合に適した試薬には、抗体、抗体誘導体、抗体断片などが含まれる。マーカー核酸(例えば、ゲノムDNA、mRNA、スプライスされたmRNA、cDNAなど)との結合に適した試薬には、相補的核酸が含まれる。例えば、該核酸試薬は、支持体に固定化されたオリゴヌクレオチド(標識又は非標識)、支持体と結合されていない標識オリゴヌクレオチド、PCRプライマーの対、分子指標プローブなどを含むことができる。
【0173】
[000244]該キットは、本明細書に記載の方法を実行するために有用な追加の成分を場合により含んでいてもよい。例としては、該キットは、相補的核酸のアニーリングのため、抗体とそれが特異的に結合するタンパク質との結合のために適した液体(例えば、SSC緩衝液)、一つ以上のサンプル区画、該方法の実施を記述している使用説明書、正常結腸システム細胞のサンプル、結腸癌関連疾患細胞のサンプルなどを含むことができる。
【0174】
[000245]抗体を産生する方法
[000246]対象が障害及び/又は疾患状態を患らっているかどうかを評価するために有用な抗体を産生する、単離されたハイブリドーマを作製する方法も本明細書において提供される。この方法において、マーカータンパク質の全体又はセグメントを含むタンパク質又はペプチドが合成され又は単離される(例えば、それが発現される細胞からの精製により、又はインビボ又はインビトロでの、該タンパク質ペプチドをコードする核酸の転写及び翻訳により)。脊椎動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ又はヒツジのような哺乳類を、該タンパク質又はペプチドを使用して免疫化する。該脊椎動物が該タンパク質又はペプチドに対して強い免疫応答を示すように、少なくとも追加の一回、場合により(及び好ましくは)免疫化してもよい。免疫化された脊椎動物の脾臓細胞を単離し、多様な方法のいずれかを使用して、不死化細胞株と融合させてハイブリドーマを形成させる。このようにして形成されたハイブリドーマは、標準法を使用してスクリーニングし、該マーカータンパク質又はそれらの断片と特異的に結合する抗体を産生する、一つ以上のハイブリドーマを同定する。この方法により作製されたハイブリドーマ、及びこうしたハイブリドーマを使用して作製された抗体も本明細書で提供される。
【0175】
[000247]有効性評価の方法
[000248]疾患細胞を抑制するための試験化合物の効力を評価する方法も本明細書において提供される。上記のように、該マーカーの発現のレベルの相違は、対象細胞の異常状態と相関する。ある種のマーカーの、発現のレベルの変化はこうした細胞の異常状態により生じたようであるが、他のマーカーの、発現のレベルにおける変化が、これらの細胞の異常状態を誘導し、維持し及び促進することも同様に認められている。それ故、対象の障害及び/又は疾患状態を抑制する化合物は、一つ以上の該マーカーの発現のレベルを、そのマーカー発現の正常レベルにより近いレベル(即ち、正常細胞におけるマーカの発現レベル)への変化を起こすであろう。
【0176】
[000249]この方法は従って、試験化合物の存在下で維持された第一の細胞サンプルにおけるマーカーの発現、及び試験化合物の不存在下で維持された第二の結腸細胞サンプルにおけるマーカーの発現を比較することを含む。試験化合物の存在下におけるマーカーの有意に減少した発現は、試験化合物が関連疾患を抑制することの指標である。該細胞サンプルは例えば、対象から得られた正常細胞の単一サンプルの一部、対象から得られた正常細胞のプールされたサンプル、正常細胞株の細胞、対象から得られた関連疾患細胞の単一サンプルの一部、対象から得られた関連疾患細胞のプールされたサンプル、関連疾患細胞株の細胞などであることができる。
【0177】
[000250]一つの態様において、該サンプルは対象から得られた癌関連疾患細胞であり、多様な癌関連疾患を抑制することについて有効であると信じられている複数の化合物を、対象の癌関連疾患を最もよく抑制するであろう化合物を同定するために試験した。
【0178】
[000251]この方法は同様に、対象の関連疾患を抑制するための療法の効力を評価するために使用することができる。この方法において、対(一方は療法を受けさせ、他方は療法を受けさせなかった)のサンプル中の一つ以上のマーカーの発現のレベルを評価した。試験化合物の効力を評価する方法として、もし該療法がマーカーの発現の有意に低いレベルを誘導すれば、該療法は癌関連疾患を抑制について有効である。上記のように、選択された対象からのサンプルがこの方法で使用されるなら、該対象の癌関連疾患を抑制するために最も有効であるらしい療法を選択するため、代替療法をインビトロで評価することが可能である。
【0179】
[000252]上記のように、ヒト細胞の異常状態は、該マーカーの発現のレベルの変化と相関する。試験化合物が有害な可能性を評価する方法も提供される。この方法は、試験化合物の存在下又は不存在下で、ヒト細胞の分離した一定分量を維持することを含む。各一定分量中のマーカーの発現が比較される。試験化合物の存在下で維持された一定分量におけるマーカー発現の有意に高いレベル(試験化合物の不存在下で維持された一定分量と比べて)は、試験化合物が有害である可能性を有する指標である。多様な試験化合物の相対的有害可能性は、発現のレベルが増強された又は抑制されたマーカーの数を比較することにより、関連マーカーの発現レベルの増強又は抑制の程度を比較することにより、又は両方を比較することにより、評価し得る。多様な側面が、以下の副節により詳細に説明されている。
【0180】
[000253]単離されたタンパク質及び抗体
[000254]一つの側面は、単離されたマーカータンパク質及びそれらの生物学的に活性な部分、ならびに、マーカータンパク質又はそれらの断片に対して方向付けられた抗体を上昇させるための免疫原として使用するのに適したポリペプチド断片に関する。一つの態様において、天然のマーカータンパク質は、標準タンパク質精製技術を使用する、適切な精製スキームにより、細胞又は組織源から単離し得る。別の態様において、マーカータンパク質の全体又はセグメントを含むタンパク質又はペプチドが、組換えDNA技術により産生される。組換え発現の代わりに、こうしたタンパク質又はペプチドは、標準ペプチド合成技術を使用して化学的に合成し得る。
【0181】
[000255]「単離された」又は「精製された」タンパク質又はそれらの生物学的に活性な部分とは、タンパク質が由来する細胞又は組織源からの細胞材料又は他の夾雑タンパク質を含んでいないか、又は化学的に合成された場合、化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含んでいない。用語「実質的に細胞材料を含んでいない」には、該タンパク質が単離された又は組換え的に産生された細胞の細胞性成分から分離されたタンパク質の調製物が含まれる。従って、実質的に細胞材料を含んでいないタンパク質には、約30%、20%、10%、又は5%(乾燥重量による)未満の異種タンパク質(本明細書において夾雑タンパク質とも称される)を有するタンパク質の調製試料が含まれる。
【0182】
[000256]タンパク質又はそれらの生物学的に活性な部分が組換え的に産生される場合、培養培地を実質的に含んでいないのも好ましい、即ち、培養培地は、タンパク質調製試料の約20%、10%、又は5%未満の量に相当する。タンパク質が化学合成により生成される場合、化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含んでいないのが好ましく、即ち、それは、該タンパク質の合成に関与した化学的前駆体又は他の化学物質から分離されている。従って、こうしたタンパク質の調製試料は、約30%、20%、10%、5%(乾燥重量)未満の、化学的前駆体又は目的のポリペプチド以外の化合物しか含んでいない。
【0183】
[000257]マーカータンパク質の生物学的に活性な部分には、マーカータンパク質のアミノ酸配列と十分に同一である又はマーカータンパク質のアミノ酸配列から誘導されたアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれ、それは、完全長タンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、及び対応する完全長タンパク質の少なくとも一つの活性を示す。典型的には、生物学的に活性な部分は対応する完全長タンパク質の少なくとも一つの活性を有するドメイン又はモチーフを含む。マーカータンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、10、25、50、100又はそれ以上のアミノ酸長であるポリペプチドであり得る。さらに、マーカータンパク質の他の領域が欠損する他の生物学的に活性な部分は、組換え技術により調製することが可能であり、マーカータンパク質の天然形態の機能活性の一つ以上を評価する。ある態様において、有用なタンパク質は、これらの配列の一つと実質的に同一であり(例えば、少なくとも約40%、及びある態様において、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%)、天然のアレル変異又は変異発生によりアミノ酸配列は異なっているが、対応する天然に存在するマーカータンパク質の機能的活性を保持している。
【0184】
[000258]加えて、マーカータンパク質のセグメントのライブラリーを、スクリーニング及び続いての変異体マーカータンパク質又はそれらのセグメントの選択のためのポリペプチドの変化に富んだ集団を生成するために使用し得る。
【0185】
[000259]予測医薬
[000260]予測医薬の分野における動物モデル及びマーカーの使用も本明細書において提供され、診断アッセイ、予後アッセイ、薬理ゲノミクス及び臨床治験のモニタリングが予後(予測)目的のために使用され、それにより個体を予防的に治療する。従って、個体が特定の障害及び/又は疾患を発症するリスクを有するかどうかを決定するため、一つ以上のマーカータンパク質又は核酸の発現のレベルを決定するための診断アッセイも本明細書において提供される。こうしたアッセイは、予後の又は予測目的のために使用され、それにより該障害及び/又は疾患の発症に先立って個体を予防的に治療する。
【0186】
[000261]別の側面において、該方法は少なくとも同一個体の定期的スクリーニングに有用であり、個体の発現パターンを変化させる化学物質又は毒物に、個体が暴露されたかどうかが判る。
【0187】
[000262]さらに別の側面は、臨床治験におけるマーカーの発現又は活性に対する、障害及び/又は疾患を抑制するために又はいずれか他の障害を治療するため又は予防するために(例えば、こうした治療が有することができる何らかの系の効果を理解するために)投与された剤(例えば、薬剤又は他の化合物)の影響をモニタリングすることに関する。
【0188】
[000263]医薬組成物
[000264]該化合物は、適した医薬担体中、局所的、局部的又は全身的投与のための製剤であることができる。E. W. Martin (Mark Publishing Company, 1975) によるRemington’s Pharmaceutical Sciences, 15th Edition、は典型的な坦体及び製造法を記載している。該化合物は、細胞への標的化のための生分解性又は非生分解性ポリマー又はタンパク質又はリポソームから形成された、適した生体適合性マイクロカプセル、微粒子又はミクロスフェア内に被包することもできる。こうしたシステムは、当業者にはよく知られており、適切な核酸での使用に最適化することができる。
【0189】
[000265]核酸送達のための多様な方法が、例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York; 及び Ausubel et al., 1994, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York、に記載されている。こうした核酸送達システムは、限定されるわけではないが例として、「裸の」核酸のような「裸の」形態か、又はカチオン性分子又はリポソーム形成脂質との複合体のような、又はベクターの成分又は医薬組成物の成分として、送達に適したビヒクル中に配合されている、所望の核酸を含む。核酸送達システムは、細胞とそれを直接接触させることによるように直接的に、又はいずれかの生物学的プロセスの作用を介して間接的に提供し得る。
【0190】
[000266]局所投与のための製剤は、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレー、液体及び粉体を含むことができる。慣用的医薬坦体、水性、粉体又は油性基剤、又は増粘剤を必要に応じ使用し得る。
【0191】
[000267]例えば、関節内(関節中に)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内及び皮下経路のような非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有できる水性及び非水性の等張な無菌注射液、及び懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、分散剤、安定剤及び保存剤を含有できる水性及び非水性滅菌懸濁液、溶液又は乳剤が含まれる。注射用製剤は、単位投与剤形、例えば、添加された保存剤を有するアンプル又は多用量容器、で提供することができる。当業者は、必要以上の実験を行うことなく、化合物を調製する及び配合するための種々のパラメータを容易に決定し得る。化合物は、単独又は他の適した成分と組み合わせて使用し得る。
【0192】
[000268]一般に、核酸を含む化合物の投与方法は、当業者には公知である。特に、核酸療法にすでに使用中の投与の経路は、現在使用中の製剤とともに、選択された核酸の好ましい投与経路及び製剤を提供し、特定の製剤、治療されている対象の状態の重症度、及び療法的効力に必要とされる用量のような因子にもちろん依存するであろう。本明細書で一般的に使用されるように、「有効量」とは、化合物を受け取っていないマッチした対象と比較し、製剤が投与された対象において、障害の一つ以上の症状を治療できる、障害の一つ以上の症状の進行を逆転できる、障害の一つ以上の症状の進行を停止できる、又は障害の一つ以上の症状の発生を防止できる量である。化合物の実際の有効量は、利用されている具体的化合物又はそれらの組み合わせ、配合された特定の組成物、投与の様式、及び個体の年齢、体重、状態及び治療されている症状又は状態の重症度に従って変化し得る。
【0193】
[000269]当業者には既知のいずれかの許容できる方法を、製剤を対象に投与するために使用することができる。投与は、治療されている状態に依存し、局部的(即ち、特定の領域、生理学的システム、組織、器官又は細胞タイプへの)又は全身的であることができる。
【0194】
[000270]薬理ゲノミクス
[000271]該マーカーは、薬理ゲノミクスマーカーとしても有用である。本明細書で使用される「薬理ゲノミクスマーカー」は、その発現レベルが、対象における特定の臨床薬剤応答又は感受性と相関する客観的な生化学的マーカーである。薬理ゲノミクスマーカー発現の存在又は量は、対象の予測応答、及びより詳細には、特定の薬剤又は薬剤のクラスによる療法に対する対象の腫瘍の予測応答に関連する。対象における一つ又はそれより多くの薬理ゲノミクスマーカーの発現の存在又は量を評価することにより、対象に最も適切である、又はより大きな成功度を有すると予測される薬剤療法を選択することができる。
【0195】
[000272]臨床治験のモニタリング
[000273]マーカー発現のレベルに対する剤(例えば、薬剤化合物)の影響をモニタリングすることは、基礎的薬剤スクリーニングのみでなく、臨床治験においても適応し得る。例えば、マーカー発現に影響する剤の有効性は、結腸癌関連疾患の治療を受けている対象の臨床治験でモニターし得る。
【0196】
[000274]一つの非制限的態様において、本発明は剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣剤、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、又は他の薬剤候補)による対象の治療の有効性をモニタリングするための方法を提供し、
i)剤の投与に先だって、対象から投与前サンプルを得ること;
ii)投与前サンプル中の、一つ以上の選択されたマーカーの発現のレベルを検出すること;
iii)対象から一つ以上の投与後サンプルを得ること;
iv)投与後サンプル中のマーカー(単数又は複数)の発現のレベルを検出すること;
v)投与前サンプル中のマーカー(単数又は複数)の発現のレベルと、投与後サンプル中のマーカー(単数又は複数)の発現のレベルを比較すること;及び
vi)それに合わせて、対象への剤の投与を変化させること;の工程を含む。
【0197】
[000275]例えば、治療の過程間のマーカー遺伝子(単数又は複数)の増加した発現は、有効ではない用量を示し、望ましくは用量を増加させる。反対に、マーカー遺伝子(単数又は複数)の減少した発現は、有効な治療を示し、用量を変化させる必要はない。
【0198】
[000276]電子装置可読媒体、システム、配列及びそれを用いた方法
[000277]本明細書で使用される「電子装置可読媒体」とは、電子装置により読み出し及び直接的にアクセスし得るデータ又は情報を保存する、保持する又は含有する任意の適した媒体を指す。こうした媒体は、限定されるわけではないが、フロッピー(登録商標) ディスク、ハードディスク記憶媒体、及び磁気テープのような磁気記憶媒体;コンパクトディスクのような光学記憶媒体;RAM、ROM、EPROM、EEPROMなどのような電子記憶媒体;及び一般的なハードディスク及び磁気/光学記憶媒体のようなこれらのカテゴリーの混成物を含み得る。媒体は本明細書に記載されたように、それらにマーカーが記録されるよう適合又は設定されている。
【0199】
[000278]本明細書で使用される用語「電子装置」とは、データ又は情報を保存するよう設計された又は適合された任意の適切な演算又は処理装置および他の装置を含むことを意味する。本発明での使用に適した電子装置の例には、独立型コンピューター装置;ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)インターネット、イントラネット及びエクストラネットを含むネットワーク;携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ポケットベルなどのような電子機器;及びローカル及び分散型処理システムが含まれる。
【0200】
[000279]本明細書で使用される「記録される」とは、電子装置可読媒体上に情報を保存する又はエンコードするためのプロセスを指す。当業者は、本明細書に記載されたマーカーを含む器具を生成するため、媒体上に情報を記録するための任意の方法を容易に採択し得る。
【0201】
[000280]多様なソフトウエアプログラム及びフォーマットを、本発明のマーカー情報を該電子装置可読媒体上に保存するために使用し得る。無数のデータ処理装置構成フォーマット(例えば、テキストファイル又はデータベース)を、その上にマーカーが記録された媒体を得る又は作製するために採用することができる。マーカーを可読なフォームで供給することで、マーカー配列情報にさまざまな目的でごく普通にアクセスし得る。例えば、当業者は標的の配列又は標的の構造モチーフと、データ保存手段内に保存された配列情報を比較するため、可読フォームのヌクレオチド又はアミノ酸配列を使用し得る。特定の標的配列又は標的モチーフに一致する、配列の断片又は領域を同定するために検索手段が用いられる。
【0202】
[000281]従って、対象が癌関連疾患あるいは癌関連疾患の素因を有しているかどうかを決定する方法を実行する命令を保持するための媒体も提供され、ここで、該方法は、マーカーの存在又は不存在を決定すること、そしてマーカーの存在又は不存在に基づいて、該対象が癌関連疾患又は癌関連疾患への素因を有しているかどうかを決定すること、及び/又は癌関連疾患又は前癌関連疾患状態のための特定の治療を推奨することの工程を含む。
【0203】
[000282]電子システム及び/又はネットワークにおいて、対象が癌関連疾患又はマーカーに関連する癌関連疾患の素因を有するかどうかを決定するための方法も本明細書において提供され、該方法は、マーカーの存在又は不存在を決定すること、そしてマーカーの存在又は不存在に基づいて、該対象が特定の障害及び疾患及び/又はこうした障害及び疾患への素因を有するかどうかを決定すること、及び/又はこうした障害及び疾患及び/又はこうした前癌関連疾患状態に対する特定の治療を推奨すること、の工程を含む。該方法はさらに、該対象に関連する表現型情報を受け取ること、及び/又は該対象に関連するネットワーク表現型情報を獲得すること、の工程を含む。
【0204】
[000283]対象が障害及び/又は疾患又はマーカーに関連する障害及び/又は疾患への素因を有するかどうかを決定するためのネットワーク方法も本明細書において提供され、該方法は、マーカーに関連する情報を受け取ること、対象に関連する表現型情報を受け取ること、マーカー及び/又は障害及び/又は疾患に対応するネットワークから情報を獲得すること、そして一つ以上の表現型情報、該マーカー、及び該獲得した情報に基づいて、該対象が障害及び/又は疾患又はそれらへの素因を有するかどうかを決定すること、の工程を含む。該方法は、該障害及び/又は疾患又はそれらへの素因のための特定の治療を推奨する工程をさらに含むことができる。
【0205】
[000284]対象が障害及び/又は疾患又はそれらへの素因を有するかどうかを決定するためのビジネスモデルも本明細書において提供され、該方法は、該マーカーに関連する情報を受け取ること、該対象に関連する表現型情報を受け取ること、該マーカー及び/又は障害及び/又は疾患に対応するネットワークから情報を獲得すること、そして一つ以上の表現型情報、該マーカー、及び該獲得した情報に基づいて、該対象が障害及び/又は疾患又はそれらへの素因を有するかどうかを決定すること、の工程を含む。該方法は、それらへの特定の治療を推奨する工程をさらに含むことができる。
【0206】
[000285]アレイ中で一つ以上の遺伝子の発現をアッセイするために使用し得るアレイも本明細書において提供される。一つの態様において、該アレイは、組織における遺伝子発現をアッセイするために使用することが可能であり、アレイ中の遺伝子の組織特異性が確認される。このようにして、約7000までの又はそれ以上の遺伝子が、発現について同時にアッセイし得る。このことは、一つ以上の組織で特異的に発現された遺伝子の集団を示しているプロファイルが展開されるのを可能にする。
【0207】
[000286]こうした定性的決定に加え、遺伝子発現の定量化が本明細書において提供される。従って、組織特異性のみならず、組織中の遺伝子の集団の発現レベルも確認可能である。従って、遺伝子は、それらの組織発現それ自体及びその組織中での発現のレベルに基づいてグループ化し得る。このことは、例えば、組織間又は組織中での遺伝子発現の関係を確認することにおいて有用である。従って、一つの組織を撹乱させることが可能であり、そして第二の組織中の遺伝子発現に対する影響を決定し得る。これに関連して、生物学的刺激に応答した、別の細胞タイプに対する一つの細胞タイプの影響を決定し得る。
【0208】
[000287]こうした決定は、例えば、遺伝子発現レベルでの細胞間相互作用の効果を知る上で有用である。もし一つの剤が、一つの細胞タイプを治療するために療法的に投与されて、別の細胞タイプに望まれない効果を有しているならば、本方法は、望まれない効果の分子基盤を決定するアッセイを提供し、そしてそれ故、相殺する剤を同時投与する、さもなければ望まれない効果を治療する機会を提供する。同様に、単一細胞タイプ内でも、望まれない生物学的効果を分子レベルで決定し得る。それ故、標的遺伝子以外の発現に対する、一つの剤の効果を確認及び相殺することが可能である。
【0209】
[000288]別の態様において、該アレイは、アレイ中で一つ以上の遺伝子の発現の時間経過をモニターするために使用し得る。このことは、本明細書に開示したように、多様な生物学的状況で起こり得る;例えば、障害及び/又は疾患の発症、それらの進行、及びそれらに関連する細胞形質転換のようなプロセス。
【0210】
[000289]該アレイは、同一細胞における、又は異なった細胞における遺伝子の発現又は他の遺伝子の発現の効果を確認するためにも有用である。このことは、例えば、もし最終又は下流標的を調節できないならば、治療介入のための代替分子標的の選択を提供する。
【0211】
[000290]該アレイは、正常及び異常細胞における一つ又はそれより多くの遺伝子の発現差異パターンを確認するためにも有用である。このことは、診断又は治療介入のための分子標的として働くことができる遺伝子の集団を提供する。
【0212】
[000291]代理マーカー
[000292]該マーカーは、一つ以上の障害又は疾患状態のための、又はそれらへ導く状態のための代理マーカーとして働くことができる。本明細書で使用される「代理マーカー」とは、疾患又は障害の不存在又は存在と、又は疾患又は障害の進行と相関する、客観的生化学的マーカーである。こうしたマーカーの存在又は量は、該疾患とは独立である。それ故、これらのマーカーは、治療の特定の経過が、疾患状態又は障害を軽減することに有効であるかどうかを示すために働くことができる。代理マーカーは、疾患状態又は障害の存在又は程度が標準方法論ではアクセスすることが困難である場合、又は危険な臨床的エンドポイントに到達する可能性がある前に疾患進行の評価が望まれる場合に特別に使用される。
【0213】
[000293]該マーカーは、薬力学的マーカーとしても有用である。本明細書で使用される「薬力学的マーカー」は、薬剤効果と特異的に相関する客観的生化学的マーカーである。薬力学的マーカーの存在又は量は、薬剤が投与される疾患状態又は障害とは関係しない;それ故、該マーカーの存在又は量は、対象中の薬剤の存在又は活性を示す。例えば、薬力学的マーカーは、生物学的組織内において当該薬剤のレベルに関連して該マーカーが発現もしくは転写され、または発現もしくは転写されない点において、生物学的組織における当該薬剤の濃度を示すことができる。このようにして、該薬剤の分布又は取り込みを薬力学的マーカーによりモニターすることができる。同様に、薬力学的マーカーの存在または量は薬剤の代謝産物の存在または量に比例することができるので、該マーカーの存在または量は、インビボにおける当該薬剤の相対的な分解率を示す。
【0214】
[000294]薬力学的マーカーは、特に薬剤が低用量で投与される場合、薬剤効果の検出の感度を増加させることにおいて特に有用である。少量の薬剤でさえも、マーカーの転写又は発現を複数回活性化するのに十分であることができるため、増幅されたマーカーは多量にあり、それは薬剤それ自身よりも容易に検出可能である。また、該マーカーは、マーカー自身の性質によってさらに容易に検出されることができる;例えば、本明細書に記載した方法を使用し、抗体をタンパク質マーカーの免疫に基づいた検出システムで用いることができ、又はマーカー特異的放射標識プローブをmRNAマーカーの検出に使用することができる。さらに、薬力学的マーカーの使用は、直接観察可能な範囲を超えた薬剤治療によるリスクの機構に基づいた予測を与えることができる。
【0215】
[000295]試験のためのプロトコル
[000296]障害及び/又は疾患のための試験法は、例えば、対象由来の生物学的サンプル中の、各マーカー遺伝子の発現レベルを時間とともに測定すること、および対照生物学的サンプル中のマーカー遺伝子とレベルを比較することを含むことができる。
【0216】
[000297]マーカー遺伝子が本明細書に記載された遺伝子の内の一つで、発現レベルが異なって発現される場合(例えば、対照の場合より高く又は低く)、対象は障害及び/又は疾患の影響を受けていると判断される。マーカー遺伝子の発現レベルが許容範囲内にある場合は、対象がそれらに影響を受けていることはありそうもない。
【0217】
[000298]発現レベルを比較するため、対照についての標準値を、対照におけるマーカー遺伝子の発現レベルを測定することにより前もって決定できる。例えば標準値は、上述した対照におけるマーカー遺伝子の発現レベルに基づいて決定し得る。例えば、ある態様において、許容範囲を標準値に基づいて±2S.D.とする。標準値が決定されたら、試験法は、対象からの生物学的サンプル中の発現レベルのみを測定すること、その値と対照について決定された標準値を比較することにより実施することができる。
【0218】
[000299]マーカー遺伝子の発現レベルには、マーカー遺伝子からmRNAへの転写、およびタンパク質への翻訳が含まれる。従って、障害及び/又は疾患を試験する一つの方法は、マーカー遺伝子に相当するmRNAの発現強度、又はマーカー遺伝子によりコードされているタンパク質の発現レベルの比較に基づいて実施される。
【0219】
[000300]障害及び/又は疾患について試験することにおけるマーカー遺伝子の発現レベルの測定は、様々な遺伝子分析法に従って実施することができる。具体的には、例えばこれらの遺伝子とハイブリダイズする核酸をプローブとして使用するハイブリダイゼーション技術、あるいはマーカー遺伝子とハイブリダイズするDNAをプライマーとして用いる遺伝子増幅技術を使用し得る。
【0220】
[000301]試験に用いるプローブ又はプライマーは、該マーカー遺伝子のヌクレオチド配列に基づいて設計し得る。それぞれのマーカー遺伝子のヌクレオチド配列に対する識別番号が、本明細書に記載されている。
【0221】
[000302]さらに、高等生物は一般に高い頻度で遺伝子多型を伴うことを理解すべきである。スプライシングプロセスの間に互いに異なったアミノ酸配列を含むアイソフォームを産生する多くの分子もある。マーカー遺伝子と同様の活性を有する結腸癌関連疾患に関連するいずれの遺伝子も、たとえそれが遺伝子多型による又はアイソフォームであることによるヌクレオチド配列相違を有しても、マーカー遺伝子に含まれる。
【0222】
[000303]マーカー遺伝子はヒトに加え、他の種の相同体を含むことができることも理解すべきである。従って、特に規定しない限り、表現「マーカー遺伝子」は、種に固有のマーカー遺伝子の相同体、又は個体内に導入されている外来のマーカー遺伝子を指す。
【0223】
[000304]「マーカー遺伝子の相同体」は、ストリンジェント条件下でプローブとしてヒトマーカー遺伝子にハイブリダイズできる、ヒト以外の種由来の遺伝子も指すことを理解すべきである。こうしたストリンジェント条件は、実験的に又は経験的に同様のストリンジェンシーを生み出す適切な条件を選択できる当業者においては公知である。
【0224】
[000305]マーカー遺伝子のヌクレオチド配列、又はマーカー遺伝子のヌクレオチド配列の相補鎖に相補的なヌクレオチド配列を含み、少なくとも15のヌクレオチドを有するポリヌクレオチドは、プライマー又はプローブとして使用し得る。それ故、「相補鎖」は、他の鎖に関する二本鎖DNAの一つの鎖を意味し、A:T(RNAについてはU)及びG:C塩基対から構成される。
【0225】
[000306]さらに、「相補的」は少なくとも15の連続したヌクレオチド領域に対して完全に相補的なもののみでなく、場合によっては少なくとも40%、場合によっては50%、場合によっては60%、場合によっては70%、少なくとも80%、90%、及び95%又はそれ以上のヌクレオチド配列相同性を有するものも意味する。ヌクレオチド配列間の相同性の程度はBLASTなどのアルゴリズムによって決定し得る。
【0226】
[000307]こうしたポリヌクレオチドは、マーカー遺伝子を検出するためのプローブ又はマーカー遺伝子を増幅するためのプライマーとして有用である。プライマーとして用いる場合、該ポリヌクレオチドは通常15bp〜100bp、及びある態様においてはヌクレオチドの15bp〜35bpを含む。プローブとして用いる場合、DNAはマーカー遺伝子の全ヌクレオチド配列(又はそれの相補鎖)、又は少なくとも15bpのヌクレオチドを有するそれの部分的配列を含む。プライマーとして用いる場合、3’領域はマーカー遺伝子に対して相補的でなくてはならないが、一方、5’領域は制限酵素認識配列又はタグと連結し得る。
【0227】
[000308]「ポリヌクレオチド」はDNA又はRNAのどちらでもよい。これらのポリヌクレオチドは合成又は天然起源のどちらでもよい。また、ハイブリダイゼーション用のプローブとして用いるDNAは通常標識化されている。当事者はこうした標識化法を容易に理解している。本明細書で、用語「オリゴヌクレオチド」とは、相対的に少ない重合度のポリヌクレオチドを意味する。オリゴヌクレオチドはポリヌクレオチドに含まれている。
【0228】
[000309]ハイブリダイゼーション法を用いた障害及び/又は疾患のための試験は、例えばノーザンハイブリダイゼーション、ドットブロットハイブリダイゼーション、又はDNAマイクロアレイ技術などを用いて実施し得る。さらに、RT−PCR法のような遺伝子増幅技術も使用できる。RT−PCRの遺伝子増幅段階の間にPCR増幅モニタリング法を使用することにより、マーカー遺伝子の発現のより定量的分析を達成し得る。
【0229】
[000310]PCR遺伝子増幅モニタリング法において、検出ターゲット(DNA又はRNAの逆転写体)は蛍光色素及び蛍光を吸収する消光剤で標識したプローブとハイブリダイズされる。PCRが進行してTaqポリメラーゼが5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有するプローブを分解すると、蛍光色素及び消光剤は互いに引き離れ、蛍光が検出される。蛍光はリアルタイムで検出される。標的のコピー数が既知である標準サンプルを同時に測定することにより、PCR増幅が線形の場合、対象サンプル中の標的のコピー数をサイクル数で求めることができる。また、当業者はPCR増幅モニタリング法を、いずれかの適切な手法を使用して実行し得ることを認識している。
【0230】
[000311]結腸癌関連疾患の試験法は、マーカー遺伝子によりコードされたタンパク質を検出することでも実行し得る。以後、マーカー遺伝子によりコードされたタンパク質を「マーカータンパク質」と記載する。こうした試験法として、例えば、各マーカー遺伝子に結合する抗体を使用し、ウエスタンブロッティング法、免疫沈降法、及びELISA法を用いることができる。
【0231】
[000312]マーカータンパク質に結合する検出に使用された抗体は、如何なる適切な技術でも産生できる。また、マーカータンパク質を検出するため、こうした抗体を適切に標識できる。もしくは、抗体を標識する代わりに、抗体に特異的結合する物質、例えば、プロテインA又はプロテインGを標識化してマーカータンパク質を間接的に検出できる。より具体的には、こうした検出法はELISA法を含み得る。
【0232】
[000313]抗原として使用したタンパク質又はそれの部分的ペプチドを、例えば、マーカー遺伝子又はその一部を発現ベクターに挿入し、構成物を適切な宿主細胞に導入して形質転換体を産生し、形質転換体を培養して組み換えタンパク質を発現させ、発現された組み換えタンパク質を培養物または培地の上清から精製する。もしくは、遺伝子によりコードされたアミノ酸配列、又は完全長cDNAによりコードされたアミノ酸配列の一部を含むオリゴペプチドを免疫原として用いるために化学合成した。
【0233】
[000314]さらに、結腸癌関連疾患のための試験は、マーカー遺伝子の発現レベルの指標のみならず、生物学的サンプル中のマーカータンパク質の活性の指標として使用して実施し得る。マーカータンパク質の活性とは、タンパク質固有の生物学的活性を意味する。多様な方法が、各タンパク質の活性を測定するために使用し得る。
【0234】
[000315]症状が示されているにも関わらず、対象が定期試験において障害及び/又は疾患に罹患していないと診察されても、こうした対象が障害及び/又は疾患に罹患しているかどうかは、本明細書に記載された方法に従って試験を実施することにより容易に決定し得る。
【0235】
[000316]より具体的には、ある態様において、該マーカー遺伝子が本明細書に記載された遺伝子の一つである場合、その症状が障害及び/又は疾患への少なくとも感受性を示唆する対象における発現レベルの増加又は減少は、症状が主としてそれらにより引き起こされていることを示す。
【0236】
[000317]加えて、本試験は障害及び/又は疾患が対象において改善しているかどうかを決定する上で有用である。言い換えると、本明細書に記載された方法は、それらのための治療の療法効果を判断するために使用し得る。さらに、該マーカー遺伝子が本明細書に記載された遺伝子の一つの場合、それらに罹患していると診断された対象における該マーカー遺伝子の発現レベルの増加又は減少は、疾病がより進行していることを暗示する。
【0237】
[000318]障害及び/又は疾患の重症度及び/又は感受性は、発現レベルの相違に基づいても決定することができる。例えば、該マーカー遺伝子が本明細書に記載された遺伝子の一つの場合、該マーカー遺伝子の発現レベルの増加の程度は、障害及び/又は疾患の存在及び/又重症度と相関する。
【0238】
[000319]動物モデル
[000320]別の側面において、一つ以上のマーカー遺伝子又は該マーカー遺伝子と機能的に均等な遺伝子の発現レベルが動物モデルにおいて上昇されている、障害及び/又は疾患のための動物モデルを作製し得る。本明細書で使用される「機能的に均等な遺伝子」とは、一般的に、該マーカー遺伝子によりコードされたタンパク質の既知の活性と同様の活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。機能的に均等な遺伝子の代表的例には、該動物に固有である対象動物のマーカー遺伝子のカウンターパートが含まれる。
【0239】
[000321]動物モデルは、障害及び/又は疾患による生理学的変化を検出するために有用である。ある態様において、該動物モデルは、マーカー遺伝子の追加の機能を明らかにするため、及び標的がマーカー遺伝子である薬剤を評価するために有用である。
【0240】
[000322]動物モデルは、カウンターパート遺伝子の発現レベルを制御することにより、又はカウンターパート遺伝子を投与することにより作製し得る。該方法は、本明細書に記載した遺伝子のグループから選択される遺伝子の発現レベルを制御することにより、動物モデルを作製することを含み得る。別の態様において、該方法は、本明細書に記載された遺伝子によりコードされたタンパク質を投与することにより、又は該タンパク質に対する抗体を投与することにより、動物モデルを作製することを含み得る。ある他の態様において、該マーカーが適切な方法を使用して測定できるように、該マーカーを過剰発現させることが可能であることも理解すべきである。別の態様において、動物モデルは、遺伝子のこうした群より選択される遺伝子を導入することにより、又はこうした遺伝子によりコードされたタンパク質を投与することにより作製し得る。別の態様において、障害及び/又は疾患は、遺伝子のこうした群より選択される遺伝子の発現を、又はこうした遺伝子によりコードされたタンパク質の活性を抑制することにより誘発し得る。アンチセンス核酸、リボザイム、又はRNAiが該発現を抑制するために使用し得る。タンパク質の活性は、抗体のような、活性を抑制する物質を投与することにより効果的に制御し得る。
【0241】
[000323]該動物モデルは、障害及び/又は疾患の根底にある機構を評価するため、及びスクリーニングにより得られた化合物の安全性を試験するためにも有用である。例えば、動物モデルが特定の障害及び/又は疾患の症状を発症した場合、又はある種の障害及び/又は疾患に関与する測定値が動物中で変化した場合、疾患を寛解する活性を有する化合物を探索するため、スクリーニングシステムを構築し得る。
【0242】
[000324]本明細書で使用される表現「発現レベルの増加」とは、以下のいずれか一つを指す:外来遺伝子として導入されたマーカー遺伝子が人工的に発現された場合;対象動物に固有のマーカー遺伝子の転写及びタンパク質へのそれらの翻訳が増強された場合;翻訳生成物であるタンパク質の加水分解が抑制された場合。
【0243】
[000325]本明細書で使用される表現「発現レベルの減少」とは、対象動物のマーカー遺伝子の転写、及びタンパク質へのそれらの翻訳が抑制された状態、又は翻訳産物である該タンパク質の加水分解が増強された状態を指す。遺伝子の発現レベルは、例えば、DNAチップ上のシグナル強度の相違により決定し得る。さらに、翻訳産物(タンパク質)の活性は、正常状態のものと比較することにより決定し得る。
【0244】
[000326]該動物モデルはトランスジェニック動物を含むことも企図された範囲内であり、例えば、マーカー遺伝子が導入されており、そして人工的に発現される動物;マーカー遺伝子ノックアウト動物;及び別の遺伝子でマーカー遺伝子が置換されているノックイン動物が含まれる。マーカー遺伝子のアンチセンス核酸、リボザイム、RNAi効果を有するポリヌクレオチド、又はデコイ核酸もしくはそうしたものとして機能するDNAが導入されているトランスジェニック動物がトランスジェニック動物として使用できる。こうしたトランスジェニック動物には、例えば、遺伝子のコード領域内に突然変異を導入すること、又はアミノ酸配列が修飾されて加水分解に対して抵抗性又は感受性となることにより、マーカータンパク質の活性が増強されている又は抑制されている動物が含まれる。アミノ酸配列中の突然変異には、置換、欠失、挿入及び付加が含まれる。
【0245】
[000327]発現の例
[000328]加えて、マーカー遺伝子の発現それ自身を、該遺伝子の転写調節領域内に突然変異(単数又は複数)を導入することにより制御し得る。当業者はこうしたアミノ酸置換を理解している。また、活性が維持されている限り、変異されたアミノ酸の数は特に制限されない。通常、それは50アミノ酸以内、ある非制限態様においては30アミノ酸以内、10アミノ酸以内又は3アミノ酸以内である。突然変異の部位は、活性が維持されている限り、いずれの部位であってもよい。
【0246】
[000329]さらに別の側面において、特定の障害及び/又は疾患を治療する療法剤のための候補化合物についてのスクリーニング法が本明細書において提供される。一つ以上のマーカー遺伝子が本明細書に記載した遺伝子の群から選択される。結腸癌関連疾患のための療法剤は、マーカー遺伝子(単数又は複数)の発現レベルを増加させる又は減少させることが可能な化合物を選択することにより得ることが可能である。
【0247】
[000330]表現「遺伝子の発現レベルを増加させる化合物」とは、遺伝子転写、遺伝子翻訳又はタンパク質活性の発現のいずれか一つの段階を促進する化合物を指す。一方、本明細書で使用される表現「遺伝子の発現レベルを減少させる化合物」は、これらの段階のいずれか一つを阻害する化合物を指す。
【0248】
[000331]特定の側面において、障害及び/又は疾患の療法剤についてのスクリーニング法は、インビボかあるいはインビトロで実施し得る。このスクリーニング法は、例えば、
1)候補化合物を動物対象に投与すること;
2)動物対象からの生物学的サンプル中のマーカー遺伝子(単数又は複数)の発現レベルを測定すること;又は
3)候補化合物に接触していない対照中のレベルと比較し、マーカー遺伝子(単数又は複数)の発現レベルを増加させる又は減少させる化合物を選択すること、により実施し得る。
【0249】
[000332]さらに別の側面において、動物対象と候補化合物を接触させ、そして該動物対象に由来する生物学的サンプル中のマーカー遺伝子(単数又は複数)の発現レベルに対する化合物の効果をモニタリングすることにより、マーカー遺伝子(単数又は複数)の発現レベルに対する医薬品のための候補化合物の効力を評価する方法が本明細書において提供される。該動物対象に由来する生物学的サンプル中のマーカー遺伝子(単数又は複数)の発現レベルにおける変動は、上記の試験法に使用した同一技術を使用してモニターし得る。さらに、評価に基づいて、医薬品のための候補化合物をスクリーニングにより選択し得る。
【0250】
[000333]本明細書で引用したすべての特許、特許出願及び参照文献は、その全体が本明細書において援用される。本発明は当業者がそれを作製する及び使用するのに十分に詳しく説明され及び例示されてきたが、本発明の精神及び範囲から離れることなく、多様な変形、修正及び改善ができるのは明らかなはずである。本発明は、課題を実行し、そして記述した目的及び利点、ならびにここに固有のものを得るためにうまく適用されることを、当業者は容易に理解する。
【0251】
[000334]ある種の核酸塩基配列
[000335]本明細書に記載された成熟miRNA及びそれらの対応するステムループ配列の核酸塩基配列は、http://microrna.sanger.ac.uk/ で見出されたmiRNA配列のオンライン検索可能なデータベース及びアノテーション(annotation)、miRBaseで見出された配列である。miRBase配列データベースへのエントリーで、成熟miRNA配列の位置及び配列についての情報を伴った、miRNA転写産物の推定ヘアピン部分(ステムループ)が示される。データベース中のmiRNAステムループ配列は、厳密には前駆体miRNA(pre−miRNA)ではなく、ある場合は、pre−miRNA及び推定一次転写産物からのいくらかの隣接配列を含む。本明細書に記載されたmiRNA核酸塩基配列は、miRBase配列データベースのリリース10.0に記載されている配列及びmiRBase配列データベースのより以前のいずれかのリリースに記載されている配列を含む、いずれのバージョンのmiRNAも包含する。配列データベースリリースは、ある種のmiRNAの改称を生じさせることがある。配列データベースリリースは、成熟miRNA配列の変化を生じさせることがある。こうした修飾オリゴヌクレオチドを包含することができる該化合物は、本明細書に記載されたmiRNAのいずれの核酸塩基配列バージョンとも相補的であることができる。
【0252】
[000336]本明細書に示したいずれの核酸塩基配列も、糖部分、ヌクレオシド間結合又は核酸塩基への何らかの修飾とは独立であることが理解される。さらに、Uを含む核酸塩基配列は、Uを有する一つ以上の位置でUがTにより置き換えられた同一の核酸塩基配列も包含することが理解される。逆に、Tを含む核酸塩基配列は、Tを有する一つ以上の位置でTがUにより置き換えられた同一の核酸塩基配列も包含することが理解される。
【0253】
[000337]ある態様において、修飾オリゴヌクレオチドは、miRNA又はそれらの前駆体と相補的である核酸塩基配列を有し、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100又はそれ以上の核酸塩基の領域にわたって、miRNA又はそれらの前駆体の相補体と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%同一であること、又は二つの配列がストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることを意味する。従って、ある態様において、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、その標的miRNA又は標的miRNA前駆体配列に関して一つ以上の不適正な塩基対を有することができ、そしてその標的配列へハイブリダイズすることが可能である。ある態様において修飾オリゴヌクレオチドは、miRNA又はそれらの前駆体と100%相補的である核酸塩基配列を有する。ある態様において、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、miRNAに完全長相補性を有する。
【0254】
[000338]miRNA(miR)療法
[000339]いくつかの態様において、本発明は、対象において一つ以上の遺伝子の発現を抑制するマイクロRNAを提供する。マイクロRNA発現プロファイルは、新しい種類の癌バイオマーカーとして働き得る。
【0255】
[000340]本明細書に含まれるのは、一つ以上のMiRを使用した、遺伝子発現及び/又は活性を抑制する方法である。いくつかの態様において、miR(単数又は複数)は、タンパク質の発現を阻害する。他の態様において、miRNA(単数又は複数)は、遺伝子活性を阻害する(例えば、細胞侵入活性)。
【0256】
[000341]miRNAは、細胞又は組織から単離する、組換え的に産生する、又は当業者には公知である多様な技術によりインビトロで合成することができる。一つの態様において、miRNAは細胞又は組織から単離される。細胞又は組織からmiRNAを単離する技術は、当業者には公知である。例えば、miRNAは、Ambion, Incの mirVana miRNA単離キットを使用し、全RNAから単離し得る。別の技術は、flashIPAGE(商標)Fractionator System(Ambion, Inc.)を小さな核酸のPAGE精製に利用する。
【0257】
[000342]miRNA療法の使用については、インビボで投与された核酸が取り込まれ、そして細胞及び組織に分布することが当業者には認識されている。
[000343]核酸は、剤及び/又は核酸送達システムの組織特異的取込みを可能にする、適した様式で送達することができる。本明細書に記載された製剤は、限定されるわけではないが、抗体投与、ワクチン投与、細胞毒性剤の投与、天然アミノ酸、ポリペプチド、核酸、ヌクレオチド類似体及び生物学的応答修飾物質を含む、いずれかの既知の慣用的療法による治療状態を補うことができる。二つ又はそれ以上を組み合わせた化合物を一緒に又は連続的に使用することができる。
【0258】
[000344]本発明のある態様は、(a)一つ以上の核酸又は小分子化合物及び(b)一つ以上の他の化学療法剤を含有する医薬組成物を提供する。
[000345]追加の有用な定義
[000346]「対象」とは、治療又は療法のために選択されたヒト又は非ヒト動物を意味する。「有することが疑われる対象」とは、障害、疾患又は状態の一つ以上の臨床指標を示している対象を意味する。
【0259】
[000347]「予防すること」又は「予防」とは、状態又は疾患の開始、発症又は進行を週、月、年を含む一時期、遅延させる又は未然に防ぐことを指す。「治療」又は「治療する」とは、障害及び/又は疾患の治癒又は寛解のために使用された一つ以上の具体的過程の適用を意味する。ある態様において、具体的過程は一つ以上の医薬品の投与である。
【0260】
[000348]「寛解」とは、状態又は疾患の少なくとも一つの指標の重症度の緩和を意味する。ある態様において、寛解は、状態又は疾患の一つ以上の指標の進行を遅延させる又は減速することを含む。指標の重症度は、当業者には公知である主観的又は客観的測定により決定することができる。
【0261】
[000349]「それを必要とする対象」とは、療法又は治療を必要としていると同定された対象を意味する。
[000350]「投与すること」とは、対象に医薬品又は組成物を提供することを意味し、限定されるわけではないが、医療専門家による投与及び自己投与を含む。
【0262】
[000351]「非経口投与」とは、注射又は注入を介した投与を意味する。非経口投与には、限定されるわけではないが、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与及び頭蓋内投与が含まれる。「皮下投与」は、皮膚直下への投与を意味する。
【0263】
[000352]「機能を改善する」とは、正常パラメータに向かう機能の変化を意味する。ある態様において、機能は、対象の体液に観察される分子を測定することにより評価される。「医薬組成物」とは、医薬品を含み、個体に投与するために適した物質の混合物を意味する。例えば、医薬組成物は修飾オリゴヌクレオチド及び滅菌水性溶液を含んでいてもよい。
【0264】
[000353]「標的核酸」、「標的RNA」、「標的RNA転写体」及び「核酸標的」はすべて、アンチセンス化合物により標的化されることが可能な核酸を意味する。「標的化」とは、標的核酸にハイブリダイズし、そして所望の効果を誘発するであろう核酸塩基配列の設計及び選択のプロセスを意味する。「へ標的化された」とは、標的核酸へのハイブリダイゼーションを可能にして所望の効果を誘発するであろう核酸塩基配列を有していることを意味する。ある態様において、所望の効果は標的核酸の減少である。
【0265】
[000354]「変調」とは、機能又は活性の摂動を意味する。ある態様において、変調は遺伝子発現の増加を意味する。ある態様において、変調は遺伝子発現の減少を意味する。
[000355]「発現」とは、遺伝子のコードされた情報が、存在する構造体に変換されそして細胞中で作動する、いずれかの機能及び段階を意味する。
【0266】
[000356]「領域」とは、核酸内の連結されたヌクレオシドの一部を意味する。ある態様において、修飾オリゴヌクレオチドは、標的核酸の領域と相補的である核酸塩基配列を有する。例えば、あるこうした態様において、修飾オリゴヌクレオチドはmiRNAステムループ配列の領域と相補的である。あるこうした態様において修飾オリゴヌクレオチドはmiRNA配列の領域と100%同一である。
【0267】
[000357]「セグメント」とは、領域よりも小さな又は副部分を意味する。
[000358]「核酸塩基配列」とは、いかなる糖、連結及び/又は核酸塩基修飾とは無関係に、5’から3’方向における近接核酸塩基の順序を意味する。
【0268】
[000359] 「近接核酸塩基」とは、核酸中のお互いにすぐ隣接した核酸塩基を意味する。
[000360]「核酸塩基相補性」とは、水素結合を介して非共有結合で対となる二つの核酸塩基の能力を意味する。「相補的」とは、第一の核酸塩基配列が、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100又はそれ以上の核酸塩基の領域にわたって、第二の核酸塩基配列の相補体と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%同一又は100%同一であることを意味し、該二つの配列はストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。ある態様において、miRNA又はそれらの前駆体と100%相補的である核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドは、修飾オリゴヌクレオチドの全長にわたってmiRNA又はそれらの前駆体と100%相補的でなくてもよい。
【0269】
[000361]「相補性」とは、第一の核酸及び第二の核酸間の核酸塩基対形成能力を意味する。「完全長相補性」とは、第一の核酸の各々の核酸塩基が、第二の核酸中の対応する位置の各々の核酸塩基と対形成することができることを意味する。例えば、ある態様において、各核酸塩基がmiRNA中の核酸塩基に相補性を有する修飾オリゴヌクレオチドは、miRNAに対する完全長相補性を有する。
【0270】
[000362]「パーセント相補的」とは、核酸の長さで割られた、核酸中の相補的核酸塩基の数を意味する。ある態様において、修飾オリゴヌクレオチドのパーセント相補性とは、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基数で割られた、標的核酸と相補的である核酸塩基の数を意味する。ある態様において、修飾オリゴヌクレオチドのパーセント相補性とは、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基の数で割られた、miRNAと相補的である核酸塩基の数を意味する。
【0271】
[000363]「パーセント結合領域」とは、オリゴヌクレオチド領域との領域相補性のパーセントを意味する。パーセント結合領域は、オリゴヌクレオチドと相補性である標的領域の核酸塩基の数を、標的領域の長さで割ることにより計算される。ある態様において、パーセント結合領域は少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%である。
【0272】
[000364]「パーセント同一性」とは、第一の核酸中の核酸塩基の総数で割られた、第二の核酸中の対応する位置の核酸塩基と同一である第一の核酸中の核酸塩基の数を意味する。
【0273】
[000365]本明細書で使用する「実質的に同一」とは、第一と第二の核酸塩基配列が8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100又はそれ以上の核酸塩基の領域にわたって、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%同一又は100%同一であることを意味する。
【0274】
[000366]「ハイブリダイズする」とは、核酸塩基相補性を介して生じる相補的核酸のアニーリングを意味する。
[000367]「不適正」とは、第二の核酸の対応する位置の核酸塩基と対形成ができない、第一の核酸核酸塩基を意味する。
【0275】
[000368]「非相補的核酸塩基」とは、水素結合を介して対形成ができない二つの核酸塩基を意味する。
[000369]「同一」とは、同じ核酸塩基配列を有していることを意味する。
【0276】
[000370]「miRNA」又は「miR」とは、コードRNAにハイブリダイズし、そして発現を調節する、18から25の間の核酸塩基長の非コードRNAを意味する。ある態様において、miRNAは酵素ダイサーによるpre−miRNA切断の生成物である。miRNAの例は、miRBaseとして知られているmiRNAデータベース(http://microrna.sanger.ac.uk/)にある。
【0277】
[000371]「pre−miRNA」又は「pre−miR」とは、miRNAを含むヘアピン構造を有する非コードRNAを意味する。ある態様において、pre−miRNAは、ドローシャとして知られている二本鎖RNA特異的リボヌクレアーゼによるpri−miRの切断の生成物である。
【0278】
[000372]「ステムループ配列」とは、ヘアピン構造を有し、成熟miRNA配列を含有するRNAを意味する。pre−miRNA配列及びステムループ配列は、重複することができる。ステムループ配列の例は、miRBaseとして知られているmiRNAデータベース(http://microrna.sanger.ac.uk/)にある。
【0279】
[000373]「miRNA前駆体」とは、ゲノムDNAを起源とし、一つ以上のmiRNA配列を含んでいる非コード、構造化RNAを含む転写体を意味する。例えば、ある態様において、miRNA前駆体はpre−miRNAである。ある態様において、miRNA前駆体はpri−miRNAである。
【0280】
[000374]「アンチセンス化合物」とは、標的核酸へのハイブリダイゼーションを可能にするであろう核酸塩基配列を有している化合物を意味する。ある態様において、アンチセンス化合物は標的核酸と相補的な核酸塩基配列を有しているオリゴヌクレオチドである。
【0281】
[000375]「オリゴヌクレオチド」とは、その各々がお互いに独立して修飾され得る又は修飾されていない、連結されたヌクレオシドのポリマーを意味する。「天然に存在するヌクレオシド間連結」とは、ヌクレオシド間の3’−5’ホスホジエステル結合を意味する。「天然核酸塩基」とは、その天然に存在する形態と比較して修飾されていない核酸塩基を意味する。「miRアンタゴニスト」とは、miRNAの活性を妨害する又は阻害するように設計された剤を意味する。ある態様において、miRアンタゴニストは、miRNAを標的とするアンチセンス化合物を含む。ある態様において、miRアンタゴニストは、miRNA又はそれらの前駆体の核酸塩基配列と相補的である核酸塩基配列を有している修飾オリゴヌクレオチドを含む。ある態様において、miRアンタゴニストは、miRNAの活性を妨害する又は阻害する小分子などを含む。
【0282】
[000376]本明細書に記載された方法及び試薬は、好ましい態様の代表であり、例であり、本発明の範囲の制限を意図するものではない。それらの中の修正及び他の使用を当業者は思いつくであろう。これらの修正は本発明の精神内に包含され、特許請求の範囲により規定される。本発明の範囲及び精神から離れることなく、置換及び修正を変化させることを本明細書に開示した発明に行うことができることも、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0283】
[000377]本発明を、好ましい態様及び随意の特徴により具体的に開示してきたが、本明細書に開示した概念の修正及び変形を当業者は考えることができ、こうした修正及び変形は付随する請求の範囲に規定した本発明の範囲内であると考えられる。
【0284】
[000378]本発明を多様な及び好ましい態様を参照して説明してきたが、本発明の本質的範囲から離れることなく、多様な変形を行うことができ、そして均等物でそれらの要素を置換することができることを当業者は理解するであろう。加えて、多くの修正を、その本質的範囲から離れることなく、本発明の教示による特定の状況又は材料に適合させるために行うことができる。
【0285】
[000379]参照文献
[000380]本発明を明らかにする又は本発明の実行についての追加の詳細を提供するため、本明細書で使用された刊行物及び他の材料が参照文献としてここに取り込まれ、そして都合がよいように下記の文献目録に提供されている。
【0286】
[000381]本明細書に列挙したいずれの文書の引用も、いずれの先行文献も適切な先行技術であるとの承認を目的とするものではない。日付に関するすべての記載又はこれらの文書の内容に関するすべての表現は、出願者に入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確さに関する承認を構成するものではない。
【0287】
[000382]
【0288】
【化1-1】
【0289】
【化1-2】
【0290】
【化1-3】
【0291】
【化1-4】
【0292】
【化1-5】
【0293】
【化1-6】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図13
図14
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図15-2】
図15-3】
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図15-21】
図15-22】
図15-23】
図16
図17
図18
図1A
図1B-1】
図1B-2】
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D-1】
図5D-2】
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F-1】
図10F-2】
図10F-3】
図10G
図10H
図11