(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が事故などによって正面衝突してしまうと、リアシート後方の荷台に置いた荷物がシートバックの背面に追突する場合がある。上述したようにシートバックの傾倒動作に連動してシートクッションが動作する構成であると、背面側からの追突によってシートバックが前方へと傾いてしまうと、勝手にシートクッションが動作するおそれがある。
そこで、本発明の課題は、荷物が背面から追突してシートバックが傾いたとしても、シートクッションが動作してしまうことを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、
シートバック部と、シートクッション部とを備える格納式リアシートにおいて、
前記シートバック部は、
床面に傾倒自在に起立したシートバック本体と、
前記シートバック本体の傾倒をロックするシートバック用ロック機構と、
前記シートバック本体の下端部に設けられ、前記シートバック用ロック機構によるロックが解除されてから前記シートバック本体が傾倒されると、傾倒動作に連動して前後方向に揺動する揺動部材とを備え、
前記シートクッション部は、
前記シートバック本体の前方で前記床面に水平に配置されて、前記床面よりも一段下の足下床面に対して収容自在なシートクッション本体と、
前記シートクッション本体の後端部に設けられたロック用軸体と、
前記床面に設けられ、前記ロック用軸体に係合することで、前記シートクッション本体における前記床面での水平状態をロックするシートクッション用ロック機構とを備え、
前記シートクッション
用ロック機構は、
前記ロック用軸体が進退するように上方が開放し上下方向に延在した切欠を有するベースプレートと、
前記ベースプレートに回動自在に取り付けられて、前記切欠内に進入する前記ロック用軸体に押されて回動し、当該ロック用軸体が前記切欠の下端部まで進入すると、前記ロック用軸体の上方を閉塞して当該ロック用軸体の上昇動作を規制し、前記シートクッション本体の水平状態を維持する規制爪部と、
前記ベースプレートに回動自在に取り付けられて、前記規制爪部に係合することで、当該規制爪部の規制状態をロック
し、前記揺動部材が当接することで前記規制状態を解除するラチェット部とを備え、
前記切欠の下端部には、前記切欠に対して連続して前方に延在する補助切欠が設けられていることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の格納式リアシートにおいて、
前記補助切欠は、前記シートバック本体の背面からの衝撃の荷重方向に対して平行に設けられていることを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の格納式リアシートにおいて、
前記ベースプレートには、前記ロック用軸体が前記補助切欠内に進入してしまうことを防止するため、前記補助切欠を閉塞する進入防止部材が設けられていて、
前記進入防止部材は、所定以上の荷重が付与されると変形し、前記補助切欠を開放することを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の格納式リアシートにおいて、
前記進入防止部材は、前記補助切欠を閉塞するように上方に向けて突出した板バネであることを特徴としている。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の格納式リアシートにおいて、
前記進入防止部材は、逆V字状に形成されていて、
前記進入防止部材の一端部は、前記ベースプレートの底部に固定されていて、前記進入防止部材の他端部は前記ベースプレートの底部から浮いていることを特徴としている。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の格納式リアシートにおいて、
前記進入防止部材が変形によって前記ベースプレートから離間してしまうことを防止する離間防止部材を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、補助切欠が切欠の下端部に連続するように設けられているので、荷物が背面から追突して格納式リアシート全体が前方へと移動すると、ロック用軸体が補助切欠内に進入することになる。補助切欠内に進入するとロック用軸体の上方への移動が規制されるため、シートクッション本体自体も水平状態のままでロックされる。そして、荷物が背面から追突してシートバック本体が傾いたとしても、シートクッション本体がロックされたままであるので、シートバック本体の傾倒に連動して動作してしまうことを防止することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、シートバック本体の背面からの衝撃の荷重方向に対して平行となるように補助切欠が設けられているので、背面からの衝撃で格納式リアシート全体が前方へと移動した場合に、ロック用軸体を容易に補助切欠内に収めることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、ロック用軸体が補助切欠内に進入してしまうことを防止するため、補助切欠を閉塞する進入防止部材が設けられているので、通常使用時にロック用軸体が補助切欠内に進入してしまうことを防止することができる。
そして、衝突等の衝撃によって所定以上の荷重が進入防止部材に付与されると、進入防止部材が変形し補助切欠を開放するので、荷物が背面から追突してシートバック本体が傾いた場合にだけ、ロック用軸体を補助切欠内に収めることができ、シートクッション本体をロックすることができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、進入防止部材が補助切欠を閉塞するように上方に向けて突出した板バネであるので、背面からの衝突以外の何らかの要因でロック用軸体が進入防止部材にぶつかったとしても、所定の荷重未満であればその衝撃を吸収することができる。
また、板バネの厚さや、弾性係数を変えるだけで、所定の荷重を調整することができ、荷重設定が容易である。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、逆V字状に形成された進入防止部材の一端部が、ベースプレートの底部に固定されていて、進入防止部材の他端部がベースプレートの底部から浮いているので、ロック用軸体がぶつかったことにより進入防止部材が変形すると、その他端部が底部に当接することになる。これによって、二段構えでロック用軸体を受けることができ、所定の荷重未満の衝撃で補助用切欠を開放してしまうことを防止することができる。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、進入防止部材が変形によってベースプレートから離間してしまうことを離間防止部材が防止するので、進入防止部材の他端部とベースプレートの底部との当接を確実に案内することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0019】
図1は本実施形態に係る格納式リアシートの概略構成を示す側面図であり、
図2は格納式リアシートの内部構成を示す側面図、
図3は格納式リアシートの内部構成を示す斜視図である。
図3に示すように、格納式リアシート1A,1Bは、左右に一対設けられており、各々独立して格納できるようになっている。ここで右側の格納式リアシート1Aは、左側の格納式リアシート1Bよりも幅が狭く形成されている。
図1に示すように、格納式リアシート1A,1Bは、シートバック部2とシートクッション部3とを備えており、これらはシートパッド21,31により覆われている。
【0020】
まず、シートバック部2について説明する。シートバック部2は、車両本体の床面100に傾倒自在に起立したシートバック本体4と、シートバック本体4の傾倒をロックするシートバック用ロック機構5とを備えている。
【0021】
図2及び
図3に示すように、シートバック本体4は、シートバック本体4の外周をなすシートバックフレーム41と、シートバックフレーム41に取り付けられた背板部42と、シートバックフレーム41の左右の下端部に設けられ、シートバックフレーム41が傾倒自在となるように、床面100に回動自在に支持されたヒンジ部43,44とを備えている。
【0022】
シートバックフレーム41は、左右の格納式リアシート1A,1B毎に構成が異なる。まず、右側の格納式リアシート1Aのシートバックフレーム41aについて説明する。
図3に示すように、右側のシートバックフレーム41aは、背板部42aの上辺及び左右辺を囲むように一本のパイプを曲げてなる第一パイプ部411aと、背板部42aの下辺に配置されて、第一パイプ部411aの両端部に連結される直線状のパイプからなる第二パイプ部412aとを備えている。これによりシートバックフレーム41aの全体が背板部42aの外周を囲むことになる。
また、第一パイプ部411aと第二パイプ部412aとがなす左右の角部の内側には、図示しないチャイルドシートを装着するためのワイヤ45a,46aが設けられている。
【0023】
ヒンジ部43a,44aのうち、車両外側のヒンジ部43aは、床面100に設けられた支持ブラケット101に回動自在に係合されるヒンジ軸であり、第二パイプ部412aに溶接によって固定されている。
一方、ヒンジ部43a,44aのうち、車両中央側のヒンジ部44aは、床面100に設けられたセンターヒンジブラケット102に対し、ヒンジ軸441を介して回動自在に係合されるヒンジブラケットである。ヒンジ部44aは、背板部42aの左側の下端部に取り付けられている。ここで、背板部42aの左側の下端部には、ヒンジ部44a及びワイヤ46aを囲むように補強部材47aが設けられている。
【0024】
図4は、補強部材47aの概略構成を示す斜視図である。
補強部材47aは、背板部42aよりも肉厚であり、第一パイプ部411a及び第二パイプ部412aに溶接により固定されている。補強部材47aにおける溶接部分471a,472aにおいては、溶接強度を確保するためリブ状に形成されている。また、補強部材47aの上部及び下部には、ヒンジ部44aを固定するためのネジ部473aが設けられている。この補強部材47aを介してヒンジ部44aが背板部42aに固定されるためにヒンジ部44aの取り付け強度が高められる。
【0025】
次に、左側の格納式リアシート1Bのシートバックフレーム41bについて説明する。
図3に示すように、左側のシートバックフレーム41bは、背板部42bの全周を囲むように一本のパイプを曲げてなるパイプ部411bを備えている。なお、パイプ部411bは、右側下端部が面取りされ、背板部42bの右側下端の角部のみを囲わないように、曲げられている。また、パイプ部411bの両端部は、背板部42bの左側下端部で溶接により接合されている。パイプ部411bの内側には、パイプ部411bの上辺と下辺とに掛け渡された補強パイプ412bが設けられている。
【0026】
補強パイプ412b及びパイプ部411bの下辺がなす左側の角部と、パイプ部411bの左辺及び下辺がなす角部には、図示しないチャイルドシートを装着するためのワイヤ45b,46bが設けられている。
【0027】
ヒンジ部43b,44bのうち、車両外側のヒンジ部43bは、床面100に設けられた支持ブラケット101に回動自在に係合されるヒンジ軸であり、パイプ部411bの左側下端部に溶接によって固定されている。
一方、ヒンジ部43b,44bのうち、車両中央側のヒンジ部44bは、床面100に設けられたセンターヒンジブラケット102に対し、ヒンジ軸441を介して回動自在に係合されるヒンジブラケットである。ヒンジ部44bは、背板部42bの右側の下端部に取り付けられている。ここで、背板部42bの左側の下端部には、ヒンジ部44bを囲むように補強部材47bが設けられている。
【0028】
図5は、補強部材47bの概略構成を示す斜視図である。
補強部材47bは、背板部42bよりも肉厚であり、パイプ部411bの右側下端部に溶接により固定されている。補強部材47bは、その全周にわたってリブ471bが形成されており、全体としての強度が高められている。また、補強部材47bの上部及び下部には、ヒンジ部44bを固定するためのネジ部473bが設けられている。この補強部材47bを介してヒンジ部44bが背板部42bに固定されるためにヒンジ部44bの取り付け強度が高められる。
【0029】
図3に示すように、シートバック用ロック機構5は、シートバック本体4の上部外側に設けられたレバー部51と、シートバック本体4の外側部に設けられ、車体の被係止部分115(
図1参照)に係合するロック部52とを備えている。ロック部52は、シートバック本体4が起立状態にあるときに車体の被係止部分に係合し、その起立状態をロックしているが、レバー部51が操作されると被係止部分とのロックが解除されて、シートバック本体4を傾倒自在な状態へとするものである。
【0030】
そして、左右の格納式リアシート1A,1Bそれぞれのシートバック本体4の下端部には、シートバック用ロック機構5によるロックが解除されてからシートバック本体4が傾倒されると、傾倒動作に連動して前後方向に揺動する揺動部材6が設けられている。揺動部材6は、下方に向けて延在した矩形枠状となるように金属棒を屈折させて形成されている。揺動部材6は、第二パイプ部412a及びパイプ部411bのそれぞれの略中央に溶接によって固定されている。
【0031】
シートクッション部3は、シートクッション本体7と、シートクッション用ロック機構8と、切替機構9とを備えている。なお、これらのうちシートクッション本体7のみが、左右の格納式リアシート1A,1B毎に幅が異なり、シートクッション用ロック機構8及び切替機構9は、左右の格納式リアシート1A,1Bにおいても同一の構成である。
【0032】
シートクッション本体7は、シートバック本体4の前方で床面100に水平に配置されており、床面100よりも一段下の足下床面110に対して収容自在となっている。以下、シートクッション本体7が床面100で水平にある状態を水平状態と称し、シートクッション本体7が足下床面110に収容された状態を収容状態と称す。このシートクッション本体7の後端部中央には、シートクッション用ロック機構8に係合するロック用軸体71が、左右方向に延在するように設けられている。また、シートクッション本体7の前側下面には、収容状態のときに足下床面110に接触して、シートクッション本体7の体勢を維持する体勢維持部72が設けられている。
【0033】
シートクッション用ロック機構8は、
図3に示すように、シートバック本体4の下方であって、水平状態にあるシートクッション本体7の後方に配置されるように、床面100に設けられている。シートクッション用ロック機構8は、ロック用軸体71に係合することで、シートクッション本体7の水平状態をロックするようになっている。
【0034】
以下、シートクッション用ロック機構8について詳細に説明する。
図6は、シートクッション用ロック機構8の概略構成を示す斜視図であり、
図7は側面図である。
図6及び
図7に示すように、シートクッション用ロック機構8には、ベースプレート81と、規制爪部82と、ラチェット部83とを備えている。
【0035】
ベースプレート81は、左右一対のプレート板811を備えており、このプレート板811は、ネジ812によって床面100に固定される底部813と、底部813の内側端部から立設したプレート本体814とを有している。プレート本体814には、上方が開放し上下方向に延在した切欠815が形成されている。
【0036】
図8は、ロック用軸体71の軌道Rと規制爪部82との関係を示す側面図である。
図8に示すように切欠815は、ロック用軸体71の軌道Rに沿って形成されており、シートクッション本体7の水平状態/収容状態が切り替わる際には、ロック用軸体71が切欠815内を進退することになる。なお、
図8中のR1,R2はロック用軸体71の軌道Rのバラツキを示すラインであるが、軌道Rが多少前後方向にばらついたとしても、ロック用軸体71を収容できるように、切欠815の幅が設定されている。この切欠815の下端部には、切欠815に連続して前方に延在する補助切欠816が設けられている。
【0037】
切欠815の後方には、規制爪部82を回動自在に保持する第一回動軸817と、ラチェット部83を回動自在に保持する第二回動軸818とが、一対のベースプレート81間に掛け渡されている。
また、一対のベースプレート81のうち、少なくとも一方のベースプレート81の底部813には、ロック用軸体71が補助切欠816内に進入してしまうことを防止するため、補助切欠816を閉塞する進入防止部材84が設けられている。進入防止部材84は、板バネであり、逆V字状に形成されている。進入防止部材84は、その逆V字状の一辺部841が補助切欠816の切欠815側を閉塞するように、前後方向に沿って配置されている。進入防止部材84の一端部842は、ベースプレート81の底部813中央に固定されていて、他端部843は底部813から浮いている。例えば、正面衝突によって荷台にある荷物が後方からシートバック本体4にぶつかると、進入防止部材84の一辺部841にロック用軸体71が当接する。このとき進入防止部材84に所定以上の荷重が付与されると、進入防止部材84は変形して補助切欠814を開放する(
図8の点線部T参照)。ここで、進入防止部材84が変形するための所定の荷重は、進入防止部材84の板バネの厚さや、弾性係数を変えることで調整できる。
【0038】
ベースプレート81の底部813には、進入防止部材84が変形によってベースプレート81のプレート本体814から離間してしまうことを防止する離間防止部材85が取り付けられている。離間防止部材85は、板状部材であり、進入防止部材84の他端部843の側方に、前後方向に沿って配置されている。進入防止部材84の他端部843は、プレート本体814と離間防止部材85とによって挟まれることとなる。進入防止部材84が変形して前後方向に移動するときには、離間防止部材85によってプレート本体814から離れる方向へのずれが防止される。
【0039】
そして、荷物が背面から追突して格納式リアシート1A,1B全体が前方へと移動すると、ロック用軸体71が進入防止部材84を変形させて補助切欠816内に進入することになる。補助切欠816内に進入するとロック用軸体71の上方への移動が規制されるため、シートクッション本体7自体も水平状態のままでロックされる。このように、荷物が背面から追突してシートバック本体4が傾いたとしても、シートクッション本体がロックされたままであるので、シートバック本体4の傾倒に連動して動作してしまうことを防止することができる。
【0040】
規制爪部82は、第一回動軸817によってベースプレート81に回動自在に取り付けられている。規制爪部82の先端部には、ロック用軸体71が係合する凹部821が形成されている。この凹部821内にロック用軸体71が係合し、先端部が略前方を向いた状態を規制状態(
図8に示す一点鎖線T1参照)と称し、凹部821内からロック用軸体71が離間し、先端部が略上方を向いた状態を解除状態(
図8に示す実線T2参照)と称す。規制爪部82は、付勢バネ822によって常に解除状態となる方向Y1へ向けて付勢力が付与されている。
規制爪部82の基端部には、ラチェット部83と係合するカム面823が形成されている。このカム面823には、円弧状の第一カム面824と、第一カム面824に連続して下方に形成された平面状の第二カム面825とが形成されている。第二カム面825は、規制状態においてはラチェット部83に係止されて、付勢バネ822によるこれ以上の回動を規制している。また、第二カム面825は、解除状態においてはベースプレート81の底部813に設けられたストッパ819に係止されて、付勢バネ822によるこれ以上の回動を規制している。
【0041】
解除状態にある規制爪部82の凹部821に対して、切欠815により案内されたロック用軸体71が係合すると、規制爪部82はロック用軸体71によって押されて回動する。この回動によって規制爪部82はロック用軸体71の上方を閉塞してロック用軸体71の上昇動作を閉塞して規制状態となる。このとき、ラチェット部83によって規制状態がロックされる。
【0042】
ラチェット部83は、第二回動軸818によってベースプレート81に回動自在に取り付けられている。ラチェット部83は、規制爪部82に係合することで、当該規制爪部82の規制状態をロック/解除するものである。ラチェット部83の一端部831は、規制爪部82のカム面823に係合するものであり、その端面がカム面832となっている。そして、ラチェット部83は、図示しない付勢バネによって常に規制爪部82をロックする方向Y2に付勢されている。
【0043】
図9は、ラチェット部83のカム面832と、規制爪部82のカム面823との関係を模式的に示す説明図である。ラチェット部83のカム面832は、上側部分833が下側部分834から規制爪部82側に向けて張り出るように傾斜した形状となっている。
図9(a)に示すように、規制爪部82が解除状態から規制状態へと回動する途中からは、ラチェット部83のカム面832は、規制爪部82の第一カム面824から第二カム面825へと係合位置が切り替わる。このとき、ラチェット部83のカム面832が平坦であると、切り替わり以降の規制爪部82の回動経路は、
図9(b)、(c)の二点鎖線t1に示すものとなる。しかし、上述したようにラチェット部83のカム面832の上側部分833が下側部分834から規制爪部82側に向けて張り出るように傾斜した形状であると、切り替わり以降の規制爪部82の回動経路は、
図9(b)、(c)の二点鎖線t1に示したものよりもより回動することになる。つまり、ラチェット部83が規制爪部82の規制状態をロックする際に、規制爪部82を切欠815側へと押し込むことになり、より強固な規制状態を実現することができる。
【0044】
図10は、揺動部材6の揺動経路Kと、ラチェット部83との関係を示す側面図である。
図10に示すように、ラチェット部83の他端部835は、揺動部材6の揺動経路K上に配置されている。他端部835の上面は、略へ字状に形成されており、内側の面を第一押圧面836と称し、外側の面を第二押圧面837と称す。第一押圧面836は、シートバック本体4が起立状態から傾倒されるとき揺動部材6によって押されるように、傾倒時における揺動部材6の揺動経路K1に対して交差している。一方、第二押圧面837は、シートバック本体4が傾倒状態から起立されるときに揺動部材6によって押されるように、起立時における揺動部材6の揺動経路K2に対して交差している。そして、第一押圧面836及び第二押圧面837は、揺動部材6に押されると、ラチェット部83を付勢された方向Y2とは反対側の方向に回動させて揺動経路Kから退避させるように形成されている。このため、シートバック本体4を起立状態から傾倒するとき、あるいは傾倒状態から起立させるときのいずれであっても、ラチェット部83を揺動経路Kから退避させることができる。これにより、傾倒状態からシートバック本体4を起立させるときに、揺動経路K上にあるラチェット部83の他端部835に揺動部材6が当接したとしても、ラチェット部83を揺動経路Kからスムーズに退避させることができ、起立動作もスムーズなものとなる。
なお、揺動部材6は、シートバック本体4が起立状態である場合には揺動部材6がシートクッション用ロック機構8のラチェット部83から離間していて、シートバック本体4が傾倒する際には、揺動部材6がラチェット部83の他端部835に当接して、シートクッション用ロック機構8のロックを解除するようになっている。
【0045】
そして、
図7に示すように、規制状態にある規制爪部82は、ラチェット部83のカム面832が規制爪部82の第二カム面825に係合しているため、その状態がロックされている。この状態で、シートバック本体4が起立状態から傾倒されると、揺動部材6が矢印Y3の方向へ揺動し、付勢バネの付勢力に抗いながらラチェット部83の第一押圧面836を押して、ラチェット部83を矢印Y4方向へと回動させる。この回動によって、ロックが解除されて、付勢バネ822の付勢力によって規制爪部82が矢印Y5方向に回動し、ロック用軸体71の規制を解除して解除状態となる。
【0046】
切替機構9は、シートクッション本体7の水平状態と収容状態とを切り替えるものである。
図11は、シートクッション本体7が水平状態である場合の切替機構9の概略構成を示す正面図であり、
図12は左斜め前から見た斜視図、
図13は右斜め前から見た斜視図である。
図11〜
図13に示すように、切替機構9には、フレーム部91と、足下側軸受部92と、シート側軸受部93と、ガイド部材94と、回動付勢部95とを備えている。
【0047】
図14は、フレーム部91の概略構成を示す説明図であり、(a)は(b)のa−a切断線から見た断面図、(b)は正面図である。
図14に示すように、フレーム部91には、互いに平行な一対の脚部911,912と、一対の脚部911,912を連結する連結フレーム913とが設けられている。
脚部911,912は、金属パイプから形成されていて、その下端部には、足下側軸受部92に回動自在に軸支される回動軸部914が形成されている。また、脚部911,912の上端部には、シート側軸受部93に回動自在に軸支されるための軸孔915が形成されている。
連結フレーム913は、一対の脚部911,912の長手方向における中央部に取り付けられている。連結フレーム913は、
図12及び
図13に示すように、シートクッション本体7が水平状態にある場合に前方に向けて凸となるように湾曲した形状に形成されている。そして、
図14(a)に示すように、連結フレーム913の両端部は、脚部911,912における長手方向に直交する断面形状の中心Sから、連結フレーム913の凸方向へずれた位置に溶接等によって固定されている。
【0048】
また、左側の脚部911と、連結フレーム913とには、回動付勢部95が係合する正面視略L字状の付勢係合部材96が溶接等によって取り付けられている。
【0049】
図11〜
図13に示すように、足下側軸受部92は、一対の脚部911,912に対応するように一対設けられていて、それぞれが左右方向に所定の間隔を空けて足下床面110に設置されている。また、シート側軸受部93は、一対の脚部911,912に対応するように一対設けられていて、それぞれが左右方向に所定の間隔を空けてシートクッション本体7の下面に固定されている。これにより、一対の脚部911,912がシートクッション本体7を支持した状態で、水平状態と収容状態との間を案内することができる。
【0050】
ガイド部材94は、一対の脚部911,912の外側であって、車両の中央側となる右側に配置されている。このガイド部材94は、一対の脚部911,912とともに、シートクッション本体7を水平状態と収容状態との間で案内するものである。ガイド部材94は金属の丸棒材から形成されていて、その両端部が折り曲げられている。ガイド部材94の上端部は、シート側軸受部93に水平に軸支されることで、回動自在な回動軸941となる。ガイド部材94の下端部は、足下側軸受部92に水平に軸支されることで、回動自在な回動軸942となる。ガイド部材94のシートクッション本体7側の回動軸941は、一対の脚部911,912のシートクッション本体7側における回動軸よりも前方に配置されている。一方、ガイド部材94の足下床面110側の回動軸942は、一対の脚部911,912の足下床面110側の回動軸よりも前下方に配置されている。このような位置関係であるために、収容状態時にシートクッション本体7を略水平に配置する場合にスムーズに収容させることができる。
【0051】
回動付勢部95は、一対の脚部911,912のうち、少なくとも一方の脚部911に対して、水平状態から収容状態までシートクッション本体7を案内する際に、回動力を付与するものである。回動付勢部95は、ゼンマイばねであり、一対の脚部911,912の内側であって、脚部911の足下床面110側に配置されている。そして、回動付勢部95の内側端部が、左側の足下軸受部92に固定されていて、外側端部が付勢係合部材96に係合している。回動付勢部95の外側端部は、シートクッション本体7が水平状態にあるときは、付勢係合部材96に係合して、左側の脚部911に付勢力を付与している。そして、シートクッション本体7が水平状態から収容状態に案内される途中に、回動付勢部95の外側端部は付勢係合部材96から離間するようになっている。
【0052】
具体的に、切替機構9の動作について説明する。
図15は切替機構9の動作を模式的に示す側面図である。
図15の実線部は水平状態にあるシートクッション本体7及び切替機構9を示しており、二点鎖線部は切替動作時のシートクッション本体7及び切替機構9を示している。水平状態から、シートクッション用ロック機構8のロックが解除されると、回動付勢部材95に対する押さえもなくなるので、回動付勢部材95の付勢力によって脚部911,912が前方へと回動し、シートクッション本体7も前方へと移動する。この移動時においては、ガイド部材94によってシートクッション本体7のばたつきが押さえられている。さらに、シートクッション本体7が水平状態にある場合に、前方に向けて凸となるように湾曲した形状に連結フレーム913が形成されているので、一対の脚部911,912がシートクッション本体7を水平状態から収容状態に案内するまでに、連結フレーム913とシートクッション本体7との中央部分の隙間を確保することができる。これにより、収容動作中に連結フレーム913がシートクッション本体7に接触してしまうことを防止することができ、シートクッション本体7の収容動作をスムーズにすることが可能となる。収容後においては連結フレーム913は下方に向けて突出することになるので、シートクッション本体7を下方へと落とし込むことも可能となり、スペースをより有効活用することができる。
また、シートクッション本体7が水平状態から収容状態に案内される途中に、回動付勢部材95が付勢係合部材96から離間するため、離間後においては一対の脚部911,912には付勢力が付与されなくなり、回動力は低下しながら、シートクッション本体7が移動する。そして、体勢維持部72が足下床面110に接すると、切替動作が完了し、シートクッション本体7が収容状態となる。収容状態の際には、ガイド部材94と体勢維持部72によってシートクッション本体7が略水平に保たれる。
【0053】
次に、シートバック部2とシートクッション部3との収容動作時における連動について説明する。
図16はシートバック部2及びシートクッション部3との動作を模式的に示す側面図である。
図16に
図16の実線部は着座可能状態(水平状態)にあるシートバック部2及びシートクッション部3を示しており、二点鎖線部は収容動作時におけるシートバック部2及びシートクッション部3を示している。着座可能状態から、シートバック用ロック機構5のロックが解除されて、シートバック本体4が倒されると、完全に折り畳まれる前に揺動部材6がシートクッション用ロック機構8のロックを解除する。これにより、回動付勢部材95の付勢力が一対の脚部911,912に作用して、当該一対の脚部911,912を回動させる。これによって、シートクッション本体7が水平状態から収容状態へと切り替わる。シートクッション本体7が収容状態となったら、ユーザはシートバック本体4を完全に折り畳み、収容動作を完了する。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、補助切欠816が切欠815の下端部に連続するように設けられているので、荷物が背面から追突して格納式リアシート1全体が前方へと移動すると、ロック用軸体71が補助切欠816内に進入することになる。補助切欠816内に進入するとロック用軸体71の上方への移動が規制されるため、シートクッション本体7自体も水平状態のままでロックされる。そして、荷物が背面から追突してシートバック本体4が傾いたとしても、シートクッション本体7がロックされたままであるので、シートバック本体4の傾倒に連動して動作してしまうことを防止することができる。
【0055】
また、ロック用軸体71が補助切欠816内に進入してしまうことを防止するため、補助切欠816を閉塞する進入防止部材84が設けられているので、通常使用時にロック用軸体71が補助切欠816内に進入してしまうことを防止することができる。
そして、衝突等の衝撃によって所定以上の荷重が進入防止部材84に付与されると、進入防止部材84が変形し補助切欠816を開放するので、荷物が背面から追突してシートバック本体4が傾いた場合にだけ、ロック用軸体71を補助切欠816内に収めることができ、シートクッション本体7をロックすることができる。
【0056】
また、進入防止部材84が補助切欠816を閉塞するように上方に向けて突出した板バネであるので、背面からの衝突以外の何らかの要因でロック用軸体71が進入防止部材84にぶつかったとしても、所定の荷重未満であればその衝撃を吸収することができる。
また、板バネの厚さや、弾性係数を変えるだけで、所定の荷重を調整することができ、荷重設定が容易である。
【0057】
また、逆V字状に形成された進入防止部材84の一端部842が、ベースプレート81の底部813に固定されていて、進入防止部材84の他端部843がベースプレート81の底部813から浮いているので、ロック用軸体71がぶつかったことにより進入防止部材84が変形すると、その他端部843が底部813に当接することになる。これによって、二段構えでロック用軸体71を受けることができ、所定の荷重未満の衝撃で補助用切欠816を開放してしまうことを防止することができる。
【0058】
また、進入防止部材84が変形によってベースプレート81から離間してしまうことを離間防止部材85が防止するので、進入防止部材84の他端部843とベースプレート81の底部813との当接を確実に案内することができる。
【0059】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、補助切欠816が前方に延在している場合を例示して説明したが、シートバック本体4の背面からの衝撃の荷重方向と前後方向とがずれている場合には、荷重方向に対して平行に補助切欠816が設けられていることが好ましい。これにより、背面からの衝撃で格納式リアシート1全体が移動した場合に、ロック用軸体71を容易に補助切欠816内に収めることができる。
【0060】
また、進入防止部材84は逆V字状でなくとも、
図17に示すように、少なくとも補助切欠816を閉塞するように上方に向けて突出した板バネからなる進入防止部材84aであればよい。
さらに、背面からの衝突を考慮しないのであれば、
図18に示すように補助切欠816や、進入防止部材84を省略してもよい。これにより、ベースプレート81の製造工数や部品点数を削減することができる。
【0061】
また、上記実施形態ではガイド部材94が丸棒材から形成されている場合を例示したが、棒状部材であれば如何なる形態であってもよく、丸棒材以外にも、角材であってもパイプ材であってもよい。