【実施例】
【0013】
実施例に係る展示ケースにつき、
図1から
図9を参照して説明する。以下、
図3から
図9の紙面左側を展示ケースの背面側(後方側)として説明する。
図1の符号1は、本発明の適用された展示ケースである。この展示ケース1は、主に美術館や博物館等に設置され、展示ケース1内に配置された展示品(図示略)を、鑑賞者が展示ケース1の周囲から鑑賞できるようになっている。
【0014】
図1に示すように、展示ケース1は、床面に設置されて平面視で略四角形状をなす展示台2を有し、展示台2の四方の各側面の外周を取り囲むように、床面から立設されたガラス等の材質で形成された透明なガラスパネル(透光性パネル部材)で構成される側面パネル3が配置されている。この側面パネル3によって展示台2の上方に展示空間4が形成されている。そして、展示品(図示略)を展示台2の上面に配置して収容するようになっている。なお、これら複数枚の側面パネル3のうち背面側に配置されるパネルは、開閉可能な扉パネル5となっている(
図2参照)。
【0015】
側面パネル3で囲まれた展示空間4の上方は、ガラスパネル(透光性パネル部材)で構成された透明な天井パネル6により覆われている。なお、本実施例では、展示台2と側面パネル3と天井パネル6とによりケース本体が構成されている。そして、ケース本体の背面側の開口が扉パネル5により開閉されるようになっている。
【0016】
図3に示すように、天井パネル6の上面側の中央部には、略パネル状をなす照明手段としての発光パネルユニット7が配置されている。なお、天井パネル6は、平面視で略四角形状をなすとともに、発光パネルユニット7も平面視で略四角形状をなしている。
【0017】
天井パネル6の上面における発光パネルユニット7の周辺部には、複数の板状の枠部材8が略枠状に配置された枠部が構成されている。この枠部材8は、天井パネル6の四辺における正面側及び左右側の縁部に設けられている。天井パネル6の背面側の縁部には、後述するように、扉パネル5の上端縁に取り付けられたカバー部材9が配置される。カバー部材9及び枠部材8で囲まれた部位は、展示空間4に向かって光を照射するための略パネル形状をなす発光パネルユニット7が配置される配置部10となっている。
【0018】
更に、配置部10に配置された発光パネルユニット7が枠部材8によって囲まれて保護されるようになり、室内の天井に設置される部材等が展示ケース1の上部に接触しても、枠部材8に接触させることで、発光パネルユニット7に対する接触が防止される。また、発光パネルユニット7が枠部材8によって隠蔽されて、体裁のよい展示ケース1を提供することができる。
【0019】
図4に示すように、天井パネル6は、側面パネル3で囲まれた展示空間4の上方を覆う透明なガラスパネル11(透光性パネル部材)を有している。なお、前述した枠部材8もガラス製(同材質)の板状部材となっている。また、枠部材8が展示空間4の上方を覆うガラスパネル11と同じガラス製であるため、展示空間4の上方を覆うガラスパネル11と枠部材との熱膨張率を同一にすることができ、発光パネルユニット7の放熱や気温変化による天井パネル6の歪みを防止できる。
【0020】
また、発光パネルユニット7は、その下面側がガラスパネル11の上面に接着されている。ガラスパネル11の背面側には、扉パネル5を開閉させる際に用いる開閉レール12及び案内レール13が形成された略板状をなすレール部材14が取り付けられている。
【0021】
なお、枠部材8は着色されて非透光性を有する色ガラスとなっている。そして、発光パネルユニット7と枠部材8の間には、目隠し用の膜部材16が取り付けられている。このように天井パネル6は、このレール部材14と枠部材8と膜部材16により発光パネルユニット7の配置部10以外の部位が非透光性を有するようになっている。また、側面パネル3及び扉パネル5における展示台2を囲む部位には、塗装膜53が設けられ、この塗装膜53により展示台2の側部が隠蔽されている。
【0022】
なお、展示ケース1は、一般的な鑑賞者の身長よりも大きく形成されており、鑑賞者が天井パネルを下方から見上げた際に、前述した配線17等はレール部材14や枠部材8などにより鑑賞者から見えないようになっている。また、展示ケース1の上方にある室内の天井の照明装置等から光が照射された際に、展示ケース1の上方から展示ケース1内に入り込む光が遮られることとなる。そのため、発光パネルユニット7から発せられる光のみで展示品(図示略)を照らすことができ、展示ケース1による照明効果を高められる。
【0023】
図5に示すように、発光パネルユニット7は、アクリル樹脂等の材質で形成された導光板18を有している。この導光板18は、その上面の全面に渡って微細な凹凸が形成されている。この微細な凹凸は、シルク印刷加工やV溝カット加工や成形加工やレーザー加工等の所定の加工方法により形成されている。
【0024】
また、導光板18の上面には、光を反射させる反射シート19が設けられている。導光板18の下面には、光を拡散させる拡散シート20が設けられている。平面視で略四角形状をなす導光板18の前後の縁辺側には、複数のLED21を有する照明基板22が設けられている。この照明基板22は、導光板18の端面に沿って延設されており、複数のLED21は、照明基板22の長手方向に沿って並設されており、このLED21は導光板18の端面側に向いている。
【0025】
図3及び
図5に示すように、導光板18の四辺には、断面視で略コ字形状をなすフレーム部材23に装着されている。前述した照明基板22はフレーム部材23に装着されている。発光パネルユニット7において、フレーム部材23で囲まれた上面側は、矩形板材24により閉塞されている。
【0026】
図5に示すように、発光パネルユニット7は、複数のLED21が導光板18の端面側にのみ配置されており、従来の一般的な照明装置のように、照射面全体にLEDを設けずに済む。また、この発光パネルユニット7の上下幅を小さくして薄型に形成し、かつ軽量化することができるとともに、LED21の使用個数を減らして製造コストを低減させることができる。また、薄型の発光パネルユニット7を用いることにより、圧迫感が少ない展示ケース1とすることができる。
【0027】
照明基板22のLED21を点灯させると、LED21より発せられた光は、導光板18の端面に向かって入射される。この入射された光は、導光板18内部で広がり、導光板18の上面に達した光は、導光板18の上面に形成された微細な凹凸で拡散されつつ、反射シート19により反射され、導光板18の下面側に向かうようになっている。
【0028】
導光板18の下面に達した光は、拡散シート20により拡散され、導光板18の下面側全体から均一に照射されるようになっている。そして、LED21から発せられる光は直接展示品(図示略)に照射されるのではなく導光板18を介して照射されるため、紫外線や赤外線を低減させた光を展示品に照射させることができ、長時間照射しても、紫外線によって展示品が色褪せたり、赤外線による熱で展示品を傷めたりせずに済むようになる。
【0029】
発光パネルユニット7は、天井パネル6よりも小さく形成されており、発光パネルユニット7から照射される光は、発光パネルユニット7から外側斜め下方向に向かって広がるようになっており、この発光パネルユニット7の大きさは、照射される光が展示台2の上面にまんべんなく照射される程度の大きさに形成されている。
【0030】
そのため、展示台2よりも外方側に光が照射されないように、発光パネルユニット7による照射領域を展示台2の上面に限定することにより発光パネルユニット7の消費電力を低減できる。また、展示ケース1の外周に居る鑑賞者の目に光が直接入り込まないようにすることができる。
【0031】
また、発光パネルユニット7は、天井パネル6の上方に配置されているため、別途、発光パネルユニット7を支持するための部材を用いることなく、天井パネル6を利用して導光板ユニットを支持することができる。また、LED21から発生する熱によって暖められた空気が展示空間4内に入り込まないようになり、展示空間4内の温度上昇を防止することができる。そして、発光パネルユニット7が上方に露呈されているため、発光パネルユニット7の放熱性を向上させることができる。
【0032】
なお、従来の一般的な照明装置のように、照射面全体にLEDを配置して照射されるようにすると、LEDは点発光するようになっているため、その点発光が目立ってしまい、照射面全体にLEDの光のムラができてしまうようになっている。しかしながら本実施例の発光パネルユニット7では、LED21から照射された光が、一旦、導光板18に入射した後、拡散シート20を介して発光パネルユニット7の下面側から照射されるようになっており、その照射面全体がムラなく一様に発光するようになっている。
【0033】
図3に示すように、LED21が配置される照明基板22から配線17が発光パネルユニット7の外部に延び、この配線17は、発光パネルユニット7の角部から天井パネル6の角部に向かって延びている。そして、この配線17は、側面パネル3同士の間の角部に沿って下方側に延設されており(
図3の部分拡大図参照)、展示台2内部に配置されたACアダプタ(図示略)や制御回路(図示略)などに接続されている。なお、この制御回路は、室内に設けられたコンセント等から電力を供給されるようになっている。
【0034】
なお、本実施例のような発光パネルユニット7が天井パネル6に設置されている展示ケース1は、行灯型四面展示ケース1と称されている。また、本実施例の展示ケース1の天井パネル6をガラスパネル11のみで構成すると、行灯型五面展示ケースとすることができる。即ち本実施例の行灯型四面展示ケース1は、その製造工程の途中の段階まで行灯型五面展示ケースの製造工程と同一になっている。
【0035】
このように本実施例の行灯型四面展示ケース1は、行灯型五面展示ケースの製造工程を利用して、その行灯型五面展示ケースの天井パネル6に発光パネルユニット7を配置して行灯型四面展示ケース1を製造することができるようになり、行灯型五面展示ケースと行灯型四面展示ケース1とを同じ製造工程で製造することができ、展示ケース1の生産効率を向上させることができる。更に、発光パネルユニット7は、薄型に形成できるため、行灯型四面展示ケース1では、その天井パネル6の圧迫感がなくなり、行灯型五面展示ケースと行灯型四面展示ケース1との外観をほぼ同じように形成することができる。
【0036】
図6に示すように、展示台2には、アジャスター25やキャスター(図示略)が取り付けられて床面に設置される鉄骨フレーム部材23を有している。展示ケース1は、アジャスター25やキャスター(図示略)によって室内の任意の場所に移動して設置することができる。鉄骨フレーム部材23の上方には、展示品(図示略)を載置するための載置板26が設けられる。そして、鉄骨フレーム部材23の正面及び左右側面には、固定板27が設けられ、この固定板27に側面パネル3の下部が接着剤等により取り付けられる。また、鉄骨フレーム部材23の背面には、扉パネル5を開閉移動可能に支持する扉開閉装置28(移動支持手段)が設けられている。
【0037】
この扉開閉装置28は、鉄骨フレーム部材23に取り付けられたブッシュ部材29と、このブッシュ部材29により前後方向にスライド移動されるシャフト部材30と、を有している。そして、シャフト部材30の端部に取り付けられたレール基部31には、左右方向にスライド移動されるスライドレール装置32が設けられている。更に、スライドレール装置32には、左右方向にスライド移動される移動板33が設けられ、この移動板33に扉パネル5の下部が接着剤等により取り付けられる。
【0038】
図2に示すように、扉パネル5を開放する際には、作業者が扉パネル5の上端縁のカバー部材9を掴んで、扉パネル5を数センチほど背面側に引き出す。そして、扉パネル5を側方にスライド移動させて開放するようになっている。また、
図1に示すように、扉パネル5を閉鎖する際には、開放された扉パネル5をケース本体の背面までスライド移動させ、扉パネル5を正面側に押し込むことで閉鎖されるようになっている。
【0039】
次に、レール部材14について
図8から
図11を参照して詳述する。なお、
図9(a)は、
図8(a)のA−A断面に対応し、
図10は、
図8(b)のB−B断面に対応し、
図11は、
図10のC−C断面に対応している。
【0040】
図8及び
図9に示すように、天井パネル6の上面のレール部材14には、扉パネル5の閉鎖状態を維持するためのボールキャッチ34(係合手段)が設けられている。このボールキャッチ34は、天井パネル6の上面の左右2箇所に設けられている。そして、扉パネル5のカバー部材9の下面の左右2箇所には、ボールキャッチ34に係合する被係合部35が設けられている。
【0041】
また、ボールキャッチ34は、平面視で略凹形状をなし、被係合部35は、平面視で略凸形状をなしている。そして、被係合部35がボールキャッチ34に設けられた一対のボール49によって挟み込まれて接続されるようになっている(
図8(a)及び
図9(a)参照)。なお、天井パネル6の背面側の縁部には、展示空間4の密閉性を高めるためのパッキン部材36が設けられているとともに、側面パネル3の背面側の縁部にも、同様のパッキン部材37が設けられている。そして、作業者が扉パネル5を背面側に引き出すと、カバー部材9の被係合部35がボールキャッチ34から外れるようになっている(
図8(b)及び
図9(b)参照)。
【0042】
更に、
図7(a)に示すように、鉄骨フレーム部材23の背面側にも、扉パネル5の閉鎖状態を維持するためのボールキャッチ39(係合手段)が設けられている。そして、扉パネル5を支持するレール基部31には、ボールキャッチ39に係合する被係合部40が設けられている。扉パネル5を閉鎖した際には、扉パネル5側に設けられた被係合部35,40が、天井パネル6及び展示台2に設けられたボールキャッチ34,39に係合されることで、扉パネル5の閉鎖状態を維持するようになっている。そして、作業者が扉パネル5を背面側に引き出すと、扉パネル5の被係合部35,40がボールキャッチ34,39から外れるようになっている(
図7(b)参照)。
【0043】
図8及び
図9に示すように、天井パネル6の上面におけるカバー部材9の配置位置に対応する部位には、前述した開閉レール12及び案内レール13が形成されたレール部材14が取り付けられている。また、レール部材14は、カバー部材9と略同一寸法に形成されており、扉パネル5の閉鎖時には、カバー部材9によってレール部材14が覆われて保護されるようになっている(
図8(a)参照)。このレール部材14の上面側には、左右方向に延びて断面視で上方が開口された略コ字形状をなす開閉レール12が形成されている。また、レール部材14の左右位置には、それぞれ2本づつの案内レール13が形成されている。この案内レール13は断面視で略T字形状をなしている(
図11参照)。
【0044】
そして、カバー部材9の下面の左右2箇所には、レール部材14の開閉レール12及び案内レール13に案内される被案内部38が取り付けられている。この被案内部38は、左右方向に沿って長い矩形状をなしている(
図10及び
図11参照)。また、被案内部38は、摺動性の高いナイロン樹脂等の材質により形成されている。更に、被案内部38には、案内レール13の断面視形状と略同一形状をなす溝部50が形成されている。この溝部50が案内レール13に遊嵌されるようになっている。なお、開閉レール12において、カバー部材9の被係合部35及び被案内部38が通過する部位は切り欠かれている。この被案内部38が開閉レール12に案内されることで、扉パネル5の左右方向の移動が案内される。そして、被案内部38が案内レール13に案内されることで、扉パネル5の前後方向の移動が案内される。
【0045】
以上説明したように、本実施例の展示ケース1においては、扉パネル5が展示台2に設けられる扉開閉装置28(移動支持手段)により移動可能に支持され、扉パネル5には、その上端縁から天井パネル6の上面縁部を覆うように延設されるカバー部材9が設けられ、扉パネル5が天井パネル6に向かって移動されることでカバー部材9の少なくとも一部に係合されるボールキャッチ34(係合手段)が天井パネル6の上面に設けられることで、展示台2に扉開閉装置28を設けることで展示ケース1の重心を低くして地震等が発生した際に展示台2が揺れ難くなり、かつカバー部材9の自重により扉パネル5の上端縁が天井パネル6に向かって傾き易くなり、扉パネル5を閉じる際に、作業者がカバー部材9をボールキャッチ34に係合し易くなるばかりか、カバー部材9及びボールキャッチ34を介して互いに接続される扉パネル5とケース本体との密閉性を向上させることができる。また、カバー部材9やボールキャッチ34が天井パネル6の上面側に配置されることで、天井パネル6を薄く形成すること可能になるばかりか、扉パネル5の略全面を透明にすることが可能となり、鑑賞者が展示品を鑑賞する際の圧迫感を無くすこともできる。
【0046】
また、カバー部材9の下面には、ボールキャッチ34(係合手段)と係合する被係合部35が設けられ、かつ天井パネル6の上面縁部には、ボールキャッチ34と被係合部35との係合方向に沿ってカバー部材9の移動を案内する案内レール13が設けられることで、扉パネル5を閉める際に、案内レール13によりカバー部材9がぐらつかずに安定して移動されるようになり、ボールキャッチ34と被係合部35との係合をスムーズに行うことができる。
【0047】
また、案内レール13は、断面視で略T字形状をなし、案内レール13の断面視形状と略同一形状をなす溝部50がカバー部材9の被案内部38に設けられることで、案内レール13によりカバー部材9が案内される際に、水平方向のみならず上下方向にもぐらつかずに案内されるようになる。
【0048】
また、天井パネル6には、その上面周縁部におけるカバー部材9が配置される部位以外に、略枠状をなす枠部材8が設けられ、枠部材8の厚み寸法とカバー部材9の厚み寸法を略同一にしたことで、枠部材8によって天井パネル6が補強されて天井パネル6が歪み難くなり、ボールキャッチ34の配置精度が向上して、扉パネル5のがたつき等を防止できる。また、天井パネル6を外方から視認する際に、カバー部材9と枠部材8とが一体的な見栄えになり、体裁のよい展示ケース1を提供することができる。
【0049】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0050】
例えば、前記実施例では、発光パネルユニット7の照明手段としてLED21が用いられているが、本発明はこれに限ることなく、照明手段として冷陰極発光体(Cold Cathode Fluorescent Lamp:略称CCFL)を用いるようにしてもよい。
【0051】
また、前記実施例では、導光板18の前後の二辺側にLED21を有する2つの照明基板22が設けられていたが、1つの照明基板22を設けるようにして導光板18の内部に向かってLED21の光を照射させるようにしてもよいし、導光板18の四辺全てに照明基板22を設けるようにして、導光板18の内部に向かってLED21の光を照射させるようにしてもよい。
【0052】
また、前記実施例では、扉パネル5を開放させる際に、扉パネル5を背面側に引き出した後に側方にスライド移動させる構成となっているが、扉パネル5の開放形態は、これに限ることなく、扉パネル5を背面側のみに大きく引き出して開放させるようにしてもよいし、扉パネル5を揺動移動により開放させるようにしてもよい。