特許第5662251号(P5662251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662251
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】トンネル工事における接地方法
(51)【国際特許分類】
   E21F 17/06 20060101AFI20150108BHJP
   B60M 1/28 20060101ALN20150108BHJP
【FI】
   E21F17/06
   !B60M1/28 N
   !B60M1/28 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-124183(P2011-124183)
(22)【出願日】2011年6月2日
(65)【公開番号】特開2012-251351(P2012-251351A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2013年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】菊地 哲樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 真
(72)【発明者】
【氏名】久板 正弘
(72)【発明者】
【氏名】八木 裕生
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−154510(JP,A)
【文献】 特開2001−242206(JP,A)
【文献】 特開2001−063562(JP,A)
【文献】 特開2008−186748(JP,A)
【文献】 特開2007−336779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 17/06
B60M 1/28
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル坑内に少なくとも、レール、鋼製枕木、鋼製セグメント、鋼製支保工のいずれかを有するトンネル工事における接地方法であって、レール、鋼製枕木、鋼製セグメント、鋼製支保工のいずれかを接地極とし、前記接地極とするのに、トランス台車と後続の計装ケーブル台車の双方の連結器と並行してKIV線を接続し、片端はトランス台車の接地端子(A種,B種共通)に接続して、トンネル工事の進捗に併せて接地極の接地抵抗を継続して測定することを特徴とするトンネル工事における接地方法。
【請求項2】
坑外に設けた接地と、レール、鋼製枕木、鋼製セグメント、鋼製支保工のいずれかとを電気的に接続して接地極とする請求項1記載のトンネル工事における接地方法。
【請求項3】
接地極の設置抵抗を継続して測定は、連結器と並行して接続したKIV線を利用し、電路の共振現象利用のクランプ式接地抵抗計を用いて接地抵抗値を測定する請求項1または請求項2記載のトンネル工事における接地方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネル工事もしくは山岳トンネル工事における、トンネル掘進機用電気設備、及びトンネル工事用電気設備などの接地方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネル工事については、下記非特許文献にもあるように、近年、トンネル工事に用いるシールド掘進機、トンネルボーリングマシン(TBM)等のトンネル掘進機の大型化にともない、トンネル掘進機の近傍に受変電設備を設置して高電圧でトンネル坑内を送電して近傍の受変電設備で電圧を降圧してトンネル掘進機を駆動させる給電方式が多用されている。
【非特許文献1】TBM・シールドマシン用新方式高圧給電システムを開発・納入 三菱電線工業技報99号(2002年7月,P96)
【0003】
一方、電気設備の保安上の理由から接地工事を施すことが求められている。接地は例えば、以下の箇所・目的で施される。また、接地における接地抵抗は小さいことが好ましい。「電気設備技術基準」では構造物(鉄骨など)に接地する場合は2Ω以下が必要であるとされる。
【0004】
接地とは、大地と電気的に接続された状態(アース)のことであり、例えば、変圧器の外枠などは、常時は充電されてないけれど、変圧器の故障や絶縁劣化などの事故が起こった場合に、外枠部分が充電され触れて感電しないように施すことや、変圧器の二次側中性線:変圧器の故障により、二次側に一次側の高い電圧が混入した場合に電位を下げるという、保安上の要請によるものである。
【0005】
また、変圧器二次側中性線の接地は、地絡検出が確実に行えるようになる機能性の向上も含まれる。
【0006】
従来は図8に示すように、例えばシールド坑内の変電設備1(坑内キュービクル)まで地上から接地用電線2(KIV線など)をA種接地極3から敷設し接続していた。図中4はシールドマシン、5は切羽、6は(発進)立坑、7は第一柱、8はPASである。
【0007】
接地抵抗の測定は接地極施工時最初のみで、あとは毎年の年次点検時に停電して実施していた。
【0008】
なお、下記特許文献には、車輪やレールがアース兼マイナス側(−)であるとすることが記載されている。
【特許文献1】特開2007−336779号公報
【0009】
この特許文献1の明細書の段落番号0009では、「動力台車9と車体1との接続部にはコネクタ11が設けてあり、電源プラス線、アース線、ブレーキ制御用の圧縮空気配管が配置されている。動力台車9とともに、付随台車10側にも同一のコネクタ11が設けてあり、この付随台車10側のコネクタ11にも電源プラス線が配線されている。」とあり、段落番号0010では、「VVVFインバータ13には、車体1側より直流電源のプラス側が供給される。車輪16、レール17がアース兼マイナス側(−)であるので、動力台車9内にてこのマイナス側(−)と接続している。」とある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記のように、トンネル坑外地上に高圧受変電設備を設置することから、坑外地上に接地工事を施し接地点を設け、地上の接地極から接地用電線(KIV線等)をトンネル坑内へ敷設して接続していたのでは、トンネル工事の長距離化に伴い、トンネル坑内へ接地用電線を敷設する距離も延び、材料費・施工費が大幅に増加してしまう。
【0011】
例えばシールドトンネルなどでは施工距離分の接地用電線費用及び工事費がかかっていた。(例えば4kmのシールドトンネルなら4000m*電線単価KIV60mm2で600円=2,400,000)
【0012】
また、三電極法や二電極法の接地抵抗計では坑内キュービクル近傍で接地抵抗を測ることができなかった。
【0013】
さらに、接地工事は法令により、例えばA種接地工事であれば10Ω以下であることが求められるので大規模な工事となることがある。なお、前記のように、構造物(鉄骨など)に接地する場合は2Ω以下が必要である。
【0014】
このようにして、トンネル坑内は人・機材が近接して作業するため、保安上はより小さい抵抗の接地を施すことが求められている。
【0015】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、工事用資材の利用でアース線の節約がなされ、接地用電線費用と接地工事費の低減が図れ、また、接地抵抗をより低減でき、さらに、施工距離伸長に伴い前方へ随時移動する坑内キュービクル設置場所で接地抵抗が確認できるため、電気安全保安の面からも優れているシールドトンネル工事における接地方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため、請求項1および請求項2記載の本発明は、トンネル坑内に少なくとも、レール、鋼製枕木、鋼製セグメント、鋼製支保工のいずれかを有するトンネル工事における接地方法であって、レール、鋼製枕木、鋼製セグメント、鋼製支保工のいずれかを接地極とし、前記接地極とするのに、トランス台車と後続の計装ケーブル台車の双方の連結器と並行してKIV線を接続し、片端はトランス台車の接地端子(A種,B種共通)に接続して、トンネル工事の進捗に併せて接地極の接地抵抗を継続して測定すること、および、坑外に設けた接地と、レール、鋼製枕木、鋼製セグメント、鋼製支保工のいずれかとを電気的に接続して接地極とすることを要旨とするものである。
【0017】
請求項1および請求項2記載の本発明によれば、坑内キュービクル設置場所(施工距離伸長に伴い前方へ随時移動する)で接地抵抗が確認できるため、電気安全保安の面からも優れ、坑内の設備(レール、鋼製枕木、鋼製セグメント、鋼製支保工)を利用して接地工事を施工できるので、材料費、施工費を低減でき、接地用電線費用と接地工事費の低減が図れる。
【0018】
また、トンネルの進捗に従い、接地極の抵抗は小さくなる。したがって、トンネルの進捗にともない(簡易)接地工事を簡素化できる。
【0019】
さらに、連結器と並行して接続したKIV線を利用し、電路の共振現象利用のクランプ式接地抵抗計を用いて接地抵抗値を測定することで、継続しての測定が可能となり、変動に迅速に対応できる。
【0020】
請求項3記載の本発明は、接地極の設置抵抗を継続して測定は、連結器と並行して接続したKIV線を利用し、電路の共振現象利用のクランプ式接地抵抗計を用いて接地抵抗値を測定することを要旨とするものである。
【0021】
請求項3記載の本発明によれば、トランス台車と後続の計装ケーブル台車の双方の連結器と並行してKIV線を接続し、片端はトランス台車の接地端子(A種,B種共通)に接続することで、鋼製セグメント、鋼製枕木、レール、トランス台車などは今回全てスチールであり、電気的に全て接続されているため基準を満たす接地抵抗値となり、従来の接地線を地上受変電設備の接地極(A種接地)まで敷設する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように本発明のシールドトンネル工事における接地方法は、坑内の設備(レール、枕木、鋼製セグメント、鋼製支保工)を利用して接地工事を施工できるので、材料費、施工費を低減でき、施工距離伸長に伴い前方へ随時移動する坑内キュービクル設置場所で接地抵抗が確認できるため、トンネルの進捗に従い、接地極の抵抗は小さくなるので、電気安全保安の面からも優れているものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のシールドトンネル工事における接地方法の実施形態を示す全体の側面図、図2は同上要部の縦断正面図、図3は同上要部の側面図で、セグメントはスチールの鋼製セグメント10である長距離シールドトンネルの例である。
【0024】
図中11は台車で、レール12上を車輪13で走行する。そして、レール12は鋼製枕木14に支承され、鋼製枕木14と鋼製セグメント10とは接続している。(図2参照)
【0025】
本発明は、坑内キュービクルからの接地を鋼製セグメント10やレール12などに接続し、坑内キュービクル近傍で所定の接地抵抗値を満足する簡易接地工事を施すものである。
【0026】
本実施形態は、台車11のうち、後続台車であるトランス台車11aと後続の計装ケーブル台車11bの双方の連結器15と並行してKIV線16を接続し、片端はトランス台車11aの接地端子17(A種,B種共通)に接続した。
【0027】
こうして鋼製セグメント10で、鋼製枕木14、レール12、トランス台車11aなどは全てスチールであり、これらを地上の接地極と接続することで、より低い接地抵抗値を実現できる。例えば、地上の接地抵抗値を10Ωとして、安全上により低い抵抗値(5Ω)を目標値とした場合、レール枕木(抵抗値20Ω)と接続することにより、接地抵抗値は6.7Ωに低減できる。さらに、簡易接地工事(抵抗値20Ω)を施すことで、目標抵抗値(5Ω)を達成できる。
【0028】
接地点R=10Ωだとして、R2レール枕木(抵抗値20Ω)は、
となり、接地点とレール枕木を接続しただけでは、接地抵抗値は低減できても目標抵抗値を確保できない。これに、簡易接地工事(抵抗値20Ω)を施し接続することで
となり、目標抵抗値(5Ω)を確保できる。
【0029】
また、連結器15と並行して接続したKIV線16を利用し、電路の共振現象利用のクランプ式接地抵抗測定器18を用いて接地抵抗値を測定する。
【0030】
クランプ式接地抵抗測定器18は市販されているものでよく、接地線をクランプするだけで接地抵抗が測定できるもので、測定の原理は、接地回路はケーブルのL,Cを介し接地抵抗により閉ループが構成されていることから、注入用CTにより4kHz〜400kHz、320mVP−Pの電源を加え、電路が共振現象をおこしたとき重畳電圧と同相の最大電流となるのでR=v/iで計算し接地抵抗を求める。
【0031】
図4に示すように、クランプ式接地抵抗測定器18からの抵抗値出力(デジタルデータ)を常時コンピュータ(パソコン)に取り込み、このパソコンによりサイレンスッチのON/OFFや坑内キュービクルのVCBトリップの制御を行う。
【0032】
図5はかかる制御を示すフローチャートで、所定の抵抗値以上(A種の場合は2Ω)の場合は警報を発し、送電停止などの措置を行う。
【0033】
図5に示すように、デジタル設定値は2Ω以下か[ステップ(イ)]、NOの場合には警報を出力し[ステップ(ロ)]、サイレンスイッチをONし[ステップ(ハ)]、30分以内にリセットONか[ステップ(ニ)]を問い、YESの場合はサイレンスイッチをOFFし[ステップ(ヘ)]、NOの場合には坑内キュービクルのVCBトリップする[ステップ(ホ)]。
【0034】
このようにして、所要抵抗値と測定値との差から求められる、必要抵抗値を満足しない場合には、満足するような接地工事を坑内に施す。
【0035】
なお、前記実施形態は、スチールの鋼製セグメント10である長距離シールドトンネルの例を説明したが、山岳トンネル等で鋼製支保工を用いる場合でも、本発明は適用できるものである。
【0036】
図6図7はその例を示すもので、図中19は鋼製支保工、20は鋼製支保工19間に架け渡した鋼製タイロッド、21は2次巻コンクリート、5は切羽である。
【0037】
トランス台車11aと鋼製支保工19とは、車輪→レール→鋼製枕木14を介して接続するか、トンネルの進捗にともない(簡易な接地工事)、例えばアース線22をトランス台車11aと鋼製支保工19間に接続することにより、接地が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明のトンネル工事における接地方法の第1実施形態を示すもので、シールドトンネル工事の場合の全体の側面図である。
図2】本発明のトンネル工事における接地方法の第1実施形態を示すもので、シールドトンネル工事の場合の要部の縦断正面図である。
図3】本発明のトンネル工事における接地方法の第1実施形態を示すもので、シールドトンネル工事の場合の要部の側面図である。
図4】本発明のトンネル工事における接地方法のブロック図である。
図5】本発明のトンネル工事における接地方法の制御を示すフローチャートである。
図6】本発明のトンネル工事における第2実施形態を示すもので、山岳トンネルの場合の斜視図である。
図7】本発明のトンネル工事における第2実施形態を示すもので、山岳トンネルの場合の縦断側面図である。
図8】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1…変電設備 2…接地用電線
3…A種接地極 4…シールドマシン
5…切羽 6…立坑
7…第一柱 8…PAS
10…鋼製セグメント 11…台車
11a…トランス台車 11b…計装ケーブル台車
12…レール 13…車輪
14…鋼製枕木 15…連結器
16…KIV線 17…接地端子
18…クランプ式接地抵抗測定器
19…鋼製支保工 20…鋼製タイロッド
21…2次巻コンクリート 22…アース線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8