特許第5662280号(P5662280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662280
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   G01N27/58 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-178354(P2011-178354)
(22)【出願日】2011年8月17日
(65)【公開番号】特開2013-40861(P2013-40861A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2013年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】神前 和裕
(72)【発明者】
【氏名】渥美 尚勝
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−145397(JP,A)
【文献】 特開2004−212156(JP,A)
【文献】 特開平08−086770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスが流れる流路に挿入されるガスセンサであって、
軸線方向に沿って延びるセンサ素子と、
該センサ素子を保持する主体金具と、
該主体金具における前記挿入方向と反対側の端部側である後端側に固定される筒状に形成された内筒部材と、
該内筒部材の外側を径方向にわたって覆う筒状に形成された外筒部材と、
前記内筒部材および前記外筒部材の間に挟まれて配置された筒状の撥水性を有する通気フィルタと、
外径が前記内筒部材の内径よりも大きく形成され、前記内筒部材の内部に挿入される弾性材料から形成されたシール部材と、
が設けられ、
前記シール部材は、前記内筒部材の後端側内部であって、前記軸線方向において前記通気フィルタの一部と重なる位置に挿入されるとともに、挿入された前記シール部材は、前記内筒部材に圧入され、
前記外筒部材の後端側に設けられると共に径方向内側に突出する突出部によって、前記シール部材の後端面が係止されることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記シール部材における前記内筒部材の内周面と接触する外周面には、
該外周面から外側に向かって突出すると共に、前記外周面を環状にわたって延びるリブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記内筒部材における前記シール部材が配置されている領域の少なくとも一部は、径方向内側に変形されて、前記シール部材を径方向内側に押し付ける加締めが行われることを特徴とする請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記内筒部材の内部における前記センサ素子と前記シール部材との間には、前記センサ素子の後端および前記シール部材の先端の間を離間させるセパレータが配置され、
前記内筒部材および前記セパレータの間に形成された空間には、前記シール部材の先端部の一部が入り込んでいることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪や乗用車等の車両に搭載される内燃機関から排出される排気ガスに含まれる酸素等の検出に用いて好適なガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気ガスに含まれる酸素濃度を検知するガスセンサとして、酸素イオン導電性を有するガス検出素子が設けられたセンサであって、内燃機関の排気流路に取付けられるものが知られている(例えば、特許文献1から3参照)。上述のガス検出素子は、その内部に、言い換えるとガスセンサの内部に形成された基準ガス空間に基準ガスである大気が導かれている。その一方で、ガス検出素子の外部は内燃機関から排出される排気ガス中に露出されている。
【0003】
基準ガス空間は、主に、先端側が閉じられた円筒状に形成されたガス検出素子と、ガス検出素子を内部に収納する主体金具と、主体金具の後端側に配置された筒状の内筒部材と、内筒部材の後端の開口部を塞ぐゴム部品とから形成された空間である。さらに、内筒部材の外周には、撥水性を有すると共に通気性を有する通気フィルタと、内筒部材との間で通気フィルタを挟んで保持する外筒部材が配置されている。基準ガス空間は、内筒部材および外筒部材の円周面に形成された貫通孔である通気孔を介して、大気と連通されている(特許文献3参照)。通気孔は、その他に、特許文献2に記載されているように、内筒部材の後端に配置されるゴム部品に形成されてもよい。
【0004】
特許文献1から3に記載されたガスセンサでは、ガスセンサの後端に配置されたゴム部品を先端方向に押圧することにより、基準ガス空間に通気孔以外の大気との連通経路が形成されることを防止している、言い換えると基準ガス空間とガスセンサ外部とのシール性が確保されている。そのため、ガスセンサの後端から、ゴム部品の少なくとも一部を突出させて、ゴム部品を先端方向に押圧することを容易にしている。特許文献1から3に記載されたガスセンサでは、内筒部材または外筒部材の後端が、ゴム部品の後端を覆う形状とされ、ゴム部品を先端方向に押圧した状態で、内筒部材または外筒部材の先端を主体金具などに固定している。
【0005】
そして、ゴム部品の円周面または側面と、内筒部材または外筒部材と、の間のシール性は、内筒部材または外筒部材をゴム部品に向けて変形させる加締めにより確保される。ゴム部品に対する加締めは、同じく通気フィルタに対するシール性を確保する加締めの位置と比較して、後端側にずれた位置で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−004695号公報
【特許文献2】特開2003−035695号公報
【特許文献3】特開2004−212381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、通気フィルタに対する加締めの位置と、ゴム部品に対する加締めの位置を別々にした場合、それぞれの加締め位置を確保するために、ガスセンサの先端から後端までの長さが長くなるという問題、言い換えるとガスセンサの小型化を図ることが難しくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、先端から後端までの長さを短くして小型化を図ることができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のガスセンサは、被測定ガスが流れる流路に挿入されるガスセンサであって、軸線方向に沿って延びるセンサ素子と、該センサ素子を保持する主体金具と、該主体金具における前記挿入方向と反対側の端部側である後端側に固定される筒状に形成された内筒部材と、該内筒部材の外側を径方向にわたって覆う筒状に形成された外筒部材と、前記内筒部材および前記外筒部材の間に挟まれて配置された筒状の撥水性を有する通気フィルタと、外径が前記内筒部材の内径よりも大きく形成され、前記内筒部材の内部に挿入される弾性材料から形成されたシール部材と、が設けられ、前記シール部材は、前記内筒部材の後端側内部であって、前記軸線方向において前記通気フィルタの一部と重なる位置に挿入されるとともに、挿入された前記シール部材は、前記内筒部材に圧入され、前記外筒部材の後端側に設けられると共に径方向内側に突出する突出部によって、前記シール部材の後端面が係止されることを特徴とする。
【0010】
本発明のガスセンサによれば、内筒部材の後端側内部に挿入されるシール部材が、軸線方向において、通気フィルタの一部と重なる位置に挿入される。そのため、通気フィルタから後端側に離間した位置にシール部材が配置されていた従来のガスセンサと比較して、シール部材が先端側に移動して通気フィルタと重なることにより、ガスセンサの軸線方向の長さ、言い換えると先端から後端までの長さが短くなる。
【0011】
さらに、内筒部材の内部に挿入されたシール部材は径方向内側に圧縮されている、言い換えると、シール部材は内筒部材の内部に圧入されているため、圧縮されたシール部材が元の径に広がろうとする力で、内筒部材の内周面と、シール部材の外周面とが密着される。そのため、内筒部材を径方向内側に変形させることなく、シール部材と内筒部材との間のシール性を確保することができる。
【0012】
また、外筒部材の後端側に設けられると共に、径方向内側に突出する突出部によってシール部材の後端面を覆うことにより、シール部材を係止する、言い換えると、シール部材が内筒部材から後端側へ抜けるのが防止される。そのため、シール部材の外周面が内筒部材の内周面に押し付けられる力は、上述のシール性を満たす力であればよく、シール部材の抜けを防止する力までは必要とされない。
【0013】
上記発明において、前記シール部材における前記内筒部材の内周面と接触する外周面には、該外周面から外側に向かって突出すると共に、前記外周面を環状にわたって延びるリブが設けられていることが望ましい。
【0014】
このようにシール部材の外周面にリブを設けることにより、シール部材の外周面の全体が内筒部材の内周面に均一に押し付けられる場合と比較して、リブが内周面に押し付けられる力、言い換えるとリブと内周面との間の接触面圧が大きくなる。さらに、リブは外周面を環状にわたって切れ目なく延びて設けられているため、シール部材の外周面および内筒部材の内周面の間のシール性をより確保しやすくなる。
【0015】
上記発明において、前記内筒部材における前記シール部材が配置されている領域の少なくとも一部は、径方向内側に変形されて、前記シール部材を径方向内側に押し付ける加締めが行われることが望ましい。
【0016】
このように、内筒部材に対して加締めを行い、シール部材を径方向内側に押し付けることにより、シール部材の外周面および内筒部材の内周面の間のシール性をさらに確保しやすくなる。内筒部材に対する加締めは、外側に配置された通気フィルタおよび外筒部材を介して行われる。言い換えると、通気フィルタおよび外筒部材も径方向内側に変形される。この場合、通気フィルタを保持することを目的として外筒部材に対して行われる加締めの位置と、内筒部材に対して行われる加締めの位置とが同じであることが望ましい。
【0017】
上記発明において、前記内筒部材の内部における前記センサ素子と前記シール部材との間には、前記センサ素子の後端および前記シール部材の先端の間を離間させるセパレータが配置され、前記内筒部材および前記セパレータの間に形成された空間には、前記シール部材の先端部の一部が入り込んでいることが望ましい。
【0018】
このようにセパレータを配置することにより、センサ素子の後端とシール部材の先端とが離間されると共に、セパレータおよび内筒部材の間に空間が形成される。このとき、シール部材の先端部の一部がセパレータおよび内筒部材の間に入り込むことにより、セパレータと内筒部材との間隔が周方向にわたって均一になりやすくなり、セパレータが内筒部材の中央に配置されやすくなる。言い換えると、セパレータと内筒部材との間に円筒状の空間が形成されやすくなる。その結果、大気をセンサ素子の内部空間に導く経路を確保しやすくなる。
【0019】
例えば、内筒部材および外筒部材の側面に貫通孔を形成し、貫通孔から上述の円筒状の空間を介してセンサ素子の内部空間に大気を導く場合、周方向に位置に関わらず貫通孔を形成することにより、貫通孔を介して大気を上述の円筒状の空間に導く経路を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガスセンサによれば、内筒部材の内部に挿入されるシール部材が、軸線方向において、通気フィルタの一部と重なる位置に挿入されるため、シール部材を先端側に寄せて通気フィルタと重なる位置に配置することにより、ガスセンサの先端から後端までの長さを短くして小型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係るガスセンサの構成を説明する断面視図である。
図2図1のガス検出素子の構成を説明する図である。
図3図1のガスセンサの製造手順の一部を説明する模式図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るガスセンサの要部を説明する部分拡大断面視図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係るガスセンサの要部を説明する部分拡大断面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1の実施形態〕
この発明の第1の実施形態に係るガスセンサについて、図1から図3を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るガスセンサ1の全体構成を説明する断面視図である。
【0023】
本実施形態では、本発明のガスセンサを、例えば乗用車等の車両に搭載された内燃機関のエンジンヘッドに締結され、エンジンヘッド内に形成された排気流路内にガスセンサの先端部分が突出されたセンサであり、排気ガス中の酸素濃度を計測する酸素センサに適用して説明する。なお以下の説明では、軸線Oに沿う方向のうち、プロテクタ60の取り付けられる側を先端側とし、この逆側を後端側として説明する。
【0024】
なお、本実施形態では本発明のガスセンサを、エンジンヘッドに締結する例に適用して説明するが、その他に、エンジンから外部に延びるエギゾーストパイプなどの排気経路に取り付けてもよく、特に限定するものではない。
【0025】
本実施形態のガスセンサ1は、後述するガス検出素子10を加熱するためのヒータを備えていない、いわゆるヒータレスのセンサであり、排気ガスの熱によってガス検出素子10を加熱して活性化し、排気ガス中の酸素濃度を計測するものである。
【0026】
ガスセンサ1には、図1に示すように、ガス検出素子(センサ素子)10と、セパレータ20と、シール部材30と、端子金具40と、リード線45とが主として備えられているとともに、それらの周囲を覆う主体金具50と、プロテクタ60と、外筒(内筒部材)70と、保護外筒(外筒部材)80等が備えられている。
【0027】
図2は、図1のガス検出素子10の構成を説明する図であり、ガス検出素子10は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質から形成されたものである。ガス検出素子10は、軸線O方向に延びる円筒状に形成され、先端側の端部12が閉塞された素子本体11から主に構成されている。素子本体11の外周には、径方向外向きに突出する鍔部13が周方向にわたって設けられている。なお、本実施形態では、ガス検出素子10が筒状に形成された例に適用して説明しているが、筒状に形成されたものに限定されることなく、板状に形成されたものであってもよく、特に限定するものではない。
【0028】
素子本体11を構成する固体電解質としては、例えば、Y23又はCaOを固溶させたZrO2が代表的なものである。この個体電解質以外にも、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物とZrO2との固溶体である固体電解質を使用しても良い。また、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物とZrO2との固溶体に、さらにHfO2が含有された固体電解質を使用しても良い。
【0029】
素子本体11の外周面には、外側電極14と、縦リード部15と、環状リード部16とが形成されている。外側電極14は、ガス検出素子10の端部12に、PtあるいはPt合金(以下、「Pt等」と表記する。)を多孔質に形成した電極である。縦リード部15は、外側電極14から軸線O方向に延びる導電部であり、Pt等から形成されたものである。環状リード部16は、鍔部13の下面側(図2の下方)に環状に形成され、縦リード部15と導電可能に接続される導電部であり、Pt等から形成されたものである。素子本体11の内周面には、Pt等を多孔質に形成した内側電極17が形成されている。
【0030】
セパレータ20は、図1に示すように、ガス検出素子10の後端とシール部材30の先端との間に配置される部材であり、ガス検出素子10とシール部材30とを離間させるものである。セパレータ20は、電気絶縁性を有する材料、例えばアルミナから形成された円筒形状の部材であり、セパレータ20の軸中心には、リード線45が挿通される貫通孔21が形成されている。セパレータ20は、その外径が外筒70の内径よりも小さく形成されている、言い換えると、セパレータ20の外周面と、外筒70の内周面との間には空間または隙間が形成されている。
【0031】
シール部材30は、例えばフッ素ゴムなどの弾性材料からなる円筒形状の閉塞部材であり、外筒70の内部後端に配置される部材である。シール部材30の軸中心には、リード線45が挿通される貫通孔31が形成されている。シール部材30は、その外径が外筒70の内径よりも大きく形成されている。そのため、シール部材30は径方向内側に圧縮された状態で外筒70の内部に配置され、シール部材30の外周面が、外筒70の内周面に気密に密着されている。即ち、ガスセンサ1の後端は、シール部材30によって、気密に閉塞されている。
【0032】
シール部材30は、その先端面の径方向内側の部分が、セパレータ20の後端側に気密に密着し、径方向外側の部分が、セパレータ20および外筒70の間の空間に入り込んでいる。シール部材30の後端面は、径方向外側の部分が、保護外筒80の突出部81により覆われて係止されている。これによりシール部材30が外筒70の内部から後端側に抜けることが防止されている。
【0033】
端子金具40は、ニッケル合金(例えばインコネル750。英インコネル社製、登録商標)から形成された金具であり、センサ出力を外部に取り出す略筒状に形成された部材である。端子金具40は、リード線45に導電可能に接続されているとともに、ガス検出素子10の内側電極17に接触して配置されている。
【0034】
端子金具40の後端には、径方向外側に向かって延びる3つのフランジ片41が、周方向に等間隔に並んで設けられている。言い換えると、3つのフランジ片41の間には、周方向に広がる隙間が形成されている。フランジ片41によって、ガス検出素子10の後端とセパレータ20の先端との間には隙間が形成され、この隙間を介して、ガス検出素子10の内部空間18と、セパレータ20および外筒70の間に形成された空間とが連通されている。
【0035】
主体金具50は、図1に示すように、ステンレス合金(例えば、JIS規格のSUS430)から形成された部材であり、円筒状に形成された部材である。主体金具50には、ガス検出素子10の鍔部13を支持する段部51が、内周面から径方向内側に向かって、周方向にわたって突出して設けられている。
【0036】
主体金具50の先端側の外周面には、ガスセンサ1を内燃機関のエンジンヘッド(図示せず。)に取付けるネジ部52と、ネジ部52をエンジンヘッドにネジ込むための取付工具を係合させる六角部53と、が周方向にわたって設けられている。なお、主体金具50の先端から後端に向かって、ネジ部52、六角部53の順に並んで配置されている。更に、この主体金具50の後端側、言い換えると、六角部53の後端側に隣接した位置に筒状部54が設けられている。
【0037】
外筒70は、主体金具50とは異なるステンレス鋼(例えば、JIS規格のSUS304L)から形成された部材であり、主体金具50の内部に差し込まれると共に、セラミックスリーブ66の後端側に隣接して配置されるものである。外筒70は、軸線O方向に沿って延びる筒状に形成され、筒状部の先端が径方向外側に広がる鍔状に形成された部材である。外筒70における筒状部の側面には、貫通孔である通気孔71が設けられている。
【0038】
外筒70は、筒状部の内部にガス検出素子10の後端や、セパレータ20や、シール部材30が配置される部材である。外筒70の鍔状部は、先端側の面がセラミックスリーブ66と接触し、後端側の面には、ステンレス鋼(例えば、JIS規格のSUS430)からなる金属リング67が配置されている。
【0039】
また、主体金具50には、筒状部54の後端に外筒70を主体金具50に固定する加締め部55が設けられている。加締め部55は、筒状に延びる筒状部54の後端に対して力を加えて、径方向内側に向かって変形された部分である。加締め部55は、金属リング67や、外筒70の鍔状部や、セラミックスリーブ66や、セラミック粉末65などを軸線O方向に沿って先端側に押し付けている。
【0040】
外筒70の外周には、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いて筒状に形成された撥水性を有するフィルタ(通気フィルタ)75が配置されている。フィルタ75の先端側の端部は、主体金具50の加締め部55と、周方向にわたって接触している。フィルタ75は、通気は可能であるが水分の侵入は防止できるものである。
【0041】
フィルタ75の外周には、ステンレス鋼(例えばSUS304L)を用いて筒状に形成された保護外筒80が配置されている。保護外筒80は、外周側から加締められることにより、外筒70との間でフィルタ75を挟みこみ、保持するものである。さらに、保護外筒80の後端には、径方向内側に向かって鍔状に延びる突出部81が形成されている。突出部81は、シール部材30の後端面を、後端側から覆うものであり、シール部材30が外筒70の内部から後端側へ抜けるのを防止するものである。
【0042】
保護外筒80には、外筒70の通気孔71と対応する位置に、貫通孔である通気孔82が設けられている。通気孔71および通気孔82は、大気と、ガスセンサ1の内部、詳しくは、ガス検出素子10の内側電極17側の内部空間18とを空気の流通が可能に連通させるものである。
【0043】
次に、本実施形態のガスセンサ1の製造手順について簡単に説明する。
始めに、図1に示すように、主体金具50に形成された貫通孔内に、後端側から先端側に向けてプロテクタ60とガス検出素子10とを挿入する。次に、主体金具50とガス検出素子10との間の空間に、セラミック粉末65およびセラミックスリーブ66を配置する。
【0044】
セラミックスリーブ66の後端側に、鍔状部が接触するように外筒70を配置し、鍔状部の後端側の面に金属リング67を配置する。この状態で、主体金具50の筒状部54の後端を加締めて、具体的には、径方向外側から内側に向けて塑性変形させて加締め部55を形成する。加締め部55は、金属リング67を介して外筒70をセラミックスリーブ66に押し付けると共に、外筒70を主体金具50に固定する。
【0045】
その後、外筒70の外周を周方向にわたって覆うようにフィルタ75を配置する。このとき、フィルタ75の先端側の端部は、主体金具50の加締め部55に突き当てられ、加締め部55と外筒70との境目を周方向にわたって覆うように配置されている。
【0046】
その一方で、図3(a)に示すように、セパレータ20の貫通孔21とシール部材30の貫通孔31と保護外筒80にリード線45を通し、そのリード線45の先端に端子金具40を固定する。以下では、これを複合部材91と表記する。
【0047】
形成された複合部材91は、図3(b)に示すように、外筒70内に差し込まれて、端子金具40の先端がガス検出素子10の内部空間18に挿入され、端子金具40と内側電極17とが接触される。このとき、端子金具40は、フランジ片41がガス検出素子10の後端部に接触するまで挿入され、位置決めされる。
【0048】
同時に、セパレータ20およびシール部材30の先端側が外筒70内に挿入される。このとき、シール部材30は、径方向内側に圧縮されて外筒70内に挿入される、言い換えると、軸線O方向においてフィルタ75と重なる位置に圧入される。また、フィルタ75の外周側に保護外筒80が嵌め込まれる。
【0049】
挿入されたセパレータ20およびシール部材30は、先端に向かって押圧され、シール部材30の先端面の径方向内側の部分が、セパレータ20の後端側に気密に密着し、径方向外側の部分は、セパレータ20および外筒70の間の空間に、周方向にわたって入り込む。
【0050】
その後、図3(c)に示すように、保護外筒80を径方向外側から内側に向けて加締めることにより、外筒70および保護外筒80の間にフィルタ75が固定される。さらに、保護外筒80が外筒70に固定される。加締めは、上述のようにフィルタ75および保護外筒80を固定する目的で行われ、保護外筒80の径方向内側への変形量は、この目的が達成される程度であればよい。そのため、外筒70における加締めと対応する位置は、径方向内側に変形している必要はなく、外筒70の形状は円筒形状に保たれている。
【0051】
加締めは、通気孔71および通気孔82が形成された位置以外の位置(図3(c)の白抜き三角の位置)で行われる。本実施形態では、通気孔71および通気孔82が形成された位置の先端側および後端側の二つの位置で加締めが行われる例に適用して説明する。以上により、ガスセンサ1が完成する。
【0052】
上記の構成によれば、外筒70の後端側内部に挿入されるシール部材30が、軸線O方向において、フィルタ75の一部と重なる位置に挿入される。そのため、フィルタ75から後端側に離間した位置にシール部材30が配置されていた従来のガスセンサと比較して、シール部材30が先端側に移動してフィルタ75の少なくとも一部と重なることにより、ガスセンサ1の軸線O方向の長さ、言い換えると先端から後端までの長さを従来のガスセンサよりも短くし、ガスセンサ1の小型化を図ることができる。
【0053】
さらに、外筒70の内部に挿入されたシール部材30は径方向内側に圧縮されている、言い換えると、シール部材30は外筒70の内部に圧入されているため、圧縮されたシール部材30が元の径に広がろうとする力で、外筒70の内周面と、シール部材30の外周面とが密着される。そのため、外筒70を径方向内側に変形させることなく、シール部材30と外筒70との間のシール性を確保することができる。
【0054】
保護外筒80の後端側に設けられると共に径方向内側に突出する突出部81によってシール部材30の後端面を覆うことにより、シール部材30を係止する、言い換えると、シール部材30が外筒70から後端側へ抜けるのが防止される。そのため、シール部材30の外周面が外筒70の内周面に押し付けられる力は、上述のシール性を満たす力であればよく、シール部材30の抜けを防止する力までは必要とされない。
【0055】
セパレータ20を配置することにより、ガス検出素子10の後端とシール部材30の先端とが離間されると共に、セパレータ20および外筒70の間に空間が形成される。このとき、シール部材30の先端部の一部がセパレータ20および外筒70の間に入り込むことにより、セパレータ20と外筒70との間隔が周方向にわたって均一になりやすくなり、セパレータ20が外筒70の中央に配置されやすくなる。言い換えると、セパレータ20と外筒70との間に円筒状の空間が形成されやすくなる。その結果、大気をガス検出素子10の内部空間18に導く経路を確保しやすくなる。
【0056】
例えば、外筒70および保護外筒80の側面にそれぞれ通気孔71および通気孔82を形成し、通気孔71および通気孔82から上述の円筒状の空間を介してガス検出素子10の内部空間18に大気を導く場合、周方向に位置に関わらず通気孔71および通気孔82を形成することにより、通気孔71および通気孔82を介して大気を上述の円筒状の空間に導く経路を確保することができる。
【0057】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係るガスセンサついて図4を参照して説明する。
本実施形態のガスセンサの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、シール部材の形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図4の本実施形態に係るガスセンサの要部を説明する部分拡大断面視図を用いてシール部材を中心に説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0058】
ガスセンサ101には、図4に示すように、ガス検出素子10と、セパレータ20と、シール部材130と、端子金具40と、リード線45とが主として備えられているとともに、それらの周囲を覆う主体金具50と、外筒70と、保護外筒80等が備えられている。
【0059】
シール部材130は、例えばフッ素ゴムなどの弾性材料からなる円筒形状の閉塞部材であり、外筒70の内部後端に配置される部材である。シール部材130の軸中心には、リード線45が挿通される貫通孔31が形成されている。
【0060】
シール部材130の外周面には、外周面から径方向外側に向かって突出する環状のリブ132が設けられている。リブ132は、その外径が外筒70の内径よりも大きく形成されている。そのため、リブ132は、径方向内側に圧縮された状態で外筒70の内部に配置され、リブ132が外筒70の内周面に気密に密着されている。即ち、ガスセンサ101の後端は、シール部材130のリブ132によって、気密に閉塞されている。
【0061】
本実施形態では、シール部材130の外周面に、リブ132が3つ軸線O方向に等間隔に並んで配置されている例に適用して説明する。なお、リブ132の数は、3つよりも多くてもよいし、少なくてもよく、特に限定するものではない。
【0062】
また、シール部材130の外周面自体は、その外径が外筒70の内径よりも小さく形成されていてもよいし、外筒70の内径以上に形成されていてもよい。本実施形態では、外周面の外形が外筒70の内径よりも小さく形成されている例に適用して説明する。
【0063】
シール部材130は、その先端面の径方向内側の部分が、セパレータ20の後端側に気密に密着し、径方向外側の部分が、セパレータ20および外筒70の間の空間に入り込んでいる。シール部材130の後端面は、径方向外側の部分が、保護外筒80の突出部81により覆われて係止されている。これによりシール部材130が外筒70の内部から後端側に抜けることが防止されている。
【0064】
本実施形態のガスセンサ101の製造手順は、第1の実施形態に係るガスセンサ1の製造手順と比較して、シール部材130の構成が異なるだけで、製造手順自体は同様であるため、その説明を省略する。
【0065】
上記の構成によれば、シール部材130の外周面にリブ132を設けることにより、シール部材130の外周面の全体が外筒70の内周面に均一に押し付けられる場合と比較して、リブ132が外筒70の内周面に押し付けられる力、言い換えるとリブ132と外筒70の内周面との間の接触面圧が大きくなる。さらに、リブ132はシール部材130の外周面を環状にわたって切れ目なく延びて設けられているため、シール部材130の外周面および外筒70の内周面の間のシール性をより確実に確保できる。
【0066】
なお、上述の実施形態では、シール部材130は、セパレータ20側の面である先端面が平坦に形成された例に適用して説明したが(図4参照)、先端面の形状を第1の実施形態のシール材30のように、径方向外側の部分がセパレータ20および外筒70の間の空間に入り込む形状としてもよく、特に限定するものではない。
【0067】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係るガスセンサついて図5を参照して説明する。
本実施形態のガスセンサの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、外筒の形状が異なっている。よって、本実施形態においては、図5の本実施形態に係るガスセンサの要部を説明する部分拡大断面視図を用いて外筒の形状を中心に説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0068】
ガスセンサ201には、図5に示すように、ガス検出素子10と、セパレータ20と、シール部材30と、端子金具40と、リード線45とが主として備えられているとともに、それらの周囲を覆う主体金具50と、外筒270と、保護外筒80等が備えられている。
【0069】
外筒270は、主体金具50とは異なるステンレス鋼(例えば、JIS規格のSUS304L)から形成された部材であり、主体金具50の内部に差し込まれると共に、セラミックスリーブ66の後端側に隣接して配置されるものである。外筒270は、軸線O方向に沿って延びる筒状に形成され、筒状部の先端が径方向外側に広がる鍔状に形成された部材である。外筒270における筒状部の側面には、貫通孔である通気孔71が設けられている。
【0070】
さらに、外筒270における保護外筒80の加締めと対応する位置は、径方向内側に変形している。つまり、保護外筒80を径方向外側から内側に向けて変形させる加締めを行う際に、同時に、外筒270における加締めと対応する位置も径方向外側から内側に向けて変形される。
【0071】
本実施形態のガスセンサ201の製造手順は、第1の実施形態に係るガスセンサ1の製造手順と比較して、外筒270に対してまで加締めが行われるか否かが異なるだけで、製造手順自体は同様であるため、その説明を省略する。
【0072】
上記の構成によれば、外筒270に対して加締めを行い、シール部材30を径方向内側に押し付けることにより、シール部材30の外周面および外筒270の内周面の間のシール性をさらに確保しやすくなる。外筒270に対する加締めは、外側に配置されたフィルタ75および保護外筒80を介して行われる。言い換えると、フィルタ75および保護外筒80も径方向内側に変形される。この場合、フィルタ75を保持することを目的として保護外筒80に対して行われる加締めの位置と、外筒270に対して行われる加締めの位置とが同じであることが、加締めを行う箇所を増加させないという観点から望ましい。なお、加締めを行う箇所が増加しても問題がない場合には、フィルタ75を保持することを目的として保護外筒80に対して行われる加締めの位置と、外筒270に対して行われる加締めの位置とが異なっていてもよい。
【0073】
なお、上述の実施形態のガスセンサ201では、外周面が円筒状に形成されたシール部材30を用いた例に適用して説明したが、シール部材30の代わりに、外周面にリブ132が設けられたシール部材130を用いてもよく、その組合せを特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0074】
1,101,201…ガスセンサ、10…ガス検出素子(センサ素子)、20…セパレータ、30,130…シール部材、50…主体金具、70,270…外筒(内筒部材)、75…フィルタ(通気フィルタ)、80…保護外筒(外筒部材)、81…突出部、132…リブ
図1
図2
図3
図4
図5