特許第5662317号(P5662317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662317
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/14 20060101AFI20150108BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20150108BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20150108BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20150108BHJP
【FI】
   B29C55/14
   C08J5/18CFD
   B29K67:00
   B29L7:00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-525972(P2011-525972)
(86)(22)【出願日】2009年9月2日
(65)【公表番号】特表2012-502133(P2012-502133A)
(43)【公表日】2012年1月26日
(86)【国際出願番号】KR2009004892
(87)【国際公開番号】WO2010027172
(87)【国際公開日】20100311
【審査請求日】2012年8月28日
(31)【優先権主張番号】10-2008-0087788
(32)【優先日】2008年9月5日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ギ サン
(72)【発明者】
【氏名】キム シー ミン
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−265318(JP,A)
【文献】 特開2000−141472(JP,A)
【文献】 特開平10−180866(JP,A)
【文献】 特公昭44−020240(JP,B1)
【文献】 特開昭53−096072(JP,A)
【文献】 特開昭55−123426(JP,A)
【文献】 特開昭62−211124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B29C 55/00−55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリエステル樹脂を圧出、冷却して未延伸シートを製造する段階と、
b)前記シートを、600〜900℃に加熱されたIRヒーター区間を通過させながら1〜10倍に1次延伸し、500〜800℃に加熱されたIRヒーター区間を通過させながら1〜3倍延伸して、総縦方向(MD)に2.88〜10倍延伸する段階と、
c)縦方向延伸の後、100〜200℃で横方向(TD)に3.5〜10倍延伸する段階と、
d)205〜245℃で熱処理する段階と、
e)熱処理後、テンター内で熱処理温度より5〜35℃低い温度で横方向(TD)に3〜8%の比率で緩和すると同時に、縦方向(MD)に対して3〜8%の比率で同時緩和する段階と、
を含む耐熱寸法安定性に優れたポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記同時緩和は、少なくとも一つ以上の区間で横方向(TD)緩和と縦方向(MD)緩和を同時に適用する請求項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記同時緩和は、170〜240℃温度範囲で行う請求項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記同時緩和は、テンター内でクリップ間の間隔及び幅を同時に調節してフィルムの応力を緩和させる請求項に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムに関し、具体的には、プリズムフィルム用ベースフィルムに用いられるポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエステルフィルムは、機械特性、熱特性、電気特性及び耐化学性に優れるため、多くの分野で用いられている。
【0003】
特に、光学用ポリエステルフィルムの製造時、延伸されたフィルムの寸法安定性を向上させるために熱処理段階を経るが、縦方向の収縮率を改善するには限界があり、熱処理時、高温によって縦方向及び横方向での強度、伸度及び光学特性の低下を誘発する。
【0004】
通常、熱処理で縦方向の収縮応力は低めることができるが、単純熱処理では縦方向の低収縮化に限界があった。
【0005】
従って、フィルムの寸法安定性を向上させるための多様な方法が研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐熱寸法安定性に優れたポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【0007】
より具体的には、縦方向(Machine Direction、以下MD)の収縮率を改善したポリエステルフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、縦方向(MD)の収縮率が0.5%以下(150℃、30分)で、縦方向(MD)の最大収縮応力が0.20Kg/mm以下(150℃、3分、初期荷重0.007Kg/mm)であり、横方向(Transverse Direction、以下TD)の最大収縮応力が0.05Kg/mm以下(150℃、3分、初期荷重0.007Kg/mm)であるポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、プリズムフィルムのベースフィルムとして用いられるに適したポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリエステルフィルムの製造時、縦方向(MD)の収縮率を減少させることにより耐熱寸法安定性に優れたフィルムを製造する方法に関する。
【0011】
本発明は、縦方向(MD)及び横方向(TD)の延伸後、熱処理段階を経たフィルムを緩和(Relaxation)する段階を加えて、フィルムの安定性を向上させる方法に関し、横方向(TD)の緩和時に縦方向(MD)の緩和を同時に適用することにより、もっとも効果的に耐熱寸法安定性を向上させることができるということを見出し、本発明を完成した。
【0012】
具体的に本発明は、
a)ポリエステル樹脂を圧出、冷却して未延伸シートを製造する段階と、
b)前記シートを縦方向(MD)に延伸する段階と、
c)縦方向延伸の後、横方向(TD)に延伸する段階と、
d)熱処理する段階と、
e)熱処理後、テンター内で横方向(TD)に緩和すると同時に、縦方向(MD)に対して1%以上の比率で同時緩和する段階と、
を含む耐熱寸法安定性に優れたポリエステルフィルムの製造方法に関する。
【0013】
本発明における前記同時緩和は、延伸されたフィルムの長さに対して横方向(TD)に1〜10%、縦方向(MD)に1〜10%の比率で緩和させ、前記熱処理温度より5〜35℃低い温度範囲、具体的には170〜240℃温度範囲で行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ポリエステルフィルムの製造時、縦方向(MD方向)の収縮率を減少させることにより、耐熱寸法安定性に優れたフィルムを提供することができる。
【0015】
一般的に、横方向(TD方向)の熱収縮率は熱処理温度、緩和(Relaxation)率の調整を通じて容易に調節することができるが、縦方向(MD方向)の収縮率を調整することは非常に難しく、収縮率の調整による物性低下が発生する。
【0016】
通常、縦方向(MD方向)の収縮率を低めるためには、テンター内の熱処理温度を高めることによるか、縦方向の延伸倍率を低めることにより調節するが、このような場合、収縮率を制御するに限界があるだけでなく、フィルムの機械的物性の低下及び光学的特性の低下を誘発するため、産業用に適したフィルムを製造することが困難である。
【0017】
そこで、本発明は、フィルムの物性低下及び光学的特性の低下が発生しないながらも、縦方向(MD)及び横方向(TD)の収縮率を制御することができる方法を提供することにより、産業用及び光学用に適した耐熱寸法安定性に優れたフィルムを製造することができる。
【0018】
また、本発明によって製造されたフィルムを適用した場合、コーティング(Coating)及び熱処理を含む後工程中におけるフィルムの熱的形態安定性に優れるため、後工程時、熱による変形などによって発生する不良を減少させ、最終製品に使用時、熱による形態変形が少ないためフィルム自体の特性及び平滑性を維持することができ、製品の価値を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
【0020】
本発明における前記ポリエステルは、通常のフィルムに用いられるポリエステルであれば制限されないが、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(以下PET)、またはエチレンテレフタレートを主な反復単位とする共重合体からなる樹脂を用いる。
【0021】
前記ポリエステルは、ジオールとジカルボン酸の重縮合によって得られる。本発明に使用できるジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸及びセバシン酸などが挙げられ、ジオールの例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。本発明に使用できるポリエステルとしては、例えばポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロへキシレンジメチレンテレフタレート及びポリエチレン−2,6−ナフタレートなどが挙げられる。これらポリエステルは、単独重合体、共重合体であることができ、また本発明に使用できる共単量体としては、例えばジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール及びポリアルキレングリコールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸、及びヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などのヒドロキシカルボン酸成分が挙げられる。
【0022】
本発明において、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)、それらの共重合体及び変性重合体などが好ましい。
【0023】
本発明において、「延伸」は大きく、ローラー群(Rollers)の速度差を利用して縦方向(MD)にフィルムを引っぱることにより縦方向(MD)に配向させる縦方向(MD)延伸と、テンターオーブンを用いてフィルムの両端をクリップで固定しながらフィルムを搬送して横方向(TD)にフィルムを引っぱることにより横方向(TD)に配向させる横方向(TD)延伸とがある。
【0024】
本発明において、ポリエステルフィルムを延伸するための延伸温度、具体的には予熱及び延伸ローラー(Roller)温度、IR−ヒーター温度と延伸回数及び延伸パターンは特に限定されない。
【0025】
より好ましい一例として、縦方向(MD)の延伸時、予熱を経て600〜900℃に加熱されたIRヒーター区間を通過しながら1〜10倍に1次延伸し、500〜800℃に加熱されたIRヒーター区間を通過しながら1〜3倍延伸して、総縦方向(MD)に1〜10倍の延伸を行う。
【0026】
次いで、予熱区間を経て100〜200℃で横方向(TD)に1〜10倍延伸した後、205〜245℃で熱処理して固定させる。
【0027】
次に、熱処理温度より5〜35℃低い温度範囲、具体的には170〜240℃温度範囲で横方向(TD)に緩和する段階を経て、横方向(TD)の緩和時、同時に縦方向(MD)に1%以上緩和して、縦方向(MD)に対する耐熱寸法安定性を向上させる。
【0028】
より具体的には、前記同時緩和は、延伸されたフィルムの長さに対して、横方向(TD)に1〜10%、縦方向(MD)に1%以上緩和させる。同時緩和時、横方向(TD)の緩和比率は限定されないが、1〜10%が好ましく、縦方向(MD)の緩和比率は1〜10%が好ましい。さらに好ましくは、3〜8%の比率で緩和させることが熱収縮率だけでなく、フィルムの光学的物性がより優れるため好ましい。
【0029】
縦方向(MD)の緩和(Relaxation)率が1%未満の場合はその効果が微小で、縦方向(MD)の熱収縮率を0.5%以下にすることが困難であり、10%を超過する場合は縦方向(MD)の強度低下をもたらし、設備の限界によりフィルムに皺が発生して外観が不良になる。
【0030】
より好ましくは、3〜8%の範囲で緩和することが好ましく、前記範囲で緩和する場合、縦方向(MD)の熱収縮率が0.4%以下に製造され、プリズムフィルムの製造工程で熱変形が少なく、光学的特性に優れたフィルムを製造することができる。
【0031】
本発明における「緩和(Relaxation)」とは、フィルムの両端をクリップで固定させながらフィルムを搬送し、縦方向(MD)及び横方向(TD)にフィルムを弛めて応力を緩和させる操作を意味する。
【0032】
また、「同時緩和」とは、横方向(TD)の緩和時、同時に縦方向(MD)の緩和を行うことを意味し、同時緩和時、区間を決めて数回、即ち多段階で横方向(TD)緩和と縦方向(MD)緩和を同時に行うことができる。この際、少なくとも一つ以上の区間で同時緩和を行うことができる。
【0033】
本発明によるフィルムの熱収縮率においては、150℃のオーブン(Oven)で無張力下で30分間処理時、縦方向(MD)の熱収縮率が0.5%以下である。より具体的には、0.0〜0.5%である。また、初期荷重(Load)0.007Kg/mm下で150℃のテストライト(Testrite)で3分間測定時、縦方向(MD)の最大収縮応力が0.20Kg/mm以下、横方向(TD)の最大収縮応力が0.05Kg/mm以下である。
【0034】
縦方向(MD)の熱収縮率が0.5%より大きい場合は、プリズムフィルムの製造工程または最終製品化して使用する時、熱による変形によってフィルムに皺の発生を誘発して平滑性を低下させ、不良が発生しやすい。従って、縦方向(MD)の熱収縮率は0.5%以下であることが好ましい。
【0035】
また、縦方向(MD)の最大収縮応力が0.20Kg/mm以下、具体的には0.00〜0.20Kg/mmで、横方向(TD)の最大収縮応力が0.05Kg/mm以下、具体的には0.00〜0.05Kg/mmである。縦方向(MD)の最大収縮応力が0.20Kg/mmを超過する場合は、後工程時にフィルムに加えられる熱によってコーティング層の変形を誘発し、外観を不良にする。横方向(TD)の最大収縮応力が0.05Kg/mmを超過する場合は、ウエーブ(Wave)及び皺(Wrinkle)を誘発して平滑性(Flatness)が低下する。
【0036】
従って、本発明は前記条件を全て満足させることを目的とし、これにより、耐熱寸法安定性及び光学特性に優れたプリズムフィルムを製造することができる。
【0037】
本発明のポリエステルフィルムは、無機及び有機粒子、酸化防止剤、静電気防止剤及び結晶核形成剤などの多様な添加剤を含むことができる。無機粒子として使用できる化合物は限定されないが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び酸化チタンのような酸化物、カオリン、タルク及びモンモリロナイトのような酸化化合物(compound oxide)、炭酸カルシウム及び炭酸バリウムのような炭酸塩、硫酸カルシウム及び硫酸バリウムのような硫酸塩、バリウムチタネート及びカリウムチタネートのようなチタネート、第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及び第一リン酸カルシウムのようなリン酸塩などが挙げられる。目的に応じて、これら化合物を2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明に使用できる有機粒子としては限定されないが、ポリスチレン粒子または架橋ポリスチレン粒子のようなビニル系粒子、スチレンアクリル粒子またはアクリル架橋粒子、スチレンメタクリル粒子またはメタクリル架橋粒子、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド粒子、シリコン粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などが挙げられる。ポリエステルに対して不溶性の成分であれば、如何なる有機重合体微粒子を用いてもよい。また、有機粒子は球状で、均一な粒子サイズ分布を有するものが、易滑性及びフィルム表面の突起形成の均一性の点において好ましい。粒子の粒径、量、形状などは用途及び目的に応じて適宜選択することができる。粒子の平均粒径は0.2〜5.0μmであることが好ましく、粒子含量は10〜1000ppmであることが好ましい。
【0039】
本発明におけるフィルムの全体厚さは、フィルムの用途及び目的に応じて適宜決めることができる。本発明によるフィルムは、プリズムフィルム用ベースフィルムとして有用に用いることができ、厚さは50〜350μmであることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の具体的な説明のための一例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0041】
以下、本発明におけるフィルムの物性は次の方法によって測定した。
【0042】
1)熱収縮率
フィルムを20cm×20cmの正方向に裁断してフィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)の長さを測定した後、これを150℃のオーブンで無荷重状態で30分間熱収縮させた後、熱収縮されたフィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)の長さを測定し、縦方向(MD)及び横方向(TD)の熱収縮率を下記式1によって求めた。
【0043】
<式1>
熱収縮率(%)={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100
【0044】
2)最大収縮応力
テストライト(MKV Shrinkage−Force Tester、Testrite Ltd)を利用して150℃で3分間、時間による縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の収縮応力を測定し、この際、各方向毎の最大収縮応力を試料の断面積で除して、下記式2によって最大収縮応力値を求めた。
【0045】
この際、試料の幅は15mm、長さは400mmにし、試料を平らに固定するために初期荷重は0.007Kg/mmを与えた。
【0046】
<式2>
最大収縮応力=最大収縮応力の測定値(Kg)/試料の断面積(幅×厚さ;mm
【0047】
例)最大収縮応力の測定値:10N(1.02Kg=10/9.8Kg)
試料の断面積:1.5mm(試料の幅15mm、厚さ100μmの場合)
最大収縮応力(Kg/mm)=1.02Kg/1.5mm=0.68Kg/mm
【0048】
3)強度、伸度
フィルムを幅15mmにし、標点距離(Gauge Length)を50mmにし、引張速度(Cross head−up speed)を500mm/minにして、引張試験機(Instron社、Tensile Test Machine)を利用してフィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)に対する引張特性を測定した。
【0049】
4)光学的特性の評価(ヘイズ測定)
測定方法は、ASTM D−1003を基準に測定し、ポリエステルフィルムの二つの周辺部、一つの中心部から無作為に7個の部分を抽出した後、各5cm×5cmのサイズに切り出して、ヘイズ測定機(日本電色社NDH300A)に入れて、555nm波長の光を透過させて下記式3で計算した後、最大/最小値を除いた平均値を算出した。
【0050】
<式3>
ヘイズ(%)=(全体散乱光/全体透過光)×100
【0051】
[実施例1]
テレフタル酸100モル%、グリコール成分としてエチレングリコールを124モル%、触媒として3酸化アンチモンを酸成分に対して0.05モル用いて、直接エステル化法によって縮重合した固有粘度0.64dl/gのポリエステルを製造した後、これを275℃で溶融圧出して急速冷却することにより、未延伸シートを製造した。
【0052】
前記未延伸シートを、連続的に縦方向(MD)に移送されるローラー群(MDO:Machine Direction Organization)で予熱を経て、760℃に加熱されたIRヒーター区間を通過しながら2.5倍、650℃に加熱されたIRヒーター区間を通過しながら1.3倍延伸して、総3.25倍に縦方向(MD)延伸を行った。
【0053】
縦方向(MD)延伸を経た直後、テンターに移送し、次いで125℃の予熱区間を経て150℃で幅に対して3.5倍延伸させた後、230℃で熱処理を行った直後、210℃に加熱された一つの区間で横方向(TD)に4.2%の緩和(Relaxation)を適用し、同時に縦方向(MD)に4%の緩和(Relaxation)を適用することにより、125μm厚さのフィルムを製造した。
【0054】
このように製造されたフィルムの熱収縮率、最大収縮応力、強度、伸度及びヘイズを測定して、下記表2に示した。
【0055】
[実施例2〜4]
前記実施例1と同一の方法で未延伸シートを製造し、縦方向(MD)の延伸倍率、IRヒーター区間温度、熱処理温度、縦方向(MD)緩和(Relaxation)率、横方向(TD)緩和(Relaxation)率、緩和区間の数、緩和温度及び緩和区間で縦方向(MD)と横方向(TD)の緩和(Relaxation)率勾配を異にしてフィルムを製造し、これに対する詳細条件は表1に示し、製造されたフィルムの特性を表2に示した。
【0056】
[比較例1]
縦方向(MD)延伸を経た直後、テンターに移送して横方向(TD)延伸した後、210℃に加熱された区間で縦方向(MD)に6%緩和させた後、次いで210℃に加熱された区間で横方向(TD)に4.2%緩和したことを除き、前記実施例1と同一の方法で製造されたフィルムの特性を表2に示した。
【0057】
[比較例2]
横方向(TD)延伸後、210℃に加熱された区間で縦方向(MD)に緩和せずに、横方向(TD)のみに4.2%緩和したことを除き、前記実施例1と同一の方法で製造されたフィルムの特性を表2に示した。
【0058】
[比較例3]
熱処理区間の温度を245℃にしたことを除き、前記比較例2と同一の方法で製造したフィルムの特性を表2に示した。
【0059】
[比較例4]
縦方向(MD)の緩和率を0.8%にしたことを除き、前記実施例1と同一の方法で製造したフィルムの特性を表2に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
前記表1において、MD(またはTD)方向緩和率、MD(またはTD)方向緩和率勾配、緩和区間温度の意味は以下の通りである。
【0062】
−MD(またはTD)方向緩和率:MD(またはTD)方向に与えられる総緩和率
【0063】
−MD(またはTD)方向緩和率勾配:MD(またはTD)方向に適用された総緩和率を、緩和区間で適用された比率で除して適用する。
例)「MD方向緩和率6%、MD方向緩和率勾配3/2/1
&TD方向緩和率4.2%、TD方向緩和率勾配2.1/1.4/0.7」の意味
;縦方向(MD)に総6%の緩和率を適用するにあたり、3区間に分けて、1区間では3%、2区間では2%、3区間では1%の緩和率を適用して総6%の緩和率を縦方向(MD)に適用し、横方向(TD)に総4.2%の緩和率を適用するにあたり、3区間に分けて、1区間では2.1%、2区間では1.4%、3区間では0.7%の緩和率を適用して総4.2%の緩和率を横方向(TD)に適用する。
【0064】
−緩和区間温度:縦方向(MD)と横方向(TD)の緩和率が適用された区間の温度
【0065】
【表2】
【0066】
前記表2に示すように、本発明によるフィルムは、縦方向(MD)の収縮率が0.5%以下(150℃、30分)で、縦方向(MD)の最大収縮応力が0.20Kg/mm以下(150℃、3分、初期荷重0.007Kg/mm)で、横方向(TD)の最大収縮応力が0.05Kg/mm以下(150℃×3分、初期荷重0.007Kg/mm)であることが分かる。
【0067】
しかし、比較例は、縦方向(MD)に緩和させた後、次いで横方向(TD)に緩和させた比較例1の場合、縦方向(MD)の収縮率が0.8%であり、このようなフィルムを利用してプリズムフィルムを製造する場合、熱による変形によって皺の発生を誘発して平滑性が低下する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、ポリエステルフィルムの製造時、縦方向(MD方向)の収縮率を減少させることにより、耐熱寸法安定性に優れたフィルムを提供することができる。また、本発明によって製造されたフィルムを適用する場合、コーティング(Coating)及び熱処理を含む後工程中におけるフィルムの熱的形態安定性に優れるため、後工程時に熱による変形などによって発生する不良を減少させ、最終製品に使用時、熱による形態変形が少ないためフィルム自体の特性及び平滑性を維持することができ、製品の価値を高めることができる。