特許第5662324号(P5662324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000002
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000003
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000004
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000005
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000006
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000007
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000008
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000009
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000010
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000011
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000012
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000013
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000014
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000015
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000016
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000017
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000018
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000019
  • 特許5662324-ステントデリバリーシステム 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662324
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ステントデリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20150108BHJP
【FI】
   A61F2/966
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-531912(P2011-531912)
(86)(22)【出願日】2010年9月10日
(86)【国際出願番号】JP2010065638
(87)【国際公開番号】WO2011034010
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2009-214985(P2009-214985)
(32)【優先日】2009年9月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089060
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 正一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 良太
(72)【発明者】
【氏名】北岡 孝史
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−508936(JP,A)
【文献】 実開平04−025755(JP,U)
【文献】 特開2007−097620(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0255653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61M 29/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを放出可能であるステントデリバリーシステムであって、
前記内側チューブ体は、少なくとも前記ステントの基端部内となる位置に設けられ、前記ステントを前記ステント収納チューブ体方向に押圧する弾性部材を備え、かつ、前記弾性部材は、前記内側チューブ体への固定部と前記ステントを押圧する弾性部を有するワイヤコイルであり、前記ステントは、前記弾性部材と前記ステント収納チューブ体とにより挟持され、かつ前記ステント収納チューブ体に対して摺動可能となっていることを特徴とするステントデリバリーシステム。
【請求項2】
前記弾性部は、前記内側チューブ体に対して、前記ステント収納チューブ体を基端側に引いた時基端側に倒れるように変形し、前記内側チューブ体に対して、前記ステント収納チューブ体を先端側に押した時先端側に倒れるように変形するものである請求項に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項3】
前記ワイヤコイルの少なくとも前記弾性部は、基端側もしくは先端側に傾斜している請求項に記載のステントデリバリーシステム。
【請求項4】
前記弾性部材は、複数設けられている請求項1ないしのいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記ステントの中央部から基端部にかけて複数設けられている請求項1ないしのいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記ステントの先端部から基端部にかけて複数設けられている請求項1ないしのいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【請求項7】
前記弾性部材は、前記ステントの内周の少なくとも一部を押圧するものである請求項1ないしのいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【請求項8】
前記弾性部材は、前記ステントの内周の少なくとも一部を押圧するものであり、前記弾性部材は、複数設けられており、各前記弾性部材が押圧する前記ステントの部位は、前記ステントの軸方向にほぼ直線状となっている請求項1ないしのいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【請求項9】
前記弾性部材は、前記ステントの内周の少なくとも一部を押圧するものであり、前記弾性部材は、複数設けられており、隣り合う前記弾性部材が押圧する前記ステントの部位は、前記ステントの軸方向に異なるものとなっている請求項1ないしのいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【請求項10】
前記弾性部材は、前記ステントの内周の少なくとも一部を押圧するものであり、前記弾性部材は、複数設けられており、各前記弾性部材が押圧する前記ステントの部位は、前記ステントの軸方向にジグザグ状となっている請求項1ないしのいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【請求項11】
前記ワイヤコイルは、前記固定部として、前記内側チューブ体への始端側固定部を有し、さらに、前記ワイヤコイルは、終端側固定部あるいは自由端と、前記弾性部として、前記始端側固定部と前記終端側固定部あるいは自由端間に設けられ前記ステントの軸方向に所定長延びる螺旋状のステント押圧用弾性部を有している請求項1ないし10のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【請求項12】
前記内側チューブ体は、前記ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、該先端側チューブの基端側に先端部が固定された内側チューブ本体とを備える請求項1ないし1のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【請求項13】
前記ステントデリバリーシステムは、前記ワイヤコイルの前記弾性部および前記ステントの前記弾性部により押圧されていた部位が、前記ステント収納チューブ体の先端開口より露出し、前記ステントが、自己拡張力により拡張したとき、両者は接触しない状態となるものである請求項1ないし12のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部、もしくは閉塞部の改善に使用されるステントデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するためにそこに留置する一般的には管状の医療用具である。
以下血管を例に説明するが、これに限定されるものではない。
ステントは、体外から生体内に挿入するため、挿入時は直径が小さく、目的の狭窄もしくは閉塞部位で拡張させて直径を大きくし、かつその管腔をそのままで保持する物である。
ステントとしては、金属線材、あるいは金属管を加工した円筒状のものが一般的である。カテーテルなどに細くした状態で装着され、生体内に挿入され、目的部位で何らかの方法で拡張させ、その管腔内壁に密着、固定することで管腔形状を維持する。ステントは、機能および留置方法によって、自己拡張型ステントとバルーン拡張型ステントに区別される。バルーン拡張型ステントはステント自体に拡張機能はなく、バルーンの上にマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。一方、自己拡張型ステントはステント自体に拡張機能を持たせたものであり、ステント収納チューブ体内に細く縮めた状態として収納して生体内に挿入し、目的部位でステント収納チューブ体から放出することで自ら元の拡張された状態に戻り管腔内壁に密着、固定して管腔形状を維持する。
現在のステント留置の目的は、何らかの原因で狭窄した血管を元の開存状態に戻すことであり、主にはPTCA等の手技を施した後に起こる再狭窄の予防、その低減化を図るものがほとんどである。近年においては、より再狭窄の確率を抑制するために、免疫抑制剤や制癌剤等の薬剤を搭載した薬剤溶出ステントも使用されており、その効果が一般的に知られている。
自己拡張型ステントはその多くは下肢の血管や頚動脈といったペリフェラル領域において使用されており、例えば、特許文献1(特表平11−505441号公報、WO96/26689)に示すような形態を備えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11−505441号公報(WO96/26689)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような自己拡張型ステントをステント収納チューブ体内に収納したステントデリバリーシステムでは、ステントの持つ自己拡張性により、留置時のポジショニングがバルーン拡張型ステントと比較して難しく、ステントがステント収納チューブ体より不用意に飛び出すジャンピング現象が起こることがあり、この現象が生じるとステントは、予定配置位置よりずれた位置に配置される。また、ステント留置手技中において、ステントをある程度ステント収納チューブ体より露出させた後に、留置位置の再調整が必要となる場合がある。しかし、特許文献1のようなものでは、ステントのステント収納チューブ体内への再収納は困難である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、自己拡張型ステントをステント収納チューブ体内に収納したステントデリバリーシステムであって、ステント収納チューブ体よりステントを放出する際に、ステントの自己拡張性に起因する不用意な飛び出しがなく、かつ、ステントをある程度ステント収納チューブ体より露出させた後であっても、再度ステント収納チューブ体内に収納することができるステントデリバリーシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを放出可能であるステントデリバリーシステムであって、前記内側チューブ体は、少なくとも前記ステントの基端部内となる位置に設けられ、前記ステントを前記ステント収納チューブ体方向に押圧する弾性部材を備え、かつ、前記弾性部材は、前記内側チューブ体への固定部と前記ステントを押圧する弾性部を有するワイヤコイルであり、前記ステントは、前記弾性部材と前記ステント収納チューブ体とにより挟持され、かつ前記ステント収納チューブ体に対して摺動可能となっているステントデリバリーシステム。
【発明の効果】
【0007】
本発明のステントデリバリーシステムは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつステントが内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつステント収納チューブ体を内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、ステントを放出可能であるステントデリバリーシステムであって、内側チューブ体は、少なくともステントの基端部内となる位置に設けられ、ステントをステント収納チューブ体方向に押圧する弾性部材を備え、ステントは、弾性部材とステント収納チューブ体とにより挟持され、かつステント収納チューブ体に対して摺動可能となっている。
【0008】
このように、ステントは弾性部材とステント収納チューブ体とにより挟持されているためステントがステント収納チューブ体から不用意に飛び出すことがない。また、弾性部材とステント収納チューブ体とにより挟持されている部分が残っている状態であれば、ステント収納チューブ体よりステントを部分的に露出した後においても、挟持部における保持力により、ステントの露出部分をステント収納チューブ体内に再収納することが可能であり、ステントの配置位置を修正することができ、ステントを目的とする部位に確実に配置可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施例であるステントデリバリーシステムの部分省略正面図である。
図2図2は、図1に示したステントデリバリーシステムの縦断面図である。
図3図3は、図1に示したステントデリバリーシステムのステント収納チューブ体(シース)の部分省略正面図である。
図4図4は、図1に示したステントデリバリーシステムの内側チューブ体の部分省略正面図である。
図5図5は、図1に示したステントデリバリーシステムの先端部付近を説明するための説明図である。
図6図6は、図5のA−A線拡大断面図である。
図7図7は、図1に示したステントデリバリーシステムの中間部付近の内部構造を説明するための説明図である。
図8図8は、図1に示したステントデリバリーシステムの内側チューブ体を説明するための説明図である。
図9図9は、図1に示したステントデリバリーシステムの基端部付近を説明するための説明図である。
図10図10は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部付近を説明するための説明図である。
図11図11は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部付近を説明するための説明図である。
図12図12は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部付近を説明するための説明図である。
図13図13は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部付近を説明するための説明図である。
図14図14は、本発明の他の実施例のステントデリバリーシステムの先端部付近を説明するための説明図である。
図15図15は、本発明のステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
図16図16は、本発明のステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
図17図17は、本発明のステントデリバリーシステムの作用を説明するための説明図である。
図18図18は、本発明のステントデリバリーシステムに使用される生体内留置用ステントの一例の正面図である。
図19図19は、図18の生体内留置用ステントの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のステントデリバリーシステムを図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明のステントデリバリーシステム(言い換えれば、生体器官病変部改善用器具)1は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント10と、ガイドワイヤルーメン61を有する内側チューブ体(シャフト部)3と、ステント10を先端部内に収納したステント収納チューブ体(シース)2とを備え、かつステント10が内側チューブ体3の先端部を覆うように配置され、かつステント収納チューブ体2を内側チューブ体3に対して基端側に移動させることにより、ステント10を放出可能であるステントデリバリーシステムである。 そして、内側チューブ体3は、少なくともステントの基端部内となる位置の外面に設けられ、ステント10をステント収納チューブ体2方向に押圧する弾性部材5を備え、ステント10は、弾性部材5とステント収納チューブ体2とにより挟持され、かつステント収納チューブ体2に対して摺動可能となっている。また、ステント10は、弾性部材5に対して実質的に摺動不能となっている。
【0011】
そして、図示する実施例のステントデリバリーシステム1では、内側チューブ体は、シャフト部3により構成されており、ステント収納チューブ体は、シース2により構成されている。具体的には、この実施例のステントデリバリーシステム1は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント10と、ガイドワイヤルーメン61を有するシャフト部3と、ステント10を先端部内に収納したシース2とを備え、かつステント10がシャフト部3の先端部を被包するように配置されている。
また、図示する実施例のステントデリバリーシステム1は、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント10と、ステント10を先端部内に収納したステント収納チューブ体(シース)2と、ステント収納チューブ体(シース)2内を摺動可能に挿通し、ステント10をステント収納チューブ体(シース)2の先端より放出するためのシャフト部3とを備える。ステント10は、ステント収納チューブ体(シース)2の先端側を向く先端部と基端側を向く基端部を備え、さらに、基端部を除き少なくとも基端側に突出する屈曲自由端を実質的に持たず、ステント収納チューブ体(シース)2から先端側部分の露出後にステント収納チューブ体(シース)2を内側チューブ体(シャフト部)3に対して先端側に移動させることにより、露出部分をステント収納チューブ体(シース)2に再収納可能なものとなっている。ステントデリバリーシステム1は、ステントデリバリーシステムの先端にて一端が開口し、他端がシース2のステント収納部位より基端側にて開口するガイドワイヤルーメン61を有する。
【0012】
本発明のステントデリバリーシステム1は、ステント10と、ステント10を先端部内に収納したシース(ステント収納チューブ体)2と、シース2内を摺動可能に挿通するシャフト部(内側チューブ体)3とにより構成されている。
シース(ステント収納チューブ体)2は、図1ないし図9に示すように、シースチューブ21と、シースチューブ21の基端に固定されたシースハブ22を備える。
シースチューブ21は、図1ないし図9に示すように、管状体であり、先端および基端は開口している。先端開口は、ステント10を生体内の病変部位に留置する際、ステント10の放出口として機能する。ステント10は、この先端開口より放出されることによって応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。シースチューブ21の先端部は、ステント10を内部に収納するステント収納部位21aとなっている。また、シースチューブ21は、ステント収納部位21aより基端側に設けられた側孔23を備えている。側孔23は、ガイドワイヤを外部に導出するためのものである。
シースチューブ21の外径としては、0.5〜4.0mmが好ましく、特に、0.8〜2.0mmが好ましい。また、シースチューブ21の内径としては、0.2〜1.8mmが好ましい。シースチューブ21の長さは、300〜2500mmが好ましく、特に、300〜2000mmが好ましい。
シースチューブ21の形成材料としては、シースチューブに求められる物性(柔軟性、硬度、強度、滑り性、耐キンク性、伸縮性)を考慮して、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
【0013】
さらに、シース2の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、シースチューブ21の内面に、ステント10及びシャフト部3との摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
また、シースチューブ21の基端部には、図1ないし図3および図8に示すように、シースハブ22が固定されている。シースハブ22は、図8に示すように、シャフト部3を摺動可能、かつ液密に保持するシール部材25を備えている。また、シースハブ22は、サイドポート24を備えている。
シースハブ22の構成材料としては、硬質もしくは半硬質材料が使用される。硬質もしくは半硬質材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー)、スチレン系樹脂[例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)]、ポリエステルなどの合成樹脂、ステンレス鋼、アルミもしくはアルミ合金などの金属が使用できる。
また、シール部材25および後述する弾性リング69の構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー等が使用される。
また、シースハブ22の先端部には、シースハブの先端より先端側に延びる補強部材26,27が設けられている。
【0014】
シャフト部(内側チューブ体)3は、図1ないし図6に示すように、シャフト本体33と、シャフト本体33の先端に設けられ、シース2の先端より突出する先端側チューブ31と、シャフト本体33の基端部に固定されたシャフトハブ30とを備えている。
そして、この実施例では、シャフト部3は、シース2のステント収納部位より基端側の側部にて開口するガイドワイヤルーメンの基端側開口を備え、シース2は、ステント収納部位より基端側に設けられた側孔23を備え、側孔23および基端側開口より、ガイドワイヤを挿通可能となっている。
先端側チューブ31は、図5に示すように、シース2の先端より突出する。また、先端側チューブ31には、シース2の先端方向への移動を阻止するストッパー32が設けられている。先端側チューブ31の基端部は、図7に示すように、湾曲し、シースチューブ21の側孔23に侵入し、離脱可能に係合している。先端側チューブ31の外径は、0.2mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端側ストッパー32の先端部は、図5に示すように、先端側に向かって縮径していることが好ましい。ストッパー32の最大径部の外径は、0.5〜4.0mmであることが好ましい。また、ストッパー32の基端部も図5に示すように、基端側に向かって縮径していることが好ましい。また、先端側チューブ31は、先端より基端まで伸びるガイドワイヤルーメン61を有しており、その基端開口62の位置は、先端側チューブ31の先端より、10〜400mm、特に、50〜350mm基端側に位置することが好ましい。また、基端開口62の位置は、配置されるステント10の後端(言い換えれば、ステント収納部位の後端)より、50〜250mm程度基端側であることが好ましい。
【0015】
そして、内側チューブ体3の外面には、ステント10をステント収納チューブ体2方向に押圧する弾性部材5を備える。ステント10は、弾性部材5とステント収納チューブ体2とにより挟持され、かつステント収納チューブ体2に対して摺動可能となっている。また、ステント10は、弾性部材5に対して実質的に摺動不能となっている。
この実施例のステントデリバリーシステム1では、弾性部材5は、内側チューブ体3(具体的には、先端側チューブ31)の外面に固定されている。そして、弾性部材5は、図5および図6に示すように、先端側チューブ31への固定部51とステント10を押圧する弾性部52を有するワイヤコイルである。固定部51は、ワイヤコイルを構成するワイヤを先端側チューブ31に巻き付けることにより形成されており、弾性部52は、図5および図6に示すように、固定部51を形成するワイヤが先端側チューブ31より離間するとともに拡径することにより構成されている。
弾性部52は、シース2内に収納されたステント10を押圧可能な大きさかつバネ弾性を有するものとなっている。また、この実施例では、ワイヤコイルからなる弾性部材5の少なくとも弾性部52は、図5に示すように、ステントデリバリーシステム1の軸方向に垂直な面に対して若干傾斜していることが好ましい。
このように、ワイヤコイルからなる弾性部材5の弾性部52が傾斜することにより、ステント10の押圧がより良好なものとなる。さらに、ワイヤコイルからなる弾性部材5の弾性部52は、内側チューブ体3に対して、ステント収納チューブ体(シース)2を基端側に引いた時、応力が伝わって基端側に倒れるように変形し、内側チューブ体3に対して、ステント収納チューブ体(シース)2を先端側に押した時、応力が伝わって先端側に倒れるように変形するものであることが好ましい。また、この実施例では、弾性部材5は、図5および図6に示すように、ステント10の内周の少なくとも一部を押圧するものとなっている。
【0016】
そして、この実施例のステントデリバリーシステム1では、弾性部材5は、複数設けられている。特に、図5に示すステントデリバリーシステム1では、弾性部材5は、ステント10の先端部内から基端部内にかけて複数設けられている。また、弾性部材5の配置間隔は、ほぼ等間隔となっている。さらに、図5に示すステントデリバリーシステム1では、各弾性部材5は、上述したように、ステント10の内周の少なくとも一部を押圧するものであり、かつ、各弾性部材5が押圧するステントの部位は、ステントの軸方向にほぼ直線状となっている。
また、弾性部材は、複数設けられており、かつ、ステントの基端側に多く存在しているものであってもよい。例えば、図10に示す実施例のステントデリバリーシステム20のように、ステントの基端側に向かうに従って、距離が近くなるように複数の弾性部材を配置してもよい。このようにすることにより、ステントの基端側でのグリップ力が向上する。
また、弾性部材5は、ステント10の基端部内となる位置側に1つのみ設けてもよく、さらには、図11に示す実施例のステントデリバリーシステム30のように、ステントの中央部内から基端部内に複数設けられており、ステントの中央部内から先端部内には全く配置されていないものであってもよい。
【0017】
また、図12に示す実施例のステントデリバリーシステム40のように、複数の弾性部材5a,5bを有し、それら弾性部材5a,5bは、ステント10の内周の少なくとも一部を押圧するものであり、かつ、隣り合う弾性部材が押圧するステントの部位は、ステントの軸方向に異なるものであってもよい。この実施例のステントデリバリーシステム40では、ステント10を押圧する部位がステントの中心軸に対してほぼ180度異なる2つの弾性部材5a,5bを備えている。弾性部材5a,5bは、それぞれの弾性部52の突出方向がステントの中心軸に対してほぼ180度異なるものとなっている。そして、この実施例のステントデリバリーシステム40では、弾性部材5aと弾性部材5bが交互に配置されている。このため、各弾性部材5a,5bが押圧するステントの部位は、ステントの軸方向にジグザグ状となっている。このようにすることにより、ステントの全体をバランスよくグリップする。なお、上記の実施例では、隣り合う弾性部材の突出する弾性部が、約180度ずつずれるものとなっているが、隣り合う弾性部材の突出する弾性部が、例えば、45度〜120度ずつずれ、突出する弾性部が螺旋状となるように配置してもよい。また、このタイプのステントデリバリーシステムにおいても、図13に示すように、弾性部材がステントの基端側に多く存在しているものであってもよい。図13に示す実施例のステントデリバリーシステム50では、ステントの基端側に向かうに従って、弾性部材5aと弾性部材5b間の距離が近くなるように配置されている。
なお、複数の弾性部材を設ける場合の弾性部材間の間隔としては、0.1〜10mm、特に、1〜5mmが好ましい。
【0018】
また、図14に示す実施例のステントデリバリーシステム60のように、弾性部材5cは、内側チューブ体31への始端側固定部53と終端側固定部54と、始端側固定部53と終端側固定部54間に設けられステント10の軸方向に所定長延びる螺旋状のステント押圧用弾性部55を有するワイヤコイルであってもよい。この弾性部材5cは、1本のワイヤにて形成されており、一端部を内側チューブ体31に巻き付けることにより、始端側固定部53を形成し、他端部を内側チューブ体31に巻き付けることにより終端側固定部54を形成している。なお、弾性部材5cの終端側は内側チューブ体に固定されておらず、自由端を形成していてもよい。螺旋状のステント押圧用弾性部55は、ステント10の内周の特定部方向に突出し、ステントの内周の少なくとも一部を押圧している。このため、螺旋状のステント押圧用弾性部55が押圧するステントの部位は、ステントの軸方向にほぼ直線状となっている。
【0019】
また、図15に示す実施例のステントデリバリーシステム70のように、弾性部材5dは、内側チューブ体31への始端側固定部56と終端側固定部57と、始端側固定部56と終端側固定部57間に設けられステント10の軸方向に所定長延びかつ中央部が突出した板バネ状のステント押圧用弾性部58を有するものであってもよい。この弾性部材5dは、上述したようなワイヤコイルではない。なお、弾性部材5dの終端側は内側チューブ体に固定されておらず、自由端を形成していてもよい。また、この弾性部材5dでは、ステント押圧用弾性部58を複数備えており、弾性部材5dが配置されたステント10の内周面を複数の部位にて押圧するものとなっている。
この弾性部材5dは、中央部に複数の切欠部を有する筒状体となっており、始端側固定部56および終端側固定部57は、カシメることにより内側チューブ体31に固定されている。また、この弾性部材5dは、複数、具体的には、4つの中央部が外方に突出するように変形した板バネ状のステント押圧用弾性部58を備えている。なお、図15に示す実施例のステントデリバリーシステム70では、ステント10の基端部内に1つのみ弾性部材5dが配置されているが、他の実施例のステントデリバリーシステム1、20、30のように複数配置してもよい。
【0020】
弾性部材を形成するワイヤコイルの線材形成材料としては、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼線)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)などの金属線材や、ポリアミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等の比較的高剛性の高分子材料製の線材が使用される。
また、弾性部材5は、X線造影性を有するものであってもよい。これにより、X線造影下でステントの基端部付近の位置を把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性の付与は、弾性部材5をX線造影性材料により形成することもしくはX線造影性材料を被覆することにより行うことができる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。
【0021】
そして、この実施例のステントデリバリーシステム1では、内側チューブ体3(具体的には、先端側チューブ31)は、ステント収納チューブ体2のステント収納部位より基端側にてガイドワイヤルーメンと連通する開口62を備える。
また、先端側チューブ31は、少なくともステントの後端部より基端側となる部分に補強層31aを備えることが好ましい。この実施例のものでは、補強層31aは、先端側チューブ31の全体にわたり設けられている。なお、補強層31aは、先端側チューブ31の最先端部分には設けないものとしてもよい。補強層31aは、網目状の補強層であることが好ましい。網目状の補強層は、ブレード線で形成することが好ましい。ブレード線は、例えば、線径0.01〜0.2mm、好ましくは0.03〜0.1mmのステンレス、弾性金属、超弾性合金、形状記憶合金等の金属線で形成することができる。または、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維で形成してもよい。
【0022】
シャフト本体33は、先端側チューブ31の基端部に固定された先端部と、先端部より所定長基端側に伸びる本体部と、シャフトハブ30より突出する基端部とを有している。そして、この実施例では、シャフト本体33は、先端側チューブ31に固定された先端部が、小径部となっており、本体部および基端部は、小径部より、外径が大きいものとなっている。そして、この実施例では、シャフト本体33の先端部は、熱収縮チューブ63により、先端側チューブ31の側面に固定されている。
シャフト部3の長さは、400〜2500mmが好ましく、特に、400〜2200mmが好ましい。また、シャフト本体33の本体部の外径としては、1.0〜2.5mmが好ましく、特に、1.0〜2.0mmが好ましい。また、先端側チューブ31の長さは、10〜400mmが好ましく、特に、50〜350mmが好ましく、外径は、0.2〜2.0mmが好ましい。また、ルーメン61の内径としては、0.2〜2.0mmが好ましく、特に、0.3〜1.0mmが好ましい。
【0023】
シャフト本体33としては、中実のもの、あるいは管状のものであってもよい。また、コイルシャフトでもよい。シャフト部3の形成材料としては、硬度があってかつある程度の柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ステンレス鋼、超弾性金属などの金属線もしくは金属パイプ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどの棒状体もしくは管状体などが好適に使用できる。なお、シャフト部3の外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する材料をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
さらに、シャフト部3のうち、シース2より突出する可能性のある部分の外面は、潤滑性を有していることが好ましい。このために、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをコーティング、または固定してもよい。また、シャフト部3の外面全体に上記のものをコーティング、または固定してもよい。さらに、ガイドワイヤとの摺動性を向上させるために、シャフト部3の内面にも上記のものをコーティング、または固定してもよい。
【0024】
そして、シャフト本体33は、シース2内を貫通し、シース2の基端開口より突出している。シャフト本体33の基端部付近には、図1図2及び図9に示すように、シャフトハブ30が固着されている。この実施例では、シャフト本体33には、図8に示すように、固定リング66が固定されている。また、シャフトハブ30には、ハブ30より先端側に伸びる基端チューブ34が固定されている。そして、基端チューブ34の先端部が固定リング66に固定されている。また、基端チューブ34の基端(シャフトハブ30の内部)には、弾性リング69が固定されている。さらに、この実施例では、固定リング66より所定長先端側に第2の固定リング68が設けられている。そして、固定リング66と第2の固定リング68間には、中間チューブ67が配置されている。中間チューブ67は、シャフト本体33およびシースチューブ21のいずれにも固定されておらず、かつ、固定リング66および第2の固定リング68と当接可能なものとなっている。このような中間チューブを設けることにより、シースの摺動が良好なものとなる。中間チューブ67を形成する材料としては、低摩擦性表面を有するものが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマーなどにより形成されたチューブが好ましい。
【0025】
そして、本発明で使用するステント10は、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能な、いわゆる自己拡張型ステントである。さらに、ステント10は、シース2の先端側を向く先端部と基端側を向く基端部を備え、さらに、基端部を除き少なくとも基端側に突出する屈曲自由端を実質的に持たず、シース2から先端部の露出後にシース2を先端側に移動させることにより、露出先端部をシース2に再収納可能なものが用いられている。
使用するステントとしては、基端側屈曲部の頂点もしくは頂点付近が他の線状要素と結合することにより、自由端を持たないものとなっているものであってもよい。また、使用するステントとしては、図18および図19に示すようなものであってもよい。図18は、本発明のステントデリバリーシステムに使用される生体内留置用ステントの一例の正面図である。図19は、図18の生体内留置用ステントの展開図である。
このステント10は、ステントの一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された波状ストラット13,14と、各隣り合う波状ストラットを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つもしくは複数の接続ストラット15とを備え、さらに、波状ストラット13,14の端部は、近接する波状ストラットの端部と結合されている。
【0026】
特に、図18および図19に示すステント10は、ステント10の一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第1波状ストラット13と、第1波状ストラット13間に位置し、ステントの一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第2波状ストラット14と、各隣り合う第1波状ストラット13と第2波状ストラット14とを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つもしくは複数の接続ストラット15とを備える。そして、第2波状ストラット14の頂点は、ステント10の周方向に近接しかつ同じ方向に湾曲する第1波状ストラット13の頂点に対して、ステントの軸方向に所定長ずれたものとなっている。また、第1波状ストラット13の端部13a、13bは、近接する第2波状ストラットの端部14a、14bと結合されている。
この実施例のステント10は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するいわゆる自己拡張型ステントとなっている。
【0027】
第1波状ストラット13は、ステントの中心軸にほぼ平行に軸方向に延びるものとなっている。そして、第1波状ストラット13は、ステントの周方向に複数本配列されている。第1波状ストラット13の数としては、3本以上であることが好ましく、特に、3〜8本程度が好適である。さらに、複数本の第1波状ストラット13は、ステントの中心軸に対してほぼ等角度となるように配置されていることが好ましい。
第2波状ストラット14もステントの中心軸にほぼ平行に軸方向に延びるものとなっている。そして、第2波状ストラット14は、ステントの周方向に複数本配列されており、各第2波状ストラット14は、各第1波状ストラット間に配列されている。第2波状ストラット14の数としては、3本以上であることが好ましく、特に、3〜8本程度が好適である。さらに、複数本の第2波状ストラット14は、ステントの中心軸に対してほぼ等角度となるように配置されていることが好ましい。また、第2波状ストラット14の数は、第1波状ストラットの数と同じとなっていることが好ましい。
そして、このステント10は、各隣り合う第1波状ストラット13と第2波状ストラット14とを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つもしくは複数の接続ストラット15を備えている。特に、この実施例のステント10では、接続ストラット15は、一方の波状ストラットの変曲点付近に一端を有し、隣接する他方の波状ストラットの頂点付近からこの頂点を若干越えた領域に他端を有し、軸方向に延びかつ他方の波状ストラットの頂点と同じ方向に湾曲している。具体的には、図19に示すように、接続ストラット15は、ステント10の周方向の一方側に向かう頂点を有する湾曲した第1の接続ストラット15aとステント10の周方向の他方側に向かう頂点を有する湾曲した第2の接続ストラット15bとからなる。また、接続ストラット15は、円弧状に湾曲するとともに、ステント10の周方向に近接する第1波状ストラット13または第2波状ストラット14の湾曲部の円弧とほぼ同じ半径を有するものとなっている。
【0028】
そして、この実施例のステント10は、すべての第1波状ストラットの一端側端部および他端側端部を近接するいずれかの第2波状ストラットの端部と結合する結合部16を備えている。具体的には、ステント10の第1波状ストラットの一端側端部13aは、近接する一方の第2波状ストラット14(具体的には、近接しかつ周方向の他方側に位置する第2波状ストラット14)の一端側の端部14aと結合部16により結合されている。また、第1波状ストラットの他端側端部13bは、近接する一方の第2波状ストラット14(具体的には、近接しかつ周方向の一方側に位置する第2波状ストラット14)の他端側の端部14bと結合部16により結合されている。つまり、一端側の結合部16と他端側の結合部16では、結合する第1波状ストラット13と第2波状ストラット14の組み合わせが異なる(1つずつずれる)ものとなっている。
そして、結合部16には、放射線不透過性マーカー17が取り付けられている。この実施例では、結合部16は、端部方向に所定距離離間して平行に延びる2本のフレーム部を備えており、放射線不透過性マーカー17は、2本のフレーム部のほぼ全体もしくは一部を被包するものとなっている。また、放射線不透過性マーカー17は、薄い直方体状のもので、2本のフレーム部を内部に収納し、かつ中央部が窪むことにより、2本のフレーム部に固定されている。放射線不透過性マーカーの形成材料としては、例えば、イリジウム、プラチナ、金、レニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、タンタル、銀、ルテニウム、及びハフニウムからなる元素の群から選択された一種のもの(単体)もしくは二種以上のもの(合金)が好適に使用できる。
【0029】
ステント10の構成材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mmである。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
そして、ステントは、圧縮時の直径が、0.5〜1.8mmが好適であり、特に、0.6〜1.4mmが好ましい。また、ステントの非圧縮時の長さは、5〜200mmが好適であり、特に、8.0〜100.0mmが好ましい。また、ステントの非圧縮時の直径は、1.5〜6.0mmが好適であり、特に、2.0〜5.0mmが好ましい。さらに、ステントの肉厚としては、0.05〜0.40mmが好適であり、特に、0.05〜0.15mmが好ましい。波状ストラットの幅は、0.01〜1.00mmが好適であり、特に、0.05〜0.2mmが好ましい。波状ストラットの表面は滑らかに加工されていることが好ましく、電解研磨による平滑化がより好ましい。また、ステントの半径方向強度は、0.1〜30.0N/cmが好ましく、0.5〜5.0N/cmであることが特に好ましい。
【0030】
次に、本発明のステントデリバリーシステムの作用について、図16および図17を用いて説明する。
ステントデリバリーシステム1を治療対象血管に挿入し、留置部位にステントを到達させる。この状態では、ステント10の全体が、シース2に収納された状態となっている。そして、シャフト部3に対してシース2を基端側に移動させることにより、ステント10は、図16に示すように、シース2の先端開口より露出する。シース2より露出したステント10は、自己拡張力により拡張し、圧縮前の形態に復元しようとする。そして、このステントデリバリーシステム1では、図16に示すように、弾性部材(ワイヤコイル)5の弾性部およびステント10の上記弾性部により押圧されていた部位が、シース(ステント収納チューブ体)の先端開口より露出し、ステント10が、自己拡張力により拡張したとき、両者は接触しない状態となる。また、このステントデリバリーシステム1では、露出していない部分のステント10は、弾性部材5とシース2とにより挟持されているため、ステント10の配置位置の再調整が必要な場合には、図17に示すように、シャフト部3に対してシース2を先端側に移動させることにより、ステント10をシース内に再収納可能である。そして、ステント部分が適宜位置となるように、調整した後、再度、シャフト部3に対してシース2を基端側に移動させることにより、ステント10は、図16に示すように、シース2の先端開口より露出する。そして、ステントの基端が露出するまで、シース2を基端側に移動させることにより、ステントは、シースより完全に放出され、シャフト部3より離脱する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のステントデリバリーシステムは、以下のものである。
(1) 略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを放出可能であるステントデリバリーシステムであって、前記内側チューブ体は、少なくとも前記ステントの基端部内となる位置に設けられ、前記ステントを前記ステント収納チューブ体方向に押圧する弾性部材を備え、かつ、前記弾性部材は、前記内側チューブ体への固定部と前記ステントを押圧する弾性部を有するワイヤコイルであり、前記ステントは、前記弾性部材と前記ステント収納チューブ体とにより挟持され、かつ前記ステント収納チューブ体に対して摺動可能となっているステントデリバリーシステム。
【0032】
そして、本発明の実施態様は、以下のものであってもよい。
) 前記弾性部は、前記内側チューブ体に対して、前記ステント収納チューブ体を基端側に引いた時基端側に倒れるように変形し、前記内側チューブ体に対して、前記ステント収納チューブ体を先端側に押した時先端側に倒れるように変形するものである上記()に記載のステントデリバリーシステム。
) 前記ワイヤコイルの少なくとも前記弾性部は、基端側もしくは先端側に傾斜している上記()に記載のステントデリバリーシステム。
) 前記弾性部材は、複数設けられている上記(1)ないし()のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
) 前記弾性部材は、前記ステントの中央部から基端部にかけて複数設けられている上記(1)ないし()のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
) 前記弾性部材は、前記ステントの先端部から基端部にかけて複数設けられている上記(1)ないし()のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
) 前記弾性部材は、前記ステントの内周の少なくとも一部を押圧するものである上記(1)ないし()のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
) 前記弾性部材は、前記ステントの内周の少なくとも一部を押圧するものであり、前記弾性部材は、複数設けられており、各前記弾性部材が押圧する前記ステントの部位は、前記ステントの軸方向にほぼ直線状となっている上記(1)ないし()のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
) 前記弾性部材は、前記ステントの内周の少なくとも一部を押圧するものであり、前記弾性部材は、複数設けられており、隣り合う前記弾性部材が押圧する前記ステントの部位は、前記ステントの軸方向に異なるものとなっている上記(1)ないし()のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
10) 前記弾性部材は、前記ステントの内周の少なくとも一部を押圧するものであり、前記弾性部材は、複数設けられており、各前記弾性部材が押圧する前記ステントの部位は、前記ステントの軸方向にジグザグ状となっている上記(1)ないし()のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
【0033】
11前記ワイヤコイルは、前記固定部として、前記内側チューブ体への始端側固定部を有し、さらに、前記ワイヤコイルは、終端側固定部あるいは自由端と、前記弾性部として、前記始端側固定部と前記終端側固定部あるいは自由端間に設けられ前記ステントの軸方向に所定長延びる螺旋状のステント押圧用弾性部を有している上記(1)ないし(10)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
12) 前記内側チューブ体は、前記ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、該先端側チューブの基端側に先端部が固定された内側チューブ本体とを備える上記(1)ないし(11)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
(13) 前記ステントデリバリーシステムは、前記ワイヤコイルの前記弾性部および前記ステントの前記弾性部により押圧されていた部位が、前記ステント収納チューブ体の先端開口より露出し、前記ステントが、自己拡張力により拡張したとき、両者は接触しない状態となるものである上記(1)ないし(12)のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19