特許第5662357号(P5662357)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5662357磁気抵抗センサにおける温度及びドリフト補償
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662357
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】磁気抵抗センサにおける温度及びドリフト補償
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/08 20060101AFI20150108BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   H01L43/08 A
   G01R33/06 R
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-554049(P2011-554049)
(86)(22)【出願日】2010年3月10日
(65)【公表番号】特表2012-520566(P2012-520566A)
(43)【公表日】2012年9月6日
(86)【国際出願番号】US2010000742
(87)【国際公開番号】WO2010104589
(87)【国際公開日】20100916
【審査請求日】2013年2月15日
(31)【優先権主張番号】61/209,829
(32)【優先日】2009年3月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホール、ドリュー・エー
(72)【発明者】
【氏名】ギャスター、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】オスターフェルト、セバスチャン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シャン・エックス
【審査官】 佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/113724(WO,A1)
【文献】 特開2008−102109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00−33/26、
H01L 27/22、29/82、43/00−43/14
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗センサ装置であって、
(a)磁気抵抗センサと、
(b)変調周波数ffを有するティックリング(tickling)磁界を提供し、該磁界内に前記磁気抵抗センサが配置されるようにする磁界源と、
(c)変調周波数fcのキャリアトーン(CT)及び周波数fc±ffのサイドトーン(ST)を有する出力スペクトルを生成すべく、前記磁気抵抗センサに対して、前記変調周波数ffとは互いに異なる変調周波数fcを有する励起を提供するように構成された電源と、
(d)前記出力スペクトルにおける前記CT振幅及び前記ST振幅のベースライン関係を求めるように構成されたプロセッサとを含み、
当該装置が、生のST測定値をそれに対応するCT測定値及び前記ベースライン関係を用いて補正し、補正されたST測定値を出力として提供するように構成され
前記プロセッサは、ST対CTのデータを収集し、ベースラインST振幅のベースラインCT振幅に対する曲線適合の関係を求めることによって、CT振幅及びST振幅のベースライン関係を求めるように構成され、
前記曲線適合が線形適合であることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記CT測定値及び前記生のST測定値の取得中に、前記補正されたST測定値をリアルタイムで提供するようにしたことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記CT測定値及び前記生のST測定値の取得後、後処理することによって前記補正されたST測定値を提供するようにしたことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記電源が電圧源または電流源であることを特徴とする装置。
【請求項5】
磁気抵抗センサの出力を補正する方法であって、
(a)磁気抵抗センサを用意するステップと、
(b)前記磁気抵抗センサを、変調周波数ffを有するティックリング(tickling)磁界内に配置するステップと、
(c)周波数fcのキャリアトーン(CT)及び周波数fc+ffのサイドトーン(ST)を有する出力スペクトルを生成すべく、前記磁気抵抗センサに対して、前記変調周波数ffとは互いに異なる変調周波数fcを有する励起を提供するステップと、
(d)前記出力スペクトルにおけるCT振幅及びST振幅のベースライン関係を求めるステップと、
(e)CT測定値及び生のST測定値を提供すべく、サンプルが存在する場合における、互いに対応するCT振幅及びST振幅を測定するステップと、
(f)前記生のST測定値を前記ベースライン関係及び前記CT測定値を用いて補正し、補正されたST測定値を提供するステップと、
(g)前記補正されたST測定値を出力として提供するステップとを含み、
CT振幅及びST振幅のベースライン関係を求める前記ステップが、ST対CTのデータを収集し、ベースラインST振幅のベースラインCT振幅に対する曲線適合の関係を求めることを含み、
前記曲線適合が線形適合であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
複数のST測定値についてのリアルタイムの補正を提供すべく、前記ステップ(e)、(f)及び(g)を連続的に繰り返すステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、
生の(CT,ST)データ点のセットを提供すべく、前記ステップ(e)を繰り返すステップをさらに含み、
前記生の(CT,ST)データ点を後処理することによって、前記データ点の各々についての補正されたST測定を提供するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、
CT振幅及びST振幅のベースライン関係を求める前記ステップが、前記磁気抵抗センサの温度を変更したときのST対CTのデータを収集することを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法であって、
CT振幅及びST振幅のベースライン関係を求める前記ステップが、前記磁気抵抗センサへの入力を変更したときのST対CTのデータを収集することを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項5に記載の方法であって、
CT振幅及びST振幅のベースライン関係を求める前記ステップが、前記磁気抵抗センサの環境パラメータを変更したときのST対CTのデータを収集することを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項5に記載の方法であって、
前記サンプルが、常磁性体または超常磁性体のナノ粒子を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記ナノ粒子が、生体分子に付けられたラベルであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項5に記載の方法であって、
前記励起が、磁気抵抗センサに対して加えられる電圧または電流であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気抵抗センサに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗センサは、該センサが曝される磁界の変化に応じて電気抵抗が変化する。なお、他の物理的パラメータ、とりわけ温度の変化によっても、磁気抵抗センサの電気抵抗が変化し得る。従来、そのようなドリフト効果は、電気ブリッジ回路において磁気抵抗センサを用いることによって軽減させていた。この方法は、測定するサンプルに曝されていない補助的な磁気抵抗センサを参照用に使用して、主要な磁気抵抗センサと同一の環境を測定する。主要センサと補助的センサとの差分信号が、ドリフト補償出力信号である。
【0003】
しかしながら、生物学的検定法などの磁気抵抗センサの最近の用途では、磁気抵抗センサの大きなアレイの使用を必要とする場合が多い。このような状況では、電気ブリッジ回路を使用した従来のドリフト補償方法を用いることは非常に望ましくない。従来のドリフト補償方法は、サンサアレイの全ての素子用の別個の参照用検出器(及びそれに関連するブリッジ回路)の使用を必要とするためである。したがって、問題となるブリッジ回路(特に大きいセンサアレイ用のブリッジ回路)に頼らないで温度及びドリフトの影響を補正する方法が求められている。
【0004】
従来考えられてきた1つ方法は、磁気抵抗センサの温度を制御することである(例えば特許文献1)。温度の制御による温度ドリフトの除去はまた、温度ドリフトのセンサ出力への影響の除去をもたらす。別の方法は、センサの温度較正を提供し、その温度較正を用いて、測定した温度に従ってセンサ出力を補正することである(例えば特許文献2)。
【0005】
しかしながら、従来のドリフト/温度補償方法は、様々な不利益を被る傾向があった。いくつかの方法は、とても複雑であり、実際に実現するのは困難であった。例えば、温度制御を、大きなセンサアレイの全ての要素に対して実現することは困難である。また、較正を用いる方法もとても複雑であり、補正された出力をリアルタイムで提供することは不可能である。したがって、磁気抵抗センサ用の向上したドリフト/温度補正を提供することは、当技術分野における進歩となるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,097,110号明細書
【特許文献2】米国特許第7,239,123号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
磁気抵抗センサの二重変調は、前記センサに加えられた励起(例えば電圧または電流)と、前記センサに加えられたティックリング(tickling)磁界との両方の変調を含む。前記励起及び磁界は、各々、互いに異なる周波数f及びfに変調される。この二重変調の結果、センサ出力スペクトラルは、周波数fのキャリアトーン(CT)と、周波数f±fのサイドトーン(ST)とを含む。CT振幅とST振幅とのベースライン関係を測定する(例えば、サンプルの非存在下におけるドリフト発生時のCT振幅及びST振幅を測定することによって)。センサの作動中は、生のST測定値を、それに対応する生のCT測定値を用いて修正し、修正されたST測定値をセンサ出力として提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の例示的な実施形態を示す。
図2図1の例の出力スペクトルを示す。
図3】センサ温度を意図的に変化させたときの、キャリアトーン振幅及びサイドトーン振幅の変化を示すグラフである。
図4】実験的に求めたST−CT関係の例を示す。
図5】サイドトーン出力の補正の例示的な結果を示す。
図6】非線形のST−CT関係の仮説例を示す。
図7】磁気抵抗センサの生物学的検定法への適用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の例示的な実施形態を示す。この例では、磁気抵抗センサ102が、磁界源106により生成されたティックリング(tickling)磁界108内に配置されている。磁気抵抗センサは、磁界に依存する電気抵抗を有する任意のセンサである。電流の方向及び磁界の方向に応じて様々な変形が可能であるが、そのような変形の全ては、磁気抵抗センサの一般的なカテゴリに含まれる。一部の例では、磁気バイアスがセンサ102に加えられる。磁気バイアスの方向は、ティックリング磁界108と同一の方向であってもよいし、ティックリング磁界108と異なる方向(例えば、ティックリング磁界に対して垂直な方向)であってもよい。ティックリング磁界108は、周波数fに変調される。電源104は、磁気抵抗センサ102に対して励起(電圧または電流)を提供する。前記励起は、周波数fに変調される。変調周波数f及びfは互いに異なる。
【0010】
この二重変調スキームの結果としてのセンサ出力スペクトルが図2に示されている。センサ出力スペクトルは、周波数fのキャリアトーン(carrier tone:CT)と、周波数f±fのサイドトーン(side tone:ST)とを含む。一般的に、fはfよりも大きいが、このことは必須ではない。センサ102の出力は、電圧または電流であり得る。より具体的には、前記励起が電圧の場合は前記出力は電流であり、前記励起が電流である場合は前記出力は電圧である。
【0011】
磁性粒子110(例えば、常磁性または超常磁性のナノ粒子)が、センサ102の近傍に堆積した場合、センサ102での磁性粒子110の磁界への影響により、センサ出力の観察可能な変化がもたらされ得る。したがって、この構成は、磁気センサとして機能することができる。なお、キャリアトーン振幅は、センサ102の近傍における磁界粒子の存在の有無に依存しないことに注意することが重要である。したがって、使用できるセンサ出力は、サイドトーン振幅だけである。このことの物理的根拠は、キャリアトーン振幅はセンサ102の通常の抵抗に依存するが、サイドトーン振幅はセンサ102の磁気抵抗に依存することである。
【0012】
キャリアトーン振幅は、磁気粒子110の影響を受けないが、次のようなドリフト補正されたサイドトーン測定値を提供するために用いることができる。説明を容易にするために温度ドリフトの場合を説明するが、以下に説明する原理は任意の他のセンサドリフト源にも適用することができる。まず、磁性粒子110がセンサ102の近傍に存在していないという条件のときのセンサベースライン(sensor baseline)が、センサ出力に対して観察可能な影響を与える、と定義することが有益である。したがって、センサベースラインは、測定された磁界が存在しない(例えばサンプルが存在しない)ことが背景条件である。ベースライン条件下では、センサドリフト(例えばセンサ温度の変動)は、CT振幅及びST振幅の両方に変化をもたらし得る。
【0013】
図3は、ゲースライン条件下で磁気抵抗センサの温度を意図的に変化させたときの、CT振幅及びST振幅の変化の例が示されている。上側のグラフはCT振幅の変化を示しており、下側のグラフはST振幅の変化を示している。この例では、CT振幅の変化とST振幅の変化とが互いに密接な関係にあることが明らかである。図4は、この関係をより明らかにしたものである。
【0014】
図4は、ST振幅の変化を、CT振幅の変化に対してプロットしたものである。プロットした点は測定したデータ点であり、この断続線は線形適合である。この例では、CT振幅の変化(ΔC)とベースラインST振幅の変化(ΔS)との関係は単純な線形の関係であるが、次のより一般的な形式化を用いることが有用である。したがって、CT振幅とST振幅とのベースライン関係を、CT振幅及びST振幅の変化をベースライン動作点(CT,ST)に対して規定するΔS(ΔC)の関数と定義する。どの動作点(operating point)を用いるかの選択は、本発明の実施にとって重要でない。この関係は、簡単な測定器を用いて、任意のセンサ材料及び/または構成について実験的に求めることができる。
【0015】
サンプルが存在する場合、利用可能なデータは、キャリアトーン測定値ΔCと、生のサイドトーン測定値Sraw(またはΔSraw)とである。前述したように、ΔCは磁性サンプルに依存しないため、センサドリフトのリアルタイム測定値を効果的に提供すると見なすことができる。
【0016】
一部の例では、例えばΔs=ΔS/ST、Δc=ΔC/CTと定義することによって正規化した、CT変数及びST変数を用いると便利である。ここで、関数Δs(Δ)は、ΔS(ΔC)の関係から容易に求めることができる。これらの関係または任意の他の数学的に同等の形態は、CT振幅とST振幅とのベースライン関係として用いるのに適している。小文字の表記が無次元の正規化された量を表すのに使用され、大文字の表記が物理的次元を有する非正規化量を表すのに使用されるという慣習を採用した。例えば、Δs(Δ)は無次元関数であり、キャリアトーン振幅における正規化された変化に対する、サイドトーン振幅における正規化された変化に関連する。関数ΔS(ΔC)は、次元(例えば電圧)を有する非正規化量に関して表したのと同じ関係である。
【0017】
CT振幅及びST振幅の両方が線形の温度ドリフトを有する場合、Δc=αΔT、Δs=βΔTというベースライン関係を有する。ΔTは、ベースライン動作点に対する温度変化である。前記励起が電流であり、前記出力が電圧である場合、αは通常の抵抗の温度係数であり、βは磁気抵抗の温度係数である。前記励起が電圧であり、前記出力が電流である場合、基礎材料の温度係数に対するα及びβの関係は少々複雑なものになる。CT振幅及びST振幅に関して定義された、α及びβの実験的なパラメータの基礎材料パラメータに対する依存性は、本発明の実施にとって重要でない。
【0018】
補正因子(CF)を次のように定義した。
【0019】
【数1】
【0020】
ただし、Scorr=CF×Srawであり、
Δc=αΔT、Δs=βΔTの場合、CF=1/(1+kΔc)である。
ただし、k=β/α。
次の等式は、この線形例についての、ベースライン条件下でのScorrの温度不依存性を示す。
【0021】
【数2】
【0022】
同一の補正因子CFを、サンプルが存在する場合に取得された生のサイドトーン測定値(Sraw)に適用し、補正されたサイドトーン測定値(Scorr)をセンサ出力として提供することができる。
【0023】
生のST測定値を補正するこの方法は、様々な数学的に同等の形態(または、ほぼ同等の形態)で表現することができる。例えば、前記補正は、生のサイドトーン測定値SrawがΔS(ΔC)と同等のセンサドリフト寄与を含むと推定することにより、追加的事項として表すことができる。この方法では、補正されたサイドトーン出力は、次の式によって与えられる。
【0024】
【数3】
【0025】
この方法は、最初の補正因子CFの使用と等しい。
【0026】
CT測定値及びST(CT)ベースラインを使用し、補正されたST測定値を生成する方法は、一般的に、センサ出力がドリフト(変動)し得る任意の状況に適用することができる。上述したように、この方法は、温度によって誘導されたセンサドリフトに適用可能である。また、この方法は、他のセンサ出力ドリフト源にも適用可能であり、これらに限定しないが、例えば、磁気抵抗センサへの入力(例えば、電圧または電流の動作点)や、センサの環境パラメータ(例えば、温度や圧力など)などに対して適用可能である。
【0027】
ベースラインST(CT)の関係は、本発明を実施において、任意の従来の形態で表すことができる。例えば、曲線適合パラメータ(例えば、線形適合の傾き及び切片)に関して表すことができる。より複雑な場合では、参照テーブルを使用して、この機能の点別(point wise)の定義を提供することができる。中間点での関数値を提供するために、補間法を用いることができる。
【0028】
図5は、サイドトーン出力の補正の例示的な結果を示す。上側のグラフは補正因子CFを示し、下側のグラフは、ベースライン条件下での修正されたST出力及び未修正ST出力を比較して示す。ST温度依存性の除去における温度補正の有効性が明白である。
【0029】
この方法の重要な側面は、実際の測定データを取得しながら、ST出力をリアルタイムで補正できることである。データの取得前にST(CT)ベースラインを求める必要があるが、ベースラインを求めた後は、ST出力の補正をリアルタイムで行うことができる。別の方法として、CT測定値及び生のST測定値の取得後に、後処理をすることによって、ST出力の補正を行うことも可能である。
【0030】
図6は、非線形のST(CT)関係の仮説例である。センサがこのようなST(CT)関係を有することはありそうにないが、このST(CT)関係の複雑な形状は本発明の実施の妨げにはならない。必要に応じて、参照表及び補間法を用いて、センサのST出力の補正を十分に可能にすることができるであろう。
【0031】
磁気抵抗センサの1つの重要な用途は、生物学的検定法である。図7は、磁気抵抗センサを生物学的検定法に適用した例を示す。この例では、磁気抵抗センサ102の表面上に捕捉抗体702が存在する。捕捉抗体702は、検体704を選択的に結合する。このステップの後、分析を完了すべく、磁気ラベルを有する検出抗体(706a、706b及び706c)が生成される。検体の結合位置では、検出抗体及び磁性ラベルも結合される(例えば、検体704に抗体706a及びラベル110aが結合される)。結合された磁性レベルの磁気的検出によって、生物学的検定法が提供される。
【0032】
説明を簡単にするために、上述の説明は、単一のセンサを用いる場合について説明している。しかし、このドリフト補正方法は、複数の磁気抵抗センサを有するアレイに対しても適用可能である。このようなアレイでは、電界変調波長fは一般的に全てのアレイ素子において同一であるが、励起波長fは各センサアレイ素子において互いに同一または異なり得る。よって、ST(CT)ベースライン関係をアレイ素子について独立的に取得し、補正を各アレイ素子に対して独立的に適用することができる。このようなフレキシビリティは、アレイの全ての素子の温度に単一の温度測定値を用いる他の方法と比較した場合の、この方法の重要な利点である。均一なアレイ温度は実際にはありそうもないので、(この方法のような)各アレイ素子に対して独立的に適用可能な温度/ドリフト補正を提供することは重要であり、アレイの全体に渡る不均一な状態に対処することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7