(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662364
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】流れ最適化流体線
(51)【国際特許分類】
F16L 11/12 20060101AFI20150108BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
F16L11/12 Z
F16L55/00 G
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-48950(P2012-48950)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2012-189213(P2012-189213A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2012年3月6日
(31)【優先権主張番号】10 2011 013 572.3
(32)【優先日】2011年3月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591044393
【氏名又は名称】ノルマ ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス バウエル
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−003128(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/038271(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/12
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部表面(2)内に部分的な球形の形状で形成され一様に分布された複数の凹部(3)を含む円筒形の内部表面(2)を含む流体線(1)であって、
前記複数の凹部(3)の半径方向の中心点(M)は、前記内部表面(2)の長手方向の対称の軸(6)と一致する長手方向の対称の軸(6)を有する円筒(5)に内在し、
前記円筒(5)の半径(R2)は、前記内部表面(2)の内部半径(R)の50%より大きく、
前記複数の凹部(3)のそれぞれの前記球形の半径(R1)は、前記内部半径(R)の50%より大きい流体線(1)。
【請求項2】
前記複数の凹部(3)の前記球形の半径(R1)は互いに同一である請求項1に記載の流体線(1)。
【請求項3】
前記凹部(3)の前記球形の半径(R1)と前記円筒(5)の半径(R2)との和は、前記内部表面(2)の内部半径(R)より大きい請求項1に記載の流体線(1)。
【請求項4】
前記円筒(5)の半径(R2)は、前記内部半径(R)の60%より小さい請求項1に記載の流体線(1)。
【請求項5】
前記球形の半径(R1)は、前記内部半径(R)の55%より小さい請求項1に記載の流体線(1)。
【請求項6】
4つから8つの凹部(3)が前記内部表面(2)の長手方向において互いに同じ位置で配置され、前記内部表面(2)の周方向に一様に分布される請求項1に記載の流体線(1)。
【請求項7】
6つの凹部(3)が前記内部表面(2)の長手方向において互いに同じ位置で配置され、前記内部表面(2)の周方向に一様に分布される請求項6に記載の流体線(1)。
【請求項8】
前記内部表面(2)の長手方向に互いに近接する複数の凹部(3)は、前記内部表面(2)の周方向に、互いに離して配置される請求項1に記載の流体線(1)。
【請求項9】
前記内部表面(2)の長手方向に互いに近接する複数の凹部(3)の中心点間の距離は、前記球形の半径(R1)の±10%に対応する請求項1に記載の流体線(1)。
【請求項10】
押出プラスチック管として形成される請求項1に記載の流体線(1)。
【請求項11】
押出ポリアミド管である請求項10に記載の流体線(1)。
【請求項12】
内部半径(R)を有する円筒形の管を形成すること、
内部半径(R)内の仮想的な円筒(5)であって、前記管の長手方向の対称の軸(6)と一致する長手方向の対称の軸(6)を有する仮想的な円筒上に半径方向の中心点(M)が存在する複数の凹部(3)であって、半径(R1)を有する部分的な球形の凹部(3)を、前記管の内部の表面上に形成することを含み、
前記複数の凹部(3)は、前記管の長手方向において互いに同じ位置に形成され、前記管の周方向に一様に分布される流体線(1)を形成する方法であって、
前記球形の半径(R1)は、前記内部半径(R)の50%より大きく、
前記仮想的な円筒(5)の半径は、前記内部半径(R)の50%より大きい方法。
【請求項13】
前記管の形成はプラスチック管を押し出すことを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プラスチックはポリアミドを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記球形の半径(R1)は、前記内部半径(R)の55%より小さく、前記仮想的な円筒(5)の半径は、前記内部半径(R)の60%より小さい請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、円筒の内部表面を有する流体線に関する。
【背景技術】
【0002】
流体線は流体、特に液体を運ぶための多くの応用分野で使用されている。摩擦と乱流により損失が発生する。これは、装置の有効性の全ての過程で劣化を導く。特に、なめらかなパイプの場合、および部分的に波形のパイプのなめらかな領域の場合、実際に利用可能な流れ断面は、端の領域の中で準定常状態境界層を形成するため、しばしば流体線の中の自由内部断面よりももっと小さくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に低流量コーティングで流体線を提供することは現在知られている。しかしながら、これはかなり複雑で、製造工程をより高価にする。また、この型のコーティングは全ての流体に対して抵抗力がなく、使用の可能性は限定される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、流れ損失を低く維持する
【0005】
実施形態によれば、上記で言及されたこの型の流体線は、流体線の内部表面内に実装または形成された球形の扇形の形状の中に一様に分布された凹部を含む。
【0006】
流体線を通して流体の流れの準定常状態境界層の形成は、これらの凹部によって妨げられる。代わりに、乱流が目的とする手法で導入される。これらとともに起こる流れ抵抗と流れ損失は、したがって減少される。実流れ断面は、実際の自由内部断面に近づく。結局、より低い損失の伝達がこの手法で達成される。内部表面は円形の円筒内部表面として実装または形成される。つまり円形の断面を有する。しかしながら、他の実施形態、例えば、多角形または楕円形の断面も可能である。
【0007】
好ましくは、凹部は、等しい湾曲の半径を有する。凹部は全て同一に実装または形成される。これは非常に一様な流れの結果となる。
【0008】
好ましくは、凹部の半径方向中心点は円筒表面上に横たわる。その対称の軸は内部表面の対称の軸と一致する。この手法で、湾曲の半径と円筒表面の半径の和は、内部表面の内部半径よりも大きくなる。ここで、円筒表面は概念的な表面であり、内部表面と平行に実装または形成される。凹部はこの型のやり方によって全て同じに実装または形成される。つまり、これらは同じ深さと同じ半径を有する。この型の一様な実施形態は流体線の製造のための簡略化を表す。
【0009】
円筒表面の半径が内部半径の50%より大きいこと、特に内部半径の60%より小さいことは特に好ましい。凹部の深さも円筒表面の半径によって、決定される。比較的平らな凹部の実施形態は、内部半径の50%と60%の間の半径によって、特に内部半径の55%の半径によって保証される。流れ断面はこれによって最適化される。
【0010】
効果的には、湾曲の半径は内部半径の50%より大きく、湾曲の半径は特に内部半径の55%より小さい。凹部の湾曲の半径はしたがって比較的大きい。これは凹部が内部表面から比較的平らに広がり、流れの損失を導く、より大きい端が避けられることを確実にする。
【0011】
好ましくは4から8つの凹部、特に6つの凹部が、円周方向お互いに次と一様に分布され同じ軸位置に配置される。このような、円周方向の凹部の数は、定常状態層の発達を避けるために、十分である。
【0012】
円周方向で軸方向に近接する凹部がお互いに、離して配置されることは特に好ましい。軸方向に近接する凹部はお互いに、互い違いの手法で並べられる。単位面積あたり比較的大きな数の凹部がこれにより、達成される。また、これによって、非常に一様な凹部の配置の結果となり、流れ経路を最適化になる。
【0013】
好ましくは、近接する凹部の中心点間の軸方向の距離は湾曲の半径の±10%に対応する。これは個々の凹部間で十分なめらかな内部表面がまだ利用可能であることを確実にする。これは流体の実際の誘導のために使用される。同時に、流体線の材料が薄型にされることが不必要でない。したがって流体線の力学的安定性が維持される。
【0014】
好ましくは、流体線は押出プラスチック管、特に押出ポリアミド管として、実装または形成される。この型の流体線は高い化学的抵抗を有し、同時に比較的安定である。また、非常にコスト効果的な手法で製造される。凹部の挿入は押し出し過程の場合でも問題はない。
【0015】
本発明の実施形態は、内部表面内に形成された球形の扇形の形状の中に一様に分布された凹部を含む円筒内部表面を含む流体線に向いている。
【0016】
実施形態によれば、凹部は同一の湾曲の半径を有する。
【0017】
本発明の他の実施形態によれば、凹部の半径方向の中心点は、内部表面の対称の軸と一致する対称の軸を有する円筒に内在する。凹部の湾曲の半径と円筒の半径との和は、内部表面の内部半径より大きい。円筒の半径は内部半径の50%より大きい。さらに、円筒の半径は内部半径の60%より小さい。さらに、凹部の湾曲の半径は、内部半径の50%より大きい、湾曲の半径は、内部半径の55%より小さい。
【0018】
さらなる他の実施形態によれば、4つから8つの凹部が同じ軸位置で配置され、円周方向に一様に分布される。より好ましくは、6つの凹部が同じ軸位置で配置され、円周方向に一様に分布される。
【0019】
本発明の他の実施形態によれば、軸方向に近接する凹部は、周辺方向お互いに関して、離して配置される。
【0020】
実施形態によれば、軸方向に近接する凹部の中心点間の距離は、湾曲の半径の±10%に対応する。
【0021】
他の実施形態によれば、流体線は押出プラスチック管として形成される。特に好ましくは、流体線は押出ポリアミド管である。
【0022】
本発明の実施形態は、流体線を形成する方法に向いている。方法は、内部半径を有する管を形成すること、内部半径内の仮想的な円筒上に横たわる湾曲の半径を有する、内部半径の表面上に複数の凹部を形成することを含む。複数の凹部は、おなじ軸位置に形成され、円周方向に一様に分布される。
【0023】
本発明のさらなる他の実施形態によれば、湾曲の半径は内部半径の50%より大きく、仮想的な円筒の半径は内部半径の50%より大きい。さらに、管の形成はプラスチック管、特にポリアミド管を押し出すことを含む。さらに、湾曲の半径は内部半径の55%より小さく、仮想的な円筒の半径は内部半径の60%より小さい。
【0024】
他の例示的実施形態と本発明の効果は、本開示と添付の図によって確かめられる。
【0025】
本発明は、本発明の例示的実施形態の非制限例により、複数の図を参照することによって、以下の詳細な記述により記載される。図の中のいくつかを通して同じ参照番号は同じ部分を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、詳細は例示の方法で示され、本発明の実施形態の図示的議論の目的のためのみに、本発明の原理と概念的な面をすぐに理解でき、最も効果的と信じられることを提供するために表される。このことについて、本発明の基本的理解のために必要なもの以上に、本発明のいくつかの形状が実際にどのように実装され、形成されるかを当業者に明らかにさせる、図を伴った記載以上に、本発明の構造的詳細を開示することを意図していない。
【0028】
図1は流体線1の一部分を示す。流体線1は縦の部分が示され、流体線1の内部表面2が見える。凹部3が形成され、内部表面2内に一様に分布される。さもなければ、内部表面2はなめらかな表面で提供される。
【0029】
凹部3は、流体線1の壁の中で、部分的に球の形状の形を表す。同じ軸位置上に配置される凹部3は円軌道上に、周辺方向にお互いに同じ距離で配置される。軸方向に近接する凹部3はお互いに関して離して配置され、この結果近接する凹部3は、お互いに関してそれぞれ互い違いに置かれる。
【0030】
したがって、内部表面2はあたかもゴルフボールの表面に対応する。この型の表面は準定常状態層の形成を減少する。したがって、低い流れ抵抗および低い流れ損失を有する流れ最適化内部表面が製造される。
【0031】
図2は断面で
図1の流体線1を示す。内部半径Rを有する内部断面は本質的に円である。円形状は凹部3によってのみ干渉される。さもなければ、内部表面2はなめらかな手法で実装または形成される。凹部3は湾曲の半径R1を有する。これは内部半径Rの約55%に対応する。凹部3の湾曲の半径は、内部表面2と平行に走る概念的な(仮想的な)円筒5上に内在するまたは横たわる概念的な球の中心点Mから始まる。概念的な円筒5と内部表面2は、
図2に表現されている描画平面中に走る同一の対称な軸6を有する。概念的な円筒5の半径R2は内部半径Rの50%より大きい。図示された実施形態の中で、概念的な円筒5の半径R2は内部半径Rの55%からなる。
【0032】
この実施例の中で、円周方向に一様に配置された合計6つの凹部3が提供される。近接する凹部3の半径方向で2つの中心6、7間の角度αは、この例の中では60°である。
【0033】
図1に見られるように近接する中心点M間の軸距離dは凹部3の直径より小さい。したがって、本場合、凹部3は近接する凹部の隙間の中に突き出る。本例の中で距離は湾曲の半径R1よりもいくらか大きい。
【0034】
湾曲の半径R1と概念的な円筒5の半径R2の和は内部半径Rより大きい。湾曲の半径R1と概念的な円筒表面5の半径R2はこれによって同じ大きさであることができる、しかし、概念的な円筒5の半径R2をいくらか大きく選択することは効果的である。非常に平らな凹部3がこれで得られる。
【0035】
実施形態は異なった直径を有する流体線にも適切である。5と30mm間、特に10と20mm間の直径を有する流体線での使用が好ましい。
【0036】
なめらかな壁の管、つまりなめらかな内部表面で円形の内部断面を有する流体線と比較して、流れ抵抗、したがって流れ損失の減少が、凹部の供給により生じ、凹部の全ては同じに実装または形成され、流体線の内部表面上に一様に分布される。流体特に液体の流れと流体線の内部表面間の境界層の形成は、これによって減少される。このような方法で、実際の流れ断面は実断面と近似する。この手法で結局、低い流れ損失を有する流体線が得られる。
【0037】
円形の断面を有する流体線のみがこの例で示された。他の実施形態で例えば多角形または楕円の断面が同様に可能である。半径の長さは、対称の軸からの距離に対応する。したがって、言葉「半径」は狭い意味に理解されるべきでない。もっと一般的に対称の軸からの距離として定義される。
【0038】
上記の例は、単に例示の目的のために提示されたものであり、本発明の制限として構成されるものではないことに注意すべきである。本発明は例示的な実施形態を参照し記載されたが、ここで用いられた言葉は、制限の言葉ではなく、記載と例示の言葉と理解すべきである。添付の請求項の範囲内で、本発明の範囲と概念から、その態様を逸脱することなく、ここで述べられたようにおよび補正によって、変形は可能である。本発明は、特定の手段、材料および形態に関して、ここで記載されたが、本発明は、ここで開示された特別なものに制限されない。むしろ、本発明は、添付された請求項の範囲内で機能的に同等な構成、方法および用途に拡張される。
【符号の説明】
【0039】
1 流体線
2 内部表面
3 凹部
5 円筒
6、7 中心