(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記散乱体膜と前記第1の支持体との間に、前記散乱体膜及び前記第1の支持体と異なる材料によって形成されてなるエッチストッパ膜が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電子ビーム検出器。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、電子ビーム露光装置を示すブロック図である。
【0017】
この電子ビーム露光装置100は、電子ビーム生成部130と、マスク偏向部140と、基板偏向部150とを備えている。
【0018】
電子ビーム生成部130では、電子銃101から電子ビームEBを発生させ、この電子ビームEBを第1電磁レンズ102で収束させて、所定の電流密度の電子ビームEBを生成する。さらに、収束された電子ビームEBは、ビーム整形用マスク103の矩形アパーチャ103aを通過し、その断面が例えば矩形状に整形される。
【0019】
このようにして電子ビーム生成部130で生成された電子ビームEBは、マスク偏向部140の第2電磁レンズ105によって露光マスク110上に結像される。そして、電子ビームEBは、第1静電偏向器104及び第2静電偏向器106により、露光マスク110に形成された特定のパターンS
iに偏向される。露光マスク110を通過することにより、電子ビームEBの断面の形状がパターンS
iの形状に整形される。
【0020】
なお露光マスク110は、マスクステージ123と共に移動させることができる。
【0021】
露光マスク110の上下には、第3電磁レンズ108及び第4電磁レンズ111が配置され、これらにより電子ビームEBが試料(ウェハ)W上に結像される。
【0022】
露光マスク110を通過した電子ビームEBは、第3静電偏向器112及び第4静電偏向器113によって光軸C上に振り戻された後、第5電磁レンズ114によってそのサイズ(断面積)が縮小される。
【0023】
マスク偏向部140には、第1補正コイル107及び第2補正コイル109が設けられている。これらの補正コイル107、109により、第1〜第4静電偏向器1−4、106、112及び113で発生した電子ビームEBの偏向収差が補正される。
【0024】
その後、電子ビームEBは、基板偏向部150に設けられた遮蔽板115のアパーチャ115aを通過し、第1投影用電磁レンズ116及び第2投影用電磁レンズ121によって所定の縮小率、例えば1/60の縮小率で縮小される。そして、電子ビームEBは、第5静電偏向器119と電磁偏向器120によって偏向されることで、試料W上の所定の位置に露光マスク110の縮小像が投影される。
【0025】
なお、第5静電偏向器110及び電磁偏向器120で発生する偏向収差は、基板偏向部150の第3補正コイル117及び第4補正コイル118によって補正される。
【0026】
試料Wは、モータ等の駆動部125により水平方向に移動可能なウエハステージ124に固定されている。このウエハステージ124を移動させることで、試料Wの全面に露光を行うことができる。
【0027】
また、ウエハステージ124上の試料Wが載置される箇所の周囲には、電子ビーム検出器170が配置されている。
【0028】
図2は、電子ビーム検出器の一例を示す斜視図である。
【0029】
この電子ビーム検出器90は、複数の開口91aが形成された遮蔽板91を備えている。遮蔽板91は、例えば数cm角程度の矩形状に形成されており、電子ビーム露光装置100による電子ビームEBの偏向範囲(例えば100μm角程度)よりも大きく形成されている。開口91aは、電子ビームEBの照射位置に応じた位置ずれや、ビーム形状の変形などの測定を行うべく、遮蔽板91上に所定の距離を隔てて複数配置されている。開口部91aの幅又は長さは、例えば数十nm〜数μm程度である。
【0030】
遮蔽板91の開口91aを透過した電子ビームEBは、遮蔽体91の下方に配置された反射体92で反射され、ビーム検出素子93によって検出される。この反射体92によって、ビーム検出器93の発熱及び検出出力の飽和が防がれる。
【0031】
ところが、反射型の電子ビーム検出器90では、電子ビームEBの照射位置によって、電子ビームの検出感度が変化するという問題がある。
【0032】
すなわち、ビーム検出素子93に近い側の開口91aを通過した電子ビームEBは、ビーム検出素子93上の領域S
2で検出される。これに対し、ビーム検出素子93から離れた側の開口91aを通過した電子ビームは、ビーム検出素子93の領域S
1で検出される。図示のように、ビーム検出素子93から離れた側の開口91aを通過した電子ビームの一部S
outの部分がビーム検出器93で検出されなくなり、電子ビームの検出感度が変化してしまう。
【0033】
そのため、
図2の電子ビーム検出器90では電子ビームの照射位置による検出感度のばらつきが生じる。
【0034】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係る電子ビーム検出器の概要を示す斜視図である。
【0035】
本実施形態の電子ビーム検出器10は、複数の開口1aが形成された遮蔽板1と、遮蔽板1の開口1aを通過した電子ビームを拡散させる散乱体2と、散乱体2を透過した電子ビームを検出するビーム検出素子3とを備えている。
【0036】
散乱体2及びビーム検出素子3は遮蔽板1とほぼ同じ大きさに形成されており、遮蔽板1と平行に配置されている。このため、散乱体2とビーム検出素子3との距離が、開口1aの位置によらず常に一定となり、
図2の反射型の電子ビーム検出器90にみられるような、電子ビームEBの照射位置に依存する検出誤差を抑制できる。
【0037】
但し、電子ビームEBを十分な強度で検出するためには、散乱体2の厚さを数μm程度と薄くする必要がある。そのため、
図3の電子ビーム検出器10を実現するためには、散乱体2を支持する構造が必要となる。
【0038】
以下、ビーム検出器10の具体的な構成について更に説明する。
【0039】
図4は、本実施形態に係るビーム検出器10を示す断面図である。なお、
図4では遮蔽板1の1つの開口1a付近を拡大して示している。
【0040】
図4に示すように、ビーム検出器10は、遮蔽板1と、遮蔽板1の下流側に配置された散乱体2と、散乱体2の下流側に配置されたビーム検出素子3が、容器71に収められている。
【0041】
遮蔽板1は、電子ビームを遮蔽する遮蔽体膜16を備え、その遮蔽体膜16が第1の支持体13及び第2の支持体15によって支持された構造となっている。
【0042】
第1の支持体13は、例えば厚さが1mm程度のシリコン基板よりなり、遮蔽板1の機械的強度の大部分を担っている。
【0043】
この第1の支持体13の上には、例えば厚さが1μm程度の酸化シリコン又は窒化シリコンよりなるエッチストッパ膜14が形成されており、そのエッチストッパ膜14の上に、例えば厚さが1μm程度のシリコン膜よりなる第2の支持体15が形成されている。
【0044】
その第2の支持体15の上に遮蔽低膜16が形成されている。遮蔽体膜16は、電子ビームの遮蔽性に優れた白金(Pt)等の重金属からなり、その所定箇所には開口16aが形成されている。開口16aは、検査の目的に応じて数十nm〜数μm程度の様々な大きさに形成される
第2の支持体15にも開口16aと連通する開口15aが形成されており、これらの開口15a、16aにより遮蔽板1の開口1aが形成される。さらに、第1の支持体13及びエッチストッパ膜14には、遮蔽体膜16の開口16aに対応する部分に、開口16aよりも大きな径の開口13a、14aが形成されている。
【0045】
このように、第1の支持体13の開口13a及びエッチストッパ膜14の開口14aを遮蔽体膜16の開口16aよりも大きな径で形成することで、開口16aを通過した電子ビームEBを減衰させることなく散乱体2に導くことができる。
【0046】
一方、散乱体2は、散乱体膜19を支持体17で支持した構造となっている。
【0047】
支持体17は、例えばシリコン基板よりなり、遮蔽体1の開口1aに対応する部分に開口17aが形成されている。この支持体17は、散乱体2の機械的強度の大部分を担っている。
【0048】
支持体17の上には、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンよりなるエッチストッパ膜18が形成されている。エッチストッパ膜18は、支持体17とは異なる材料で形成されており、支持体17に開口17aを形成する際に散乱体膜19が侵食されるのを防ぐことで、散乱体膜19の厚さのばらつきが生じるのを防ぐ。なお、エッチストッパ膜18には、支持体17の開口17aに対応する部分が除去されてなる開口18aが形成されており、その開口18aにおいて散乱体膜19が露出している。
【0049】
散乱体膜19は、エッチストッパ膜18の上に形成されており、遮蔽体膜16の開口16aを通過した電子ビームを散乱させることで、ビーム検出器3の局所的な加熱や出力の飽和を防ぐ。この散乱体膜19の材料としては、電子ビームEBの照射による加熱に耐え、且つ電子ビームEBの照射によってチャージアップを生じない材料を用いることが好ましい。具体的には、例えば厚さが2μmのシリコン膜や、アルミニウム等の金属膜を用いることができる。また、散乱体膜19の厚さは所望する電子ビームEBの透過率、散乱角度に応じてモンテカルロ法を利用したシミュレーション計算によって適宜決定すればよい。
【0050】
本実施形態では、上記の散乱体2を支持体17が電子ビームEBの上流側となる向きに配置する。これにより、散乱体膜19で散乱された電子ビームEBが支持体17の開口17aの側壁によって遮蔽されないようにしている。
【0051】
ビーム検出素子3は、平板状に形成されたPINダイオードよりなり、散乱体膜19と平行に配置されている。これにより、電子ビーム検出器10では、電子ビームEBの照射位置が変化しても散乱体2とビーム検出素子3との距離は一定となるため、電子ビームEBの照射位置による検出感度のばらつきを抑制できる。
【0052】
以下、本実施形態の電子ビーム検出器10の製造方法を説明する。
【0053】
図5及び
図6は、
図4に示す電子ビーム検出器10の製造方法を示す断面図である。
【0054】
まず、第1の支持体13としてのシリコン基板を用意する。次いで、そのシリコン基板を熱酸化することで、厚さが1μm程度の酸化シリコン膜よりなるエッチストッパ膜14を形成する。なお、エッチストッパ膜14としては、窒化シリコン等を用いてもよくその場合にはCVD法などでエッチストッパ膜14を形成してもよい。
【0055】
次に、
図5(b)に示すように、エッチストッパ膜14の上に、例えば厚さが1μm程度のシリコン膜を第2の支持体15として形成する。
【0056】
なお、予めシリコン基板上に酸化シリコン膜及びシリコン膜が形成された市販のSOI(Silicon On Insulator)基板を用いる場合には、上記のエッチストッパ膜14及び第2の支持体15を作製する工程を省略できる。
【0057】
次いで、第2の支持体15の上に例えば厚さが数十nm程度の白金(Pt)膜を遮蔽体膜16として形成する。
【0058】
次に、
図5(c)に示すように、フォトレジスト法により不図示のレジストパターンを形成し、そのレジストパターンを用いたドライエッチングにより、遮蔽体膜16の所定箇所に開口16aを形成する。その後、レジストパターンを除去した後、遮蔽体膜16をマスクにしたドライエッチングにより、遮蔽体膜16の開口16aの下方の第2の支持体15を除去して、開口15aを形成する。これにより、開口15a、16aよりなる支持体1の開口1aが完成する。
【0059】
続いて、
図5(d)に示すように、第1の支持体13の裏面側にレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスク用いたウエットエッチングにより、開口15a、16aの下方のシリコン基板を除去して開口13aを形成する。このウエットエッチングでは、例えばエッチング液にKOH(水酸化カリウム)等を含むエッチング液を用いてシリコン基板を異方的にエッチングして、傾斜した側壁を有する開口13aを形成する。これにより、開口1aを透過した電子ビームEBが広がった場合であっても、開口13aの側壁に電子ビームEBが阻止されるのを防いで、より効率よく電子ビームEBを散乱体2に導くことができる。
【0060】
次いで、第1の支持体13の開口13aに露出したエッチストッパ膜14をウエットエッチングで選択的に除去することで、エッチストッパ膜14に開口14aを形成する。
【0061】
以上により、
図5(d)の構造を有する遮蔽体1が完成する。
【0062】
次に、
図6(a)に示すように、支持体17としてのシリコン基板を用意し、その支持体17の上に例えば厚さが1μm程度の酸化シリコン膜又は窒化シリコン膜をエッチストッパ膜18として形成する。
【0063】
続いて、
図6(b)に示すように、エッチストッパ膜18の上に、CVD法によりシリコンを堆積させて散乱体膜19を形成する。
【0064】
次に、
図6(c)に示すように、遮蔽体1の開口1aに対応する部分の支持体17をウエットエッチングにより選択的に除去して開口17aを形成する。
【0065】
その後、
図6(d)に示すように、ウエットエッチング又はドライエッチングにより支持体17の開口17aに露出したエッチストッパ膜18を選択的に除去する。このようにエッチストッパ膜18を支持体17と散乱体膜19の間に形成することで、支持体17に開口17aを生成する際に散乱体膜19が侵食されるのを防ぐことができ、散乱体膜19の膜厚のばらつきを抑制できる。
【0066】
以上により、
図6(d)に示す構造を有する散乱体2が完成する。
【0067】
その後、
図5(d)の遮蔽板1及び
図6(d)の散乱体2及びビーム検出素子3(
図4参照)を容器71に固定することで、
図4に示す電子ビーム検出器10が完成する。
【0068】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る電子ビーム検出器の断面図である。なお、本実施形態の電子ビーム検出器20において、
図4の電子ビーム検出器10と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
本実施形態の電子ビーム検出器20では、遮蔽板1と散乱体2とが一体化されている点で、
図4に示す電子ビーム検出器10と異なる。
【0070】
図3に示すように、電子ビーム検出器20は、散乱体2の支持体17と、遮蔽板1の第1の支持体13とが接合されている。この支持体17と第1の支持体13との接合は、例えば、支持体17及び第1の支持体13の表面を水素プラズマ、窒素プラズマ、酸素プラズマ又はアルゴンイオンビームに曝すことで活性化させた後、両者を接触させる直接接合法により行なわれる。
【0071】
本実施形態の電子ビーム検出器20では、遮蔽板1と散乱体2とを直接接合しているため、
図4の電子ビーム検出器10よりも遮蔽体1と散乱体2との距離を正確に設定できる。
【0072】
(第3実施形態)
図8(a)、(b)は、第3実施形態に係る電子ビーム検出器の製造方法を示す断面図である。なお、本実施形態の電子ビーム検出器において、
図4の電子ビーム検出器10と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図8(b)に示すように、本実施形態の電子ビーム検出器では、遮蔽板1と散乱体2とが直接接合法により接合されて一体化されている。但し、散乱体膜19が遮蔽板1の第1の支持体13に直接接合されており、第1の支持体13が散乱体膜19の支持体を兼ねている。
【0074】
図8(b)の構造は、以下のようにして作製される。
【0075】
まず、
図8(a)に示す構造の遮蔽板1を用意する。この遮蔽板1は、
図5(a)〜(d)に示す方法で作製すればよい。次に、上面に散乱体膜19が形成された基板31を用意する。ここでは、基板31は、散乱体膜19を構成する材料とは異なる材料を用いて形成するものとする。
【0076】
次に、直接接合法により、図中の矢印に示すよう散乱体膜19と遮蔽板1の第1の支持体13とを接合する。
【0077】
次に、ウエットエッチングなど方法により、基板31を選択的に除去して第1の支持体13に接合された散乱体膜19を残すことで
図8(b)に示す構造物が得られる。
【0078】
本実施形態でも、遮蔽板1と散乱体膜19とを直接接合しているため、遮蔽体膜16と散乱体膜19との距離を正確に設定することができる。
【0079】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る電子ビーム検出器の断面図である。なお、本実施形態の電子ビーム検出器40において、
図4の電子ビーム検出器10と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図9に示すように、本実施形態の電子ビーム検出器40では、遮蔽体膜16の直下に散乱体膜19が配置されている。このように、電子ビーム検出器40では、遮蔽体膜16と散乱体膜19が近い距離で配置される。そのため、遮蔽体膜16の開口16a及び散乱体膜19を透過した電子ビームの強度は電子ビームEBの形状の影響をより強く受ける。
【0081】
これにより、本実施形態の電子ビーム検出器40は、電子ビームEBの形状の測定に好適である。
【0082】
図10(a)〜(d)は、
図9に示す電子ビーム検出器40の製造方法を示す断面図である。
【0083】
先ず、
図10(a)に示すように、第1の支持体13としてのシリコン基板を用意する。そして、その第1の支持体13の上に例えば酸化シリコンよりなるエッチストッパ膜14を形成する。
【0084】
次に、
図10(b)に示すように、エッチストッパ膜14の上に例えばCVD法により、散乱体膜19として厚さが2μm程度のシリコン膜を形成する。
【0085】
なお、市販のSOI基板を使用する場合には、エッチストッパ膜14及び散乱体膜19を形成する工程を省略できる。
【0086】
その後、散乱体膜19の上に遮蔽体膜16として例えば厚さが数十nm程度の白金(Pt)膜を形成する。
【0087】
次に、
図10(c)に示すように、ドライエッチングにより、遮蔽体膜16の一部を選択的に除去することで、底部に散乱体膜19が露出した開口16aを形成する。
【0088】
次に、
図10(d)に示すように、開口16aの周囲の第1の支持体13をウエットエッチングにより除去して第1の支持体13に開口13aを形成する。次いで、開口13aに露出したエッチストッパ膜14を除去することで、エッチストッパ膜14に開口14aを形成する。
【0089】
次に、第1の支持体13の下面及び第1の支持体13の開口13aの側壁にかけての部分に白金などよりなる金属膜42を形成して、
図10(d)に示す散乱体41が完成する。
【0090】
その後、
図9に示すように、散乱体41をビーム検出素子3とともに容器71に固定することで、本実施形態の電子ビーム検出器40が完成する。
【0091】
(第5実施形態)
図11は、第5実施形態に係る電子ビーム検出器を示す断面図である。なお、本実施形態の電子ビーム検出器50において、
図7に示す電子ビーム検出器20と同様の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0092】
図11に示すように電子ビーム検出器50は、散乱体膜58を有する散乱体52が、厚さ数十〜数百nmの薄いスペーサ膜59を介してビーム検出素子3と接合されている。本実施形態では、スペーサ膜59を介してビーム検出素子3と散乱体膜58とが離間されている。そのため、電子ビームEBの照射による散乱体膜58の発熱の影響を避けつつ、ビーム検出素子3を散乱体膜58と一体化できる。
【0093】
また、スペーサ膜59は、半導体プロセスを用いて形成されるため、ビーム検出素子3と散乱体膜58との距離を高い精度で制御できる。これにより、電子ビームの検出精度のばらつきを効果的に抑制できる。
【0094】
以下、
図11に示す電子ビーム検出器50の製造方法を説明する。
【0095】
図12及び
図13は、
図11に示す電子ビーム検出器50の製造方法を示す断面図である。
【0096】
図12(a)に示すように、支持体17としてシリコン基板を用意し、その支持体17の上に支持体17と異なる材料からなる散乱体膜58を形成する。ここでは、散乱体膜58として例えばCVD法により厚さが2μm程度の窒化シリコン膜を形成するものとする。
【0097】
次に、散乱体膜58の上に例えばCVD法などによりシリコンを例えば50nm〜500nm程度堆積させてスペーサ膜59を形成する。スペーサ膜59の材料はシリコンに限定されるものではなく、散乱体膜58と異なる材料の物質を適宜用いてもよい。
【0098】
続いて、
図12(b)に示すように、ドライエッチングにより、スペーサ膜59の一部を選択的に除去して底部に散乱体膜58が露出した開口59aを形成する。この開口59aは、遮蔽体1の開口1aに対応する部分に形成する。
【0099】
次に、
図12(c)に示すように、開口59aに対応する部分のウエットエッチングにより、開口59aの下方の支持体17を除去して散乱体膜58が露出した開口17aを形成する。
【0100】
次に、
図12(d)に示すように、ビーム検出素子3の表面と、スペーサ膜59の表面とを、水素プラズマ又はアルゴンイオン等に曝して活性化させた後、これらを圧着して接合する。
【0101】
これにより、ビーム検出器3と散乱体52とが一体的に接合される。
【0102】
次いで、
図5(a)〜(d)を参照して説明した方法で作製した遮蔽体1(
図13参照)を用意する。
【0103】
そして、
図13に示すように、遮蔽板1の第1の支持体13と、検出素子52の支持体17とを直接接合法で接合させて、遮蔽板1、散乱体52及びビーム検出器3とを一体的に接合する。
【0104】
その後、
図13の方法で接合された遮蔽板1、散乱体52及びビーム検出器3を容器71内に固定して
図11に示す電子ビーム検出器50が完成する。
【0105】
上記のように、本実施形態では、スペーサ膜59が半導体プロセスを用いて形成されるため、ビーム検出素子3と散乱体膜58との距離を高い精度で制御できる。そのため、電子ビームの検出精度のばらつきの少ない電子ビーム検出器50が得られる。
【0106】
なお、本実施形態の電子ビーム検出器50において、散乱体膜58と支持体17との間にエッチストッパ膜を形成してもよい。これにより、支持体17に開口17aを形成する際の散乱体膜58の膜厚の減少を抑制でき、散乱体膜58の膜厚のばらつきを抑制できる。
【0107】
(第6実施形態)
図14は、第6実施形態に係る電子ビーム検出器を示す断面図である。
【0108】
図14に示すように、本実施形態の電子ビーム検出器60は、ビーム検出素子3の上に散乱体膜19が形成されており、その散乱体膜19の上に開口16aが形成された遮蔽体膜16が形成されている。
【0109】
散乱体膜19は、例えば厚さが2μm程度のシリコン膜であり、PINダイオード等のビーム検出素子3の上に、CVD法等の方法で形成される。
【0110】
また、遮蔽体膜16は、例えば白金膜よりなり、散乱体膜19の上にスパッタ法等の方法で形成される。
【0111】
本実施形態では、ビーム検出素子3と、散乱体膜19と、遮蔽体膜16が一体的に形成されているため、構造が簡単であり、より少ない工程で電子ビーム検出器60を作製できる。また、ビーム検出素子3、散乱体膜19、遮蔽体膜16が一定の距離で配置されるため、位置による検出感度のばらつきを抑制できる。