(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
浮き船用の係留システムであって、前記浮き船は、海洋環境での作業を実施するためのプラットホーム及び前記海洋環境の水線下でのバラスト及び安定性を提供する浮きタワーを有し、前記係留システムは、
海底に沿って前記タワー周りに配置された複数個のアンカと、
各々が前記タワーに作動的に連結されている第1の端部及び各アンカに作動的に連結されている第2の端部を備えた複数本の係留ラインと、を備え、各係留ラインは、回動連結部を用いて互いに接合された少なくとも2本の実質的に剛性のリンクを含み、前記回動連結部が単一の平面に沿って隣り合うリンク相互間の相対運動をもたらすようになっており、
前記各リンクは、互いに平行に配置された複数本の細長い部材から成る、
ことを特徴とする係留システム。
前記複数個のアンカの各々は、重力により前記海底上に保持された重り付きブロック又は前記海底の近くで地球に固定されている複数本の杭打ちピラー又はサクションピラーを備えた骨組み構造体から成る、
請求項6記載の係留システム。
前記複数本の係留ラインの各々の前記第1の端部は、選択的に回動可能なリンクによって前記タワーに連結され、前記リンクは、前記タワーに第1の箇所でピン留めされた第1の端部及び第2の端部を有し、該第2の端部は、選択的に、海洋条件に応じて、
前記浮き船の喫水を増大させるよう第2の下方の箇所のところで前記タワーにピン留めされたり、
前記浮き船の喫水を増大させるよう前記第2の下方の箇所のところで前記タワーにはピン留めされなかったりする、
請求項9記載の係留システム。
前記複数個のアンカの各々は、重力により前記海底上に保持された重り付きブロック又は前記海底の近くで地球に固定されている複数本の杭打ちピラー又はサクションピラーを備えた骨組み構造体から成る、
請求項18記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本明細書で用いられる「炭化水素」という用語は、主として元素としての水素及び炭素(これらが全てであるというわけではない)を含む有機化合物を意味している。炭化水素は、一般に、2つの種類、即ち、脂肪族又は直鎖炭化水素及び環状テルペンを含む環状又は閉リング炭化水素に分類される。炭化水素含有物質の例としては、任意形式の天然ガス、石油、石炭及び燃料として使用でき又は燃料にアップグレードできるビチューメンが挙げられる。
【0034】
本明細書に用いられる「流体」という用語は、気体、液体及び気体と液体の組み合わせ並びに気体と固体の組み合わせ及び液体と固体の組み合わせを意味している。
【0035】
本明細書で用いられる「地下」という用語は、地表の下に生じている地質学的地層を意味している。
【0036】
「アイバー」という用語は、互いに反対側の端部のところに連結手段を備えた任意の細長い物体を意味する。非限定的な例は、各端部のところに、u字形継手若しくはピン又は他の回動コネクタを受け入れる貫通開口部を備えた「ドッグボーン(dog bone)」である。
【0037】
「海底」という用語は、海域の床を意味する。海域は、波、風及び/又は海流を生じる沖合、海又は任意他の海域若しくは水域であるのが良い。
【0038】
「北極」又は「北極圏」という用語は、氷特徴部が生じ又は移動する任意の沖合区域を意味する。本明細書で用いられる「北極」又は「北極圏」という用語は、北極と南極の両方の近くに位置する地理区を含むほど広い概念である。
【0039】
「海洋環境」という用語は、任意の海上、沖合又は沖合の場所を意味している。沖合場所は、浅い海域であっても良く、深い海域であっても良い。海洋環境は、沖合域、港、大きな湖、河口域、海又は海峡である場合がある。
【0040】
「氷床」という用語は、浮くと共に移動している氷塊、氷盤又は氷原を意味している。この用語は、氷床内の氷丘脈をも含む。
【0041】
「プラットホーム」という用語は、海上作業、例えば掘削作業が行われるデッキを意味する。この用語は、任意の連結状態の支持浮き構造物、例えば円錐形船体を更に含む場合がある。
【0042】
〔特定の実施形態の説明〕
図1は、沖合掘削ユニット100の側面図である。沖合掘削ユニット100は、倒立の全体として円錐形の掘削船体102を有している。船体102の頂側部は、掘削作業が行われるプラットホーム104を有している。掘削リグ120がプラットホーム104の上方に延びた状態で示されている。プラットホーム104は、図示していない追加の掘削・産出機器を支持している。掘削船体102、プラットホーム104及び関連の掘削・産出機器は一緒になって、掘削構造物を構成している。
【0043】
沖合掘削ユニット100は、浮きタワー(塔)106を更に有している。この図示の構成例では、タワー106は、直立配置で、海中に浮く実質的に円筒形の本体を備えている。このような構造物は、海洋産業界では「ケーソン」と呼ばれる場合がある。しかしながら、図示のタワー106は、ケーソン又は他の特定のタワー構成には限定されない。タワー106は、ネック108によって掘削船体102の底側部に連結されている。タワー106がアルキメデスの原理に従って浮いているとき、このタワーは、掘削船体102を支持すると共にこれに付随する掘削作業を支援する。
【0044】
浮きタワー106は、掘削構造物を直立且つ安定に保つための制御可能なバラスト区画室を有している。タワー106は、更に、機器や補給品や食料・物資のための貯蔵施設として使用可能である。
沖合掘削ユニット100は、海洋環境50内に位置した状態で示されている。具体的に説明すると、沖合掘削ユニット100は、北極圏の海域で浮いた状態で示されている。水線が参照符号52で示され、海底又は海底床が参照符号54で示されている。
図1の記載では、海洋環境50には実質的に氷がない。これは、海洋波が風及び海流に応答して掘削ユニット100に作用する条件下にある。しかしながら、掘削ユニット100は、北極圏環境において年間を通じて操業するよう設計されていることは言うまでもなく、このような北極圏環境は、実質的に氷の多い状態が海洋環境において一般的であるような寒い冬期の数ヶ月を含む。
【0045】
海洋環境50内における掘削ユニット100の位置を維持するために、係留システム150が提供されている。係留システム150を用いることにより、「位置保持(station-keeping)」と呼ばれている状態が提供される。位置保持は、掘削ユニット100を坑井(図示せず)が形成されている間、海底54上において適正な位置に維持する上で掘削作業中、重要である。
【0046】
係留システム150は、第1に、複数個のアンカ160を有する。
図1の記載では、アンカ160が2つだけ示されている。しかしながら、係留システム150は、好ましくは、少なくとも4つ、より好ましくは6つ〜10個のアンカ160を有することは言うまでもない。各アンカ160は、タワー106から指定された距離のところで海底54上に載る。アンカ160は、海底54に沿ってタワー106周りに半径方向に配置されている。
【0047】
係留システム150は、複数本の係留ライン152を更に有している。各係留ライン152は、タワー106に連結された第1の端部及び各アンカ160に連結された第2の端部を有する。
図1の構成例では、第1の回動ブラケット156が各係留ライン152の第1の端部をタワー106に連結し、第2の回動ブラケット158が各係留ライン152の第2の端部を各アンカ160にそれぞれ連結している。
【0048】
係留ライン152をタワー106にその上端部のところで連結することが好ましい。係留ライン152は、カテナリー状態でタワー106から吊り下げられるのが良い。しかしながら、係留ラインとして用いられている従来型ワイヤロープとは異なり、本発明の係留ライン152は、好ましくは、引張り状態に維持される。この点に関し、北極圏海洋環境では、係留ライン152に弛みを与えることは必要ではない。というのは、水深が浅く、しかも氷がほぼ環状に存在するので海洋波力が最小限に抑えられるからである。
【0049】
各係留ライン152は、複数本のリンク155を有している。リンク155は、回動コネクタ154を用いて互いに接合されている。コネクタ154は、例えば、整列状態の貫通穴に通して配置されたピンであるのが良い。変形例として、コネクタは、u字形継手又は他の回動連結手段である。
【0050】
本発明では、係留ライン152は、従来型ワイヤ、チェーン又はケーブルではなく、これらとは異なり、係留ライン152は、実質的に剛性の部材から成る多数本のリンク155を備えている。各リンク155は、例えば、互いに平行な2本又は3本が1組の個々のアイバーであるのが良い。リンク155は、コネクタ154によってそれぞれの端部のところが互いに連結されている。
【0051】
図2Aは、単一のアイバー210の側面図である。
図2Bは、
図2Aのアイバー210の平面図である。これらの図を一緒に見て理解できるように、アイバー210は、細長い本体212を有している。本体212の互いに反対側の端部214のところには、貫通穴216が設けられている。貫通穴は、それぞれの連結ピン(図示せず)を受け入れる。
【0052】
アイバー210は、本発明の係留システム150のためのリンク155の一部として使用されるのが良い。アイバー210は、細長い鋼又は他の金属製の本体を備えている。しかしながら、他の材料、例えば、ガラス繊維、セラミック又は複合材の使用が考えられる。アイバー210の長さは、例えば、5〜50メートルであるのが良い。さらに、アイバー210は、高さが約1,000mmであり、幅が250mmであるのが良い。これにより、25,000mm
2は、の断面積が得られる。これにより、アイバー210について100メガニュートン以上の許容引張り荷重が得られる。この量は、約15メガニュートンの対応の許容引張り荷重をもつ約6インチ(15.24cm)の断面を有する従来型係留システムで用いられている典型的なワイヤロープとは対照的である。それ故、能力の向上は、引張り荷重への抵抗に有効な鋼面積の増大によって達成される。
【0053】
図1に示されているように、複数本のリンク155が単一の係留ライン152を形成するよう互いに接合されている。
図3Aは、アイバー210の3本のリンク155の側面図である。リンク155は、
図1の係留システム150に使用可能な係留ラインの一部をなしている。隣り合うリンク155のアイバー210の貫通穴216は、互いに整列すると共にピン留めされている。これにより、リンク155相互間の相対的回動運動が可能である。
【0054】
図3Bは、
図3Aのアイバーリンク155の斜視図である。この場合、隣り合うリンク155は、互いに話された分解組み立て関係で示されている。理解できるように、各リンク155は、2本又はそれどころか3本のアイバー210から成るのが良い。リンク155に多数本のアイバー210を用いることにより係留ライン152に追加の許容引張り荷重が提供される。一観点では、各リンク155は、3本〜8本のアイバー210を含む。用いられるアイバーの本数は、例えば個々のアイバー210の断面積及び所望の位置保持能力のような要因で決まることになる。アイバー210を追加することにより、ライン能力又は許容荷重が例えば最高600MN(ネガニュートン)まで増大する。
【0055】
係留ライン152を形成するため、リンク155の個々のアイバー210は、互いに平行な位置に配置される。アイバー210の貫通穴216は、この場合も又、互いに整列する。次に、ピン220が平行に位置したアイバー210の貫通穴216に通される。係留ライン152のリンク155を接合するために使用可能なピン220がアイバー210から離された分解組み立て状態で示されている。
【0056】
係留ライン152は、第2の端部がそれぞれのアンカ160に連結されている。
図4Aは、
図1の係留システム150に使用できる例示のアンカ160の側面図である。
図4Bは、
図4Aのアンカ160の平面図である。
図4A及び
図4Bに一緒に示されているように、アンカ160は、ひとまとまりになった個々の杭部材164を有している。杭164は、好ましくは、杭打ち、サクション(吸引又は吸着)又は当該技術分野において知られている他の手段によって海底54に取り付けられるよう設計されている。
【0057】
杭164は、骨組み構造体162を介して互いに連結されている。骨組み構造体162は、好ましくは、杭164に連結されると共に互いに溶接された鋼要素の格子である。骨組み構造体により、アンカ160に沿う互いに異なる場所で係留ライン152とアンカ160を連結することができる。これにより、係留システム150は、個々の係留ライン152の長さに良好に対応することができる。
【0058】
サクション杭アンカ160は、アンカ160に及ぼされる摩擦力及び静水圧によって係留ライン152の張力に抵抗することができる。単一のサクション杭アンカ160のサイズに関する要件によりその製作及び設置ができなくなる場合があるので、一群の小さな杭を
図4A及び
図4Bに示されているように構造的骨組み状態に配置することにより、所要の抵抗を得るのが良い。杭の特定の本数、直径、進入距離及び間隔は、特定の用途に特有である。
【0059】
図4A及び
図4Bのアンカ実施形態160は、アンカにとって考えられる唯一の実施形態であるというわけではない。
図5Aは、
図1の係留システムに使用できる変形実施形態としてのアンカ560の側面図である。
図5Bは、
図5Aのアンカの斜視図である。この場合、アンカ560は、海底54上に重力の作用で保持されたブロック562である。
【0060】
ブロック562は、好ましくは、スチール鉄筋で強化されたコンクリートで作られる。アンカ560を形成するブロックは、例えば、長さ100メートル、幅100メートル、厚さ44メートルであるのが良い。当然のことながら、他の寸法を採用することができる。重力を利用したアンカ560は、その重量によって係留ライン152の張力に抵抗する。アンカの重量は、係留ライン152内に生じる張力の垂直成分に対する抵抗力をもたらす。それと同時に、このような重量により、張力の水平成分に対する摩擦抵抗力が得られる。
【0061】
図5Aと
図5Bの両方から理解できるように、回動連結部材158がアンカ560の頂面564に設けられている。連結部材158は、スチール製のo‐リング159又は他の手段によって固定されている。o‐リング159は、中心がブロック562の頂面564の定位置に位置したスチール製のc‐リング566に固定されている。
【0062】
図5Cは、係留ライン152を
図4B又は
図5Bのアンカに連結するために使用できる連結部材158の側面図である。図示の連結部材158は、一対のヒンジ534により互いに連結された2枚の鋼板532を備えている。鋼板532の互いに反対側の端部538のところには、貫通穴536が設けられている。貫通穴536は、1組の平行なアイバー210の端部214の貫通穴216と位置合わせ可能であり、次に、しっかりとした回動連結が可能であるようにピン留めされる。
【0063】
図5Cの連結部材158は、単なる例示であることは言うまでもない。係留ライン152とアンカ(例えば、アンカ160)の回動連結を可能にする任意の連結部材を用いることができる。また、
図5Cの連結部材158は、係留ライン152をタワー106に連結するための連結部材として使用できることが注目される。
【0064】
場合によっては、タワー106を掘削ユニット120から切り離すことが望ましい。このような一例は、掘削ユニットを新たな掘削作業のために別の海上場所に曳航すべき場合である。別の例は、掘削ユニット120が大きな氷山又は他の極端な氷特徴部の近づいてくる経路中に存在する場合である。いずれの場合においても、タワー106を切り離してこれを海底54まで下降させる場合に問題が生じる。この点に関し、本発明の互いに接合された係留ライン152は、運動学的に折り畳めることによってタワー106の下降に対応するよう設計されている。
【0065】
この状況を制御するため、係留ラインの選択されたリンク155に浮力特徴を与えるのが良い。
図6Aは、本発明の変形実施形態としての係留システム150のための結合継手の一部として使用できるアイバー610のリンク655の平面図である。
図6Bは、
図6Aのアイバー610のリンク655の側面図である。
【0066】
図示のリンク655は、2本の互いに平行なアイバー610を有する。しかしながら、これとは異なる本数のアイバー610を用いることができる。
図6Bでは、アイバー610は、主として想像線で示されている。
【0067】
各アイバー610は、互いに反対側の端部614を備えた細長い本体611を有している。各端部614は、貫通穴616を有している。貫通穴は、回動コネクタ、例えばピン(図示せず)を受け入れるような寸法形状になっている。回動コネクタは、アイバー610の隣り合う端部614を連結し、それにより連結部が形成される。
【0068】
図6A及び
図6Bの構成例では、リンク655は、一部が浮力をリンクに与える材料で作られている。浮力は、浮力材料の重量と同一体積の海水の重量の差として定義される。浮力材料は、参照符号652で示されている。浮力材料は、オフショア油及びガス業界において知られており、一般に、低密度の水不浸透性材料で作られる。浮力材料の一例は、1立方フィート当たり29ポンド(469.8kg/m
3)という低い密度のシンタクチックフォームである。海水中で重さが29ポンド(13.15kg)の各1立方フィートの材料により、35ポンド(15.88kg)の浮力が得られる。6,500フィート(約2.0km)の深さについて1立方フィート当たり36ポンド(583.2kg/m
3)の密度が必要になる場合がある。
【0069】
米国特許第3,622,437号明細書(発明の名称:Composite Buoyancy Material)は、シンタクチックフォームのマトリックス中に納められた熱可塑性樹脂で作られている中空球を有する浮力材料を開示している。この浮力材料は、1立方フィート当たり18〜22ポンド(291.6〜356.4kg/m
3)という低い浮力を提供すると言われている。他の浮力材料、例えばメイン州ビデフォード所在のフロテーション・テクノロジーズ(Flotation Technologies)社により提供されている微小球を含んでいない中実シンタクチックフォームを用いることができる。本発明は、もし用いるとしても浮力材料の種類又は源には限定されない。
【0070】
浮力材料652は、選択されたアイバー610の互いに反対側の側部にばらばらの状態で固定されるのが良い。変形例として、浮力材料652は、個々のアイバー610に又はリンク655の相当な長さ分に完全に巻き付けられても良い。選択されたリンク655だけが浮力材料652を受け入れる。変形例として、全てのリンクが幾分かの浮力材料652を有するが、浮力の程度は、リンク相互間又はリンク群相互間で選択的に変えられる。
【0071】
リンク655は、上述したように構成されていなければ係留システム150により掘削ユニット100に加わる場合のある下向きの荷重を減少させるだけでなく、係留ライン152の折り畳み性を向上させるよう設計されている。これは、タワー106を掘削構造物120から切り離して掘削構造物120を別の海上場所に曳航することができるようにすることが望ましい場合に有益である。これは、もしオペレータが近づいてくる氷山との衝突を迅速に回避することを強く望む場合に特に有益である。
【0072】
図7Aは、浮き沖合掘削ユニット100のための変形実施形態としての係留システム150′の側面図である。沖合掘削ユニット100は、この場合も又、海洋環境50内に位置した状態で示されている。水線が参照符号52で示され、海底又は海底床が参照符号54で示されている。
図1の海洋環境50とは異なり、
図7Aの海洋環境50は、大きな氷塊710又は氷床を含んでいる。氷床710は、矢印712によって示された経路に沿って動いている。掘削ユニット100は、その経路内に位置した状態で示されている。
【0073】
掘削ユニット100を構成する掘削構造物120及び取り付け状態のタワー106は、オフショア油及びガス産出作業のために定位置に位置している。このような作業は、掘削、修復又は産出を含む場合がある。
図7Aの記載では、タワー106は、掘削構造物120のネック108に取り付けられた状態のままである。
【0074】
掘削ユニット100は、係留システム150′によって定位置に維持されている。係留システム150′は、海底54に沿ってタワーの周りに半径方向に配置された複数個のアンカで構成されている。さらに、係留システム150′は、複数本の係留ライン152を有している。各係留ライン152は、この場合も又、タワー106に作動的に連結された第1の端部及び各アンカ、例えば
図5Aのアンカ560に作動的に連結された第2の端部を有する。
【0075】
各係留ライン152は、複数本のリンク155,655を有している。リンク155,655は、リンク装置、例えば、
図2Aの貫通開口部216内に受け入れられたピンを用いて互いに結合されている。
図7Aの係留システム150′では、選択されたリンク655が浮力材料、例えば浮力材料652を有している。これらリンク655は、上方に浮くように付勢され、即ち、これらリンクは、僅かに正の浮力を有し、リンク154は、沈むようになっており、即ち、これらリンクは、僅かに負の浮力を有する。リンク655は、上向きの矢印で示され、リンク155は、下向きの矢印で示されている。
【0076】
図7Bは、
図7Aの係留システムの側面図である。この場合、タワー106は、掘削構造物120から切り離されている。タワー106は又、海洋環境内において海底54の近くまで下降されている。これにより、掘削構造物120を曳航してこれを氷床710との衝突線(矢印712で示されている)から離脱させることができる。また、これにより、氷山710は、タワー106を通過することができる。
【0077】
図7Bで理解できるように、船720は、掘削構造物120に連結されている。船720は、掘削構造物120を引っ張ってこれを氷床710から遠ざけている。このようにすると、掘削構造物120は、氷床710と衝突しないで済む。
【0078】
タワー106を海底54まで下降させることができるようにするために、係留ライン152は、折り畳み可能でなければならない。係留ライン152は、折り畳み状態であることが
図7Bで理解できる。係留ライン152内に位置していて、負の浮力がゼロであり又は僅かであるリンク155は、沈む傾向があり、浮力材料を備えたリンク155は、浮く傾向がある。このように、係留システム150′は、タワー106を近づいてくる氷床710の危険な通り道から外れた水深まで下降させているときに「圧縮」を許容することができる。
【0079】
オプションとして本発明の係留システムの一部として提供可能な別の特徴は、掘削ユニット100による浮上レベルを調節することができるということにある。換言すると、掘削ユニット100の喫水を変えることが望ましい。当業者であれば理解されるように、喫水は、水線52からタワー106の最も深い部分までの距離である。
【0080】
冬の季節及び他の天候の寒い数ヶ月の間、海洋環境には氷が極めて多く、掘削ユニットは、主として氷の荷重(波の荷重とは異なり)を受ける。この期間中、円錐形の掘削船体102を海中に位置決めして船体102の円錐形部分が海中に位置して氷のための主要な接触箇所を提供するようにすることが好ましい。これにより、氷床により生じる力に耐える能力が大幅に増す。また、これにより、氷の荷重は、常時水平且つ垂直方向上向きであり、浮き掘削ユニット100を沈める傾向がない。
図7Cは、北極圏の浮き構造物を再配置する方法750のステップを示すフローチャートである。この方法750は、まず最初に、浮き構造物を用意するステップを有する。これは、ボックス755で示されている。浮き構造物は、例えば、
図1の掘削ユニット100であるのが良い。
【0081】
浮き構造物は、主要構成要素として、プラットホームを有し、種々の作業は、海洋環境内においてこのプラットホーム上で実施される。浮き構造物は、海洋環境の水線の下にバラスト及び安定性を提供するタワーを更に有する。さらに、浮き構造物は、元来、係留システムによって北極圏海洋環境中に配置されている。係留システムは、第1の端部及び第2の端部を備えた複数本の係留ラインを有し、各係留ラインは、回動連結部を用いて互いに接合された少なくとも2本の実質的に剛性のリンクを有している。係留システムは、海底に沿って配置された複数個のアンカを更に有している。各アンカは、係留ラインの第2の端部ところで各係留ラインをそれぞれ固定する。係留システムは、例えば、係留システム150又は係留システム150′であるのが良い。
【0082】
方法750は、タワーをプラットホームから切り離すステップを更に有している。これは、ボックス760で示されている。当業者であれば理解されるように、浮き構造物が依然として海中にある状態で、タワーを海上作業用プラットホームから機械的に切り離すことができる。
【0083】
方法750は、次に、タワーを海洋環境内で下降させるステップを有する。このステップは、ボックス765で示されている。タワーを近づいてくる氷床の深さよりも下の深さまで下降させる。係留ライン中の回動連結部により、係留ラインは、タワーを海洋環境中に下降させているときに運動学的に折り畳める。
【0084】
方法750は、浮き構造物を海洋環境中の新たな場所まで移動させるステップを更に有する。これは、
図7Cのボックス770で示されている。新たな場所は、当然のことながら、氷床の接近線から外れて位置する。このようにすると、浮き構造物は、氷床と接触しないで済む。
【0085】
図8Aは、
図1の浮き沖合掘削ユニット100のための係留システム150の側面図である。この図では、係留システム150は、船体102の円錐形部分が氷のための主要な接触箇所を提供するために海中に位置するよう掘削構造物120及び取り付け状態の浮きタワー106を位置決めするような配置状態にある。掘削構造物120の喫水が、参照符号D
Iで示されている。
【0086】
海洋環境において波が生じる夏の季節の間、円錐形掘削船体102を上昇させて到来する波の経路から外すことが好ましい。このように、波は、掘削構造物120の最小構造的露出部分、即ち、掘削ユニット100の「ネック」部分に当たる。これは、喫水を減少させることによって起こる。
【0087】
図8Bは、
図1の係留システム150の別の側面図である。この場合、係留システム150は、掘削構造物120が水線52よりも高く位置するよう掘削構造物120を位置決めするように配置されている。これにより、掘削構造物120は、海洋波条件にもかかわらず安定することができる。減少した喫水は、参照符号D
Wで示されている。
【0088】
公知の且つ従来型のワイヤロープ係留システムでは、種々の係留ラインの長さが、喫水の変化に対応するよう容易に調節可能である。例えば、個々のラインは、浮き船との連結部のところで巻き上げ可能である。しかしながら、機械的リンク装置を用いた係留ライン155又は655の場合、長さ調節可能なラインを製造することが困難な場合がある。したがって、本発明において一オプションとして係留システムのための独特な調節システムが提供される。
【0089】
調節システムは、一実施形態では、選択的に回動する「ドッグボーン(dog bone)」リンクを用いる。この「ドッグボーン」リンクは、それぞれの係留ライン150の一部として設けられても良く、或いは、必要に応じてその外部に設けられても良い。好ましくは、「ドッグボーン」リンクは、使用されていない場合であっても係留ライン150内に維持される。これは、
図9に示されている。
【0090】
図9は、掘削ユニット100の浮きタワー106の上方部分の拡大側面図である。この側面図には、回動「ドッグボーン」リンク900が示されている。「ドッグボーン」リンク900は、ドッグボーンリンク900の近位端部のところでピン902周りに回動する。ピン902と反対側のドッグボーンリンク900の遠位端部904が設けられている。この遠位端部904は、連結部材156に取り付けられ、この取り付け部材は、係留ライン(図示せず)に連結されている。
【0091】
一構成例では、回動ドッグボーンリンク900は、タワー106から自由に回動する。この位置では、リンク900の遠位端部は、参照符号904wで示されている。係留ラインによりタワー106に作用する力の対応の座標は、参照符号F
Wで示されている。この位置では、係留ラインの長さは、効果的に長くされている。これにより、タワー106及び連結状態の掘削構造物120を
図8Bに従って波を回避するよう海洋環境中に位置決めすることができる。
【0092】
別の位置では、回動ドッグボーンリンク900は、回動してタワー106から遠ざかることが阻止される。この位置では、リンク900の遠位端部は、参照符号904
Iで示されている。係留ラインによりタワー106に作用する力の対応の座標は、参照符号F
Iで示されている。この位置では、係留ラインの長さは、効果的に短くされている。これにより、タワー106及び連結状態の掘削構造物120を氷の力に良好に耐えるよう海洋環境内で下降させる。また、これにより、喫水が減少し、その結果、喫水は、
図8Aの位置D
Iに位置するようになる。
【0093】
図9から理解できるように、ドッグボーンリンク900の固定場所と喫水の変化との間には或る関係が存在する。この関係は、主として、係留ラインの角度の関数である。長さ8メートルのドッグボーンリンク及び約15°の係留ライン角度の場合、ドッグボーンは、喫水の20メートルの変化をもたらす。20メートルの差は、
図9に示されている。他の長さのドッグボーンリンクを用いると、大きな喫水又は小さな喫水をもたらすことができる。
【0094】
図9に示されている回動ドッグボーンリンク900は、単なる例示であることは言うまでもない。掘削ユニット100の喫水をD
IとD
Wとの間で変化させる他の調節可能な連結装置を採用することができる。例えば、オペレータは、海水条件に応じて、ドッグボーンリンク900を単に追加し又は取り外すだけで良い。いずれの構成であっても、オペレータは、
図8Aの実質的に氷の多い条件か
図8Bの実質的に海洋波条件かのいずれにも対応するよう掘削ユニット120を昇降させることができる。
【0095】
図17は、以下に詳細に説明するように、掘削ユニット120を再位置決めするための別の連結構成例を記載している。別の連結機構では、係留ラインの端部は、浮きタワー(参照符号106′で示されている)の上方部分に沿って選択的に配置可能である。
【0096】
次に
図1と
図10を一緒に参照すると、本発明の係留システムの一部として提供可能な別のオプションとしての特徴は、能動型推進システムを用いることである。一観点では、タワー106,106′の底部のところでの能動的推進を可能にするスラスタ1020が用いられる。スラスタ1020は、作動時、水線52の下で海中に力“R”をもたらし、この力は、掘削ユニット100を直立位置に維持するために使用できる。
【0097】
図1は、タワー106の底部のところに一対の例示のスラスタ109を示している。スラスタ109は、センサ及びコンピュータ制御プロペラを用いた能動型又は動的位置決めシステムを提供する。スラスタ1020を設けることにより、スラスタ支援係留が可能である。例えば、スラスタ1020は、任意形式のプロペラ(例えば、制御可能なピッチ、固定ピッチ及び/又は逆推進プロペラ)、スラスタ、プロパルサ(propulsor)又はウォータジェットであって良く、このようなスラスタは、例えばピッチ制御、低騒音作業のためのトンネル、水面下交換及び引っ込み性のような特徴を有するのが良い。2つの例示の推進装置は、ABB社製のAZIPOD(登録商標)ポッド付きプロパルサ及びカメワ(Kamewa(登録商標))社製のMermaid(登録商標)ポッド付きプロパルサである。このシステムは、強力な(プロパルサ1基当たり5〜25メガワット)のプロパルサを有する。
【0098】
図10は、
図1の浮き沖合掘削ユニットのための係留システム150″の側面図である。この場合、力ベクトルが氷床1010からの衝撃に応答して掘削ユニット100に作用する力を示した状態で示されている。掘削船体102が円錐形であることにより、氷床1010は、水平力F
Hと垂直力F
Vの両方を及ぼす。水平力F
Hと垂直力F
Vの組み合わせにより、掘削ユニット100に作用する転覆又は傾動力F
Rが生じる。
【0099】
一連の逆向きの力が氷床1010の水平力F
H及び垂直力F
Vに対して働く。基本的な流体力学的安定性が得られるようにするために、深い喫水のケーソン又は他のタワーが自然な回復モーメントをもたらす。このモーメントを増大させるため、固体バラストをタワーの下方部分に追加するのが良い。追加の浮力を上方部分に加えるのが良い。これは、例えば、タワー106の上方部分103及び下方部分107内のタンケージ(タンク容量)のサイズを増大させることにより行われるのが良い。タワー106が氷床力が加わることにより傾けられると、重力及び浮力の偏心性により生じるモーメントは、タワー106を垂直位置に復元しようとする。換言すると、水中のタワー106の重量及び寸法形状により、氷床1010により生じた傾動力F
Rの方向とは逆の傾動力C
Rが生じる。
【0100】
上述の係留システム150及び構成部分は、例示の実施形態を提供するに過ぎない。互いに連結された複数本の実質的に剛性のリンクを採用した他の係留システムを使用しても良い。例えば、リンク155を形成するのに1本又は2本以上のアイバー210を用いる代わりに、複数本の長くて中空の管状部材を一緒に束ねても良い。この場合、リンクは、個々のアイバー210よりも非常に長く、連結部の数を実質的に減少させることができる。
【0101】
図12Aは、沖合掘削ユニット100の側面図である。沖合掘削ユニット100は、この場合も又、倒立した全体として円錐形の掘削船体102を有している。船体102の頂側部は、プラットホーム104を有し、掘削作業は、このプラットホーム上で行われる。掘削ライザ122がプラットホーム104から海底54上の圧力制御機器124を貫通して地球表面中に下方に延びた状態で示されている。掘削船体102、プラットホーム104及び関連の掘削機器は、一緒になって、掘削構造物120を構成している。
【0102】
沖合掘削ユニット100は、タワー106′を更に有している。この構成例では、タワー106′は、海洋環境50内において直立配置で浮く細長いラーメン構造体又は骨組み構造体を構成している。タワー106′は、ネック108によって掘削船体102の底側部に連結されている。タワー106′の上方部分103及び下方部分107は、タワー106′を直立且つ安定状態に保つために制御可能なバラスト区画室(図示せず)を有している。タワー106′の上方部分は、オプションとして、掘削流体及び機器の貯蔵のために使用可能である。
【0103】
沖合掘削ユニット100は、海洋環境50内に位置した状態で示されている。具体的に説明すると、沖合掘削ユニット100は、北極圏の海域内に浮いた状態で示されている。水線が参照符号52で示され、海底又は海底床が参照符号54で示されている。
図12Aの記載では、海洋環境50には実質的に氷がない。これは、海洋波が風及び海流に応答して掘削ユニット100に作用する条件下にある。しかしながら、掘削ユニット100は、北極圏環境において年間を通じて操業するよう設計されていることは言うまでもなく、このような北極圏環境は、実質的に氷の多い状態が海洋環境において一般的であるような寒い冬期の数ヶ月を含む。
【0104】
海洋環境50内における掘削ユニット100の位置を維持するために、係留システム150が提供されている。係留システム1250は、
図1に示されていると共に
図1と関連して説明した係留システム150とは異なる仕方で設計されている。しかしながら、
図13A〜
図13C及び
図14A〜
図14Cと関連して以下に説明するように、係留システム1250は、コネクタ1254によって互いに接合された複数本(少なくとも2本、好ましくは3本又は4本以上)の実質的に剛性のリンク1255を更に採用している。
【0105】
係留システム150の場合と同様、係留システム1250は、複数個のアンカ1560を更に有する。
図12Aの記載では、アンカ1560が2つだけ示されている。しかしながら、係留システム1250は、好ましくは、少なくとも4つ、より好ましくは6つ〜10個のアンカ1560を有することは言うまでもない。アンカ1560は、タワー106′から指定された距離のところで海底54上に載る。アンカ1560は、海底54に沿ってタワー106′周りに半径方向に配置されている。「半径方向」という用語は、完全な円を示唆するのではなく、アンカ1560が位置保持機能を発揮するようにタワー106′から離れて且つ海底54に沿って選択的に配置されることを意味している。
【0106】
係留システム1250は、複数本の係留ライン1252を更に有している。各係留ライン1252は、タワー106′に連結された第1の端部1255A及び各アンカ1560に連結されたラインの端部1258を有している。第1の端部は、タワー106′にタワー106′の上端部103のところで連結されている。この位置では、第1の端部は、参照符号1255Aで示されている。これにより、タワー106′及び取り付け状態の掘削構造物120は、海洋環境50内で下方に位置決めされる。
図8Aと関連して上述したように、これは、海洋環境50が実質的に氷の多い状態にある場合に有利である。
【0107】
図12Bは、沖合掘削ユニット100の別の側面図である。沖合掘削ユニット100は、今や、海中で高い位置にあることが理解できる。
図8Bと関連して説明したように、この条件は、海洋環境に実質的に氷がない場合に有利である。この状態では、海洋波は、掘削ユニット100に作用する。掘削船体102は、波の振幅よりもかなり上に位置しているので、波力は、掘削ユニット100が海中の低い位置にある場合よりも小さい。
【0108】
掘削ユニット100を海中の高い位置に位置決めすることができるようにするため、第1の端部は、タワー106′にタワー106′の上端部103のところであるが、相対的に低い箇所のところで連結される。この位置では、第1の端部は、参照符号1255Bで示されている。
【0109】
図12Aと
図12Bの両方の構成例では、係留ライン1252は、カテナリー上にタワー106′から吊り下げられるのが良い。しかしながら、係留ラインとして用いられる従来型ワイヤロープとは異なり、
図12A及び
図12Bの係留ライン1252は、好ましくは、引張り状態に維持される。
【0110】
各係留ライン1252は、2本又は3本以上の剛性リンク1255から成る。
図12Aの例示の構成例では、各係留ライン1250に一対の剛性リンク1252が設けられ、
図12Bでは、3本の剛性リンク1252が用いられている。それぞれの係留ライン1250についてどれほど多数本のリンク1252を実際に用いるかどうかは設計上の選択事項である。ただし、各ライン1250に同数本のリンク1252を用いることが好ましい。
【0111】
リンク1255は、コネクタ1254を用いて互いに連結される。コネクタ1254は、例えば、整列状態の貫通穴に通して配置されたピンであるのが良い。変形例として、コネクタ1254は、u字形継手又は他の回動連結手段である。本発明では、係留ライン1252は、従来型ワイヤ、チェーン又はケーブルではなく、これらとは異なり、係留ライン1252は、「腱」1255を構成する。各腱1255は、3本又は4本以上が1組の束になった互いに平行な個々の管状部材から成る。
【0112】
図13Aは、一実施形態としての腱1255の一部分の側面図である。種々の管状部材が参照符号1310で示されている。管状部材1310は、参照符号1312で示された互いに反対側の端部を有している。管状部材1310は、クランプ1320又は他の結束手段によって束ねられている。管状部材1310,1314は、好ましくは、引張り強度が高いので鋼で作られる。しかしながら、他の材料、例えばガラス繊維、セラミック又は複合材の使用が考えられる。
【0113】
図13B及び
図13Cは、
図13Aの腱1255の断面図である。
図13Bは、B‐B線矢視断面図であり、
図13Cは、C‐C線矢視断面図である。この例示の構成例では、8本の外側管状部材1310が設けられている。外側管状部材1310は、単一の大径管状部材1314を包囲している。各管状部材は、浮力を腱1255に提供するよう中空である。
図13Cでは、クランプ1320は、管状部材1310,1314を束ねた状態で示されている。
【0114】
図14Aは、変形実施形態としての腱1455の一部分の側面図である。この場合も又、種々の管状部材が参照符号1410で示されている。管状部材1410は、参照符号1412で示された互いに反対側の端部を有している。管状部材1410は、この場合も又、クランプ1420又は他の結束手段により束ねられている。
【0115】
図14B及び
図14Cは、
図14Aの腱1455の断面図である。
図14Bは、B‐B線矢視断面図であり、
図14Cは、C‐C線矢視断面図である。この例示の構成例では、7本の管状部材1410が実質的に直線状に配置されている。各管状部材1410は、この場合も又、浮力を腱1455に提供するよう中空である。
図14Cでは、クランプ1420は、管状部材1410を束ねた状態で示されている。
【0116】
図7A及び
図7Bと関連して上述したように、掘削構造物120をタワー106′から切り離すことが望ましい場合がある。これは、例えば、掘削構造物120を修理又は一時的保管のために岸まで曳航する場合に生じることがある。もう1つの例は、掘削ユニット100が大きな氷山が近づいてくる経路中に位置している場合である。いずれの場合においても、タワー106′を切り離してこれを海底54に向かって下降させる場合に問題が生じる。この点に関し、実質的に剛性の腱1255又は1455は、圧縮力が存在している場合に曲がるようには設計されていない。
【0117】
この状況に対応するため、回動コネクタ1254は、係留ライン1252に或る程度の折り畳み性を提供する。これは、
図15A及び
図15Bに示されている。第1に
図15Aは、係留システム1250の側面図である。係留システム1250は、タワー106′に連結されている。また、
図15Aでは、大きな氷山1270Bが方向“I”で掘削現場の存在場所の上に動いていることが理解できる。しかしながら、掘削構造物120は、タワー106′から切り離されて掘削現場から遠ざけられると共に危険な通り道から外れている。さらに、タワー106′は、安定化されて海洋環境52中に途中まで下げられている。
【0118】
図15Aを参照すると、タワー106′が氷山1270との接触を避けるために水線52よりも下の十分な深さ位置まで下げられていることが理解できる。これを達成するため、係留ライン1252は、連結部1254のところで屈曲している。
図15Aの構成は、各係留ライン1252に沿って連結部1254を1つしか示していないが、係留ライン1252は各々、2つ、おそらくは3つ又は4つの連結部1254を有するのが良いことは言うまでもない。一観点では、最も長いリンクは、約700メートル以上である。
【0119】
図15Bは、係留システム1250の別の側面図である。係留システム1250は、タワー106′に連結されている。また、
図15Aでは、更に大きな氷山1270Bが方向“I”で掘削現場の存在場所の上に動いていることが理解できる。掘削構造物120は、掘削ユニット120から切り離されて掘削現場から遠ざけられると共に危険な通り道から外れている。さらに、タワー106′は、安定化されて海洋環境52中に途中まで下げられている。
【0120】
図15Bで理解できるように、タワー106′が氷山1270Bとの接触を避けるために水線52よりも下の十分な深さ位置まで下げられていることが理解できる。これを達成するため、係留ライン1252は、
図15Aに示されている屈曲度よりも連結部1254のところで一段と屈曲している。
【0121】
図16A及び
図16Bは、係留ライン1252の第2の端部1258をアンカ1660に連結する例示の一手段を示している。
図16Aは、係留ライン1252及びアンカ1660の側面図であり、
図16Bは、その平面図である。図示の構成例では、半径方向コネクタ1655が係留リンク1255の末端部のところに設けられている。半径方向コネクタ1655は、アンカ1660に取り付けられたスロット1658内に嵌まり込んでいる。スロット1658により、半径方向コネクタ1655及び取り付け状態の実質的に剛性のリンク1255は、回動することができる。
【0122】
図17は、係留ライン1252の第1の端部1256A又は1256Bをタワー106′に連結する一方法を示している。
図17は、タワー106′の上端部103のところの拡大部分を側面図で示している。図示の構成例では、係留リンク1255の末端部のところに半径方向コネクタ1755が設けられている。半径方向コネクタ1755は、タワー106′に取り付けられた2つのスロット1758A又は1758Bのうちの一方の中に嵌め込まれている。スロット1758A又は1758Bにより、半径方向コネクタ1755及び取り付け状態の実質的に剛性のリンク1255は、回動することができる。
【0123】
スロット1758Aは、スロット1758Bよりもタワー106′の上端部103に沿って高いところに位置していることが注目される。半径方向コネクタ1755をスロット1758Aの中に配置することにより、掘削ユニット100は、
図12Aの記載に従って、海洋環境50中に引き下げられる。半径方向コネクタ1755をスロット1758B内に配置することにより、掘削ユニット100は、
図12Bの記載に従って海洋環境50中に僅かに高い位置に上昇することができる。
【0124】
係留ラインを形成するよう互いに連結されたアイバー若しくは腱又は他の金属製部材を有する実質的に剛性のリンクの使用と海底に沿うアンカの使用を組み合わせることにより、係留能力がかなり増大し、即ち、位置保持を維持すると共に大きな氷荷重に抵抗する能力が高められる。この能力は、公知のワイヤロープを利用した係留ラインを実質的に剛性の構造要素を利用した係留ラインで置き換えることにより従来型係留システムと比較して桁違いに高められる。多数のアイバー又は管状部材を単一のリンク内で整列させることができ、それにより必要に応じて能力が増大する。換言すると、各リンク内のアイバー若しくは管状部材又は他の細長い金属製部材の本数及び/又はサイズを増大させると、各係留ラインの位置保持能力を選択的に高めることができる。さらに、極めて高い位置保持能力、即ち少なくとも約100メガニュートンを作るために限定された本数の係留ラインを用いることができる。このような能力は、公知のワイヤを利用した係留ライン又はチェーンでは達成することができない。というのは、係留システムが設置するのに非現実的に重く且つ困難であるような多数本のライン又はチェーンが必要だからである。有益には、剛性金属製部材は、設置するのが容易であり且つ短時間で設置可能である。これは、開放水域での工事の季節が氷の多い条件によって限定された北極圏では有利である。
【0125】
能力を超える係留ラインの一要件は、浮き掘削ユニット操業中安定状態に保つこと、即ち、掘削ユニットを傾動しないよう直立に維持することである。船の傾動(「ロール」又は「ピッチ」又は「トリム」と呼ばれる場合がある)は、掘削作業を実施可能にするよう所与の許容誤差範囲内に維持されるべきである。許容誤差は、代表的には、約2°の傾動である。タワー(例えば、タワー106又は106′)は、氷の荷重によって生じる転覆傾向に抵抗する長い「てこ」となる。この転覆は、氷の荷重が水線の近くに加えられることに起因している。しかしながら、主係留ライン(例えばライン1250)は、これら主係留ラインを氷の危険な通り道から外れた状態に保つよう水線52よりも幾分深いところに配置されている。当業者であれば理解されるように、タワーを垂直許容誤差の範囲内に保つ幾つかの方法が存在する。一主法は、
図1の「補助」係留システム、例えばライン170を用いることである。
【0126】
図10は、タワー106′の底部のところに設けられた一対の例示のスラスタ1020を示している。スラスタ1020は、センサ及びコンピュータ制御プロペラを用いた能動型又は動的位置決めシステムを構成している。スラスタ1020の存在により、スラスタ支援係留方式が提供されている。
【0127】
スラスタ1020は、方位(アジマス)スラスタである。方位スラスタは、任意の水平方向に回転可能なポッド内に配置された1つ又は2つ以上の船舶用プロペラである。スラスタの作動により、方向舵が不用になる。方位スラスタは、固定プロペラ・方向舵システムよりも良好な操縦性を船舶及び他の船に与える。さらに、方位スラスタを搭載した船は、一般に、ドッグ入れするためのタグを必要としない。ただし、このような船は、困難な場所では操縦するのに依然としてタグを必要とする場合がある。
【0128】
第2に、係留ライン1052は、正しく位置決めされた場合、掘削ユニット100を安定化するよう働くことが可能である。2つの例示の係留ライン1052が
図10に示されている。係留ライン1052は、上述した実施形態としてのリンク155又は655としての複数本のリンク(図示せず)を有する。係留ライン1052のうちの1本によって及ぼされている位置保持力を示す力ベクトルTが示されている。
【0129】
実際の係留システム150では、3本以上の係留ライン1052が全て用いられる可能性があるということは言うまでもない。係留ライン1052のうちの2本又は3本以上は、反作用としての荷重“T”を分担する。この場合、反作用荷重は、“T1”,“T2”等として分割される。しかしながら、例示目的で、反作用荷重“T”に耐えるたった1本の係留ライン1052が示されている。反作用荷重“T”は、水平力T
H及び垂直力T
Vに分解される。係留ラインの連結部相互間の距離が十分に長い場合(即ち、距離D
C)、垂直成分T
Vは、転覆に抵抗する反作用荷重として働くことができる。
【0130】
傾動荷重“T”に反作用するもう1つの主法は、補助の組をなす係留ラインを用いることである。このような補助係留ラインは、
図1に参照符号170で示されている。補助係留ラインは、一次剛性ラインよりも必要とする能力が低く、伝統的なワイヤロープ、ポリエステルラインシステムに従って製作できる場合がある。
【0131】
最後に、スラスタ1020は、掘削ユニット100を表している浮き構造物を直立に保つのを助ける動的力“R”をもたらす。スラスタ1020によりもたらされる力“R”は、氷床1010の水平力F
Hと同一方向に働く水平力である。タワー106の底部のところのこの水平力“R”は、タワー106の垂直性を維持する直接的な手段となる。スラスタ1020は、
図10の係留システム150″の一部となっている。
【0132】
理解できるように、北極圏用浮き掘削ユニット100は、本明細書において説明した種々の実施形態の係留システムと関連して、高緯度北極圏の氷に関する条件の場合であっても、年間を通じてステーションを連続的に又は中断を最小限に抑えた状態で維持する能力を備えている。係留システムは、氷床から邪魔を受ける恐れなく、これらの能力を発揮することができる。この点に関し、係留ラインは、好ましくは、氷床が浮いている深さよりも下でタワーに連結される。しかしながら、係留システムは、オペレータが掘削構造物をタワーから切り離してタワーを海中に下降させて氷山との衝突を回避しようとした場合又は他の目的で折り畳み可能である。
【0133】
本発明の係留システムは又、掘削ライザ(図示せず)を氷から保護する公知のシステムと適合性がある。掘削ライザの保護は、氷荷重の付近で掘削構造物の船体を包囲することによって行われるのが良い。一例が1984年に発行された米国特許第4,434,741号明細書(発明の名称:Arctic Barge Drilling Unit)に示されている。当然のことながら、本発明の係留システムは、浮き船の形態に制限されることがない。
【0134】
本発明の係留システムの位置保持機能は、海面に対する選択された個々の係留ラインの角度を調節すると共にタワー106′の寸法形状を調節することによって最適化できる。係留ラインの角度及びタワー106′の寸法形状は、係留ライン中の荷重を最小限に抑えながら氷床により及ぼされることが予想される氷荷重の有効角度の範囲の影響を受けにくいよう最適化されるのが良い。一観点では、約30°の角度θ
Tと長さ200メートル、幅70メートルのタワー寸法と組み合わせた場合、これは、この目的を達成するのに十分である。当業者であれば理解されるように、実際の設計パラメータは、各用途に応じて様々であろう。
【0135】
興味を引くこととして、係留ラインの角度を調節することにより、「風下」ライン、即ち、最も大きな荷重を受ける係留ラインと反対側のラインは、張力の変化をほぼゼロに保つことができる。これは、風下ラインが圧縮状態になり、場合によっては、或る程度の望ましくない運動を掘削ユニットにもたらすのを阻止する。
【0136】
係留ラインへの剛性リンクの使用と関連して問題が生じる。この問題は、リンクの剛性がライン全体をも比較的剛性にする傾向があるということである。このことは、アンカ(例えばアンカ160)をタワー106′の周りに半径方向に配置する際に或る程度の精度が必要になることを意味している。
【0137】
公知のワイヤロープ係留システムでは、ラインの長さを増大させ又は減少させる機能は、ラインを巻き出し又は巻き上げることによって容易に達成される。これにより、アンカの配置に関する精度の必要性が減少するしかしながら、本明細書において説明している係留システムの場合、係留ラインの長さは、搭載機器の高能力要件及び掘削構造物120を氷床の脅威下において分離する上での要件に起因して搭載機器を用いたのでは容易には調節できない。さらに、アンカを高い許容誤差の範囲内で、例えば数センチメートル以内で配置することは困難である。したがって、係留システムにおける設置上の許容誤差のための調節が望ましい。
【0138】
一態様では、アンカ160に沿って互いに異なる連結箇所158が設けられるのが良い。しかしながら、このようにしても海面下における設置許容誤差にとって十分精細であるというわけではない。変形例として、種々のアンカの配置のためのガイドとして設置中、中央位置決めテンプレートを用いても良い。
【0139】
図11Aは、浮き構造物用の係留システム1050を配備するための方式を示している。浮き構造物は、例えば、
図1の掘削ユニット100であるのが良い。この方法は、実質的に剛性の係留ライン及び対応のアンカを許容誤差範囲内で迅速に且つ支持機器を最小限に抑えた状態で設置する必要性を満たす。
【0140】
図11Aで理解できるように、係留ライン1152及び対応のアンカ1160は、海洋環境56内に、即ち、沖合且つ海面下に配置されている。係留ライン1152は、回動連結手段、例えばピンを用いて互いに連結された複数本の実質的に剛性のリンク1155から成っている。係留ライン1152のリンク1155は、少なくとも2本のアイバーから成っていても良く、或いは、複数本の実質的に中空の管状部材から成っていても良い。係留ライン1152は、好ましくは、少なくとも約10メガニュートンの力、より好ましくは最高約100メガニュートンの力に耐えることができる。より好ましくは、係留ライン1152は、最高約500メガニュートンの力に耐えることができる。
【0141】
係留ライン1152は、ケーソン(図示せず)に作動的に連結されるよう構成された第1の端部156及びアンカ160に作動的に連結された第2の端部158を有している。第1の端部156及び第2の端部158は各々、回動コネクタ、例えば
図5Cのコネクタ158を有している。係留ライン1152、アンカ160及びコネクタは、括弧で示された係留システム1150を構成している。係留ライン1152中の選択されたリンクは、浮力を増大させる材料を受け入れるのが良い。
【0142】
海底1154も又、海洋環境56の一部として示されている。
図11Aでは、係留システム1150は、海底1154上に浮遊した状態で示されている。矢印11Aは、海底1154上への係留システム1150の下降方向を示している。永続的な係留ライン1152は、いったん定位置に配置されると、海底1154からタワーまで延びる。具体的に説明すると、アンカ160は、海底1154に取り付けられ、永続的係留ライン1152は、アンカ160から上方に延びてタワーに取り付けられる。アンカ160をタワーに対して正確な位置に固定するため、位置決めテンプレート1110が用いられる。位置決めテンプレート1110は、好ましくは、海底1154上に載るよう構成された重い鋼製のスキッドである。位置決めテンプレート1110は、海底1154に沿って通常設置され、構成を掘削する手段をなす掘削テンプレートの改造版であるのが良い。係留システム1150を配備する方法と関連して、テンプレート1110は、海底1154上に配置される。これは、括弧1120のところに示されている。位置決めテンプレート1110は、タワーが後で操業のために配備される上限の位置で海底1154に沿って配置される。
【0143】
次に、設定ライン1152′を海洋環境56中に下降させる。設定ライン1152′も又、括弧1120のところに示されている。設定ライン1152′は、所定の長さをもつ係留ライン1152の一部分であるのが良い。変形例として、設定ライン1152′は、一時的測定ラインであっても良い。いずれの場合であっても、設定ライン1152′は、アンカ160にアンカ160の端部158のところで取り付けられる。しかしながら、アンカ160は、海底1154にまだ取り付けられない。
【0144】
次に、設定ライン1152′を位置決めテンプレート1110に連結する。このステップの実施を可能にするため、案内ブラケット1112を位置決めテンプレート1110に沿って設ける。案内ブラケット1112は、
図11Bのテンプレート1110の端部のところに示されている。
【0145】
図11Bは、
図11Aの括弧1120の一部の拡大図である。拡大領域は、
図11A中に参照符号11Bで示されている。
図11Bを参照すると、案内ブラケット1112及び位置決めテンプレート1110の側面図が提供されている。案内ブラケット1112は、テンプレート1110と設定ライン1152′との間の回動連結部となる。設定ライン1152′の第1の継手1155(1)が案内ブラケット1112に連結された状態で示されている。
【0146】
第1の継手1155(1)までの設定ライン1152′の長さは、テンプレート1110とアンカ1160との間の正確な間隔を提供するよう設定されている。設定ライン1152′の剛性を利用して、アンカ1160を海洋環境56内で海底1154まで位置決めテンプレート1110から適切な距離のところに完全に下降させる。アンカ1160を重力の作用か杭もしくはサクションアタッチメントかのいずれかによって海底1154に固定する。
【0147】
アンカ1160を位置決めする上述のプロセスを設定ライン1152′の使用によって繰り返す。この点に関し、設定ライン1152′を各アンカ1160が海底1154上に配置されると各アンカ1160から切り離す。それにより、多数のアンカ1160は、将来タワーに連結可能に正しく位置決めされる。次に、位置決めテンプレート1110を取り外すのが良く、そしてオプションとして運び去る。
【0148】
アンカ1160を海底1154にいったん固定すると、タワー、例えばタワー106′を現場に運ぶ。タワーを直立配置にする。次に、係留ライン1152をタワーとそれぞれのアンカ1160との間に連結するのが良い。位置決めテンプレート1110により、アンカ1160を係留ライン1152が容易にタワーに連結されるように高い精度で配置することができる。
【0149】
タワーをいったん完全に連結すると、オペレータは、タワーの喫水を増大させる。次に、掘削構造物をタワー上に浮かせて連結する。タワーを部分的にバラスト除去して係留ライン1152に所望の予備張力を達成するのが良い。
【0150】
図11C及び
図11Dは、一緒になって、浮き構造物のための係留システムを配備する方法1160の1つにまとめられたフローチャートである。係留システムは、
図11Aの係留システム1150によるものであっても良く、或いは、
図12Aの係留システム1250によるものであっても良い。浮き構造物は、例えば、
図12Aの掘削ユニット100であるのが良い。この点に関し、浮き構造物は、海洋環境における作業を可能にするためのプラットホームを有する。浮き構造物は、海洋環境における水線下でのバラスト及び安定性を提供するタワーを更に有する。
【0151】
この方法1160は、位置決めテンプレートを沖合作業現場、例えば掘削現場で海底上に配置するステップを有する。これは、
図11Cのボックス1162で示されている。位置決めテンプレートを掘削現場でタワーの意図した配置場所の下に配置する。この方法1160は、設定ラインを用意するステップを更に有する。これは、ボックス1162で示されている。設定ラインは、第1の端部、第2の端部及びリンク装置を用いて互いに接合される複数本の実質的に剛性のリンクを有する。各リンクは、少なくとも1本の細長い金属製部材から成る。
【0152】
方法1160は、設定ラインの第1の端部を位置決めテンプレートに連結するステップ及び次に設定ラインの第2の端部をアンカに連結するステップを更に有する。これらステップは、それぞれ、ボックス1166及びボックス1168に示されている。アンカを用いて設定ラインを固定し、後で浮き構造物に連結されている係留ラインを固定する。
【0153】
方法1160は、アンカを海底に沿って固定するステップを更に有する。これは、ボックス1170で示されている。固定方式は、用いられるアンカの形式によって決まる。例えば、アンカがブロックベースだけを有している場合、アンカを海底上に設置するだけでアンカを重力の作用で固定することができる。アンカがサクション杭を用いている場合、海底の下の土を除去し、サクション杭を埋設することによってアンカを固定する。アンカを第1の長さに従って固定する。
【0154】
方法1160は、設定ラインの第1の端部を位置決めテンプレートから切り離すステップ及び設定ラインの第2の端部をアンカから切り離すステップを更に有する。これらステップは、それぞれ、ボックス1172及びボックス1174に示されている。このようにすると、設定ラインは自由である。ここで注目されるように、設定ラインは、アンカをテンプレートから正しい間隔を置いて配置するために用いられる一時的測定ラインであるのが良い。変形例として、設定ラインは、所定の長さをもつ永続的係留ラインの一部分であっても良い。いずれの場合においても、ステップ1164〜1174を連続して位置したアンカについて繰り返し実施し、それにより複数個のアンカを位置決めテンプレートの周りに適正な間隔を置いて配置する。これらステップを繰り返すプロセスは、ボックス1176に示されている。
【0155】
方法1160は、永続的係留ラインを用意するステップを更に有する。これは、ボックス1178に示されている。係留ラインは、第1の端部、第2の端部及びリンク装置を用いて互いに接合される複数本の実質的に剛性のリンクを有する。係留ラインは、例えば、
図1のライン150によるものであっても良く、
図11Aのライン1152によるものであっても良く、或いは
図12Aのライン1250によるものであっても良い。
【0156】
方法1160は、係留ラインの第2の端部をそれぞれのアンカに作動的に連結するステップを更に有する。これは、
図11Dのボックス1180に示されている。この方法1160は、係留ラインの第1の端部を浮き構造物に作動的に連結するステップを更に有する。このするステップは、ボックス1182に示されている。好ましくは、各第1の端部は、タワーの頂部のところで浮き構造物に連結される。
【0157】
次に、ステップ1178〜1182を連続して位置したアンカの各々について繰り返し実施する(ステップ1184))。好ましくは、設置される各永続的係留ラインは、移動中の氷床からの少なくとも約100メガニュートンの力に耐えることができる。一観点では、移動中の氷床からの力は、水平の成分を有し、各係留ラインは、少なくとも約500メガニュートンの水平力に耐えることができる。
【0158】
本明細書において説明した本発明は、掘削リグを支持するために用いられる沖合構造物には限定されない。本発明は、氷の動的氷塊に対する保護が必要な北極圏海域で操業する任意形式の沖合船に適している。例としては、産出支援船、北極調査船及び北極圏海域の軍隊用又は民間人用のロジスティクス支援のための戦略的場所が挙げられる。
【0159】
本明細書において説明した本発明は、上述の利益及び利点を達成するよう十分に計画されていることは明らかであるが、本発明は、その精神から逸脱することなく、改造、変形及び変更が可能である。「高緯度北極」に代表的な厳しい氷の条件の条件下において浮き船を「定位置」に維持するための技術的改良が提供されている。