(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662429
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】1以上のコンポーネントから構成される3Dメッシュモデルを符号化/復号化する方法
(51)【国際特許分類】
G06T 17/20 20060101AFI20150108BHJP
H04N 13/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
G06T17/20
H04N13/00
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-514469(P2012-514469)
(86)(22)【出願日】2010年6月9日
(65)【公表番号】特表2012-529825(P2012-529825A)
(43)【公表日】2012年11月22日
(86)【国際出願番号】EP2010058111
(87)【国際公開番号】WO2010142743
(87)【国際公開日】20101216
【審査請求日】2013年6月7日
(31)【優先権主張番号】09305527.5
(32)【優先日】2009年6月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】カイ,カンイン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,クチン
(72)【発明者】
【氏名】テン,ジュン
【審査官】
伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】
Dinesh Shikhare,外2名,"Compression of Large 3D Engineering Models using Automatic Discovery of Repeating Geometric Features",VMV 2001,IOS Press,2001年11月21日,p.233-240
【文献】
Rachida Amjoun,外2名,"Compression of Complex Animated Meshes",Advances in Computer Graphics Lecture Notes in Computer Science,ドイツ,Springer,2006年 1月 1日,Vol.4035,p.606-613
【文献】
Dejan V Vranic,外1名,"3D Model Retrieval" [online],Proceedings of the Spring Conference on Computer Graphics and its Applications (SCCG2000),2009年 5月 3日,p.89-93,[2009年12月22日検索],インターネット,URL,http://www.informatik.uni-leipzig.de/~vranic/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 15/00 − 19/20
H04N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のコンポーネントを有する3Dメッシュモデルを符号化する方法であって、
前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントについて3Dスペースにおける正規直交基底を決定するステップであって、コンポーネントの頂点に基づく主成分解析が利用され、各頂点は1以上のトライアングルに属し、前記主成分解析について、前記コンポーネントの各頂点には前記頂点が属するトライアングルの面積から決定されるウェイトが割り当てられ、前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントについて、コンポーネント平均が計算される、前記決定するステップと、
前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントの向きをグローバル座標系に対して正規化するステップであって、前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントは、そのコンポーネント平均が元の位置から前記グローバル座標系の中心に動かされるように平行移動され、平行移動されたコンポーネントは、各コンポーネントの決定された正規直交基底による回転だけ回転され、前記平行移動され回転されたコンポーネントは、平行移動されて元の位置に戻される、前記正規化するステップと、
前記正規化された頂点位置を量子化するステップと、
ローカル座標系が利用されるスパニングトライアングルに基づき、前記量子化された頂点位置を差動符号化するステップと、
前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントのオブジェクト座標系を符号化するステップであって、前記オブジェクト座標系情報は各コンポーネントの前記直交規定から求められる、前記符号化するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記オブジェクト座標系情報は、前記コンポーネントの共分散マトリックスの2つの固有ベクトルを有するが、第3固有ベクトルを有しない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記3Dメッシュモデルは少なくとも2コンポーネントを有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
1以上のコンポーネントを有する3Dメッシュモデルを復号する方法であって、
前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントに対して、前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントのコンポーネント座標系とグローバル座標系との間の変換を規定する、3Dスペースの正規直交基底を有する、オブジェクト座標系情報を受け取るステップと、
ローカル座標系が利用されるスパニングトライアングルに基づき、量子化された頂点位置を差動復号するステップと、
前記復号された頂点位置を逆量子化するステップと、
前記1以上のコンポーネントのコンポーネントに属する逆量子化された頂点を決定するステップと、
前記受信したオブジェクト座標系情報に基づき、前記グローバル座標系に対して、前記決定した頂点が属する前記コンポーネントの向きを復元するステップと、
少なくとも前記1以上のコンポーネントから前記3Dモデルを組み立てるステップとを有し、
前記コンポーネントの向きを復元するステップは、
前記コンポーネントの各頂点の逆量子化された位置により前記コンポーネントの平均ポイントを計算するステップと、
前記平均ポイントが前記グローバル座標系の中心に平行移動される、前記コンポーネントを平行移動するステップと、
前記コンポーネントに対して規定された変換により、前記平行移動されたコンポーネントを変換し、前記変換は回転を含む、変換するステップと、
前記平均ポイントが平行移動され前の位置に戻される、前記変換されたコンポーネントを平行移動するステップと、
を有する方法。
【請求項5】
前記3Dメッシュモデルは少なくとも2コンポーネントから組み立てられ、
各コンポーネントについて、個別のオブジェクト座標系情報が受信され、
各コンポーネントについて、前記向きが個別に復元される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記オブジェクト座標系情報は、平行移動情報を有さない、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記コンポーネントに関するオブジェクト座標系情報を受信するステップは、前記コンポーネントについて3Dスペースにおける正規直交基底を決定するため、共分散マトリックスの2つの固有ベクトルを抽出し、第3固有ベクトルを計算し、オブジェクト座標系情報として前記固有ベクトルを利用するステップを有する、請求項4ないし6何れか一項記載の方法。
【請求項8】
1以上のコンポーネントを有する3Dメッシュモデルを符号化するジオメトリエンコーダであって、
前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントについて3Dスペースにおける正規直交基底を決定する決定手段であって、コンポーネントの頂点に基づく主成分解析が利用され、各頂点は1以上のトライアングルに属し、前記主成分解析について、前記コンポーネントの各頂点には前記頂点が属するトライアングルの面積から決定されるウェイトが割り当てられ、前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントについて、コンポーネント平均が計算される、前記決定手段と、
前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントの向きをグローバル座標系に対して正規化する正規化手段であって、前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントに対して、そのコンポーネント平均が元の位置から前記グローバル座標系の中心に動かされるように平行移動し、平行移動されたコンポーネントを各コンポーネントの決定された正規直交基底による回転だけ回転し、平行移動され回転されたコンポーネントを平行移動してその元の位置に戻すことを含む変換を実行する変換手段を有する、前記正規化手段と、
前記正規化された頂点位置を量子化する量子化手段と、
ローカル座標系が利用されるスパニングトライアングルに基づき、前記量子化された頂点位置を差動符号化するエンコーダと、
前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントのオブジェクト座標系を符号化し、前記オブジェクト座標系情報は各コンポーネントの前記直交規定から求められる、エンコーダと
を有するジオメトリエンコーダ。
【請求項9】
前記オブジェクト座標系情報は、前記コンポーネントの共分散マトリックスの2つの固有ベクトルを有するが、第3固有ベクトルを有しない、請求項8記載のジオメトリエンコーダ。
【請求項10】
1以上のコンポーネントを有する3Dメッシュモデルを復号するジオメトリデコーダであって、
ローカル座標系が利用されるスパニングトライアングルに基づき、量子化された頂点位置を差動復号する復号手段と、
前記復号された頂点位置を逆量子化する逆量子化手段と、
前記1以上のコンポーネントのコンポーネントに属する逆量子化された頂点を決定する決定手段と、
前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントについて、前記1以上のコンポーネントの各コンポーネントのコンポーネント座標系とグローバル座標系との間の変換を規定する、3Dスペースの正規直交基底を含むオブジェクト座標系情報を受信する受信手段と、
前記受信したオブジェクト座標系情報に基づき、前記グローバル座標系に対して、前記決定された頂点が属する前記コンポーネントの向きを復元する復元手段と、
少なくとも前記1以上のコンポーネントから前記3Dモデルを組み立てる組み立てブロックとを有し、
前記コンポーネントの向きを復元する復元手段は、
前記コンポーネントの各頂点の逆量子化された位置により前記コンポーネントの平均ポイントを計算するステップと、
前記平均ポイントが前記グローバル座標系の中心に平行移動される、前記コンポーネントを平行移動するステップと、
前記コンポーネントに対して規定された変換により、前記平行移動されたコンポーネントを変換し、前記変換は回転を含む、前記変換するステップと、
前記平均ポイントがその前の位置に平行移動されて戻される、前記変換されたコンポーネントを平行移動するステップと、
を実行するように構成されている、
ジオメトリデコーダ。
【請求項11】
前記オブジェクト座標系情報は、前記コンポーネントの共分散マトリックスの2つの固有ベクトルを有するが、第3固有ベクトルを有しない、請求項10記載のジオメトリデコーダ。
【請求項12】
前記3Dメッシュモデルは少なくとも2コンポーネントを有する、請求項10または11記載のジオメトリデコーダ。
【請求項13】
少なくとも1つのコンポーネントから構成される符号化された3Dメッシュモデルであって、
符号化された頂点データの少なくとも1つのグループであって、前記グループの頂点データは前記コンポーネントに属し、少なくとも1つの符号化された頂点のデータはローカル座標系が利用されるスパニングトライアングルに基づき差動符号化される、前記符号化された頂点データの少なくとも1つのグループと、
コンポーネント座標系とグローバル座標系との間の変換を規定する前記コンポーネントに関するオブジェクト座標系情報と、
を有する符号化された3Dメッシュモデル。
【請求項14】
前記オブジェクト座標系情報は、前記コンポーネントの頂点データの共分散マトリックスの2つの固有ベクトルを有する、請求項13記載の符号化された3Dメッシュモデル。
【請求項15】
前記符号化された頂点データのグループは、ヘッダを有し、
前記オブジェクト座標系情報は、前記ヘッダに格納される、請求項13または14記載の符号化された3Dメッシュモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上のコンポーネントから構成される3Dメッシュモデルの符号化及び復号化、対応するエンコーダ及びデコーダ並びに生成されるデータセットに関する。
【背景技術】
【0002】
3次元(3D)メッシュは、3Dオブジェクトを表現するための各種アプリケーションにおいて広く利用されてきた。それらの生の表現は、特に3Dスキャナの急速な成長によって通常は大量のデータを必要とする。しかしながら、大部分のアプリケーションは、格納及び伝送のため3Dメッシュのコンパクト表現を要求する。1990年代の初頭から3Dメッシュを効率的に圧縮するための各種アルゴリズムが提案されてきた。このタイプの技術は、インターネットに基づく3Dアプリケーションの急速な成長によって、学界と産業界との双方からさらなる注目を受けることが想定される。
【0003】
3Dオブジェクトの表面は、トライアングルメッシュであり、すなわち、トライアングルから構成される。エッジを共有する2つのトライアングルは隣接している。隣接するトライアングルのシーケンスはパスであり、トライアングルの集合は、それのトライアングルの何れか2つの間にパスが存在する場合、連結されていると呼ばれる。平行四辺形の形状であるフラットな表面エリアは、2つのトライアングルのみが正確に記述されることしか要求されず、平行四辺形の形状でないフラットなエリアはより多くのトライアングルを必要とする。典型的には、3Dメッシュは、連結データ、ジオメトリデータ及びプロパティデータの3つのタイプのデータにより表現される。連結データは頂点間の隣接関係を記述し、ジオメトリデータは3D形状における頂点の位置を規定し、プロパティデータは通常のベクトル、物質の反射率及びテクスチャ座標などの属性を規定する。最も広範に利用される3D圧縮アルゴリズムは、連結データとジオメトリデータとを別々に圧縮する。ジオメトリデータの符号化オーダは、基礎となる連結符号化により決定される。3Dメッシュプロパティデータは、通常はジオメトリ圧縮に類似する方法により圧縮される。
【0004】
ジオメトリデータは、大部分のケースにおいて空間的にも隣接する、符号化オーダに沿った隣接する頂点の位置の間の高い相関を利用することによって通常圧縮される。大部分のジオメトリ圧縮スキームは、頂点位置のプレ量子化、量子化された位置の予測及び予測残差のエントロピー符号化の3ステップの処理に従う。
【0005】
未圧縮のジオメトリデータは、典型的には、32ビット浮動小数点数により各座標コンポーネントを規定する。しかしながら、この精度は、人間の肉眼の知覚能力を超えるものであり、通常の用途に必要とされるものよりはるかに高い。従って、量子化は、視覚的なクオリティを大きく損なうことなくデータ量を低減するのに利用可能である。量子化技術は、一様又は非一様に分類可能である。各量子化セルは、一様なスカラ量子化手段において同じ長さを有するが、非一様なスカラ量子化手段では各セルは異なる長さを有する。既知の方法は、ローカルな曲率とトライアングルのサイズとに従ってメッシュを複数の領域に分割し、その後に異なる領域に異なる量子化解像度を適応的に選択するものである。各領域内において、頂点の座標は一様に量子化される。非一様な量子化と比較して、一様な量子化はシンプルであり、計算効率的なものであるが、レート歪み(R−D)パフォーマンスに関して最適でない。
【0006】
ジオメトリデータの圧縮の他の重要な問題は、頂点の位置を表現するのに用いられる座標系である。通常、
図1a)に示されるように、モデル全体のための(通常はデカルト)グローバル座標系(WCS)及び/又は単一のトライアングルのためのローカル座標系(LCS)が利用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、符号化された3Dメッシュモデルの精度、特に1以上の異なるコンポーネントから構成される符号化された3Dメッシュモデルの精度を向上させるための方法及び手段を提供する。
【0008】
1以上のコンポーネントから構成される3Dメッシュモデルを符号化する方法が、請求項1に開示される。
【0009】
1以上のコンポーネントから構成される対応する符号化された3Dメッシュモデルが、請求項12に開示される。
【0010】
1以上のコンポーネントから構成される符号化された3Dメッシュモデルを復号化する方法が、請求項6に開示される。
【0011】
1以上のコンポーネントから構成される3Dメッシュモデルを符号化するジオメトリエンコーダが、請求項10に開示される。
【0012】
1以上のコンポーネントから構成される符号化された3Dメッシュモデルを復号化するジオメトリデコーダが、請求項11に開示される。
【0013】
本発明の効果的な実施例が、従属形式の請求項、以下の説明及び図面に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施例が、添付した図面を参照して説明される。
【
図1】
図1a)は3Dメッシュモデルに利用されるグローバル座標系とローカル座標系とを示し、
図1b)は3Dメッシュモデルのコンポーネントに利用されるコンポーネント座標系を示す。
【
図2】
図2は、ワイヤフレームモデルとしての一例となる3Dメッシュモデルを示す。
【
図3】
図3a)〜c)は未圧縮3Dメッシュモデルの詳細を示し、
図3d)〜f)はアーチファクトを有する従来の量子化及び逆量子化3Dメッシュモデルの詳細を示し、
図3g)〜i)は本発明による改良された量子化及び逆量子化3Dメッシュモデルの詳細を示す。
【
図4】
図4は、3Dメッシュモデルのエントロピーエンコーダのブロック図である。
【
図5】
図5は、3Dメッシュモデルのエントロピーデコーダのブロック図である。
【
図6】
図6は、3Dメッシュモデルを符号化する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、各デカルト座標系による3Dメッシュモデルの一部を示す。3つの直交軸X
W,Y
W,Z
Wを有するグローバル座標系が、モデル全体に有効である。スパニングツリーT
sp(uvr)が、リファレンストライアングルT
ref(uvw)に対して記述される。ローカル座標系LCS(3つの直交軸X,Y,Zを有する)は、通常は各リファレンストライアングルにおいて定義される。“アクティブゲート”と呼ばれるT
ref及びT
spの共通のサイド
【数1】
は、ローカルx軸Xを規定する。
【0016】
【数2】
3Dモデル(すなわち、頂点及び連結データ)を圧縮する際、量子化が利用され、量子化エラーが生じる。量子化は、より小さな集合によって大きな又は無限の値の集合を表現するため、量子化は不可逆処理となる。典型的なメッシュジオメトリ符号化方式は、8〜12ビットの量子化解像度により各座標を一様に量子化する。スムーズな豹変と一様に分布した頂点とを有するモデルについては、クオリティの損失は肉眼ではほとんど気付くことができない。しかしながら、この近似はしばしば、何れの座標軸にも直交しないフラットな表面を正確に再生することができず、シンプルなジオメトリに対してでさえ重要な歪み量を追加する。例えば、モデルが大きなフラット領域を有する場合、量子化エラーは、当初はフラットな部分領域に属するトライアングルがもはやフラットでない、すなわち、それらは逆量子化後はフラットな表面を生成しないという効果を従来は有する可能性がある。この問題はグローバル座標系WCSに対するコンポーネントの位置から部分的に生じることがわかっていた。本発明は、各コンポーネントに対して別々のコンポーネント座標系CCSを規定することによって、上記問題を解決する。
【0017】
本発明の一態様によると、コンポーネントに分解される3Dメッシュモデルは、
図1b)に示されるように、各コンポーネントが自らの個別のコンポーネント座標系CCSに対して符号化されるとき、より良好かつより正確に量子化可能である。エンコーダでは、コンポーネント座標系CCSは、量子化のためコンポーネントを正規化するのに利用され、これにより、量子化はグローバル座標系WCSにおいて実行される。これは、量子化エラーを低減する。符号化された3Dモデルでは、コンポーネント座標系を規定するデータが含まれる。デコーダでは、コンポーネント座標系CCSを規定するデータが抽出され、コンポーネントがグローバル座標系WCSにおいて逆量子化され、その後に抽出されたコンポーネント座標系CCSを利用して、当初の位置に変換される。
【0018】
以下において、符号化及び復号化処理がより詳細に説明される。一般に、現在のコンポーネントの頂点の位置は、{v
i|i=0,...,n}である。現在の連結されているコンポーネントがm個のトライアングルを有すると仮定する。現在の連結されているコンポーネントの何れかのトライアングルT
iに対して、それの領域をS
iとし、それの3つの頂点をv
i0,v
i1,v
i2とする。現在のコンポーネントのトライアングルは、{(i0,i1,i2)|i=0,..,m}である。現在のコンポーネントの表面エリア全体はSである。
【0019】
一実施例では、符号化中に以下のステップが実行される。
1.コンポーネントの平均ポイントv
meanと共分散行列Cとを以下のように計算する。
【0020】
【数3】
2.Cの固有ベクトルと対応する固有値とを計算する。E0,E1,E2は固有ベクトルである(固有値の昇順にソートされるなど)。
3.各頂点を−v
meanだけ平行移動する。このとき、すべての頂点の平均ポイントは原点となる。
4.E0,E1,E2をX,Y,Z軸に揃えるため各頂点を回転する。
5.各頂点をv
meanだけ平行移動する。
6.例えば、頂点位置のプレ量子化、量子化された位置の予測及び予測残差のエントロピー符号化の従来の3ステップの処理などによって、回転されたジオメトリデータを圧縮する。
7.符号化された予測残差に加えて、E0,E1を圧縮されたコンポーネントデータに記録する。
【0021】
一実施例では、以下のステップが復号化中に実行される。
1.予測残差を復号化し、量子化された位置を計算し、位置を逆量子化する。
2.各頂点の逆量子化された浮動小数位置を用いて平均ポイントv
mean(又は中心)を以下のように計算する。
【0022】
【数4】
3.各頂点を−v
meanだけ平行移動する。
4.圧縮されたメッシュデータから固有ベクトルE0及びE1を読み、E2=E0*E1を計算する。
5.X,Y及びZ軸をE0,E1及びE2に揃えるため各頂点を回転する。
6.各頂点をv
meanだけ平行移動する。
【0023】
すなわち、コンポーネントは、それの中心が原点位置から座標系の中心に移されるように平行移動され、固有ベクトルE0,E1,E2により規定されるような回転マトリックスに従って回転され、それの原点位置に戻される。
【0024】
エンコーダとデコーダとの双方しか各コンポーネントに対して厳格な処理を実行しないため、これら2つのサイドにより計算される平均ポイントは同じ位置を有する。トライアングルの面積は、通常はそれの3つの頂点の浮動小数位置から計算される浮動小数である。一般に、トライアングルの各頂点のウェイトは、それが属するすべてのトライアングルのすべての頂点の位置から計算される。これらの位置は、コンポーネントの偏心と形状とを規定し、このため各頂点の重要性を規定しているためである。一実施例では、各トライアングルの面積は、それの3つすべての頂点のウェイトに加えられる。(コンポーネントの平均を計算するための)頂点のウェイトは、本実施例では、それのすべての隣接トライアングルの面積の和である。
【0025】
図2は、座席に配置されたPDA(Personal Digital Assistant)の一例となるオリジナルの3Dモデルである。このモデルは、3Dソフトウェアにより生成される。当該モデルは、合計で12822個の頂点と24696個のトライアングルとを有する13個の連結されたコンポーネントから構成される。
図3a)は同一のモデルを示し、
図3b)及びc)はモデルのフラットなフロント領域のエッジの詳細を示す。多数の頂点/トライアングルが、ラウンドしたコーナー領域を規定するのに必要とされる(
図3a)〜c)には図示せず)。
図3d)は、12ビットにより量子化された同一のモデルである。量子化されたモデルのフラットな表面では、特に高い頂点密度を有するエリア、すなわち、ラウンドしたコーナー領域では、有意な視覚的クオリティのロスがある。この差を明確に示すため、オリジナルのモデルと量子化されたモデルとの詳細がそれぞれ、
図3b)〜c)と
図3e)〜f)とにより示される。オリジナルモデルa)〜c)では、フラット領域のトライアングルは同一平面上にあり、これは、従来の量子化d)〜f)後のケースではない。しかしながら、本発明の符号化及び復号化は、
図3g)〜i)に示されるように、3Dモデルのクオリティを向上させる。
図3a)に示される復号化されたモデルと比較して、ここに提案されるジオメトリ圧縮技術は、同じ量子化解像度を利用しながら、復号化されたモデルのクオリティを有意に向上させる。
【0026】
本発明は、3Dエンジニアリングモデルなどの、特に何れかの座標軸に直交しない大きなスケールのフラット表面と非一様性の高い頂点分布とを有する3Dメッシュに対して、効率的なジオメトリ圧縮方法を提供する。大部分の3Dエンジニアリングモデルは、各コンポーネントが異なるオブジェクトスペースを有する多数の連結コンポーネントを有する。
【0027】
本発明の一実施例によるジオメトリエンコーダは、連結コンポーネントの大きなスケールの特徴(フラット表面など)が座標軸の1つに直交する自らのオブジェクト座標系において各連結コンポーネントを圧縮し、従来の量子化解像度により又はそれよりかなり低い量子化解像度においてより良好に確保可能である。符号化は、予測及び残差に基づくものとすることができる。大きなスケールの特徴は正規化されているため、予測位置の残差のエントロピーはまた減少し、ジオメトリ符号化の圧縮率の増加に役立つ。復号化されたモデルのクオリティと圧縮比との双方が、同時に向上可能である。
【0028】
一実施例では、エンコーダはまず、主成分解析(PCA)ベースであるシンプルかつ計算効率的な技術によって、現在の連結コンポーネントの偏心を記述する3Dスペースにおける正規直交基底を計算する。この基底は、対応する連結コンポーネントを正規化された(又はカノニカルな)方向メッシュにもたらすための純粋な回転マトリックスとして利用される。回転されたジオメトリデータはその後に量子化、予測及びエントロピー符号化される。正規直交基底はまた圧縮されたメッシュデータに記録され、これにより、デコーダは、各連結コンポーネントのオリジナルなジオメトリを復元し、コンポーネントジオメトリを復号化した後に一緒に組み合わせることが可能となる。
【0029】
図4は、本発明の一態様によるジオメトリエンコーダのブロック図を示す。ジオメトリエンコーダ50は、連結コンポーネントを認識するコンポーネント認識ブロック51、上述されるように、各連結コンポーネントのオブジェクトスペース(すなわち、3Dスペースにおける各正規直交基底)を計算するオブジェクトスペース計算ブロック52、方向正規化ブロック53、頂点位置を量子化する量子化手段54、及び量子化された頂点位置を予測し、残差を生成する差動符号化ブロック55を有する。オブジェクトスペース計算ブロック52は、オブジェクト座標系情報56、すなわち、計算されたオブジェクトスペースを規定するデータをエントロピーエンコーダ58に出力する。差動符号化ブロック55は、残差情報57をエントロピーエンコーダ58に出力する。
【0030】
エントロピーエンコーダ58は、エントロピー符号化された3Dモデルを表現し、連結コンポーネントを表す符号化された頂点データの少なくとも1つのグループを有する信号と、当該コンポーネントに関するオブジェクト座標系情報とを生成する。オブジェクト座標系情報は、コンポーネント座標系(CCS)とグローバル座標系(WCS)との間の変換を規定するのに利用可能である。
【0031】
図5は、エントロピー符号化された3Dモデルを表す上述された信号を復号化するのに適した本発明の一態様による対応するジオメトリデコーダのブロック図を示す。ジオメトリデコーダ60は、入力信号を復号化し、予測残差情報62、すなわち、実際の頂点及び連結データと、オブジェクト座標系情報63とを抽出するエントロピーデコーダ61を有する。ジオメトリデコーダは、量子化された頂点位置を復号化するデコーダ64、頂点位置を逆量子化する逆量子化手段65、各連結コンポーネントの向きを復元する方向復元ブロック66、及び連結コンポーネントを組み合わせ、連結コンポーネントから3Dモデルを組み立てる組み立てブロック67を有する。方向復元ブロック66は、変換マトリックス(回転マトリックスなど)を取得するため、オブジェクト座標系情報63を受信及び処理する。一実施例では、当該処理は、上述されるように、受信した2つの固有ベクトルE0,E1に直交する固有ベクトルE2を計算することを含む。
【0032】
図6は、一例となる符号化処理のフローチャートを示す。まず、コンポーネントが選択又は決定され(71)、これは非明示的に行われてもよい。その後、3Dスペースにおける正規直交基底が、当該コンポーネントに対して決定される(72)。オブジェクト座標系情報がオブジェクトの向きを正規化するのに利用されながら(74)、それはまた符号化される(73)。その後、頂点位置が量子化(75)及び符号化(76)される。最後に、符号化された量子化された頂点位置及び符号化されたオブジェクト座標系情報が、送信(77)、格納などされてもよい。
【0033】
本発明は、量子化された3Dメッシュモデルの視覚的アーチファクトを最小化するのに効果的である。特に、何れの座標軸にも直交せず、ジオメトリエンコーダ/デコーダのシンプルさ及び圧縮比を犠牲にすることなく、3Dエンジニアリングモデルなどの非一様性の高い頂点分布をもたらす大きなスケールのフラット表面を有する3Dメッシュに対して良好である。本発明は、特に大きなスケールのフラット表面と非一様性の高い頂点分布とを有するモデルのために構成される効率的なジオメトリ圧縮戦略を提供する。
【0034】
視覚的アーチファクトを除去するための他のアプローチは、量子化解像度を増大させることである。しかしながら、それはジオメトリエンコーダの効率の有意な減少をもたらす。従って、ここではそれは利用されない。非一様な量子化は、符号化中にメッシュを多数の部分に分割し、さらにより大きな計算作業を必要とし、エンコーダ/デコーダをより複雑にする復号化中にこれらの部分をマージする必要がある。ローカル座標系は、利用される連結圧縮方法に依存し、フラット表面は、何れかのローカル座標軸に直交することが保障できない。
【0035】
利用されるPCAベースの技術を用いて連結コンポーネントの向きを正規化することが一般に知られているかもしれないが、本発明は、共分散マトリックスの計算中に頂点にウェイトを割り当てるウェイティング方式を利用する。このタイプのウェイティング方式は、最近のソフトウェアアプリケーションによって生成される3Dモデルの劇的に変化するトライアングルサイズを考慮するとき特に妥当である。
【0036】
一実施例では、エンコーダにより提供されるビットストリームは、従来のビットストリームと同様であるが、ジオメトリレベルにおいて、すなわち、各連結コンポーネントの頂点データのグループのヘッダにおいてのみ修正される。新たなビットストリームは、
・現在の連結コンポーネントの向きが正規化される必要があるか示すための1ビット 例えば、“1”は方向正規化処理が利用されることを意味し、“0”は当該処理が利用されないことを意味する。
・前のビットが“1”に等しい場合、対応する連結コンポーネントのオブジェクト座標系の座標軸を示すための数ビット 各軸は正規化されているため、2つの浮動が1つの軸を記録するのに十分である。2つの軸は、座標系を記述するのに十分である。従って、4つの浮動小数点値、すなわち、16バイトが1つの連結コンポーネントのオブジェクト座標系に必要である。
を含むオブジェクト座標系を記録する。
【0037】
一例として、レンジエンコーダ(G.N.N.Martin.Range encoding:an algorithm for removing redundancy from digitized message.March 1979,Video&Data Recording Conference,Southampton,UK)は、算術コーダ又はハフマンコーダに類似したエントロピーコーダとして利用可能である。テーブル1において、コンポーネント方向正規化のある場合とない場合とのジオメトリエンコーダのパフォーマンスがリストされる。本発明において提案されるコンポーネント方向正規化によるジオメトリエンコーダを利用することによって、(1527−1419.6)/1527=7.2%のストレージを節約することができる。連結コンポーネントが方向メッシュになった後、予測残差がさらに大きく低減されるためである。従って、提案されるジオメトリ圧縮は、所与の量子化解像度における復号化されたモデルの視覚的クオリティを向上させるだけでなく、他の効果はまた圧縮比を増大させうる。
【0038】
【表1】
トライアングルの面積がウェイティングファクタとして利用されるが、他のタイプのウェイティングファクタが、当業者に明らかなように、上述した各頂点座標から構成されてもよく、これらはすべて本発明の趣旨及び範囲内であると想定される。
【0039】
一実施例では、1以上のコンポーネントを有する3Dメッシュモデルを符号化するジオメトリエンコーダは、
1以上のコンポーネントを有する3Dメッシュモデルを符号化するジオメトリエンコーダであって、前記1以上のコンポーネントのそれぞれについて3Dスペースにおける正規直交基底を決定する決定手段(52)であって、コンポーネントの頂点に基づく主成分解析が利用され、各頂点は1以上のトライアングルに属し、前記主成分解析について、前記コンポーネントの各頂点には前記頂点が属するトライアングルの面積から決定されるウェイトが割り当てられる、前記決定手段と、前記コンポーネントのオブジェクト座標系情報を符号化するエンコーダ(56)と、前記1以上のコンポーネントのそれぞれの向きをグローバル座標系(WCS)に対して正規化する正規化手段であって、前記1以上のコンポーネントのそれぞれについて、前記コンポーネントの決定された正規直交基底から取得される変換を実行する変換手段を有する、前記正規化手段(53)と、前記正規化された頂点位置を量子化する量子化手段(54)と、前記量子化された頂点位置を符号化するエンコーダ(55,57)とを有する。
【0040】
ジオメトリエンコーダの一実施例では、正規直交基底を決定する決定手段(52)は、各コンポーネントについてコンポーネント平均を計算する計算手段を有し、当該計算について、頂点のウェイトは、当該頂点が属するトライアングルの面積の和である。
【0041】
一実施例では、1以上のコンポーネントを有する3Dメッシュモデルを復号化するジオメトリデコーダは、量子化された頂点位置を復号化する復号化手段(64)と、前記復号化された頂点位置を逆量子化する逆量子化手段(65)と、前記1以上のコンポーネントのコンポーネントに属する逆量子化された頂点を決定する決定手段と、コンポーネント座標系(CCS)とグローバル座標系(WCS)との間の変換を規定する、前記コンポーネントに関するオブジェクト座標系情報を受信する受信手段(63)と、前記受信したオブジェクト座標系情報に基づき、前記グローバル座標系(WCS)に対して前記コンポーネントの向きを復元する復元手段(66)とを有する。
【0042】
一実施例では、デコーダはさらに、複数のコンポーネントから3Dメッシュモデルを組み立てる組み立て手段(67)を有し、各コンポーネントについて、個別のオブジェクト座標系情報が受信され(63)、各コンポーネントについて、向きが個別に復元される(66)。
【0043】
一実施例では、コンポーネントの向きを復元する復元手段は、コンポーネントの各頂点の逆量子化された浮動位置を用いてコンポーネントの平均ポイントを計算する計算手段と、コンポーネントを平行移動(シフトなど)する平行移動手段であって、平均ポイントが座標系の中心に平行移動(シフトなど)される、平行移動手段と、コンポーネントを回転する回転手段と、平均ポイントがそれの前の位置に平行移動される、回転されたコンポーネントを平行移動する平行移動手段(上記と同じであってもよい)とを有する。
【0044】
デコーダの一実施例では、受信手段は、コンポーネントについて3Dスペースの正規直交基底を決定するため、共分散マトリックスの2つの固有ベクトルE0,E1を抽出し、第3固有ベクトルE2を計算し、固有ベクトルをオブジェクト座標系情報として利用するステップを実行する。
【0045】
好適な実施例に適用されるような本発明の新規な基本的特徴が図示、開示及び指摘されたが、開示される符号化/復号化装置及び方法、開示される装置の形式及び詳細、並びにそれらの処理の各種省略、置換及び変更が、本発明の趣旨から逸脱することなく当業者に可能であることは理解されるであろう。同一の結果を達成するため実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を実行する要素のすべての組み合わせが本発明の範囲内であることが、明示的に意図される。開示される実施例の間の要素の置換がまた完全に意図及び想定される。
【0046】
本発明が純粋に例示的に開示されたが、開示された好適な効果が実現される限りにおいて、本発明の範囲から逸脱することなく詳細の改良が可能であることが理解されるであろう。明細書及び(必要に応じて)請求項と図面に開示される各特徴は、独立に又は何れか適切な組み合わせにより提供されてもよい。必要に応じて、各特徴は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現されてもよい。請求項に記載される参照番号は、単なる例示であって、請求項の範囲に対する限定的効果を有するものでない。