【発明の効果】
【0006】
入口通路をフィルタ装置の内部空間、特にフィルタ装置のフィルタ・エレメント収容室に接続する吸込通路を通して、空気をフィルタ装置の内部空間から入口通路内に吸い込むことができ、これにより入口通路を通る処理ガスの流入が安定化される。
【0007】
この場合、空気は、好適なことには吸込通路の長手方向に沿うように方向付けられて入口通路内に流入する。
【0008】
さらに、吸込通路を通して吸い込まれた空気によって、フィルタ装置の内部空間から、特にフィルタ装置の内部空間の境界面から補助材が連行されて、入口通路の境界面へ搬送され得る。こうして、入口通路の境界面は補助材で覆われ、これにより塗料スプレーしぶきによる汚染から保護される。
【0009】
このような補助材は、フィルタ装置の少なくとも一つのフィルタ・エレメントの表面に、及び塗料スプレーしぶきが添加された処理ガス流の流路の他の境界面にバリア層として沈積することにより、これらの面がスプレーしぶき粒子の付着によって粘着性が生じるのを阻止するために役立つ。さらに、この補助材は、フィルタ・エレメント上の濾滓が、流れを阻止しない通過可能性のままでいることに役立つ。
【0010】
フィルタ装置のフィルタ・エレメントを定期的に清浄化することによって、補助材と塗料スプレーしぶきとから成る混合物はフィルタ・エレメントから、フィルタ・エレメントの下方に配置された補助材収容容器内へ達し、この補助材収容容器からこの混合物を例えば吸い取ることによって、補助材として新たに使用するために塗装設備に供給することができる。
【0011】
さらに、補助材収容容器内に位置する、補助材と塗料スプレーしぶきとから成る混合物を、圧縮空気ランスからの圧縮空気パルスによって渦状に巻き上げ、これにより補助材収容容器からフィルタ・エレメントへ上昇させてその場所に沈積させることができる。
【0012】
流動可能な粒子状の補助材は、「プリコート」材料又はフィルタ補助材とも呼ばれる。
【0013】
吸込通路が二つの吸込通路境界壁によって画成されて、吸込通路境界壁の間にギャップが形成されていると好適である。
【0014】
このギャップの内法幅、すなわち吸込通路境界壁に対して横方向の延長は、最小5mmであると好適である。
【0015】
さらに、このギャップの内法幅は、最大で約50mmであると好適である。
【0016】
ギャップの広さ、すなわちギャップを通る空気の平均流動方向に対して垂直で且つ吸込通路境界壁に対して平行なその広がりは、このような方向における入口通路の広がりとほぼ同じであると好適である。
【0017】
入口通路と吸込通路のギャップとは、ほぼフィルタ装置の広さ全体にわたって延びていると好適である。
【0018】
吸込通路を通る空気の流れ方向に沿って、吸込通路は最小で約20mm、特に最小で約30mmの長さにわたって延びていると好適である。これにより、良好に方向付けられた状態で空気が吸込通路から入口通路内に流入する。
【0019】
本発明の好ましい構成では、二つの吸込通路境界壁は、互いの相対的な傾斜角度が10°未満であるように方向付けられている。
【0020】
二つの吸込通路境界壁は、互いにほぼ平行に延びていると特に好都合である。
【0021】
さらに入口通路内の高い流速を達成するために、吸込通路が前側吸込通路境界壁によって境界を定められ、入口通路を下方で区切る下側入口通路境界面に対する前側吸込通路境界壁の傾斜角度が10°未満であると有利である。
【0022】
前側吸込通路境界壁と下側入口通路境界面とが互いにほぼ平行に延びていると特に好都合である。
【0023】
吸込通路は上方から入口通路内に開口していると好適である。
【0024】
本発明の好適な構成において、吸込通路が、通路境界要素の一区域を形成する吸込通路境界壁によって境界を定められ、通路境界要素は、吸込通路境界壁の他に、入口通路の境界を形成するさらなる区域を有する。
【0025】
通路境界要素のこのさらなる区域は入口通路の上側境界を好適に形成する。
【0026】
さらに、入口通路の境界を形成する通路境界要素のこのさらなる区域は、通路境界要素の、吸込通路境界壁を形成する区域よりも小さい角度で、水平線に対して傾斜させられてよい。これにより、吸込通路が開口した後ろの入口通路の流通可能な断面は増大し、これにより、流速はこのような入口通路領域内で低減される。このことは、フィルタ装置の内部空間から吸込通路を通って搬送された補助材が通路境界要素及び/又は下側入口通路境界面に堆積するのを容易にする。
【0027】
前側吸込通路境界壁及び/又は下側入口通路境界面は、水平線に対して最小で約50°、好適には最小で約55°、例えば約60°の角度を成して傾斜させられていると好適である。水平線に対して入口通路の境界面がこのように大きく傾斜していることにより、入口通路は狭くなり、入口通路内の処理ガスの流速は増大して、より多くの補助材が補助材収容容器からフィルタ・エレメントへ搬送される。これにより、フィルタ・エレメントにおける塗料スプレーしぶきの分離作用がより強力になる。
【0028】
吸込通路を区切る前側吸込通路境界壁、及び/又は吸込通路を区切る後側吸込通路境界壁は、例えば連続した薄板として、空気貫流開口なしで不透過性に形成されていると好適である。
【0029】
本発明によるフィルタ装置は、補助材を収容するための補助材収容容器を好適に有しており、前記補助材は、処理ガス流が少なくとも一つのフィルタ・エレメントを通過する前に処理ガス流に添加され、補助材収容容器は、鉛直線に対して及び水平線に対して傾斜させられて入口通路の下側境界を形成する側壁を有する。
【0030】
入口通路を下方で区切る補助材収容容器の側壁は、水平線に対して、最小で約50°、特に最小で約55°、例えば約60°の傾斜を好適に有する。
【0031】
塗装設備の塗布領域からフィルタ装置の領域内に達した液体が、フィルタ装置の内部空間内に、特に補助材収容容器内に達するようにするために、フィルタ装置のハウジングが前壁区域を有して、前壁区域の下縁部がフィルタ装置の外側の空間に突出するように、前壁区域が鉛直線に対して傾斜させられていると有利である。
【0032】
特にこの場合、フィルタ装置のハウジングに達した液体が、前壁区域の下縁部を経由して、その下方に配置されたトラフ内に滴下するようになっていてよい。
【0033】
鉛直線に対して傾斜させられた前壁区域を有するハウジングという特徴は、吸込通路の存在とは無関係に見ても、請求項1の上位概念の特徴を有するフィルタ装置において有利である。
【0034】
従って本明細書は、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するためのフィルタ装置であって、
フィルタ装置が、少なくとも一つのフィルタ・エレメントが配置されている、フィルタ装置の内部空間を画成するハウジングと、処理ガス流がその中を通ってフィルタ装置の内部空間内に流入する少なくとも一つの入口通路とを有するフィルタ装置において、
ハウジングが前壁区域を有しており、前壁区域は、前壁区域の下縁部がフィルタ装置の外側の空間に突出するように、鉛直線に対して傾斜させられている、フィルタ装置にも関する。
【0035】
ハウジングが液切りエッジを備えており、液切りエッジで、ハウジングの前壁区域に沿って流れる液体がハウジングから滴下すると、特に好都合である。
【0036】
このような液切りエッジは特に、ハウジングの前壁からフィルタ装置の外側の空間に張り出す例えば液切り薄板のような液切り要素に配置されてよい。
【0037】
本発明のフィルタ装置は、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための分離装置であって、分離装置が少なくとも一つの本発明によるフィルタ装置と、処理ガス流が塗装設備の塗布領域からフィルタ装置の入口通路へ流れる際に通る流動室とを有する分離装置での使用に特に適している。
【0038】
このような分離装置の保守を容易にするために、分離装置が保守係員によって通行可能な歩行路を有しており、歩行路は踏み面を有すると好適である。
【0039】
このような歩行路はさらに、フィルタ装置の入口通路もしくは複数のフィルタ装置の入口通路に処理ガス流を導くために、流動室内部の処理ガス流を偏向させることに役立つこともできる。
【0040】
作業安全性を高めるために、及び保守係員が足を踏み外して隣接するフィルタ装置内に入るのを阻止するために、歩行路がさらに、踏み面に対して隆起させられた少なくとも一つの隆起縁部を有すると有利である。
【0041】
隆起縁部は一方では踏み面と他方ではフィルタ装置との間に配置されて、係員が滑り、躓き、又は他の形で足を踏み外して隣接するフィルタ装置の漏斗状入口内に滑落し、その時に重傷を負うのを防止する。
【0042】
踏み面に対して隆起させられた隆起縁部を有する歩行路という特徴は、少なくとも一つのフィルタ装置における吸込通路の存在とは無関係に見ても有利である。
【0043】
従って本明細書は、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための分離装置であって、分離装置が少なくとも一つのフィルタ装置と、流動室とを有しており、フィルタ装置は、少なくとも一つのフィルタ・エレメントが配置されているフィルタ装置の内部空間を画成するハウジングと、処理ガス流がその中を通ってフィルタ装置の内部空間内に流入する少なくとも一つの入口通路とを有しており、前記流動室を通って処理ガス流が塗装設備の塗布領域からフィルタ装置の入口通路へ流れるようになっており、
該分離装置は歩行路を有しており、歩行路は踏み面と、踏み面に対して隆起させられた少なくとも一つの隆起縁部とを有する、分離装置にも関する。
【0044】
フィルタ装置のハウジングが液切りエッジを有しており、液切りエッジは、踏み面の鉛直上方、又は踏み面と隆起縁部との間に配置された、歩行路の縁部内面の鉛直上方に配置されていると特に有利である。これにより、塗装設備の塗布領域からフィルタ装置のハウジングに達することのある液体が、液切りエッジを介して、歩行路の踏み面又は縁部内面に達することになり、歩行路の隆起縁部によって、フィルタ装置内に流出するのを阻止することができる。
【0045】
歩行路が両側にそれぞれ一つの隆起縁部を有することにより、互いに向き合うこれらの隆起縁部によって画成された歩行路の領域がトラフを形成して、このトラフが、上方から歩行路に達する液体を捕集して保持すると特に好都合である。
【0046】
歩行路の踏み面は、ほぼ平らであると好適であり、また、ほぼ水平方向に方向付けられていると好適である。
【0047】
歩行路の隆起縁部が、入口通路を通って少なくとも一つのフィルタ装置内へ流れる処理ガスの流れのための剥離エッジを形成していると好適である。入口通路の上端部に剥離エッジを形成することにより、下側入口通路境界面がその全長にわたって補助材で覆われる。この面はこれにより塗料スプレーしぶきによる汚染から保護され、この面に他の保護材料を被覆することは必要でない。
【0048】
さらに、剥離エッジにおける流入空気によって、フィルタ装置の補助材収容容器からの補助材が流動室内に達してその場所から塗装設備の塗布領域内に達するのが阻止される。
【0049】
処理ガスが高い流速で入口通路を通って安定的に流れるのを可能にするために、歩行路の隆起縁部と、隣接するフィルタ装置の補助材収容容器との間に配置された歩行路の縁部外面が、フィルタ装置の入口通路を上方で区切るハウジングの前壁区域に対して傾斜する角度が10°未満であるとさらに好都合である。
【0050】
歩行路の縁部外面と、入口通路を上方で区切るハウジングの前壁区域とが、互いにほぼ平行に方向付けられていると、特に好都合である。
【0051】
歩行路の縁部外面及び/又は入口通路を上方で区切るハウジングの前壁区域は、水平線に対して最小で約50°、特に最小で約55°、例えば約60°の角度で傾斜させられていると好適である。
【0052】
さらに、補助材収容容器内に方向付けられた入口通路を通る安定な処理ガス流を生じさせるために、歩行路の隆起縁部とフィルタ装置の補助材収容容器との間に配置された歩行路の縁部外面が、入口通路を下方で区切る補助材収容容器の側壁に対して傾斜する角度が10°未満であると有利である。
【0053】
歩行路の縁部外面と、入口通路を下方で区切る補助材収容容器の側壁とが、互いにほぼ平行に方向付けられていると、特に好都合である。
【0054】
歩行路の縁部外面及び/又は入口通路を下方で区切る補助材収容容器の側壁は、水平線に対して最小で約50°、特に最小で約55°の角度を成して、例えば約60°の角度を成して傾斜させられていると好適である。
【0055】
本発明はさらに、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離する方法であって:
処理ガス流を、入口通路を通してフィルタ装置の内部空間内に導入する段階と、
フィルタ装置の内部空間内に配置された少なくとも一つのフィルタ・エレメントによって、処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離する段階と、を有する塗料スプレーしぶきを分離する方法に関する。
【0056】
本発明の根底を成す別の課題は、入口通路をとおる処理ガスの安定した流入が高流速においても得られるような方法を提供することである。
【0057】
このような課題は、本発明による請求項15の上位概念の特徴、即ち入口通路が吸込通路を介してフィルタ装置の内部空間と接続され、吸込通路は入口通路の内部空間側の端部の上流で入口通路内に開口するという特徴を有する方法によって解決される。
【0058】
この場合、入口通路内の処理ガス流の最大流速は、好適には最小で約7m/s、特に最小で約10m/sである。
【0059】
スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための本発明による方法の別の好適な構成は、本発明によるフィルタ装置と関連して、もしくはスプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための本発明による分離装置と関連して前述した通りである。
【0060】
本発明によるフィルタ装置、及びスプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための本発明による分離装置は、スプレーしぶき粒子を含有する処理ガス流から塗料スプレーしぶきを分離するための本発明による方法での使用に特に適している。
【0061】
本発明によるフィルタ装置、本発明による分離装置、及び本発明による方法は、塗料スプレーしぶき、すなわち、スプレーしぶき粒子の形態で塗装設備の塗布領域を貫通する空気流によって取り込まれ連行される、被塗装ワークピースに付着しない塗料を、このような空気流から再び分離し、そして清浄化された空気流を再び塗布領域に供給するか、或いは設備の周囲内に放出することを可能にする。
【0062】
塗料スプレーしぶきはここでは、特に流体塗料スプレーしぶきであってよい。
【0063】
「流体塗料」という概念は、本明細書では「粉末塗料」という概念とは異なり、液状からペースト状(例えばPVC塗料の場合)までの、流動可能な稠度を有する塗料を意味する。「流体塗料」という概念は特に「液体塗料」及び「湿潤塗料」の概念を含む。
【0064】
一実施例を以下に説明して図示することによって、本発明のさらなる特徴及び利点が明らかになる。