(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662477
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンおよびメインエンジンロータの組み立ておよび分解
(51)【国際特許分類】
F01D 5/02 20060101AFI20150108BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20150108BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
F01D5/02
F01D25/00 X
F02C7/00 D
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-547297(P2012-547297)
(86)(22)【出願日】2010年12月30日
(65)【公表番号】特表2013-516566(P2013-516566A)
(43)【公表日】2013年5月13日
(86)【国際出願番号】US2010062493
(87)【国際公開番号】WO2011136833
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2013年12月9日
(31)【優先権主張番号】12/889,005
(32)【優先日】2010年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/291,656
(32)【優先日】2009年12月31日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512002747
【氏名又は名称】ロールス−ロイス・ノース・アメリカン・テクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】レス,ロバート・エイ,ジュニア
【審査官】
寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−098902(JP,A)
【文献】
米国特許第03402750(US,A)
【文献】
米国特許第07540713(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0256412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/00−10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のロータ部品および第2のロータ部品を有するメインエンジンロータであって、前記第1のロータ部品が第1の面および第1のチャネルを含み、前記第2のロータ部品が第2の面および第2のチャネルを含む、メインエンジンロータと;
前記第1の面と前記第2の面との間に配置される圧縮ワッシャであって、前記第1の面に、前記第2の面に対する機械的な荷重を加えるように動作可能である、圧縮ワッシャと;
保持リングと
を有し、
前記保持リングが前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの両方の中で位置決めされるときに前記圧縮ワッシャが前記第1の面と前記第2の面との間で圧縮状態となるように、前記第1の面、前記第1のチャネル、前記第2の面および前記第2のチャネルが位置決めされ、
前記保持リングが、前記圧縮ワッシャの圧縮によって発生する機械的荷重に反応する、ガスタービンエンジン。
【請求項2】
前記メインエンジンロータがタービンロータおよび圧縮機ロータを含み、前記第1のロータ部品が前記タービンロータおよび前記圧縮機ロータのうちの一方である、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
前記メインエンジンロータが、前記圧縮機ロータを駆動させるために前記タービンロータから動力を伝達するように動作可能であるシャフトを含み、前記第2のロータ部品が前記シャフトである、請求項2に記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
前記圧縮機ロータが圧縮機の複数の段を含み、前記第1のロータ部品が、圧縮機の第1の段であり、前記第2のロータ部品が、圧縮機の第2の段である、請求項2に記載のガスタービンエンジン。
【請求項5】
前記第1のロータ部品および前記第2のロータ部品のうちの少なくとも一方が、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルのうちの少なくとも一方の中に延在する開口部を含み、
前記開口部が、前記保持リングを変位させるための工具が中に入るのを許容するように形成されている、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項6】
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルのうちの一方の中に配置されるばねをさらに有し、前記ばねが前記保持リングにばね荷重を加えるように位置決めされる、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項7】
ガスタービンエンジンのメインエンジンロータを組み立ておよび分解するための方法であって、前記方法が:
前記メインエンジンロータの第1のロータ部品の第1の面と前記メインエンジンロータの第2のロータ部品の第2の面との間に圧縮ワッシャを位置決めするステップと;
前記第1のロータ部品の第1の溝および前記第2のロータ部品の第2の溝のうちの一方の中に保持リングを位置決めするステップと;
前記第1のロータ部品を前記第2のロータ部品に組み付けるステップと;
前記圧縮ワッシャを前記第1の面と前記第2の面との間で圧縮状態におくように締め付け荷重を加えるステップと;
前記保持リングが前記第1の溝および前記第2の溝の両方の中に位置決めされるように、前記保持リングを変位させるステップと;
前記締め付け荷重を解放するステップとを含み、前記保持リングが、前記圧縮ワッシャの圧縮に反応し、前記第1のロータ部品を前記第2のロータ部品に組み付けた状態で保持する、方法。
【請求項8】
前記第1の溝および前記第2の溝の両方の中にある状態から前記第1の溝および前記第2の溝の一方の中にある状態へと前記保持リングを再位置決めし、前記第1のロータ部品を前記第2のロータ部品から外すことにより、前記第1のロータ部品を前記第2のロータ部品から分解するステップをさらに含み、
前記保持リングの再位置決めが、前記第1の溝および前記第2の溝のうちの一方における開口部に工具を挿入するステップと、前記保持リングを変位させるために前記工具を使用して前記保持リングに力を加えるステップとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の溝および前記第2の溝の一方の中にばねを位置決めするステップをさらに含み、前記ばねが、前記保持リングにばね荷重を加えるように位置決めされる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ガスタービンエンジンの構成要素を組み立てるための装置であって、
第1の面および第2の面を有する第1の構成要素と;
第3の面および第4の面を有する第2の構成要素であって、前記第3の面が前記第1の構成要素の前記第1の面に対向し、前記第4の面が前記第1の構成要素の前記第2の面に対向している、前記第2の構成要素と;
前記第1の面と前記第3の面との間に配置される圧縮ワッシャであって、前記第1の面に、前記第3の面に対する機械的な荷重を加えるように動作可能である、圧縮ワッシャと;
保持リングと
を有し、
前記保持リングが前記第2の面と前記第4の面との間で位置決めされるときに前記圧縮ワッシャを前記第1の面と前記第3の面との間で圧縮状態にするように、前記第1の面、
前記第2の面、前記第3の面および前記第4の面が位置決めされ、
前記保持リングが、前記圧縮ワッシャの圧縮によって発生する機械的荷重に反応する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年12月31日に出願された米国仮特許出願第61/291,656号の優先権を主張するものであり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明はガスタービンエンジンに関し、より詳細には、ガスタービンエンジンロータと、ガスタービンエンジンロータの組み立ておよび分解とに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガスタービンエンジンロータは依然として関心をもたれる分野である。一部の既存のシステムは、特定の用途に関して種々の短所、欠点および不利益を有する。したがって、この分野の技術においてさらなる助力が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は独自のガスタービンエンジンである。別の実施形態は独自のガスタービンエンジン用メインエンジンロータである。さらに別の実施形態は、ガスタービンエンジン用メインエンジンロータを組み立てるための独自の方法である。その他の実施形態には、ガスタービンエンジンおよびガスタービンエンジンロータ組立体のための装置、システム、デバイス、ハードウェア、方法および組み合わせが含まれる。本記述、および、本明細書と共に提供される図により、本出願のさらなる実施形態、形態、特徴、態様、利益および利点が明らかとなる。
【0005】
本明細書の記述は、複数の図を通して同様の参照符号が同様の部品を示している添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態によるガスタービンエンジンの非限定的な例を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、ガスタービンエンジンロータの非限定的な例およびロータ部品を一体に締め付けるためのシステムの非限定の例の態様を示す概略図である。
【
図3】
図2のシステムの一部の特徴を示す拡大図である。
【
図4】本発明の実施形態で採用され得る追加の要素の非限定的な例を示す概略図である。
【
図5】部分的な組立状態の
図2のガスタービンエンジンロータおよびシステムの態様を示す概略図である。
【
図6】
図6A、
図6Bは、ガスタービンエンジンロータの非限定的な例およびロータ部品を一体に締め付けるためのシステムの非限定的な例の態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の原理を理解するのを促進するために、次に、図面に示される実施形態を参照し、また、これらの実施形態を説明するために具体的な用語を使用する。しかし、本発明の特定の実施形態を図示および説明することにより本発明の範囲が限定されないことが意図されることを理解されたい。また、図示および/または説明される実施形態(複数可)のいかなる変更形態および/または修正形態も本発明の範囲内にあるものと考えられる。さらに、本発明が関係する当業者が通常思い付くであろう、本明細書に図示および/または説明される本発明の原理の別のいかなる用途も本発明の範囲内にあるものと考えられる。
【0008】
ここで、図面、特に
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるガスタービンエンジン10の非限定的な例が概略的に描かれている。一形態では、ガスタービンエンジン10は軸流機械であり、例えば航空機の動力装置(air−vehicle power plant)である。別の実施形態では、ガスタービンエンジン10は、半径流機械、または、軸流−半径流の組み合わせの機械であってよい。本発明の実施形態には、軸流圧縮機、遠心圧縮機および/または軸流遠心圧縮機、ならびに/あるいは、タービンを有する、例えばターボジェットエンジン、ターボファンエンジン、ターボプロップエンジンおよびターボシャフトエンジンを含む、種々のガスタービンエンジン構成が含まれる。
【0009】
一形態では、ガスタービンエンジン10は、圧縮機ロータ14を有する圧縮機12と、ディフューザ16と、燃焼システム18と、タービンロータ22を有するタービン20と、圧縮機ロータ14をタービンロータ22に結合するシャフト24とを含む。燃焼システム18は圧縮機12およびタービン20に流体連通される。タービンロータ22は、シャフト24を介して圧縮機ロータ14に駆動可能に結合される。圧縮機ロータ14、タービンロータ22およびシャフト24は、エンジン中心線28を中心に回転するメインエンジンロータ26を形成する。1つのスプールのみが描かれているが、本発明の実施形態には一軸エンジンおよび多軸エンジンの両方が含まれることを理解されたい。ブレードおよびベーンの数、ならびに、圧縮機12およびタービン20のブレードおよびベーンの段の数は、例えば、ガスタービンエンジン10の特定の設置法の効率の要求条件および動力出力の要求条件などの、用途ごとに変化してよい。種々の実施形態において、ガスタービンエンジン10は、1つまたは複数のファン、追加の圧縮機および/または追加のタービンを含むことができる。
【0010】
ガスタービンエンジン10の動作中、空気が圧縮機12の入口のところで受け入れられ、圧縮される。空気は、圧縮された後、ディフューザ16に供給され、ディフューザ16が圧縮機12から排出される圧縮空気の速度を低下させる。ディフューザ16から出る圧縮空気が燃焼システム18内で燃料に混合されて燃焼される。燃焼システム18から出る高温ガスがタービン20内に誘導される。タービン20が、とりわけ、シャフト24を介して圧縮機12を駆動させるための機械的なシャフト動力を発生させるために、高温ガスからエネルギーを抽出する。一形態では、タービン20から出る高温ガスがノズル(図示せず)内に誘導され、このノズルがガスタービンエンジン10のためのスラスト出力を提供する。別の実施形態では、例えば一軸ガスタービンエンジンまたは多軸ガスタービンエンジンにおいて、圧縮機12および/またはタービン20の上流および/または下流にある1つまたは複数の追加のロータの中に、追加の圧縮機の段および/またはタービンの段が採用され得る。
【0011】
次に
図2を参照すると、本発明の一実施形態に従って、メインエンジンロータ26の構成要素を一体に締め付けるためのシステム30の非限定的な例が概略的に描かれている。この例では、タービンロータ22はスタブ(stub)シャフト32を含む。別の実施形態では、スタブシャフト32は別個に形成されてタービンロータ22に装着され得る。システム30はシャフト24およびスタブシャフト32を締め付けるように動作可能である。一形態では、スタブシャフト32はタービンロータ22と一体である。システム30はタービンロータ22およびシャフト24を結合した構成で保持する。スタブシャフト32とシャフト24との間の溝付境界部34がタービンロータ22とシャフト24との間でトルクを伝達する。
【0012】
システム30は、エンジン10の動作中にタービンロータ22とシャフト24との間で予荷重が維持されるように位置決めされる圧縮ワッシャ36および保持リング38を含む。この予荷重は、タービンロータ22およびシャフト24の組立時に圧縮状態で配置される圧縮ワッシャ36によって維持される。本文脈で「圧縮」という用語を使用することは、ばねが圧縮されているという意味で圧縮ワッシャ36が圧縮されていることを示しており、圧縮ワッシャ36内の応力場を必ずしも反映しない。一形態では、圧縮ワッシャ36は、例えば皿ばね、皿ワッシャまたはディスクばねとしても知られる、円錐形の圧縮ワッシャである。圧縮ワッシャ36の形状が円錐形に限定されず、種々の実施形態において任意適当な形状が採用され得ることを理解されたい。一形態では、保持リング38は分割された保持リングである。別の実施形態では、別の種類の保持リングが採用されてよく、例えばスパイラル保持リングが採用されてよい。
【0013】
次に
図3を参照すると、システム30の拡大図が描かれており、タービンロータ22およびシャフト24が組み立てられた状態にある。システム30により一体に締め付けられているロータ26の各構成要素は1つのフェース(face)(換言すれば、面)を含み、このフェースを介して、圧縮ワッシャ36への荷重/圧縮ワッシャ36からの荷重がその構成要素に伝達される。描かれる例では、シャフト24はフェース40を含み、タービンロータ22のスタブシャフト32はフェース40に対向するフェース42を含み、これらを介して、圧縮ワッシャ36への荷重および圧縮ワッシャ36への荷重が個別のシャフト24およびタービンロータ22に伝達される。圧縮ワッシャ36は、フェース42に対する機械的荷重をフェース40に加える。一部の実施形態では、スペーサまたは別の構成要素などの介在部品が圧縮ワッシャ36とフェース40およびフェース42の一方または両方との間に配置されてよい。
【0014】
システム30によって一体に締め付けられるロータ26の各構成要素はまた、保持リング38を介して圧縮ワッシャ36の荷重に反応する(react)(換言すれば、反作用する)ための別のフェースを含む。一形態では、この別のフェースは、保持リング38を中で受ける各構成要素の開口部の一部分である。描かれる例では、シャフト24は段付き(shouldered)チャネル44を含み、スタブシャフト32は段付きチャネル46を含む。チャネル44および46は保持リング38を受けるように構成される。一形態では、チャネル44および46は各構成要素の個別の内径または外径の周りを円周方向に延在する。一例では、これらのチャネルは円周方向に連続する。別の実施形態では、不連続のチャネルすなわち中断したチャネルが採用されてもよい。一形態では、チャネル44は例えば円周状スロットといったような溝であり、チャネル46も溝である。溝44はフェース48を含み、溝46はフェース48に対向するフェース50を含む。フェース48および50は保持リング38を介して圧縮ワッシャ36の荷重に反応し、それにより保持リング38に剪断方向の荷重が加えられる。フェース40および42ならびに溝44および46、またはより詳細には個別の溝44および46のフェース48および50は、保持リング38が溝44および溝46の両方の中で位置決めされるときに、またはより詳細には保持リング38がフェース48および50の間で位置決めされるときに、圧縮ワッシャ36がフェース40とフェース42との間で圧縮状態になるように位置決めされる。別の実施形態では、チャネルが保持リング38を介して圧縮ワッシャ36の荷重に反応するためにフェース48および50などの対向するフェースを含む限り、溝に加えてまたは溝の代わりに別のタイプのチャネルが採用されてもよい。
【0015】
一形態では、組立時、保持リング38は溝44の内側に変位され、組立後、保持リング38は径方向外側に変位されて溝46内に伸長(換言すれば、拡張)し、それによりシャフト24およびタービンロータ22が軸方向において一体に係止される。フェース40および42ならびに圧縮ワッシャ36は、保持リング38が伸長状態にあり、フェース48および50の間で溝44および46の両方を占有するときに、円錐形の圧縮ワッシャ36が圧縮状態にあるように位置決めされる。圧縮された圧縮ワッシャ36からの荷重はシャフト24およびタービンロータ22を軸方向において離れるように駆動させる傾向にあるが、これは保持リング38によって妨害される。一形態では、圧縮ワッシャ36によって加えられる力は、エンジン10のすべての動作状態において、噛み合う構成要素に予荷重を提供するように選択される。この力は、主として、圧縮ワッシャ36のばね特性、圧縮ワッシャ36および保持リング38の軸方向の寸法、ならびに、フェース40、42、48および50の位置に基づく。別の実施形態では、圧縮ワッシャ36によって加えられる力は、エンジン10の一部の動作条件のみにおいて予荷重を維持するように選択されてもよい。
【0016】
次に
図4を参照すると、システム30の種々の実施形態に含まれ得るいくつかの追加の特徴の非限定的な例が描かれている。追加の特徴には、例えば、保持リング38に隣接して配置されるばね52が含まれてよい。ばね52は、保持リング38が溝44から溝46内まで伸長するのを補助することを目的として保持リング38に荷重を加えるように動作可能である。別の実施形態では、ばね52は、保持リングが溝46から溝44内に落ち込む(collapse)のを補助するように動作可能であってよい。一形態では、ばね52は円周状のウェーブワッシャである。別の実施形態では、別のタイプのばねが採用されてもよい。
【0017】
また、追加の特徴には、ロータ26の構成要素の組み立ておよび/または分解を促進するための、ロータ26の一方または両方の構成要素内にある1つまたは複数の開口部が含まれてよい。
図4の実施形態では、タービンロータ22のスタブシャフト32は孔54の形態の複数の開口部を含む。孔54は、1つまたは複数の工具ピンなどの工具56を受け入れるように構成される。工具56は保持リング38を圧縮するのに使用され得(ばね52を採用する実施形態の場合にはばね52も)、それにより、タービンロータ22がシャフト24から取り外され得るようになる。別の実施形態では、シャフト24は、工具56などの工具を使用して保持リング38が伸長するのを補助するために孔54などの開口部を含んでいてよい。種々の実施形態では、ロータ26の構成要素のいずれかまたは両方が、ロータ26の組み立ておよび/または分解を補助することを目的として保持リング38が圧縮および/または伸長するのを補助するために、孔54などの開口部を含んでいてよい。
【0018】
タービンロータ22およびシャフト24などのロータ部品を組み立てることおよび分解することは2つ以上の手法で達成され得る。一形態では、組み立てには、シャフト24のフェース40とタービンロータ22のスタブシャフト32のフェース42との間で圧縮ワッシャ36を位置決めすることと、溝44内で保持リング38を位置決めすることと、タービンロータ22のスタブシャフト32をシャフト24上に組み付けることと、シャフト24のフェース40とタービンロータ22のスタブシャフト32のフェース42との間で圧縮ワッシャ36を圧縮状態にするために締め付け荷重を加えることと、保持リング38が両方の溝44および46内に配置されるように保持リング38を変位させることとが含まれてよい。保持リング38を変位させることには、圧縮状態からの自己変位および/または強制変位が含まれてよい。本明細書で説明したステップに追加してまたはそれらの代わりに別の組み立てステップも同様に採用され得る。
【0019】
タービンロータ22をシャフト24から分解することは、保持リング38を、溝44および溝46の両方の中にある状態から溝44および溝46の一方のみの中にある状態へと再位置決めし、タービンロータ22をシャフト24から離れるように摺動させて外すことにより、実施され得る。図示される実施形態では、保持リング38は、ロータ36を分解するために溝46から溝44内へと変位される。別の実施形態では、保持リング38は、ロータ36を分解するために溝44から溝46内へと変位されてもよい。いずれの場合も、工具56などの工具が、孔54などの開口部に挿入されてよく、ロータ36を分解するために保持リング38を変位させるように保持リング38に力を加えるのに使用され得る。
【0020】
次に
図5を参照すると、タービンロータ22およびシャフト24を組み立てるための従来の方法が説明されている。一形態では、組み立ては、最初に保持リング38をシャフト24内の溝44内に設置することによって達成される。次に、保持リング38が圧縮され、圧縮ワッシャ36が保持リング38の上に設置される。これにより保持リング38が溝44内へと変位され、それにより、スタブシャフト32の前方縁部が保持リング38上を通過することが可能となる。一部の実施形態では、スタブシャフト32はパイロット径を拡大させるために加熱され、それにより、噛み合う表面において一切干渉しなくなる。同様に、一部の実施形態では、シャフト24は冷却される。次いで、スタブシャフト32がシャフト24上を摺動されて駆動スプライン34に係合される。タービンロータ22がさらに係合されると、スタブシャフト32の前方縁部が圧縮ワッシャ36を保持リング38から離れるように変位させる。スタブシャフト32の内側縁部上の面取り部58により、スタブシャフト32が保持リング38上を滑らかに通過することが可能となる。次いで、タービンロータ22とシャフト24との間に軸方向の締め付け荷重が加えられ、ロータが、スタブシャフト32のシャフト内の溝46が保持リング38に位置合わせされるまで、圧縮ワッシャ36を変位させる。このようにして構成要素が位置合わせされると、保持リング38がスタブシャフト32の溝46内へと外側に伸長する。この状態で、シャフト24およびタービンロータ22の組み立てが完了する。ばね52を採用する実施形態では、ばね52が、保持リング38が溝46内へと伸長するのを補助する。一部の実施形態では、噛み合う部品を接合するのに特別の工具類は必要ない。
【0021】
分解は、最初に、保持リング38から予荷重が取り除かれるように、噛み合う構成要素に軸方向の締め付け荷重を加えることによって達成される。次いで、保持リング38を溝46から出してさらに溝44内に入れるように再位置決めするために、孔54を介して工具56が使用される。工具ピンを用いて保持リング38を内側に変位させることにより、スタブシャフト32をシャフト24から外すことが可能となる。別の実施形態では、ロータ26を分解するのに別のタイプの工具が採用されてもよい。
【0022】
図2〜5の図では、シャフトをロータに組み付けることに関連して本発明の態様が図示および説明される。本発明の実施形態は、タービンロータまたは圧縮機ロータのロータディスクおよび/またはスペーサを一体に締め付けるなどの、別のロータ組立体構成にも同様に適用可能である。
【0023】
例えば、次に
図6Aおよび6Bを参照すると、本発明の一実施形態による4段の圧縮機ロータ60の非限定的な例が描かれている。ロータ60は4つのディスク62を含み、その内の3つが一体型スペーサ64を含む。別の実施形態では、スペーサ64は、本明細書に説明されるような従来の任意の手法を使用して別個に形成されてディスク62に取り付けられてもよい。
図6Aおよび6Bの実施形態では、圧縮機ロータ60の構成要素を一体に締め付けるためのシステム70が圧縮ワッシャ72および保持リング74を含む。
【0024】
図2〜5で説明される実施形態と同様に、圧縮ワッシャ72は隣接して噛み合う構成要素の対向するフェース76および78の間に配置され、保持リング74は対向するフェース84および86を備える対向するチャネル80および82の中に配置される。
図2〜5の実施形態と同様に、圧縮ワッシャ72および保持リング74は、エンジンの動作中に隣接する各ディスク/スペーサの間で予荷重が維持されるように、位置決めされる。この予荷重は、ロータ26に関連して上に記載した手法と同様の手法で、ロータ60の組立時に圧縮状態で配置される圧縮ワッシャ72によって発生する。フェース76および78ならびにチャネル80および82、またはより詳細にはフェース84および86は、保持リング74がチャネル80および82の両方の中で位置決めされるときに、またはより詳細には保持リング74がフェース84および86の間で位置決めされるときに、圧縮ワッシャ72がフェース76および78の間で圧縮状態になるように位置決めされる。ロータ60の組み立ておよび分解は、
図2〜5の実施形態に関連して上述した形と同様に実施されてよい。例えばスプライン、ピンまたはキーなどの手段(図示せず)により、各ディスク/スペーサの間でトルクが伝達され得る。
【0025】
上記に加えて、本発明の実施形態には、圧縮ワッシャと、保持リングと、ねじ継手またはねじ部品を使用することなくエンジンケース構造などの静的構成要素を組み立てるのに使用され得る2つの対向するフェースの2つのグループとを有する同様のシステムが含まれる。
【0026】
本発明の実施形態にはガスタービンエンジンが含まれ、このガスタービンエンジンは:第1のロータ部品および第2のロータ部品を有するメインエンジンロータであって、第1のロータ部品が第1のフェースおよび第1のチャネルを含み、第2のロータ部品が第2のフェースおよび第2のチャネルを含む、メインエンジンロータと;第1のフェースと第2のフェースとの間に配置される圧縮ワッシャであって、第1のフェースに、第2のフェースに対する機械的荷重を加えるように動作可能である、圧縮ワッシャと;保持リングと、を有し、ここでは、保持リングが第1のチャネルおよび第2のチャネルの両方の中で位置決めされるときに圧縮ワッシャが第1のフェースと第2のフェースとの間で圧縮状態となるように、第1のフェース、第1チャネル、第2のフェースおよび第2のチャネルが位置決めされ、またここでは、保持リングが、圧縮ワッシャの圧縮によって発生する機械的荷重に反応する、保持リングと、を有する。
【0027】
一改良では、メインエンジンロータがタービンロータおよび圧縮機ロータを含み、第1のロータ部品がタービンロータおよび圧縮機ロータのうちの一方である。
別の改良では、メインエンジンロータが、圧縮機ロータを駆動させるためにタービンロータから動力を伝達するように動作可能であるシャフトを含み、第2のロータ部品がこのシャフトである。
【0028】
また別の改良では、圧縮機ロータが圧縮機の複数の段を含み、第1のロータ部品が圧縮機の第1の段であり、第2のロータ部品が圧縮機の第2の段である。
さらに別の改良では、第1のロータ部品および第2のロータ部品のうちの少なくとも一方が、第1のチャネルおよび第2のチャネルのうちの少なくとも一方の中を延在する開口部を含む。
【0029】
またさらに別の改良では、開口部が、保持リングを変位させるための工具が中に入るのを許容するように形成されている。
さらなる改良では、エンジンが、第1のチャネルおよび第2のチャネルのうちの一方の中に配置されるばねを含み、このばねが、保持リングにばね荷重を加えるように位置決めされる。
【0030】
またさらなる改良では、ばねが円周状のウェーブワッシャである。
実施形態には、ガスタービンエンジンのメインエンジンロータを組み立ておよび分解するための方法が含まれ、この方法は:メインエンジンロータの第1のロータ部品の第1フェースおよびメインエンジンロータの第2のロータ部品の第2のフェースの少なくとも一方の間で圧縮ワッシャを位置決めすることと;第1のロータ部品の第1の溝および第2のロータ部品の第2の溝のうちの一方の中に保持リングを位置決めすることと;第1のロータ部品を第2のロータ部品に組み付けることと;圧縮ワッシャを第1のフェースと第2のフェースとの間で圧縮状態におくように締め付け荷重を加えることと;保持リングが第1の溝および第2の溝の両方の中に位置決めされるように保持リングを変位させることと、を含む。
【0031】
一改良では、この方法は、締め付け荷重を解放することをさらに含み、ここでは、保持リングが、圧縮ワッシャの圧縮に反応し、第1のロータ部品を第2のロータ部品に組み付けた状態で保持する。
【0032】
別の改良では、ねじ部を使用せずに、第1のロータ部品が第2のロータ部品に対して締め付けられる。
また別の改良では、この方法はまた、第1の溝および第2の溝の両方の中にある状態から第1の溝および第2の溝の一方の中にある状態へと保持リングを再位置決めし、第1のロータ部品を第2のロータ部品から外すことにより、第1のロータ部品を第2のロータ部品から分解することを含む。
【0033】
さらに別の改良では、保持リングの再位置決めは、第1の溝および第2の溝のうちの一方における開口部に工具を挿入することと、保持リングを変位させるために工具を使用して保持リングに力を加えることとを含む。
【0034】
またさらに別の改良では、この方法は、第1の溝および第2の溝の一方の中にばねを位置決めすることを含み、ここでは、このばねは、保持リングにばね荷重を加えるように位置決めされる。
【0035】
さらなる別の改良では、メインエンジンロータは、圧縮機ロータを駆動させるためにタービンロータから動力を伝達させるように動作可能であるシャフトを含み、またここでは、第1のロータ部品および第2のロータ部品のうちの一方がこのシャフトである。
【0036】
またさらなる別の改良では、メインエンジンロータは圧縮機の複数の段を含み、ここでは、第1のロータ部品が圧縮機の1つの段であり、またここでは、第2のロータ部品が圧縮機の他の1つの段である。
【0037】
さらに別の改良では、メインエンジンロータは圧縮機ディスクおよび圧縮機スペーサを含み、ここでは、第1のロータ部品がこのディスクであり、第2のロータ部品がこのスペーサである。
【0038】
本発明の実施形態にはシステムが含まれ、このシステムは:第1のフェースおよび第2のフェースを有する第1の構成要素と;第3のフェースおよび第4のフェースを有する第2の構成要素であって、第3のフェースが第1のフェースに対向し、第4のフェースが第3のフェースに対向する、第2の構成要素と;第1のフェースと第3のフェースとの間に配置される圧縮ワッシャであって、第1のフェースに、第3のフェースに対する機械的な荷重を加えるように動作可能である、圧縮ワッシャと;保持リングとを有し、ここでは、保持リングが第2のフェースと第4のフェースとの間で位置決めされるときに圧縮ワッシャを第1のフェースと第3のフェースとの間で圧縮状態にするように、第1のフェース、第2のフェース、第3のフェースおよび第4のフェースが位置決めされ、またここでは、保持リングが、圧縮ワッシャの圧縮するによって発生する機械的荷重に反応する、保持リングと、を有する。
【0039】
本発明の実施形態にはガスタービンエンジン用メインエンジンロータが含まれ、このガスタービンエンジン用メインエンジンロータが:第1のロータ部品と;第2のロータ部品と;第1のロータ部品を第2のロータ部品に対して締め付けるための手段と、を有する。
【0040】
一改良では、締め付けるための手段が、圧縮ワッシャおよび分割保持リングを含み、圧縮ワッシャおよび分割保持リングは、共に、第1のロータ部品および第2のロータ部品を一体に締め付ける。
【0041】
現在最も実用的および好適であると考えられる実施形態に関連させて本発明を説明してきたが、本発明が開示される実施形態(複数可)のみに限定されず、むしろ、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる種々の修正形態および等価の構成を包含することを意図され、この範囲が、法の下で容認されているように、そのようなすべての修正形態および等価の構造を含むために最も広い解釈を与えられるべきであることを理解されたい。さらに、上記の記述中での「好適な(preferable)」、「好適に(preferably)」または「好適(preferred)」という単語の使用は、そのように説明される特徴がより望ましいものであってよいが、その特徴が必須でなくてよく、その特徴を欠く任意の実施形態も本発明の範囲内にあると考えられてよく、この範囲が以下の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。特許請求の範囲を読む際、「a」、「an」、「少なくとも1つ(at least one)」および「少なくとも一部分(at least a portion)」などの言葉が使用される場合、特許請求の範囲において違う意味で特に述べられない限り、特許請求の範囲を1つのアイテムのみに限定する意図がないことが意図される。さらに、「少なくとも一部分(at least a portion)」および「一部分(a portion)」という言い回しが使用される場合、そのアイテムは、違う意味で特に述べられない限り、一部分および/またはアイテム全体を含むことができる。