(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱板から上方に離間した位置で前記ワークを保持する複数のプランジャピンを更に備え、各プランジャピンは、前記熱板の上面に形成された複数の穴内に、上方に突出され、且つ出没可能に設置されていると共に、弾性部材によって上方に付勢されている請求項4に記載のラミネート装置。
前記ダイヤフラムは、前記ワーク加熱部全面及び前記溝全体を覆う大きさのワーク押し付け用の膜体を備えるものであり、前記溝の外側の前記熱板上に、前記膜体の外周部が押し当るスペーサを設置した請求項6に記載のラミネート装置。
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のラミネート装置で構成されるラミネートユニットと、そのラミネートユニットに前記ワークを搬入、搬出するワーク搬入出ユニットとを備えており、前記ワーク搬入出ユニットは、前記上部チャンバ部材が前記ワーク載置部材から離間した際に前記アーム上に前記ワークを移載可能であると共に、当該アーム上の前記ワークを取り出し可能なロボットアームを備えるものであり、前記ワーク搬入出ユニットと前記ラミネートユニットとの間で前記ワークが枚葉搬送されることを特徴とするラミネート処理システム。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の装置では、基板を搬出入する際、ヒータから治具を一旦取り外し、取り外した治具に基板を載せたり外したりする必要がある。装置自体はコンパクトになったものの、基板の出し入れは極めて煩わしい構成であり、量産向きの装置では無い。
また、特許文献2の装置では、一度に複数枚の処理を行うことができるが、最初に搬入された基板を、最後に搬入される基板の搬入が完了するまでの間、待機させなければならず、効率的に搬出入することができない。
また、特許文献3、4の装置のように上下チャンバ等で構成したチャンバ空間で真空処理を行う装置では、真空引きのための空間が広いため、処理時間が長くなってしまう。
【0005】
本願発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、基板のラミネート処理や搬出入を短時間で効率よく行い、よりコンパクトで安価な構造のラミネート装置及びこれを用いたラミネート処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る発明は、薄板状のワークに対してラミネート処理を施すラミネート装置において、ダイヤフラムが、その下面側に装着された上部チャンバ部材と、前記上部チャンバ部材の下方に設置され、その上面に前記ワークが載置されるワーク載置部材と、を備え、前記上部チャンバ部材及び前記ワーク載置部材のうち少なくとも一方は、前記上部チャンバ部材と前記ワーク載置部材とが離間した離間位置と、当該ワーク載置部材と上部チャンバ部材とが当接され、その内部にチャンバ空間を形成する当接位置と、の間で相対的に近接離間移動可能であり、前記上部チャンバ部材の下面側に、前記ワーク載置部材上に搬入出される前記ワークを保持するためのアームが設けられたことを特徴とするラミネート装置である。
このように、上部チャンバ部材の下面側にワーク保持用の複数のアームを設置したので、上部チャンバ部材がワーク載置部材に対して離間されると、アームに保持されたワークもワーク載置部材に対して離間した状態になる。つまり、ワーク保持用のアームの駆動手段を別途設けることなく、コンパクトで簡単な構成を維持しつつも、アームに保持されたワークを熱板に対して近接離間移動させることができる。
【0007】
前記ワーク載置部材は、その上面に、複数の前記アームをそれぞれ格納するための凹部を有する。
このような凹部を形成すれば、上部チャンバ部材とワーク載置部材とでチャンバ空間を形成する際、この凹部にアームをスムーズに格納して迅速且つ確実に気密性に優れたチャンバ空間を形成することができる。なお、アームを格納するための構造としては、上述したワーク載置部材の凹部を形成する構造の他、例えば、上部チャンバ部材に退避部を形成する構造でもよい。上部チャンバ部材をワーク載置部材に当接させる際に、アームが上部チャンバ部材側に退避移動して当該退避部に格納されれば、迅速且つ確実に気密性に優れたチャンバ空間を形成することができる。
【0008】
また、前記ワーク載置部材は、その上面に載置された前記ワークを加熱するためのヒータを有する。
このように、従来の装置では、チャンバ空間内に設置された加熱手段にヒータを設置していたのでヒータ設置やメンテナンス時の作業性は必ずしも良くなかった。この点、ワーク載置部材に直接ヒータを設置する構造であれば、配線の取り回しが容易であるなどヒータを簡単に設置することができ、しかもメンテナンス性にも優れる。
【0009】
ダイヤフラムが、その下面側に装着された上部チャンバ部材と、当該上部チャンバ部材の下方に設置された熱板とを備えており、当該熱板は、当該熱板上に搬入された薄板状のワークを加熱するものであり、前記上部チャンバ部材及び前記熱板のうち少なくとも一方は、前記上部チャンバ部材と前記熱板とが離間した離間位置と、前記上部チャンバ部材が前記熱板に当接して当該熱板と上部チャンバ部材との間にチャンバ空間を形成する当接位置との間で相対的に近接離間移動可能であり、前記上部チャンバ部材の下面側に、前記熱板上に搬入出される前記ワークを保持するための複数のアームを設置し、前記熱板の上面に、当該熱板に当接した前記上部チャンバ部材の前記アームが格納される凹部を形成したことを特徴とするラミネート装置である。
このように、本願発明に係るラミネート装置では、熱板と上部チャンバ部材とでチャンバ空間を形成しているので、チャンバ空間を非常に狭くでき、真空引きの時間が短縮される。これにより、基板の処理時間が短縮される。
また、上部チャンバ部材の下面側にワーク保持用の複数のアームを設置したので、上部チャンバ部材が熱板に対して離間されると、アームに保持されたワークも熱板に対して離間した状態になる。つまり、ワーク保持用のアームの駆動手段を別途設けることなく、コンパクトで簡単な構成を維持しつつも、アームに保持されたワークを熱板に対して近接離間移動させることができる。
【0010】
前記熱板から上方に離間した位置で前記ワークを保持する複数のプランジャピンを更に備えてもよい。この場合、各プランジャピンを、前記熱板の上面に形成された複数の穴内に、上方に突出させ且つ出没可能に設置すると共に、弾性部材によって上方に付勢する。
このようなプランジャピンがあれば、ワークを熱板から離した状態で加熱(予熱)することができ、ワークを熱板に接触させた状態で加熱(予熱及び本加熱)する場合に比べて、ワークの温度上昇勾配を緩やかにすることができ、ワークの反りの発生が抑制される。ワークの反りを抑制することができれば、その後の加熱における加熱ムラの発生をより容易に防止することができ、ワークを効率的に加熱することができる。また、ワークの温度上昇が急激だと、この後のラミネート処理時の加圧でワークに割れが発生するが、緩やかな温度上昇によりワークの割れを防止できる。このような効果を有するプランジャピンを、ピンとバネなどの弾性部材で簡単且つコンパクトに構成したので、故障しにくく且つメンテナンス性に優れる。
【0011】
前記熱板は、その上面中央部に配置されたワーク加熱部と、その下面に設置された加熱用のヒータとを備えているものである。この場合に、前記熱板の上面であって前記ワーク加熱部の外周部に、当該ワーク加熱部に載置されたワークの外周縁部に沿うように溝を形成してもよい。
本願発明に係るラミネート装置でラミネート処理するワークとしては、例えば、接着剤を挟む状態で積層されたガラス基板を挙げることができる。このようなワークのラミネート処理では、ガラス基板の外周縁から接着剤が流出するおそれがある。この点に関して、上述したような溝があれば、接着剤が流出したとしてもこの溝内に接着剤が溜まるため、接着剤がガラス基板に付着するのが防止される。ワーク加熱部表面の汚れが防止されれば、ワーク加熱部の清掃やメンテナンスに要する時間を短縮でき、延いてはワークの処理時間を短縮できる。また、溝構造は、簡単な構造であり、メンテナンス性に優れる。
【0012】
前記ダイヤフラムは、前記ワーク加熱部全面及び前記溝全体を覆う大きさのワーク押し付け用の膜体を備えるものである。この場合に、前記溝の外側の前記熱板上に、前記膜体の外周部が押し当るスペーサを設置してもよい。
このようなスペーサが設置されていれば、ダイヤフラムでワークをプレスする際、圧力ムラの発生がより確実に防止される。これにより接着剤の広がりムラの発生が防止される。
【0013】
前記上部チャンバ部材は壁部と蓋部を有する蓋箱状を呈し、該壁部における前記熱板との当接部には気密用のシール部材が配置されており、前記熱板は、前記上部チャンバ部材の壁部下方に前記チャンバ空間内の気体を排出するための排気孔を備えており、前記壁部における前記排気孔に対向する部分に、前記チャンバ空間に臨む窪み部を設けてもよい。
このような構造にすれば、チャンバ空間から排気を行う際、チャンバ空間内の気体をダイヤフラムにより塞がれることなく迅速に排出することができ、ワークの処理時間を短縮できる。
【0014】
前記ダイヤフラムは、前記上部チャンバ部材の本体の下面側に配置されており、当該上部チャンバ部材の本体は、前記ダイヤフラムに押し付け力を付与するための外気の給排気口を備えている。この場合に、前記上部チャンバ部材の本体と前記ダイヤフラムとの間に網状体を配置することが好ましい。
このように、上部チャンバ部材の本体とダイヤフラムとの間に網状体を配置すれば、ダイヤフラムの膜体によって吸排気口が塞がれることが防止される。これにより、上部チャンバ部材の本体とダイヤフラムの間の空間と外界との間の吸排気を常に迅速に行うことができ、ワークの処理時間を短縮できる。
【0015】
本願に係る別の発明は、上述した発明に係るラミネート装置で構成されるラミネートユニットと、そのラミネートユニットに前記ワークを搬入、搬出するワーク搬入出ユニットとを備えており、前記ワーク搬入出ユニットは、前記上部チャンバ部材が前記熱板から離間した際に前記アーム上に前記ワークを移載可能であると共に、当該アーム上の前記ワークを取り出し可能なロボットアームを備えるものであり、前記ワーク搬入出ユニットと前記ラミネートユニットとの間で前記ワークが枚葉搬送されることを特徴とするラミネート処理システムである。
このラミネート処理システムでは、上部チャンバ部材が熱板に対して離間されると、上部チャンバ部材のアームの位置も熱板に対して離間した状態(非接触状態)になる。そして、この状態で、ワーク搬入出ユニットを利用して、熱板から離間したアーム上へのワークの移載や、アーム上のワークの取り出しが行われる。
ここで、例えば、ラミネートユニット内に搬入されたワークが搬入と同時に一部分だけでも熱板側の部材と接触するようであれば、それが原因でワークに加熱ムラが生じる可能性がある。この点に関して、本発明に係るラミネート処理システムでは、ラミネートユニットに搬入されたワークは、アームで保持され、熱板から離間した状態(非接触状態)であり、熱ムラの発生が防止されている。
また、上部チャンバ部材と熱板との間の離間動作が完了すると同時に、ワークの熱板に対する離間動作も完了するので、その後、迅速に、ワークの移載や取出し動作を実行することができる。これにより、ラミネート処理時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本願発明に係るラミネート装置では、ワークを載置するためのワーク載置部材をチャンバ空間形成用の部材としても用いているので、装置構造の簡素化が図られ、メンテナンス性が向上する。また、故障の発生が抑制されると共に装置の軽量化が図られる。
また、上部チャンバ部材の下面側にワーク保持用の複数のアームを設置し、アームにワークを保持した上部チャンバ部材をワーク載置部材に対して当接させると、アームからワーク載置部材上にワークが移載され、また、上部チャンバ部材をワーク載置部材から離間させると、アームがワーク載置部材上からワークを掬い上げ、ワークがワーク載置部材から離間した状態になる。つまり、ワーク保持用のアームの駆動手段を別途設けることなく、簡単な構成を維持しつつも、アームとワーク載置部材との間でワークの移載を行うことができる。
【符号の説明】
【0018】
1…ラミネート処理システム、10…ラミネート装置(ラミネートユニット)、
10a…台座、20…熱板(ワーク載置部材)、21…ワーク加熱部、22…溝、
23…スペーサ、24…排気孔、24a…上端開口、
25…プランジャピン、25a…ピン部、25b…座部、25c…蓋体、25d…穴、
26…バネ(弾性部材)、27…凹部、40…上部チャンバ部材、
41…本体(蓋部)、42…ダイヤフラム、42a…押圧用の膜部、
43…枠体(壁部)、43a…当接する部分、43b…対向する部分、
44…アーム、44a…アーム基部、44b…アーム先部、
45…吸排気口、46…メッシュ部材(網状体)、47…シール部材、48…窪み部、
50…昇降部材、50a…リニアアクチュエータ、
80…ワーク搬入出ロボット(ワーク搬入出ユニット)、
81…ロボット基部、82…旋回部、83…ロボットアーム支持部、
84…ロボットアーム、84a…ロボットアーム基部、84b…ロボットハンド、
100…従来のラミネート装置、120…熱板、125…ピン、
130d…熱板からピンセンタまでの距離、140…上部チャンバ部材、
Fa…本発明の装置の上部チャンバ部材40の昇降ストローク、
Fb…本発明の装置の下真空室の高さ、
Ga…従来の上部チャンバ部材140の昇降ストローク、
Gb…従来装置の下真空室Sbの高さ、
S…チャンバ空間、Sa…上真空室、Sb…下真空室、W…ワーク。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るラミネート処理システムについて、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、ラミネート処理システム1は、ラミネート装置(ラミネートユニット)10と、ワーク搬入出ロボット(ワーク搬入出ユニット)80とを備えている。
なお、本実施形態のラミネート装置10で処理するワークW(熱板で加熱されるワーク)とは、例えば、複数枚のガラス基板の積層体であってガラス基板の間に接着剤が挟まれたものである。
【0020】
ラミネート装置10は、
図1に示すように、台座10a上に設置された熱板(ワーク載置部材)20と、熱板20の上方に配置された上部チャンバ部材40と、上部チャンバ部材40を熱板20に対して昇降可能に支持する昇降機構50とを備えている。なお、熱板20は、その本体部である後述のワーク加熱部21の裏側(下面)にヒータ(不図示)を設けることで構成されている。
このラミネート装置10では、後述するように、ワークWをラミネート処理する際に用いられるチャンバ空間S(
図3参照)を、熱板20と上部チャンバ部材40とで形成している。また、昇降機構50は、垂直方向に向く状態で設置された4体の周知のリニアアクチュエータ50a(
図1参照:例えば、エアシリンダなど)を用いたものであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0021】
熱板20は、ラミネート対象である薄板状のワークWを加熱するためのものであり、その上面中央部に位置するワーク加熱部21(
図2参照)と、ワーク加熱部21の裏側(下面側)に設置された加熱用のヒータ(不図示)とを備えている。ラミネート処理時、処理対象のワークWは、このワーク加熱部21に載置された状態で熱板20にて加熱される。
【0022】
また、熱板20は、その上面であってワーク加熱部21の外周部に形成された溝22を備えている。別言すると、この溝22は、ワーク加熱部21に載置されたワークWの外周縁に沿う配置で形成されている。つまり、
図2(B)及び
図2(C)に示すように、本実施形態のラミネート装置10では、ワークWは、その外周縁が溝22の上端開口に位置するように、熱板20上に搬入される。
【0023】
さらに、熱板20は、溝22の外側の熱板上であって、後述のダイヤフラム42の外周領域が押し当る位置に設置されたスペーサ23を備えている(
図2(A)参照)。
スペーサ23は、
図2(A)に示すように、平面視矩形の薄板状の枠部材であり、溝22の外側を取り囲むように熱板20上に設置されている。このスペーサ23は、熱板20と別体に設けられており着脱可能であるが、熱板20と一体であってもよい。
そして、
図2(C)に示すように、スペーサ23の上面の高さ位置は、例えば、熱板20上に載置されたワークWの上面高さ位置と同等としてもよい。または、長辺、短辺の高さを変えても良い。スペーサ23高さは最適な高さを設定してもよい。
【0024】
また、熱板20には、気体排出に用いられる排気孔24が形成されている(
図3参照)。
具体的には、この排気孔24は、上部チャンバ部材40が下降したときに上部チャンバ部材40と熱板20との間に形成されるチャンバ空間Sの下真空室Sb(ダイヤフラム42と熱板20とで囲まれた空間;
図4(C)参照)内の気体をポンプ(不図示)によって排出する際に用いられる。
そして、熱板20の上面に開口する排気孔24の上端開口24aは、
図3に示すように、熱板20のスペーサ23の外縁部であって、上部チャンバ部材40の後述する枠体43と熱板20とが対向する位置に設けられ、枠体43の排気孔24の上端開口24aに対向する部分には、チャンバ空間Sに臨む窪み部48が設けられる。従って、排気孔24及び窪み部48aを介して、ダイヤフラム42に塞がれることなく確実にチャンバ空間Sの下真空室Sb内の気体を排気することができる。
【0025】
また、熱板20は、その上面から上方に突出する状態で設置された複数のプランジャピン25を備えている(
図2(D)参照)。これらのプランジャピン25は、主に、ラミネート装置10内に搬入されたワークWを熱板20から上方に離間させた(浮かせた)状態で保持するために用いられる。
各プランジャピン25は、ピン部25aと下端側の座部25bとを備えると共に熱板20に形成された穴25d内に設置(着座)されており、プランジャ先端(上端)が穴25dの上側開口から上方に突き出た突出位置(
図2(D)参照)と、プランジャ先端が穴25dの中に入り込んだ後退位置(
図4(C)参照)との間で出没可能な状態で設置されている。
各穴25dの上端開口部には、
図2(D)に示すように、ピン部25aが貫通する孔が形成された蓋体25cが取り付けられており、各プランジャピン25は、バネ(弾性部材)26によって上方の蓋体25cに向けて常時付勢され、突出位置(
図2(D)参照)の状態に保持されている。このバネ26としては、プランジャピン25上に載置されたワークWを熱板20から離間した状態で保持できるバネ強さのものが用いられている。
従って、各プランジャピン25は、無負荷状態のときは突出位置(
図2(D)参照)に位置し、ワークWが載置されたときでも、プランジャピン先端が熱板20上面から突出したワーク支持位置に位置する。そして、後述するダイヤフラム42によってワークWが下方に押されることで、これに伴いプランジャピン25が後退位置(
図4(C)参照)まで移動されるようになっている。つまり、ダイヤフラム42によって押されたワークWは、熱板20のワーク加熱部21に当接され、この状態で加熱されてラミネート処理される。
【0026】
また、熱板20の上面には、上部チャンバ部材40に取り付けられた後述のアーム44が格納される複数の凹部27が形成されている(
図2(a),
図3参照)。
図2(a)に示すように、熱板20の上面に開口を有する凹部27は、熱板20の上面の6か所に形成されている。各凹部27は、後述のアーム44の位置に対応する位置に形成されている。従って、上部チャンバ部材40が下降位置(当接位置、
図4(C)参照)まで下降したとき、各アーム44が対応する凹部27内に格納されるため、上部チャンバ部材40の枠体43の下端部が熱板20の上面に当接できるようになっている。
【0027】
図3に示すように、上部チャンバ部材40は、四角形の板状部材である上部チャンバの本体(蓋部)41と、本体41の下面側に取り付けられたダイヤフラム42と、本体41の下面の外周部に全周に亘って設置された枠体(壁部)43とを備えている。
そして、上部チャンバ部材40の下面側における枠体43の内側部(又は下端部)に、基板保持用の複数のアーム44(
図4参照)が設けられる。
【0028】
ダイヤフラム42は、ワークWを熱板20に押し付けるための膜体であり、押圧用の膜部42aを備えている(
図3参照)。この膜部42aは、ワーク加熱部21の全面及び溝22の全体を完全に覆う大きさであり、且つ膜部42aの外周部分が溝22の外側に設置されたスペーサ23上面に押し当る大きさである。
【0029】
上部チャンバ部材40の本体41は、
図4(A)〜(C)に示すように、昇降機構50によって支持された四角形の板状の部材であり、その中央部に吸排気口45を備えている。この吸排気口45は、本体41とダイヤフラム42の間の上部真空室Sa(
図4(A)〜(C)参照)内にポンプ(不図示)によって外気を導入し、当該ダイヤフラム42を熱板20、すなわちワークWに押し付ける押し付け力を付与するためのものである。
そして、本体41とダイヤフラム42との間の上部真空室Sa内には、メッシュ部材(網状体)46が配置されている。この部分にメッシュ部材46を配置すると、吸排気口45から上部チャンバ部材40の本体41とダイヤフラム42との間の気体を排気する際、本体41とダイヤフラム42との間に常時隙間が形成されるため、ダイヤフラム42が本体41に密着し、吸排気口45を塞いでしまうことを確実に防止することができる。なお、メッシュ部材46の大きさは、吸排気口45の全面に面していれば良いが、ダイヤフラム42の押圧用の膜部42aの全面に面する大きさの方がより好ましい。
【0030】
また、上部チャンバ部材40の枠体43の下端部には、その全周に亘って設置されたシール部材47が設けられる。
枠体43の下端部は、上部チャンバ部材40が下降したときに熱板20の上面に当接する当接する部分43aと、その内側に配置された熱板20と対向する部分43bとを備えている。当接する部分43aと対向する部分43bは段差を介して隣接している。当接する部分43aにはシール部材47を設置しているので、上部チャンバ部材40が下降位置(
図4(C)参照)に下降して上部チャンバ部材40と熱板20とが当接し、チャンバ空間S(
図3参照)が形成されたとき、チャンバ空間S内の気密性が確保される。また、熱板20の、対向する部分43bと対向する位置に排気孔24が配置されている。つまり、排気孔24に対向する枠体43の位置には窪み部48が形成されている。従って、排気孔24からチャンバ空間S内の気体を排出する際、迅速且つ確実に気体を排出することができる。
【0031】
各アーム44(本実施例の装置では6個)は、上部チャンバ部材40の下面側に取り付けられている(
図1、
図4参照)。
図4に示すように、各アーム44は、枠体43に取り付け、固定されるアーム基部44aと、アーム基部44aの下端からラミネート装置10の内側に向けて水平に伸びるアーム先部44bとを備えている。これのアーム先部44bの上面にワークWが載置、保持される。
【0032】
このような構成の上部チャンバ部材40は、上述したように昇降部材50に支持されており、熱板20から上方に離間した上昇位置(離間位置、
図4(A)参照)と、枠体43の下端部が熱板20に当接した下降位置(当接位置、
図4(C)参照)との間で昇降可能になっている。そして、上部チャンバ部材40が下降位置に下降したとき、上部チャンバ部材40(本体41及び枠体43)と熱板20とで囲まれるチャンバ空間Sが形成される(
図3参照)。なお、チャンバ空間Sのうち、上部チャンバ部材40の本体41とダイヤフラム42とで囲まれた空間が上部真空室Saであり、ダイヤフラム42と熱板20とで囲まれた空間が下部真空室Sbである。
【0033】
ワーク搬入出ロボット(ワーク搬入出ユニット)80は、
図1に示すように、ラミネート装置10内にワークWを搬入出するものであり、ロボット基部81と、ロボット基部81に垂直軸周りに旋回可能に設置された旋回部82と、旋回部82の上部に固定されたU字形状のロボットアーム支持部83と、ロボットアーム支持部83に設置されたロボットアーム84とを備えている。
【0034】
ロボットアーム84は、ロボットアーム支持部83に昇降可能に設置されたロボットアーム基部84aと、ロボットアーム基部84aに対して水平方向に進退移動可能に設置されたロボットハンド84b(
図1、
図4(A)参照)を備えている。このロボットハンド84bによって、ワークWをラミネート装置10内に対して枚葉式に(一枚ずつ)搬入出するようになっている。
【0035】
なお、ロボットアーム84の昇降動作やロボットハンド84bの進退動作は、周知のロボットによって行われる動作であるので、ここではその構成や動作についての詳細な説明を省略する。また、本実施の形態においては、ワーク搬入出ロボット80として、ダブルコラム(ダブルマスト)型のスライドアームロボットを用いた場合を例に挙げて説明を行ったが、これに限定するものではなく、シングルコラム型のスライドアームロボット、垂直多関節ロボット、又は水平多関節ロボットなどであってもよい。
【0036】
このようなラミネート処理システムの動作を
図1及び
図4を参照しつつ説明する。
ここでは、ワーク搬入出ロボット(以下、単にロボットと称する)80によって、ラミネート装置10内にワークWを搬入するワーク搬入工程を起点として、動作を説明する。
【0037】
ワーク搬入工程では、まず、ロボット80のロボットハンド84bによって、マガジン(不図示)に収容されたラミネート対象のワークWを取り出してラミネート装置10に搬入する(
図1参照)。ワークWを搬入する位置は、上部チャンバ部材40の本体41とアーム44のアーム先部44bとの間である(
図4(A)参照)。
その後、ロボットアーム84を下降移動させると、搬入したワークWが上部チャンバ部材40に取り付けられたアーム44のアーム先部44b上に載置される(
図4(A)参照)。そして、ワークWのアーム44ヘの載置が完了すると、ロボットハンド84bを後退させて、ラミネート装置10の外部に移動させ、ワークWの搬入を完了する。
【0038】
ワーク搬入工程が完了すると、次に、ラミネート処理を実行する。
ラミネート処理は、概略的には、上部チャンバ下降工程(チャンバ形成工程)、プレヒート工程、プレス工程(加熱工程)、プレス解除工程、上部チャンバ上昇工程(ワーク取出し工程)を順に実行することにより行われる。
【0039】
ワーク搬入工程が完了すると、まず、上部チャンバ下降工程を実行する。
この工程では、昇降機構50を作動させて、上部チャンバ部材40を熱板20に向けて下降させる。この動作により、まず、アーム44のアーム先部44b上に載置されたワークWが熱板20のプランジャピン25上に移載される(
図4(B)参照)。
そして、さらに上部チャンバ部材40を下降させると、アーム44が熱板20の凹部27内に入り込み、最終的には、上部チャンバ部材40のシール部材47が熱板20の上面に当接する(
図4(C)参照)。これにより、上部チャンバ下降工程が完了する。
ところで、
図5(A)に示されるように、従来のラミネート装置100における上部チャンバ下降工程では、ロボットハンドによってピン125上にワークWを載置するので、熱板120からのピン125の突出高さを高くして、熱板120とピン125の先端高さとの間130dにロボットハンドが入るようにしなければならない。また、この場合、ワークWはピン125よりも高い位置からピン125上に移載されるため、ワークWがピン125に干渉(ぶつかったり、擦ったり)しないよう、ロボットハンドのワーク保持高さにはある程度の余裕をもたせている。このため、上部チャンバ部材140の上昇位置については、ロボットハンドのワーク保持高さよりもさらに高い位置に設置しなければならず、上部チャンバ部材140の昇降ストロークGaが長くなりがちであった。
この点に関して、本発明の実施形態に係るラミネート装置10では、上部チャンバ部材40に取り付けたアーム44上にワークWを載置するので、上部チャンバ部材40の昇降ストロークFa(
図4(A)参照)は、アーム44が熱板20から完全に露出するだけのストロークで十分である。よって、従来のラミネート装置100と比較して、上部チャンバ部材40の昇降ストロークFaが短くなり、昇降時間を短縮することができる。これにより、ラミネート処理時間を短縮できる。
【0040】
次のプレヒート工程では、上真空室Sa及び下真空室Sbの両方に対して真空引きを行う。具体的には、図示しないポンプを作動させて吸排気口45から上真空室Sa内の空気を排出すると共に、排気孔24から下真空室Sb内の空気を排出する。本工程中、ワークWは、まだプランジャピン25の上に載置されている。そして、熱板20がヒータ(不図示)によって所定の温度に予熱され、予熱された状態の熱板20からの輻射熱によってワークWが加熱(予熱)される。これにより、ワークWが急に加熱されることを防止でき、ワークWの反りの発生を防止することができる。
【0041】
続くプレス工程では、上真空室Saを大気開放する。これにより、ダイヤフラム42の膜体部42aに下向きの大気圧が加わり、この圧力によってワークWが熱板20に押し付けられる。これに伴いプランジャピン25が後退位置(
図4(C)参照)まで移動され、膜体部42aによって押されたワークWは、熱板20のワーク加熱部21に当接される。この状態でワークWが加熱されてラミネート処理がなされる。
【0042】
所定時間のプレス工程が終了すると、次に、プレス解除工程を実行する。
この工程では、下真空室Sbを大気開放する。これにより、上真空室Sa内及び下真空室Sb内が共に大気圧になり、ワークWを熱板20に押し付ける力が解除される。押し付け力が解除されると、上方に付勢されているプランジャピン25によって、ワークWが上方に押し上げられ、ワークWが熱板20から上方に離間した状態になる。
ところで、従来のラミネート装置100は、
図5(B)に示されるように、チャンバ空間S内に熱板120を設置していると共に熱板120の下側にピン125が退避するスペースを確保する必要があったため、その分、チャンバ空間Sの下真空室Sbの容積(特に、下真空室Sbの高さGb)が大きくなっていた。下真空室Sbの容積が大きくなると、その分、チャンバ空間S内を所定の真空度にするまでに時間がかかる。
この点に関して、本発明の実施形態に係るラミネート装置10では、熱板20を下部チャンバ部材として用いていると共に上部チャンバ部材40にアーム44を設けたので、熱板20の下側に空間を確保する必要がなく、その分、下真空室Sbの容積(特に、下真空室Sbの高さFb)を小さくすることができる。これにより、下真空室Sbを所定の真空度にするまでの時間を短縮することができ、ラミネート処理時間を短縮できる。
【0043】
続く上部チャンバ上昇工程では、昇降機構50を作動させて、上部チャンバ部材40を熱板20から離間させるように上昇させる。この動作により、プランジャピン25上に載置された状態のワークWがアーム44のアーム先部44bによって掬い上げられる。つまり、ワークWがアーム先部44b上に載置された状態になり、ラミネート処理が終了する。
【0044】
ラミネート処理が完了すると、次に、ワーク搬出工程を実行する。
この工程では、ロボット80のロボットハンド84bをラミネート装置10に進入させる。ロボットハンド84bの進入位置は、ワークWと熱板20との間である。
その後、ロボットアーム84を上昇させて、アーム先部44b上に載置されていたワークWをロボットハンド84bによって掬い上げる。これにより、ワークWがロボットハンド84bに移載、保持される。
その後、ロボットハンド84bを後退させて、ワークWをラミネート装置10の外部に移動(アンロード)させる。その後、ワークWを処理済みワーク収納先のマガジンに収納し、一連のラミネート処理を終了する。ここで、ロボット80として、ロボットハンド84bを2つ備えるダブルハンドロボットを用いても良い。この場合、処理済みのワークWを一方のロボットハンドでラミネート装置10の外部にアンロードさせると共に、未処理のワークWを他方のロボットハンドでラミネート装置10の内部に供給(ロード)させることができる。
連続してラミネート処理を実行する場合は、このような一連の工程を繰り返し実行する。
【0045】
なお、本発明に係るラミネート装置及びラミネート処理システムは、上記実施形態に限られるものではなく、本発明には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された種々の態様のラミネート装置及びラミネート処理システムが含まれる。