(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662495
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】可溶化剤形の医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/06 20060101AFI20150108BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20150108BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20150108BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20150108BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20150108BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20150108BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20150108BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/46
A61K47/34
A61K31/4178
A61P31/10
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-23467(P2013-23467)
(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-152136(P2014-152136A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2014年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507029007
【氏名又は名称】株式会社ポーラファルマ
(73)【特許権者】
【識別番号】000232623
【氏名又は名称】日本農薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩一
(72)【発明者】
【氏名】西田 直人
(72)【発明者】
【氏名】増田 孝明
【審査官】
田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−523410(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/102241(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/102242(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/102243(WO,A1)
【文献】
特開2013−253078(JP,A)
【文献】
特表2012−518009(JP,A)
【文献】
特開平08−020527(JP,A)
【文献】
特開2004−051487(JP,A)
【文献】
特表2007−505124(JP,A)
【文献】
医薬品インタビューフォーム(ルリコンクリーム、ルリコン液),2009年,第3版
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 31/00
A61K 47/00
CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ワセリン、シリコーンエラストマー、モクロウ、カルナウバワックス、ミツロウ、ゲイロウ、キャンデリラワックス、流動パラフィン、スクワラン、グリセリンの脂肪酸エステル及び高級アルコールの脂肪酸エステルから選択される1種乃至は2種以上の疎水性軟膏基剤と、
2)アリールアミン系抗真菌剤及びイミダゾール系抗真菌剤から選択される1種乃至は2種以上の抗真菌剤と、
3)プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びジグリセリンから選択される1種又は2種以上の多価アルコールと、
4)N−アルキル−2−ピロリドンと、下記に示す溶剤から選択される1種乃至は2種以上との溶剤の組み合わせを含有し、
1気圧25℃でペースト状である、一相の可溶化剤形の医薬組成物。
(溶剤)
二塩基酸のジエステル、トリアセチン、エチレングリコールのモノアルキルエステル、クエン酸のトリアルキルエステル、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール
【請求項2】
疎水性軟膏基剤は、ワセリンであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬組成物全量に対して、80〜98質量%の前記疎水性軟膏基剤、0.5〜10質量%の前記抗真菌剤、1〜10質量%の前記多価アルコール、0.5〜6質量%の前記溶剤の組み合わせを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
更に、非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗真菌剤は、下記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩であることを特
徴とする、請求項1〜
4の何れか1項に記載の医薬組成物。
【化1】
(但し、式中R
1、R
2はそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【請求項6】
前記抗真菌剤は、ルリコナゾール(一般式(1)において、R1=R2=Cl)及び/又はその塩であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は、第16改正日本薬局方における油脂性軟膏に属することを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物に関し、更に詳細には、可溶化剤形の軟膏に好適な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水虫などの真菌症の治療においては、患部が損傷し、体液が滲出するなどを呈するが故に、浸出液によって有効成分が拡散せず、傷口に対しても刺激性を呈しない軟膏剤形が有用であると考えられている。軟膏剤形には、ポリエチレングリコールなどの親水性軟膏基剤やワセリンなどの疎水性軟膏基剤に薬剤を直接分散させた、薬剤分散剤形、軟膏基剤となじみの良い薬剤を溶かしこんだ薬剤可溶化剤形、薬剤を溶解せしめた液滴を分散させた液滴分散剤形などが知られている。中でも、ワセリンなどの疎水性軟膏基剤に、多価アルコールなどに薬剤を溶解せしめた溶液を液滴として分散させた、疎水性液滴分散剤形はその応用範囲が広いことから、一般的に用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2
を参照)。特に軟膏剤形は、抗真菌医薬組成物では糜爛部分に刺激無く投与できる利点を有しているため、必須のアイテムとなっている。
【0003】
その一方で、医薬組成物においては、病巣である角層において、有効成分を長時間にわたって有効濃度を保つように設計することも重要である(例えば、特許文献3を参照)が
、液滴分散軟膏においては、有効濃度の維持は大きな課題となっていた。また、液滴が疎水性軟膏基剤で孤立させられているため、患部への薬剤の総移行量もクリーム剤形、ローション剤形に比して低くならざるを得ない欠点も存した。
【0004】
また、疎水性軟膏基剤の軟膏において、多価アルコールを可溶化した可溶化軟膏は全く知られていなかったし、当該可溶化軟膏が、有効成分の長時間角層内濃度維持に有用であることも全く知られていなかった。更に、疎水性軟膏基剤の軟膏であって、1)抗真菌剤と、2)疎水性軟膏基剤及び抗真菌剤と相溶する溶剤と、3)多価アルコールとを含有し、一相を呈することを特徴とする、医薬組成物も全く知られていない。ここで、可溶化とはナノメータサイズを観察することの出来る顕微鏡下の観察において、ミセルを判別できず、且つ、50℃程度に加温した状態で1000〜3000gの遠心分離操作を5分間行っても二層分離を認めず、且つ、室温における粘度が1000mPascal・s以上であることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−505107号公報
【特許文献2】特表2005−528425号公報
【特許文献3】特開2002−265388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、他の剤形と近似した角層内濃度挙動を示す、新規剤形軟膏からなる医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、抗真菌剤を例に取り、軟膏製剤において、角層内の抗真菌剤の濃度を長時間維持する作用を有する製剤を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、疎水性軟膏基剤の軟膏であって、疎水性軟膏基剤及び多価アルコールとを含有し、
可溶化剤形を形成するものにそのような特徴がみられることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
【0008】
<1> 1)疎水性軟膏基剤と、2)抗真菌剤と、3)多価アルコールと、4)疎水性軟膏基剤及び抗真菌剤と相溶する溶剤を含有する、可溶化剤形の医薬組成物。
<2> 前記疎水性軟膏基剤及び抗真菌剤と相溶する溶剤は、次のA群から選択される1
種又は2種以上であることを特徴とする、<1>に記載の医薬組成物。
(A群)
N−アルキル−2−ピロリドン、二塩基酸のジエステル、トリアセチン、エチレングリコールのモノアルキルエステル、クエン酸のトリアルキルエステル、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール
<3> 前記多価アルコールは、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びジグリセリンからなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の医薬組成物。
<4> 疎水性軟膏基剤は、ワセリンであることを特徴とする、<1>〜<3>のいずれかに記載の医薬組成物。
<5> 更に、非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする、<1>〜<4>の何れかに記載の医薬組成物。
<6> 前記抗真菌剤は、下記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩であることを特徴とする、<1>〜<5>の何れかに記載の医薬組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
(但し、式中R
1、R
2はそれぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を表す。)
<7> 前記抗真菌剤は、ルリコナゾール(一般式(1)において、R
1=R
2=Cl)及び/又はその塩であることを特徴とする、<6>に記載の医薬組成物。
<8> 前記医薬組成物は、第16改正日本薬局方における油脂性軟膏に属することを特徴とする、<1>〜<7>の何れかに記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、他の剤形と近似した角層内濃度挙動を示す、新規剤形軟膏からなる医薬組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1>本発明の医薬組成物の必須成分である疎水性軟膏基剤
本発明の医薬組成物は、疎水性軟膏基剤を基剤とする軟膏であることを特徴とする。ここで、疎水性軟膏基剤とは、軟膏の性状を決定する組成物群であって、水とは相溶しないものを意味し、具体的には、ワセリン、シリコーンエラストマー、モクロウ、カルナウバワックス、ミツロウ、ゲイロウ、キャンデリラワックス
、流動パラフィン、スクワラン、グリセリンの脂肪酸エステル、高級アルコールの脂肪酸エステル等から選ばれる1種乃至は2種以上を混合し、ペースト状に調整したものを言う。好ましい基剤としてはワセリンが挙げられる。特に好ましい基剤としてはワセリン80質量%以上に流動パラフィン、スクワラン等の液体炭化水素、モクロウ、ゲイロウ、カルナウバワックス、ミツロウ、キャンデリラワックスなどの固形脂を適宜加えて、ペースト状に調整したものである。ワセリンとしては、通常のワセリンであっても、サンホワイトワセリンなどの精製ワセリンであってもよい。疎水性軟膏基剤の混合は、成分を加熱し、全成分が液体になった後に攪拌冷却して成分一様なペースト状組成物とすることが好ましい。基剤は医薬組成物全量に対して80〜98質量%であることが好ましく、85〜95質量%であることがより好ましい。
【0013】
<2>本発明の医薬組成物の必須成分である多価アルコール
本発明の医薬組成物は、軟膏剤形であって多価アルコールを含有することを特徴とする。かかる多価アルコールとしては、1分子内に水酸基を2個以上有するものであれば特段の限定はないが、1気圧25℃で液状のものが好ましい。具体的には、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、分子量200〜800のポリエチレングリコール、ジグリセリン、トリグリセリンなどが好適に例示でき、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びジグリセリンから選択される1種乃至は2種以上が特に好ましい。これらの内では、プロピレングリコールのみを含有させることが特に好ましい。かかる多価アルコールの好ましい含有量は、総量で1〜10質量%であることが好ましく、3〜8質量%であることが特に好ましい。また、好ましい形態においては、この質量は後記抗真菌剤の総質量に対して、400〜700%であることが好ましい。また、後記溶剤の総質量に対しては、150〜400%であることが好ましい。この比において、抗真菌剤を多価アルコールとともに溶剤中に可溶化し、一相の可溶化系を形成しやすく、それによって、本発明の医薬組成物の特長を生かし、抗真菌剤の角層内濃度を長時間高いレベルで維持できるからである。
【0014】
<3>本発明の医薬組成物の必須成分である抗真菌剤
本発明の医薬組成物は、抗真菌剤を含有することを特徴とする。すなわち、本発明の医薬組成物は、抗真菌医薬組成物として使用できる。
抗真菌剤としては通常医薬品で用いられている抗真菌剤であれば制限無く、例えば、テルビナフィン、ブテナフィンなどのアリールアミン系の抗真菌剤、ミコナゾール、ビフォナゾール、オキシコナゾール、ラノコナゾール、ルリコナゾールなどのイミダゾール系抗真菌剤、アモロルフィンなどのモルフォリン系抗真菌剤等が好適に例示できる。特に好ましいものは、ラノコナゾール、ルリコナゾールなどの前記一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩である。中でも一般式(1)に表される化合物及びその塩が特に好ましく、一般式(1)に表される化合物としては、ルリコナゾール及び/又はその塩が特に好ましい。かかる抗真菌剤は唯一種を含有することも出来るし二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。かかる抗真菌剤の好ましい含有量は、総量で、医薬組成物総量に対して0.1〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。これは多すぎると本発明の医薬組成物の効果を奏しない場合が存し、少なすぎると抗真菌効果を奏しない場合が存するからである。
【0015】
<4>本発明の医薬組成物の必須成分である、疎水性軟膏基剤及び抗真菌剤と相溶する溶剤
本発明の医薬組成物は軟膏製剤であって、疎水性軟膏基剤及び抗真菌剤と相溶する溶剤を含有することを特徴とする。この様な溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリ
ドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−へキシル−2−ピロリドン等の好ましくは炭素数1〜6のアルキル基を有するN−アルキル−2−ピロリドン、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジカプリル等の二塩基酸のジエステル、トリアセチン、エチルグリコール等のエチレングリコールのモノアルキルエステル、クエン酸トリエチルなどのクエン酸のトリアルキルエステル、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェノキシエタノール等が好適に例示でき、これらから選ばれる1種乃至は2種以上を用いることが好ましい。特に、N−アルキル−ピロリドンを含有している形態が好ましい。例えば、N−アルキル−ピロリドンと、上記溶剤から選ばれる1種乃至は2種以上との組み合わせは好ましい形態である。
特に好ましいものは、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジカプリルなどの炭酸ジエステルを含むもの、N−アルキル−2−ピロリドンとベンジルアルコールを組み合わせたものであり、中でもN−メチル−2−ピロリドンとベンジルアルコールの組み合わせが特に好ましい。かかる成分の好ましい含有量は、総量で0.5〜6質量%であり、より好ましくは1〜3質量%である。また、N−アルキル−2−ピロリドンとベンジルアルコールを組み合わせにおいては、その質量比はN−アルキル−2−ピロリドン:ベンジルアルコール=1:9〜9:1が好ましく、1:4〜4:1が特に好ましい。また、かかる溶剤の質量は、抗真菌剤の総質量に対して、70%〜600%であることが好ましい。これは少なすぎると抗真菌剤を溶解できないためである。
【0016】
<5>本発明の医薬組成物の好ましい成分である非イオン界面活性剤
本発明の医薬組成物は、前記の必須成分以外に、非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。かかる非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンのエステルの構造を取るものが好ましく、基剤と同程度のペースト状のものが好ましい。また、HLB10以上の親水性の界面活性剤であることが好ましい。具体的にはオキシエチレンの付加モル数が14以上のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オキシエチレンの付加モル数が20以上のソルビタン脂肪酸エステル等が好適に例示できる。かかる非イオン界面活性剤は唯一種を含有させることも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。これらの非イオン界面活性剤の好ましい含有量は、総量で医薬組成物全量に対して、0.5〜6質量%であることが好ましく、1.5〜3.5質量%であることが特に好ましい。また、かかる非イオン界面活性剤の含有量は、前記溶剤の総量を上回ることが好ましい。
【0017】
<6>本発明の医薬組成物
本発明の医薬組成物は、前記必須成分を含有し、通常には、1気圧25℃でペースト状であり、一相の状態を呈することを特徴とする。ここで、一相の状態とは、製剤を取り、顕微鏡下観察した場合、液滴を明瞭に観察し得ないことを意味する。本発明の医薬組成物では、前記必須成分以外に、溶剤類や、抗酸化剤、キレート剤、pH調整剤、紫外線吸収剤などの成分安定化の為の任意成分を含有することが出来る。好ましい形態の医薬組成物においては、抗真菌剤として、一般式(1)に表される化合物及び/又はその塩を選択した場合、安定剤として、pH調整剤を含有することが特に好ましい。pH調整剤としては、有機酸が好ましく、より好ましくは乳酸、グリコール酸、グルコン酸などのα−ヒドロキシ酸が例示できる。中でも乳酸が特に好ましい。かかるpH調整剤は、抗真菌剤の含有量に対して1〜10質量%であることが好ましい。又、安定剤としては、抗酸化成分、キレート剤が特に好ましく例示でき、抗酸化剤としては、BHT、BHA、トコフェロール、アスコルビン酸及びその誘導体などが好適に例示でき、キレート剤としてはエデト酸、フィチン酸、ペンテト酸などが好ましく例示できる。溶剤類は、医薬組成物に通常用いられるものを使用できる。
【0018】
本発明の医薬組成物は、常法に従って製造することが出来る。上記必須成分及び任意成分は、市販のものを用いることができ、又は常法により合成したものを用いることができ
る。例えば、好適な形態である、抗真菌医薬組成物においては、疎水性軟膏基剤を90〜99℃で加熱溶解する。疎水性軟膏基剤、抗真菌剤以外の成分を同様に90〜99℃で加熱溶解し、これに抗真菌剤を加えて溶解させた後、これを溶解した疎水性軟膏基剤に攪拌下徐々に加え、室温まで攪拌冷却し、ペースト状の医薬組成物とする様な方法で製造できる。その他の、抗炎症剤、ステロイド剤、鎮痛解熱剤などを有効成分とする医薬組成物においても同様に取り扱うことが出来る。この様に作製される本発明の医薬組成物は、第16改正日本薬局方に言う「油脂性軟膏」に分類される製剤であることが好ましい。かかる製剤は、油性基剤に有効成分を溶解又は分散させた半固形製剤を意味する。この様な製剤はクリーム製剤と異なり、水とのエマルションを形成していない。水とのエマルションを形成していないことが、角層内動態をクリーム製剤と大きく異なるものにしている。
【0019】
斯くして得られた医薬組成物は、経皮的に投与した場合、皮膚上に貯留し、徐々に角層内に抗真菌剤を放出し、角層内における抗真菌剤の濃度を有効濃度に長時間保つことが出来る。
本発明の医薬組成物は、真菌による疾病の治療又は悪化の予防に用いることが好ましい。真菌による疾病としては、水虫のような足部白癬症、カンジダ、デンプウのような体部白癬症、爪白癬のようなハードケラチン部分の白癬症が例示でき、その角層への効果が顕著なことから、足部白癬症、カンジダ、デンプウのような体部白癬症などのソフトケラチン部分、言い換えれば角層の明確な部分の処置に用いることが特に好ましい。本発明の医薬組成物の効果は皮膚に特に好適に発現されるが、爪や角質増殖部の真菌症にも及ぶので、本発明の構成を充足する爪や角質増殖部の真菌症に対する医薬組成物も本発明の技術的範囲に属する。
【0020】
その使用態様は、患者の体重、年令、性別、症状等を考慮して適宜選択できるが、通常成人の場合、ルリコナゾール等を1日当たり0.01〜1g投与するのが好ましい。また、真菌による疾病に通常使用されているルリコナゾール等の使用量を参考にすることができる。
例えば、一日に一回又は数回、疾病の箇所に適量を塗布することが例示でき、かかる処置は連日行われることが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
以下の処方に従って、本発明の医薬組成物である軟膏を作製した。即ち、イ、ロの成分をそれぞれ95℃で攪拌溶解した。ロの成分にハの成分を加え可溶化を確認した後、攪拌下イに徐々に加え、攪拌冷却し、本発明の医薬組成物である、軟膏を得た。このものは顕微鏡下の観察において液滴を観察せず(検出限度1ナノメートル)、また、50℃で48時間保存しても液層の分離が見られず、可溶化剤形であることが明らかになった。また、後述のとおり、角層内における抗真菌剤の動態もクリーム剤に近似したものであり、本発明の効果が確認された。
【0022】
【表1】
【0023】
<比較例1>
以下の処方に従って、実施例1の医薬組成物の処方の一部を置き換え、比較例1を作製した。この製剤は液滴が顕微鏡下の観察で確認され、液滴分散型の軟膏であることが明らかになった。後述のとおり、このものの角層内の薬物動態は、初期値が低く、クリームの挙動とは著しく異なっていた。
【0024】
【表2】
【0025】
<角層内濃度変化>
豚の耳を用いて、角層内の抗真菌剤の濃度を測定した。即ち、直径2.5cmの円状の部
位を作製し、検体25μLを投与し、投与後6時間、24時間にテープストリッピングにより角層を採取し、メタノールで抽出し、高速液体クロマトグラフィータンデム型質量分析計(装置名:UPLC-MS/MSシステムACQUITY TQD;販売社名:日本ウォーターズ株式会社)
で抗真菌剤量を定量し、皮膚単位面積あたり(/cm
2あたり)の角層内濃度を計測した
。結果を表3に示す。可溶化剤形となることにより、クリームに近い、初期値も高く、24時間後の維持量も多い、挙動を示すことが判る。
【0026】
【表3】
【0027】
<実施例2>
以下の処方に従って、実施例1と同様に、本発明の医薬組成物を作製した。このものは可溶化剤形の軟膏であった。
【0028】
【表4】
【0029】
<実施例3>
以下の処方に従って、実施例1と同様に、本発明の医薬組成物を作製した。このものは可溶化剤形の軟膏であった。
【0030】
【表5】
【0031】
<実施例4>
以下に示す処方に従って、実施例1と同様に操作して、本発明の医薬組成物を作製した
。このものは可溶化剤形であった。また、投与後6時間の値は1.1μg/cm
2であり、24時間値は0.8μg/cm
2であった。
【0032】
【表6】
【0033】
<実施例5>
以下に示す処方に従って、実施例1と同様に操作して、本発明の医薬組成物を作製した
。このものは可溶化剤形であった。また、投与後6時間の値は0.9μg/cm
2であり、24時間値は0.5μg/cm
2であった。
【0034】
【表7】
【0035】
<実施例6>
以下に示す処方に従って、実施例1と同様に操作して、本発明の医薬組成物を作製した
。このものは可溶化剤形であった。また、投与後6時間の値は0.6μg/cm
2であり、24時間値は0.4μg/cm
2であった。
【0036】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、医薬製剤に応用できる。