特許第5662546号(P5662546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5662546
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】溶接形鋼の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20150108BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20150108BHJP
   B21C 37/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   B23K26/21 E
   B23K26/70
   B21C37/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-235989(P2013-235989)
(22)【出願日】2013年11月14日
【審査請求日】2014年5月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】桜田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】家成 徹
(72)【発明者】
【氏名】朝田 博
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−138573(JP,A)
【文献】 特開2011−083781(JP,A)
【文献】 特開2009−119485(JP,A)
【文献】 特開平10−128560(JP,A)
【文献】 特開平09−192887(JP,A)
【文献】 特開2002−361466(JP,A)
【文献】 特開2007−190589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70,
B21C 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された2枚のフランジ材の間に、両フランジ材に対して直角に1枚のウェブ材を突き合わせた状態で、これらのフランジ材およびウェブ材を搬送する板材搬送装置と、
前記板材搬送装置による、前記フランジ材および前記ウェブ材の搬送経路上で、前記ウェブ材のそれぞれの端部を前記2枚のフランジ材にそれぞれ突き合せた部分をレーザ溶接にて溶接接合するレーザ溶接装置と、
を備える溶接形鋼の製造装置において、
溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の一方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第1面側ローラと、
溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の他方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第2面側ローラと、
を有し、前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラにより、少なくとも溶接点の搬送方向位置を含む搬送方向所定範囲に亘って前記ウェブ材を挟持するウェブ材挟持装置が、前記板材搬送装置に含まれており、
前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラのフランジ材に対向する側端部が、それぞれ、溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界に沿って配置されている
ことを特徴とする溶接形鋼の製造装置。
【請求項2】
互いに平行に配置された2枚のフランジ材の間に、両フランジ材に対して直角に1枚のウェブ材を突き合わせた状態で、これらのフランジ材およびウェブ材を搬送する板材搬送装置と、
前記板材搬送装置による、前記フランジ材および前記ウェブ材の搬送経路上で、前記ウェブ材のそれぞれの端部を前記2枚のフランジ材にそれぞれ突き合せた部分をレーザ溶接にて溶接接合するレーザ溶接装置と、
を備える溶接形鋼の製造装置において、
溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の一方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第1面側ローラと、
溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の他方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第2面側ローラと、
を有し、前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラにより、少なくとも溶接点の搬送方向位置を含む搬送方向所定範囲に亘って前記ウェブ材を挟持するウェブ材挟持装置が、前記板材搬送装置に含まれており、
前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラのフランジ材に対向する側端部が、それぞれ、溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界に沿って配置されている
ことを特徴とする溶接形鋼の製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の溶接形鋼の製造装置において、
前記レーザ溶接装置は、前記ウェブ材の一方の端部を一方のフランジ材に突き合せた部分をレーザ溶接する第1のレーザヘッドと、前記ウェブ材の他方の端部を他方のフランジ材に突き合せた部分をレーザ溶接する第2のレーザヘッドとを有しており、
第1のレーザヘッドから照射されるレーザにより形成される溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界と、第2のレーザヘッドから照射されるレーザにより形成される溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界とが、ウェブ材の中心線に関して非対称となるように、第1のレーザヘッドおよび第2のレーザヘッドが配置されている、
ことを特徴とする溶接形鋼の製造装置。
【請求項4】
請求項2に記載の溶接形鋼の製造装置において、
前記レーザ溶接装置は、前記ウェブ材の一方の端部を一方のフランジ材に突き合せた部分をレーザ溶接する第1のレーザヘッドと、前記ウェブ材の他方の端部を他方のフランジ材に突き合せた部分をレーザ溶接する第2のレーザヘッドとを有しており、
第1のレーザヘッドから照射されるレーザにより形成される溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界と、第2のレーザヘッドから照射されるレーザにより形成される溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界とが、ウェブ材の中心線に関して非対称となるように、第1のレーザヘッドおよび第2のレーザヘッドが配置されている、
ことを特徴とする溶接形鋼の製造装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の溶接形鋼の製造装置において、
前記ウェブ材挟持装置は、
前記ウェブ材の一方の面側に、同ウェブ材の中心線に沿って配設され、その両側に前記複数の第1面側ローラを支持する第1の支持フレームと、
前記ウェブ材の他方の面側に、同ウェブ材の中心線に沿って配設され、その両側に前記複数の第2面側ローラを支持する第2の支持フレームと、
を有することを特徴とする溶接形鋼の製造装置。
【請求項6】
互いに平行に配置された2枚のフランジ材の間に、両フランジ材に対して直角に1枚のウェブ材を突き合わせた状態で、これらのフランジ材およびウェブ材を搬送しつつ、前記フランジ材および前記ウェブ材の搬送経路上で、前記ウェブ材のそれぞれの端部を前記2枚のフランジ材にそれぞれ突き合せた部分をレーザ溶接にて溶接接合することにより溶接形鋼を製造する、溶接形鋼の製造方法において、
溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の一方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第1面側ローラと、溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の他方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第2面側ローラと、により、少なくとも溶接点の搬送方向位置を含む搬送方向所定範囲に亘って前記ウェブ材を挟持しながら、前記溶接接合を行う溶接形鋼の製造方法であって、
前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラのフランジ材に対向する側端部が、それぞれ、溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界に沿って配置されている
ことを特徴とする溶接形鋼の製造方法。
【請求項7】
互いに平行に配置された2枚のフランジ材の間に、両フランジ材に対して直角に1枚のウェブ材を突き合わせた状態で、これらのフランジ材およびウェブ材を搬送しつつ、前記フランジ材および前記ウェブ材の搬送経路上で、前記ウェブ材のそれぞれの端部を前記2枚のフランジ材にそれぞれ突き合せた部分をレーザ溶接にて溶接接合することにより溶接形鋼を製造する、溶接形鋼の製造方法において、
溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の一方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第1面側ローラと、溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の他方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第2面側ローラと、により、少なくとも溶接点の搬送方向位置を含む搬送方向所定範囲に亘って前記ウェブ材を挟持しながら、前記溶接接合を行う溶接形鋼の製造方法であって、
前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラのフランジ材に対向する側端部が、それぞれ、溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界に沿って配置されている
ことを特徴とする溶接形鋼の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の溶接形鋼の製造方法において、
前記レーザ溶接は、前記ウェブ材の一方の端部を一方のフランジ材に突き合せた部分に形成される溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界と、前記ウェブ材の他方の端部を他方のフランジ材に突き合せた部分に形成される溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界とが、ウェブ材の中心線に関して非対称となるように行われるものである、
ことを特徴とする溶接形鋼の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の溶接形鋼の製造方法において、
前記レーザ溶接は、前記ウェブ材の一方の端部を一方のフランジ材に突き合せた部分に形成される溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界と、前記ウェブ材の他方の端部を他方のフランジ材に突き合せた部分に形成される溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界とが、ウェブ材の中心線に関して非対称となるように行われるものである、
ことを特徴とする溶接形鋼の製造方法。
【請求項10】
請求項6〜9の何れか1項に記載の溶接形鋼の製造方法において、
前記複数の第1面側ローラは、前記ウェブ材の一方の面側に、同ウェブ材の中心線に沿って配設された第1の支持フレームの両側に支持されたものであり、
前記複数の第2面側ローラは、前記ウェブ材の他方の面側に、同ウェブ材の中心線に沿って配設された第2の支持フレームの両側に支持されたものである
ことを特徴とする溶接形鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を熱源としたレーザ溶接によってウェブ材とフランジ材を溶接接合して溶接形鋼を製造する溶接形鋼の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接によってウェブ材とフランジ材を溶接接合して溶接H形鋼を製造する方法が特許文献1,2に開示されている。これらの文献に開示されている溶接H形鋼の製造方法では、H形に配置された状態で供給される2枚のフランジ材と1枚のウェブ材とが所定の溶接位置においてレーザ溶接により溶接接合される。
【0003】
レーザ溶接を用いてフランジ材とウェブ材とを溶接接合する場合、レーザの照射位置が定まっており、そのレーザのビームスポットの直径が約0.6mmと微小なことから、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置を厳密に定めることが必要となる。供給されるウェブ材に反りがあったり、フランジ材に対する傾きがあれば、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置が適切な位置からずれてしまう。そうなると、レーザ照射による母材の溶け込み量不足が発生して十分な接合強度が得られなくなるおそれがある。また、出来上がった製品に形状不良ないし寸法不良が発生するおそれもある。したがって、レーザ溶接を用いてフランジ材とウェブ材とを溶接接合する場合、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置を適切な位置から変動させないようにすることが必要である。
【0004】
ところで、特許文献3には、コイルから巻き戻した3枚の板材をH形に配置して高周波抵抗溶接にて溶接接合するための装置が開示されている。この装置は、ウェブ材の両面を支持する支持装置を備えている。この支持装置は、ライン方向に搬送されるウェブ材の移動に従動して回転する無限軌道で構成されており、同文献3によれば、この支持装置によって、溶接部でのウェブ材の板厚方向への逃げを完全に拘束、保持でき、溶接不良を防止できると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5110642号公報
【特許文献2】特開2011−83781号公報
【特許文献3】特公平3−4316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザ溶接によってウェブ材とフランジ材とを溶接接合して溶接H形鋼を製造する工程において、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置を適切な位置から変動させないように、特許文献3の無限軌道からなる支持装置を採用することが考えられる。
【0007】
しかしながら、溶接点近傍では、溶接点から飛散するスパッタの量が多く、また、溶接点から受ける熱影響が大きいため、実際に特許文献3の支持装置を採用する場合、無限軌道を金属等で構成してウェブ材の幅方向中央位置に配置し、その軌道幅を狭くして溶接点からの距離を一定以上確保する必要がある。
【0008】
ところが、無限軌道をウェブ材の幅方向中央位置に配置し、その軌道幅を狭くすれば、その分、ウェブ材のフランジ材に対する傾きを矯正することが難しくなり、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置が適切な位置から変動する可能性が高まる。
【0009】
そこで、本発明は、レーザ溶接点から飛散するスパッタが付着しにくく、レーザ溶接点からの熱影響を受けにくい場所でウェブ材を挟持しつつ、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置が適切な位置から変動しないように挟持することが容易に実現可能となる溶接形鋼の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の溶接形鋼の製造装置は、互いに平行に配置された2枚のフランジ材の間に、両フランジ材に対して直角に1枚のウェブ材を突き合わせた状態で、これらのフランジ材およびウェブ材を搬送する板材搬送装置と、前記板材搬送装置による、前記フランジ材および前記ウェブ材の搬送経路上で、前記ウェブ材のそれぞれの端部を前記2枚のフランジ材にそれぞれ突き合せた部分をレーザ溶接にて溶接接合するレーザ溶接装置と、を備えるものを前提とする。前記板材搬送装置には、ウェブ材挟持装置が含まれており、このウェブ材挟持装置は、溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の一方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第1面側ローラと、溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の他方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第2面側ローラと、を有し、前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラにより、少なくとも溶接点の搬送方向位置を含む搬送方向所定範囲に亘って前記ウェブ材を挟持する。また、前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラのフランジ材に対向する側端部が、それぞれ、溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界に沿って配置されている。
【0011】
かかる構成を備える溶接形鋼の製造装置は、ウェブ材を上下複数のローラで挟持することで、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置が適切な位置から変動しないように支持する。ローラは、無限軌道と異なり、各ローラのウェブ材との接触長さを個別に選定することができ、各ローラの取付位置を個別に定めることができる。このため、レーザ溶接点から飛散するスパッタが付着し易い搬送方向位置や溶接点からの熱影響を受けやすい搬送方向位置では、溶接点から遠ざけてウェブ材の中心線寄りにローラを配置でき、また、レーザ溶接点から飛散するスパッタが付着し難い搬送方向位置や溶接点からの熱影響を受けにくい搬送方向位置では、できるだけウェブ材の側端部近くを挟持するようにローラを配置することが可能となる。その結果、溶接点から飛散するスパッタが付着しにくく、溶接点からの熱影響を受けにくい場所にローラを配置しつつも、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置が適切な位置から変動しないようにローラで挟持することが容易に実現可能となる。また、例えば前記所定値を0とすることで、何れのローラにもスパッタを殆ど付着させることなく、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置が適切な位置から変動しないように挟持することが容易に実現可能となる。
【0012】
その他の本発明の溶接形鋼の製造装置は、互いに平行に配置された2枚のフランジ材の間に、両フランジ材に対して直角に1枚のウェブ材を突き合わせた状態で、これらのフランジ材およびウェブ材を搬送する板材搬送装置と、前記板材搬送装置による、前記フランジ材および前記ウェブ材の搬送経路上で、前記ウェブ材のそれぞれの端部を前記2枚のフランジ材にそれぞれ突き合せた部分をレーザ溶接にて溶接接合するレーザ溶接装置と、を備えるものを前提とする。前記板材搬送装置には、ウェブ材挟持装置が含まれており、このウェブ材挟持装置は、溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の一方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第1面側ローラと、溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の他方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第2面側ローラと、を有し、前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラにより、少なくとも溶接点の搬送方向位置を含む搬送方向所定範囲に亘って前記ウェブ材を挟持する。また、前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラのフランジ材に対向する側端部が、それぞれ、溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界に沿って配置されている。
【0013】
前記レーザ溶接装置は、前記ウェブ材の一方の端部を一方のフランジ材に突き合せた部分をレーザ溶接する第1のレーザヘッドと、前記ウェブ材の他方の端部を他方のフランジ材に突き合せた部分をレーザ溶接する第2のレーザヘッドとを有するものとし、第1のレーザヘッドから照射されるレーザにより形成される溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界と、第2のレーザヘッドから照射されるレーザにより形成される溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界とが、ウェブ材の中心線に関して非対称となるように、第1のレーザヘッドおよび第2のレーザヘッドが配置されている、ものとしてもよい。
あるいは、前記レーザ溶接装置は、前記ウェブ材の一方の端部を一方のフランジ材に突き合せた部分をレーザ溶接する第1のレーザヘッドと、前記ウェブ材の他方の端部を他方のフランジ材に突き合せた部分をレーザ溶接する第2のレーザヘッドとを有するものとし、第1のレーザヘッドから照射されるレーザにより形成される溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界と、第2のレーザヘッドから照射されるレーザにより形成される溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界とが、ウェブ材の中心線に関して非対称となるように、第1のレーザヘッドおよび第2のレーザヘッドが配置されている、ものとしてもよい。
【0014】
前記ウェブ材挟持装置は、前記ウェブ材の一方の面側に、同ウェブ材の中心線に沿って配設され、その両側に前記複数の第1面側ローラを支持する第1の支持フレームと、前記ウェブ材の他方の面側に、同ウェブ材の中心線に沿って配設され、その両側に前記複数の第2面側ローラを支持する第2の支持フレームと、を有するものであることが望ましい。
【0015】
本発明の溶接形鋼の製造方法は、互いに平行に配置された2枚のフランジ材の間に、両フランジ材に対して直角に1枚のウェブ材を突き合わせた状態で、これらのフランジ材およびウェブ材を搬送しつつ、前記フランジ材および前記ウェブ材の搬送経路上で、前記ウェブ材のそれぞれの端部を前記2枚のフランジ材にそれぞれ突き合せた部分をレーザ溶接にて溶接接合することにより溶接形鋼を製造する、溶接形鋼の製造方法において、溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の一方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第1面側ローラと、溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の他方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第2面側ローラと、により、少なくとも溶接点の搬送方向位置を含む搬送方向所定範囲に亘って前記ウェブ材を挟持しながら、前記溶接接合を行うものであって、前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラのフランジ材に対向する側端部が、それぞれ、溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界に沿って配置されている。
その他の本発明の溶接形鋼の製造方法は、互いに平行に配置された2枚のフランジ材の間に、両フランジ材に対して直角に1枚のウェブ材を突き合わせた状態で、これらのフランジ材およびウェブ材を搬送しつつ、前記フランジ材および前記ウェブ材の搬送経路上で、前記ウェブ材のそれぞれの端部を前記2枚のフランジ材にそれぞれ突き合せた部分をレーザ溶接にて溶接接合することにより溶接形鋼を製造する、溶接形鋼の製造方法において、溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の一方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第1面側ローラと、溶接点に照射されるレーザを遮らない位置で、前記ウェブ材の他方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第2面側ローラと、により、少なくとも溶接点の搬送方向位置を含む搬送方向所定範囲に亘って前記ウェブ材を挟持しながら、前記溶接接合を行うものであって、前記複数の第1面側ローラおよび前記複数の第2面側ローラのフランジ材に対向する側端部が、それぞれ、溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界に沿って配置されている。
【0016】
前記レーザ溶接は、前記ウェブ材の一方の端部を一方のフランジ材に突き合せた部分に形成される溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界と、前記ウェブ材の他方の端部を他方のフランジ材に突き合せた部分に形成される溶接点からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界とが、ウェブ材の中心線に関して非対称となるように行われるものとしてもよい。
あるいは、前記レーザ溶接は、前記ウェブ材の一方の端部を一方のフランジ材に突き合せた部分に形成される溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界と、前記ウェブ材の他方の端部を他方のフランジ材に突き合せた部分に形成される溶接点から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界とが、ウェブ材の中心線に関して非対称となるように行われるものとしてもよい。
【0017】
上記溶接形鋼の製造方法において、前記複数の第1面側ローラは、前記ウェブ材の一方の面側に、同ウェブ材の中心線に沿って配設された第1の支持フレームの両側に支持されたものであり、前記複数の第2面側ローラは、前記ウェブ材の他方の面側に、同ウェブ材の中心線に沿って配設された第2の支持フレームの両側に支持されたものである、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レーザ溶接点から飛散するスパッタが付着しにくく、レーザ溶接点からの熱影響を受けにくい場所でウェブ材を挟持しつつ、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置が適切な位置から変動しないように挟持することが容易に実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】溶接形鋼の製造装置をフランジ材およびウェブ材の搬送方向(以下単に「搬送方向」ともいう。)の左手側から視た図である。但し、搬送方向における左手側のフランジ材およびこのフランジ材より左側に存在する物については図示を省略している。
図2】上側のローラ式ウェブ材挟持装置、上側のベルト式ウェブ材挟持装置等を示す平面図である。ここで「上側」とは、図1においてウェブ材4よりレーザ溶接装置200側のことを意味する。
図3】下側のローラ式ウェブ材挟持装置、下側のベルト式ウェブ材挟持装置等を示す底面図である。ここで「下側」とは、ウェブ材4に対し、上記「上側」と反対側を意味する。
図4】ベルト式駆動装置を示す平面図である。
図5図1のA−B−C−D断面図である。但し、ガイドロール等の図示は省略している。
図6図1のE−E断面図である。
図7】第1面側ローラの第1の支持フレームへの支持構造の例を示す断面図である。
図8】(a)はレーザヘッド、ウェブ材等を搬送方向における左手側から視た図である。(b)はレーザヘッド、ウェブ材、フランジ材等を示す平面図である。
図9】ベルト式ウェブ材挟持装置、ローラ式ウェブ材挟持装置、ガイドロール等を支持する装置フレーム等の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る溶接形鋼の製造装置と、この装置を使用して実施される溶接形鋼の製造方法について説明する。本実施形態では、予め裁断等により所定寸法に形成され、断面H形に配置されて供給される3枚の鋼板からH形鋼を製造する場合について説明する。なお、以下では、フランジ材2,3およびウェブ材4の搬送方向を単に「搬送方向」といい、搬送方向下流側および搬送方向上流側をそれぞれ単に「下流側」、「上流側」という。
【0021】
図1図4に示すように、溶接形鋼の製造装置1は、主に板材搬送装置100およびレーザ溶接装置200で構成されている。
【0022】
板材搬送装置100は、ベルト式駆動装置10、ベルト式ウェブ材挟持装置20、ローラ式ウェブ材挟持装置30などで構成されている。
【0023】
ベルト式駆動装置10は、図4に示すように、搬送方向の前後に対をなす駆動輪11および従動輪12と、これら両輪11,12の間で並んで配設された複数の補助輪13と、補助輪13を回転可能に支持するフレーム14と、各輪11〜13の外側に巻回された樹脂製の無端ベルト15とを備えている。無端ベルト15には、内歯が形成されており、この内歯に各輪11〜13に形成された外歯が噛み合っている。
【0024】
このベルト式駆動装置10は、フランジ材2,3およびウェブ材4の搬送経路を挟んで両側にそれぞれ1台ずつ設置されている。H形に配置されたフランジ材2,3およびウェブ材4のうち、フランジ材2,3のウェブ材4とは反対側の面に無端ベルト15がそれぞれ押し付けられる。無端ベルト15は、図4において、その近傍に記した矢印が示す方向へ回転し、2枚のフランジ材2,3およびこれらの間に挟まれたウェブ材4を矢印8の示す方向へ搬送する。製造するH形鋼のサイズに対応すべく、2台のベルト式駆動装置10の無端ベルト15同士の離間距離は調整可能となっている。なお、図1に示すように、無端ベルト15の搬送方向に前後して上下にそれぞれガイドロール16が設けられており、上下のガイドロール16によってフランジ2,3の上下位置が固定されている。
【0025】
このベルト式駆動装置10は、図示しないが、後述するローラ式ウェブ材挟持装置30より下流側にもH形鋼の搬送経路を挟んで2台設置されている。
【0026】
ベルト式ウェブ材挟持装置20は、図1および図5に示すように、搬送方向の前後に配設された2本のローラ21と、2本のローラ21に巻回された樹脂製の無端ベルトからなるウェブ材挟持ベルト22と、2本のローラ21間に配設されてウェブ材挟持ベルト22を裏側から支持する支持板23と、支持フレーム24(図5参照)とを備えている。支持フレーム24には、2本のローラ21が回転自在に支持されており、支持板23も支持フレーム24に支持されている。
【0027】
このベルト式ウェブ材挟持装置20は、ウェブ材4の両面側(ウェブ材4の上下)にそれぞれ1台ずつ設置されており、2台のベルト式ウェブ材挟持装置20の各ウェブ材挟持ベルト22によってウェブ材4を板厚方向に挟持する。2本のローラ21が従動ローラであるため、ウェブ材挟持ベルト22は、2枚のフランジ材2,3間に挟まれて搬送されるウェブ材4に従動して2本のローラ21の周囲を回転する。なお、製造するH形鋼のサイズに対応すべく、上側のウェブ材挟持ベルト22の高さ位置は調整可能となっている。以下、ウェブ材4の上面側(一方の面側)に配置されるウェブ材挟持ベルト22を上面側ウェブ材挟持ベルト22Aといい、ウェブ材4の下面側(他方の面側)に配置されるウェブ材挟持ベルト22を下面側ウェブ材挟持ベルト22Bという。
【0028】
下面側ウェブ材挟持ベルト22Bの下流側端部は、図1の拡大図に示すように、カバー26で覆われている。このカバー26は、下流側にある溶接点から飛んでくるスパッタや、溶接点から飛散して何処かの部材に跳ね返って飛んでくるスパッタを遮蔽する形状とされており、金属製などの耐熱性を有するものが採用される。カバー26によって、十分に樹脂製のベルト22Bを飛散するスパッタの熱から保護することができる。下面側ウェブ材挟持ベルト22Bが上面側ウェブ材挟持ベルト22Aよりも下流側に延長されている理由は、後に説明する。なお、必要に応じて、上面側ウェブ材挟持ベルト22Aの下流側端部をカバーにより覆ってもよい。
【0029】
ローラ式ウェブ材挟持装置30は、図1図3および図6に示すように、ウェブ材4の上面(一方の面)に沿って搬送方向に転動する複数のローラ31(以下「第1面側ローラ31」という。)と、ウェブ材4の下面(他方の面)に沿って搬送方向に転動する複数のローラ32(以下「第2面側ローラ32」という。)と、第1面側ローラ31を支持する第1の支持フレーム33と、第2面側ローラ32を支持する第2の支持フレーム34と、を備えている。第1の支持フレーム33は、ウェブ材4の中心線7に沿って所定長さで搬送方向に延在しており、その両側に搬送方向に間隔をおいて複数の第1面側ローラ31を支持している。第2の支持フレーム34も、ウェブ材4の中心線7に沿って所定長さ(本実施形態では第1の支持フレーム33より短い長さ)で搬送方向に延在しており、その両側に搬送方向に間隔をおいて複数の第2面側ローラ32を支持している。上記ローラ31,32、支持フレーム33,34は、溶接点5,6に照射されるレーザを遮らない位置に配設されている。上記ローラ31,32、支持フレーム33,34には、例えば金属製など、耐熱性を有する材料が採用される。
【0030】
ローラ式ウェブ材挟持装置30は、上記複数の第1面側ローラ31および複数の第2面側ローラ32によって、少なくとも溶接点5,6の搬送方向位置を含む搬送方向所定範囲に亘ってウェブ材4を板厚方向に挟持する。また、溶接点5,6の搬送方向位置におけるウェブ材4のフランジ材2,3に対する傾きを極力抑えるために、溶接点5,6の搬送方向位置に、中心線7の両側で第1面側ローラ31Xと第2面側ローラ32Xが各面2個ずつ配設されている。
【0031】
第1面側ローラ31および第2面側ローラ32のフランジ材2,3に対向する側端部は、溶接点5,6からのスパッタの飛散量の度合いが所定値を超える領域の境界に沿って配置されている。スパッタの飛散量の度合いは、例えば、所定溶接時間内にウェブ材4の上面又は下面に付着する単位面積当たりのスパッタの付着量(質量)とすることができる。本実施形態では、前記所定値が0の場合について説明を行う。つまり、第1面側ローラ31および第2面側ローラ32のフランジ材2,3に対向する側端部が、スパッタが飛散する領域203,204の境界に沿って配置される場合について説明する。なお、スパッタが飛散してこない搬送方向位置に配置されたローラ31,32は、図2および図3に示すように、ウェブ材4の側端部にできるだけ近い位置に配置され、ウェブ材4のフランジ材2,3に対する傾斜を極力抑制するようにしている。
【0032】
図7(a)に、第1面側ローラ31の支持構造の一例を示す。第1面側ローラ31には、ボールベアリングが採用され、支持フレーム33には、搬送方向に直交する水平方向にシャフト36が貫通している。このシャフト36には、4個の第1面側ローラ31A〜31Dが間隔をおいて嵌着されている。ローラ31Aとローラ31Bとの間、および、ローラ31Cとローラ31Dとの間には、シャフト36に円筒状のカラー37が嵌着されている。また、第1の支持フレーム33の側面とローラ31Bとの間、および第1の支持フレーム33の側面とローラ31Cとの間には、シャフト36に短円筒状のカラー38が嵌着されている。そして、各ローラ31A〜31Dの第1の支持フレーム33に対する軸方向位置を固定するために、シャフト36の各所定位置に設けられた周溝にスナップリング39が嵌着されている。なお、図7(b)に示すように、上記カラー37に代えて複数の第1面側ローラ31を並設してもよい。この図7(b)に示す例は、ローラ31のウェブ材4との接触長さが図7(a)に示す例の4倍となっている。
【0033】
第2面側ローラ32の支持構造については詳述しないが、上記第1面側ローラ31の支持構造と同様にして構成することができる。
【0034】
本実施形態では、図1に示すように、第1の支持フレーム33の上流側端部は、第2の支持フレーム34の上流側端部よりも所定長さ上流側に延長されており、その延長部35にも上流側ローラ31が配設されている。一方、ベルト式ウェブ材挟持装置20の下面側ウェブ材挟持ベルト22Bの下流側端部は、上面側ウェブ材挟持ベルト22Aの下流側端部よりも所定長さ下流側に延長されており、その延長部25と第1の支持フレーム33の延長部35に配設された上流側ローラ31とで、ウェブ材4を板厚方向に挟持するようになっている。ウェブ材4の下面側では、ウェブ材4の上面側と比較して、スパッタが下方に落下することにより、スパッタの飛散領域が狭くなるため、下面側ウェブ材挟持ベルト22Bの搬送方向下流側端部を前述したカバー26で覆うことで、下面側ウェブ材挟持ベルト22Bを上面側ウェブ材挟持ベルト22Aよりも溶接点5,6に近い位置まで延長することができる。線接触にてウェブ材4を支持するローラ32に比べ、面接触にてウェブ材4を支持するウェブ材挟持ベルト22Bの方が、ウェブ材4の表面に疵を付けにくいので、このように、構成することで、H形鋼の品質を向上することができる場合がある。なお、第1の支持フレーム33の上流側端部と、第2の支持フレーム34の上流側端部の搬送方向位置を一致させても構わないし、また、上面側ウェブ材挟持ベルト22Aの下流側端部と、下面側ウェブ材挟持ベルト22Bの下流側端部を一致させても構わない。上面側ウェブ材挟持ベルト22Aの下流側端部および下面側ウェブ材挟持ベルト22Bの下流側端部の何れか一方または双方に、適宜、カバー26を設置してもよい。
【0035】
図2および図3に示すように、溶接点5,6近傍では、フランジ材2,3のウェブ材4とは反対側の面を両側から押圧する一対のスクイズロール61,62が設置されている。このスクイズロール61,62は、製造するH形鋼のサイズに対応すべく、互いの離間距離が調整可能となっている。
【0036】
レーザ溶接装置200は、板材搬送装置100によるフランジ材2,3およびウェブ材4の搬送経路上で、ウェブ材4のそれぞれの端部を2枚のフランジ材2,3にそれぞれ突き合せた部分をレーザ溶接にて溶接接合する。本実施形態では、レーザ溶接装置200は、ウェブ材4の上面側(片面側)に配置された2つのレーザヘッド201,202からレーザを照射する。2つのレーザヘッド201,202による溶接点5,6の搬送方向位置は一致しているが、レーザヘッド201,202同士の干渉を防ぐために、レーザの照射方向は相違させている。例えば図8に示すように、一方のフランジ材2とウェブ材4とを溶接接合する一方のレーザヘッド201によるレーザの照射方向は、ウェブ材4に向かって搬送方向下流側かつ一方のフランジ材2側に傾斜している。また、他方のフランジ材3とウェブ材4とを溶接接合する他方のレーザヘッド202によるレーザの照射方向は、ウェブ材4に向かって搬送方向上流側かつ他方のフランジ材3側に傾斜している。これにより、2つの溶接点5,6の搬送方向位置が一致していても、一方のレーザヘッド201による溶接点5からスパッタが飛散する領域203と、他方のレーザヘッド202による溶接点6からスパッタが飛散する領域204とがウェブ材4の中心線7に関して非対称となる。
【0037】
なお、2つのスパッタ飛散領域203,204がウェブ材4の中心線7に関して非対称となるような2つのレーザヘッド201,202の配置は上記に限定されない。例えば、2つの溶接点の搬送方向位置が同一であって、中心線7を含むウェブ材4の面に垂直な平面に関して2つのレーザヘッド201,202の配置が非対称であれば、2つのスパッタ飛散領域203,204はウェブ材4の中心線7に関して非対称となることが多い。また、2つの溶接点5,6の搬送方向位置が相違している場合も、2つのスパッタ飛散領域203,204はウェブ材4の中心線7に関して非対称となる。
【0038】
図9は、上記したベルト式ウェブ材挟持装置20、ローラ式ウェブ材挟持装置30、ガイドロール16等の支持構造の一例を示す概略図である。ウェブ材4の上側に設置されたベルト式ウェブ挟持装置20の支持フレーム24は、装置フレーム43,45にそれぞれ支持されており、しかも、上面側ウェブ材挟持ベルト22Aを含む部分の高さ調節が図示しないジャッキ機構等により可能となっている。ウェブ材4の下側に設置されたベルト式ウェブ挟持装置20の支持フレーム24は、装置フレーム42,44にそれぞれ支持されている。ローラ式ウェブ材挟持装置30の第1の支持フレーム33は、装置フレーム41,43に支持されており、しかも、第1の支持フレーム33の高さ調節が図示しないジャッキ機構等により可能となっている。ローラ式ウェブ材挟持装置30の第2の支持フレーム34は、装置フレーム41に支持されている。各ガイドロール16は、それぞれ装置フレーム41,43,44に回転自在に支持されている。特に、フランジ材2,3の上端部を抑える上側のガイドロール16は、高さ位置調整可能に装置フレーム41,43,44にそれぞれ支持されている。
【0039】
以上に説明した構成を備える溶接形鋼の製造装置1を使用して、H形鋼を製造するに当たっては、先ず、フランジ材2,3およびウェブ材4を断面H形に配置した状態でベルト式駆動装置10およびベルト式ウェブ材挟持装置20に対して上流側から供給するとともに、ベルト式駆動装置10の無端ベルト15を回転駆動させる。そうすると、ベルト式駆動装置10の無端ベルト15によって、フランジ材2,3およびウェブ材4が断面H形に配置された状態でローラ式ウェブ材挟持装置30側へ搬送される。
【0040】
フランジ材2,3およびウェブ材4がローラ式ウェブ材挟持装置30に到達すると、溶接点5,6の搬送方向前後で、第1面側ローラ31および第2面側ローラ32により、ウェブ材4が上下に挟持され、溶接点5,6近傍でスクイズロール61,62により、フランジ材2,3が左右に挟持される。そして、このように挟持された状態で、レーザ溶接装置200によって、ウェブ材4の両側端部が2枚のフランジ材2,3のそれぞれにレーザ溶接される。
【0041】
レーザ溶接されたフランジ材2,3およびウェブ材4は、ローラ式ウェブ材挟持装置30よりさらに下流側に搬送され、下流側に設置されたベルト式駆動装置によってさらに下流側に搬送され、所定の処置(例えば、溶接歪の矯正、すす取り等)が施される。
【0042】
以上に説明した本発明の実施の形態に係る溶接形鋼の製造装置1および製造方法によれば、ウェブ材4が上下複数のローラ31,32で挟持されることで、ウェブ材4のフランジ材2,3に対する突き合わせ位置が適切な位置から変動しないように支持される。各ローラのウェブ材との接触長さを個別に選定することができ、また、各ローラの取付位置を個別に定めることで、溶接点5,6から飛散するスパッタが付着し易い搬送方向位置や、溶接点5,6からの熱影響を受けやすい搬送方向位置では、溶接点5,6からウェブ材の中心線7寄りにローラ31,32を遠ざけて配置することができる。また、溶接点5,6から飛散するスパッタが付着し難い搬送方向位置や溶接点5,6からの熱影響を受けにくい搬送方向位置では、できるだけウェブ材4の側端部近くを挟持するようにローラ31,32を配置することが可能となる。これにより、溶接点5,6から飛散するスパッタが付着しにくく、溶接点5,6からの熱影響を受けにくい場所でウェブ材4をローラ31,32にて挟持しつつ、ウェブ材4のフランジ材2,3に対する突き合わせ位置が適切な位置から変動しないように挟持させることが容易に可能となる。ちなみに、従来例に係る無限軌道でウェブ材を挟持させた場合、このようなことは不可能である。
【0043】
また、本発明の実施の形態に係る溶接形鋼の製造装置1では、第1面側ローラ31および第2面側ローラ32のフランジ材2,3に対向する側端部が、スパッタの飛散領域203,204の境界に沿って配置されている。このため、溶接点5,6から飛散するスパッタが何れのローラ31,32にも殆ど付着させないようにしつつ、可能な限りウェブ材4の側端部に近い部分をローラ31,32で挟持させることができる。
【0044】
<他の実施形態>
既述の実施形態では、第1面側ローラ31および第2面側ローラ32のフランジ材2,3に対向する側端部が、溶接点5,6からのスパッタの飛散量の度合いが所定値(所定値=0)を超える領域の境界に沿って配置されていたが、前記境界に代えて、溶接点5,6から受ける熱影響の度合いが所定値を超える領域の境界に沿って第1面側ローラ31および第2面側ローラ32のフランジ材2,3に対向する側端部を配置してもよい。ここで、溶接点から受ける熱影響の度合いは、例えばレーザ溶接中にローラ31、32がその位置で所定時間当たりに熱源から受ける熱量とすることができる。例えば、前記熱影響の度合いが所定値を超える領域をローラ31,32がその許容温度を超える領域とすることができる。
【0045】
既述の実施形態では、上流側において、ベルト式ウェブ挟持装置20にてウェブ材4を挟持し、下流側において、ローラ式ウェブ材挟持装置30にてウェブ材4を挟持していたが、ベルト式ウェブ挟持装置20を省略して、上流側でも下流側でもローラ式ウェブ材挟持装置30のみでウェブ材4を挟持させることも可能である。
【0046】
また、図1では2つのレーザヘッド201,202が、ともにウェブ材4の上面側に配置されていたが、2つのレーザヘッドがウェブ材の互いに異なる面側に配置されていてもよい。
【0047】
図面において、第1面側ローラ31と第2面側ローラ32とは、何れも上から視た位置が一致しているが、第1面側ローラ31と第2面側ローラ32の上から視た位置は、相違していてもよい。
【0048】
既述の実施形態では、図7(a)、図7(b)に示したように、支持フレーム33に対して、シャフト36の軸方向位置が固定されたものとなっていたが、支持フレーム33に対して、シャフト36の軸方向位置を調整可能なものとしてもよい。例えば図7(c)に示すように、支持フレーム33に対して搬送方向に直交する水平方向に貫通したシャフト36に至るまで外部から雌ねじを有する孔52を形成し、この孔52にボルト51をねじ込んで、シャフト36の軸方向位置を固定可能としたものであってもよい。このようなものであれば、中心線7に関して非対称な位置に両ローラ31を配置する場合に便利である。なお、第2の支持フレーム34および第2面側ローラ32についても同様に構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、溶接H形鋼を製造するための製造装置および製造方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 溶接形鋼の製造装置
2 フランジ材
3 フランジ材
4 ウェブ材
5 溶接点
6 溶接点
7 ウェブ材の中心線
30 ローラ式ウェブ材挟持装置(ウェブ材挟持装置)
31 第1面側ローラ
32 第2面側ローラ
33 第1の支持フレーム
34 第2の支持フレーム
100 板材搬送装置
200 レーザ溶接装置
203 スパッタの飛散領域
204 スパッタの飛散領域
【要約】
【課題】レーザ溶接点から飛散するスパッタがウェブ材を挟持する部分に付着しにくく、レーザ溶接点からの熱影響を同部分が受けにくくしつつも、ウェブ材のフランジ材に対する突き合わせ位置が適切な位置から変動しないように挟持することが容易に実現可能となる。
【解決手段】ウェブ材4の両側端部を2枚のフランジ材2,3のそれぞれに溶接するレーザ溶接装置と、ローラ式ウェブ材挟持装置30を備える。ローラ式ウェブ材挟持装置は、ウェブ材の一方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第1面側ローラ31と、ウェブ材の他方の面に沿って転動する、搬送方向に間隔をおいて配設された複数の第2面側ローラ32と、を有し、複数の第1面側ローラ31および複数の第2面側ローラ32により、少なくとも溶接点の搬送方向位置を含む搬送方向所定範囲に亘ってウェブ材4を挟持する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9