(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5662548
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】アルデンテスパゲティの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 1/16 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
A23L1/16 E
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-257442(P2013-257442)
(22)【出願日】2013年11月27日
【審査請求日】2014年5月22日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513315215
【氏名又は名称】猪瀬 進弘
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 進弘
【審査官】
小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−032938(JP,A)
【文献】
実開昭58−189790(JP,U)
【文献】
特許第4070148(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/16−1/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥スパゲティを2分から3分間熱湯加熱し、湯切りし、流水で冷却し、水切りを行いオリーブオイルを散布し、19℃から21℃の室温で1時間から1時間30分放置し、その後品質保持のため冷凍する工程を含むことを特徴とするアルデンテスパゲティの製造方法。
【請求項2】
スパゲティ用ソースを調理し、調理後常温になるまで冷まし、請求項1の製造方法にて得られたアルデンテスパゲティ1人前分に、冷ましたスパゲティ用ソース1人前分を加え真空調理機で袋詰する電子レンジ用アルデンテスパゲティの製造方法。
【請求項3】
請求項1の製造方法にて得られたアルデンテスパゲティ1人前分を熱湯でほぐし、湯切りし、アルミパン又はフライパンでスパゲティ用ソースを1前分づつ作った沸騰寸前のソースに入れ強火で短時間調理する工程を含む、アルデンテスパゲティの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥スパゲティの熱湯加熱時間を最適化し、その後特別な処理をすることにより、その後の調理が短時間でできさらに美味しいアルデンテスパゲティを食すことのできるアルデンテスパゲティの製造方法(及びアルデンテスパゲティを使った料理方法)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパゲティを美味しいアルデンテで食すには、乾燥スパゲティを用いるのが好ましいが、茹で時間で長くかかりため簡便性やスピードを要求される飲食店等での提供の場には不向きであった。
【0003】
スパゲティを美味しいアルデンテ状態で提供するに当たり、簡便性やスピードを改善するためのいくつかの方法が試みられ、例えばスパゲティの麺に沿ってV溝を入れる方法、乾燥スパゲティを予めアルデンテ状態に茹でこれを急速冷凍する方法など提案されたが、どちらも美味しいアルデンテ状態でのスパゲティを提供する技術に至っていないのが現状である。
【0004】
電子レンジ加熱あるいは湯煎加熱などにより簡便に茹でたてのスパゲティが有するアルデンテ状態の食感を再現できるスパゲティの製造方法について、これまで種々の方法が提案されている。
例えば、乾燥スパゲティの表層部の加熱工程、水による吸水膨潤工程経てアルコール水溶液に接触させるアルコール処理を行う製造方法(特許文献1を参照)、乾燥スパゲティを通常の茹で時間よりもやや短い時間茹でた後、有機酸水溶液に浸漬して麺線の膨潤を抑えた後重合リン酸塩水溶液に浸漬し中和する製造方法(特許文献2)、乾燥スパゲティを茹でる前に冷凍し、茹で上げ後、乳化剤(例えばモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステルなど)コーティングした後、冷凍する製造方法などが提案されているが、いずれの方法も製造途中において、食用ではあるが薬剤を使用しての処理工程が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開平9−28337号公報
【特許文献2】特開平10−262585号公報
【特許文献3】特開2006−30号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乾燥スパゲティを短時間でアルデンテスパゲティに調理できる製造方法、及び調理、保存法についての提案であり、乾燥スパゲティを短時間でアルデンテスパゲティに調理できた本スパゲティを以後「アルデンテスパゲティの製造方法」という。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は乾燥スパゲティを通常より短い時間で熱湯加熱し、その後湯切りし、水分吸収を止めるため恒温の流水で冷却し水切りを行った後、定量のオリーブオイルを散布し恒温で一定時間放置し、表面付近部分に水分吸収がなされスパゲティはしなやかさを得アルデンテスパゲティが製造出来き、また本スパゲティの製造方法を1人分づつ分け、各種のソース加え冷凍することにより電子レンジで数分で解凍調理するとアルデンテ状態のスパゲティを食することが出来き、冷凍保存すれば約一年間保存でき、しかも処理工程での薬剤の使用は全くない。
【発明の効果】
【0007】
一度にアルデンテスパゲティの製造方法を大量に製造しても、真空調理器で1人分づつ袋詰し冷凍保存し、電子レンジを使えば解凍から調理まで4分から5分程度でアルデンテの状態で食することができ、又オリーブオイルを散布しオリーブオイルがコーティングされたスパゲティは、冷凍すれば過度の水分吸収を防ぐともに乾燥をも防ぎ賞味期限も約一年間と長期間保存できる。
【0008】
本発明のアルデンテスパゲティの製造方法を使用した各種の電子レンジ調理用スパゲティ料理は、加熱調理を行わない独自の工程で作られているため、電子レンジでの調理終了時点で美味しいアルデンテ状態で食すことが出来る。
【0009】
食品メーカー各社が販売している各種の電子レンジ調理用スパゲティ料理は、調理工程で加熱調理を行った後、冷却し、冷凍にするためこの時点でスパゲティは、アルデンテ状態をなくしてしまう、さらに食する時電子レンジで加熱調理を行うため、アルデンテスパゲティには程遠い出来上りとなっている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を実施するための形態について説明する。
イタリア・バリラ社製1.7φmm乾燥スパゲティ(1kg当たり)を食前の調理時間を考慮し、熱湯加熱を2分から3分間と早茹で(乾燥スパゲティの太さにより時間は決める)にし、麺へ水分の吸収を中まで行かないようにし、その後湯切りする。
【0011】
湯切りしたスパゲティを予め用意しておいた19℃から21℃の流水で3分間麺を冷却し、麺の変性化、水分の吸収を止めその後水切りをする。
【0012】
水切りしたスパゲティに麺同士の付着を防止するとともに、麺からの水分発散を防ぐため、市販の霧吹きを用い50ccのオリーブオイル(乾燥スパゲティ1kg当たり)散布し、麺内に吸水した水分勾配を安定させるため19℃から21℃の室温で1時間から1時間30分放置する。
【0013】
放置する事により表面部と中心部の水分勾配に差が生じるためアルデンテの状態のスパゲティを得ることが出来き、室温放置後のアルデンテスパゲティの製造方法の水分含有量は表1の工程4に示すようにほぼ48.9〜49.9%になった。
【0014】
和風ソース、ナポリタン、クリームソース、トマトソースなどを調理し、調理が終わったら常温なるまで冷まし冷凍した200gのアルデンテスパゲティの製造方法に冷ましたソース200gを加え真空調理機で袋詰し冷凍する。
【0015】
冷凍保存されたアルデンテスパゲティを電子レンジで解凍し、加熱調理すると解凍から調理終了まで4分から5分程度でアルデンテの状態で食することができ、アルデンテスパゲティの水分含有量は表1の工程5に示すようにほぼ57.9%になった。
【0016】
本発明の実施例により説明する。
製法の実施例1
デュラム・セモリナ粉で作られた1.7mmφの乾燥スパゲティ1kgを沸騰水5000ccの中で2分間熱湯加熱し湯切りを行い、あらかじめ用意しておいた19℃から21℃の水で流水しながら冷却を3分間行うと、熱湯加熱後のスパゲティの太さは表1の工程2に示すように1.9φ、重さは1.56g、水分含有量は42.3%になり、流水冷却3分後のスパゲティは表1の3工程に示すように太さは2.0φ、重さは1.76g、水分含有量は48.9%なったが以上の例の各調理における熱湯水、オリーブオイルの分量は、乾燥スパゲティの調理量により比例して加減すことができる。
【0017】
次いで水を切り、50ccのオリーブオイルを散布し19℃から21℃の室温で1時間から1時間30分放置すると得られたスパゲティは表1の工程4に示すように太さは2.0φ、重さは1.76g、水分含有量は48.9%になったが、以上の例の各調理における熱湯水、オリーブオイルの分量は、乾燥スパゲティの調理量により比例して加減すことができる。
【0018】
アルデンテスパゲティの製造方法を大量に製造した場合の保存法は、アルデンテスパゲティの製造方法工程が終了後真空調理器で1人分(200g)づつ袋詰し−18℃〜−25℃で10時間冷凍し保存することができるが、オリーブオイルを散布しオリーブオイルでコーティングされ冷凍保存されたアルデンテスパゲティの製造方法は、過度の水分吸収を防ぐともに乾燥をも防ぎ賞味期限も約一年間と長期間保存できる。
【0019】
和風ソース、ナポリタン、クリームソース、トマトソースなどを調理し、調理が終わったら常温なるまで冷まし、冷ましたソース200gを冷凍した200gのアルデンテスパゲティの製造方法に加え真空調理機で袋詰し−18℃〜−25℃で24時間冷凍する。
【0020】
各種のソースを加えた冷凍アルデンテスパゲティの製造方法を600Wの電子レンジで4分から5分間、1000Wの電子レンジで3分から4分間仕上げ調理を行うと、調理後のアルデンテスパゲティの製造方法は表1の工程5に示すように太さは2.3φ、重さは2.14kg、水分含有量は57.9%になった。
【0021】
電子レンジによる仕上げ調理後の太さ、重さ、水分含有量は、乾燥スパゲティをアルデンテの状態に茹でた時の数値に一致していた。
【0022】
アルデンテスパゲティの製造方法1人前(200g)を茹で麺機などの熱湯水で約30秒間ほぐし、湯切りし、アルミパン又はフライパンでスパゲテイ用ソースを1人前づつ作った沸騰寸前のソースに入れ、強火で約2分間調理すると、調理後のアルデンテスパゲティの製造方法は表1の工程5に示すように太さは2.3φ、重さは2.14kg、水分有量は59%になった。
【0023】
アルミパン又はフライパンによる調理後の太さ、重さ、水分含量は乾燥スパゲティをアルデンテ状態に茹でた時の数値に一致していた。
【0025】
アルデンテスパゲティの製造方法を使い各種のソースを加えた冷凍アルデンテスパゲティの製造方法を600Wの電子レンジで4分調理したスパゲティと、一般に市販されているインスタントを調理したスパゲティについて官能テストを行い、その結果は表2に示すものとなりアルデンテスパゲティが比較例より優れていることが確認された。
【表2】
【0026】
本発明者の経営するイタリアンレストランに於いて、本発明の製造方法により得られたアルデンテスパゲティの製造方法を使用し各種スパゲティ料理に調理し提供している。
【要約】
【課題】電子レンジあるいはアルミパン加熱により簡便に茹でたてのスパゲティが有するアルデンテ状態の食感を再現できるアルデンテスパゲティの製造方法とその調理法、及び保存法。
【解決手段】乾燥スパゲティの表面付近を変性化させる熱湯加熱工程と、熱湯加熱工程を経たスパゲッティを短時間の冷却、吸水をする表層部のみを変性させる工程、変性工程を経たスパゲティに定量のオイルを散布し麺の付着防止、変性化の進行を防止、乾燥の防止をする工程を行う製法と、本製法で作られたアルデンテスパゲティに各種のスパゲティ用ソースを加え調味し冷凍すること特徴とする。
【選択図】なし