【実施例1】
【0019】
図1は本実施例の記憶再生装置1aの外観を示す斜視図であり、
図2は記憶再生装置1aの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、記憶再生装置1aは、フレーム2のブリッジ2aにカメラ3がレンズ3aを前方に向けた状態で設置されている。フレーム2のアーム2bには、蝶番2cの近傍にマイクロフォン4が外側に開口するように埋め込まれており、耳かけ部2dの近傍にスピーカー5が内側に開口するように埋め込まれている。また、耳かけ部2dの内側先端には骨伝導センサ6が設置され、アーム部2bの上面には支持部2eが立設されており、この支持部2eの先端には圧力センサ7が「こめかみ」の表皮の変動を検出可能に取り付けられている。
【0020】
フレーム2には2枚のレンズ8,8が嵌め込まれており、一方のレンズ8の内部にはミラー(図示せず)及びハーフミラー(図示せず)が設けられ、このレンズに近い側のアーム2bの内側にはミラーに対して映像を投影可能に液晶ディスプレイ(図示せず)が設置されている。そして、液晶ディスプレイから投影された映像をハーフミラーに向かって反射するようにミラーが配置され、ミラーからレンズ8の内部を透過するようにして投影された映像を使用者の方に向けて反射するようにハーフミラーが配置されている。すなわち、ミラーとハーフミラーは液晶ディスプレイとともに映像表示手段9(
図2参照)を構成している。
【0021】
アーム2bには、カメラ3、マイクロフォン4、骨伝導センサ6及び圧力センサ7によって検出された各種のデータを処理する処理部16(
図2参照)とバッテリ(図示せず)と記憶部15(
図2参照)が内蔵されている。また、一方の耳かけ部2dには、映像表示手段9によってレンズ8に表示された画面上のメニューを操作するための画面切替ボタン10と選択ボタン11と決定ボタン12が設けられており、他方の耳かけ部2dには、処理部16のON/OFF状態を切り替える電源スイッチ13と、USBコネクタ等の外部端子を接続するための接続口14が設けられている。
なお、バッテリは、電源ケーブルを介して接続口14に接続される外部電源によって充電されるが、必ずしもこのような構造でなくとも良い。例えば、バッテリがアーム2bに対して着脱可能に内蔵された構造とすることもできる。この場合、アーム2bから取り出した状態でバッテリを充電できるため、作業性が良い。さらに、このバッテリとして市販の電池を用いることもできる。
【0022】
図2に示すように、処理部16には、記憶部15の他、電源スイッチ13、画面切替ボタン10、選択ボタン11及び決定ボタン12からなる操作部17と、カメラ3、マイクロフォン4、骨伝導センサ6及び圧力センサ7からなるセンサ部18と、スピーカー5及び映像表示手段9からなる出力部19が接続されている。
処理部16は、センサ部18によって取り込まれた情報に基づいて、「会話」、「笑い」、「食事」、「薬摂取」という4種類のイベントがそれぞれ発生したタイミングを判定するイベント判定手段16aと、操作部17から入力された指示に基づいて所定のイベントに対応する情報を記憶部15から読み出すデータ検索手段16bと、記憶部15、操作部17、センサ部18及び出力部19の動作を制御する制御手段16cによって構成されている。
なお、センサ部18によって取り込まれた情報とは、リアルタイムにセンサ部18から取り込まれる情報に加えて、センサ部18によって測定され一旦後述する記憶部15に格納した後に、再度処理部16によって取り込まれた情報も含む概念である。
【0023】
記憶部15には、カメラ3によって取り込まれた映像データ15aと、マイクロフォン4及び骨伝導センサ6によってそれぞれ取り込まれた音声データ15b,15cと、圧力センサ7の検出値15dがそれぞれ検出された時刻と関連付けられた状態で格納されている。また、記憶部15には、「会話」、「笑い」、「食事」、「薬摂取」の各イベントについてそれぞれ発生した時点の5秒前の時刻が再生ポイントとして時系列的にタイムテーブル15eへ格納されている。
【0024】
図3(a)及び
図3(b)はそれぞれ使用者が周囲の人と「会話」をしている場合にマイクロフォン4及び骨伝導センサ6によって検出された電気信号E
1,E
2を示しており、
図3(c)は使用者が「笑っている」場合に骨伝導センサ6によって検出された電気信号E
2を示している。
また、
図3(d)及び
図3(e)はそれぞれ使用者が「食事」をしている場合及び「薬を摂取」している場合に骨伝導センサ6によって検出された電気信号E
2を示している。すなわち、これらの図において、横軸は経過時間を表し、縦軸は電圧の大きさを表している。
なお、圧力センサ7によって検出される電気信号(検出値15d)については時間波形を図示していないが、マイクロフォン4及び骨伝導センサ6によって検出される電気信号E
1,E
2と区別し易くするため、本願明細書では、圧力センサ7によって検出される電気信号を、便宜上、電気信号E
3と表すものとする。
【0025】
使用者が周囲の人と「会話」をしている場合、使用者の音声は周囲の人の音声等と混在した状態でマイクロフォン4によって検出されるため、その電気信号E
1は、
図3(a)に示すように、使用者の音声が含まれているか否かの判別が容易でない。これに対し、骨伝導センサ6では、使用者の音声が周囲の人の音声等と判別可能な状態で検出される。そこで、イベント判定手段16aは、
図3(b)に示すように、予め設定された閾値Bを電気信号E
2が超えた場合に使用者が「会話」をしているとの判定を行う。
なお、
図3(a)に示した閾値Aは、後述するように電気信号E
1においてイベント判定手段16aによって音声データの有無を判別する際に用いられる。
【0026】
使用者が「笑っている」場合、骨伝導センサ6によって検出される電気信号E
2には短時間にピーク値が連続して現れる。そこで、イベント判定手段16aは、
図3(c)に示すように、予め設定された閾値Cを超えるピーク値が電気信号E
2において短時間に連続して現れた場合に使用者が「笑っている」との判定を行う。
また、使用者が「食事」をしている場合、
図3(d)に示すように、骨伝導センサ6によって検出される電気信号E
2には「嚥下」の動作を示すピーク値が略均一な大きさで周期的に現れる。さらに、
図3(e)に示すように、使用者が「薬を摂取」している場合にも電気信号E
2には上述の「嚥下」の動作を示すピーク値が同様に現れる。ただし、
図3(d)と
図3(e)を比較すると明らかなように、「食事」をしている場合には、「薬を摂取」する場合と異なり、「嚥下」の間に「咀嚼」が行われていることを示す波形が認められる。
なお、食事中に「咀嚼」をする回数は人によって異なるが、同一人であれば、「嚥下」までの「咀嚼」の回数は、ほぼ一定しており、「嚥下」の動作を示すピーク値は、周期的に発生する。これに対し、「笑い」の際に現れるピーク値は、均一でなく、その間隔は不均一で「嚥下」の動作を示すピーク値の間隔よりも短いことが多い。したがって、
図3(c)と
図3(e)を比較すれば明らかなように、骨伝導センサ6によって検出される電気信号E
2について、ピーク値の大きさと周期に着目すれば、それが「笑い」と「嚥下」のいずれの動作を示すものであるかを判別することは容易である。
【0027】
使用者が「咀嚼」を行う場合、下顎が動いて側頭筋が収縮し、「こめかみ」の表皮が隆起するが、本発明の記憶再生装置1aでは、前述したように、「こめかみ」の表皮の変動が圧力センサ7によって検出されるため、電気信号E
3が所定の閾値(図示せず)を超えた場合に、使用者が「咀嚼」を行っていると判断することができる。そこで、イベント判定手段16aは、
図3(d)や
図3(e)に示すように、予め設定された閾値Dを電気信号E
2が超えた場合に使用者が「嚥下」を行ったものと判断し、さらに、電気信号E
3に基づいて使用者が「咀嚼」を行ったと判断した場合には使用者が「食事」をしているとの判定を行う。一方、イベント判定手段16aは、使用者が「咀嚼」を行わず、「嚥下」のみを行っていると判断した場合、使用者が「薬を摂取」しているとの判定を行う。
【0028】
次に、マイクロフォン4、骨伝導センサ6及び圧力センサ7によって検出される電気信号E
1〜E
3に基づいて、「会話」、「笑い」、「食事」、「薬摂取」という4種類のイベントがそれぞれ発生したか否かをイベント判定手段16aが判定する手順を
図3を適宜参照しながら
図4を用いて説明する。
図4はイベント判定手段16aが行う判定の手順を示すフローチャートであり、
図5(a)はタイムテーブルに再生ポイントが格納される状態を模式的に示した図であり、
図5(b)は
図4に示したフローチャートを補足する図である。
図5(a)に示すように、タイムテーブル15eには、上述の4種類のイベントが発生した時点の5秒前の時刻を再生ポイントとして時系列データの形式で格納可能となっている。すなわち、以下に説明するように、Ts(i,j)(i=1〜4、j=1〜N)と表わされるタイムテーブル15eに対し、「食事」をi=1、「薬の摂取」をi=2、「笑い」をi=3、「会話」をi=4として、その再生ポイントが最大N個までそれぞれ格納されている。
【0029】
図4に示すように、まず、ステップS1において、1から4までのiと、1からNまでのjについてTs(i,j)を0とし、iとjを1としてステップS2に進む。ステップS2では、マイクロフォン4、骨伝導センサ6及び圧力センサ7によって検出された電気信号E
1〜E
3が検出時刻tとともに処理部16に取り込まれる。
次に、ステップS3において、イベント判定手段16aが電気信号E
2に基づいて使用者が「嚥下」を行っていると判断すると、ステップS4に進む。ステップS4において、イベント判定手段16aは電気信号E
3に基づいて使用者が「咀嚼」を行っていると判断すると、ステップS5において使用者が「食事」をしていると判定するとともに、電気信号E
3において使用者の「咀嚼」が開始されたと判断した時点の5秒前の時刻を再生ポイントとしてTs(1,j)の値とし、ステップS2に戻る。
一方、ステップS4において、イベント判定手段16aは電気信号E
3に基づいて使用者が「咀嚼」を行っていると判断しない場合、ステップS6において使用者が「薬を摂取」していると判定するとともに、電気信号E
2において使用者の「嚥下」が開始されたと判断した時点の5秒前の時刻を再生ポイントとしてTs(2,j)の値とし、ステップS2に戻る。
【0030】
ステップS3において、イベント判定手段16aが電気信号E
2に基づいて使用者が「嚥下」を行っていると判断しない場合、ステップS7に進む。ステップS7では、イベント判定手段16aは電気信号E
2において短時間に閾値Cを越えるピークが不規則に発生していると判断した場合、ステップS8において使用者が「笑っている」と判定するとともに、電気信号E
2において使用者が「笑い」を始めたと判断した時点の5秒前の時刻を再生ポイントとしてTs(3,j)の値とし、ステップS2に戻る。
一方、ステップS7において、イベント判定手段16aは、電気信号E
2において短時間に閾値Cを越えるピークが不規則に発生していると判断しない場合、ステップS9に進む。ステップS9において、イベント判定手段16aは、電気信号E
2が閾値Bを越えていない場合、使用者が無言であり、周囲の人と「会話」をしていないと判定し、ステップS2に戻る。
【0031】
ステップS9において、電気信号E
2が閾値Bを越えている場合、ステップS10に進む。ステップS10において、電気信号E
1が閾値Aを越えていない場合、イベント判定手段16aは、周囲の人の音声が検出されていないため、使用者が周囲の人と「会話」をしていないと判定し、ステップS2に戻る。
一方、ステップS10において、電気信号E
1が閾値Aを越えている場合、ステップS11において、イベント判定手段16aは使用者が周囲の人と「会話」をしていると判定するとともに、電気信号E
1において「会話」が始まったと判断した時点の5秒前の時刻をTs(4,j)の値とし、ステップS2に戻る。
【0032】
なお、ステップS5,S6,S8及びS11において、Ts(i,j)に対して再生ポイントを示す時刻が既に格納されている場合には、その値を上書きしないように、ステップS4とステップS5若しくはステップS6の間、ステップS7とステップS8の間、及びステップS10とステップS11の間において、
図5(b)に示したような処理が行われる。
図5(b)に示すように、ステップS4,S7,S10においてイベント判定手段16aによって各判断がなされると、ステップS20に進み、TS(i,j)の値が0より大きい場合、すなわち、Ts(i,j)に対して再生ポイントを示す時刻が既に格納されている場合には、ステップS21においてjを1ほどインクリメントし、ステップS20の前に戻る。一方、ステップS20において、TS(i,j)の値が0より大きくない場合、すなわち、Ts(i,j)に対して再生ポイントを示す時刻が未だ格納されていない場合には、ステップS22に進む。そして、jがNに達している場合、イベント判定手段16aはイベントの判定処理を終了する。一方、jがNに達していない場合には、ステップS5、ステップS6、ステップS8、ステップS11のいずれかへ進む。
また、これまでの説明でイベントの発生時点の5秒前の時刻を再生ポイントとしてTs(i,j)の値としたが、この5秒という時間は極端には0秒(同時)も含めて適宜所望の時間に変更することができる。
【0033】
なお、本実施の形態においては、Ts(i,j)(i=1〜4、j=1〜N)としてタイムテーブル15eを想定し、予め記憶部15に格納可能な最大N個までTs(i,j)を格納するようにしているが、Ts(i,j)の取得方法としてはこの方法に限定するものではない。例えば、
図4のステップS1を実行することなく、センサ部18によってリアルタイムにあるいは一旦記憶部15に格納された情報、すなわち電気信号E
1,E
2,E
3を処理部16で検出時刻tと共に読み出して、イベント判定手段16aで、それぞれの電気信号E
1,E
2,E
3に基いて「食事」、「薬の摂取」、「笑い」、「会話」のいずれのイベントが発生しているかを判定し、検出時刻tを参照しながら、そのイベントの開始時刻を判断して5秒前等をTs(i,j)の値とするような場合である。
この場合、2次元的なタイムテーブル15eではなく、時系列にTs(1,1)、Ts(2,1)、Ts(2,2)、Ts(3,1)、Ts(4,1)、Ts(3,2)などイベント別ではなく時系列にTsが羅列されることになる。イベントの種類を表すiもそのイベントの中での発生順位を表すjも含めて、一次元的に羅列されるのである。具体的なデータの形態としては、例えば8桁の数字でデータ全体を表しつつ、最初の6桁が時刻を表し、7桁目がイベントを表すi、8桁目が各イベントの中での発生順位を表わすjというような形態で、この8桁の数字で表現されるデータが羅列されるような場合である。
但し、この場合でもjは1ずつインクリメントされる必要がある。このようなシーケンスとするには、例えばステップS1として、Ts(i,j)のi=0、j=0としておいて、ステップS4のYとNの後、ステップS7のYの後、ステップS10のYの後、すなわち、「食事」、「薬の摂取」、「笑い」、「会話」と判定されるステップS5,S6,S8,S11の前にj=j+1というステップを挿入することによれば可能である。
このようにしておくことで、jがそれぞれのイベントとして判定される際に1ほどインクリメントされることになる。
以上説明したとおり、本願発明では、イベントが発生じた時点を基準として再生ポイントTsの時刻を設定可能で、その再生ポイントをイベント毎に識別可能に時系列的に記憶部15に記憶可能であればどのように再生ポイントが定められてもよいのである。
【0034】
記憶再生装置1aの操作方法について
図6〜
図8を参照しながら説明する。
図6(a)及び
図6(b)は記憶再生装置1aにおいてディスプレイに表示されるメニュー画面及び場面選択画面を示したイメージ図であり、
図7(a)及び
図7(b)は同様にディスプレイに表示される会話画面及び時間設定画面を示したイメージ図である。また、
図8は
図7の画面で選択された映像がディスプレイに表示された状態を示すイメージ図である。なお、
図1〜
図5に示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
電源スイッチ13を操作して記憶再生装置1aの電源を入れると、映像表示手段9によってレンズ8に対し、
図6(a)に示すようなメインメニューが表示される。メインメニューでは、選択ボタン11を操作して「短期記憶再生」、「場面選択」、「時間指定」のいずれかを選択することができる。なお、「短期記憶再生」とは、記憶部15に記憶された映像や音声を、30秒前、1分前というように予め設定された複数の時刻から順次再生していくモードである。
【0035】
選択ボタン11で「場面選択」を選択し、決定ボタン12を押すと、
図6(b)に示すような場面選択画面がレンズ8に表示される。この画面では、「会話」、「食事」、「薬摂取」、「笑い」のいずれかを選択することができる。選択ボタン11と決定ボタン12を操作して、例えば、「会話」を選択すると、
図7(a)に示すような会話画面が表示される。選択ボタン11と決定ボタン12の操作により、この画面上に表示された再生ポイントのいずれかを選択すると、
図8に示すように、使用者が「会話」をした場面が会話画面で選択した再生ポイントから再生される。
一方、
図6(a)に示したメインメニューにおいて、選択ボタン11と決定ボタン12を操作して、「時間指定」を選択すると、
図7(b)に示すような時間指定場面となる。この画面では、選択ボタン11を操作して映像や音声の再生を開始する時刻(設定時刻)を変更し、決定ボタン12を押すことで、その時刻を確定することができる。
なお、これらの操作において、画面切替ボタン10を押すと、いずれの画面からもメインメニューに戻ることができる。
【0036】
以上説明したように、本発明の記憶再生装置1aによれば、データ検索手段16bによって記憶部15から読み出された映像データ15aや音声データ15bを映像表示手段9やスピーカー5で映像や音声に変換し、再生ポイントとして示される時刻から再生させることで、使用者が「笑い」、「会話」、「食事」、「薬の摂取」を行った場面を効率良く再現することができる。このとき、それらのイベントが発生した時点より5秒前の時刻を再生ポイントとしているため、各イベントが発生する直前の場面から再生が始まる。したがって、各イベントが起こった状況を的確に把握することができる。