(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
隣り合う前記ターゲット電極の最近接部において、前記シールド部材は前記第1シャッタ部材よりも大きな曲率半径を有することを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
前記第1シャッタ部材には2つの開口が形成され、前記2つの開口は、前記回転軸に対する対称位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成膜装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変できることは勿論である。本発明に係る成膜装置の適用はスパッタリング装置に限定されるものではなく、真空容器内でシャッタ装置により蒸着材料を選択できる各種PVD装置に適用可能である。
【0015】
(第1の実施形態)
図1〜5に基づいて本発明の第1の実施形態に係る成膜装置を説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の縦断面図である。成膜装置1は、真空容器51の内部に4つのターゲット電極35〜38(36、37は図示を省略)が設けられたスパッタリング成膜装置であり、基板Wを保持する基板ホルダー3、任意のターゲットTを基板Wに曝すことのできるシャッタ装置4を備えている。
【0016】
なお、
図1において、成膜装置1の内部を所要の真空状態にするための真空排気ユニット、ターゲット電極35〜38に電力を供給するためのユニット、ゲートバルブGVを介して基板ホルダー3上の基板Wを交換する基板搬送装置、プロセスガス導入ユニットなどのプラズマを生成するためのユニット等の図示は省略されている。
【0017】
基板ホルダー3は、成膜装置1の底面部の中央に回転自在に設けられており、基板Wを水平状態で保持することができる。基板Wへのスパッタ成膜の際には基板Wは回転状態で保持する。4つのターゲット電極35〜38は、成膜装置1の真空容器51の天井部52に傾斜した状態で取り付けられている。
【0018】
真空容器51の上部である天井部52にはターゲット電極ホルダー61が設けられている。ターゲット電極ホルダー61は、ターゲット電極を保持する取り付け部61aが4箇所に設けられた部材である。本実施形態のターゲット電極ホルダー61は、真空容器51の蓋としての機能も有しており、天井部52と一体に構成されているが、真空容器51の一部に取り付け部61aを設ける構成であってもよい。取り付け部61aに保持されたターゲット電極には、成膜処理に用いられる被成膜物質がボンディングされたターゲットTを基板Wの方向に向けて保持することができる。なお、ターゲット電極のターゲットTを保持する部分をターゲット取り付け面とする。
【0019】
図1には断面に位置する2つのターゲット電極のみが図示されている。傾斜して設けられたターゲット電極35〜38のそれぞれには、それらの下方に水平に配置された基板Wの上面に対して対向するようにターゲットTを配置することができる。ターゲットTには成膜処理に用いられる被成膜材料がボンディングされている。
【0020】
ここで、ターゲットTと基板とが対向する状態とは、ターゲット電極が基板周辺に向けて配置されている状態や、
図1に図示したようにターゲットTのスパッタ面が傾斜して基板
Wに向けられている状態も含むものとする。また、基板に形成される多層膜デバイスとしては、LED、MRAM、TMRヘッド、アドバンスド(改良型)GMRなどが挙げられる。形成される多層膜デバイスの膜構成に応じて成膜装置1のターゲット電極に搭載されるターゲットの種類も変更されることはもちろんである。
【0021】
ターゲットTと基板Wとの間にはシャッタ装置4が配置されている。シャッタ装置4は二重のシャッタ板(15,17)を有している。シャッタ装置4によって各シャッタ板(15,17)を所定位置に位置決めすることで、4つのターゲット電極35〜38のそれぞれに搭載されたターゲットTのうちスパッタ成膜に使用されるターゲットTを基板Wに臨ませることができる。
【0022】
ここで、
図2〜6に基づいてシャッタ装置54の構造を説明する。
図2はシャッタ装置4を構成する各部材の斜視図である。
図3はシャッタ装置54を上方からみた概略図であり、上部シールド板のみが図示されている。
図4A、4Bはそれぞれ
図3のI−I断面図、III−III断面図である。
図5は
図3のII−II断面図である。
図4A,4B,5中ではターゲット電極35〜38のうち任意のターゲット電極を符号Cで、任意のターゲットを符号T(T1〜T4)で示した。シャッタ装置
54は、上部シールド板(シールド部材)13、第1シャッタ板(第1シャッタ部材)15、第2シャッタ板(第2シャッタ部材)17を主要な構成要素としている。
【0023】
上部シールド板13は、ターゲット電極ホルダー61に取り付けられる部材であり、ターゲット電極ホルダー61への膜付着を防ぐ部材である。上部シールド板13を配置しない場合はターゲット電極ホルダー61の基板側の表面が第1シャッタ板15と対向する。第1シャッタ板15と第2シャッタ板17は、二重回転シャッタのシャッタ板として構成されている。上部シールド板13,第1シャッタ板15,第2シャッタ板17はいずれも上に凸の湾曲形状を有している。
【0024】
上部シールド板(シールド部材)13は、ターゲット電極ホルダー61の基板ホルダー3側に設けられた防着シールド板であり、ターゲットTからスパッタされた物質がターゲット電極ホルダー61に付着するのを防ぐことができる。上述のようにターゲット電極ホルダー61には4つの取り付け部61a形成されている。取り付け部61aのそれぞれにはターゲット電極Cが保持される。各ターゲット電極Cは、ターゲットTが取り付けられる面(取り付け面)を有し、上部シールド板13には、各ターゲット電極の取り付け面に対向する領域のそれぞれに開口63aが形成されている。
【0025】
第1シャッタ板(第1シャッタ部材)15は、上部シールド板13の基板ホルダー3側に、回転可能に設けられたシャッタ板であり、回転軸65bを回転させることにより第1シャッタ板15の回転角度を制御することができる。第1シャッタ板15は、2つのターゲット電極のターゲット取り付け面に対向する領域に開口65aが形成されている。第1シャッタ板15の2つの開口65aは回転軸65bに対して対称の位置に形成されている。
【0026】
第2シャッタ板(第2シャッタ部材)17は、第1シャッタ板15の基板ホルダー3側に回転可能に設けられたシャッタ板であり、回転軸67bを回転させることにより第2シャッタ板17の回転角度を制御することができる。回転軸65bと回転軸67bは独立して回転制御可能に構成されている。第2シャッタ板17は、3つのターゲット電極のターゲット取り付け面に対向する領域にそれぞれ開口67aが形成されている。また、第2シャッタ板17の3つの開口67aのうち、回転軸67bに対して対称な位置に形成されている2つは第1シャッタ板15に形成された2つの開口65aに対向して配置できるように形成されている。なお、第2シャッタ板17の開口67aの数は3つに限定されるものではない。
【0027】
ここで、本実施形態の特徴的な構成について
図4A、4Bと
図5に基づいて説明する。
図4Aは
図3のI−I断面図、
図5は
図3のII−II断面図、
図4Bは
図3のIII−III断面図である。本実施形態の二重回転
シャッタでは、上部シールド板13の湾曲形状と第1シャッタ板15の湾曲形状とが異なっている。一例において、上部シールド板13の湾曲形状と第1シャッタ板15の湾曲形状とは、いずれも球面の一部を構成する形状をしている。そして、上部シールド板13の内面形状に沿った球面半径Lよりも第1シャッタ板15の外面形状に沿った球面半径SRは小さく設定されている。また、第1シャッタ板15の外面が属する球面の中心位置は、上部シールド板13の内面が属する球面の中心よりも、基板ホルダー3から遠い位置に配置されている(
図1参照)。第1シャッタ板15の曲がり具合は、上部シールド板13よりも大きい。第2シャッタ板17は第1シャッタ板15に何れの位置でも同じ間隔に配置できる形状に構成されている。
【0028】
上部シールド板13と第1シャッタ板15とは、
図4A、4B、
図5のように、隣り合うターゲットT1,T4の最近接部S1における上部シールド板13と第1シャッタ板15との隙間D2が外周側の隙間よりも狭くなるように配置されている。本実施形態のシャッタ装置4では、平面図状において600mmの直径を有する上部シールド板13および第1シャッタ板15に対して隙間D2は約3mmである。上部シールド板13と第1シャッタ板15との隙間は、隣り合うターゲット電極の最近接部S1よりも外周側に向かって徐々に広がっている。
図4A,4B、5に示す例では、上部シールド板13と第1シャッタ板15との隙間は、隣り合うターゲット電極の最近接部S1よりも内側(回転軸67b)に向かって徐々に狭くなっている。しかしながら、
図14に例示されるように、上部シールド板13と第1シャッタ板15との隙間は、隣り合うターゲット電極の最近接部S1よりも内側(回転軸67b)に向かって徐々に広くなってもよい。なお、最近接部S1とは、隣り合うターゲット(例えばT1とT4)の間の領域であって、当該隣り合うターゲットの距離が最も小さい領域をいうものとする。
【0029】
このように、最近接部S1における上部シールド板13と第1シャッタ板15の隙間D2を外周側よりも狭くすることで、ターゲットT1,T4間で隙間D2を介したコンタミネーションの発生を防ぐことができる。コンタミネーションは、ターゲットからスパッタされた物質が、当該ターゲットとは異なるターゲットの表面に付着することで生じる。特に、異なる被蒸着物質のターゲットが隣り合って配置されているときは、ターゲットからスパッタされた物質の一部が、最近接部S1を通過して当該ターゲットの隣のターゲットの表面に付着することでコンタミネーションが生じるケースが多いため、本実施形態の構成のように最近接部S1における隙間を狭くした構成はコンタミネーションを低減できる。一方、第1シャッタ板15の熱膨張やそれに積層された膜の応力、又は、第1シャッタ板15のクリーニング時のブラスト処理などにより第1シャッタ板15が変形しても、変形量の多い外周部分では隙間が十分確保されているため、上部シールド板13と第1シャッタ板15が接触することがない。
【0030】
なお、シャッタ装置4から第2シャッタ板17を取り除いた構成であっても、他の隣り合うターゲット間でのコンタミネーションの発生を低減することができる。このような構成については第3の実施形態として後述する。
【0031】
本実施形態においては、上部シールド板13よりも第1シャッタ板15の球面半径を小さくした構成を採用しているが、上部シールド板13又は第1シャッタ板15の最近接部S1での曲率半径を変えることでも同様の効果を得ることができる。例えば、上部シールド板13よりも小さな球面半径の第1シャッタ板15を用い、最近接部S1に対向する部分の隙間だけを狭くするように第1シャッタ板15を屈曲させてもよい。このような構成の場合、上部シールド板13と第1シャッタ板15の隙間は、最近接部S1で最も狭くなり、最近接部S1の内周側と外周側では隙間が徐々に広がることになる。コンタミネーションの原因となる物質の通過する部分の隙間が狭いのでコンタミネーションを低減できる。
【0032】
(第2の実施形態)
図6〜9に基づいて本発明の第2の実施形態に係る成膜装置について説明する。
図6は本実施形態のシャッタ装置を構成する各部材の斜視図、
図7は本実施形態のシャッタ装置を構成する各部材を上方から見た図、
図8は上部シールド板のみが図示されている。
図8は
図4に対応する本実施形態のシャッタ装置の断面図、
図9は
図5に対応する本実施形態のシャッタ装置の断面図である。なお、
図8では固定分離壁71と回転分離壁72の側方から見た位置関係が明確になるように固定分離壁71と回転分離壁72についても図示した。また、第1の実施形態と同様の部材、配置等には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0033】
本実施形態のシャッタ装置54は、上部シールド板(シールド部材)63に固定分離壁71(第2分離壁)が設けられ、第1シャッタ板(第1シャッタ部材)65に回転分離壁72(第1分離壁)が設けられている点に大きな特徴がある。上部シールド板63、第1シャッタ板65、第2シャッタ板67のそれぞれを上方から見た
図7では、固定分離壁71と回転分離壁72の上方から見た位置関係が明確になるように、本来、上方からは見えない固定分離壁71を破線で示した。
【0034】
固定分離壁71(第2分離壁)は、上部シールド板(シールド部材)63から第1シャッタ板65側に突き出した板状部材である。固定分離壁71は計4つ設けられており、上部シールド板63の4つの開口63aの両側に配置されている。4つの固定分離壁71は、上部シールド板63の中心から放射状に取り付けられている。なお、本実施形態では固定分離壁71は上部シールド板63に取り付けられているが、上部シールド板63を有さない構成においては容器51若しくはターゲット電極ホルダー61に直接固定分離壁71を取り付ける構成でも本発明を実施できる。
【0035】
回転分離壁72(第1分離壁)は、第1シャッタ板(第1シャッタ部材)65から上部シールド板63側に突き出した板状部材である。回転分離壁72は計4つ設けられており、第1シャッタ板65の2つの開口65aの両側に配置されている。4つの回転分離壁72は、第1シャッタ板65の中心から放射状に取り付けられている。なお、
図7中の符号80a,80b,80cはMarkであり、第1シャッタ板65、第2シャッタ板67の回転角度の基準位置を示している。
【0036】
2つのターゲットTの間には、固定分離壁71と回転分離壁72が位置している。固定分離壁71と回転分離へ貴72は回転軸65b,67bの軸方向(回転軸方向)でおいて重なる領域を有している。すなわち、固定分離壁71と回転分離壁72の高さの和は、上部シールド板63と第1シャッタ板65との隙間の距離よりも長い寸法に設定されている。
図8で固定分離壁71と回転分離壁72を周方向から見ると、固定分離壁71は回転軸65bから径方向に上部シールド板63の外周部分まで形成されている。回転分離壁72も同様に回転軸65bから径方向に第1シャッタ板65の外周部分まで形成されている。
【0037】
すなわち、上部シールド板63と第1シャッタ板65の隙間の領域で、固定分離壁71と回転分離壁72とによってラビリンスを形成することができる。このため、一方のターゲットTからスパッタされた原子が、上部シールド板63と第1シャッタ板65の隙間D2を通過して他方のターゲットTに到達することを効果的に防ぐことができる。
【0038】
本実施形態においては、固定分離壁71と回転分離壁72は回転軸65b,67bの軸方向おいて重なる領域を有するため、第1シャッタ板65が回転軸65bの周りに所定角度以上回転すると回転分離壁72は固定分離壁71と当接することになる。すなわち、
図9に示されているように、全ての回転分離壁72は固定分離壁71の周方向の一方側にそれぞれ接近して位置できるように設けている。スパッタ成膜処理を行う際には、回転分離壁72は、固定分離壁71との間でラビリンスを形成するように、それぞれの固定分離壁の周方向の一方側に所定の隙間D3を有して位置決めされる。所定の隙間D3は隙間D2よりも小さな値とすることができる。
【0039】
また、本実施形態の回転シャッタ装置54は、回転分離壁72は固定分離壁71との間でラビリンスを形成することができるため、第1の実施形態の回転シャッタ装置4よりもコンタミネーションを効果的に防ぐことができる。若しくは、回転シャッタ装置4に比べて隙間D2を広くしてもコンタミネーションを効果的に防ぐことができる。この場合、回転シャッタ板65,67の加工精度や板圧の選択の自由度を広げることができる。
【0040】
図7に示した固定分離壁71と回転分離壁72の位置関係を基準として、第1シャッタ板65を、
図7の紙面に対して反時計回りに90°近くまで回転させることができる。第1シャッタ板65が回転できる角度は、回転
分離壁72が固定分離壁71の周方向の他方側に接触する直前までであり、固定分離壁71と回転分離壁72の周方向の厚さに従ってある程度変動するが70〜90°である。
【0041】
本実施形態では、第1シャッタ板65が回転できる角度(回転角度)は80°に設定されている。回転角度が90°未満なので、第1シャッタ板65に形成された開口65aを第1シャッタ板65の径方向よりも周方向に長く形成することで、ターゲットに対向する領域を大きく開放できるようにした。なお、第2シャッタ板67は回転できる角度は制限されない。
【0042】
図10に基づいて本実施形態に係るシャッタ装置54の動作とその効果について説明する。図
10は、ターゲット電極ホルダー61、第1シャッタ板65、第2シャッタ板67のそれぞれを上方から見た模式図であり、各ターゲットを用いるときの第1シャッタ板65と第2シャッタ板67の回転位置がわかるように一覧としてまとめた図である。また、
図10の右側の列は基板34側からシャッタ装置54を見たときの模式図である。なお
図10中では、上部シールド板63はターゲット電極ホルダー61と一体に取り付けられているものとするとともに、ターゲット電極35〜38に取り付けられたターゲットを符号T1〜T4として示した。
【0043】
まず、
図10に示した第1シャッタ板65と第2シャッタ板67の回転位置を示す組み合わせの中で、ターゲットT1だけを用いて基板34に成膜を行うときのシャッタ装置54の動作について説明する。
図10のT1と記載された行に基づいて説明する。ターゲットT1に対して第1シャッタ板65の開口65aと第2シャッタ板67の開口67aの位置を重ねることによりターゲットT1を利用したスパッタ成膜が行われ、回転中の基板34の表面に所定の膜を堆積させることができる。このときターゲットT2,T4は第1シャッタ板65で覆われ、ターゲットT3は第2シャッタ板67で覆われるため、ターゲットT1からスパッタされた被成膜物質が他のターゲットT2,T3,T4に基板側から付着するのを防止できる。
【0044】
さらに、ターゲットT1とターゲットT2の間、及びターゲットT1とターゲットT3の間の位置には、固定分離壁71と回転分離壁72がラビリンスを形成しているため、上部シールド板63と第1シャッタ板65との隙間でのターゲットT1からの被成膜物質の移動が妨げられ、効果的にコンタミネーションを防ぐことができる。また、ターゲットT2,T4の前面は第1シャッタ板65で覆われているため、第1シャッタ板65と第2シャッタ板67との隙間でのターゲットT1からの被成膜物質のターゲットT2,T4への移動を防ぐことができる。ターゲットT3は第1シャッタ板65で覆われていないが、ターゲットT1から最も離れていること、及び、ターゲットT3とT1の間に回転軸65b,67bが存在していることからターゲットT1からの被成膜物質がターゲットT3に到達することが妨げられている。
【0045】
次に、ターゲットT2だけを用いて基板34に成膜を行うときのシャッタ装置54の動作について説明する(
図10のT2と記載された行を参照)。ターゲットT2だけを用いてスパッタ成膜を行うときは、ターゲットT1だけを用いたときと比べて、第1シャッタ板65と第2シャッタ板67の双方を紙面に向かって反時計回りに80°回転させた位置にする。これにより、ターゲットT2に対して第1シャッタ板65の開口65aと第2シャッタ板67の開口67aの位置を重ねることができる。ターゲットT1,T3は第1シャッタ板65で覆われ、ターゲットT4は第2シャッタ板67で覆われるため、ターゲットT2からスパッタされた被成膜物質が他のターゲットT1,T3,T4に基板側から付着するのを防止できる。
【0046】
ターゲットT2とターゲットT3との間、及びターゲットT2とターゲットT4との間の位置には、固定分離壁71と回転分離壁72がラビリンスを形成しているため、上部シールド板63と第1シャッタ板65との隙間でのターゲットT2からの被成膜物質の移動が妨げられ、効果的にコンタミネーションを防ぐことができる。また、ターゲットT1,T3の前面は第1シャッタ板65で覆われているため、第1シャッタ板65と第2シャッタ板67との隙間でのターゲットT2からの被成膜物質のターゲットT1,T3への移動を防ぐことができる。そして、ターゲットT4はターゲットT2から最も離れていること、及び、ターゲットT4とT2との間に回転軸65b,67bが存在していることからターゲットT2からの被成膜物質がターゲットT4に到達することが妨げられる。
【0047】
ターゲットT3だけを用いて基板34に成膜を行うときのシャッタ装置54の動作について説明する(
図10のT3と記載された行を参照)。ターゲットT3だけを用いてスパッタ成膜を行うときは、ターゲットT1だけを用いたときと比べて、第1シャッタ板65を回転させず、第2シャッタ板67を紙面に向かって180°回転させた位置にする。ターゲットT2,T4は第1シャッタ板65で覆われ、ターゲットT1は第2シャッタ板67で覆われるため、ターゲットT3からスパッタされた被成膜物質が他のターゲットT1,T2,T4に基板側から付着するのを防止できる。
【0048】
ターゲットT3の周方向の両側で隣り合うターゲットT2,T4の間の位置には、いずれも固定分離壁71と回転分離壁72がラビリンスを形成しているため、上部シールド板63と第1シャッタ板65との隙間でのターゲットT3からの被成膜物質の移動が妨げられ、効果的にコンタミネーションを防ぐことができる。また、ターゲットT2,T4の前面は第1シャッタ板65で覆われているため、第1シャッタ板65と第2シャッタ板67との隙間でのターゲットT3からの被成膜物質のターゲットT2,T4への移動を防ぐことができる。そして、ターゲットT1はターゲットT3から最も離れていること、及び、ターゲットT1とT3との間に回転軸65b,67bが存在していることからターゲットT3からの被成膜物質がターゲットT1に到達することが妨げられる。
【0049】
ターゲットT4だけを用いて基板34に成膜を行うときのシャッタ装置54の動作について説明する(
図10のT4と記載された行を参照)。ターゲットT4だけを用いてスパッタ成膜を行うときは、ターゲットT1だけを用いたときと比べて、第1シャッタ板65を紙面に対して反時計回りに80°回転させるとともに、第2シャッタ板67を紙面に向かって反時計回りに270°回転させた位置にする。ターゲットT1,T3は第1シャッタ板65で覆われ、ターゲットT2は第2シャッタ板67で覆われるため、ターゲットT4からスパッタされた被成膜物質が他のターゲットT1,T2,T3に基板側から付着するのを防止できる。
【0050】
ターゲットT4の周方向の両側で隣り合うターゲットT1,T3の間の位置には、いずれも固定分離壁71と回転分離壁72がラビリンスを形成しているため、上部シールド板63と第1シャッタ板65との隙間でのターゲットT4からの被成膜物質の移動が妨げられ、効果的にコンタミネーションを防ぐことができる。また、ターゲットT1,T3の前面は第1シャッタ板65で覆われているため、第1シャッタ板65と第2シャッタ板67との隙間でのターゲットT4からの被成膜物質のターゲットT1,T3への移動を防ぐことができる。そして、ターゲットT2はターゲットT4から最も離れていること、及び、ターゲットT2とT4の間に回転軸65b,67bが存在していることからターゲットT4からの被成膜物質がターゲットT2に到達することが妨げられる。
【0051】
ターゲットT1とT3の両方を用いた同時スパッタ(co-sputteringあるいは同時成膜処理)によって基板34に成膜を行うときのシャッタ装置54の動作について説明する(
図10のT1−T3 Co−SPと記載された行を参照)。ターゲットT1とT3のCo−スパッタを行うときは、ターゲットT1だけを用いたときと比べて、第1シャッタ板65を回転させず、第2シャッタ板67を紙面に向かって反時計回りに90°回転させた位置にする。このとき、ターゲットT1とT3が基板34に対して開放されるとともに、ターゲットT2,T4は第1シャッタ板65で覆われる。
【0052】
ターゲットT1とT3の周方向の両側位置では、それぞれ固定分離壁71と回転分離壁72がラビリンスを形成しているため、上部シールド板63と第1シャッタ板65との隙間でのターゲットT1とT3からの被成膜物質の移動が妨げられ、効果的にコンタミネーションを防ぐことができる。また、ターゲットT2,T4の前面は第1シャッタ板65で覆われているため、第1シャッタ板65と第2シャッタ板67との隙間でのターゲットT1とT3からの被成膜物質のターゲットT2,T4への移動を防ぐことができる。ターゲットT1とT3の同時スパッタにおいて、第1シャッタ板65の2つの開口65aは回転軸65bを挟んで対称位置であるため、ターゲットT1とT3との距離が長くクロスコンタミネーションを効果的に防ぐことができる。特に、ターゲットT1とT3の被成膜物質が異なるときは本実施形態の構成によりクロスコンタミネーションを効果的に防止することができる。
【0053】
ターゲットT2とT4の両方を用いた同時スパッタによって基板34に成膜を行うときのシャッタ装置54の動作について説明する(
図10のT2−T4 Co−SPと記載された行を参照)。ターゲットT2とT4のCo−スパッタを行うときは、ターゲットT1だけを用いたときと比べて、第1シャッタ板65を紙面に向かって反時計回りに80°回転させ、第2シャッタ板67を回転させない位置にする。このとき、ターゲットT2とT4が基板34に対して開放されるとともに、ターゲットT1,T3は第1シャッタ板65で覆われる。
【0054】
ターゲットT2とT4の周方向の両側位置には、それぞれ固定分離壁71と回転分離壁72がラビリンスを形成しているため、上部シールド板63と第1シャッタ板65との隙間でのターゲットT2とT4からの被成膜物質の移動が妨げられ、効果的にコンタミネーションを防ぐことができる。また、ターゲットT1,T3は第1シャッタ板65で覆われているため、第1シャッタ板65と第2シャッタ板67との隙間でのターゲットT2とT4からの被成膜物質のターゲットT1,T3への移動を防ぐことができる。ターゲットT2とT4の同時スパッタにおいて、第1シャッタ板65の2つの開口65aは回転軸65bを挟んで対称位置であるため、ターゲットT2とT4との距離が長くクロスコンタミネーションを効果的に防ぐことができる。特に、ターゲットT2とT4の被成膜物質が異なるときは本実施形態の構成によりクロスコンタミネーションを効果的に防止することができる。
【0055】
上述した本実施形態では、ターゲット(ターゲット電極)を4つ搭載できる成膜装置について述べたが、ターゲットの数は4つに限定されない。例えば、ターゲット(ターゲット電極)を2つ、第1シャッタ板65の開口65aと第2シャッタ板67の開口67aをそれぞれ2つ有する構成であっても、上述の実施形態と同様のコンタミネーションの防止効果を発揮することができる。この場合は、
図10でいうと、ターゲットT1とT3(又はT2とT4)のみを備える成膜装置に好適に用いることができる。
【0056】
本実施形態の成膜装置の効果について述べる。1つのチャンバ内に複数のターゲットを備えて多層膜をスパッタ成膜しかつ回転シャッタ装置でターゲットの選択を行うようにした成膜装置に上述の回転シャッタ54を取り付けることで、ターゲット間でのコンタミネーションを効果的に防止できる。特に、同時スパッタ成膜時のクロスコンタミネーションを効果的に防止できる。これにより、膜性能の良好な多層膜を基板上に堆積させることができる。
【0057】
(第3の実施形態)
本実施形態のシャッタ装置の断面図を
図11に示す。第1の実施形態と同様の部材、配置等には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。本実施形態に係るシャッタ装置は、上述した実施形態のシャッタ装置4と比べて、第2シャッタ板17を備えない構成である点で異なる。第2シャッタ板17を備えない構成であっても、ターゲットT1〜T4の周方向における両側にある隙間D2を狭くすることで、上部シールド板13と第1シャッタ板15の隙間D2での被成膜物質の移動を低減できるためである。すなわちターゲット間のコンタミネーションの発生を防止することができる。また、本実施形態に係るシャッタ装置の上部シールド板13と第1シャッタ板15にも固定分離壁71と回転分離壁72を設けても第2実施形態と同様の効果を期待することができる。
【0058】
(第4の実施形態)
また、上述した実施形態におけるシャッタ装置54は、上部シールド板63が第1シャッタ板65とターゲット電極Cとの間に配置されているが、上部シールド板63を第1シャッタ板65と第2シャッタ板67との間に配置してもほぼ同様の効果を奏することができる。この場合、回転分離加部72は第1シャッタ板65の基板ホルダー側33の面に設けられ、固定分離壁71は上部シールド板63の第1シャッタ板65側の面に設けられる。同様に、上部シールド板63を第2シャッタ板67の基板ホルダー33側に配置し、回転分離壁72を第2シャッタ板67の基板ホルダー側33の面に設けてもほぼ同様の効果を奏することができる。
【0059】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【0060】
本願は、2011年6月30日提出の日本国特許出願特願2011−145152を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。