(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前前記フィルターの内側の底面よりも低い側面位置まで、前記フィルターのフィルター部材が延設されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のフィルター装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このような従来のフィルターを設けた燃料電池システムにおいては、流体中に水蒸気などの湿分が含まれる場合に、流路内で湿分が凝縮し水が溜まることがある。特に、排出経路232のパージ弁234のフィルターでは、そのメッシュ部分に水が付着しやすく、システム停止後に低温下に放置した場合に、フィルターの水が凍結して、排出経路232を閉塞してしまうことになる。
【0014】
従って、フィルターの閉塞後は、氷を溶かして、流路を開かなければシステムの起動ができないことになる。
このため、特許文献1の燃料電池システムでは、燃料電池システムの起動時において、フィルターの凍結による流路の閉塞を回避するために、燃料電池システムの停止時に水素ポンプの回転数を上げて、パージガスで水分を吹き飛ばすように構成されている。
【0015】
さらに、特許文献1の燃料電池システムでは、フィルターを温めやすい構造にして、解凍用ヒーターを配置して、燃料電池システムの起動時に、解凍用ヒーターで温めることによって、凍結による閉塞を防止するように構成されている。
【0016】
しかしながら、このような特許文献1の燃料電池システムでは、燃料電池システムの停止時に、水素ポンプの回転数を上げなければならず、複雑な制御が必要であり、しかも、ヒーターを配置しなければならないので、装置が大型化することになる。
【0017】
また、ヒーターによって、ヒーターの熱がフィルターに伝わるには時間を要するので、燃料電池システムの起動時に温める時間が必要となり、燃料電池システムの起動時間が延びてしまうという問題がある。
【0018】
本発明は、このような現状に鑑み、フィルターに水が付着、残留した場合に、従来のように、複雑な制御、解凍用ヒーターなどの熱源も不要で、フィルターに付着、残留した水分を排出することができ、システム停止後に低温下に放置した場合にも、フィルターの凍結による閉塞を、迅速かつ確実に防止することができ、燃料電池システムの起動を迅速に行うことができるとともに、安価でコンパクトな、燃料電池システムの湿潤流体流路に配置されるフィルター装置、およびフィルター装置を備えた制御弁、ならびに、燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明のフィルター装置は、
流体中に水分を含むシステムの湿潤流体流路に配置されるフィルター装置であって、
前記湿潤流体流路を流れる流体を、フィルター室の下方よりフィルター室に導入する流体導入経路と、
前記流体導入経路からフィルター室に導入された流体を透過させて、流体中の異物を除去するフィルター部材を備え、前記フィルター室内に配置されたフィルターと、
前記フィルターの下方に設けられた水溜め部と、
前記フィルターを通過した流体を排出する流体排出経路と、を備えることを特徴とする。
【0020】
水と気体からなる湿潤流体が、フィルターを通過する際、一部の水はフィルターのフィルター部材(メッシュ)を通過せず、表面張力によってフィルターのフィルター部材内に滞留することになる。この状態で低温下に放置した場合に、フィルター部材内に滞留した水が、表面張力によってフィルター部材全体に広がり、フィルター部材の流路(メッシュ)全体を凍結によって閉塞させてしまうことになる。
【0021】
これに対して、本願発明のように、フィルターの下方に設けられた水溜め部を備えることによって、水溜め部に保持される水が増え、水溜め部の液面が、フィルターのフィルター部材まで到達すると、水溜め部に溜まった水とフィルター部材に付着、残留した水とがつながることになる。
【0022】
これにより、表面張力と重力によってフィルター部材内に滞留した水が、水溜め部に排出され、水溜め部に溜まった水が流体導入経路に流れ落ちる際、水溜め部に溜まった水が呼び水となり、フィルター部材に付着、残留した水分を排出することができる。
【0023】
従って、システム停止後に低温下に放置した場合にも、フィルター部材の凍結による閉塞を、迅速かつ確実に防止することができ、また、フィルター部材の凍結によるフィルター自体の破損も防止できるとともに、燃料電池システムの起動を迅速に行うことができる。
【0024】
しかも、従来のように、複雑な制御、解凍用ヒーターなどの熱源も不要で、安価でコンパクトな、燃料電池システムの湿潤流体流路に配置されるフィルター装置を提供することができる。
【0025】
また、本発明のフィルター装置は、前記フィルターと前記フィルター室の側壁との隙間寸法J1を所定の寸法となるように構成して、水溜め部に溜まる水に作用する表面張力を調整し、これにより、前記水溜め部の水位が所定の水位となるように構成されていることを特徴とする。
【0026】
すなわち、フィルターとフィルター室の側壁60aとの隙間寸法J1を所定の寸法となるように構成(調整)することにより、水溜め部に溜まる水に作用する表面張力を制御し、水が流体導入経路に流れ落ちるのを抑制するようにすることができる。これにより、システム運転中に、水溜め部に溜まる水の水位を容易に設定することができる。
【0027】
また、本発明のフィルター装置は、
前記水溜め部の底面が 、前記フィルターのフィルター部材の上端面よりも下方に位置するように形成されるとともに、
前記流体導入経路の下面が、前記水溜め部の底面よりも下方に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0028】
このように構成することによって、水溜め部の底面が 、フィルターのフィルター部材の上端面よりも下方に位置するように形成されているので、システム運転中に、水溜め部に溜まる水の水位が、フィルターのフィルター部材の下端面よりも上となるように、水溜め部に溜まる水の水位を、フィルターの外径、フィルター室の内径、および流体導入経路により決定することができる。
【0029】
すなわち、フィルターとフィルター室の側壁との隙間寸法(フィルター室の内径)を調整することにより、水溜め部に溜まる水の水位が、フィルターのフィルター部材の下端面よりも上となるように、容易に設定することができる。
【0030】
そして、この状態では、水溜め部に溜まった水とフィルター部材に付着、残留した水とがつながることになる。この状態で、流体導入経路の下面が、水溜め部の底面よりも下方に位置するように形成されているので、水溜め部に溜まった水が、重力によって、流体導入経路に流れ落ちやすくなる。そして、この際、水溜め部に溜まった水が呼び水となり、フィルター部材に付着、残留した水分を排出することができる。
【0031】
また、本発明のフィルター装置は、前記フィルターの内側底面が、外側に向かって下方に傾斜するように形成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、フィルターの内側底面が、外側に向かって下方に傾斜するように形成されているので、フィルターの内側底面の傾斜で、水がフィルターの内側底面から外に抜けやすくなる。
【0032】
また、
図7の二重のハッチングの部分で示したように、フィルター62の内側底面64eとフィルター部材66との間に溜る水位は、水とフィルター部材66との表面張力により上昇する。
【0033】
この際、フィルター62の内側底面64eは傾斜を形成するために隆起しているので、前述の表面張力による水位の上昇に加え、このフィルター62の内側底面64eの隆起の分、より水位は上昇することになる。
【0034】
その結果、フィルター62の内側底面64eとフィルター部材66との間に溜る水の水位が上昇するので、重力によって、フィルター部材66に付着、残留した水分をフィルター62内から排出しやすくなる。
さらに、フィルターの内部(フィルターの内側底面)に滞留した水の凍結によって、フィルター自体が破損するのを防止することができる。
【0035】
また、本発明のフィルター装置は、前記フィルターの底部に、前記水溜め部と連通する連通フィルター部材が形成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、フィルターの底部に、水溜め部と連通する連通フィルター部材が形成されているので、水溜め部の水位が高くなると、フィルターのフィルター部材内に滞留した水は、フィルターの底部に形成された連通フィルター部材を介して、水溜め部と連通することになる。
【0036】
これにより、フィルターの底部に形成された連通フィルター部材を介して、水溜め部に溜まった水とフィルター部材に付着、残留した水とがつながることになり、表面張力と重力によってフィルター部材内に滞留した水が、フィルターの底部に形成された連通フィルター部材を介して、水溜め部に排出されることになる。そして、水溜め部に溜まった水が流体導入経路に流れ落ちる際、水溜め部に溜まった水が呼び水となり、フィルターの底部に形成された連通フィルター部材を介して、フィルター部材に付着、残留した水分を排出することができる。
【0037】
また、本発明のフィルター装置は、前記水溜め部の底面が、外側に向かって下方に傾斜するように形成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、水溜め部の底面が、外側に向かって下方に傾斜するように形成されているので、水溜め部の水が、重力によって流体導入経路に排出されやすくなる。
【0038】
また、本発明のフィルター装置は、前記フィルターの内側の底面よりも低い側面位置まで、前記フィルターのフィルター部材が延設されていることを特徴とする。
このように構成することによって、フィルターの内側の底面よりも低い側面位置まで、フィルターのフィルター部材が延設されているので、水溜め部の水位が低い状態でも、このフィルター部材の延設部分を介して、フィルターのフィルター部材内に滞留した水と、水溜め部に溜まった水とがつながることになる。
【0039】
従って、表面張力と重力によってフィルター部材内に滞留した水が、このフィルター部材の延設部分を介して、水溜め部に排出され、水溜め部に溜まった水が流体導入経路に流れ落ちる際、水溜め部に溜まった水が呼び水となり、フィルター部材に付着、残留した水分を排出することができる。
【0040】
また、本発明のフィルター装置は、前記水溜め部が、前記フィルター室に形成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、水溜め部を、フィルター室を形成するフィルターハウジングに、例えば、溝加工などによって形成することができ、水溜め部の形成のための加工が容易となる。
【0041】
また、本発明のフィルター装置は、前記水溜め部が、前記フィルターの内部に形成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、水溜め部を、フィルターの内部に形成するので、水溜め部を、フィルター室を形成するフィルターハウジングに形成する必要がないので、フィルターハウジングに、溝加工などの特別な加工が不要で、加工の手間が省け、コストを低減することができる。
【0042】
なお、前述したように、フィルター室に形成した水溜め部とともに、このようなフィルターの内部に水溜め部を形成しても良い。
また、本発明のフィルター装置は、前記水溜め部に、親水処理が施されていることを特徴とする。
【0043】
このように構成することによって、水溜め部に、親水処理が施されているので、水溜め部に溜る水が球状にならず流れやすくなり、水溜め部に溜まった水が流体導入経路に流れ落ちやすくなり、フィルター部材に付着、残留した水分を効果的に排出することができる。
【0044】
また、本発明のフィルター装置は、前記フィルターのフィルター部材の下方部分に、親水処理が施されていることを特徴とする。
このように構成することによって、フィルターのフィルター部材の下方部分に、親水処理が施されているので、フィルター部材の下方部分に付着、残留した水分が、球状にならず流れやすくなり、重力の作用によって排出しやすくなる。
【0045】
また、本発明のフィルター装置は、前記フィルターのフィルター部材の上方部分に、撥水処理が施されていることを特徴とする。
このように構成することによって、フィルターのフィルター部材の上方部分に、撥水処理が施されているので、フィルターのフィルター部材の上方部分に付着した水分が撥水処理により弾かれて、フィルター部材の上方部分(メッシュ部分)に残留することなく、重力の作用によって、フィルター部材の下方部分に引き寄せられるため、フィルター部材に付着、残留した水分を効果的に排出することができる。
【0046】
しかも、フィルターのフィルター部材の下方部分に、親水処理が施されている場合には、フィルターのフィルター部材の上方部分に付着し、撥水処理により弾かれた水分が、親水処理が施されたフィルターのフィルター部材の下方部分により引き寄せられるため、フィルター部材に付着、残留した水分を効果的に排出することができる。
【0047】
また、本発明は、前述のいずれかに記載のフィルター装置を備えたことを特徴とする制御弁である。
このように構成することによって、本発明の制御弁を、例えば、燃料電池システムの排出経路のパージ弁などに用いた場合に、システム停止後に低温下に放置した場合にも、フィルター部材の凍結による閉塞を、迅速かつ確実に防止することができ、また、フィルター部材の凍結によるフィルター自体の破損も防止できるとともに、燃料電池システムの起動を迅速に行うことができる。
【0048】
また、本発明の制御弁は、前記フィルター室を構成するフィルターハウジングとフィルターとの間に、弾性部材が介装されていることを特徴とする。
このように構成することによって、フィルター室を構成するフィルターハウジングとフィルターとの間に、弾性部材が介装されているので、制御弁の作動による振動、すなわち、弁体が弁座に離接することによる振動などがフィルターに伝わり、弾性部材で保持されたフィルターが振動して、フィルター部材に付着、残留した水分が排出し易くなる。
【0049】
また、本発明の制御弁は、前記制御弁の弁体とフィルターとが連結されていることを特徴とする。
このように構成することによって、制御弁の弁体とフィルターとが連結されているので、制御弁の作動によって、直接フィルターが振動して、フィルター部材に付着、残留した水分がより排出し易くなる。
【0050】
また、本発明は、前述のいずれかに記載のフィルター装置を、燃料電池システムの湿潤流体流路の排出流路に配置したことを特徴とする燃料電池システムである。
このように構成することによって、例えば、燃料電池システムの排出経路のパージ弁などに用いた場合に、システム停止後に低温下に放置した場合にも、フィルター部材の凍結による閉塞を、迅速かつ確実に防止することができ、また、フィルター部材の凍結によるフィルター自体の破損も防止できるとともに、燃料電池システムの起動を迅速に行うことができる。
【0051】
本発明は、前述のいずれかに記載の制御弁を、燃料電池システムの湿潤流体流路の排出流路に配置したことを特徴とする燃料電池システムである。
このように構成することによって、例えば、燃料電池システムの排出経路のパージ弁などに用いた場合に、システム停止後に低温下に放置した場合にも、フィルター部材の凍結による閉塞を、迅速かつ確実に防止することができ、また、フィルター部材の凍結によるフィルター自体の破損も防止できるとともに、燃料電池システムの起動を迅速に行うことができる。
【0052】
しかも、フィルターと制御弁が一体になっているので、燃料電池システムを小型化できる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、フィルターの下方に設けられた水溜め部を備えることによって、水溜め部に保持される水が増え、水溜め部の液面が、フィルターのフィルター部材まで到達すると、水溜め部に溜まった水とフィルター部材に付着、残留した水とがつながることになる。
【0054】
これにより、表面張力と重力によってフィルター部材内に滞留した水が、水溜め部に排出され、水溜め部に溜まった水が流体導入経路に流れ落ちる際、水溜め部に溜まった水が呼び水となり、フィルター部材に付着、残留した水分を排出することができる。
【0055】
従って、システム停止後に低温下に放置した場合にも、フィルター部材の凍結による閉塞を、迅速かつ確実に防止することができ、また、フィルター部材の凍結によるフィルター自体の破損も防止できるとともに、燃料電池システムの起動を迅速に行うことができる。
【0056】
しかも、従来のように、複雑な制御、解凍用ヒーターなどの熱源も不要で、安価でコンパクトな、燃料電池システムの湿潤流体流路に配置されるフィルター装置、およびフィルター装置を備えた制御弁、ならびに、燃料電池システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【実施例1】
【0059】
図1は、本発明のフィルター装置が適用される燃料電池システムの概略図、
図2は、本発明のフィルター装置の実施例の概略縦断面図、
図3は、
図2のフィルター装置のA−A線での概略断面図、
図4は、
図2のフィルター装置のB−B線での水溜め部の水位が適正である時の概略断面図、
図5は、
図2のフィルター装置のC部の部分拡大断面図、
図6は、
図2のフィルター装置のB−B線での水溜め部の水位が不適正である時の概略断面図である。
【0060】
図1において、符号10は、全体で本発明のフィルター装置が適用される燃料電池システムを示している。
図1に示したように、燃料電池システム10では、固体高分子型燃料電池本体である燃料電池スタック12を備えている。
【0061】
この燃料電池スタック12には、燃料ガス供給源である水素タンク14から、燃料ガスである水素ガスが供給されるアノード(水素極)16を備えている。また、燃料電池スタック12には、酸化剤ガスである空気が、コンプレッサー18を介して供給されるカソード(空気極)20が備えられている。
【0062】
燃料ガスである水素ガスは、高圧水素ガスとして、水素タンク14に貯留されており、水素タンク14から供給される高圧水素ガスは、水素圧力調整弁22によって、燃料電池の運転圧力まで減圧され、水素供給流路24を介して、アノード16へ供給される。
【0063】
アノード16で消費されなかった余剰の水素ガスは、水素循環ポンプ26を介して、水素循環流路28によって、水素供給流路24に還流されて、水素タンク14から供給される水素ガスと混合され、アノード16へ供給されるようになっている。
【0064】
一方、酸化剤ガスとしての空気は、図示しないエアフィルターを介して、コンプレッサー18を介して圧縮され、圧縮した空気が、空気供給流路30を介して、カソード20へ供給されるようになっている。
【0065】
そして、カソード20で、空気中の酸素が反応に使用され、残りの空気は、空気圧を調整する空気圧力調整弁32を介して排出されるようになっている。
また、燃料電池スタック12には、燃料電池スタック12の温度を所定の温度に保つために、冷却水などの冷却流体を循環する冷却系が設けられている。すなわち、ラジエーター34で冷却された冷却流体が、冷却水ポンプ36を介して、冷却流体循環経路38、40を介して、燃料電池スタック12を冷却するように循環される。
【0066】
また、水素循環流路28には、余剰の水素ガスを外部に排出するための排出経路42が分岐されており、この排出経路42を開閉するための、例えば、電磁弁を用いたパージ弁44が配置されている。
【0067】
そして、水素循環流路28を流れる流体中には、異物などの不純物が含まれる場合があるため、排出経路42のパージ弁44の上流側には、本発明のフィルター装置50が設けられている。
【0068】
なお、図中、符号46は、水捨弁、48は、コントロールユニットを示している。
このコントロールユニットは、例えば、CPUなどの演算処理装置から構成され、予め記憶装置に別途記憶された種々のデーター、プログラムに基づいて、コンプレッサー18、水素圧力調整弁22、水素循環ポンプ26、空気圧力調整弁32、ラジエーター34、冷却水ポンプ36、パージ弁44、水捨弁46などの作動を制御するように構成されている。
【0069】
本発明のフィルター装置50は、
図2に示したように、上部ハウジング52と、下部ハウジング54とを備えており、これらの上部ハウジング52と下部ハウジング54との間は、シール部材56によりシールされている。
【0070】
下部ハウジング54には、
図2に示したように、水素循環流路28の分岐経路28aに接続され、流体を導入する流体導入経路58が形成されている。
この流体導入経路58は、下部ハウジング54の下方側部から、上方に傾斜してフィルター室60の下方からフィルター室60に至るように形成されている。
【0071】
すなわち、流体導入経路58の上方端部58aは、下部ハウジング54の上方部分中央に形成されたフィルター室60と連通するように構成されている。このフィルター室60内には、
図2、
図3に示したように、流体導入経路58から導入された流体を透過させて、流体中の、例えば、ゴミなどの異物を除去するためのフィルター62が収容されている。
【0072】
フィルター62は、
図2、
図3に示したように、有底で略円筒形状のフィルター本体64を備えている。そして、このフィルター本体64の4本の縦枠部材64aの間に形成された開口部64bを覆うようにフィルター本体64の側周部に装着された、例えば、メッシュなどのフィルター部材66を備えている。
【0073】
なお、フィルター本体64と上部ハウジング52との間には、シール部材68が介装されている。
また、フィルター62の上部には、上部ハウジング52に、フィルター62を通過した流体を排出する流体排出経路70が形成されており、この流体排出経路70が、排出経路42のパージ弁44に接続されている。また、この流体排出経路70は、上方に延びる第1の流体排出経路70aと、下方に傾斜するように、上部ハウジング52の側部に至る第2の流体排出経路70bとから構成されている。
【0074】
さらに、
図2に示したように、フィルター62の下方のフィルター本体64の底部64cの周囲には、断面略三角形で溝形状の水溜め部72が、下部ハウジング54のフィルター室60の下端の隅角部に形成されている。
【0075】
このように、水溜め部72が、下部ハウジング54のフィルター室60に形成されているので、水溜め部72を、フィルター室60を形成する下部ハウジング54に、例えば、溝加工などによって形成することができ、水溜め部72の形成のための加工が容易となる。
【0076】
すなわち、水と気体からなる湿潤流体が、フィルター62を通過する際、一部の水はフィルター62のフィルター部材66を通過せず、表面張力によってフィルターのフィルター部材66内に滞留することになる。この状態で低温下に放置した場合に、フィルター部材66内に滞留した水が、表面張力によってフィルター部材66の全体に広がり、フィルター部材66の流路(メッシュ)全体を凍結によって閉塞させてしまうことになる。
【0077】
これに対して、本願発明のように、フィルター62の下方に設けられた水溜め部72を備えることによって、水溜め部72に保持される水が増え、水溜め部72の液面が、フィルター62のフィルター部材66まで到達すると、水溜め部72に溜まった水とフィルター部材66に付着、残留した水とがつながることになる。
【0078】
これにより、表面張力と重力によってフィルター部材66内に滞留した水が、水溜め部72に排出され、水溜め部72に溜まった水が流体導入経路58に流れ落ちる際、水溜め部72に溜まった水が呼び水となり、フィルター部材66に付着、残留した水分を排出することができる。
【0079】
なお、水溜め部72の底面72aと流体導入経路58とが連通しているため、水溜め部に溜まった水自体も、流体導入経路58へ同時に排出されるようになっている。
従って、システム停止後に低温下に放置した場合にも、フィルター部材66の凍結による閉塞を、迅速かつ確実に防止することができ、また、フィルター部材66の凍結によるフィルター62自体の破損も防止できるとともに、燃料電池システムの起動を迅速に行うことができる。
【0080】
しかも、従来のように、複雑な制御、解凍用ヒーターなどの熱源も不要で、安価でコンパクトな、燃料電池システムの湿潤流体流路に配置されるフィルター装置50を提供することができる。
【0081】
この場合、
図2に示したように、水溜め部72の底面72aが 、フィルター62のフィルター部材66の上端面66aよりも下方に位置するように形成されるとともに、流体導入経路58の下面58bが、水溜め部72の底面72aよりも下方に位置するように形成されているのが望ましい。
【0082】
このように構成することによって、水溜め部72の底面72aが 、フィルター62のフィルター部材66の上端面66aよりも下方に位置するように形成されているので、システム運転中に、水溜め部72に溜まる水の水位が、フィルター62のフィルター部材66の下端面66bよりも上となるように、水溜め部72に溜まる水の水位を、フィルター62の外径、フィルター室60の内径、および流体導入経路58により決定することができる。
【0083】
すなわち、フィルター62とフィルター室60の側壁60aとの隙間寸法J1を所定の寸法となるように構成(調整)することにより、水溜め部72に溜まる水に作用する表面張力を制御し、水が流体導入経路58に流れ落ちるのを抑制するようにすればよい。これにより、システム運転中に、水溜め部72に溜まる水の水位を容易に設定することができる。
【0084】
具体的には、例えば、
図3〜
図5に示したように、水溜め部の水位をK1にしたい場合には、流体導入経路58の水溜め部72の周長をL1、フィルター室60の内径D1の水溜め部72の周長をM1、単位長さ当りの水の表面張力をγとすると、
流体導入経路58の水溜め部72の周長L1と、フィルター室60の内径D1の水溜め部72の周長M1に作用する水の表面張力は、
F1=(L1+M1)・γとなる。
【0085】
そして、この水の表面張力F1に対して打ち勝ち、傾斜角θの流体導入経路58を流れ落ちる最小の水の体積Wは、重力加速度をGとすると、
W=F1/(G・Cosθ)で求まる。
【0086】
この時のWは、
図3に示したように、フィルター62の中に溜まる水の体積W1と、フィルター62と下部ハウジング54のフィルター室60の側壁60aとの間に溜まる水W2の和、すなわち、
W=W1+W2である。
【0087】
ところで、W1は、フィルター62の内径寸法D2と、フィルター62を浸す水位で決まるものである。
従って、フィルター62と下部ハウジング54のフィルター室60の側壁60aとの間に溜まる水W2が、所望の水位K1となるように、フィルター62と下部ハウジング54のフィルター室60の側壁60aとの間の隙間寸法J1を調整し設定すれば良い。
【0088】
ここで、フィルター62と下部ハウジング54のフィルター室60の側壁60aとの間の隙間寸法J1を大きくし過ぎると(
図6のJ2参照)、
図6に示したように、水溜め部72の水位が、所望のK1まで達せず、水位K2となってしまう。
【0089】
これにより、フィルター62のフィルター部材66の下端面66bよりも下の位置となり、水溜め部72の水とフィルター部材66のメッシュ内の水とがつながらないことになってしまい、フィルター部材66に付着、残留した水分を排出することができないことになる。
【0090】
従って、前述したように、フィルター62と下部ハウジング54のフィルター室60の側壁60aとの間に溜まる水W2が、所望の水位K1となるように、フィルター62と下部ハウジング54のフィルター室60の側壁60aとの間の隙間寸法J1を調整し設定すれば良い。
【0091】
この場合、フィルター62と下部ハウジング54のフィルター室60の側壁60aとの間の隙間寸法J1としては、特に限定されるものではないが、上記の表面張力を考慮すれば、流体導入経路58の内径を5〜20mmとした時に、1〜20mmの範囲に設定するのが望ましい。
【0092】
なお、流体導入経路58、第2の流体排出経路70bのように、傾斜を設けることで、水分を配管の下方側へ流すことができる。
この場合、流体導入経路58の傾斜角θとしては、特に限定されるものではないが、上記の排出効果を考慮すれば、30°〜60°の範囲に設定するのが望ましい。
【0093】
また、
図2、
図4〜
図5に示したように、水溜め部72の底面72aが、外側に向かって下方に傾斜するように形成されているのが望ましい。
このように構成することによって、水溜め部72の底面72aが、外側に向かって下方に傾斜するように形成されているので、水溜め部72の水が、重力によって流体導入経路58に排出されやすくなる。
【0094】
この傾斜角αとしては、特に限定されるものではないが、上記の排出効果を考慮すれば、45°〜75°の範囲に設定するのが望ましい。
また、この場合、フィルター62のフィルター部材66の材質としては、特に限定されるものではなく、フィルター機能を有するものであれば、SUSなどのステンレス製のメッシュ、多孔質のフィルターなど従来公知の種々の材料から構成することができる。
【0095】
また、フィルター62のフィルター本体64の材質としても、特に限定されるものではなく、合成樹脂、SUSなどのステンレスなどの金属など公知の材質から構成することができる。
【0096】
また、フィルター部材66は、一層のフィルター部材66とするのが排水機能を考慮すれば望ましいが、多層であっても良いことはもちろんである。
また、この実施例では、フィルター62は、略円筒形状のフィルター本体64としたが、円錐形状、角錐形状、多角形形状など種々の形状とすることができる。
【0097】
なお、流体導入経路58、ならびに、流体排出経路70に、撥水処理を施すのが、水分が流れやすくなるので望ましい。
このような撥水処理としては、従来公知の撥水処理が使用可能であって、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂によるフッ素処理などの撥水処理を施すのが、水分が流れやすくなるので望ましい。
【0098】
また、水溜め部72に、親水処理が施されているのが望ましい。
このように水溜め部72に、親水処理を施すことにより、水溜め部72に溜る水が球状にならず流れやすくなり、水溜め部72に溜まった水が流体導入経路58に流れ落ちやすくなり、フィルター部材66に付着、残留した水分を効果的に排出することができる。
【0099】
また、フィルター62のフィルター部材66の下方部分に、親水処理が施されているのが望ましい。
このようにフィルター62のフィルター部材66の下方部分に、親水処理を施すことにより、フィルター部材66の下方部分に付着、残留した水分が、球状にならず流れやすくなり、重力の作用によって排出しやすくなる。
【0100】
この場合、親水処理としては、特に限定されるものではなく、従来公知の親水処理が使用可能であって、例えば、酸化ケイ素をアルコールなどの溶剤に溶解・分散させコーティングする方法などを採用することができる。
【0101】
また、フィルター62のフィルター部材66の上方部分に、撥水処理が施されているのが望ましい。
このようにフィルター62のフィルター部材66の上方部分に、撥水処理を施すことによって、フィルター62のフィルター部材66の上方部分に付着した水分が撥水処理により弾かれて、フィルター部材66の上方部分(メッシュ部分)に残留することなく、重力の作用によって、フィルター部材66の下方部分に引き寄せられるため、フィルター部材66に付着、残留した水分を効果的に排出することができる。
【0102】
しかも、フィルター62のフィルター部材66の下方部分に、親水処理が施されている場合には、フィルター62のフィルター部材66の上方部分に付着し、撥水処理により弾かれた水分が、親水処理が施されたフィルター62のフィルター部材66の下方部分により引き寄せられるため、フィルター部材66に付着、残留した水分を効果的に排出することができる。
【0103】
なお、この実施例では、流体導入経路58から、水と気体からなる湿潤流体を導入して、フィルター62を通過させ、流体排出経路70から湿潤流体を排出するようにしたが、逆に、流体排出経路70から湿潤流体を導入して、フィルター62を通過させ、流体導入経路58から湿潤流体を排出するようにすることももちろん可能である。
【実施例2】
【0104】
図7は、本発明のフィルター装置の別の実施例のフィルター62を示す概略縦断面図である。
この実施例のフィルター62は、
図1〜
図5に示した実施例1のフィルター62と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0105】
この実施例のフィルター62では、
図7に示したように、フィルター62の内側底面、すなわち、フィルター本体64の底部64cの内側底面64eが、外側に向かって下方に傾斜するように形成されている。
【0106】
このようにフィルター本体64の底部64cの内側底面64eが、外側に向かって下方に傾斜するように形成されているので、フィルター本体64の底部64cの内側底面64eの傾斜で、水がフィルター62の内側底面から外に抜けやすくなる。
【0107】
また、
図7の二重のハッチングの部分で示したように、フィルター62の内側底面64eとフィルター部材66との間に溜る水位は、水とフィルター部材66との表面張力により上昇する。
【0108】
この際、フィルター62の内側底面64eは傾斜を形成するために隆起しているので、前述の表面張力による水位の上昇に加え、このフィルター62の内側底面64eの隆起の分、より水位は上昇することになる。
【0109】
その結果、フィルター62の内側底面64eとフィルター部材66との間に溜る水の水位が上昇するので、重力によって、フィルター部材66に付着、残留した水分をフィルター62内から排出しやすくなる。
【0110】
さらに、フィルター62の内部(フィルターの内側底面)に滞留した水の凍結によって、フィルター62自体が破損するのを防止することもできる。
なお、この場合、フィルター本体64の底部64cの内側底面64eの傾斜角βとしては、特に限定されるものではないが、上記の排出効果を考慮すれば、15°〜60°の範囲に設定するのが望ましい。
【実施例3】
【0111】
図8は、本発明のフィルター装置の別の実施例を示す概略縦断面図、
図9は、
図8のフィルター装置のD部分の部分拡大図である。
この実施例のフィルター装置50は、
図1〜
図5に示した実施例1のフィルター装置50と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0112】
この実施例のフィルター装置50では、
図8〜
図9に示したように、フィルター62のフィルター本体64の底部64cに、水溜め部72と連通する連通フィルター部材74が形成されている。また、フィルター本体64の底部64cには、縦枠部材64aが下方に延設した延設部64dが形成され、これにより、フィルター本体64の底部64cにも水溜め部72が形成されている。
【0113】
なお、
図8〜
図9では、説明の便宜上、連通フィルター部材74を符号のみで示している。
このようにフィルター62のフィルター本体64の底部64cに、フィルター62の内部と水溜め部72とを連通する連通フィルター部材74が形成されているので、水溜め部72の水位が高くなると、フィルター62のフィルター部材66内に滞留した水は、フィルター62のフィルター本体64の底部64cに形成された連通流路76を介して、水溜め部72と連通することになる。
【0114】
これにより、フィルター62のフィルター本体64の底部64cに形成された連通フィルター部材74を介して、水溜め部72に溜まった水とフィルター部材66に付着、残留した水とがつながることになる。
【0115】
これにより、表面張力と重力によってフィルター部材66内に滞留した水が、フィルター62のフィルター本体64の底部64cに形成された連通フィルター部材74を介して、水溜め部に排出されることになる。
【0116】
そして、水溜め部72に溜まった水が流体導入経路58に流れ落ちる際、水溜め部72に溜まった水が呼び水となり、フィルター62のフィルター本体64の底部64cに形成された連通フィルター部材74を介して、フィルター部材66に付着、残留した水分を排出することができる。なお、水溜め部72の底面72aと流体導入経路58とが連通しているため、水溜め部に溜まった水自体も、流体導入経路58へ同時に排出される。
【実施例4】
【0117】
図10は、本発明のフィルター装置の別の実施例を示す概略縦断面図、
図11は、
図10のフィルター装置のE部分の部分拡大図である。
この実施例のフィルター装置50は、
図1〜
図5に示した実施例1のフィルター装置50と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0118】
この実施例のフィルター装置50では、
図10〜
図11に示したように、フィルター62の内側の底面、すなわち、フィルター62のフィルター本体64の底部64cの内側底面64eよりも低い側面位置まで、フィルター62のフィルター部材66が延設された延設部66cを備えている。
【0119】
このようにフィルター62のフィルター本体64の底部64cの内側底面64eよりも低い側面位置まで、フィルター62のフィルター部材66が延設された延設部66cを備えているので、水溜め部72の水位が低い状態でも、このフィルター部材66の延設部66cを介して、フィルター62のフィルター部材66内に滞留した水と、水溜め部72に溜まった水とがつながることになる。
【0120】
従って、表面張力と重力によってフィルター部材66内に滞留した水が、このフィルター部材66の延設部66cを介して、水溜め部72に排出され、水溜め部72に溜まった水が流体導入経路58に流れ落ちる際、水溜め部72に溜まった水が呼び水となり、フィルター部材66に付着、残留した水分を排出することができる。
【0121】
なお、水溜め部72の底面72aと流体導入経路58とが連通しているため、水溜め部に溜まった水自体も、流体導入経路58へ同時に排出される。
なお、
図11に示したように、このフィルター部材66の延設部66cの端部66dは、フィルター62のフィルター本体64の底部64cに埋設状態で装着されており、フィルター部材66が抜け落ちるのが防止されるようになっている。
【実施例5】
【0122】
図12は、本発明のフィルター装置の別の実施例を示す概略縦断面図である。
この実施例のフィルター装置50は、
図1〜
図5に示した実施例1のフィルター装置50と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0123】
この実施例のフィルター装置50では、
図12に示したように、別の水溜め部78が、フィルター62の内部に、すなわち、フィルター本体64の底部64cに形成されている。
【0124】
これにより、フィルター62のフィルター部材66内に滞留した水と、水溜め部78に溜まった水とがつながり、水溜め部78から溢れた水が、水溜め部72に排出され、水溜め部72に溜まった水が流体導入経路58に流れ落ちる際、水溜め部78に溜まった水が呼び水となり、フィルター部材66に付着、残留した水分を排出することができる。なお、水溜め部72の底面72aと流体導入経路58とが連通しているため、水溜め部に溜まった水自体も、流体導入経路58へ同時に排出される。
【0125】
なお、
図12のフィルター装置50では、水溜め部72とフィルター62の内部に形成した水溜め部78との2つの水溜め部を形成したが、フィルター62の内部に形成した水溜め部78のみとすることも可能である。
【0126】
この場合には、水溜め部78を、フィルター62の内部に形成するので、水溜め部を、フィルター室60を形成するフィルターハウジングに形成する必要がないので、フィルターハウジングに、溝加工などの特別な加工が不要で、加工の手間が省け、コストを低減することができる。
【実施例6】
【0127】
図13は、本発明のフィルター装置を制御弁に適用した別の実施例を示す概略縦断面図である。
この実施例のフィルター装置50は、
図1〜
図5に示した実施例1のフィルター装置50と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0128】
この実施例のフィルター装置50では、上部ハウジング52と下部ハウジング54を一体としたフィルターハウジング51とし、このフィルターハウジング51の上方部分中央に弁室82を形成している。また、弁室82に連通するように、流体排出経路70が下方外側に傾斜するように形成されている。
【0129】
そして、フィルターハウジング51に、
図13に示したように、制御弁80の弁体84を備えた電磁弁型の制御部86を装着することによって、制御弁80を組み立てている。
また、この制御弁80の制御部86は、
図13に示したように、駆動部88が挿通された電磁コイル90を備えている。
【0130】
そして、電磁コイル90は、巻線が巻かれたボビン92とボビン92の周囲を囲むようにモールド樹脂94でモールドされている。さらに、
図13に示したように、電磁コイル90は、磁気フレーム96の内部に装着され、磁気フレーム96を介して駆動部に固定されている。
【0131】
すなわち、磁気フレーム96の底板部98の中央部に形成された駆動部挿通孔100、ボビン92の駆動部挿通孔102に、駆動部88が挿通されている。そして、駆動部88の吸引子104の上部に形成された締結ボルト106が、磁気フレーム96の上板部108の中央部に形成されたボルト挿通孔110に挿通され、ナット112によって螺合されている。
【0132】
これにより、電磁コイル90が駆動部88に挿通して固定され、制御弁80の制御部86が構成されている。
なお、駆動部88は、プランジャーケース114を備え、このプランジャーケース114内に上下に移動可能に、弁体84を固定したプランジャー116を備えている。そして、吸引子104とプランジャー116との間に、プランジャー116を下方に、すなわち、弁座118の方向に弁体84を付勢する付勢バネ120が介装されている。
【0133】
さらに、プランジャーケース114の下端外周には、シール部材122が装着されたシール枠部材124が固着され、磁気フレーム96の底板部98の締結孔128とフィルターハウジング51に形成した締め付け孔130を介して、締め付けボルト132でフィルターハウジング51に装着されている。
【0134】
さらに、シール枠部材124の下方には、ダイヤフラム固定部材134がシール部材135を介装した状態で固定されており、このダイヤフラム固定部材134を介して、ダイヤフラム136が弁体84に装着されている。
【0135】
また、
図13に示したように、フィルター室60を構成するフィルターハウジング51とフィルター62との間に、Oリング形状の弾性部材138が介装されている。
このような制御弁80は、電磁コイル90に通電することにより、プランジャー116が、付勢バネ120に抗して吸引子104方向に移動し、プランジャー116に連結された弁体84が、弁座118から離反して、弁口が開放されるようになっている。
【0136】
また、電磁コイル90への通電を遮断することにより、プランジャー116が、付勢バネ120の付勢力により、吸引子104から離反する方向に移動し、プランジャー116に連結された弁体84が、弁座118に当接して、弁口が閉止されるようになっている。
【0137】
このように構成することによって、制御弁80の作動による振動、すなわち、弁体84が弁座118に離接することによる振動などがフィルター62に伝わり、弾性部材138で保持されたフィルター62が振動して、フィルター部材66に付着、残留した水分が排出し易くなる。これにより、フィルター部材66に付着、残留した水分の凍結による制御弁80の流体の流れが阻害されるのを防止することができる。
【0138】
すなわち、制御弁80の作動による振動がフィルターに加速度Aを与え、前述した水の表面張力F1に対して打ち勝ち、傾斜角θの流体導入経路58を流れ落ちるための最小の水の体積の式は、
W=F1/[(G+A)・Cosθ]となる。
【0139】
すなわち、重力加速度Gに、制御弁80の作動による振動がフィルターに加速度Aが加わる分、少量の水でフィルター部材66に付着、残留した水分の排出が可能となる。
なお、弾性部材138としては、弾性を有するものであれば、上記のようなOリング形状以外にも、皿ばね、コイルばねなど公知の弾性部材を使用することができる。
【0140】
また、この実施例のフィルター装置50では、制御弁80として、電磁弁に適用した実施例について説明したが、制御弁であれば、特に限定されるものではなく、電動弁、三方弁などその他の制御弁にも適用可能である。
【実施例7】
【0141】
図14は、本発明のフィルター装置を制御弁に適用した別の実施例を示す概略縦断面図である。
この実施例のフィルター装置50は、
図13に示した実施例6のフィルター装置50と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0142】
この実施例のフィルター装置50では、
図14に示したように、制御弁80の弁体84とフィルター62とが連結されている。すなわち、弁体84が下方に延設された連結軸部140によって、その先端部142において、かしめ加工によって、フィルター62のフィルター本体64の底部64cに固定されている。
【0143】
また、フィルター62のフィルター本体64の底部64cとフィルターハウジング51との間には、フィルター62の上下振動のための間隙137が形成されている。
また、
図13に示した実施例6のフィルター装置50の弾性部材138は設けられていない。
【0144】
このように構成することによって、制御弁80の弁体84とフィルター62とが連結されているので、制御弁80の作動によって、直接フィルター62が振動して、フィルター部材66に付着、残留した水分がより排出し易くなる。
【実施例8】
【0145】
図15は、本発明のフィルター装置を制御弁に適用した別の実施例を示す概略縦断面図である。
この実施例のフィルター装置50は、
図13に示した実施例6のフィルター装置50と基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0146】
この実施例のフィルター装置50では、
図15に示したように、
図13に示した実施例6のフィルター装置50の弾性部材138は設けられていない。
また、
図7に示した実施例2のフィルター装置50と同様に、フィルター62の内側底面、すなわち、フィルター本体64の底部64cの内側底面64eが、外側に向かって下方に傾斜するように形成されている。
【0147】
さらに、フィルター62の交換が容易となるように、フィルターハウジング51の下端にフィルター固定用開口部144が形成され、このフィルター固定用開口部144に、シール部材146を介装して、フィルター固定プラグ148が螺着されている。
【0148】
また、
図15に示したように、水溜め部72の底面72a、すなわち、フィルターハウジング51の下端とフィルター固定プラグ148との間には、連通用間隙150が形成され、この連通用間隙150と流体導入経路58とを連通する排出用連通孔152が形成されている。
【0149】
これにより、連通用間隙150、排出用連通孔152を介して、フィルター部材66に付着、残留した水分が流体導入経路58に、より排出し易くなる。
すなわち、この実施例のフィルター装置50では、水溜め部72だけでなく、連通用間隙150にも水が溜まることになる。しかしながら、排出用連通孔152が設けられているので、流体導入経路58を流れ落ちる水と、連通用間隙150に溜まった水とが、排出用連通孔152を介して、つながることになる。
【0150】
これにより、流体導入経路58から水が流れ落ちる際、流体導入経路58から流れ落ちる水が呼び水となって、連通用間隙150に溜まった水が排出されることになる。
その結果、この実施例のフィルター装置50では、水溜め部72とフィルター部材66に付着した水との呼び水効果(一回目)だけでなく、流体導入経路58から流れ落ちる水と連通用間隙150に溜まった水とで発生する呼び水効果(二回目)が発生し、合計2回の呼び水効果が発生することになる。
【0151】
このように、合計2回の呼び水効果が発生することにより、フィルター部材66に付着した水だけでなく、水溜め部72の水をより確実に取り除くことができる。
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明のフィルター装置50を、パージ弁44の上流側に配置した実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、図示しないが、水捨弁46の上流側および、空気圧力調整弁32の上流側に配置しても、同様な効果を得られる。
【0152】
また、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、本発明のフィルター装置50を、燃料電池システム10に適用した実施例について説明したが、流体中に水分を含むシステムの湿潤流体流路であれば、燃料電池システム10に限らず配置することが可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。