(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
早期警報のために一次主体(primary principal)と非一次主体(non-primary principal)との間の衝突の評価を容易にするシステムであって、
一次主体及び非一次主体の現在の動きを取得するように構成されたデータ取得機構と、
前記一次主体及び前記非一次主体の現在の動きと、
前記一次主体のダイナミクスモデルと、
前記一次主体に関連する人間(person)が警戒状態又は非警戒状態にあるかを表す精神状態モデルと
に基づいて、前記一次主体及び前記非一次主体の1つ又はそれ以上の未来の状態をそれぞれ評価するように構成された計算機構と
を含む特化評価機構(specialized assessment mechanism)と、
前記一次主体と前記非一次主体との間の衝突の評価を示す1つ又はそれ以上の結果を生成するように構成された結果生成機構と
を含み、
前記特化評価機構は、さらに、前記衝突における衝突時間及び衝突の重大度を評価し、衝突の警報を遅延させるか否かを決定し、これにより、複数の警報についてのスケジュールを設定し、前記複数の警報の発行の間隔が最も多くの警報を発行する間隔よりも短い場合、スケジュール設定ができないことを表す警報を与えることを決定することを特徴とするシステム。
前記一次主体及び前記非一次主体の前記未来の状態を評価する間、前記計算機構は、前記一次主体及び前記非一次主体の前記現在の動き及び過去の動きに基づいて、逐次的なベイズ(Bayesian)フィルタリングを実行するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記逐次的なベイズフィルタリングを実行する間、前記計算機構は粒子(particle)フィルタリングを実行するように構成されることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
前記逐次的なベイズフィルタリングを実行する間、前記計算機構はInteracting Multiple Model(IMM)フィルタリングを実行するように構成されることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ここで用いられる「車両」は、自力で、別の車両の力で、或いは、人力のいずれかで動かすことができるいずれかのコンテナを含む。それは、以下に限定されるものではないが、自転車、自動車、トラック、バス、及びトレーラを含む。
【0017】
ここで用いられる「主体」は、衝突の当事者とすることができるいずれかの物体を指す。主体は動いていてもよいし、又は静止していてもよい。例えば、主体は、車両、歩行者、自転車、建物、又は街灯柱とすることができる。「一次主体」はユーザが警報される主体である。「非一次主体」は潜在的な衝突の当事者であり、一次主体ではない主体である。幾つかの実施形態においては、主体はまた、通りを横断している歩行者のグループのような、物体のグループを指すこともできる。
【0018】
「ユーザ」又は「主体のユーザ」は、主体を動作させる個人を指す。例えば、ユーザは、車が主体であるときには車の運転者とすることができ、又は、自転車が主体であるときは自転車に乗っている人とすることができる。主体が歩行者である場合には、対応するユーザは歩行者自身である。
【0019】
図1は、本発明の1つの実施形態による例示的な衝突警報システムを示す。ユーザは、通りを進んで車両を運転するとき、フロントガラス100を通して車両が近づいていく交差点を目にする。この例においては、車両には、左の歩行者及び右の自転車に乗っている人のような、他の近づいてくる主体を検出できる多数のセンサを装備している。幾つかの実施形態においては、他の主体の検出は、例えば、交差点に近い固定位置に取り付けられた外部センサによって実行することができる。センサのデータを、無線通信を通して送信し、車両搭載レシーバによって受信することができる。次に、車両の衝突警報システムは、受信したセンサのデータを処理し、警報を潜在的な衝突のユーザに発行する。この例においては、警報システムは、近づいてくる主体の像に対応する点滅する四角102及び104のような、目に見える警報の像をフロントガラス100上に投影することができる投影機構を含む。
【0020】
車両が移動すると、点滅する四角102及び104が現れて、次に消える。警報信号の発行は、その位置及び速度のような、車両の状態に依存することができる。警報システムは、1秒当たり何度もセンサのデータを処理することによって繰り返し動作し、それによって、リアルタイムに近い衝突警報を与えることができる。上の例は、本発明の多数の可能な実施形態の1つにすぎないことに注目されたい。異なる実施形態は、例えば、音声及び/又は視覚の合図に基づいた広範囲の警報機構により動作することができる。
【0021】
一般に、衝突警報システムは、データ収集機構、データを処理するための情報処理機構、及びユーザに警報を発行するユーザインターフェースを含む。本開示は、センサの情報が受信された後、及びユーザインターフェースが警報を発行する前に発生する情報処理に対する、新規のアーキテクチャ、並びに、実装の実施形態を示す。1つの実施形態においては、この情報処理アーキテクチャは「推論層」と呼ばれる。この推論層は、潜在的な衝突についてユーザに早期の警報を与えることができる。このような警報は、衝突のかなり前に発生することができ、従って、ユーザが反応して衝突を避けるのに十分な時間を与えることができる。
【0022】
幾多の事故報告によって明らかにされるように、事故の大部分に関しては、関係する主体の少なくとも1つは、一般に、予測可能な経路を辿る。例えば、主体は交差点で曲がる、又は横断歩道を横断することができる。一般に、衝突に関係する少なくとも1つの主体は、潜在的な衝突を認識しない。このようなシナリオに対しては、推論層は、これらの予測可能な経路の推測的知識を適用して、事故の確率を評価することができる。
【0023】
推論層の実施形態は、センサの情報を処理し、効果的な警報を発行するときにシステムが直面する幾つかの課題に対処する。このような課題は以下のものを含む。
・早期警報。事故を避ける行動を取る前に反応し、自分自身の判断を適用するのに十分な時間を与えるために、ユーザに早めに警報を与えることが重要である。
・正確な警報。早期警報を発行する間、システムはまた、起こりうる衝突を予想するために主体の経路を正確に予測すべきである。理想的には、システムは主体の現在の動き、並びに、主体が辿る可能性のある経路を正確に評価すべきである。
・効果的な警報。早めに警報を与えるように十分に先読みするシステムは、多数の潜在的な事故を「見る」であろう。システムは、理想的には、注意深く、事故の重大度を評価し、より危機的で切迫した事故についてのみ警報すべきである。システムが警報を発行するのに選択的でない場合には、運転者は頻繁な警報によって注意散漫になるか、又はいらいらすることになる。
・カスタマイズ可能な警報。警報発行機構の様々な範囲(例えば、オーディオ、インダッシュ、ヘッドアップ、及び道端の標識)をサポートするために、多用途の相互運用可能な警報システムは、異なるユーザインターフェースに基づいてカスタマイズ化をサポートすべきである。システムは、注意散漫になるリスク及びこれらのインターフェースに関連する警報頻度の限界を考慮に入れることが理想的である。
【0024】
本発明のアーキテクチャの実施形態においては、推論層は主体にある。主体の推論層は、車両自体から、他の主体におけるセンサから、及び/又は、交差点のインフラストラクチャから情報を受信することができる。明らかにするために、ここに説明される推論層は、歩行者又は自転車に乗っている人が推論層をもつ装置を運ぶことは可能ではあるけれども、車両内にあると仮定される。同様に、インフラストラクチャの能力は、交差点の近くにあることが仮定されるが、このような能力はまた、特に事故がよくある交差点間に配置することもできる。
【0025】
本発明の衝突警報のアーキテクチャは、未来のインテリジェントな交差点から大いに利益を得ることができる。これらの交差点は、追跡されることができるどのような主体の幾何学的形状及び座標も送信できることが期待される。これらの能力は、特徴付けられて標準化される可能性があり、これらは共同で共有し、資金が提供される技術に対する重要な事柄である。他方では、より複雑な推論を個々の消費者のさらに近くに、すなわち、車両又は携帯装置内に配置できることが予見できる。
【0026】
さらに別の実施形態においては、推論層は、自律的に、インフラストラクチャとは独立して、必要であれば、搭載データベース及び搭載センシング部で機能することができる。このような自律的な推論層は、インテリジェントインフラストラクチャの開発に先駆けて、及び、その追跡情報を通信できる他の主体の臨界量の出現に先駆けて、機能的な警報システムの展開を可能にする。
【0027】
本開示においては、推論層は、一次主体及び非一次主体の位置及び軌道についての情報に対するアクセスを有すると仮定される。特に、基本のセンシング、データ融合、及びデータ関連の問題は、推論層が適用される前に既に対処されると仮定される。例えば、搭載されたグローバル・ポジショニング・システム(GPS)は、擬似測距を解決し(have resolved pseudo-ranging)、必要に応じて、差異の改善(differential improvements)又は一時的なフィルタリング(temporal filtering)を実行すると仮定される。代替的に又は付加的に、交差点は、ビデオ及び/又は光検出及び測距(LIDAR)のセンサ信号を、特定の主体に関連する単一の軌跡に融合すると仮定される。後のセクションで開示されるように、推論層は、低品質のセンサデータを上手く管理することもできる、カルマンフィルタリング及び粒子フィルタリングのような技術を採用することができる。一般に、雑音はあるが、適度に正確な、主体についての追跡情報を提供する低レベルの「センシング層」が存在すると仮定される。
【0028】
推論層は、警報送給のために車両内の種々の設計のユーザインターフェースと相互運用することができる。理想的には、早期警報システムは、例えば、ヘッドアップディスプレイの周辺部において、又は方向性音のように、注意散漫になるのを最小にして、容易に理解される緊急警報を発行できるべきである。本発明の実施形態は、推論層が、警報送給のために多種多様なユーザインターフェースとインターフェースすることを可能にする。特に、推論層によって生成される事故評価は、警報送給機構が、警報を発行するかどうか、いつ及びどのように発行するかについての重要な決定をするのに必要な情報を含むことができる。さらに、特定のヒューマン・マシンインターフェース(HMI)及び特定のユーザの特徴にカスタマイズされるように、これらの決定をすることが可能である。
【0029】
1つの実施形態において、推論層は、二重評価システムに基づいており、「予備的評価」機構(「予備的アセッサ」とも呼ばれる)及び「特化評価」機構(「特化アセッサ」とも呼ばれる)を含む。
図2Aは、本発明の1つの実施形態による二重評価システムの例示的なアーキテクチャを示す。図示されるように、センシング及び通信機構202は、推論層108に、予備的評価機構204及び特化評価機構206を含むセンサ情報を送る。予備的評価機構204は、潜在的な事故の迅速な幾何学的及び論理的識別を実行し、適切な場合には、1つ又はそれ以上の特化評価機構206をインスタンス化して、潜在的な事故のより詳細な統計的分析を実行する。次に、特化評価機構206は、評価結果を予備的評価機構204に戻し、この予備的評価機構はこれらの結果をユーザインターフェース210に送る。次に、ユーザインターフェース210は、対応する警報を発行するかどうか、いつ及びどのように発行するかを判断する。
【0030】
この二重評価手法は、事故評価における3つの重要な問題を効果的に解決する。
・事故をもたらすか可能性がある多数の行動を分析する複雑性。予備的アセッサの幾何学的手法は、多数の主体及び事故のシナリオをカバーするように高度に最適化される。
・計算リソースの管理。広範囲の衝突シナリオに対する予備的評価を第1に計算することによって、推論層は潜在的な事故の可能性又は重大度を見積もり、さらに計算を要求する特化アセッサの形態で、最も危険又は起こりそうなシナリオにリソースを割り当てることができる。
・モデルの選択。一般に、潜在的な事故の統計的分析の正確さは、主体の行動に対するモデルの質に依存する。幸いにも、主体のかなりの割合は予測可能なパターンに従う。予備的アセッサは、これらのパターンを通してソートし、特化アセッサに適切なモデルを選択することができる。
【0031】
図2Bは、本発明の1つの実施形態による推論層の論理アーキテクチャを表す。未処理のセンサデータが上部から推論層に入るとき、予備的アセッサはもっともわずかな事故の機会を検出する。予備的評価の結果に基づいて、予備的アセッサは、さらに分析されるのに値する衝突シナリオを順序付けて選択することよって、評価管理を実行する。
【0032】
その後、予備的アセッサは、対応するモデルを伴った、選択されたセンサデータ及び適切な衝突シナリオを、特化アセッサ(specialized assesor)に供給する。次に、特化アセッサは、さらに正確な統計的計算を実行して、潜在的な衝突の詳細を予測して、そのような詳細を予備的アセッサに戻す。予測された衝突の詳細は警報生成システムに渡され、どの衝突シナリオが警報の発行を認可するのかを判断し、それに応じてこれらの警報のスケジュール設定をする。
【0033】
1つの実施形態においては、推論層は、大量のリアルタイムのセンサデータを通してフィルタ処理し、潜在的な衝突のユーザに警報を与えるのに最も効果的な方法を判断する情報選別機構として見ることができる。この情報選別機構は、特に、一次主体がその大部分は潜在的な衝突に関係しないであろうセンサ情報を連続して受信するときに有益である。
【0034】
図3は、本発明の1つの実施形態による推論層の例示的な動作を示すフローチャートを表す。動作中、システムは基礎をなすセンシング及び通信機構からセンサデータを受信する(動作302)。その後、システムは受信したセンサデータに対して予備的評価を実行する(動作304)。検出された衝突シナリオの数に基づいて、次に、予備的アセッサは多数の特化アセッサをインスタンス化して、衝突シナリオのさらに正確な分析を実行する(動作306)。予備的評価及び特化評価は、衝突予測の常時の更新を容易にするために高頻度で繰り返し実行できることに注目されたい。このように、システムは潜在的な衝突のリアルタイムに近い評価を与えることができる。
【0035】
次に、予備的評価の結果は、ユーザインターフェース又はHMIに供給され、どの衝突シナリオが警報になるかを判断する(動作308)。HMIはさらに、警報スケジュールを更新し、スケジュールにより、警報命令を警報システム312に発行する(動作310)。1つの実施形態においては、システムは特化評価と同じ頻度で動作308及び310を実行することに注目されたい。すなわち、警報スケジュールは、特化評価によって与えられる評価結果に基づいてほぼリアルタイムで更新される。
【0036】
前述の二重評価システムは、ソフトウェア、ハードウェア、又は両方の組み合わせで実装することができる。さらに、このシステムは、リアルタイムのオペレーティングシステム上で動作させることができる。
【0037】
1つの実施形態においては、予備的評価は、主体の起こりそうな軌道のライブラリを用い、効果的な幾何学的テストを適用して、2つの主体が衝突するかどうか判断する。
【0038】
1つの実施形態においては、システムは、主体の動きをX−Y平面の「軌道」、及び、軌道に沿った「ダイナミクス」に分解する。この分解は、主体が通常は、予測可能な軌道を辿るという観察に基づいている。例えば、交差点において車両が右に曲がるカーブは同様であることが多いが、これらの軌道に沿った車両の速度及び加速は大幅に変化することができる。すなわち、幾つかの車両は高速で曲がり、他の車両は低速で曲がる。この観察に基づいて、主体の動きは、対応する軌道及びダイナミクスによって記述することができる。さらに公式的には、軌道T(s)を、軌道sに沿った主体の変位(principal's displacement along the trajectory) s からのR→R
2関数という、物理的X−Y平面までの、ベクトル化された値(vector valued)とし、T(s)はパラメータ化された弧の長さ(arc-length parameterized)とする。
【0039】
換言すると、sを1単位だけ変化させることは、平面における単位長の経路を追跡することになる。1つの実施形態においては、Tは線分及び弧状線分の区分関数とすることができる。
【0040】
ダイナミクスは、R→Rからの関数s=D(t)として記述され、時間の関数として軌道に沿った変位を示す。1つの実施形態においては、Dは、一定の速度(すなわち、at+bとして表される)及び加速又は減速(すなわち、at
2+bt+cとして表される)の期間の区分関数とすることができる。動きは、軌道とダイナミクスの合成、T(D(t))として記述することができる。換言すると、ダイナミクスは直線に沿った主体の動きを記述し、軌道は平面におけるより現実的な経路を辿るようにこの動きを変形させる。
図4は、本発明の1つの実施形態により、左に曲がる主体に対応するダイナミクス及び軌道関数の例を示す。
【0041】
1つの実施形態においては、予備的アセッサは、前述の動きのモデルを用いて、特定の衝突シナリオにおける一次主体及び1つ又はそれ以上の非一次主体の動きを記述する。さらに、これらの動きのモデルを、衝突シナリオの統計的分析のために特化アセッサに渡すことができる。動きの分解及びモデリングの他の方法もまた、本発明によって採用できることに注目されたい。
【0042】
1つの実施形態においては、予備的評価は、「セグメント化錐体」と呼ばれる、幾何学的手法を採用して、主体の未来の動き及び位置を予測し、それによって、潜在的な衝突の評価を容易にする。セグメント化錐体は、主体が移動する可能性がある最悪の場合のシナリオを予測するのに用いることができる。より公式的には、セグメント化錐体は、Z軸が時間を示す、三次元空間(x,y,t)に定められる領域である。ここの記述においては、大部分の衝突は路面の同じ平面内で発生するため、主体の位置は二次元の座標(x,y)の組によって求められることに注目されたい。
【0043】
図5は、本発明の1つの実施形態による主体に対する例示的なセグメント化錐体を示す。セグメント化錐体は、特定のシナリオにおける主体の起こりそうな未来の位置の大部分をカバーする。例えば、シナリオが「車両は右に曲がる」である場合には、そのシナリオに対するセグメント化錐体は領域
を記述する。車両が右に曲がる場合には、高確率で、点(x,y,t)によって示される車両の未来の位置はS内部にある。システムが予測する未来に進めば進むほど(すなわち、Z軸に沿って上方にさらに進むと)、主体が位置する場所を正確に予測することがさらに困難になる。従って、セグメント化錐体は、増加するtで広がり、
図5に示されるような逆転した錐体の外観をもたらす。
【0044】
領域Sは、一組のt値、t
0,t
1,t
2,t
3で互いに結合される擬角柱によって形成されるため、「セグメント化」錐体と呼ばれる。擬角柱iは、未来の時間間隔(t
i、t
i+1)の間の主体の起こりそうな位置を示す。擬角柱の底面のt座標はt
iに対応し、上面のt座標はt
i+1に対応する。X−Y平面上の底面の投影は、時間t
iでの主体の起こりそうな位置に対応する。同様に、上面の投影は時間t
i+1での主体の起こりそうな位置に対応する。
【0045】
上の開示は、主体の未来の状態を表すために擬角柱を用いることを教示するが、一般に、どのような幾何学的物体も未来の時間での主体の未来の位置を示すのに用いることができることに注目されたい。例えば、未来の状態は円柱形の物体として表示することができる。
【0046】
異なる動きを表す幾つかの例示的なセグメント化錐体が
図6から
図8に示される。
図6は、一定の速度で直線に沿って動く可能性のある主体の未来の状態を表すセグメント化錐体を示す。
図7は、止まる可能性のある主体の未来の状態を表すセグメント化錐体を示す。
図8は、直線に沿って加速する可能性のある主体の未来の状態を表すセグメント化錐体を示す。
【0047】
各々の擬角柱に対して、バウンディングボックス502のようなバウンディングボックスが存在する。セグメント化錐体全体に対する「全体的な」バウンディングボックス504もまた存在する。これらのバウンディングボックスは、錐体交差の効果的な計算に対する基礎を形成する。1つの実施形態においては、2つの錐体の全体的なバウンディングボックスが交差しない場合には、対応する錐体は交差しない。その他の場合には、全てのセグメント化錐体は同じセグメント化、t
0,t
1,t
2,t
3,...,を共有することができるため、2つの錐体の個々の擬角柱のバウンディングボックスを、対応する時間間隔で対比較できる。時間のセグメント化又はスライシングは一様であってもよいし又は非一様であってもよいことに注目されたい。さらに、この例に示されるバウンディングボックスは直方体であるが、他の形状をもつ幾何学的物体もまたバウンディングボックスとして機能するように採用することができる。
【0048】
2つの錐体に属する2つの擬角柱のバウンディングボックスが交差する場合には、システムは、控えめに、錐体は交差すると仮定する。システムは、任意的に、さらに、擬角柱を交差について比較することができる。しかしながら、このさらなるテストは、その後の特化評価がより正確な評価を提供できるため、必要ないとすることができる。前述の階層的なバウンディングボックスの比較は大量の計算能力を消費することなく、リアルタイムに近い様式で迅速な予備的評価を可能にすることに注目されたい。
【0049】
図9は、本発明の1つの実施形態による2つのセグメント化錐体の例示的な比較を示す。システムは、第1に、2つの全体的なバウンディングボックス902と904を比較し、バウンディングボックス902及び904が交差すると判断する。システムは、その後、2つの錐体の対応する擬角柱のバウンディングボックスを比較する。対比較はいずれの交差ももたらさないため、システムは、2つのセグメント化錐体は交差せず、しかも、2つの主体は衝突しないと判断する。
【0050】
セグメント化錐体は、主体が特定のシナリオに従うと仮定して、主体がそうなる可能性のある最悪の投影を表す。錐体の生成は、主体のコンテキストに基づく。このコンテキストは、どちらのシナリオが起こりそうであるかを示唆する。次に、システムは起こりそうなシナリオ(時には主体ごとに1つより多い)に対する錐体を生成する。
【0051】
1つの実施形態においては、コンテキストはトリガ条件の論理積として表現される。例えば、車両が左折車線の中心近くにあり、交差点から40メートル以内にある場合には、左折錐体が生成される。一般に、トリガ条件は、主体の状態、ユーザの行動パターン、交差点周囲の情報を含む、種々の情報に基づいた多数の述語を含むことができる。例えば、トリガ条件は、信号機の状態、又は主体の経路をふさぐ他の車両の存在に依存することができる。
【0052】
セグメント化錐体の生成がトリガされると、錐体はシナリオのための推測的情報と主体の現在の状態を組み合わせることによって生成されて、時間に先立って(forward in time)錐体を投影する。主体の状態は、主体の位置及び速度を含むことができることに注目されたい。1つの実施形態においては、シナリオのライブラリによって共有される幾つかの基本の錐体生成器が存在する。錐体生成器の各々は、シナリオからの推測的情報と現在の状態を組み合わせるための異なる手順に従う。
【0053】
図10は、本発明の1つの実施形態によるセグメント化錐体の生成を示す。この場合において、推測的情報は左折のシナリオにおける軌道である。主体の現在の状態は、主体の位置及び速度を含む。錐体生成は、主体が軌道に近く、軌道とほとんど同じ方向に移動するときにトリガされる。主体(principal)の現在の状態は、さらに、軌道からの変位ベクトル及び速度(a displacement vector from the trajectory and a speed)を含む。次に、錐体の中心線が、軌道全体に変位を適用すること、並びに、主体の現在の速度での変位に従うダイナミクスを生成することによって形成される。
【0054】
1つの実施形態においては、軌道に沿った不確定性は、ダイナミクスを、少ない割合だけ加速又は減速できるようにすることによって取り込まれる(推測的情報一部でもある)。軌道に垂直な不確定性(例えば、車線の位置)は、主体が軌道に沿って移動した距離に依存する「広がり」の関数を可能にすることによって含まれる。
図11は、本発明の1つの実施形態による
図10における軌道に対応する例示的なセグメント化錐体を示す。
【0055】
推測的情報と主体の現在の状態を組み合わせることによって、予備的アセッサは、主体の実際の行動により良く適合できるようになる。例えば、ゆっくり動いている歩行者は異なる錐体を生成し、それによって、予備的アセッサによってより注意深く処理される。
【0056】
1つの実施形態においては、システムは、主体の軌道をあまり予想できない、ある一定の「不定な」行動パターンをさらに考慮に入れることができる。これらの不定なシナリオは、運転者が一方方向の通りで間違った方向に曲がる、或いは、運転者が居眠り運転をして対向車線に流れ込むような行動を含む。このような場合において、錐体発生器は、「良い」推測的情報の欠如を反映する非常に広がった錐体を生成することができる。
【0057】
図12は、本発明の実施形態による予備的アセッサの例示的な動作を示すフローチャートを示す。車両は、第1に、交差点(又は早期警報が有益な他の領域)に近づく(ステップ1202)。車両が交差点に近づくと、予備的アセッサは交差点に対するトリガ条件を計算する(動作1204)。これらのトリガ条件は交差点に対して一回だけ計算される必要があり、車両が交差点を通過するときに繰り返し再利用できることに注目されたい。典型的には、トリガ条件は交差点の幾何学的形状、並びに、早期警報に対して追跡されるシナリオのライブラリに依存する。例えば、交差点が横断歩道を含む場合には、歩行者がこうした横断歩道に入るときに、セグメント化錐体を生成させることができるトリガ条件が存在する。交差点の幾何学的形状はこの最初のトリガ形成に使用可能とすべきである。
【0058】
交差点は、通信プロトコルの何らかの形態を用いて、その幾何学的形状を近づいてくる車両に通信できることに注目されたい。しかしながら、予備的アセッサはまた、予めロードされたデータベースのような他のソースから、或いは、過去に横断した交差点の幾何学的形状を適応して学習することから交差点の幾何学的形状を取得することができる。
【0059】
横断歩道の幾何学的形状の情報量は多くない可能性がある。交通シミュレータに用いられる交差点のエンコードと同様な大きさ及び複雑さとすることができる。例えば、幾何学的形状の情報は、道路の中心線の幾何学的形状、車線の数、その幅、曲がる際の規則、信号のタイミングを含むことができる。この情報を、搭載されたデータベースにコンパクトにエンコードすることが可能である。
【0060】
トリガ条件が計算されると、システムは高周波ループ(毎秒2から5回のオーダー)に入り、交差点近くの全ての主体(車両、歩行者、及び自転車に乗る人)の現在の位置及び速度は予め計算された全てのトリガ条件と比較され、トリガ条件が真である場合には、セグメント化錐体が生成される(動作1206)。これは、各々の主体に対して生成される1つ又はそれ以上のセグメント化錐体をもたらすことができる。
【0061】
次に、システムは、一次錐体がいずれかの他の錐体と交差するかどうかを判断する(動作1208)。システムがいずれの交差も検出しない場合には、システムは車両がその軌道に沿って進むに伴いループを続行する。交差が検出され、予備的評価された衝突のリスクが十分に高い場合には、システムは特化評価をトリガする(動作1210)。システムは、さらに、車両が交差点を通過したかどうかを判断する(動作1212)。通過した場合には、システムは通常の状態の戻り、車両がトリガ条件の別の組の計算を要求する別の交差点又は位置に入るのを待つ。その他の場合には、システムはループを続行する。
【0062】
図13Aは、本発明の1つの実施形態による多数の一次セグメント化錐体の生成を示す。主体が交差点に近づくと、搭載された衝突警報システムは車両の移動に対する4つの可能なシナリオをトリガし、4つの対応する錐体1302、1304、1306、及び1308を生成する。錐体1302は停止のシナリオを表し、錐体1304は左折のシナリオを表し、錐体1306は前進するシナリオを表し、錐体1308は右折のシナリオを表す。
【0063】
図13Bは、本発明の1つの実施形態による2つの車両のセグメント化錐体の例示的な交差を示す。この交差は交差点における衝突リスクの予備的評価をトリガすることができる。次に、システムは予備的評価を用いて、どのシナリオが特化評価に値するかを判断し、それに応じて、付加的な計算リソースが最も起こりそうで最も重大なシナリオに割り当てられる。
【0064】
最後に、全てのシナリオが評価されると、評価結果はユーザインターフェースに送給され、ユーザインターフェースは、ユーザに警報を与えるかどうか、いつ及びどのように警報を与えるかを決定する。錐体生成及びテストが極めて効果的となりえるので、錐体の生成及び錐体の交差のテストを含む予備的評価は、一次主体に使用可能な処理能力に応じて、毎秒2から5回行うことができる。
【0065】
1つの実施形態においては、予備的評価の1つのサイクルによってカバーされる期間は「時間スライス」と呼ばれる。特化評価がシナリオに対して開始され、シナリオが十分に重大だと判明すると、特化評価に用いられる追跡アルゴリズムは多数のその後の時間スライスにわたって稼動される。
【0066】
2つのセグメント化錐体が交差するとき、潜在的な衝突が検出される。この予備的な判断は、大きい最悪の場合のサイズの錐体に基づいているため、予測される衝突はまだ起こりそうもない。特化評価は、さらに正確な衝突確率、及び警報が認可されるかどうかを判断するのを助けることができる警報の期待効用を計算できるが、以下の理由のために、予備的評価中に、衝突の確率、時間、位置を予測することが有益である。
・予備的評価は、どのシナリオが特化評価に値するかを判断し、リソースを特化評価に割り当てるための基礎を与える。
・リソースを全てのシナリオに割り当てるのが可能ではない場合には、予備的評価は費用がかからない代替物を特化評価に与える。
・幾つかのシナリオはモデルをもたない不定の行動を含み、又は、モデルの正確さを特許評価により改善できない。予備的評価で十分である。
【0067】
1つの実施形態においては、システムは、予備的評価に対して「要因を含んだ」(factored)手法を取る。各々の主体は、「車両は左折する」又は「歩行者は縁石を離れて通りを横断する」のような、1つ又はそれ以上の個々のシナリオに従うと仮定される。すなわち、予備的アセッサはトリガを用いて個々のシナリオを探すが、「左折する車両は縁石を離れる歩行者にぶつかる」のような組み合わせたシナリオを探さない。この手法は、さらに多くの組み合わされたシナリオを、さらに少ない個々のシナリオに基づいて追跡できるという利点を有する。1つの実施形態においては、予備的評価は、錐体の交差の特性に基づいた組み合わせから計算される。
【0068】
図14は、本発明の1つの実施形態による、セグメント化錐体の交差から予備的評価がどのように計算されるのかを示す。事故までの時間は、錐体が第1に交差する点であると控えめに仮定される。システムは、重なる擬角柱の各々を層ごとに考慮し、重なり量に基づいて確率を見積もり、次いで、重なる層の中で最も高い確率を用いて、衝突の確率を計算する。2つの重なる層に対して、確率は、
として見積もられ、ここでs
i及びs
jは2つの錐体を生成させる2つのシナリオを示し、a
i及びa
jは2つの擬角柱のバウンディングボックスのX−Y領域であり、oはこれら2つのバウンディングボックスの重なりのX−Y領域である。式(1)はまた、推測的な情報の一部としてシナリオライブラリに格納される一定の確率である、2つの個々のシナリオP
si及びP
sjに対する事前確率を考慮に入れる。
【0069】
セグメント化錐体の交差に基づいた上述の発見的方法を非常に効果的に計算することができる。しかしながら、それらは潜在的な事故の重大度及び運転者に警報を与えるのに必要とされるリードタイムの尺度を含まない。このような情報は、運転者に警報を与えるかどうかを決定するための期待効用の計算を容易にすることができる。換言すると、衝突の確率と警報の利益の積(product)を取得することが望ましい。予備的評価中に衝突の重大度を見積もるために、2つの別個のシナリオの各々は、その主体の運動エネルギー及び脆弱性の最初の評価を提供する。1つの実施形態においては、脆弱性は0と1との間の値によって測定され、車両の乗員はより保護されるという仮定に基づいて、歩行者及び自転車に乗る人に対して1の値が割り当てられる。次に、2つの初期値は経験公式を用いて組み合わせられて、0と10との間の重大度の値Sを生成する。1つの実施形態においては、経験的な重大度の公式は、潜在的な衝突に含まれるいずれかのかなりの量のエネルギーが存在するときに、その値が最高値10に迅速に収束するように選択される。
【0070】
警報の期限は、予測される事故時間から、運転者の反応に基づくリードタイム、及び一次主体に対する安全な停止距離又は安全な停止時間に基づいて計算される。予測される事故時間を、一次主体及び非一次主体の未来の状態を表示する2つの擬角柱の第1の交差の時間として計算することができる。1つの実施形態においては、警報の利益は、警報の期限に到達するまでは、重大度の値に等しいと仮定される。
【0071】
予備的評価が完了すると、衝突確率と重大度の積、P(s
i,s
j)・S(s
i,s
j)は警報を発行することに対して見積もられる効用を与え、これは特化評価及び可能性のある警報の考慮のために、潜在的な事故をランク付けするのに用いることができる。
【0072】
予備的評価は、特化評価に対するリソースの割り当ての基礎を与える。一般に、特化評価に対する可能な手法は、用いられる計算の量と達成される結果の正確さとの間に妥協をもたらす。1つの実施形態においては、推論層は、異なる特化アセッサアルゴリズムA
kのための機構を含んで、彼らが扱うシナリオにより予備的アセッサに登録し、それぞれの計算コスト及び期待される正確さの見積もりを与える。幾つかの場合においては、同じアルゴリズムは、異なる量の計算リソースを要求する異なる複雑モデルに登録することができる。
【0073】
特化アセッサは、アセッサA
kが計算するP(s
i,s
j)における不確定性の量として解釈することができるその正確さG(A
k)の見積もりを与える。衝突位置の計算及び警報の利益における不正確さもまた存在することとなる。このような不正確さも正確さの式に組み入れることができる。
【0074】
全ての予備的評価が特化評価を要求するとは限らないことに注目されたい。特に、幾つかのシナリオは予備的評価中に、幅広く広がった錐体を含む不定な行動を含む。良好な予測モデルが使用可能ではなく、警報に対する必要性が高い場合には、運転者に警報を提供するには、予備的評価だけで十分とすることができる。
【0075】
より正確な評価から利益を得るシナリオにおいては、予備的アセッサは、どこで計算リースが最も用いられるかを求める。幾つかの重要な目的は以下の通りである。
1.予備的アセッサが潜在的な衝突を過大評価することによる不必要な警報を最小にすること。
2.予備的アセッサが潜在的な衝突を過小評価することによる見落とされるシナリオがないことを保証すること。
3.警報を生成する可能性があるシナリオに対して、特化評価全体の正確さ、特に、潜在的な衝突のタイミング及び警報に必要なリードタイムを有することが重要である。実際の警報をスケジュール設定するときに、警報は不必要と判明する期待が十分に残っている場合には、HMIは警報期限の前に幾らかの待ち時間を挿入することができる。このような待ち時間の安全な挿入は、正確な特化評価を必要する。
【0076】
警報を与えるのに十分に重大であると判明するより3から4桁だけ多いシナリオ(3-4 orders of magnitude more scenarios)に対して予備的評価を実行するのに、並びに、警報を与えるのに十分に重大であると判明するより1から2桁だけ多いシナリオ(1-2 orders of magnitude more scenarios)に対して特化評価を実行するのに、十分な計算リソースが存在することが期待される。システムは、より複雑でなく、より危険でない手法を用いることができるため、この過剰な計算リソースはリソース管理の問題に影響を及ぼす。
【0077】
リソース管理に対する可能な手法は、警報の品質に対する費用及び潜在的な利益により、各々のシナリオ上で各々の潜在的な特化アセッサを稼動させる影響を分析することである。このリソース割り当てに対する費用利益分析を実行することは、(1)予備的評価が警報しきい値にどれ位近いかによってリソースを割り当て(しきい値により近い予備的評価がより多くのリソースを受け取る)、(2)可能である場合には、リソースをより迅速に稼動している特化アセッサに割り当てる。
【0078】
1つの実施形態においては、システムは時間スライスを2つの部分に分割する。第1の部分においては、システムは、第1に、即時の警報を発行する期待される利益によって予備的評価をランク付けしP(s
i,s
j)・S(s
i,s
j)、次に、時間スライスの第1の部分の残りを、このランク付けされたリスト上の上部項目に割り当てる。システムは警報を発行することはなく、どの予備的評価が特化評価に値するかを判断するのみであることに注目されたい。実際の警報は、このリストの上部に近いシナリオに対して最も生成される可能性が高い。従って、計算リソースの大部分を適度に費用のかかる妥当に正確な特化評価アルゴリズム(例えば、IMMカルマンフィルタリング)に割り当てることは、大部分の重要なシナリオをほぼ確実にカバーする。このようなアルゴリズムは予備的アセッサよりかなり正確であり、この第1の部分においては、システムは実際の警報を要求するものよりさらに多くのシナリオに特化評価を適用できるため、十分に安い。これは上の基準1及び2に対処するリソースの割り当てに対する控えめな手法である。
【0079】
時間スライスの第2の部分においては、計算リソースの付加的な量は、より高価な特化アセッサ(例えば、粒子フィルタ)に割り当てられて、P(s
i、s
j)・S(s
i、s
j)リストの上部でシナリオの特化評価の品質を改善し、最も可能性の高いシナリオが警報を生成するようにカバーする。1つの実施形態においては、より高品質のアセッサに当てられる時間スライスの量を固定(例えば、30%)することができ、又は状況に適合させることができる。全ての特化評価は上述のIMMカルマンフィルタリングによって実行されることが適しているとすることができる。この手法は、上述の基準3に対処する。
【0080】
特化アセッサが第1にシナリオ上に呼び出されるとき、同じシナリオの次に続く特化評価中に、要求されない可能性がある特化アセッサを開始することが要求される付加的な計算が存在することができる。開始費用と増分費用との間のこの相違は、前述のリソース割り当てに組み入れられる。特化アセッサはランク付けされたリストの上部から連続して適用され、各々の特化アセッサは、時間スライスの予算から差し引かれる費用(開始及び増分)を報告する。
【0081】
予備的評価及び特化評価は、潜在的な事故の重大度について一致しないことがある。これは、特に、セグメント化錐体の控えめな最悪の場合のカバー範囲による可能性が高い。予備的評価は、より正確な特化評価が、衝突は起こりそうもなく、警報は不必要であると示すときに、シナリオを重大であると考えることが多い。最終的な警報を判断するために、システムは、より正確な特化評価を用いる。(使用可能な特化アセッサが存在しないときには、予備的評価は特化評価として扱われることに注目されたい。)しかしながら、この中間の段階で、リソースが特化アセッサに割り当てられるときには、予備的評価はなおも重要である。特に、システムは、予備的評価と特化評価との間に不一致があるときには、予備的評価は結果的に停止させることになる特化評価を繰り返し開始しないことを保証する。
【0082】
この潜在的な振動は、前述のランク付けにおける予備的評価及び特化評価の最大値を用いることによって避けることができる。このように、予備的評価がシナリオは重大であると判断する限りは、特化アセッサはその低価格の増分モードにおいて稼動し続ける。これは不必要に思われるが、特化評価を続行することは重要である。予備的評価が前の時間スライスにおいて過度に慎重である理由は、現在の時間スライスにおいて慎重であるのと同じ理由ではない。従って、特化アセッサにとって未来の特化評価を抑えることは望ましくない。
【0083】
高密度の歩行者は、追跡システムに対して特有な課題を生成することがある。1つの実施形態においては、推論層は、特化アセッサを呼び出す前に、歩行者をグループに集める。
【0084】
運転者に警報を与える目的のために、歩行者のどのような大きい隣接するグループも避けられるべきである。1つの実施形態においては、システムは合併集合アルゴリズムを用いる。車の幅内のどのような2人の歩行者も同じグループ内に置かれ、彼らが異なるグループ内にある場合には、合併集合アルゴリズムはグループを結合する。合併集合アルゴリズムの詳細は、Corman他の「Introduction to Algorithms」、McGraw−Hill、1998、440−464ページに提供され、引用により本明細書に組み入れる。幾つかの実施形態においては、合併集合アルゴリズムは、主体の位置の間のユークリッド距離メトリックである距離関数を用いて動作する。距離関数はより一般的であることに注目されたい。例えば、距離関数は、主体の位置及び/又は速度に基づくことができる。「距離関数」という用語は、これが発見的(heuristic)であることを示すのにも用いられ、かつ、主体のグループ分け(grouping principals)に有益になる距離メトリックの厳格な数学的特性に必ずしも従うものではない。
【0085】
特化評価に対しては、より小さくさらに密着したグループがさらに有益である。この目的のために、システムは、グループ分けのためのk平均法を採用する。k平均アルゴリズムは、距離関数を用いることができる。1つの実施形態においては、距離関数は、(近くの歩行者が一緒にグループ分けされるように)歩行者の位置及び/又は(同じ方向で通りを横断する歩行者が一緒にグループ分けされるように)歩行者の速度を含むことができる。より具体的には、距離関数は、(X−Y平面における)主体の二次元の位置と(X−Y平面における)主体の重み付けられた二次元の速度を連結させることによって形成される四次元空間におけるユークリッド距離とすることができる。その結果は、グループ内の全ての歩行者はグループの中心の近くにおり、グループの中心の速度に近い速度で移動するものになる。次に、特化評価がグループの中心に適用される。k平均アルゴリズムの詳細は、J.B.MacQueenの「Some Methods for classification and Analysis of Multivariate Observations」、Proceedings of 5th Berkeley Symposium on Mathematical Statistics and Probability(1967)、Berkeley、University of California Press、1:281−297に提供され、引用によりここに組み入れる。
【0086】
1つの実施形態においては、システムは、階層的にグループ分けするためにこれら2つの手法を用いる。第1に、歩行者は合併集合アルゴリズムに基づいて大きいグループにグループ分けされる。これらのグループは「ペレトン」と呼ばれる。次に、大きいペレトンは、k平均アルゴリズムを用いて、より小さく、さらに密着したグループにさらに分割される。これらのより小さいグループは、特化評価の目的のための単一の主体として扱われる。このような階層的なグループ分けの1つの利点は、2つの種類のグループがグループ分けの2つの異なる使用に好適であることであり、すなわち、高レベルのグループは警報に有益であり、低レベルのグループは追跡に有益である。さらに別の利点は、高レベルのグループは低レベルのグループ分けの動作に対して良好なドメインを定めることである。
図15は、本発明の1つの実施形態によって歩行者に適用されるグループ分けの2つの種類を示す。システムは歩行者の動的な動きに基づいてグループ分けを連続的に更新できることに注目されたい。
【0087】
上の説明は、推論層がどのように主体のグループ分けを実行するかを教示するが、このようなグループ分けは推論層に限定されるものではない。幾つかの実施形態においては、グループ分けはセンシング中に行うことができる。例えば、センサは、個々の歩行者を報告しないが、歩行者のグループを報告することを任意に選択できる。これらの状態においては、推論層は、主体としてセンサによって報告されるクループを直接扱うことができ、又はさらに、上述の手法を用いて異なる主体を形成するために、これらのグループを他の歩行者と統合することができる。
【0088】
さらに、グループ分けは、決定アダプタにおいて後で行うこともできる。決定アダプタは、HMIのための警報をカスタマイズし、この開示のその後のセクションでより詳細に説明される。決定アダプタは、ユーザへの呈示を簡単にするために、幾つかの可能性のある衝突を1つの警報にグループ分けすることが有益であるとわかる。
【0089】
前のセクションで説明したように、予備的なものは主体(車両、歩行者、又は自転車に乗っている人)の全ての対を検査し、可能性のある衝突事故を識別する。交通量の多い交差点では多くの車又は歩行者が存在するため、このスクリーニング作業は、予備的アセッサの段階において、正確さは問題ではないため、低い計算費用で迅速に行われるのが理想的である。より高い計算費用で正確なリスク評価を実行することが特化アセッサに委ねられる。このセクションは、特化アセッサの設計を説明する。
【0090】
正確なリスク評価に対する必要性を示すために、
図16に示される予備的アセッサによる計算を考える。予備的アセッサは、一次主体及び非一次主体に対応して、未来に投影される2つの錐体を交差させることによってリスクを評価する。2つの錐体が交差する場合には、予備的アセッサは(交差線が付けられた領域によって印が付けられた)部分的に重なる領域に基づいて衝突リスクを計算する。重なる領域が大きければ大きいほど、2つの主体が衝突する可能性はより高くなる。
【0091】
上述の評価は直感的に正しいが、主体が一様な分布で錐体にあるという暗黙の仮定に基づいている。この近似は現実を反映しないことが多い。例えば、
図16の部分(A)は、(左の確率分布関数によって示されるように)一次主体は錐体の左縁部にある可能性が高く、非一次主体との衝突については低い確率をもたらす状況を示す。対照的に、
図16の部分(B)は、一次主体が錐体の右縁部にある可能性が高く、非一次主体が錐体の左縁部にいる可能性が高い、高い衝突確率をもたらす反対の状況を示す。予備的アセッサは、確率データが何を示唆するかにかかわらず、予備的アセッサは同じ衝突リスクを予測するため、これら2つのシナリオを区別することができない。この例は、予備的アセッサの限界を示し、正確なリスク予測のためのより確率的な手法を要求する。特化アセッサはこのような予測を実行する。
【0092】
連続するリスク評価は特化アセッサの重要な特徴である。最初に、特化アセッサはいずれかの潜在的な衝突に対する予備的アセッサによってインスタンス化される。作成されると、特化アセッサは、履歴データから主体の状態を推論し、先の視野内の衝突リスクを予測する。時間が進み、新規のデータが受信されると、特化アセッサは、評価されたリスクを増分して調整する。次に、評価されたリスクは予備的アセッサに戻って報告される。
【0093】
ある意味では、予備的アセッサは、正確なリスク評価のために特化アセッサを生成し、多数の特化アセッサを管理し、それらから情報を収集することによって「管理」の役割を担う。予備的アセッサは、収集された情報(特化評価)を、HMIが運転者に警報を与えるかどうかを決めることを可能にする形態でHMIに送る。一般に、予備的アセッサは潜在的な事故を識別する際に控えめに動作する。特化アセッサは、2つの車両が衝突しそうもないと示唆する場合には、予備的アセッサは特化アセッサを終了させ、さらに重大な問題のために計算リソースを使用することができる。
【0094】
他の衝突回避システムと比較すると、推論層の別の重要な特徴は早期警報である。これは、緊急操作のみが事故を防ぐことができるときに、衝突のほんの少し前に警報を与える必要性を避ける。早期の衝突予測のために、システムは衝突時間のかなり前に衝突を予測する。1つの実施形態においては、特化アセッサは、統計的モデルに基づいた推論問題としてリスク評価問題を公式化する。さらに、主体は、車両が動く進路を指定するダイナミクスモデル、及び、運転者が周囲の環境に基づいてどのように行動するかを指定する運転者の精神状態のモデルを含む、モデルのライブラリと関連する。これらのモデルの幾つかは、多くの既存の衝突警報システムがほんの一瞬であるのとは対照的に、本質的に長期のものであり、数秒で未来の状態を予測することができる。これら長期のモデルは早期衝突警報を可能にする。
【0095】
特化評価のためのモデルに基づいた手法に対して幾つかの付加的な利点が存在する。モデルに基づいた手法は、融通性があり、システムを完全に再設計する必要なく、新規のモデルを一体化し、既存のモデルを変更することが可能である。例えば、システムは、システムにおける他のアルゴリズムのいずれかを変更することなく、車両に特定のダイナミクスモデルを更新し、又はそれに取って代わることができる。モデルに基づいた手法の別の利点は、システムを、訓練データ及び統計学習とは無関係にすることである。固定された推測的なモデルに差し込むことが可能である。訓練データ及び統計学習を用いてそれらをシステムに差し込む前にモデルを改善することも可能である。さらに、システムが稼動しているときにモデルを動的に改善することが可能である。
【0096】
1つの実施形態においては、特化アセッサは、モデルを適用する際に統計的公式化を採用する。統計的手法は状態空間における確率によって全ての変数を考慮に入れることができ、不完全な観察が同じ場所で記述されることを可能にする。異なるセンシングモデルを厳密に組み合わせることができる。これは、特に、多数の種類のセンサ(レーダ、カメラ、RFID等)を同じ交差点で用いることができる異種のセンシング環境において特に重要である。システムは、粒子フィルタ、カルマンフィルタ、隠れマルコフモデル(HMM)のような様々な技術の集合から選択することができる。
【0097】
モデルベースの手法を用いて、特化アセッサはデータを予め定められたモデルに当て嵌めて、基礎にある状態について推論する。例えば、位置及び速度のような主体の前の状態から、システムは運転者の注意力について学習することができる。次に、システムは、この推論された運転者の状態、主体の現在の状態、及び対応するダイナミクス及び運転者の精神状態のモデルに基づいて未来の状態を予測する。
【0098】
ダイナミクスモデルは主体が移動する進路を指定する。1つの実施形態においては、システムは「リラックス型スロットカー」モデルを採用して、車両の動きを記述する。(スロットカーは、トラックの溝又はスロットによって導かれる動力を備えたミニチュアの玩具の自動車である。)リラックス型スロットカーモデルにおいて、車両は、例えば、直線に沿って進む、又は曲がるとき弧を辿るといった、予め定められた所望の軌道を辿るが、現実の運転の行動をシミュレートするためには軌道から逸脱することが可能である。予備的アセッサは所望の軌道を指定する。例えば、予備的アセッサは、種々の可能性を評価し、潜在的な事故「直進する車両Aは左折する車両Bと衝突する」を識別する。次に、関連する軌道「直進するA及び左折するB」を特化アセッサに与える。特化アセッサは、特定のシナリオ上で動作する、すなわち、所与のモデルが正しいと仮定する。車両はどうするかについて曖昧さ、例えば、Bが右折する可能性がある、が存在する場合には、付加的な特化アセッサをインスタンス化して、各々の代替物の潜在的な衝突を評価することができる。
【0099】
図17は、本発明の1つの実施形態によるリラックス型スロットカーモデルを示す。所望の軌道は直線である。しかしながら、実際の運転は、正確に直線を辿ることは滅多にない。これらの逸脱は、車両に2つの力、すなわち、逸脱する場合には、所望の軌道の方向に車両を引っ張る「垂直方向」の力、並びに、幾らかの目標速度に速度を調整する「水平方向」の力、を受けさせることによってモデル化される。車両が余りにも遅いかあまりにも速い場合には、目標速度を加速する又は減速する傾向を有する。目標速度は、幾つかの要素、すなわち、運転者の運転の癖、現在の位置での制限速度、及び一次車両の周りの車の速度、に依存することができるパラメータである。これらのパラメータの幾つかは学習することができ、(ドライバの通常の速度のような)車両と共に伝えられ、(制限速度のような)他のものは、交差点のインフラストラクチャにおいて局所的に取得し格納することができる。歩行者に対して、システムは、異なるパラメータであるが、同様なダイナミクスモデルを用いることができる。
【0100】
運転者(及び/又は歩行者)の警戒状態はリスク評価に重要である。運転者が警戒している場合には、車両が速く走った場合でさえも、他者と衝突する機会が少ない。さらに、すでに注意を払っている運転者に警報を発行することは、邪魔になることがあり、運転者に何の利益も与えない。1つの実施形態においては、特化アセッサは車両の履歴データから運転者の警戒状態を推論しようとする。
【0101】
1つの実施形態においては、運転者の警戒状態は、非警戒状態に対しては0、警戒状態に対しては1の値の2値変数として公式化される。
図18は、本発明の1つの実施形態による運転者の警戒状態モデルに対する状態遷移図を示す。警戒モデルはマルコフ連鎖に似たものであると仮定され、すなわち、運転者が時間tで警戒状態にある場合には、時間t+1で警戒状態のままでいることに対して確率1−αを有すると仮定される。パラメータαは、非警戒状態に移動する確率を記述する。本開示は、その後の時間のステップを指すために、t+1,t+2,...の規則を用いる。しかしながら、毎秒2から5回に対する予備的評価の割合であるため、時間スライスは1秒より短くすることができ、時間スライスのより正確な表示はt+δ,t+2δ,...と記述することができ、ここでδは1つの時間スライスの大きさである。同じことが非警戒状態から確率βをもつ警戒へ戻る遷移にも当てはまる。
【0102】
1つの実施形態において、確率α及びβは、小さい(<0.1)と仮定される。さらに、運転者が警戒状態にあり、別の車両/歩行者とぶつかる潜在的な危険を認識する場合には、α=0である。すなわち、運転者は意識的に注意を払い、危険がなくなるまで非警戒状態には移動することはない。
【0103】
さらに又は代替的に、システムは「合理的決定」モデルを採用することができ、運転者の合理性は「不合理決定」状態に対しては0、「合理的決定」状態に対しては1の値をもつ2値変数として公式化される。この運転者の合理性の変数は、運転者が潜在的な衝突について、運転者判断で合理的決定をするかどうかを示す。例えば、潜在的な事故の危険を認識すると、大部分の運転者はブレーキを踏むか、又は正しい操作の行動をとる。しかしながら、何人かの運転者は代わりにアクセルを踏み、又は誤った操作をすることがある。従って、学生の運転者、高齢者、又は十代の若者のような何人かの運転者は、事故を避ける正しい行動をとる能力のなさのために、「不合理」と考えることができる。1つの実施形態においては、システムは運転者の精神状態の遷移の確率を「合理的決定」状態から「不合理決定」状態に指定し、逆もまた同様である。
【0104】
上述の実施形態においては、特化アセッサは、行動のモデルに基づいた状態空間(位置、速度、及び警戒状態)における推論によって衝突リスクを評価する。どのような時間スライスtにおいても、予備的アセッサは以下の2つの問題を解決する。
・フィルタリング(見積もり):時間tまでの観察データを与えられるとすると、車両内ではどのような状態か?
・予測:時間tにおける車両の現在の状態が与えられるとすると、Nが予測範囲である場合に、時間t+1,t+2,...,t+Nで車両内ではどのような状態か?
【0105】
フィルタリング問題に対して、システムは、逐次ベイズフィルタリングの一般的公式化を採用する。ここでは、時間tでの観察がz
tとして示され、観察の履歴(時間0からtまで)は、
として示される。逐次ベイズフィルタリングは、基礎となる状態xの後部を
として更新する。積分は、単一ステップの予測をして、前の状態を現在の時間にし、次いで、状態を変更するために新規な外部測定を適用する。システムは、物体のダイナミクスモデル
を用いてこのフィルタリングを行う。1つの実施形態においては、ダイナミクスはリラックス型スロットカーモデル及び警戒状態モデルに従う。次に、観察モデル
を用いて、予測に尤度が掛けられて、観察の寄与z
tを反映する。定数γは規格化定数であり、
を1に積分する。フィルタ(2)は逐次的なものであり、現在のフィルタ分布
はステップごとに前のフィルタ分布
から計算される。
【0106】
1つの実施形態においては、予測問題の解決は以下に説明される。どのような観察入力もなしで、微分は車のダイナミクス及び運転者の警戒状態モデルに完全に基づく。
:
【0107】
tから時間範囲t+Nまでの一次及び非一次主体の予測される状態から、特化アセッサは、リスクを評価することができ、(1)事故が起こりうるかどうか、(2)事故がいつどこで発生する可能性があるか、(3)事故はどれ位重大なのかを予測をする。次に、この情報は、予備的アセッサに戻され、HMIモジュールに送給され、恐らく運転者に警報をもたらす。
【0108】
フィルタリング及び予測問題に対して、幾つかの技術を用いることができる。1つの実施形態においては、システムは、カルマンフィルタに基づいたInteractng Multiple Models(IMM)と粒子フィルタリングの両方を採用する。IMMは粒子フィルタより計算上効果的であり、正確ではないように見える。以前に説明したように、リソースマネージャは、特化評価を要求する大部分のシナリオに対してIMM手法を用い、高い正確さを要求する又はIMM手法が捕らえるには困難な特徴をもつモデルを有する場合に対して粒子フィルタリングを確保できることに注目されたい。カルマンフィルタに基づくIMMの詳細は、カルマンの「A New Approach to Linear Filtering and Prediction Problems」、Transaction of the ASME−Journal of Basic Engineering、82:35−45、1960、Welch他の「An Introduction to the Kalman Filter」、2001 SIGGRAPH tutorial、Sorensonの「Kalman Filtering:Theory and Application」、IEEE Press 1985に提供され、その全てを引用によりここに組み入れいる。粒子フィルタの詳細は、Doucet他の「Sequential Monte Carlo Methods in Practice」、Springer−Verlag、New York、2001、Arulampalam他の「A Tutorial on Particle Filters for On−line Non−liner/Non−Gaussian Bayesian Tracking」、IEEE Transactions on Signal Processsing、50(2):174−188、2002に提供され、その両方を引用によりここに組み入れる。
【0109】
1つの実施形態においては、フィルタリングは粒子フィルタを用いて実行することができる。粒子フィルタリングは、ノンパラメトリックのモンテカルロサンプリングに基づいた方法である。これは、粒子の組と呼ばれる、一組の重み付けられた点のサンプルとして、連続確率密度関数を表す。粒子の組における各々の粒子iは、対(x
i、w
i)であり、x
iはXの要素であり、w
iは0と1との間の実数であり、粒子の組にn粒子が存在するときには
である制約をもつ。
【0110】
フィルタの式(2)をエミュレートするために、前の目標の信念(belief)
は粒子の組A
tによって表現されると仮定する。各ステップで、A
tにおける各々の粒子
は、ギブスサンプラーのような幾つかのサンプリング技術によるモデル
によって独立して第1に伝えられる。すなわち、各々のiに対して、システムはi番目の新規の粒子、
の状態が、
からのサンプリングの結果になるように計算する。結果として生じる粒子の組
は、式(2)の時間tでの予測される信念に対応する。次に、予測される信念の各々の粒子は観察モデル
で再び重付けされる。すなわち、新規の重み付け値は、
で与えられ、ここでαは1に等しい重み付け値の合計を保持するための規格化定数である。
【0111】
このステップは、予測される信念に式(2)における尤度を掛けることに類似している。結果として生じる粒子の組
は、更新されたフィルタ処理された信念
に対応する。
【0112】
システムは、実際には、有限数の粒子のみを保持するため、最後のステップは重み付け値w
iによる再サンプリングステップであり、粒子の組A
t上で実行されるため、小さい重み付け値をもつ粒子は除去され(これらの粒子は起こりそうもない目標状態に対応するため)、大きい重み付け値をもつ粒子の多数のサンプルによって置き換えられて、起こりそうな状態の周りの領域がより完全に探索されることを可能にする。この再サンプリングのステップは、時間ステップごとに必ずしも実行される必要はないが、粒子の組にとって、更新された信念の忠実な表示を残すために重要である。
【0113】
粒子フィルタの利点は、その驚くべき融通性である。これはダイナミクス
のいずれの形態にも対応することができ、線形又はガウス連鎖にならなければいけないという制約をもたない。観察モデル
を、直接的に各々の粒子に簡単に適用することができる。1つの実施形態においては、ダイナミクスモデルは、警戒状態で条件付けられ、粒子が非警戒状態に対応する場合、又は衝突危険のない警戒状態が検出される場合には、粒子は一定の目標速度(例えば、50kmph)でリラックス型スロットカーモデルを用いて将来を予測される(predicted forward)。一方、粒子が、差し迫った危険が検出される警戒状態に対応する場合には、粒子は0の目標速度でスロットカーモデルに従い、すなわち、運転者は衝突が発生する前に完全に停止することを試みる。次に、粒子の警戒状態は運転者の警戒状態モデルに従う。新規のモデルが組み込まれるのを必要とする場合には、モデルの部分のみを変更する必要がある。粒子フィルタ部分は同じままである。この手法は実装の複雑性を減らす。
【0114】
表示性を維持するために十分な数の粒子がシミュレートされるのが理想的であることに注目されたい。用いられる粒子が少なすぎる場合には、粒子は、基礎をなす確率分布に対して正確な近似を表さない。実際の状況では、高い計算の複雑性がこれを実行不可能にすることがある。従って、1つの実施形態においては、粒子フィルタリングは重大で潜在的な衝突及び複雑なモデルに対してのみ確保される。
【0115】
幾つかの実施形態においては、カルマンフィルタリングを用いることができる。カルマンフィルタリングは物体のダイナミクス及び観察モデルがx
tにおいて両方が線形であり、両方のモデルにおける不確実性がガウス連鎖である仮定における、逐次ベイズフィルタリングの特別な場合である。これら2つの仮定においては、事後信念
もまたガウス連鎖である。ガウス分布はその平均及び共分散によって完全に特徴付けることができるため、カルマンフィルタリングの式は、測定が観察されるときに、平均
【数1】
及び分散
【数2】
を、逐次的に更新する。
【0116】
しかしながら、カルマンフィルタリングの性能は、そのモデリングの仮定によって幾つかの場合に制限されることがある。カルマンフィルタリングは、一般に、目標ダイナミクスが相対的に線形であり、センサが空間的にコンパクトな観察を生成する状況に有効である。衝突予測の用途においては、目標ダイナミクスは明らかに非線形であり、それらは運転者の警戒状態に依存する。さらに、多くのシナリオにおいては、車両は曲線の非線形の軌道を辿る。最終的に、幾つかの場合において、観察は、特定のセンサに対しては線形又はガウス連鎖ではない(例えば、2次元位置空間において非ガウス連鎖の観察を生成するレーダ範囲センサによって収集されたデータ)。
【0117】
1つの実施形態においては、状態空間(位置、速度、警戒状態)で動作する代わりに、システムは所望の軌道に関してカルマンフィルタリングを線形にする。位置は接線成分及び垂線成分(pos
tang、pos
prep)にマップされ、速度状態に対しても同様である。接線及び垂線の方向は、所望の軌道及び現在の位置に基づいて定められる。例えば、所望の軌道が曲がり角に対応する弧である場合には、垂線方向は半径に沿う。このように、システムは車両の操作ダイナミクスに対するカルマンフィルタリングの線形性の制約を解決することができる。しかしながら、2つの問題が依然として残り、すなわち、運転者の警戒状態モデルは非線形であり、観察モデルは非線形又は非ガウス連鎖とすることができる。
【0118】
さらに別の実施形態においては、Interacting Multiple Model(IMM)アルゴリズムを用いることができる。IMMアルゴリズムは、マルコフ遷移により線形システムにおいてフィルタリングするための方法である。例えば、車両は多数の操作モード(停止、加速、ステアリングなど)を有することができる。各々のモードにおいて、車両は線形ダイナミクスモデルに従う。車両は1つの操作モードから別の操作モードに切り替えることができ、モード切り替え事象はマルコフ連鎖であると仮定される。IMMは、仮説{H
1,H
2,・・・,H
N}が、それぞれ、
である場合に、確率{μ
1,μ
2,・・・,μ
N}をもつ異なる操作モードである、仮説管理問題としてフィルタリング問題を公式化する。その目標は、観察履歴
に基づいた各々の仮説
に対する事後確率を更新することである。目標は、時間tが進むに伴いμ
tを逐次的に見積もることである。IMMの詳細は、Blom他の「The Interacting Mutiple Model Algorithm for Systems with Markovian Switching Coefficients」、IEEE Transaction on Automatic Control、33(8):780−783、1988、並びに、Kalandros他の「Tutorial on Multisensor Management and Fusion Algorithms for Target Tracking」、In Proc.Amer.Control Conf.、Boston、MA、2004年7月に提供され、その両方を引用によりここに組み入れる。
【0119】
時間tのいずれの点でも、システムは仮説の以前の組
で開始し、
である。時間t+1で、仮説H
iが真であると仮定する。H
iの下で、システムが線形でガウス連鎖であるとすると、カルマンフィルタが適切である。状態の見積もり及び対応する共分散を更新して、尤度
を計算することができる。次に、仮説確率は、
として更新することができる。
【0120】
IMM方法は、上の2つの状態(警戒状態対非警戒状態)モデルを非常に簡単に処理するため、衝突予測用途に特に適しており、大部分の現実の運転の特化された追跡がこれらのような幾つかの別個のモードを含むことが予測される。
【0121】
歩行者のグループは個々の歩行者と同様ではあるが、より高次元の状態空間(位置、速度、警戒状態、範囲)において扱われる。新規の要素の範囲は、歩行者のグループのバウンディングボックスを示す。
図19は、本発明の1つの実施形態による横断歩道の座標システムにおいて定められる例示的な歩行者のバウンディングボックスを示す。原点は歩行者のグループの中心の位置である。Y軸は横断歩道の方向に沿っており、X軸は横断歩道の短い側部に沿っている。バウンディングボックスは、
図19に示されるように、グループにおける全ての歩行者を囲む長方形であり、範囲=(x
min,x
max,y
min,y
max)として定められる。バウンディングボックスは単純なダイナミクスモデルに従い、全ての4つの側部は時間と共に拡大する。これは、歩行者が種々のペースで移動して、グループがその大きさを変化させる、実際の状況をシミュレートするためである。バウンディングボックスは衝突予測に用いられる。
【0122】
状態(位置、速度、警戒状態)は、歩行者のグループの中心に対して定められる。グループは均質的に動き、それゆえに、グループを単一の歩行者と同じように扱うことができると仮定される。一方、グループが均質的でない場合には、予備的アセッサは、グループを、各々が均質性のレベルを維持する、より小さいグループに分割する。
【0123】
前のセクションで説明された将来予測(forward prediction)に基づいて、特化アセッサは時間スライスごとの評価を計算する。1つの実施形態においては、時間tでの評価は以下の情報を含む。
・s
i及びs
j、主体が従うシナリオ。シナリオは、軌道、テキスト記述、及び警報を与えるための他の有益な情報を含む。
・P(t)、主体がs
i及びs
jシナリオに従うと仮定して、時間tにおいて、未来に衝突があると評価される確率。この確率はシナリオ上で条件付けされる。
・T(t)、衝突の予測時間。この値、及び特化評価の後に続く全ての成分は衝突確率、P(t)、並びに、シナリオs
i及びs
j上で条件付けられる。
・L(t)、衝突の予測位置。
・B(t,t’)、時間tで評価されるが、現在の時間に対する、ある未来の時間t’で発行される、警報の予測される利益。この成分は警報をスケジュール設定するのに、すなわち、警報を遅延させて、利益の損失がないときに確実性を増加させるように用いられる。
・g(P(t))、特化評価の正確さの見積もり。この成分はP(t)における広がり又は不確実性として解釈することができる。簡単にするために、特化評価における全ての値に関連する不確実性が存在するとしても、P(t)に対する正確な評価のみが含まれる。
【0124】
特化評価の全ての成分は現在の時間tによってパラメータ化されるため、パラメータtを以下の説明から支障なく省くことができる。しかしながら、B(t’)におけるt’パラメータは、未来の時間での値の関数を記述するため、その結果を区別するために保持される。
【0125】
図20は、本発明の1つの実施形態による例示的な利益関数のグラフを示す。利益関数の顕著な特徴は関数における「屈曲部」である。屈曲部に対応する時間の前に、運転者は警報を考え、反応し、安全に事故を避ける(例えば、車両を減速することによって)時間を有する。屈曲部の前の利益曲線の高さは、事故の重大度に比例する。1つの実施形態においては、高さはまた、運転者が警報を受信することなく、事故を認識し避ける可能性を考慮に入れることに注目されたい。すなわち、利益関数は、警報を発行しないことに比較して警報を発行する差分利益を表すことができる。
【0126】
1つの実施形態においては、利益関数の目盛りは、0と10の間の単位のない値である。予備的評価と同様に、これは異なる種類の衝突によりもたらされる負傷及び損傷の間の細かい区別をすることを意味するものではない。全ての重傷事故は10に近い、同様な値を有することが予測される。0と10の間の目盛りは、非常に低速の衝突がそれほど強くない評価及び警報で扱われることを可能にする。
【0127】
利益関数はHMIについて楽観的な仮定をすることに注目されたい。警報は、発行されたときに、運転者に効果的に通信されると仮定される。しかしながら、後のセクションで開示されるように、HMIはそれほど最適ではない通信効率を可能にすることがある。また、利益関数は不必要な警報で運転者を注意散漫にさせることに対してどのようなペナルティも含まない。この注意散漫の要因はHMIによって説明することができる。
【0128】
一般の利益関数は、一般性を失うことなく、異なる形状をとることができるが、本発明の1つの実施形態は、利益関数を表すために2つの線形部分の組み合わせを用いる。このような表示は、3つのスカラーパラメータで利益関数を特定することができるため、迅速な計算が容易になる。
【0129】
早期警報システムの最終的な目標は、事故を防ぎ、危険な緊急操作を避ける方法で運転者に警報を発行することである。これは、全ての事故シナリオの慎重な評価の目的であるが、これらの評価は運転者への警報の送給を直接的に指示するものではない。代わりに、これらの評価は、運転者に警報を与えるかどうか、いつ及びどのように運転者に警報を与えるかについての重大な決定、すなわち、特定のHMIの特徴に依存する決定に用いられる。
【0130】
例えば、ヘッドアップディスプレイ上に表示される警報は、音を伴って発行される警報とは異なる特徴を有する。この理由のために、推論層は慎重な評価を与えるが、それは重要な警報の決定をする特定のユーザインターフェースシステムに関連するインターフェースである。1つの実施形態においては、このインターフェースは「決定アダプタ」と呼ばれる。決定アダプタは、時間スライスごとに評価を受信し、どの評価が警報となるかを判断する。
【0131】
各HMIにとっては、それ自体の決定アダプタを与えることが理想的であるが、決定アダプタをさらに推論層に含めることもできる。この決定アダプタは、第1に、HMIに特有の一組のパラメータで校正され、次に、推論層から評価を受信し、それらをフィルタ処理し、即時の警報を要求する評価のみをHMIに渡す。
【0132】
根本的には、最も重大な潜在的な事故について運転者に警報を与えることが最良である。ここで、評価は警報の予測される効用に到達するのに必要な情報を含む。衝突確率及び警報の利益の積は、警報をランク付けするための良好なメトリックである。しかしながら、このランク付けのみでは最適な方法で警報をスケジュール設定するのに十分ではない。
【0133】
例えば、システムが、車両が自転車と衝突する進路にあり、重大な衝突だが衝突は差し迫っていない、と高い確率で予測すると仮定する。運転者に警報を与えるべきか?おそらく即時にではなく。運転者に警報を与えるのにまだたくさんの時間がある場合には、警報を遅延することは幾つかの方法で問題を解決できるため、待つのが最良である。例えば、運転者自身は潜在的な衝突に反応することができる。また、確率は通常は増加又は減少し、後者の場合には、警報を避けることができるため、遅延は予測の正確さを改善することができる。警報は運転者の注意をそらし、或いは、極端な場合には、運転者をいらいらさせて警報システムを使用不可な状態にするため、警報を避けることは重要である。どちらにしても、不必要な警報は付加的な事故を起こさせる可能性がある。
【0134】
システムはどのように警報を遅延させるかを判断する際に、評価における情報を用いる。特に、利益関数における屈曲部は、衝突を避けるのに十分な時間をもって運転者に警報を与える重要な最後の機会となり得る。屈曲部の前にたくさんの時間がある場合には、待つことがおそらく安全である。
【0135】
しかしながら、警報を遅延させる別の考慮事項は、多数の同時に近い警報に対する必要性の可能性である。多くのユーザインターフェースは、同時の警報を効果的に発行できない。例えば、空間的に局所化された音の警報は、おそらく最も良く連続しており、十分に間隔を置かれているため、各々の警報を聞いて、潜在的な衝突の方向と関連させることができる。多くの物体を同時に強調表示することができるヘッドアップディスプレイでさえ、1度に1つの特定のシナリオにユーザの注意を引くように逐次的にイメージを点滅させることを好むことがある。
【0136】
一般に、運転者を理想的に支援することを試みるどのようなシステムも、運転者が適切な動作についての判断を取り入れて形成することを可能にすべきである。これはスケジューリングの問題を生成する。その利益関数における対応する屈曲部の前に単一の警報に対してたくさんの時間がある場合でさえ、それぞれの屈曲部の前に全ての現在未決定の警報をスケジュール設定するのに十分な時間はない。警報を遅延させる前に、システムは、現在追跡されるシナリオに対する他の警報を発行する十分な時間を可能にし、並びに、近い未来に発見される予期せぬシナリオに対する時間を可能にすべきである。
【0137】
1つの実施形態においては、現在更新される評価は時間スライスごとにバッチで提供される。これは、グループとして警報を考えるため、及び近い未来に必要になる全ての警報に適応するために必要な情報を提供する。警報を発行するために、ユーザインターフェースは、他の主体の現在の位置についての情報を取得する(例えば、他の主体の方向からくるように思われる聴覚警報を発行するために)。他のユーザインターフェースは、例えば、ヘッドアップディスプレイ上の軌道及び潜在的な衝突点を示すことによって事故を図で示すことができる。この幾何学的情報の全ては推論層によって送給される評価に存在する。
【0138】
さらに別の実施形態においては、幾つかのユーザインターフェースは、全ての警報を発行する時間が制限されたているときには特に、警報を集約することを希望する。評価は、警報が集約されることを可能にする幾何学的情報及び主体のグループ分けの両方を提供する。
【0139】
要約すると、評価は、警報を発行するかどうか、いつ及びどのように警報を発行するかを決定するのに有益な情報を与える。次のセクションは、警報をスケジュール設定し発行する際に決定アダプタによってどのようにこの情報が用いられるかの例を説明する。
【0140】
この例においては、HMIは5つのパラメータによって特徴付けられる。
・警報の割合W。これは、警報が運転者によって取り入れることができる快適な割合である。システムは、この割合より下にとどまることを目指す。
・最大の警報の割合M。これは、警報を運転者に発行できる最大の割合である。典型的には、MはWより高く、危機にある場合及び予期せぬシナリオが発生する場合に、控えめに使用される。
・警報の効率Q。これは、0と1との間の値をもつ要素であり、運転者に通信される警報の効果を記述する。
・運転者が警報を聞き入れない場合に、同じ警報が繰り返される割合R。
・不必要な警報に対するペナルティD。
・警報に対するしきい値T。
【0141】
これらのパラメータは、決定アダプタを特定のHMIに対して警報をカスタマイズするように用いることができるHMIモデルを形成する。より複雑なHMIモデルを決定アダプタによって適応させることもできる。
【0142】
各々の時間スライスにおいて、決定アダプタは特化評価を受信する。決定アダプタは、第1に、それぞれの警報の効用関数による評価をランク付けし、以下のように定められる。
U=P・Q・B(0)−(1−P・Q)・D
この公式は、対応する評価、すなわち、P及びB(0)からの幾つかの情報を用いることによって、警報のための現在の効用測定を計算する。効用関数は、HMIモデルからのパラメータQ及びDをさらに考慮に入れる。
【0143】
効用関数は警報のための実際的な効用として解釈することができる。積P・B(0)は、即時に警報を与えるための理想的な効用であり、通信は100%効果的(Q=1)であり、運転者を注意散漫にさせるペナルティはない(D=0)と仮定する。B(0)は、t’=0で評価される利益関数であり、
図20において示されるような屈曲部の前に警報を与える利益を表すことに注目されたい。効用関数は、
図21に示される論理によって、効用計算へのある程度の現実感を加える。
図21に示されるように、効用は、警報を与える利益から、発生しない衝突のペナルティ及び無視される警報のペナルティを引いて計算される。
図21に示される確率理論に基づいて、効用関数を以下のように導くことができる。
U=P・Q・B(0)−(1−P)・D−P・(1−Q)・D
=P・Q・B(0)−(1−P・Q)
【0144】
1つの実施形態においては、効用がしきい値Tより上にある評価のみが警報のために考えられる。これらのさらに重大な評価は時間スライスにおける「未決定」の評価と呼ばれる。次に、スケジューラは、存在する場合には、未決定の評価のうちのどれを発行すべきかを判断する。スケジューラは、警報期限としてこれらの未決定の評価に対応する利益関数の屈曲部の全てを扱う。
【0145】
1つの実施形態においては、スケジューラは時間軸に対して逆方向に警報をスケジュール設定する。すなわち、スケジューラは、第1に、その予測される利益に基づいて評価をランク付けし、最も低くランク付けされた評価を第1に、できるだけ未来にスケジュール設定をする。このように、スケジューラは、警報の間に十分な間隔を置くことを可能にし、最善努力原則に基づいて、警報スケジュールが快適な警報の割合Wに従うように保証することができる。この逆方向のスケジューリング方式は、時間軸上の順方向において最も高くランク付けされた評価を第1に置く傾向があることに注目されたい。スケジューリングの後、スケジュールにおける第1の警報前に、時間が残っている場合には、現在の時間スライス中に警報が発行されることはなく、手順は次の時間スライスにおいて再び繰り返される。
【0146】
図22は、本発明の1つの実施形態による例示的な警報スケジュールを示す。この実施例において観察できるように、前述のスケジューリングは最新の可能な時間にスケジュール設定される最も低い利益(評価2202)をもつ評価に対する警報をもたらす。最も高い利益(評価2204)をもつ評価に対する警報は、全ての他の警報の前に、かなり早い時間にスケジュール設定される。評価2204に対する警報は、上述の理由のために待つほうが良く、安全であるので、最も早い可能な時間にスケジュール設定されることはないことに注目されたい。
【0147】
スケジューラが余裕の時間なしで全ての警報をスケジュール設定できない場合には、即時の警報が必要となる。この場合には、警報はスケジュールの初めに発行される。スケジューラはまた、全ての警報に適応するために最大の警報の割合Mに対応する間隔で警報を再スケジュール設定する。WとMとの間の相違は、幾つかの予期せぬ、到着の遅れる、高くランク付けされた評価を、スケジュールに適応させることを可能にする。極端な場合には、スケジューラは、最大の警報の割合を超えることなく全ての警報をスケジュール設定できないことを示す「過多」警報を発行することができる。
【0148】
推論層はまた、他の警報スケジューリング方式を採用することができ、カスタマイズされた決定アダプタはそれ自体の警報スケジューリング方式を含むことができることに注目されたい。
【0149】
本開示は、潜在的な事故についての生データを取得する機構と、警報を運転者に送給するHMIとの間にある推論層に対するアーキテクチャを説明する。この推論層は、シナリオのライブラリを適用して、主体が衝突しそうかどうかを予測し、潜在的な事故の評価を計算する。これらの評価は、運転者に警報を与えるかどうか、いつ及びどのように警報を与えるかについて効果的な決定をするのに十分なHMIに対する情報を含む。アーキテクチャは二重評価システムを含む。予備的アセッサは高度に効果的な幾何学的比較を実行して、潜在的な事故の予備的評価を計算する。この予備的評価は計算リソースを管理し、特化アセッサを開始するのに用いられる。特化アセッサは、より重大なシナリオの衝突モデルに確率的技術を適用し、より正確な評価を計算する。これらの評価を用いて、HMIは、複雑なシナリオにおける事故の、早期の、正確な、あまり注意散漫にならない警報を運転者に与えることができる。
【0150】
図23は、本発明の1つの実施形態による早期衝突警報システムを実装する例示的なコンピュータシステムを示す。コンピュータシステム2302は、プロセッサ2304、メモリ2306、及びストレージデバイス2308を含む。コンピュータシステム2302はまた、データ入力機構2310及びHMI2312に結合する。ストレージデバイス2308は、予備的評価及び特化評価モジュール2318を含む、衝突警報プログラム2316を格納する。さらにストレージデバイス2308には、アプリケーション2320及び2322が格納される。動作中、衝突警報プログラム2316はメモリ2306にロードされ、プロセッサ2304は衝突警報プログラム2316を実行して、衝突検出及び警報を実行する。
【0151】
本発明の上記の説明は、例示及び説明の目的のためだけに呈示された。これらは包括的なものではないし、又は、本発明を開示される形態に限定するものではない。従って、当業者であれば、多数の修正及び変形態様が明らかであろう。さらに、上述の開示は、本発明を限定するように意図されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲により定義される。