(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリシロキサン化合物とシリカ粒子との縮合反応物、並びに20℃における蒸気圧が530Pa以上であり、かつ、沸点が80℃以上130℃未満である有機溶媒(A)、及び20℃における蒸気圧が530Pa未満であり、かつ、沸点が130℃以上200℃以下である有機溶媒(B)から成る混合溶媒、又は20℃における蒸気圧が530Pa以上であり、かつ、沸点が130℃以上200℃以下である有機溶媒(C)を含むことを特徴とするトレンチ埋め込み用縮合反応物であって、
前記ポリシロキサン化合物が、下記一般式(2):
HSiX3
{式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基であり、同一でも異なっていてもよい。}で表されるシラン化合物と、下記一般式(3):
SiX4
{式中、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基であり、同一でも異なっていてもよい。}で表されるシラン化合物、下記一般式(4):
R2SiX3
{式中、R2は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基であり、そしてXは、同一でも異なっていてもよい。}で表されるシラン化合物、下記一般式(5):
R2SiX2
{式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基であり、そして複数のR及びXは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。}で表されるシラン化合物、又は下記一般式(6):
R3SiX
{式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基であり、そしてRは、同一でも異なっていてもよい。}で表されるシラン化合物から選ばれる少なくとも1種との縮合反応物であり、該ポリシロキサン化合物中の、前記一般式(2)で表されるシラン化合物に由来する構造の割合が30mol%以上である、前記トレンチ埋め込み用縮合反応物。
前記有機溶媒(A)が、アルコール、多価アルコール誘導体、ケトン、エステル、エーテル、及び炭化水素系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種類である、請求項1又は2に記載のトレンチ埋め込み用縮合反応物。
前記有機溶媒(C)が、アルコール、多価アルコール誘導体、ケトン、エステル、エーテル、及び炭化水素系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種類である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトレンチ埋め込み用縮合反応物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明で使用されるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000以上200,000以下で、HSiO
3/2基、MeHSiO基、及びH
2SiO基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基を40mol%以上含むポリシロキサン化合物は、下記一般式(2)単独、又は該一般式(2)及び下記一般式(3)〜一般式(6)で表される少なくとも1種のシラン化合物を、酸性雰囲気下、一般式(2)〜一般式(6)で表されるシラン化合物に含有されるX数の合計に対して0.1当量以上10当量以下の水と、反応させた縮合反応物である:
HSiX
3 一般式(2)
SiX
4 一般式(3)
R
2SiX
3 一般式(4)
R
2SiX
2 一般式(5)
R
3SiX 一般式(6)
{一般式(5)及び一般式(6)中のRは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一般式(2)〜一般式(6)中のXは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基であり、複数のR及びXは、存在する場合、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、そして一般式(4)中のR
2は、炭素数1〜10の炭化水素基である。}。
【0023】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の上記一般式(5)及び一般式(6)中のRの具体例としては、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、t―オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル等の非環式又は環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、スチレニル等の非環式又は環式アルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基が挙げられる。この中でも焼成時に酸化シリコン酸化物への転換の際に重量減少が少なく、収縮率が小さい基として、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、より好ましくは水素基である。
【0024】
上記一般式(2)〜一般式(6)中のXの具体例としては、例えばクロライド、ブロマイド、アイオダイド等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。この中でもクロライド、ブロマイド、アイオダイド等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基やアセトキシ基が縮合反応の反応性が高いため好ましい。
【0025】
上記一般式(4)中のR
2の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、t―オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル等の非環式又は環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、スチレニル等の非環式又は環式アルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基が挙げられる。この中でも焼成時に酸化シリコン酸化物への転換の際に重量減少が少なく収縮率が小さい基として、好ましくはメチル、エチル基である。
【0026】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物は、上記一般式(2)の水素化シラン化合物及び/又は上記一般式(5)中のH
2SiX
2又はMeHSiX
2で表される水素化シラン化合物の割合が、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計に対して40mol%以上が好ましく、より好ましくは50mol%以上である。上記一般式(2)で表される水素化シラン化合物の量が上記範囲内に入っていることは、焼成時、酸化シリコン酸化物への転換の際の塗布膜の収縮率が小さくなるために、好ましい。また、水素化シラン化合物の中でも、上記一般式(2)で表される水素化シラン化合物の割合が30質量%以上であることが、クラック耐性を上げるため好ましい。
【0027】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(3)で表されるシラン化合物の割合は、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計に対して30mol%以下であることが好ましく、より好ましくは20mol%以下である。上記の範囲内であることは、成膜性が良く収縮率も小さくなるため、好ましい。
【0028】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(4)で表されるシラン化合物の割合は、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計に対して30mol%以下であることが好ましく、より好ましくは20mol%以下である。上記の範囲内であることは、成膜性が良く収縮率が小さいため、好ましい。
【0029】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(5)で表されるシラン化合物の割合は、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計に対して50mol%以下であることが好ましく、より好ましくは30mol%以下である。上記の範囲内であることは、埋め込み性がよく、耐クラック性が高いため、好ましい。
【0030】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物の製造の際に使用される上記一般式(6)で表されるシラン化合物の割合は、ポリシロキサン化合物を製造する際に用いられるシラン化合物の合計に対して30mol%以下であることが好ましく、より好ましくは20mol%以下である。上記の範囲内であることは、埋め込み性がよく、耐クラック性が高いため、好ましい。
【0031】
ポリシロキサン化合物を製造する際、上記一般式(2)〜一般式(6)で表されるシラン化合物のうち使用されるものの少なくとも1種類のシラン化合物のXにハロゲン原子やアセトキシ化合物が含まれている場合は、縮合反応のために水を加えることによって反応系が酸性を示すため、シラン化合物の他に酸触媒を加えても加えなくてもよい。また上記一般式(2)〜一般式(6)で表されるシラン化合物のうち使用されるもののXが全てアルコキシ基である場合は、酸触媒を加えることが好ましい。
【0032】
酸触媒としては、無機酸又は有機酸を挙げることができる。
無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等を挙げることができる。
有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等を挙げることができる。
【0033】
これらの化合物は、一種又は二種以上を混合して用いることができる。また使用される酸触媒の量に関しては、ポリシロキサン化合物を製造する際の反応系のpHを0.01から6.0の範囲に調整することが、ポリシロキサン化合物の重量平均分子量を制御できるため好ましい。
【0034】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物は、有機溶媒中又は水と有機溶媒の混合溶液系中で製造される。縮合反応に使用される有機溶媒としては、例えばアルコール、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素化合物、アミド化合物等を挙げることができる。
【0035】
上記アルコール類としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのような一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールのような多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのような多価アルコールのモノエーテル類等が挙げられる。
【0036】
上記エステル類としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
上記エーテル類としては、上記の多価アルコールのモノエーテル類の他に、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール等が挙げられる。
【0037】
上記脂肪族炭化水素としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
上記アミド化合物としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N− メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0038】
以上の溶媒の中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等は、水と混合しやすく、シリカ粒子を分散させやすいため、好ましい。
【0039】
これらの溶媒は単独で使用してもいいし、複数の溶媒を合わせて使用してもよい。また上記溶媒を用いずにバルク中で反応を行ってもよい。
本発明で使用されるポリシロキサン化合物は、反応系中に水を添加することによって製造されることが好ましい。水の添加量としては、例えば、上記一般式(2)〜一般式(6)で表されるシラン化合物のうち使用されるもののXの合計モル数に対して0.1当量以上10当量以下が好ましく、更に好ましくは0.4当量以上8当量以下の範囲である。水の添加量が0.1当量以上である場合、ポリシロキサン化合物の分子量が大きくなるため好ましく、10当量以下である場合、トレンチ埋め込み用反応物溶液の保存安定性が向上し、製膜後のクラック耐性が向上するため、好ましい。
【0040】
本発明で使用されるポリシロキサン化合物を製造する際の反応温度は、特に制限は無いが、−50℃〜200℃の範囲、より好ましくは0℃〜150℃の範囲で行うことが好ましい。上記の範囲で反応を行うことにより、ポリシロキサン化合物を製造する際の分子量を制御することができる。
【0041】
本発明のトレンチ埋め込み用縮合反応物を製造する際に用いるポリシロキサン化合物、より典型的には上記一般式(2)で表されるシラン化合物の縮合反応物又は上記一般式(2)で表されるシラン化合物と上記一般式(3)〜一般式(6)で表されるシラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種との縮合反応物のポリスチレン換算での重量平均分子量は1,000以上200,000以下の範囲が好ましく、更に好ましくは2,000以上150,000以下である。ポリシロキサン化合物の重量平均分子量が1,000以上であると、成膜性とクラック耐性が良く、重量平均分子量が200,000以下であると、トレンチ埋め込み用反応物の保存安定性が良好になるため好ましい。本発明で使用されるポリシロキサン化合物は、上記有機溶液中で製造した後、そのままシリカ粒子と反応させてもよいし、上記有機溶液中で製造した後、濃縮し又は他の有機溶媒に置換してから、シリカ粒子と反応させてもよい。
【0042】
次に本発明で使用されるシリカ粒子について説明する。
本発明のトレンチ埋め込み用反応物に使用されるシリカ粒子としては、例えばヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等を挙げることができる。
上記ヒュームドシリカは、シリコン原子を含む化合物を気相中で酸素及び水素と反応させることによって得ることができる。原料となるケイ素化合物としては、例えばハロゲン化ケイ素(例えば塩化ケイ素等)等を挙げることができる。
【0043】
コロイダルシリカは、原料化合物を加水分解・縮合するゾルゲル法により合成することができる。コロイダルシリカの原料化合物としては、例えば、アルコキシケイ素(例えばテトラエトキシシラン等)、ハロゲン化シラン化合物(例えばジフェニルジクロロシラン等)等を挙げることができる。中でも、金属やハロゲン等の不純物は少ないことが好ましいため、アルコキシケイ素から得られたコロイダルシリカがより好ましい。
【0044】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、1nm以上120nm以下であることが好ましく、1nm以上40nm以下であることがより好ましい。上記平均一次粒子系が1nm以上である場合、クラック耐性が向上するため好ましく、120nm以下である場合、トレンチへの埋め込み性が高くなるため好ましい。
シリカの平均二次粒子径は、2nm以上250nm以下であることが好ましく、2nm以上80nm以下であることがより好ましい。上記平均二字粒子径が2nm以上である場合、クラック耐性が向上するため好ましく、250nm以下である場合、トレンチへの埋め込み性が高くなるため好ましい。また、シリカ粒子の平均二次粒子径は、上記の範囲内で、かつ基板に形成されたトレンチのうち、最小の開口幅の0.1〜3倍であることが、トレンチへの埋め込み性が高くなる点で、上記最小の開口幅の0.1〜2倍であることが更に好ましい。
【0045】
なお上記平均一次粒子系は、BETの比表面積から計算で求めた値であり、平均二次粒子系は、動的光散乱光度計で測定される値である。
なお、シリカ粒子は、加熱された際に結合が開裂・再結合して再配列する、いわゆる「リフロー」といわれる現象を示すことが知られている。このため、シリカ粒子の平均二次粒子径がトレンチの開口幅より大きくても、後述する加熱工程においてリフロー現象が起こり、これによって細分化されたシリカ粒子の一部がトレンチ内部まで到達することとなる。
【0046】
シリカ粒子の形状は、球状、棒状、板状若しくは繊維状又はこれらの2種類以上が合体した形状であることができるが、好ましくは球状である。なお、ここでいう球状とは、真球状の他、回転楕円体や卵形等の略球状である場合も含むものである。
シリカ粒子の比表面積は、HF耐性が良好になる点で、BET比表面積が1,000m
2/g以下 であることが好ましく、500m
2/g以下であることがより好ましい。上記BET比表面積は、N
2分子の圧力とガス吸着量から計算される方法で測定される値である。
【0047】
シリカ粒子としては、上記の要件に適合する限りで、制限は無く、市販品を使用することもできる。
市販品としては、コロイダルシリカとして、例えばLEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、メタノールシリカゾルIPA−ST、同MEK−ST、同NBA−ST、同XBA−ST、同DMAC−ST、同ST−UP、同ST−OUP、同ST−20、同ST−40、同ST−C、同ST−N、同ST−O、同ST−50、同ST−OL(以上、日産化学工業(株)製)、クオートロンP Lシリーズ(扶桑化学(株)製)、OSCALシリーズ(触媒化成工業(株)製)等;粉体状のシリカ粒子として、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株))、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等を、挙げることができる。
【0048】
本発明において用いられるポリシロキサン化合物に上記シリカ粒子を反応させる際には、溶媒中に分散した状態でのシリカ粒子を反応させることができる。溶媒としては、水若しくは有機溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができる。使用される有機溶媒の種類は、使用されるシリカ粒子の分散媒によって変わる。使用されるシリカ粒子の分散媒が水系の場合は、水又はアルコール系溶媒をシリカ粒子の水分散媒に加えてからシリカ粒子をポリシロキサン化合物と反応させてもよいし、シリカ粒子の水溶液を一度アルコール系溶媒に置換してから、シリカ粒子をポリシロキサン化合物と反応させてもよい。使用できるアルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール等挙げられ、これらは、水と容易に混合されるため好ましい。
【0049】
使用されるシリカ粒子の分散媒がアルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶媒である場合は、水又はアルコール、エーテル、ケトン、エステル等の溶媒を使用することができる。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えばジメトキシエタンが挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル等が挙げられる。
【0050】
シリカ粒子とポリシロキサン化合物との反応は、酸性雰囲気下で行われることが好ましい。酸触媒としては、ポリシロキサン化合物を製造に用いるものと同じ酸触媒を挙げることができる。ポリシロキサン化合物の製造後に酸触媒を取り除く場合には、シリカ粒子とポリシロキサン化合物とを反応させる際に酸触媒を再度加える必要があるが、ポリシロキサン化合物の製造後に酸触媒を取り除かずそのままシリカ粒子を反応させる場合は、酸触媒を再度加えなくても、ポリシロキサン化合物を反応させる際に使用された酸触媒でポリシロキサン化合物とシリカ粒子との反応を行うことができる。しかし、この場合、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子との反応時に改めて酸触媒を加えても構わない。
【0051】
シリカ粒子とポリシロキサン化合物溶液との反応温度は、特に制限されず、通常の範囲である−50℃以上200℃以下で行われる。
シリカ粒子の割合は、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子、又はポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物との合計に対して、1質量%以上80質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上70質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以上60質量%以下である。1質量%以上であることは、クラック耐性が上がるため好ましく、80質量%以下であることは、膜質が良くなるため好ましい。
【0052】
本発明のポリシロキサン系トレンチ埋め込み用反応物は、シリカ粒子の分散媒にポリシロキサン化合物溶液を加えて反応させた後に、下記一般式(1):
R
nSiX
4−n
{式中、nは、1〜3の整数であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びアセトキシ基からなる群から選ばれる基であり、そして複数のR及びXは、それぞれ、同一でも異なっていてもよいい。}で表されるシラン化合物を反応させても構わない。
【0053】
一般式(1)中のR及びXは、上記一般式(2)、一般式(5)又は一般式(6)におけるものと同じ基から選ばれることが好ましく、Rの具体例としては、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、i−ヘプチル、n−オクチル、i−オクチル、t―オクチル、n−ノニル、i−ノニル、n−デシル、i−デシル等の非環式又は環式の脂肪族炭化水素基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、ノルボルネニルエチル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、スチレニル等の非環式又は環式アルケニル基、ベンジル、フェネチル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル等のアラルキル基、PhCH=CH−基のようなアラアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基が挙げられる。この中でも焼成時に酸化シリコン酸化物への転換の際に重量減少が少なく、収縮率が小さい基として、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、より好ましくは水素基である。
【0054】
上記一般式(1)中のXの具体例としては、例えば塩素、臭素等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。この中でもメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基やアセトキシ基が縮合反応の反応性が高い点で好ましい。
【0055】
本発明のトレンチ埋め込み用反応物に加える上記一般式(1)で表されるシラン化合物は、1種類でも複数種でもよい。複数種のシラン化合物を加える際には、1種類ずつ加えてもよいし、複数種のシラン化合物を混合してから加えてもよい。
上記一般式(1)で表されるシラン化合物の添加量は、ポリシロキサン化合物、シリカ粒子、及び一般式(1)で表されるシラン化合物の合計の、40質量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下の範囲である。一般式(1)で表されるシラン化合物の添加量が上記の範囲であることは、本発明のトレンチ埋め込み用縮合反応物の保存安定性が向上し、クラック耐性が上がるため、好ましい。
【0056】
上記一般式(1)で表されるシラン化合物は、ニートで(すなわち溶媒で希釈せずにそのまま)加えてもよいし、一度溶媒で希釈してから加えてもよい。希釈用の溶媒としては、シラン化合物が反応しなければどのような溶媒を用いても構わない。例えばエーテル系、炭化水素系、ハロゲン化の溶媒等を使用できる。一般式(1)で表されるシラン化合物の添加時の濃度としては、1質量%以上100質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは3質量%以上50質量%以下である。該濃度が上記の範囲内であることは、溶媒量を少なくできる点で好ましい。
一般式(1)で表されるシラン化合物は、添加後、−50℃以上200℃以下の範囲で、1分以上100時間以下の範囲で反応させることが好ましい。反応温度と反応時間とを制御することで、本発明のトレンチ埋め込み用反応物を製膜する際の粘度を制御することができる。
【0057】
本発明のトレンチ埋め込み用縮合反応物は、上記一般式(1)で表されるシラン化合物と反応させた後、20℃における蒸気圧が530Pa以上であり、かつ、沸点が80℃以上130℃未満である有機溶媒(A)、及び20℃における蒸気圧が530Pa未満であり、かつ、沸点が130℃以上200℃以下である有機溶媒(B)から成る混合溶媒、又は20℃における蒸気圧が530Pa以上であり、かつ、沸点が130℃以上200℃以下である有機溶媒(C)を含む溶液の形態にすることが好ましい。
【0058】
上記分散液又は溶液の固形分濃度は、保存安定性が良くなること、また、塗布時にトレンチ幅が狭くアスペクト比が大きい微細なトレンチへの埋め込み性と厚膜化を同時に満たせる観点から、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。上記有機溶媒(A)、(B)又は(C)はポリシロキサン化合物とシリカ粒子との反応、あるいはポリシロキサンとシリカ粒子との反応物と一般式(1)で表されるシラン化合物との反応の際に予め加えておいても構わないし、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子との反応、あるいは、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子と一般式(1)で表されるシラン化合物との反応を行った後に、上記から選ばれる溶媒を更に添加しても構わない。また反応物を形成させた後、一度反応の際に使用した溶媒を蒸留等の方法により、留去、濃縮させた後に、上記有機溶媒を加えても構わない。
【0059】
20℃における蒸気圧が530Pa以上で、かつ沸点が80℃以上130℃未満の有機溶媒(A)としては、アルコール、多価アルコール誘導体、ケトン、エステル、エーテル、又は炭化水素系溶媒が好ましい。20℃における蒸気圧が530Pa以上で、かつ沸点が80℃以上であると、保存安定性を保ちながら塗布時に厚膜化ができるため好ましく、沸点が130℃未満であると、成膜性が向上することから好ましい。また、上記有機溶媒(A)が上記溶液に占める溶媒の合計に対して10質量%以上50質量%以下含まれていることが好ましい。これは、10質量%以上であると、保存安定性を保ちながら塗布時に厚膜化ができるため好ましく、50質量%以下であると、成膜性が向上するため好ましい。
【0060】
上記有機溶媒(A)の具体例としては、例えばt−アミルアルコール、イソプロピルアルコール、ネオペンチルアルコール、ブタノール、プロパルギルアルコール、1−プロパノール、3−メチル−2ブタノール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアルコール系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体系溶媒、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルオキシド、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸ブチル、酢酸アリル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル等のエステル系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、ヘプタン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒が挙げられる。中でも、成膜性が良くなることから、1−プロパノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、酢酸ブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルがより好ましい。
【0061】
20℃における蒸気圧が530Pa未満で、かつ沸点が130℃以上200℃以下の上記有機溶媒(B)としては、アルコール、多価アルコール誘導体、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素系溶媒が好ましい。20℃における蒸気圧が530Pa未満で、かつ沸点が130℃以上であると、保存安定性が良くなるため好ましく、200℃以下であると予備硬化の際に溶媒が蒸発し易いため好ましい。また、上記有機溶媒(B)が上記溶液に占める溶媒の合計に対して50質量%以上90質量%以下含まれていることが好ましい。50質量%以上であると成膜性が向上するため好ましく、90質量%以下であると保存安定性を保ちながら、塗布時に一度塗りで厚膜化できるため好ましい。
【0062】
上記有機溶媒(B)の具体例としては、例えばイソアミルアルコール、2−エチルブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等のアルコール系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルアセテート等の多価アルコール誘導体系溶媒、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−ヘプチルケトン等のケトン系溶媒、アセト酢酸エチル、ギ酸ヘキシル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸メチル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸ブチル等のエステル系溶媒、アニソール、エチルベンジルエーテル、ジイソアミルエーテル等のエーテル系溶媒、ジペンテン、デカリン等の炭化水素系溶媒が挙げられる。中でも、保存安定性がより良好であることから、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルアセテート、ジペンテン、デカリンがより好ましい。
【0063】
20℃における蒸気圧が530Pa以上で、かつ、沸点が130℃以上200℃以下の上記有機溶媒(C)としては、アルコール、多価アルコール誘導体、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素系溶媒が好ましい。20℃における蒸気圧が530Pa以上で、かつ、沸点が130℃以上であることは、保存安定性を保ちつつ、塗布時に厚膜が可能であるため好ましく、沸点が200℃以下であることは、予備硬化の際に溶媒が蒸発しやすいため好ましい。また、上記有機溶媒(C)が上記溶液に占める溶媒の合計に対して60質量%以上含まれていることが好ましい。これは、保存安定性が良くなること、固形分濃度が薄い場合でも厚膜化が可能となること、及び、成膜性が向上することから、好ましい。
【0064】
上記有機溶媒(C)の具体例としては、例えば、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール系溶媒、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール誘導体系溶媒、アセチルアセトン、エチル−n−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン等のケトン系溶媒、酢酸イソアミル、マロン酸ジエチル、酪酸ブチル等のエステル系溶媒、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、キシレン等の炭化水素系溶媒が挙げられる。中でも、保存安定性がより良くなることから、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、キシレンがより好ましい。
【0065】
上記有機溶媒(A)が上記溶液に占める溶媒の合計に対して10質量%以上50質量%以下で、かつ、上記有機溶媒(B)が上記溶液に占める溶媒の合計に対して50質量%以上90質量%以下含まれている混合溶媒であるか、又は上記有機溶媒(C)が上記溶液に占める溶媒の合計に対して60質量%以上含まれていれば、これらの溶媒に他の溶媒が混合されていても構わない。また上記有機溶媒(A)、(B)又は(C)が複数用いられても構わない。
【0066】
このような方法により製造された本発明のトレンチ埋め込み用反応物は、通常の方法で基板上に塗布することができる。塗布方法としては、例えばスピンコート法、ディップコート法、ローラーブレード塗布法、スプレー塗布法等が挙げられる。中でも塗布面の均一性などの観点から、スピンコート法が特に好ましい。スピンコーティング法で塗布する場合、一段階の回転数で塗布しても、複数段階の回転数を組み合わせて塗布しても構わないが、少なくとも一段階目の回転数が50rpm以上700rpm以下で塗布することが好ましい。これは、一段階目に低速で回転させることによってトレンチ埋め込み用縮合反応物をシリコン基板全面に広げるためと、上記有機溶媒(A)が蒸発し、トレンチ埋め込み用縮合反応物の固形分濃度が薄い場合でも厚膜化が可能となるためである。また、トレンチ埋め込み用縮合反応物の塗布回数は1回でも複数回でも構わないが、成膜性が良くなること、及び製造コストの観点から、1回で塗布する方がより好ましい。
【0067】
トレンチ埋め込み用縮合反応物をこれらの方法で塗布した後、塗布膜中の残存溶媒を除くため50〜200℃で予備硬化させることが好ましい。その後、予備硬化させて得られた膜を酸化・加熱焼成することによってシリコン酸化物を得ることができる。
【0068】
酸化及び加熱焼成の方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネス等の一般的な加熱手段を適用することができる。熱処理温度は、好ましくは100℃〜1,200℃であり、より好ましくは200℃〜1,000℃であり、更に好ましくは300℃〜900℃である。熱処理温度が上記の範囲内であることは、焼成後の膜密度が高く、また得られる膜質が良いため、好ましい。加熱焼成時の雰囲気としては、空気、酸素又は水蒸気酸化雰囲気のいずれを用いても構わない。酸化及び加熱焼成の温度は200〜850℃の範囲であり、酸化前後にN
2、Ar等の不活性雰囲気下で焼成しても構わない。酸化・加熱焼成工程時の圧力は、特に制限は無く、加圧下、常圧下、減圧下又は真空中のいずれの圧力でも実施することができる。
【0069】
また酸化、加熱燃焼時に光処理を併用しても構わない。この場合、光処理は加熱前後のいずれに行ってもよいし、加熱しながら光処理を同時に行ってもよい。加熱と光処理とを同時に行う場合の温度は、好ましくは室温以上500℃以下であり、処理時間は0.1分以上120分以下程度である。
【0070】
光処理には、可視光線、紫外線、遠紫外線などを使用できるほか、低圧又は高圧の水銀ランプ、重水素ランプ、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスの放電光、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザー等を光源として使用することができる。これらの光源は、好ましくは10〜5,000Wの出力のものである。これらの光の波長は、塗布した膜中のトレンチ埋め込み用組成物に少しでも吸収があれば構わないが、好ましくは170nm〜600nmの波長の光であり、照射量としては、0.1〜1,000J/cm
2であり、より好ましくは1〜100J/cm
2である。光処理する時、同時にオゾンを発生させても構わない。例えば上記の条件で光処理することによって酸化反応が進行し、焼成後の膜質を向上させることができる。
【0071】
本発明のトレンチ埋め込み用縮合反応物を使用して得られた絶縁膜は、例えばフラッシュメモリ等の絶縁膜として好適である。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例により本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)ポリシロキサン化合物の分子量測定
東ソー製のゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)、HLC−8220を使用し、テトラヒドロフラン(THF)溶媒中、ポリシロキサン化合物を1質量%溶液にして測定し、示差屈折率計(RI)によりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0073】
(2)成膜性
Si基板上にトレンチ埋め込み用組成物を塗布し、プリベークによって溶媒を除去した後のSi基板を光学顕微鏡にて観察し、クラック、ハジキ、異物のいずれも認められない場合を○、これらの少なくともいずれかが認められる場合を×とした。
【0074】
(3)クラック耐性
焼成後の膜厚が1μmになるように、Si基板上にトレンチ埋め込み用縮合反応物を塗布及び焼成し、焼成後のSi基板を光学顕微鏡にて観察し、光学顕微鏡下でクラックが入っているか否かを判定し、クラックが入っていない場合を○、クラックが入っている場合を×とした。
【0075】
(4)収縮率
6インチSi基板上に塗布した膜において、予備加熱後の膜厚t
0と、焼成後の膜厚t
1をHORIBA JOBINYVON製 分光エリプソメーター UVISELで測定し、(硬化)収縮率を(t
0−t
1)/t
0*100とした。
【0076】
(5)埋め込み性
塗布・焼成後のトレンチを有するSi基板をトレンチの長手方向に対し直角の方向で割断し、FIB加工をした後、日立製作所製、走査型電子顕微鏡(SEM)S4700を使用し、加速電圧5kVで測定し、トレンチ内がトレンチ埋め込み用縮合反応物で埋まっており、溝、孔、クラック等のボイドが観察されない場合を○、このようなボイドが観察される場合を×とした。
【0077】
(6)保存安定性(ポットライフ)
製造したポリシロキサン系トレンチ埋め込み用反応物溶液を室温で3日放置し、ゲル化しない場合を○、ゲル化する場合を×とした。
【0078】
ポリシロキサン化合物の製造例
[製造例]
蒸留塔、滴下ロートを備えた1Lの4つ口フラスコにトリエトキシシラン37.19g(0.23mol)とイソプロパノール200gを入れ、水36.68g(2.04mol)と塩酸0.4gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌した。キシレン250gを加え、昇温してイソプロパノール、水、塩酸、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物の10質量%のキシレン溶液を得た。得られたキシレン溶液は中性であった。一部をサンプリングしGPCを用いて分子量を測定したところ、重量平均分子量は12,000であった。
【0079】
[実施例1]
蒸留塔及び滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径6nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、47.62gとイソプロパノール350gを入れ、上記製造例で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のキシレン溶液120gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン2.0g(0.012mol)とキシレン10gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後にプロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)200gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のPGMEA溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のPGMEA溶液は中性であった。このPGMEA溶液を30質量%まで濃縮した後、1−Propanolを加えて20質量%のワニスを得た。このワニスを室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0080】
上記ワニスを6インチのSi基板上に2mL滴下し、回転速度300rpmで60秒間、及び回転速度1000rpmで30秒間の2段階でスピンコートを行った。この基板を空気中、50℃、100℃、200℃のホットプレート上でこの順に2分間ずつ、段階的にプリベークし、溶媒を除去した。得られた塗膜はクラック、ハジキや異物の観察されない均一なものであった。
【0081】
上記塗膜が形成されたSi基板を酸素雰囲気下、5℃/分で400℃まで昇温し、30分焼成した。雰囲気を酸素から窒素に切り替え、30分放置後、700℃まで昇温し、1時間焼成し、2℃/分で室温まで降温した。
焼成後のSi基板をクラック耐性及び収縮率を評価した。評価結果を以下の表1に示す。
【0082】
また上記ワニスを、開口幅50nm、深さ0.5μmのトレンチを有するSiチップに1mL滴下し、同様に上記条件でスピンコート、プリベーク、焼成を行った。得られた焼成後の基板をトレンチの長手方向に対し直角の方向で割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、埋め込み性は非常に良好であった。
【0083】
[実施例2]
蒸留塔及び滴下ロートを有する4つ口の1Lフラスコに、扶桑化学工業製の平均粒径6nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子;PL−06、47.62gとイソプロパノール350gを入れ、上記製造例1で製造した10質量%のポリシロキサン化合物のキシレン溶液120gを室温で滴下した。滴下終了後、30分攪拌し、トリエトキシシラン2.0g(0.012mol)とキシレン10gで希釈した溶液を滴下した。オイルバス100℃で4時間還流した。還流後、更にキシレン250gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、塩酸、水、キシレンを留去し、ポリシロキサン化合物とシリカ粒子とシラン化合物の反応物のキシレン溶液を得た。得られたポリシロキサン化合物とシリカ粒子の反応物のキシレン溶液は中性であった。このキシレン溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0084】
上記ワニスを、6インチのSi基板と、開口幅50nm、深さ0.5μmのトレンチを有するSiチップに実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板は、クラック、ハジキ、異物が観察されない均一なものであった。得られたトレンチを有するSi基板をトレンチの長手方向に対し直角の方向で割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、局所的な溝、孔、クラック等のボイドは観察されず、埋め込み性は非常に良好であった。その他の評価結果を以下の表1に示す。
【0085】
[比較例1]
蒸留塔及び滴下ロートを備えた500mL4つ口フラスコに触媒化成工業製の平均粒径7nm、20質量%濃度のイソプロパノール分散シリカ粒子;AD−1003、15gとトリエトキシシラン27.57g(0.17mol)、テトラエトキシシラン9.19g(0.044mol)を入れ、水24.48gと塩酸1.0gの混合溶液を室温で滴下した。滴下終了後、2時間攪拌し、PGMEA250gを加え、オイルバスを昇温し、蒸留ラインよりイソプロパノール、キシレン、水、塩酸を除去した。得られたPGMEA溶液は中性であった。このPGMEA溶液を20質量%まで濃縮し、室温で3日間放置したが、ワニスはゲル化しなかった。
【0086】
上記ワニスを6インチのSi基板と、開口幅50nm、深さ0.5μmのトレンチを有するSiチップに実施例1と同条件で塗膜、プリベーク、焼成を行った。得られたSi基板は0.6μmでクラックが認められた。得られたトレンチを有するSi基板をトレンチの長手方向に対し直角の方向で割断し、FIB加工後、SEM測定を行ったところ、ボイド及びクラックの発生が認められ、トレンチ埋め込み性は不良であった。
【0087】
【表1】