特許第5662657号(P5662657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5662657-離型フィルム 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5662657
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20150115BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   B32B27/36
   B32B27/00 L
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-183686(P2009-183686)
(22)【出願日】2009年8月6日
(65)【公開番号】特開2011-37023(P2011-37023A)
(43)【公開日】2011年2月24日
【審査請求日】2012年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100127306
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
(72)【発明者】
【氏名】松島 大
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−343086(JP,A)
【文献】 特表2009−525895(JP,A)
【文献】 特開2004−122699(JP,A)
【文献】 特開平08−048004(JP,A)
【文献】 特開2000−007799(JP,A)
【文献】 特開2000−006353(JP,A)
【文献】 特開平09−011348(JP,A)
【文献】 特開2003−327719(JP,A)
【文献】 特開2008−218874(JP,A)
【文献】 特開平10−138431(JP,A)
【文献】 特開2007−175885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の面側に設けられた第1の樹脂層と、
前記基材フィルムの他方の面側に設けられた第2の樹脂層とを備えた離型フィルムにおいて、
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層を構成する樹脂材料は、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂の少なくとも一方を含む材料で構成されており、
前記基材フィルムは、ポリエステルを含む材料で構成され、かつ150〜230℃の温度で1〜30秒間熱処理した後、50〜80℃の温度で1〜10秒間徐冷するアニール処理が施されたものであり、
前記基材フィルムは、130℃、10分間の加熱処理前後における寸法変化率が、長さ方向で0.5%以下、幅方向で0.2%以下の2軸配向フィルムであり、
前記離型フィルムは、130℃、10分間の加熱処理前後における寸法変化率が、長さ方向で0.3%以下、幅方向で0.15%以下である離型フィルムを作製する離型フィルムの製造方法であって、
ポリエステルを含む材料を真空乾燥後押出機に投入し、Tダイによりシート状に吐出した後、冷却ロールにて冷却して無配向状態の未延伸フィルムを得る工程、
前記未延伸フィルムを、2軸延伸法により2軸配向させた後、150〜230℃の温度で1〜30秒間熱処理した後、50〜80℃の温度で1〜10秒間徐冷するアニール処理を施すことにより基材フィルムを得る工程、
前記基材フィルムの一方の面側に、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂の少なくとも一方、及び架橋剤を含む樹脂組成物を塗工した後、加熱して硬化することによって、第1の樹脂層を形成する工程、
前記基材フィルムの他方の面側に、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂の少なくとも一方、及び架橋剤を含む樹脂組成物を塗工した後、加熱して硬化することによって、第2の樹脂層を形成する工程、
を有することを特徴とする離型フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレートを含む材料で構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルムの製造方法
【請求項3】
前記離型フィルムは、130℃、10分間の加熱処理前後において、長さ方向の寸法変化率をAとし、幅方向の寸法変化率をBとしたとき、|A−B|≦0.1の関係を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の離型フィルムの製造方法
【請求項4】
前記樹脂材料は、架橋剤としてのアミノ樹脂で架橋されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の離型フィルムの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルムの両面に樹脂層が形成された離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂などからなる接着層を有する樹脂シートやエポキシ樹脂含浸シートに熱圧着により仮着されて使用される離型シートとして、環状オレフィン系樹脂とエチレン・α‐オレフィン共重合体とからなる樹脂混合物で形成された表面層を有する離型フィルムが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来より用いられている離型フィルムでは、樹脂シートへラミネートした際の熱および圧力による離型フィルムの寸法の変化によって、反り、シワ、浮きの発生の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−231411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、接着性樹脂シートなどの樹脂シートへの離型フィルムの仮着は、熱圧着によって行われるのが一般的である。しかし、従来の離型フィルムは、熱圧着時の加熱や加圧により寸法変化して、接着性樹脂シートなどの樹脂シートに反りやシワを与え、さらには離型フィルムの一部が接着性樹脂シートなどの樹脂シートから剥がれて浮きが発生することがある。
【0005】
そこで、本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、高温下でも寸法安定性がよい離型フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る離型フィルムは、帯状の基材フィルムと、基材フィルムの一方の面側に設けられた第1の樹脂層と、基材フィルムの他方の面側に設けられた第2の樹脂層とを備えるものである。そして基材フィルムが、130℃、10分間の加熱処理前後における寸法変化率が、長さ方向で0.5%以下、幅方向で0.2%以下の2軸配向フィルムであることを特徴とするものである。
【0007】
基材フィルムは、アニール処理されていたほうが良い。さらに、本発明に係る離型フィルムは、130℃、10分間の加熱処理前後における寸法変化率が、長さ方向で0.3%以下、幅方向で0.15%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温下でも寸法安定性がよい離型フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】離型フィルムを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明について実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る離型フィルムを示す縦断面図である。離型フィルム20は、接着性樹脂シートなどの樹脂シートの少なくとも一面に仮着されて使用されるものである。離型フィルム20は、帯状の基材フィルム10と、基材フィルム10の一方の面10A側に設けられた第1の樹脂層11と、基材フィルム10の一方の面10Aの反対側の面である他方の面10B側に設けられた第2の樹脂層12とを備える。
【0011】
本実施形態における基材フィルム10は、第1及び第2の樹脂層11、12を支持する機能を有したものである。基材フィルム10を構成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂等が使用される。これらの中でも、加工のしやすさ、耐久性、耐熱性、コスト等の観点から、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0012】
基材フィルム10の熱機械分析(測定条件:窒素中、昇温速度5℃/分)により測定される軟化温度は180℃以上であることが好ましく、180℃〜500℃であることがより好ましく、200〜500℃であることが特に好ましい。軟化温度がこれら範囲にあることにより、基材フィルム10の熱伸縮率を小さくすることができるとともに、レーザー照射による貫通孔形成を容易に行うことができる。
【0013】
本実施形態における基材フィルム10は、2軸配向フィルムであって、その130℃、10分間の加熱処理前後における寸法変化率が、長さ方向で0.5%以下、幅方向で0.2%以下であることを特徴とするものである。本実施形態では、このような特徴を有する基材フィルム10を用いることにより、離型フィルム20を接着性樹脂シートなどの樹脂シートに熱圧着した際、反り、シワ、浮きの発生を抑制することができる。なお、130℃、10分間の加熱処理前後における寸法変化率は、後述する実施例記載の方法で測定されたものである。
【0014】
基材フィルム10の好ましい製造方法は、以下の通りである。まず、上述した基材フィルム10を構成する材料を真空乾燥後押出機に投入し、Tダイによりシート状に吐出した後、冷却ロールにて冷却して無配向状態の未延伸フィルムを得る。次いで、得られた未延伸フィルムを、公知の2軸延伸法(例えば、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法等)により、2軸配向させて、帯状の基材フィルム10を得る。2軸配向した基材フィルム10には、その後、好ましくは150〜230℃、より好ましくは160〜220℃の温度で1〜30秒間熱処理した後、50〜80℃の温度で1〜10秒間徐冷するアニール処理を施したほうが良い。本実施形態では、基材フィルム10にアニール処理を施すことにより、2軸延伸で発生した歪みを取り除き、上記したように加熱処理前後における寸法変化率を小さくすることが可能となる。
【0015】
第1及び第2の樹脂層11、12が積層される基材フィルム10の両面10A、10Bは、JIS−K6768による濡れ指数が30mN/m以上であることが好ましく、40〜70mN/mであることがより好ましい。これにより、基材フィルム10と樹脂層11、12との密着性を高めることができる。また、濡れ指数を上記範囲にするために、基材フィルム表面には、所望によりプライマーコートが塗布され、またはコロナ処理等が施されていても良い。
【0016】
基材フィルム10の平均厚さは、特に限定されないが10〜60μmであることが好ましく、12〜50μmであることがより好ましい。
【0017】
本実施形態では、以上特徴を有する基材フィルム10の両面10A、10Bに、樹脂層11、12を設けることによって、寸法安定性に優れた離型フィルム20を得ることができる。具体的には、離型フィルム20(すなわち、基材フィルム10に、第1及び第2の樹脂層11、12を設けた後のもの)は、130℃、10分間の加熱処理前後における寸法変化率が、長さ方向で0.3%以下、幅方向で0.15%以下となることが好ましく、長さ方向で0.2%以下、幅方向で0.1%以下となることがより好ましい。また、離型フィルム20の上記測定条件での長さ方向の寸法変化率をAとし、幅方向の寸法変化率をBとしたとき、|A−B|≦0.2の関係を満足することが好ましく、|A−B|≦0.1の関係を満足することがより好ましい。
【0018】
第1の樹脂層11は、離型フィルム20が接着性樹脂シートなどの樹脂シートに仮着される際、該樹脂シートに密着する層であり、離型性の樹脂材料を主成分として構成され、例えばその樹脂材料が硬化することにより形成された層である。第1の樹脂層11は、該樹脂シートとの接合(仮着)に寄与し、熱圧着により離型フィルム20と該樹脂シートとを接合させる機能を有する層であり、また、該樹脂シートから離型フィルム20を剥離するときの離型層としての機能も果すものである。
【0019】
第1の樹脂層11を構成する樹脂材料としては、基材フィルム10との密着性に優れ、かつ接着性樹脂シートなどの樹脂シートとの適度な密着性及び適度な離型性を備えたものであれば、特に限定されないが、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂の少なくとも一方を含む材料で構成されていることが好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂に比べて、硬化時の熱収縮率が小さく、離型フィルム20の寸法変化率をより小さくすることが可能である。
【0020】
第1の樹脂層11において、上記アルキド樹脂やエポキシ樹脂は架橋されていることが好ましい。これにより、離型フィルム20を熱圧着によって接着性樹脂シートなどの樹脂シートに容易に接合させることができるとともに、孔開け後は離型フィルム20を該樹脂シートから容易に剥離させることができる。また、離型フィルム20の耐熱性及び耐溶剤性をより高いものとすることができる。
【0021】
アルキド樹脂としては特に制限はなく、従来アルキド樹脂として知られている公知のものの中から適宜選択して用いることができる。具体的にはアルキド樹脂としては、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られる樹脂であって、二塩基酸と二価アルコールとの縮合物又は不乾性油脂肪酸等で変性したものである不転化性アルキド樹脂、及び二塩基酸と三価以上のアルコールとの縮合物である転化性アルキド樹脂等が挙げられ、本発明においては、いずれも使用することができる。
【0022】
アルキド樹脂の原料として用いられる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビット等の四価以上の多価アルコールを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
また、多塩基酸としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸等の芳香族多塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等の脂肪族不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物等のディールズ・アルダー反応による多塩基酸等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
さらに、変性剤である上記不乾性油脂肪酸等としては、例えばオクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸、あるいはヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油、およびこれらの脂肪酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、第1の樹脂層11において、アルキド樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エステル、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、エポキシ樹脂としては、これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。さらには、分子内に開環反応により生じる水酸基を有しているエポキシ樹脂を用いることがより好ましい。水酸基を有するエポキシ樹脂を用いることより、後述するアミノ樹脂等の架橋剤との反応性を向上させることができ、架橋後の被膜硬度が上昇し、基材フィルム10と第1の樹脂層11との密着性を向上させることができる。
【0026】
上記エポキシ樹脂、アルキド樹脂等の主剤を架橋させるために用いられる架橋剤としては、特に制限はなく公知のものが使用可能であるが、例えば、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びフェノール樹脂の中から適宜選択して用いることができる。これらの中でも、エポキシ樹脂やアルキド樹脂との反応性や基材との密着性の点から、アミノ樹脂が好ましい。アミノ樹脂の具体例としては、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するメラミン樹脂、尿素樹脂、尿素−メラミン樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド−ホルムアルデヒド樹脂、エチレン尿素−ホルムアルデヒド樹脂等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤を用いる場合、硬化反応を促進するために、第1の樹脂層11には、所望により塩酸、p−トルエンスルホン酸等の公知の酸性触媒が含まれていても良い。上記主剤100質量部に対する架橋剤の配合割合は、10〜200質量部が好ましく、20〜100質量部がより好ましい。
【0027】
また、第1の樹脂層11には、上記成分の他、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線防止剤、帯電防止剤等が含まれていても良い。
【0028】
また、第1の樹脂層11中には、実質的にシリコーン化合物を含まないことが好ましい。これにより、本発明の離型フィルムから、該離型フィルムと接合される接着性樹脂シートなどの樹脂シートにシリコーン化合物が移行することが防止される。その結果、接着性樹脂シートなどの樹脂シートを用いた加工製品に発生する接着不良などの不具合を防止することができる。なお、実質的にシリコーン化合物を含まないとは、シリコーン化合物の量が、好ましくは、500μg/m2以下、より好ましくは、100μg/m2以下のことをいう。
【0029】
第1の樹脂層11中における樹脂材料の含有量は、60〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましい。
【0030】
第1の樹脂層11の平均厚さは、0.1〜5.0μm程度であることが好ましく、0.3〜3.0μm程度であることがより好ましい。このような厚さとすると、第1の樹脂層11の長さ方向及び幅方向の寸法変化率を小さくできるので、離型フィルム20の寸法変化率も小さくすることができる。
【0031】
第2の樹脂層12は、樹脂材料を主成分として構成され、例えばその樹脂材料が硬化することにより形成された層である。本実施形態では、第2の樹脂層12を設けることにより、レーザー照射によって貫通孔を形成するとき、接着性樹脂シートなどの樹脂シートをレーザー照射から保護し、該樹脂シートに形成される貫通孔の穴開け精度を良好なものとすることができる。第2の樹脂層12を構成する樹脂材料としては、基材フィルム10との密着性に優れ、かつ離型フィルム20がロール状に保管される際に第1の樹脂層11との間でブロッキングを生じないものであれば、特に限定されないが、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂の少なくとも一方を含む材料で構成されていることが好ましい。これら樹脂材料は比較的弾性率が高く、レーザー加工による孔開け精度をさらに良好なものとすることができる。
【0032】
第2の樹脂層12において、アルキド樹脂やエポキシ樹脂は架橋剤で架橋されていることが好ましい。架橋剤が使用される場合、第2の樹脂層12は上記公知の酸性触媒を含んでいても良い。また、第2の樹脂層12に使用されるアルキド樹脂、エポキシ樹脂、架橋剤は例えば、上記第1の樹脂層11を構成する材料として例示したものが使用される。
【0033】
第2の樹脂層12を構成する樹脂材料としては、第2の樹脂層12が第1の樹脂層11の熱収縮率に近い値が得られるように選択されることが好ましく、同種材料、異種材料のいずれでも良いが、より好ましくは同種材料が使用される。第1及び第2の樹脂層11、12の熱収縮率を近似させることによって、接着性樹脂シートなどの樹脂シートに離型フィルムを熱圧着したときに生じる離型フィルムの反りを抑制できるので、孔開けの位置精度、寸法精度をより高いものとすることができる。
【0034】
第2の樹脂層12には、上記成分の他、例えば、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線防止剤、帯電防止剤等が含まれていても良い。
【0035】
第2の樹脂層12中における樹脂材料の含有量は、60〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましい。また、第2の樹脂層12の平均厚さは、0.1〜5.0μm程度であることが好ましく、0.3〜3.0μm程度であることがより好ましい。
【0036】
第1及び第2の樹脂層11、12は、上記樹脂材料に加えて、所望により架橋剤、触媒等を含む樹脂組成物を、基材フィルム10に従来公知の塗工方法で塗工した後、例えば所定の温度で加熱して硬化することによって得られたものである。このとき、樹脂組成物は適当な溶剤等で希釈したものが基材フィルム10に塗工されても良い。本実施形態では、基材フィルム10の両面に、第1及び第2の樹脂層11、12を設けることによって、基材フィルム10が薄いものであったとしても、耐熱性を向上させることができ、かつ寸法安定性に優れた離型フィルム20を得ることができる。
【0037】
上記樹脂シートとしては、例えば、接着性樹脂シート、熱硬化性樹脂シート、熱可塑性樹脂シートなどの樹脂シートが挙げられる。
【0038】
上記離型フィルム20を用いることにより、本実施形態では、反り、シワ、浮きが発生しないように、離型フィルム20を接着性樹脂シートなどの樹脂シートに熱圧着できるので、その結果、高い寸法精度及び位置精度で該樹脂シートに貫通孔を形成することができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は下記で述べる実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
主剤としての水酸基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂エステル樹脂溶液(固形分濃度60質量%):100質量部に、架橋剤としてのメチル化メラミン樹脂(固形分濃度100質量%):40質量部と、触媒としてのp−トルエンスルホン酸メタノール溶液(固形分濃度50質量%)5質量部とを添加し、トルエン/メチルエチルケトン(MEK)混合溶媒(トルエン:MEK(質量比)=50:50)で希釈混合して固形分濃度30質量%の第1の塗工液を得た。
【0041】
一方、上記第1の塗工液と同一配合にて第2の塗工液を得た。
【0042】
次に、第1の塗工液を、基材フィルムとしてアニール処理(熱処理条件:温度175℃×15秒間、徐冷処理条件:温度70℃×5秒間)した厚さ25μmの2軸配向ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(フィルム表面の濡れ指数:43mN/m)にマイヤバー#4を用いて塗布し、150℃で40秒間加熱乾燥させ樹脂材料を硬化させて、厚さ0.8μmの第1の樹脂層を形成した。次に、PETフィルムの第1の樹脂層を形成した面とは反対側の面に、マイヤバー#4を用いて、第2の塗工液を塗布して、150℃で40秒間加熱乾燥させて樹脂材料を硬化させ、厚さ0.8μmの第2の樹脂層を形成し、これにより、離型フィルムを得た。
【0043】
[実施例2]
主剤としてのステアリン酸変性アルキド樹脂溶液(固形分濃度60質量%):100質量部に、架橋剤としてのメチル化メラミン樹脂(固形分濃度100%):40質量部と、触媒としてのp−トルエンスルホン酸メタノール溶液(固形分濃度50質量%)10質量部とを添加し、トルエン/MEK混合溶媒(トルエン:MEK=50質量%:50質量%)で希釈、混合して固形分濃度30質量%の第1の塗工液を得た以外は、実施例1と同様に実施した。
【0044】
[比較例1]
基材フィルムとして、アニール処理した2軸配向PETフィルムに代えて、厚さ30μmのポリプロピレンフィルム(王子製紙社製、商品名「アルファン」)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
【0045】
上記各実施例及び比較例について、以下の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
[基材フィルムの軟化温度]
各実施例及び比較例で用いた基材フィルムの軟化温度を、熱機械分析装置(測定条件:窒素中、昇温温度5℃/分)を用いて測定した。
【0046】
[加熱処理前後の寸法変化率]
各実施例及び比較例における離型フィルム及び基材フィルム単体について、長さ方向の長さ100mm×幅方向の長さ100mmの試験片を採取し、130℃、10分間の加熱処理前後の長さ方向、幅方向についての寸法を、リニヤスケール(ミツトヨ社製、商品名「AT112」)を用いて測定し、下記式にて寸法変化率を算出した。
寸法変化率(%)=|(加熱処理前の寸法−加熱処理後の寸法)/加熱処理前の寸法|×100
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【符号の説明】
【0049】
10 基材フィルム
11 第1の樹脂層
12 第2の樹脂層
20 離型フィルム
図1